(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6535609
(24)【登録日】2019年6月7日
(45)【発行日】2019年6月26日
(54)【発明の名称】地盤改良施工機用の流力発電機
(51)【国際特許分類】
E02D 3/12 20060101AFI20190617BHJP
F03B 13/00 20060101ALI20190617BHJP
F03B 17/00 20060101ALI20190617BHJP
【FI】
E02D3/12 102
F03B13/00
F03B17/00
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-10523(P2016-10523)
(22)【出願日】2016年1月22日
(65)【公開番号】特開2017-128977(P2017-128977A)
(43)【公開日】2017年7月27日
【審査請求日】2018年5月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000236610
【氏名又は名称】株式会社不動テトラ
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(72)【発明者】
【氏名】田中 肇一
(72)【発明者】
【氏名】吉浦 彰洋
【審査官】
荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2007/0014640(US,A1)
【文献】
特開2014−020363(JP,A)
【文献】
特開2010−229760(JP,A)
【文献】
特開昭61−171884(JP,A)
【文献】
特開2001−197785(JP,A)
【文献】
特開2006−118168(JP,A)
【文献】
特開平11−107311(JP,A)
【文献】
特開2015−052282(JP,A)
【文献】
特開2003−056445(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 3/12
E02D 1/00−3/115
F03B 13/00−13/26
F03B 17/00−17/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤改良施工機で用いられる流体の流力を利用して発電する地盤改良施工機用の流力発電機であって、
前記地盤改良施工機の回転して地盤改良する攪拌軸内或いは砂杭造成用のケーシングパイプ内に前記流体を供給する流体供給用配管を設け、この流体供給用配管内に、前記流体の流力により回転する羽根と、この羽根の回転により発電する発電機本体とを備えたことを特徴とする地盤改良施工機用の流力発電機。
【請求項2】
請求項1記載の地盤改良施工機用の流力発電機であって、
前記発電機本体により発電された電気を充電する充電器を前記攪拌軸内或いは砂杭造成用のケーシングパイプ内に備えたことを特徴とする地盤改良施工機用の流力発電機。
【請求項3】
請求項2記載の地盤改良施工機用の流力発電機であって、
前記充電器より電気が供給されるセンサ及び制御機器を前記攪拌軸内或いは砂杭造成用のケーシングパイプ内に備えたことを特徴とする地盤改良施工機用の流力発電機。
【請求項4】
請求項1記載の地盤改良施工機用の流力発電機であって、
前記発電機本体としてダイナモ或いはオルタネータを用いたことを特徴とする地盤改良施工機用の流力発電機。
【請求項5】
請求項1記載の地盤改良施工機用の流力発電機であって、
前記流体として圧縮空気或いはスラリー改良材を用いたことを特徴とする地盤改良施工機用の流力発電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤改良施工機の地盤改良で用いられる圧縮空気の風力等の流力を利用して発電する地盤改良施工機用の流力発電機に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の地盤改良施工機の回転して地盤改良するアタッチメント部として、地盤を攪拌改良する攪拌軸(例えば特許文献1参照)や砂杭造成用のケーシングパイプ(例えば特許文献2参照)がある。
【0003】
また、地盤改良施工機の回転するアタッチメント部による施工では、傾斜計や圧力計等の様々なセンサや電磁弁やシリンダ等の様々な制御機器を用いて地盤改良施工機の制御を行っており、これらへの電気供給は、地上に設置された発電機等から分電盤を通じて行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−158056号公報
【特許文献2】特開平8−284146号公報
【特許文献3】特開2001−180397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の地盤改良施工機では、回転するアタッチメント部にセンサや制御機器を設置した場合、有線では断線するために電気供給が難しかった。また、回転するアタッチメント部に設置されたセンサや制御機器に電気が供給できたとしても配線作業による組立時間・解体時間の増加や、接続部からの漏電の危険性の増加等の問題が発生する虞れがある。これに対処するために、電池やバッテリ等を回転するアタッチメント部に設置すれば電気供給は可能となるが、この場合は、定期的な交換作業が必要となり、作業効率が低下する。
【0006】
そこで、本発明は、前記した課題を解決すべくなされたものであり、地盤改良で使用する圧縮空気の風力等の流力を利用して羽根を回転させることで発電させ、また、充電させて地中内のセンサや制御機器の電源にすることができる地盤改良施工機用の流力発電機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、地盤改良施工機で用いられる流体の流力を利用して発電する地盤改良施工機用の流力発電機であって、前記地盤改良施工機の回転して地盤改良する
攪拌軸内或いは砂杭造成用のケーシングパイプ内に前記流体を供給する流体供給用配管を設け、この流体供給用配管内に、前記流体の流力により回転する羽根と、この羽根の回転により発電する発電機本体とを備えたことを特徴とする。
【0009】
請求項
2の発明は、請求項1記載の地盤改良施工機用の流力発電機であって、前記発電機本体により発電された電気を充電する充電器を
前記攪拌軸内或いは砂杭造成用のケーシングパイプ内に備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項
3の発明は、請求項
2記載の地盤改良施工機用の流力発電機であって、前記充電器より電気が供給されるセンサ及び制御機器を
前記攪拌軸内或いは砂杭造成用のケーシングパイプ内に備えたことを特徴とする。
【0012】
請求項
4の発明は、請求項1記載の地盤改良施工機用の流力発電機であって、前記発電機本体としてダイナモ或いはオルタネータを用いたことを特徴とする。
【0013】
請求項
5の発明は、請求項1記載の地盤改良施工機用の流力発電機であって、前記流体として圧縮空気或いはスラリー改良材を用いたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、請求項1の発明によれば、地盤改良施工機の回転して地盤改良する
攪拌軸内或いは砂杭造成用のケーシングパイプ内に流体を供給する流体供給用配管を設け、この流体供給用配管内に、流体の流力により回転する羽根と、この羽根の回転により発電する発電機本体とを備えたことにより、
攪拌軸或いは砂杭造成用のケーシングパイプで施工しながら発電が可能となり、従来の電気供給用の煩雑な有線による配線作業が不要となる。
特に、施工で使用する流体を用いるため、その分、低コスト化を図ることができる。また、施工中に使用する圧縮空気の風力等を機械的動力として効率良く用いて、羽根を回転させることで、効率良く発電することができる。
【0016】
請求項
2の発明によれば、発電機本体により発電された電気を充電する充電器を
攪拌軸内或いは砂杭造成用のケーシングパイプ内に備えたことにより、施工しながら発電することができると共に充電することができ、従来のバッテリのみの場合のような定期的な交換作業が不要となり、効率の良い施工が可能となる。
【0017】
請求項
3の発明によれば、充電器より電気が供給されるセンサ及び制御機器を
攪拌軸内或いは砂杭造成用のケーシングパイプ内に備えたことにより、センサや制御機器の設計深度を変えても、流体の流力さえあれば、発電が可能であるため、どんな設計深度でも対応させることができる。
【0019】
請求項
4の発明によれば、発電機本体としてダイナモ或いはオルタネータを用いたことにより、流体の流力を電力に簡単かつ確実に変換するすることができる。
【0020】
請求項
5の発明によれば、流体として圧縮空気或いはスラリー改良材を用いたことにより、施工中に使用する圧縮空気の風力或いはスラリー改良材の流力を利用して、羽根を効率良く回転させて発電することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の第1実施形態の地盤改良施工機を示す側面図である。
【
図2】上記第1実施形態の地盤改良施工機に用いる攪拌軸の先端部分の正面図である。
【
図3】上記攪拌軸に設けられた風力発電機の概略説明図である。
【
図6】本発明の第2実施形態の地盤改良施工機を示す側面図である。
【
図7】上記第2実施形態の地盤改良施工機に用いるケーシングパイプに設けられた風力発電機の概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0023】
図1は本発明の第1実施形態の地盤改良施工機を示す側面図、
図2は同地盤改良施工機に用いる攪拌軸の先端部分の正面図、
図3は同攪拌軸に設けられた風力発電機の概略説明図、
図4は風力発電機の構成図、
図5は同風力発電機の発電時の説明図である。
【0024】
図1〜
図5に示すように、風力発電機(流力発電機)1は、圧縮空気(流体)Aとスラリー改良材(流体)Sにより地盤50を攪拌改良する2軸タイプで回転圧入式の地盤改良施工機10に用いられるものであり、回転して地盤改良する攪拌軸(アタッチメント部)20に供給される圧縮空気Aの風力(流力)を利用して発電するものである。
【0025】
図1及び
図2に示すように、地盤50を攪拌改良する地盤改良施工機10は、前側にリーダー12を立設した施工機本体11備えている。このリーダー12には、昇降機13とスイーベル機構付き回動機14を介して2本の攪拌軸20を回動及び昇降動自在に支持してある。各攪拌軸20は、リーダー12の下側に設けられた振れ止め部16により該リーダー12のガイド部12aに沿って鉛直方向に昇降動自在に支持されている。また、各攪拌軸20の下端(先端)には、複数の攪拌翼31,32,33と掘削ビット34を備えた回転軸30を連結してある。尚、各攪拌軸20の下部間には、傾斜角を制御することにより、各攪拌軸20の降下姿勢が鉛直になるように制御するブレード35が取り付けられている。また、各回転軸30間には、一対の共回り防止板36,36がそれぞれ取り付けられている。
【0026】
図3に示すように、各攪拌軸20の内部には、圧縮空気Aを供給する空気供給用配管(流体供給用配管)21と、セメントミルク等のスラリー改良材Sを供給する改良材供給用配管(流体供給用配管)22とが設けられている。そして、一方の攪拌軸20の空気供給用配管21の下端側には、空気供給用配管21内に供給される圧縮空気Aの風力を利用して発電する風力発電機1が設けられている。
【0027】
図4と
図5に示すように、風力発電機1は、攪拌軸20の空気供給用配管21内に供給される圧縮空気Aの風力により回転する羽根2と、この羽根2の回転軸3の回転により発電するダイナモ(発電機本体)4と、このダイナモ4により発電された電気を充電するバッテリ(充電器)5と、このバッテリ5より電気が供給されるセンサ6及び制御機器7とを備えている。これらセンサ6と制御機器7は、攪拌軸20内に設置されており、バッテリ5と電線8により接続されている。尚、センサ6として攪拌軸20の貫入の傾斜を計る傾斜計や圧力計等が用いられ、また、制御機器7として圧縮空気Aやスラリー改良材Sの供給量を制御する電磁弁やシリンダ等が用いられる。
【0028】
以上実施形態の地盤改良施工機用の風力発電機1によれば、地盤改良施工機10の攪拌軸20の回転圧入により地盤50にスラリー改良材Sの固化杭51を施工する際に、攪拌軸20の空気供給用配管21内に供給される圧縮空気Aの風力を利用して羽根2を回転させ、ダイナモ4で発電することができる。また、ダイナモ4で発電した電気をバッテリ5に充電することができる。これにより、電気を充電させたバッテリ5を地盤50の地中内のセンサ6や制御機器7の電源にして電気を供給することができる。
【0029】
このように、地盤改良施工機10の回転して地盤改良する攪拌軸20の空気供給用配管21に、空気供給用配管21内に供給される圧縮空気Aの風力により回転する羽根2と、この羽根2の回転軸3の回転により発電するダイナモ4と、このダイナモ4により発電された電気を充電するバッテリ5を設置し、このバッテリ5より電気が供給されるようにセンサ6及び制御機器7を電線8で接続したことにより、攪拌軸20で地盤改良の施工をしながら発電と充電が可能となり、従来の電気供給用の煩雑な有線による配線作業が不要となり、その分、低コスト化を図ることができるる。
【0030】
また、地盤改良の施工で使用する攪拌軸20の空気供給用配管21内に供給される圧縮空気Aを機械的動力として用いたことにより、羽根2を効率良く回転させて、低コストで発電することができると共に充電することができる。
【0031】
また、発電機本体としてダイナモ4を用いたことにより、空気供給用配管21内に供給される圧縮空気Aの風力(機械的動力)を直流の電力(電気エネルギー)に簡単かつ確実に変換するすることができる。さらに、地盤改良の施工で使用する圧縮空気Aを用い、ダイナモ4により発電された電気を充電するバッテリ5を備えたことにより、地盤改良の施工しながら発電・充電することができるため、従来のバッテリのみの場合のような定期的な交換作業が不要となり、その分、効率の良い地盤改良の施工が可能となる。
【0032】
さらに、バッテリ5より電気が供給されるセンサ6と制御機器7を備えたことにより、センサ6や制御機器7の設計深度を変えても、空気供給用配管21内に供給される圧縮空気Aの風力さえあれば、発電・充填が可能であるため、どんな設計深度でも対応させることができる。
【0033】
図6は本発明の第2実施形態の地盤改良施工機を示す側面図、
図7は同地盤改良施工機に用いるケーシングパイプに設けられた風力発電機の概略説明図である。
【0034】
この第2実施形態の地盤改良施工機10′は、
図6及び
図7に示すように、砂杭造成用のケーシングパイプ(アタッチメント部)40内に、その長尺の空気供給用配管41内に供給される掘削用の圧縮空気Aの風力を利用して発電する前記攪拌軸20と同一構成の風力発電機(流力発電機)1を備えている。
【0035】
即ち、地盤改良施工機10′のリーダー12のガイド部12aに沿って鉛直方向に昇降動自在に支持されたケーシングパイプ40の上端にホッパー15から砂S′が供給され、ケーシングパイプ40の短尺の空気供給用配管42内に供給される砂排出用の圧縮空気Aの風力により砂S′が排出されるようになっている。
【0036】
そして、地盤改良施工機10′のケーシングパイプ40の回転圧入により地盤50に砂S′による砂杭52を施工する際に、ケーシングパイプ40の長尺の空気供給用配管41内に供給される掘削用の圧縮空気Aの風力を利用して風力発電機1で発電し、この発電した電気をバッテリ5に充電して、地盤50の地中
のケーシングパイプ40内のセンサ6や制御機器7に電気を供給することができ、前記第1実施形態と同様の作用・効果を奏する。
【0037】
尚、前記第1実施形態によれば、攪拌軸の空気供給用配管内に供給される圧縮空気の風力により発電する場合について説明したが、攪拌軸の改良材供給用配管内に供給されるスラリー改良材の流力により発電するようにしても良い。
【0038】
また、前記第2実施形態によれば、ケーシングパイプの長尺の空気供給用配管内に供給される掘削用の圧縮空気の風力風力により発電する場合について説明したが、ケーシングパイプの短尺の空気供給用配管内に供給される砂排出用の圧縮空気の風力により発電するようにしても良い。
【0039】
さらに、前各記実施形態によれば、機械的動力を電力に変換する発電機本体としてダイナモ(直流発電機機)を用いたが、オルタネータ(交流発電機)を用いても良い。
【0040】
さらに、前各記実施形態によれば、風力発電機で発電した電気をバッテリに充電して、地盤の地中内のセンサや制御機器に電気を供給したが、風力発電機で発電した電気を攪拌軸の空気供給用配管の下端側に設けた無線送受信器に供給(利用)して、施工機本体側に設けた無線送受信器との間で地中と地上のデータを電波(信号)で送受信するようにしても良い。
【符号の説明】
【0041】
1 風力発電機(流力発電機)
2 羽根
4 ダイナモ(発電機本体)
5 バッテリ(充電器)
6 センサ
7 制御装置
10,10′ 地盤改良施工機
20 攪拌
軸
21 空気供給用配管(流体供給用配管)
40 ケーシングパイ
プ
A 圧縮空気(流体)
S スラリー改良材(流体)