(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6535639
(24)【登録日】2019年6月7日
(45)【発行日】2019年6月26日
(54)【発明の名称】路盤の補修方法
(51)【国際特許分類】
E01C 23/00 20060101AFI20190617BHJP
E01C 7/18 20060101ALI20190617BHJP
【FI】
E01C23/00 A
E01C7/18
【請求項の数】4
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2016-148053(P2016-148053)
(22)【出願日】2016年7月28日
(65)【公開番号】特開2018-17023(P2018-17023A)
(43)【公開日】2018年2月1日
【審査請求日】2018年9月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000200301
【氏名又は名称】JFEミネラル株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000210654
【氏名又は名称】竹本油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100081798
【弁理士】
【氏名又は名称】入山 宏正
(72)【発明者】
【氏名】光藤 浩之
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 哲哉
(72)【発明者】
【氏名】須藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】岡田 和寿
【審査官】
石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−071067(JP,A)
【文献】
特開平08−259946(JP,A)
【文献】
特開2002−069922(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0247240(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 23/00
E01C 3/00
E01C 7/18
C08K 3/00
C08L 101/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
膨張性鉱物を含有する路盤材を用いた路盤の補修方法であって、舗装の表層や基層から路盤材を露出させ、露出させた路盤材に水溶性のアクリル酸系重合体を加えて混合した後、その混合物の所要量を路盤材として再び敷設することを特徴とする路盤の補修方法。
【請求項2】
水溶性のアクリル酸系重合体が、質量平均分子量3000〜20000000のものである請求項1記載の路盤の補修方法。
【請求項3】
水溶性のアクリル酸系重合体が、質量平均分子量10000〜10000000のものである請求項1記載の路盤の補修方法。
【請求項4】
路盤材に対して水溶性のアクリル酸系重合体を、0.1〜4質量%となるよう加える請求項1〜3のいずれか一つの項記載の路盤の補修方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は路盤の補修方法に関し、更に詳しくは膨張性鉱物を含有する路盤材を用いた路盤の補修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
道路や駐車場等の路盤形成に敷設される路盤材には、天然砕石のほかに、鉄鋼スラグや再生材料等が用いられる。これらの路盤材に遊離CaOや遊離MgO等の膨張性鉱物が含まれると、それらが水分と反応してCaO水和物やMgO水和物等を形成し、かかる水和物は元の鉱物に比べて単位物質量当たりの体積が大きいため、体積膨張して路盤の隆起、変形、破壊等を引き起こすことがある。尚、ここでいう路盤材には、仮設道路や整地材に使用される土工用材も含まれる。
【0003】
従来、前記のような路盤の隆起、変形、破壊等を補修し、更には予防する方法として、路盤に目地を形成して膨張を吸収する方法や、路盤の一部分を溝状に除去してその溝の空隙部分や、その溝部分に発泡セメントミルクや非固結性の粒状材料を充填することにより膨張を吸収する方法が提案されている(例えば特許文献1〜3参照)。しかし、これらの従来法では吸収できる膨張量に限界があり、膨張量によっては路盤の隆起、変形、破壊等を引き起こす恐れがあるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−163759号公報
【特許文献2】特開2010−71066号公報
【特許文献3】特開2010−71067号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、膨張性鉱物を含有する路盤材を用いた路盤の隆起、変形、破壊等を確実に補修すると同時に、かかる隆起、変形、破壊等が生じるのを確実に予防することができる路盤の補修方法を提供する処にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題を解決する本発明は、膨張性鉱物を含有する路盤材を用いた路盤の補修方法であって、舗装の表層や基層から路盤材を露出させ、露出させた路盤材に水溶性のアクリル酸系重合体を加えて混合した後、その混合物の所要量を路盤材として再び敷設することを特徴とする路盤の補修方法に係る。
【0007】
本発明に係る路盤の補修方法(以下、本発明の補修方法という)は、遊離CaOや遊離MgO等の膨張性鉱物を含有する鉄鋼スラグのような路盤材を用いた路盤の補修方法である。本発明の補修方法では、先ず舗装の表層や基層から路盤材を露出させる。次に露出させた路盤材に水溶性のアクリル酸系重合体を加えて混合する。最後にその混合物の所要量を路盤材として再び敷設する。
【0008】
具体的に例えば、アスファルトで舗装されている道路や駐車場等の場合、先ずアスファルト層を除去した後、路盤を掘削し、路盤材を破砕して、敷きならす。次に敷きならした路盤材に水溶性のアクリル酸系重合体をできるだけ均一に散布し、スタビライザー等によりできるだけ均一に混合する。最後にその混合物の所要量を再び敷きならし、転圧した後、アスファルトで再舗装する。
【0009】
本発明の補修方法に用いる水溶性のアクリル酸系重合体は、アクリル酸及び/又はその塩から形成された構成単位を主構成単位とするものであるが、なかでもアクリル酸及び/又はその塩から形成された構成単位を全構成単位中に60モル%以上有するものが好ましく、70モル%以上有するものがより好ましい。かかる水溶性のアクリル酸系重合体は、一般には洗剤、水処理剤、顔料分散剤、保水剤、増粘剤、スケールコントロール剤等に使用されている。
【0010】
本発明の補修方法に用いる水溶性のアクリル酸系重合体としては、アクリル酸及び/又はその塩等のビニル単量体から新たに合成したものでもよいが、市販品を利用することもできる。かかる市販品としては、日本触媒社製の商品名アクアリックLやアクアリックH、東亜合成社製の商品名アロンやジュリマー等が挙げられる。
【0011】
本発明の補修方法において、水溶性のアクリル酸系重合体は、その質量平均分子量が特に制限されるというものではないが、質量平均分子量3000〜20000000のものが好ましく、10000〜10000000のものがより好ましい。
【0012】
本発明の補修方法において、水溶性のアクリル酸系重合体は、そのまま路盤材に加えることもできるが、その水溶液を路盤材に加えるのが好ましい。またかかる水溶性のアクリル酸系重合体は、搬送先の工場等で路盤材に加えることもできるが、現地で路盤材に加えるのが好ましい。路盤材を露出させた現地にて、水溶性のアクリル酸系重合体の水溶液を路盤材に散布するのが特に好ましい。
【0013】
本発明の補修方法において、路盤材に加える水溶性のアクリル酸系重合体の量は特に制限されないが、路盤材に対して水溶性のアクリル酸系重合体を0.1〜4質量%となるよう加えるのが好ましく、0.5〜3質量%となるよう加えるのがより好ましい。
【0014】
路盤材に水溶性のアクリル酸系重合体を加えて混合すると、アクリル酸系重合体と、路盤材中のカルシウムやマグネシウム等とのキレート作用により、その水和や膨張反応を低減するものと推察される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、膨張性鉱物を含有する路盤材を用いた路盤の隆起、変形、破壊等を確実に補修すると同時に、かかる隆起、変形、破壊等が生じるのを確実に予防することができるという効果がある。
【実施例】
【0016】
アスファルト舗装面の隆起した場所からアスファルト層を除去した後、路盤を掘削し、膨張性鉱物を含有する鉄鋼スラグ等を用いた路盤材を破砕して、敷きならした。長さ20m、幅4m、厚さ0.2m、路盤材量32tの試験工区を合計8工区設け、次のように施工した。
【0017】
・比較例1
前記のように敷きならした路盤材をそのまま転圧し、アスファルトで舗装した。
【0018】
・比較例2
前記のように敷きならした路盤材に、その長手方向に3m間隔で幅30cmの溝を設け、アスファルトで舗装した。
【0019】
・実施例1〜5
前記のように敷きならした路盤材に、表1記載の添加量等となるよう水溶性のアクリル酸系重合体の水溶液を散布し、スタビライザーで双方が均一となるよう混合した後、再び路盤材を敷きならし、転圧して、アスファルトで舗装した。
【0020】
各試験工区で、アスファルト舗装面に所定間隔で合計15個の観測鋲を打ち、1年後、3年後及び5年後に、これらの観測鋲の高さの変位を測定し、その平均値を基の路盤材の厚さで除した値を膨張比(%)として、結果を表1にまとめて示した。
【0021】
【表1】
【0022】
表1において、
添加量、使用量、散布量:いずれも水溶性のアクリル酸系重合体としての量
A1:ポリアクリル酸のナトリウム塩(質量平均分子量6000)
A2:アクリル酸/マレイン酸共重合体の部分ナトリウム塩(質量平均分子量36000)
A3:ポリアクリル酸のナトリウム塩(質量平均分子量5000000)
【0023】
表1の結果からも明らかなように、本発明によると、膨張性鉱物を含有する路盤材の膨張を実質的に防止し、路盤を確実に補修することができる。