【実施例】
【0025】
図中符号1で示すものが、本発明の包装用緩衝体(以下、緩衝体1と略記する)であって、このものが例えばダンボール製の包装容器2に組み合わされて、例えば高級果物等の被包装体3を保護した状態で包装容器を構成する。
ここで前記被包装体3は、例えばメロン、桃等の比較的傷が付きやすい果物等の他、易損品、精密機器、更には機械部品等、適宜充分な緩衝機能が要求される製品等を対象とし得る。
【0026】
まず前記緩衝体1は、緩衝要素体10が単独または複数組み合わせて構成されるものであり、したがって、緩衝要素体10が単体として緩衝体1を構成する場合、限りなく両者は同一の概念となる。
前記緩衝要素体10は、カバー体11の内部にクッション素材15を内包したものであり、このカバー体11は、例えば平板状の原反シート11Aを筒状にいわゆるサック貼りした後、その長手方向を仕切るように分断接着し、袋状としてその内部にクッション素材15を収納した形態を採る。
このように原反シート11Aがサック貼りされて袋状のカバー体11とされるものであり、本明細書においては、この袋状のカバー体11の外側の面をおもて面と称し、袋の内側の面をうら面と称するものとする。
【0027】
すなわち一例としてカバー体11は、一方の平面中央に、サック貼り縁12がフラップ状に設けられるとともに、それと直交する方向に、仕切縁13が形成されている。
なおこのようなサック貼り縁12、仕切縁13を構成するために、原反シート11Aの接着が必要となるが、この場合に用いる接着剤Gは、ホットメルト系の樹脂接着剤であることが好ましい。
前記ホットメルト系の樹脂接着剤とは、熱(80〜180℃程度)をかけて融かして接着させる樹脂接着剤であって、材質としては、エチレン酢酸ビニル(EVA)、ポリプロピレン(PP)、ポリアミド・ナイロン(PA)のような熱可塑性プラスチックが採用される。
また前記カバー体11は、後述するように環境負荷等を考慮すると、紙素材であることが好ましい。
【0028】
なおこのような構成の場合、仕切縁13の部位でそれぞれの緩衝要素体10を分断したときには単体の緩衝要素体10により緩衝体1を構成することとなり、分断しないときには複数の緩衝要素体10が組み合わされて緩衝体1を構成することとなる。
【0029】
なお仕切縁13の部位でそれぞれの緩衝要素体10を分断する場合には、緩衝体1としての使用時における汎用性及び取り扱い性を良好とするために
図3に示すように、例えばミシン目状の切離し弱化部14を設けることが好ましい。
もちろん切離し弱化部14は、カバー体11が例えば樹脂の場合等においては、仕切縁13を形成する際に、仕切縁13の肉厚を薄くするような形状のヒートシーラを適用して構成するような手法も採り得る。
【0030】
次に前記クッション素材15について説明すると、このものは、適宜の緩衝機能、クッション機能が発揮できればよいものであって、例えば綿状部材あるいはスポンジ状部材等でもよいが、この実施例では一例として、紙素材を短寸細帯状とし、更に嵩高絡み状に構成したものを採用する。
具体的には、一例としてグラシン紙を素材とした材料シート15Aを適宜サイズに裁断し、これを細帯状に裁断し、このものを適宜の長さに寸断し、更にこれを適宜攪拌して細帯材を互いに不規則に絡み合わせて嵩高絡み状とすることによりクッション素材15が形成されるものである。
なお前記材料シート15Aとしては、前記グラシン紙の他に、吸収性に優れた紙素材とすることもできる。
また前記クッション素材15を細片状のものとしてもよく、材料シート15Aではなく、例えば廃紙材を用いてこのものを細片状とするようにしてもよい。
上述のようにクッション素材15としては、短寸細帯状の紙素材が嵩高絡み状となったもの、または細片状の紙素材のいずれか一方または双方を採ることができるものである。
【0031】
そして前記カバー体11のおもて面の全面または一部には、防滑作用部16が形成される。この防滑作用部16の形態としては、
図4(a)に示すような散点模様、
図4(b)に示すような格子模様、
図4(c)に示すような斜め格子模様、
図4(d)に示すようなストライプ模様、更には
図4(e)に示すようにカバー体11のおもて面に全面に広域に塗布するような形態等が採られるものである。
なお
図4に示す緩衝体1では、仕切縁13の部分に防滑作用部16を形成していないが、ここに防滑剤Cを塗布して防滑作用部16を形成するようにしてもよい。
また防滑作用部16を構成する防滑剤Cの素材は、一例として前記接着剤Gと同様のホットメルト系樹脂が採用されるものであるが、コスト等を考慮しなくて良ければ発泡ゴム等を採用することもできる。
【0032】
次に上述したような形態が採られる緩衝要素体10を製造するための製造ライン5の一例について簡単に説明する。
まず製造ライン5を構成する機材並びに原料素材について述べると、
図5に示すように、カバー体11はロール状に巻かれた原反シート11Aを出発素材とするものであり、このものが、原反シート供給部51において接着剤Gが塗布された後、袋状体形成部52において、クッション材供給部53から送られてくるクッション素材15を内包させながら袋状のカバー体11を形成し、緩衝要素体10を構成するものである。
【0033】
前記原反シート供給部51は、適宜コンベアライン等を具えて構成され、原反ロール11Bから送り出される原反シート11Aに対して接着剤Gを塗布するための長手方向塗布装置51A及び幅方向塗布装置51Bが具えられて成るものである。
これら長手方向塗布装置51A及び幅方向塗布装置51Bは、アプリケータによって溶融した接着剤Gをホットメルトガンの吐出口から吐出させる吐出式の装置や、溶融した接着剤Gを圧縮空気によりノズルの噴出口から噴出させるスプレー式の装置が用いられる。
前記吐出式の装置によってカバー体11に塗布された接着剤Gの態様は、均一な厚さとなるものである。一方、前記スプレー式の装置によってカバー体11に塗布された接着剤Gの態様は、微細且つ不規則な網目模様を形成するものである。
【0034】
また前記袋状体形成部52には、適宜原反シート11Aを袋状に曲げて両端部を二枚重ね状態とするための機構が具えられ、更にこの状態の原反シート11Aを、両おもて面側から挟持するいわゆるシールバーと呼ばれる機器が適用されたサック貼り装置52A及び仕切り貼り装置52Bが具えられる。
また前記クッション材供給部53には、材料シート15Aを適宜サイズの細帯状に裁断するための裁断機53A及び細帯片を攪拌するための攪拌機53Bが具えられる。
【0035】
更に製造ライン5には、カバー体11のおもて面に防滑剤Cを塗布して防滑作用部16を形成するための防滑剤塗布装置55が具えられるものであり、この装置は前記長手方向塗布装置51A及び幅方向塗布装置51Bと同様に、アプリケータによって溶融した接着剤Gをホットメルトガンの吐出口から吐出させる吐出式の塗布装置や、溶融した接着剤Gを圧縮空気によりノズルの噴出口から噴出させるスプレー式の塗布装置が用いられる。
更にまた製造ライン5には、ミシン目状の切離し弱化部14を形成するための、ロータリー刃等を具えたミシン目形成装置56が具えられる
【0036】
本発明の緩衝要素体10を製造するための製造ライン5は一例として上述したように構成されるものであり、以下、この製造ライン5を用いた緩衝要素体10の製造手法の一例について説明する。
(1)〔接着剤の塗布〕
まず原反シート供給部51において、長手方向塗布装置51Aにより、原反シート11Aの長手方向に沿って、サック貼り縁12の形成個所の一方に、接着剤Gが一例として幅20mmで連続的に塗布される。
一方、幅方向塗布装置51Bにより、原反シート11Aの幅方向に沿って、仕切縁13の形成個所の半分の領域に、接着剤Gが一例として幅15mmで塗布される。
なお幅方向塗布装置51Bによる接着剤Gの塗布は、原反シート11Aの長手方向に対して一定間隔毎に間欠的に行われるものであり、一例として後述する仕切り貼り装置52Bによるシール作業のために原反シート11Aの送りが停止される際に、これと同期して行われるものとする。
【0037】
(2)〔サック貼り縁の形成〕
そして原反シート供給部51から袋状体形成部52に送られてくる原反シート11Aは接着剤Gが塗布されてた状態であり、このものを袋状体形成部52において袋状に曲げた状態とし、初めにサック貼り装置52Aによって原反シート11Aの長手方向に沿って連続的に塗布された接着剤Gをうら側から挟み込むことによりサック貼り縁12が形成される。
【0038】
(3)〔仕切縁の形成〕
続いてサック貼り縁12が形成されることにより筒状となった原反シート11Aは、仕切縁13の形成個所が仕切り貼り装置52Bの作用位置に到達した時点で送りが停止される。
そして仕切り貼り装置52Bによって原反シート11Aの幅方向に沿って塗布された接着剤Gをうら側から挟み込むことにより仕切縁13が形成される。
【0039】
(4)〔クッション素材の充填〕
次いでこの状態で、サック貼り縁12よりも上方において、まだ完全に筒状に形成されていない範囲、すなわちシールされていない範囲に、クッション材供給部53から送られてくるクッション素材15が投入される。
【0040】
(5)〔仕切縁の形成〕
次いで原反シート11Aを一定寸法分送り込み、次の仕切縁13の形成個所が仕切り貼り装置52Bの作用範囲に到達した時点で原反シート11Aの送り込みにが停止され、仕切り貼り装置52Bによって原反シート11Aの幅方向に沿って塗布された接着剤Gをうら側から挟み込むことにより仕切縁13が形成される。
この時点で、クッション素材15を内包した筒状のカバー体11の上下ともに仕切縁13によって封鎖され、緩衝要素体10が形成されることとなる。
【0041】
(6)〔防滑作用部の形成〕
次いで防滑剤塗布装置55に到達した緩衝要素体10は、カバー体11のおもて面に防滑剤Cが塗布される。
なおスプレー式の装置によってカバー体11に塗布された防滑剤Cの態様は、
図4(e)に示すよう微細且つ不規則な網目模様が、カバー体11のおもて面に全面に広域に形成されるものであり、このものが冷えて硬化した防滑作用部16は、あらゆる方向への防滑作用に優れるとともに、廃棄の際にはカバー体11からの剥離を容易に行うことができるものとなる。
【0042】
(7)〔ミシン目の形成と切断〕
次いでミシン目形成装置56に到達した緩衝要素体10は、仕切縁13の部位にミシン目が形成され、これが切離し弱化部14となる。
更に仕様に合わせて、適宜の個所の切離し弱化部14を切断することにより、緩衝要素体10が単枚または複数枚組み合わされた状態の緩衝体1が得られるものである。
【0043】
〔包装容器〕
次いで上述のようにして製造された緩衝体1に組み合わされる包装容器2について説明する。このものは例えば段ボール製の包装容器2等が用いられるものであり、例えば
図6(a)に示す実施例は、容器本体21を、例えばEフルート段ボール(厚さ1.5mm)等を額縁状にし、このものに対して蓋体22の一例である被せ蓋22Aを被せるようにしたものである。
そして容器本体21の内部に被包装体3を収容するとともに、適宜被包装体3同士が接触したり、あるいはこのものに容器本体21に加わる外力から保護できるような位置に、前記緩衝体1が設けられる。なお緩衝体1の配設態様の詳細については後述する。
【0044】
また前記包装容器2は種々の形態が採り得るものであり、前記被せ蓋22Aの他、
図6(c)に示すような蓋フラップ22Bあるいは
図6(d)に示すような合わせフラップ22C等、適宜のタイプの蓋体22が適用できる。
【0045】
〔包装容器への緩衝体の組み付け〕
次いで包装容器2への、緩衝体1の組み合わせ形態について述べる。
まず
図6(a)に示す形態は、底部または上部のみ緩衝体1が必要とされる場合であり、緩衝体1をフラットな状態で被包装体3の上下に配設して、容器本体21内の被包装体3を保護する形態である。
また
図6(b)の平面図に示す形態は、緩衝要素体10を個々に被包装体3に巻いてこのものを保護する形態である。
更にまた
図6(c)に示す形態は、緩衝要素体10をそのまま、あるいは折り曲げて適宜の空間に詰め込むことにより、緩衝機能を発揮させるような形態である。この際、複数の緩衝要素体10が仕切縁13を介在して連設された緩衝体1を用いるときには、そのまま、あるいはの一部の緩衝要素体10を切離し弱化部14で分断して適宜の空間に詰め込むようにすることもできる。
更にまた
図6(d)に示す形態は、仕切縁13を利用して、このものを折り返し状になるように配置したものであり、連続した緩衝要素体10がそれぞれ寄せられるようになり、緩衝体1の全長を短くすることができ、このような寸法に合う容器本体21に対しての収まりが良好になる形態である。
更にまた
図6(e)に示す形態は、仕切縁13を利用して、連続する緩衝要素体10を逆V型に立てることにより、容器本体21内に仕切りを形成するようにした形態である。
【0046】
そして上述のように包装容器2に緩衝体1を具えることにより、防滑作用部16が、緩衝体1と包装容器2との間で滑り止めとして機能し、これらが互いに緩固定され、また緩衝体1と被包装体3との間での防滑作用も発揮されるため、被包装体3の保護が確実に行われる。
【0047】
〔他の実施例〕
本発明は上述した実施例を基本となる実施例とするものであるが、以下に示すような形態を採ることも可能である。
まず前記接着剤G、防滑剤Cに用いるホットメルト系樹脂を利用して、このものに機能素材を含ませて、緩衝体1としての機能向上を図ることができる。具体的には、脱臭剤、芳香剤、防錆剤、害虫忌避剤等を含ませて、被包装体3の保護をより万全にすることもできる。
更にこのような機能素材を、カバー体11、クッション素材15にスプレー等により吹き付けて、各種作用を付与することも可能である。
【0048】
更にまた前記カバー体11のおもて面にプリント表示を設け、被包装体3の商品としての顕示、広告効果を高めるようにすることもできる。
具体的には内容物の表示、クッション効果を顕示するような表示、生産者名の表示等、適宜包装容器2を開封したときに需要者に一定の感動を生起させるような広告的なプリントを施すことが好ましい。
【0049】
更に外箱となる包装容器2を不要とする被包装体3の場合、緩衝体1単独での使用も可能である。この場合には例えば
図7に示すように、緩衝体1を封筒状に形成し、その内部に液体容器、機械部品、電子部品等の被包装体3を収納し、そのまま発送し得るような形態を採ることができる。このような場合、封筒状にした緩衝体1の内側に防滑作用部16を設けることにより、被包装体3の移動を抑えることができ、被包装体3の保護がより確実となる。
【0050】
また前述した基本となる実施例では、サック貼り縁12及び仕切縁13の形成に接着剤Gを用いたが、これを用いることなく、原反シート11Aのうら面に樹脂層が形成されたポリラミネート紙等を用いるようにしてもよい。
この場合、サック貼り装置52A、仕切り貼り装置52Bを構成するシールバーをヒートタイプ(ヒートシーラ)とすることにより、樹脂層の一部を溶融させて接着を図るものである。
この場合、前記長手方向塗布装置51A及び幅方向塗布装置51Bが不要となり、製造ライン5が簡略化される。