特許第6535650号(P6535650)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6535650包装用緩衝体並びにこれを具えた包装容器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6535650
(24)【登録日】2019年6月7日
(45)【発行日】2019年6月26日
(54)【発明の名称】包装用緩衝体並びにこれを具えた包装容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 81/05 20060101AFI20190617BHJP
   B65D 85/34 20060101ALI20190617BHJP
【FI】
   B65D81/05 300
   B65D85/34 160
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-240316(P2016-240316)
(22)【出願日】2016年12月12日
(65)【公開番号】特開2018-95278(P2018-95278A)
(43)【公開日】2018年6月21日
【審査請求日】2018年3月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】597061653
【氏名又は名称】株式会社ディーエス・マルマン
(74)【代理人】
【識別番号】100086438
【弁理士】
【氏名又は名称】東山 喬彦
(72)【発明者】
【氏名】佐野 正樹
(72)【発明者】
【氏名】佐野 弘樹
【審査官】 宮崎 基樹
(56)【参考文献】
【文献】 実開平05−075169(JP,U)
【文献】 登録実用新案第3162425(JP,U)
【文献】 特開2005−193920(JP,A)
【文献】 特開2000−056683(JP,A)
【文献】 特開2010−043167(JP,A)
【文献】 実開昭54−005571(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 57/00−59/08
B65D 81/00−81/17
B65D 85/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クッション素材と、
このクッション素材を内包する袋状のカバー体と、
このカバー体のおもて面に設けられる防滑作用部とを具えて緩衝要素体が形成され、
この緩衝要素体が単枚または複数枚組み合わされて構成されている包装用緩衝体において、
前記クッション素材は、短寸細帯状の紙素材が嵩高絡み状となったもの、または細片状の紙素材のいずれか一方または双方により構成されており、
また前記防滑作用部は、カバー体のおもて面の全面に広域に形成されていることを特徴とする包装用緩衝体。
【請求項2】
前記緩衝要素体が複数枚組み合わされている場合において、各緩衝要素体の仕切縁の一部または全てには、切離し弱化部が設けられていることを特徴とする請求項1記載の包装用緩衝体。
【請求項3】
前記緩衝要素体におけるクッション素材とカバー体とは、共に合成樹脂を含まない紙素材が用いられていることを特徴とする請求項1または2記載の包装用緩衝体。
【請求項4】
前記カバー体は原反シートから袋状に構成されるものであり、この袋状を維持するための接着剤は、ホットメルト系接着剤が用いられていることを特徴とする請求項1、2または3記載の包装用緩衝体。
【請求項5】
前記防滑作用部を構成する素材は、カバー体に塗布されたホットメルト系樹脂であることを特徴とする請求項1、2、3または4記載の包装用緩衝体。
【請求項6】
前記防滑作用部を構成するホットメルト系樹脂は、機能素材を含んでいることを特徴とする請求項記載の包装用緩衝体。
【請求項7】
前記カバー体のおもて面には、プリント表示が設けられていることを特徴とする請求項1、2、3、4、5または記載の包装用緩衝体。
【請求項8】
容器本体内に、前記請求項1、2、3、4、5、6またはのいずれか一項に記載されている包装用緩衝体を具えていることを特徴とする包装容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、丁寧な包装形態が要求される高級果実等を包装する際などに用いることが使用例に挙げられる包装用緩衝体並びにこれを具えた包装容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高級果実の代表的なものとしてマスクメロン等が挙げられるが、その流通にあたっては生産地から遠隔の消費者に届くまで、充分な保護機能を発揮できる包装手法が要求されている。
このような需要に応える手法の一つとして、本出願人らは既に特開平10−287369号(特許文献1)として新規な包装形態を開示している。
この手法による製品は目下のところ流通段階での過酷な荷役作業にも充分な内容物の保護機能を発揮し、いわば定番商品としての確立が成されている。
【0003】
一方で本出願人は、更なる機能向上を図るべく、開発の試みは絶やすことなく継続しているが、その中でユーザーからは、包装資材、特に化粧箱等に内包される緩衝体は、たとえ機能向上が図られたとしても、流通の支援資材にとどまるという認識の下、コスト上昇は回避したいという要請が示されている。
当然このような要請に応えるには、緩衝体をよりシンプルな形態とすればよいが、一方で内容物の安定的な保護機能を損なうようなことは許されない。
加えて高級果実の包装作業、特に緩衝体の配設作業は、当然ながら機械化になじまない手作業にゆだねられ、結果的にその作業を行い易くした形態も要求される。
【0004】
更にまた被包装体の的確な保護は、内容物の形態、寸法、数量等に応じて、専用形態とすることが理想的であるが、これら形態は種々異なり、それぞれに専用仕様の緩衝体を用意することは、コスト面を考慮すると非現実的である。
このため種々の要求形態にも対応できる汎用性を具えた緩衝体を実現させることも開発課題の一つとなっている。
更にまた使用後の処理を考慮して、充分な環境負荷低減を図り得る緩衝体とすることも開発課題の一つである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−287369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような背景を考慮してなされたものであって、上記技術的な要請に対し、総合的に応えることができる包装用緩衝体の開発を試みたものである。即ち、低コストで作業性に優れ、且つ汎用性を確保しながら安定的な被包装体の保護ができ、更に環境対応の面でも優れた包装用緩衝体並びにこれを具えた包装体を開発することを技術課題としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち請求項1記載の包装用緩衝体は、クッション素材と、このクッション素材を内包する袋状のカバー体と、このカバー体のおもて面に設けられる防滑作用部とを具えて緩衝要素体が形成され、この緩衝要素体が単枚または複数枚組み合わされて構成されている包装用緩衝体において、前記クッション素材は、短寸細帯状の紙素材が嵩高絡み状となったもの、または細片状の紙素材のいずれか一方または双方により構成されており、また前記防滑作用部は、カバー体のおもて面の全面に広域に形成されていることを特徴として成るものである。
【0008】
また請求項2記載の包装用緩衝体は、前記要件に加え、前記緩衝要素体が複数枚組み合わされている場合において、各緩衝要素体の仕切縁の一部または全てには、切離し弱化部が設けられていることを特徴として成るものである。
【0009】
更にまた請求項3記載の包装用緩衝体は、前記要件に加え、前記緩衝要素体におけるクッション素材とカバー体とは、共に合成樹脂を含まない紙素材が用いられていることを特徴として成るものである。
【0010】
更にまた請求項4記載の包装用緩衝体は、前記要件に加え、前記カバー体を原反シートから袋状に構成するための接着剤は、ホットメルト系接着剤が用いられていることを特徴として成るものである。
【0011】
更にまた請求項記載の包装用緩衝体は、前記要件に加え、前記防滑作用部を構成する素材は、カバー体に塗布されたホットメルト系樹脂であることを特徴として成るものである。
【0012】
更にまた請求項記載の包装用緩衝体は、前記請求項記載の要件に加え、前記防滑作用部を構成するホットメルト系樹脂は、機能素材を含んでいることを特徴として成るものである。
【0013】
更にまた請求項記載の包装用緩衝体は、前記要件に加え、前記カバー体のおもて面には、プリント表示が設けられていることを特徴として成るものである。
【0014】
更にまた請求項記載の包装用容器は、容器本体内に、前記請求項1、2、3、4、5、6または記載の包装用緩衝体を具えていることを特徴として成るものである。
そしてこれら各請求項記載の構成を手段として前記課題の解決が図られる。
【発明の効果】
【0015】
まず請求項1記載の発明によれば、カバー本体のおもて面に防滑作用部が設けられているから、このものがいわゆる外函となる容器本体内において移動することなく安定的に被包装体の保護姿勢を保つ。結果的に流通、荷役段階での被包装体のズレ等による損傷を完全に回避することができる。
またクッション素材を、紙素材を短寸帯状として嵩高絡み状に構成した場合には、良好な緩衝機能を発揮することができる。
また紙素材としてグラシン紙を採用した場合には、素材自体のいわゆるコシと弾性との調和に優れ、良好な緩衝機能を発揮することができる。また光沢度が高くなるため、カバー体の色彩を損なうことがなく、特にカバー体を淡色とした場合、きれいな発色を呈することができ、被包装体の色を引き立てることができる。
また紙素材として吸収性に優れた素材を採用した場合には、例えば金属部品等の包装に用いるときには湿気を吸収して錆び等の発生を抑えることができ、例えば果物等の包装に用いるときには湿気やエチレンガス等を吸収してカビの発生や熟成等を抑えることができる。
更にまた防滑作用部は要求される包装仕様に適した形態とすることができる。
【0016】
また請求項2記載の発明によれば、複数の緩衝要素体が組み合わされており、且つそれらは切離し弱化部により切り離し自在とされているから、要求される緩衝個所の状況に応じた緩衝要素体の配置ができ、使用時における汎用性に融通性が得られる。
【0017】
更にまた請求項3記載の発明によれば、緩衝要素体は、紙素材のみで構成され、合成樹脂を含まず、従って紙素材としての再利用や廃棄にあたっても環境負荷を抑えることができる。
【0018】
更にまた請求項4記載の発明によれば、カバー体を袋状にするために用いる接着剤は、ホットメルト系接着剤であり、強固な接着作用を得ることができる。
また要接着個所にのみ塗布することにより、カバー体が紙等である場合に通気性を損なってしまうことがない。
【0019】
更にまた請求項記載の発明によれば、防滑作用部は、ホットメルト系樹脂を適用するものであり、平温環境での使用では粘着まで至らない丁度よい防滑性を発揮し、且つその加工も行い易い。
【0020】
更にまた請求項記載の発明によれば、ホットメルト系樹脂を調合する際に、脱臭剤、芳香剤、防錆剤、害虫忌避剤等の材料を含ませるものであり、包装体としての機能向上と被包装体に応じた保護等ができる。
【0021】
更にまた請求項記載の発明によれば、緩衝体を単にその機能だけに留まらせることなく、積極的に被包装体の顕示効果をもたせることができる。
【0022】
更にまた請求項記載の発明によれば、上記各効果を具えた包装容器が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の緩衝体並びにこれを具えた包装容器を一部透視して示す斜視図である。
図2】同上平面図及び側面図である。
図3】緩衝体を一部拡大して示す斜視図である。
図4】防滑作用部の種々の形態を示す平面図である。
図5】である。
図6】本発明の緩衝体を具えた包装容器を示す側面図(a)、(c)、(d)、平面図(b)、斜視図(e)である。
図7】封筒状に形成された緩衝体を一部破断して示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の最良の形態は以下の実施例に述べるとおりであるが、本発明の技術的思想の範囲で適宜変更を加えることも可能である。
なお以下の説明にあたっては、まず本発明の包装用緩衝体の構成を説明し、次いでこの包装用緩衝体を用いた包装容器について説明する。
【実施例】
【0025】
図中符号1で示すものが、本発明の包装用緩衝体(以下、緩衝体1と略記する)であって、このものが例えばダンボール製の包装容器2に組み合わされて、例えば高級果物等の被包装体3を保護した状態で包装容器を構成する。
ここで前記被包装体3は、例えばメロン、桃等の比較的傷が付きやすい果物等の他、易損品、精密機器、更には機械部品等、適宜充分な緩衝機能が要求される製品等を対象とし得る。
【0026】
まず前記緩衝体1は、緩衝要素体10が単独または複数組み合わせて構成されるものであり、したがって、緩衝要素体10が単体として緩衝体1を構成する場合、限りなく両者は同一の概念となる。
前記緩衝要素体10は、カバー体11の内部にクッション素材15を内包したものであり、このカバー体11は、例えば平板状の原反シート11Aを筒状にいわゆるサック貼りした後、その長手方向を仕切るように分断接着し、袋状としてその内部にクッション素材15を収納した形態を採る。
このように原反シート11Aがサック貼りされて袋状のカバー体11とされるものであり、本明細書においては、この袋状のカバー体11の外側の面をおもて面と称し、袋の内側の面をうら面と称するものとする。
【0027】
すなわち一例としてカバー体11は、一方の平面中央に、サック貼り縁12がフラップ状に設けられるとともに、それと直交する方向に、仕切縁13が形成されている。
なおこのようなサック貼り縁12、仕切縁13を構成するために、原反シート11Aの接着が必要となるが、この場合に用いる接着剤Gは、ホットメルト系の樹脂接着剤であることが好ましい。
前記ホットメルト系の樹脂接着剤とは、熱(80〜180℃程度)をかけて融かして接着させる樹脂接着剤であって、材質としては、エチレン酢酸ビニル(EVA)、ポリプロピレン(PP)、ポリアミド・ナイロン(PA)のような熱可塑性プラスチックが採用される。
また前記カバー体11は、後述するように環境負荷等を考慮すると、紙素材であることが好ましい。
【0028】
なおこのような構成の場合、仕切縁13の部位でそれぞれの緩衝要素体10を分断したときには単体の緩衝要素体10により緩衝体1を構成することとなり、分断しないときには複数の緩衝要素体10が組み合わされて緩衝体1を構成することとなる。
【0029】
なお仕切縁13の部位でそれぞれの緩衝要素体10を分断する場合には、緩衝体1としての使用時における汎用性及び取り扱い性を良好とするために図3に示すように、例えばミシン目状の切離し弱化部14を設けることが好ましい。
もちろん切離し弱化部14は、カバー体11が例えば樹脂の場合等においては、仕切縁13を形成する際に、仕切縁13の肉厚を薄くするような形状のヒートシーラを適用して構成するような手法も採り得る。
【0030】
次に前記クッション素材15について説明すると、このものは、適宜の緩衝機能、クッション機能が発揮できればよいものであって、例えば綿状部材あるいはスポンジ状部材等でもよいが、この実施例では一例として、紙素材を短寸細帯状とし、更に嵩高絡み状に構成したものを採用する。
具体的には、一例としてグラシン紙を素材とした材料シート15Aを適宜サイズに裁断し、これを細帯状に裁断し、このものを適宜の長さに寸断し、更にこれを適宜攪拌して細帯材を互いに不規則に絡み合わせて嵩高絡み状とすることによりクッション素材15が形成されるものである。
なお前記材料シート15Aとしては、前記グラシン紙の他に、吸収性に優れた紙素材とすることもできる。
また前記クッション素材15を細片状のものとしてもよく、材料シート15Aではなく、例えば廃紙材を用いてこのものを細片状とするようにしてもよい。
上述のようにクッション素材15としては、短寸細帯状の紙素材が嵩高絡み状となったもの、または細片状の紙素材のいずれか一方または双方を採ることができるものである。
【0031】
そして前記カバー体11のおもて面の全面または一部には、防滑作用部16が形成される。この防滑作用部16の形態としては、図4(a)に示すような散点模様、図4(b)に示すような格子模様、図4(c)に示すような斜め格子模様、図4(d)に示すようなストライプ模様、更には図4(e)に示すようにカバー体11のおもて面に全面に広域に塗布するような形態等が採られるものである。
なお図4に示す緩衝体1では、仕切縁13の部分に防滑作用部16を形成していないが、ここに防滑剤Cを塗布して防滑作用部16を形成するようにしてもよい。
また防滑作用部16を構成する防滑剤Cの素材は、一例として前記接着剤Gと同様のホットメルト系樹脂が採用されるものであるが、コスト等を考慮しなくて良ければ発泡ゴム等を採用することもできる。
【0032】
次に上述したような形態が採られる緩衝要素体10を製造するための製造ライン5の一例について簡単に説明する。
まず製造ライン5を構成する機材並びに原料素材について述べると、図5に示すように、カバー体11はロール状に巻かれた原反シート11Aを出発素材とするものであり、このものが、原反シート供給部51において接着剤Gが塗布された後、袋状体形成部52において、クッション材供給部53から送られてくるクッション素材15を内包させながら袋状のカバー体11を形成し、緩衝要素体10を構成するものである。
【0033】
前記原反シート供給部51は、適宜コンベアライン等を具えて構成され、原反ロール11Bから送り出される原反シート11Aに対して接着剤Gを塗布するための長手方向塗布装置51A及び幅方向塗布装置51Bが具えられて成るものである。
これら長手方向塗布装置51A及び幅方向塗布装置51Bは、アプリケータによって溶融した接着剤Gをホットメルトガンの吐出口から吐出させる吐出式の装置や、溶融した接着剤Gを圧縮空気によりノズルの噴出口から噴出させるスプレー式の装置が用いられる。
前記吐出式の装置によってカバー体11に塗布された接着剤Gの態様は、均一な厚さとなるものである。一方、前記スプレー式の装置によってカバー体11に塗布された接着剤Gの態様は、微細且つ不規則な網目模様を形成するものである。
【0034】
また前記袋状体形成部52には、適宜原反シート11Aを袋状に曲げて両端部を二枚重ね状態とするための機構が具えられ、更にこの状態の原反シート11Aを、両おもて面側から挟持するいわゆるシールバーと呼ばれる機器が適用されたサック貼り装置52A及び仕切り貼り装置52Bが具えられる。
また前記クッション材供給部53には、材料シート15Aを適宜サイズの細帯状に裁断するための裁断機53A及び細帯片を攪拌するための攪拌機53Bが具えられる。
【0035】
更に製造ライン5には、カバー体11のおもて面に防滑剤Cを塗布して防滑作用部16を形成するための防滑剤塗布装置55が具えられるものであり、この装置は前記長手方向塗布装置51A及び幅方向塗布装置51Bと同様に、アプリケータによって溶融した接着剤Gをホットメルトガンの吐出口から吐出させる吐出式の塗布装置や、溶融した接着剤Gを圧縮空気によりノズルの噴出口から噴出させるスプレー式の塗布装置が用いられる。
更にまた製造ライン5には、ミシン目状の切離し弱化部14を形成するための、ロータリー刃等を具えたミシン目形成装置56が具えられる
【0036】
本発明の緩衝要素体10を製造するための製造ライン5は一例として上述したように構成されるものであり、以下、この製造ライン5を用いた緩衝要素体10の製造手法の一例について説明する。
(1)〔接着剤の塗布〕
まず原反シート供給部51において、長手方向塗布装置51Aにより、原反シート11Aの長手方向に沿って、サック貼り縁12の形成個所の一方に、接着剤Gが一例として幅20mmで連続的に塗布される。
一方、幅方向塗布装置51Bにより、原反シート11Aの幅方向に沿って、仕切縁13の形成個所の半分の領域に、接着剤Gが一例として幅15mmで塗布される。
なお幅方向塗布装置51Bによる接着剤Gの塗布は、原反シート11Aの長手方向に対して一定間隔毎に間欠的に行われるものであり、一例として後述する仕切り貼り装置52Bによるシール作業のために原反シート11Aの送りが停止される際に、これと同期して行われるものとする。
【0037】
(2)〔サック貼り縁の形成〕
そして原反シート供給部51から袋状体形成部52に送られてくる原反シート11Aは接着剤Gが塗布されてた状態であり、このものを袋状体形成部52において袋状に曲げた状態とし、初めにサック貼り装置52Aによって原反シート11Aの長手方向に沿って連続的に塗布された接着剤Gをうら側から挟み込むことによりサック貼り縁12が形成される。
【0038】
(3)〔仕切縁の形成〕
続いてサック貼り縁12が形成されることにより筒状となった原反シート11Aは、仕切縁13の形成個所が仕切り貼り装置52Bの作用位置に到達した時点で送りが停止される。
そして仕切り貼り装置52Bによって原反シート11Aの幅方向に沿って塗布された接着剤Gをうら側から挟み込むことにより仕切縁13が形成される。
【0039】
(4)〔クッション素材の充填〕
次いでこの状態で、サック貼り縁12よりも上方において、まだ完全に筒状に形成されていない範囲、すなわちシールされていない範囲に、クッション材供給部53から送られてくるクッション素材15が投入される。
【0040】
(5)〔仕切縁の形成〕
次いで原反シート11Aを一定寸法分送り込み、次の仕切縁13の形成個所が仕切り貼り装置52Bの作用範囲に到達した時点で原反シート11Aの送り込みにが停止され、仕切り貼り装置52Bによって原反シート11Aの幅方向に沿って塗布された接着剤Gをうら側から挟み込むことにより仕切縁13が形成される。
この時点で、クッション素材15を内包した筒状のカバー体11の上下ともに仕切縁13によって封鎖され、緩衝要素体10が形成されることとなる。
【0041】
(6)〔防滑作用部の形成〕
次いで防滑剤塗布装置55に到達した緩衝要素体10は、カバー体11のおもて面に防滑剤Cが塗布される。
なおスプレー式の装置によってカバー体11に塗布された防滑剤Cの態様は、図4(e)に示すよう微細且つ不規則な網目模様が、カバー体11のおもて面に全面に広域に形成されるものであり、このものが冷えて硬化した防滑作用部16は、あらゆる方向への防滑作用に優れるとともに、廃棄の際にはカバー体11からの剥離を容易に行うことができるものとなる。
【0042】
(7)〔ミシン目の形成と切断〕
次いでミシン目形成装置56に到達した緩衝要素体10は、仕切縁13の部位にミシン目が形成され、これが切離し弱化部14となる。
更に仕様に合わせて、適宜の個所の切離し弱化部14を切断することにより、緩衝要素体10が単枚または複数枚組み合わされた状態の緩衝体1が得られるものである。
【0043】
〔包装容器〕
次いで上述のようにして製造された緩衝体1に組み合わされる包装容器2について説明する。このものは例えば段ボール製の包装容器2等が用いられるものであり、例えば図6(a)に示す実施例は、容器本体21を、例えばEフルート段ボール(厚さ1.5mm)等を額縁状にし、このものに対して蓋体22の一例である被せ蓋22Aを被せるようにしたものである。
そして容器本体21の内部に被包装体3を収容するとともに、適宜被包装体3同士が接触したり、あるいはこのものに容器本体21に加わる外力から保護できるような位置に、前記緩衝体1が設けられる。なお緩衝体1の配設態様の詳細については後述する。
【0044】
また前記包装容器2は種々の形態が採り得るものであり、前記被せ蓋22Aの他、図6(c)に示すような蓋フラップ22Bあるいは図6(d)に示すような合わせフラップ22C等、適宜のタイプの蓋体22が適用できる。
【0045】
〔包装容器への緩衝体の組み付け〕
次いで包装容器2への、緩衝体1の組み合わせ形態について述べる。
まず図6(a)に示す形態は、底部または上部のみ緩衝体1が必要とされる場合であり、緩衝体1をフラットな状態で被包装体3の上下に配設して、容器本体21内の被包装体3を保護する形態である。
また図6(b)の平面図に示す形態は、緩衝要素体10を個々に被包装体3に巻いてこのものを保護する形態である。
更にまた図6(c)に示す形態は、緩衝要素体10をそのまま、あるいは折り曲げて適宜の空間に詰め込むことにより、緩衝機能を発揮させるような形態である。この際、複数の緩衝要素体10が仕切縁13を介在して連設された緩衝体1を用いるときには、そのまま、あるいはの一部の緩衝要素体10を切離し弱化部14で分断して適宜の空間に詰め込むようにすることもできる。
更にまた図6(d)に示す形態は、仕切縁13を利用して、このものを折り返し状になるように配置したものであり、連続した緩衝要素体10がそれぞれ寄せられるようになり、緩衝体1の全長を短くすることができ、このような寸法に合う容器本体21に対しての収まりが良好になる形態である。
更にまた図6(e)に示す形態は、仕切縁13を利用して、連続する緩衝要素体10を逆V型に立てることにより、容器本体21内に仕切りを形成するようにした形態である。
【0046】
そして上述のように包装容器2に緩衝体1を具えることにより、防滑作用部16が、緩衝体1と包装容器2との間で滑り止めとして機能し、これらが互いに緩固定され、また緩衝体1と被包装体3との間での防滑作用も発揮されるため、被包装体3の保護が確実に行われる。
【0047】
〔他の実施例〕
本発明は上述した実施例を基本となる実施例とするものであるが、以下に示すような形態を採ることも可能である。
まず前記接着剤G、防滑剤Cに用いるホットメルト系樹脂を利用して、このものに機能素材を含ませて、緩衝体1としての機能向上を図ることができる。具体的には、脱臭剤、芳香剤、防錆剤、害虫忌避剤等を含ませて、被包装体3の保護をより万全にすることもできる。
更にこのような機能素材を、カバー体11、クッション素材15にスプレー等により吹き付けて、各種作用を付与することも可能である。
【0048】
更にまた前記カバー体11のおもて面にプリント表示を設け、被包装体3の商品としての顕示、広告効果を高めるようにすることもできる。
具体的には内容物の表示、クッション効果を顕示するような表示、生産者名の表示等、適宜包装容器2を開封したときに需要者に一定の感動を生起させるような広告的なプリントを施すことが好ましい。
【0049】
更に外箱となる包装容器2を不要とする被包装体3の場合、緩衝体1単独での使用も可能である。この場合には例えば図7に示すように、緩衝体1を封筒状に形成し、その内部に液体容器、機械部品、電子部品等の被包装体3を収納し、そのまま発送し得るような形態を採ることができる。このような場合、封筒状にした緩衝体1の内側に防滑作用部16を設けることにより、被包装体3の移動を抑えることができ、被包装体3の保護がより確実となる。
【0050】
また前述した基本となる実施例では、サック貼り縁12及び仕切縁13の形成に接着剤Gを用いたが、これを用いることなく、原反シート11Aのうら面に樹脂層が形成されたポリラミネート紙等を用いるようにしてもよい。
この場合、サック貼り装置52A、仕切り貼り装置52Bを構成するシールバーをヒートタイプ(ヒートシーラ)とすることにより、樹脂層の一部を溶融させて接着を図るものである。
この場合、前記長手方向塗布装置51A及び幅方向塗布装置51Bが不要となり、製造ライン5が簡略化される。
【符号の説明】
【0051】
1 緩衝体
10 緩衝要素体
11 カバー体
11A 原反シート
11B 原反ロール
12 サック貼り縁
13 仕切縁
14 切離し弱化部
15 クッション素材
15A 材料シート
16 防滑作用部

2 包装容器
21 容器本体
22 蓋体
22A 被せ蓋
22B 蓋フラップ
22C 合わせフラップ

3 被包装体

5 製造ライン
51 原反シート供給部
51A 長手方向塗布装置
51B 幅方向塗布装置
52 袋状体形成部
52A サック貼り装置
52B 仕切り貼り装置
53 クッション材供給部
53A 裁断機
53B 攪拌機
55 防滑剤塗布装置
56 ミシン目形成装置

C 防滑剤
G 接着剤
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7