特許第6535664号(P6535664)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ スピンケム・アーベーの特許一覧

特許6535664生物学的または化学的形質転換用リアクタ
<>
  • 特許6535664-生物学的または化学的形質転換用リアクタ 図000002
  • 特許6535664-生物学的または化学的形質転換用リアクタ 図000003
  • 特許6535664-生物学的または化学的形質転換用リアクタ 図000004
  • 特許6535664-生物学的または化学的形質転換用リアクタ 図000005
  • 特許6535664-生物学的または化学的形質転換用リアクタ 図000006
  • 特許6535664-生物学的または化学的形質転換用リアクタ 図000007
  • 特許6535664-生物学的または化学的形質転換用リアクタ 図000008
  • 特許6535664-生物学的または化学的形質転換用リアクタ 図000009
  • 特許6535664-生物学的または化学的形質転換用リアクタ 図000010
  • 特許6535664-生物学的または化学的形質転換用リアクタ 図000011
  • 特許6535664-生物学的または化学的形質転換用リアクタ 図000012
  • 特許6535664-生物学的または化学的形質転換用リアクタ 図000013
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6535664
(24)【登録日】2019年6月7日
(45)【発行日】2019年6月26日
(54)【発明の名称】生物学的または化学的形質転換用リアクタ
(51)【国際特許分類】
   B01J 19/18 20060101AFI20190617BHJP
   C12M 1/02 20060101ALI20190617BHJP
   C12M 1/10 20060101ALI20190617BHJP
   B01F 7/16 20060101ALN20190617BHJP
【FI】
   B01J19/18
   C12M1/02 A
   C12M1/10
   !B01F7/16
【請求項の数】9
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-525947(P2016-525947)
(86)(22)【出願日】2014年9月26日
(65)【公表番号】特表2017-501018(P2017-501018A)
(43)【公表日】2017年1月12日
(86)【国際出願番号】SE2014051118
(87)【国際公開番号】WO2015060764
(87)【国際公開日】20150430
【審査請求日】2017年8月30日
(31)【優先権主張番号】1351272-8
(32)【優先日】2013年10月25日
(33)【優先権主張国】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】516118578
【氏名又は名称】スピンケム・アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ビストレーム、エミル
(72)【発明者】
【氏名】シェルマン、ヘンリク
(72)【発明者】
【氏名】イルガム、クヌート
【審査官】 河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−354531(JP,A)
【文献】 特開平02−203780(JP,A)
【文献】 米国特許第04172877(US,A)
【文献】 実開昭59−070734(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0110508(US,A1)
【文献】 米国特許第02658642(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 19/00 − 19/32
C12M 1/00 − 1/42
B01F 7/00 − 7/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの固体反応部材を用いて、流体媒体を生物学的または化学的に形質転換するか、あるいは流体媒体から物理的または化学的に捕捉するか、あるいは流体媒体に対して薬剤の脱離を行うリアクタであって、
前記リアクタは、第1の端部(250)、第2の端部(260)およびこれらの端部間に内壁(148)を有する円筒状の反応容器(120,230)と、前記反応容器内に取り付けられた形質転換装置(100)と、を具備し、
前記形質転換装置は、
基本的に円筒形状を有し、基本的に平坦な第1の面(104)と、基本的に平坦な第2の面(106)と、基本的に円形断面形状をもつ周壁(108)と、前記第1及び/又は第2の面の中央に近接して配置され、流体媒体を受け入れるために適合され、かつ浮遊する固体反応部材を最初に受けるために任意に適合された少なくとも1つの流体媒体入口(110)と、前記周壁に配置され、前記流体媒体は通すが前記固体反応部材は通さない少なくとも1つの流体媒体出口(112)と、前記流れ分配器の回転または振動を可能とするために前記第1の面に配置された駆動軸(114,226)と、前記固体反応部材が捕捉され、かつ前記形質転換が行われる少なくとも1つの閉じ込め部と、を有する流れ分配器(102,212)と、
前記形質転換装置を回転及び/又は揺動させる手段(116,214)と、を具備し、
前記反応容器の前記内壁(148)は、前記第1の端部(250)と前記第2の端部(260)との間の前記内壁に沿う2つの回転方向のいずれでも流体せん断応力を強化する手段(122,124,126,128,140,232)を有し、
前記流体せん断応力を強化する手段(122,124,126,128,140,232)は、前記内壁(148)内に少なくとも1つの中空構造物(124,126,128,140)を有し、該中空構造物は前記第1の端部(250)から前記第2の端部(260)のほうに延び出し、該中空構造物は開口端部および該開口端部間を通り抜ける流路を有し、これにより前記反応容器の上部と下部との間での流体媒体の通流を促進させることを特徴とするリアクタ。
【請求項2】
前記流体せん断応力を強化する手段(122,124,126,128,140,232)は、前記内壁(148)内において前記第1の端部(250)から前記第2の端部(260)のほうに延び出す少なくとも半楕円断面形状のグローブ(122)を有する請求項1に記載のリアクタ。
【請求項3】
前記流路は、矩形、三角形、楕円形または半楕円形の断面を有する請求項1に記載のリアクタ。
【請求項4】
2〜30個の前記流体せん断応力を強化する手段(122,124,126,128,140,232)を有する請求項1乃至3のいずれか1項に記載のリアクタ。
【請求項5】
少なくとも1つの固体反応部材を用いて、流体媒体を生物学的または化学的に形質転換するか、あるいは流体媒体から物理的または化学的に捕捉するか、あるいは流体媒体に対して薬剤の脱離を行うキットであって、
a)第1の端部(250)、第2の端部(260)およびこれらの端部間に内壁(148)を有する円筒状の反応容器(120,230)を有し、前記内壁(148)が、前記第1の端部(250)と前記第2の端部(260)との間の前記内壁に沿う2つの回転方向のいずれでも流体せん断応力を強化する手段(122,124,126,128,140,232)を有することと、
b)基本的に円筒形状を有し、基本的に平坦な第1の面(104)と、基本的に平坦な第2の面(106)と、基本的に円形断面形状をもつ周壁(108)と、前記第1及び/又は第2の面の中央に近接して配置され、流体媒体を受け入れるために適合され、かつ浮遊する固体反応部材を最初に受けるために任意に適合された少なくとも1つの流体媒体入口(110)と、前記周壁に配置され、前記流体媒体は通すが前記固体反応部材は通さない少なくとも1つの流体媒体出口(112)と、前記流れ分配器の回転または振動を可能とするために前記第1の面に配置された駆動軸(114,226)と、前記固体反応部材が捕捉され、かつ前記形質転換が行われる少なくとも1つの閉じ込め部(130)と、を具備する流れ分配器(102,212)を有し、
前記流体せん断応力を強化する手段(122,124,126,128,140,232)は、前記内壁(148)内に少なくとも1つの中空構造物(124,126,128,140)を有し、該中空構造物は前記第1の端部(250)から前記第2の端部(260)のほうに延び出し、該中空構造物は開口端部および該開口端部間を通り抜ける流路を有し、これにより前記反応容器の上部と下部との間での流体媒体の通流を促進させることを特徴とするキット。
【請求項6】
前記流体せん断応力を強化する手段(122,124,126,128,140,232)は、前記内壁(148)内において前記第1の端部(250)から前記第2の端部(260)のほうに延び出す少なくとも半楕円断面形状のグローブ(122)を有する請求項5に記載のキット。
【請求項7】
前記流路は、矩形、三角形、楕円形または半楕円形の断面を有する請求項5に記載のキット。
【請求項8】
2〜30個の前記流体せん断応力を強化する手段(122,124,126,128,140,232)を有する請求項5乃至7のいずれか1項に記載のキット。
【請求項9】
少なくとも1つの固体反応部材を用いて、流体媒体を生物学的または化学的に形質転換するか、あるいは流体媒体から物理的または化学的に捕捉するか、あるいは流体媒体に対して薬剤の脱離を行う請求項1乃至4のいずれか1項に係るリアクタを使用する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの固体反応部材により、流体媒体を生物学的または化学的に形質転換するか、あるいは流体媒体から物理的または化学的に捕捉するか、あるいは流体媒体に対して薬剤の脱離を行う新規なリアクタに関する。リアクタは特定の内部設計をもつ反応容器を有し、反応容器には形質転換器が動作可能に取り付けられている。本発明は、特定の内部設計および形質転換器をもつ反応容器を含む部品キットを提供する。最後に、本発明は、少なくとも1つの固体反応部材により流体媒体を生物学的または化学的に形質転換するか、あるいは流体媒体から物理的または化学的に捕捉するか、あるいは流体媒体に対して薬剤の脱離を行うためのリアクタ及び/又は部品キットの使用方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
化学とバイオテクノロジーとの異種プロセスは、反応物を搬送する流体媒質、または他の試薬、サンプル溶質、及び/又は固体部材と流体搬送試薬との相互作用処理のプロダクトに接触する固体部材(これらに限定されるものではないが、固定化された化学試薬、触媒、スカベンジャー、リアクションサポート、捕捉吸着剤、または酵素、細胞又はフラグメントのような固定化された生物学的材料)を包含する単位操作である。このような異種プロセスのほとんどは、流体相と固体相との間の必要な物質移動を成立させる流体媒体の対流に決定的に依存している。その結果、固体/流体異種システムは、連続通流モードでしばしば運転され、多くの場合、適切な設計を伴う従来の充填カラムは、反応媒体によって遷移するかまたは反応媒体が浸透する固体部材を包み込むための好ましいフォーマットである。しかし、多くのプロセスが連続プロセスに不向きである。これは、薬剤の添加及び/又は副産物または所望生産物の除去が必要である形質転換スキームにおいて、固体部材が充填されたカラムベッドに崩壊しやすい軟質かつ圧縮可能なゲルであるプロセスが該当する。または、そうでなければ、物理的または化学的な条件は、固体部材との処理の過程の間に変更しなければならない。そのような場合には回分式処理システムがしばしば好ましい。このような回分式の異種処理は、撹拌下の粒状材料のような流体媒体中に固体部材を直接的に懸濁させることにより行なうか、またはプロセス完了後に相を分離するために通常ろ過または沈降工程を呼び出してそれらを行なうプロセスのいずれかである。代替的に、流体媒体は、行なわれる形質転換のために必要な対流物質移動を達成するために、ポンプ及び/又はバルブ等を有する特別に設計されたフローシステムによる固体部材を含む充填リザーバーを通るバッチ反応器から循環させることができる。このような反応器は、しばしば非常に複雑であり、定期的にオンサイトで構築され、特定の目的に適合していなければならない。
【0003】
固相と液相との間の効率的な物質移動を確立する課題は、種々異なる方法で対処されてきた。いくつかの興味深い代替案がWO 2011/098570号公報に記載されている。これには、流体媒体を生物学的または化学的に形質転換するか、あるいは流体媒体から物理的または化学的に捕捉するか、あるいは流体媒体に対して薬剤の脱離を行うための装置に関して記載されている。これらの装置は、流体媒体入口と、流体媒体出口と、形質転換、捕捉、または薬剤の解除が行なわれる少なくとも1つの閉じ込め部と、流れ分配器を回転させ、揺動させ、振り揺すり、または振動させる手段とを具備する流れ分配器を有し、その作用によってそれが水没している流体媒体が流れ、流れ分配器内に含まれる固体部材のベッドを通してポンプ通液される。
【0004】
このポンプ作用の結果として、WO 2011/098570号公報に開示された装置の使用は対流物質移動の増加につながり、それに応じて異種形質転換のスキームの実施が最もよく改善される。これらの強化された対流物質移動特性の理由の1つは、装置底部に位置する大きな中央入口から流体を支配的に引き込むポンプ作用がもたらされた結果、中央入口を通って流入し、周縁出口を通って排出される流動力学と遠心力との組合せを利用する流れ分配器の性能である。
【0005】
しかし、固体反応部材による流体媒体の生物学的または化学的な形質転換、または流体媒体からの物理的または化学的な捕捉、または流体媒体に対する薬剤の脱離の実施をさらに改善するために、より増大した対流物質移動および固体試薬と流体反応媒体との間の増大した比率を提供できる装置の必要性は依然として存在する。円筒反応器内でWO 2011/098570号公報に記載の流れ分配器の効率的な利用を妨げる要因は、流れ分配器のなかに、除去することが困難であるガスの吸引を伴うソリッドボディ回転およびプラグホール渦巻きの形成である。ソリッドボディ回転と渦形成の問題を解決する従来の方法は、標準インペラ撹拌バッチ反応器(図1)用として、バッフル10のセット(H.A.ヤコブセン、「化学反応器モデリング:多相反応性フロー」、シュプリンガー・フェアラーク:ベルリン/ハイデルベルグ、2008; pp.679-684)を容器に取り付けることにより、反応器内の回転流を邪魔して乱す。通常は数個(一般的には4個)が実装されている垂直流遮断エレメントは、非撹拌流体ポケットの形成を回避するために、反応器の内壁からいくらか離れたところにある。しかし、図1から明らかなように、従来のバッフルセットを含めることは反応器のトータル流体量の実質的な増加をもたらす。それは固体反応部材と液体相との間の高い流量比の利用の妨げとなるので、このような過剰量は意図された形質転換の反応速度論的にしばしば有害である。液相中の反応物質の等価帯電量については、ほとんどの場合、濃度が低下するにしたがい、反応速度にマイナスの影響がある。従来のバッフルは、小規模の実験室反応器内での実施であるためさらに実用的ではない。
【発明の概要】
【0006】
同時に流体媒体の体積を減少させることにより、従来技術と比較して、反応速度を向上させながら、異種形質転換方式の対流物質移動の大幅な増加をもたらす反応装置を製造することが可能であることが判明した。それに応じて、さらに流体媒体は、このような方式によって処理されているため、そのようなスキームにより、流体媒体を生物学的または化学的に形質転換するか、あるいは流体媒体から物理的または化学的に捕捉するか、あるいは流体媒体に対して薬剤の脱離の実施をさらに改善する。
【0007】
第1の態様において、本発明は、少なくとも1つの固体反応部材により流体媒体を生物学的または化学的に形質転換するか、あるいは流体媒体から物理的または化学的に捕捉するか、あるいは流体媒体に対して薬剤の脱離を行うためのリアクタを提供する。前記リアクタは、第1の端部、第2の端部およびこれらの端部間に内壁を有する円筒状の反応容器と、前記反応容器内に取り付けられた形質転換装置と、を具備する。
【0008】
前記形質転換装置は、基本的に円筒形状を有し、基本的に平坦な第1の面と、基本的に平坦な第2の面と、基本的に円形断面形状をもつ周壁と、前記第1及び/又は第2の面の中央に近接して配置され、流体媒体を受け入れるために適合され、かつ浮遊する固体反応部材を最初に受けるために任意に適合された少なくとも1つの流体媒体入口と、前記周壁に配置され、前記流体媒体は通すが前記固体反応部材は通さない少なくとも1つの流体媒体出口と、前記流れ分配器の回転または振動を可能とするために前記第1の面に配置された駆動軸と、前記固体反応部材が捕捉され、かつ前記形質転換が行われる少なくとも1つの閉じ込め部と、を有する流れ分配器と、
前記形質転換装置を回転及び/又は揺動させる手段と、を具備し、
前記反応容器の前記内壁は、前記第1の端部と前記第2の端部との間の前記内壁に沿う2つの回転方向のいずれでも流体せん断応力を強化する手段を有することを特徴とする。
【0009】
第2の態様において、本発明は、固体反応部材により流体媒体を生物学的または化学的に形質転換するか、あるいは流体媒体から物理的または化学的に捕捉するか、あるいは流体媒体に対して薬剤の脱離を行うためのキットを提供する。
【0010】
前記キットは、a)第1の端部、第2の端部、およびこれらの部分の間の内壁を有する円筒反応容器を有し、前記内壁が、前記第1の端部と前記第2の端部との間の前記内壁に沿う2つの回転方向のいずれにも流体せん断応力を強化する手段を有することと、
b)基本的に円筒形状を有し、基本的に平坦な第1の面と、基本的に平坦な第2の面と、基本的に円形断面形状をもつ周壁と、前記第1及び/又は第2の面の中央に近接して配置され、流体媒体を受け入れるために適合され、かつ浮遊する固体反応部材を最初に受けるために任意に適合された少なくとも1つの流体媒体入口と、前記周壁に配置され、前記流体媒体は通すが前記固体反応部材は通さない少なくとも1つの流体媒体出口と、前記流れ分配器の回転または振動を可能とするために前記第1の面に配置された駆動軸と、前記固体反応部材が捕捉され、かつ前記形質転換が行われる少なくとも1つの閉じ込め部(コンファインメント)と、を具備する流れ分配器を有することを特徴とする。
【0011】
第3の態様において、本発明は、固体反応部材により流体媒体を生物学的または化学的に形質転換するか、あるいは流体媒体から物理的または化学的に捕捉するか、あるいは流体媒体に対して薬剤の脱離を行う第1の態様によるリアクタの使用方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
ここに同封図面を参照して本発明をさらに開示する。
図1図1は、固体反応部材により流体媒体を生物学的または化学的に形質転換し、または物理的または化学的に捕捉し、または薬剤の脱離を行う従来の反応セットアップを側方から見て示す内部透視模式図である。
図2図2は、実施形態の形質転換装置を側方から見て示す斜視図である。
図3図3は、流れ分配器の実施形態の第2の面を示す概略平面図である。
図4図4は、図2の実施形態の形質転換装置の流れ分配器の第1の面を示す概略平面図である。
図5図5は、図2の実施形態の形質転換装置のA−B線に沿って下方から見て示す水平断面図である。
図6図6は、内壁に形質転換装置および半楕円形状の溝を有するリアクタを示す水平断面図である。
図7図7は、内壁に形質転換装置およびチューブを有するリアクタを示す水平断面図である。
図8図8は、内壁に形質転換装置および矩形流路を有するリアクタを示す水平断面図である。
図9図9は、内壁に形質転換装置および半楕円形流路を有するリアクタを示す水平断面図である。
図10図10は、内壁に形質転換装置および三角形流路を有するリアクタを示す水平断面図である。
図11図11は、第1及び第2の端部間の内壁に、形質転換装置ばかりでなく、内壁に沿って2つの方向のどちら向きでも流体せん断応力を強める手段を有するリアクタを示す内部透視模式図である。
図12図12は、本願発明の実験部品の実験セットアップしたものの写真を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
第1の態様において、本発明は、少なくとも1つの固体反応部材により流体媒体を生物学的または化学的に形質転換するか、あるいは流体媒体から物理的または化学的に捕捉するか、あるいは流体媒体に対して薬剤の脱離を行うためのリアクタを提供するものであり、前記リアクタは、第1の端部、第2の端部およびこれらの部分の間の内壁を有する円筒反応容器と、前記反応容器内に設けられた形質転換装置と、を具備し、
前記形質転換装置は、基本的に円筒形状を有し、基本的に平坦な第1の面と、基本的に平坦な第2の面と、基本的に円形断面形状をもつ周壁と、前記第1及び/又は第2の面の中央に近接して配置され、流体媒体を受け入れるために適合され、かつ浮遊する固体反応部材を最初に受けるために任意に適合された少なくとも1つの流体媒体入口と、前記周壁に配置され、前記流体媒体は通すが前記固体反応部材は通さない少なくとも1つの流体媒体出口と、前記流れ分配器の回転または振動を可能とするために前記第1の面に配置された駆動軸と、前記固体反応部材が捕捉され、かつ前記形質転換が行われる少なくとも1つの閉じ込め部と、を有する流れ分配器と、
前記形質転換装置を回転及び/又は揺動させる手段と、を具備し、
前記反応容器の前記内壁は、前記第1の端部と前記第2の端部との間の前記内壁に沿う2つの回転方向のいずれでも流体せん断応力を強化する手段を有する。
【0014】
形質転換装置は、WO 2011/098570号公報に記載された流れ分配器および回転及び/又は振動装置を有する。
【0015】
本開示中において、「流体せん断応力を強化する手段」の用語は、流れ分配器の回転運動により反応容器の内壁に近接する流体媒体流のなかに揺動を引き起こすことができるいくらかの異なるタイプの構造に関するものである。そのような手段は、一般に少量であり、本発明に係るリアクタ内のその手段のトータル容量は一般に反応容器のトータル容量の10%より小さい。いくらかの実施形態では、そのような手段のトータル容量は、それぞれ反応容器のトータル容量の8%、6%、5%、4%、3%、または2%より小さい。図6に半楕円形状の溝の例を示し、図7図8図9及び図10に半円筒、円筒、矩形、および三角形の各形状の例を示すが、本発明はこれらの特定の例示のみに限定されるものではなく、代わりに多くの他の形状が考えられ、中空溝の有る無し、数および高さの変更、本発明および当業者に係る作業装置の基準を満たす乱流を誘導するためにせん断層の十分な揺動を引き起こすものであり、これらの開示により与えられる例に基づいて本発明の範囲内において揺動する形状配置を変更しうるものである。
【0016】
好ましい実施形態では、流体せん断応力を強める手段は、前記第1の端部から前記第2の端部への向きに延び出す内壁のなかの少なくとも1つの半楕円形の溝である。一実施形態では、反応容器の内壁は、複数の半楕円形状の溝を有する。一実施形態では、前記溝は互いに隣接して配置されている。一実施形態では、前記溝の深さは、その溝の幅の10〜50%である。
【0017】
好ましい実施形態では、流体せん断応力を強める手段は、内壁のなかの少なくとも1つの中空構造であり、該中空構造は前記第1の端部から前記第2の端部への向きに延び出し、該中空構造は上方と下方の端部に開口部を有し、その間が通々に通じている流路であり、これにより流れ分配器の上方と下方との間での流体媒体の連絡通流が促進されるようになっている。
【0018】
好ましい実施形態では、流路は、三角形、楕円、または半楕円の断面形状を有する。中空構造の内部流路の断面は、そのなかに流体媒体を通流させるために十分に大きい。一実施形態では、中空構造の内断面は少なくとも0.25cm2の内部面積を有する。
【0019】
好ましい実施形態では、リアクタは、2〜30個の流体せん断応力を強める手段を有する。他の実施形態においては、リアクタは、3〜30個、4〜30個、5〜30個、6〜30個、または8〜25個の前記手段を有する。
【0020】
第2の態様において、本発明は、固体反応部材により流体媒体を生物学的または化学的に形質転換するか、あるいは流体媒体から物理的または化学的に捕捉するか、あるいは流体媒体に対して薬剤の脱離を行うためのキットを提供するものであり、該キットは、a)第1の端部、第2の端部、およびこれらの部分の間の内壁を有する円筒反応容器を有し、前記内壁が、前記第1の端部と前記第2の端部との間の前記内壁に沿う2つの回転方向のいずれにも流体せん断応力を強化する手段を有することと、
b)基本的に円筒形状を有し、基本的に平坦な第1の面と、基本的に平坦な第2の面と、基本的に円形断面形状をもつ周壁と、前記第1及び/又は第2の面の中央に近接して配置され、流体媒体を受け入れるために適合され、かつ浮遊する固体反応部材を最初に受けるために任意に適合された少なくとも1つの流体媒体入口と、前記周壁に配置され、前記流体媒体は通すが前記固体反応部材は通さない少なくとも1つの流体媒体出口と、前記流れ分配器の回転または振動を可能とするために前記第1の面に配置された駆動軸と、前記固体反応部材が捕捉され、かつ前記形質転換が行われる少なくとも1つの閉じ込め部(コンファインメント)と、を具備する流れ分配器を有する。
【0021】
一実施形態において、流体せん断応力を強める手段は、第1の端部から第2の端部へ向かって延び出す内壁のなかの少なくとも1つの半楕円形状の溝である。
【0022】
さらなる実施形態において、流体せん断応力を強める手段は、前記内壁のなかの少なくとも1つの中空構造であり、該中空構造は第1の端部から第2の端部へ向けて延び出し、該中空構造は開口端部およびその間が通々に通じる流路を有し、これにより反応容器の上部および下部の流体媒体の流動が促進される。
【0023】
さらなる実施形態において、流路は、矩形、楕円形、または半楕円形の断面を有する。
【0024】
第3の態様において、本発明は、固体反応部材により流体媒体を生物学的または化学的に形質転換するか、あるいは流体媒体から物理的または化学的に捕捉するか、あるいは流体媒体に対して薬剤の脱離を行う第1の態様によるリアクタの使用方法を提供する。
【0025】
では次に同封図面を見ると、図1に固体反応部材により流体媒体を生物学的または化学的に形質転換させるか、または流体媒体から物理的または化学的に捕捉するか、または流体媒体にたいして薬剤の脱離を行う技術に係る従来の反応セットアップ10の側面を示す。セットアップ10は、閉止手段20付き蓋18上に取り付けたストッパ16付きの2つの入口開口14を有するばかりでなく、閉止手段24を取り付けた出口開口22を有する反応容器12を備えている。反応容器12は、駆動軸28を介して電動、空気圧または油圧で駆動されるモータ30により駆動力を付与される撹拌手段26を有する。また、反応容器12は、2つのリング状継手部材38,40によって接続された数個の膨大バッフル32,34,36を有する。このような従来のセットアップは本願の背景技術の欄で上述した問題に関連している。
【0026】
図2に本発明の一部である実施形態の形質転換装置100を側方から見て示す。形質転換装置は、流れ分配器102および回転及び/又は振動手段116を有する。回転及び/又は振動手段116は、駆動軸114により流れ分配器102に接続された一般的に電動、空気圧または油圧で駆動されるモータである。流れ分配器102は、第1の面104、第2の面106および周壁108を有する。流れ分配器102は基本的に円筒形状を有し、周壁108は基本的に円形断面を有する。第1の面104または第2の面106または必要に応じてこれら第1及び第2の面の両方に流体媒体入口110がある。また、周壁108には流体媒体出口112がある。駆動軸114は第1の面104の上部中央に取り付けられている。
【0027】
図3に流れ分配器102の第1の面104を示す。必要に応じてか又は強制的に、図4に示すように第2の面106に流体入口が存在しない場合は、少なくとも1つの流体媒体入口110を駆動軸114の取り付け箇所に近接する第1の面104上に設けるか、または別の言葉に置き換えれば少なくとも1つの流体媒体入口110を第2の面104の回転の意図された軸線に隣接して第1の面104上に設ける。
【0028】
図4に流れ分配器102の第2の面106を示す。必要に応じてか又は強制的に、図3に示す第1の面104に流体入口が存在しない場合は、少なくとも1つの流体媒体入口110を第2の面106の回転の意図された軸線に隣接して第2の面106上に設ける。
【0029】
図5に、図2のAからBまでのラジアル面に沿う実施形態の流れ分配器102の第1の面からの断面を示す。図示した実施形態では、分離壁132により互いに分離される複数の閉じ込め部130(コンファインメント)が存在する。これらの閉じ込め部130は、互いに完全にまたは部分的に分離されていてもよい。図示の実施形態では、全ての閉じ込め部130に共通する中央流体媒体入口110が存在する。完全に分離した閉じ込め部を有する他の実施形態では、各閉じ込め部のために少なくとも1つの流体媒体入口がある。すでに図2に示したように、各閉じ込め部130から少なくとも1つの出口112が存在するような方法で周壁108内に配置された流体媒体出口112がある。また、図5に示す実施形態では、周壁108の内面に沿う周縁保持メッシュ134がある。周縁保持メッシュ134は、流体反応媒体を透過させ得るが、固体反応部材を透過させない。図示の実施形態では、必要に応じて流体反応媒体は透過させ得るが固体反応部材のほうは透過させないインナー保持メッシュ138をメッシュ保持具136に懸架させるようにしてもよい。固体反応部材が最初から流れ分配器の閉じ込め部130に配置されている状況では、流体媒体入口110を通って逃げる固体反応部材の流出を防止するためにインナー保持メッシュ138を備え付けることができる。しかし、固体反応部材を添加して流体媒体中に懸濁させると、流れ分配器102を回転/振動させたときに、その吸引力と捕捉により流れ分配器102内に固体反応部材が効果的に引き込まれるので、インナー保持メッシュを含ませるべきではない。
【0030】
図6に、リアクタ内壁に形質転換装置の流れ分配器102および半楕円形の溝122を有するリアクタ120の横断面を示す。距離R-Rは2つの対向する溝(または谷)の最深点間の距離に言及するものであり、また距離V-Vは2つの対向する頂部間の距離に言及するものである。通常、距離R-Rは距離V-Vの70〜95%である。通常、溝の数は10〜25個である。
【0031】
図7に、リアクタ120の周壁148の内側に適合したチューブ124のセットを有するリアクタ120内に入れられた形質転換装置の流れ分配器102の横断面を示す。従来のバッフルセットと同様に、これらのチューブ124は、リアクタ120の内側で回転する流れ分配器102に関連して揺動(摂動)および強化された流体せん断応力を発生させる。そうでなければ、流れ分配器102の周囲出口から出てくる流体により生成される放射状の流れカーテンにより効果的に区切られているこれらの液量の混合を強化するために、流れ分配器102の上方の液量と下方の液量との間に流路を追加して提供する。
【0032】
図8に、リアクタ120の周壁148の内側に適合した半楕円チューブ128のセットを有するリアクタ120内に入れられた形質添加装置の流れ分配器102の水平断面を開示する。流路128の両端は開口しており、流路128は少なくとも流れ分配器102の全高さに沿って延び出している。従来のバッフルのセットと同様に、これらの流路126は、リアクタ120の内部で回転する流れ分配器102に関連して揺動(摂動)および強化された流体せん断応力を引き起こさせる。そうでなければ、流れ分配器102の周囲出口から出てくる流体により生成される放射状の流れカーテンにより効果的に区切られているこれらの液量の混合を強化するために、流れ分配器102の上方の液量と下方の液量との間に流路を追加して提供する。
【0033】
図9に、リアクタ120の周壁148の内側に適合した半楕円チューブ128のセットを有するリアクタ120内に入れられた形質添加装置の流れ分配器102の水平断面を示す。従来のバッフルのセットと同様に、これらの流路128は、リアクタ120の内部で回転する流れ分配器102に関連して揺動(摂動)および強化された流体せん断応力を引き起こさせる。そうでなければ、流れ分配器102の周囲出口から出てくる流体により生成される放射状の流れカーテンにより効果的に区切られているこれらの液量の混合を強化するために、流れ分配器102の上方の液量と下方の液量との間に流路を追加的に提供する。
【0034】
図10に、リアクタ120の周壁148の内側に適合した三角形流路140のセットを有するリアクタ120内に入れられた形質添加装置の流れ分配器102の水平断面を示す。これらの三角形流路140は、リアクタ120の内部で回転する流れ分配器102に関連して揺動(摂動)および強化された流体せん断応力を引き起こさせる。そうでなければ、流れ分配器102の周囲出口から出てくる流体により生成される放射状の流れカーテンにより効果的に区切られているこれらの液量の混合を強化するために、流れ分配器102の上方の液量と下方の液量との間に流路を追加的に提供する。
【0035】
図11に、第1の端部250および第2の端部260を有する本発明のリアクタ230の側面図を示す。リアクタ230は、流れ分配器212を含む形質転換装置、電動、空気圧または油圧で駆動されるモータ214、閉鎖手段および駆動軸226付きの蓋228、ストッパ236付きの入口開口部234、をさらに有し、同様に、図6図7図8図9図10に示した原理に従って構築された前記第1及び第2の端部間の前記内壁に沿う2方向のいずれの向きにも流体せん断応力を強化する多数の手段232を有する。また、リアクタ230は、溶液をろ過することなく、形質転換の完了後に、リアクタの液体内容物を空にするために使用することができる手段244を備えている。流れ分配器212に固体部材で捕捉された滲入液は、リアクタ内を空にする工程中において流れ分配器212の回転動作を継続するという簡単な操作をするだけでよく、遠心力で液を振り切ることによりリアクタ内を容易に空にすることができる。
【0036】
図12に実験セクションに用いた反応セットアップを示し、そのセクションでさらに説明する。
【0037】
[実験セクション]
以下の種々の例において本発明をさらに記述説明するが、これらはあくまでも目的を例示するために提供されるものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0038】
[例1]
本発明の流れ分配器は、基本的に図2図3図4図5に従って構築され、外径45mmおよび高さ30mmを有し、電気オーバーヘッド撹拌と電子制御された回転速度とを組合せて実験に用いた。ソリッドボディ回転および渦形成を低減するあらゆるバッフル手段を用いることなく、内径60mmの標準250mlガラスビーカーを反応容器として用いた。容器のなかに流れ分配器を置き、150mlの水で容器内を満たした。必要に応じて任意にインナー保持メッシュと周辺保持メッシュとの間のスペースに27mlの水洗浄活性炭(12/40メッシュ)を予め充填した。この段階で、0.435mlの1%ジナトリウム6-ヒドロキシ-5-((2-メトキシ-5-メチル-4-スルホフェニル)アゾ)-2-ナフタレンスルホン酸、アルラレッドC.I.16035として知られるレッドフードスタッフ染料およびE129に水を加えた。その直後に流れ分配器を500RPMで回転するように設定し、溶液が完全に無色になるまで脱色実験を続けた。図12Aの写真から明らかなように、よく発達した渦の形成により強いソリッドボディ回転が達成された。溶液の完全脱色に要した時間は510秒であった。
【0039】
[例2]
例2では例1と同様のセットアップおよび水量を用いた。本例2と上記例1との違いは、従来のビーカーを図6に示す18個の放射状の起伏(アンデュレーション)のある本発明の反応容器(外径60mm)に代えた点である。反応容器は、図6の表記に従い、山から山までの(R-R)直径が49.5mmであり、谷から谷までの(V-V)直径が54.3mmであった。図12Bの写真から明らかなように、基本的にソリッドボディ回転が見られず、また付随する渦が形成されなかった。溶液の完全脱色に要した時間は、500RPMの回転で360秒であった。本例2では上記例1に比べて質量移動が実質的に増加したことを確認した。
【0040】
[例3]
例3では例1と同様のセットアップを用いた。本例3と上記例1との違いは、本発明の流れ分配器とバッフル無しのビーカーとを組合せたものに60mlの水を用いた点のみである。図12Cの写真から明らかなように、基本的に流れ分配器の上面全体にわたって拡がるよく発達した渦の形成に付随する強いソリッドボディ回転が見られた。溶液の完全脱色に要した時間は、500RPMの回転で225秒であった。
【0041】
[例4]
例4では例3と同様のセットアップを用いた。本例4と上記例3との違いは、本発明の流れ分配器および反応容器を用いた点である。図12Dの写真から明らかなように、ごく限られたソリッドボディ回転が観察され、ほとんど渦が形成されなかった。溶液の完全脱色に要した時間は、500RPMの回転で195秒であった。本発明の反応容器は、渦形成の実質的な全体の予防と、例3と比べて質量移動がわずかに増加したこととを達成した。
【0042】
[例5]
例5では例1と同様のセットアップを用いた。本例5と上記例1との違いは、本発明の流れ分配器をバッフル無しの内径77mmの400mlビーカーと組み合わせた点である。図12Eの写真から明らかなように、流れ分配器の上部入口に下降して延び出す強い渦が形成され、結果として望ましくない空気の吸引を生じた。溶液の完全脱色に要した時間は、500RPMの回転で600秒であった。
【0043】
[例6]
例6では例5と同様のセットアップを用いた。本例6と上記例5との違いは、従来技術に従いポリ(テトラフルオロエチレン)で作製された従来の3つのバッフルが取り付けられた400mlビーカー(外径80mm)を用いた点である。図12Fの写真から明らかなように、渦が形成されず、水面の傾斜レベルはバッフル間の圧力上昇につながる従来のバッフルの作用を示した。溶液の完全脱色に要した時間は、500RPMの回転で420秒であった。従来のバッフルを取り付けたビーカーではバッフル無しのビーカーと比べて質量移動の増加につながることが認められた。
【0044】
[例7]
例7では例5と同様のセットアップを用いた。本例7と上記例5との違いは、ビーカーを図6に示す18個の放射状の起伏(アンデュレーション)のある本発明の反応容器(外径80mm)に代えた点である。反応容器は、図6の表記に従い、山から山までの(R-R)直径が69.6mmであり、谷から谷までの(V-V)直径が74.3mmであった。図12Gの写真から明らかなように、渦の形成を伴うソリッドボディ回転の傾向が見られなかった。溶液の完全脱色に要した時間は、500RPMの回転で270秒であった。例6で用いた従来のバッフル付きの結果と比べて本例7では質量移動が実質的に増加した。
【0045】
[例8]
例8では例5と同様のセットアップを用いた。本例8と上記例5との違いは、本発明の流れ分配器を直径65mmで高さ30mmとし、かつ0.645mlの1%(w/v)アルラレッドを添加した水溶液300mlに水量を増加した点である。図12Hの写真から明らかなように、流れ分配器の上部入口に下降して延び出す強い渦が形成され、結果として望ましくない空気の吸引を生じた。溶液の完全脱色に要した時間は、500RPMの回転で450秒であった。
【0046】
[例9]
例9では例8と同様のセットアップを用いた。本例9と上記例8との違いは、ビーカーを図6に示す18個の放射状の起伏(アンデュレーション)のある本発明の反応容器(外径80mm)に代えた点である。反応容器は、図6の表記に従い、山から山までの(R-R)直径が69.6mmであり、谷から谷までの(V-V)直径が74.3mmであった。図12Iの写真から明らかなように、渦の形成を伴うソリッドボディ回転の傾向が見られなかった。溶液の完全脱色に要した時間は、500RPMの回転で375秒であった。本例9では質量移動が実質的に増加することが判明した。
【0047】
本発明が上述の実施形態に限定されるものではないことを本発明技術分野の当業者は理解している。逆に、本発明の範囲内において多くの修正および変形が可能である。
【0048】
さらに、開示された実施形態への変形が理解され、図面、開示、および添付の請求項の検討から、請求された発明を実施する際に当業者によって行なうことができる。請求項において、単語「有する」は他の要素または工程を除外せず、また、不定冠詞“a”または“an”は複数を除外しない。特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組合せが有利に用いることができないことを示すものではない。
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]少なくとも1つの固体反応部材を用いて、流体媒体を生物学的または化学的に形質転換するか、あるいは流体媒体から物理的または化学的に捕捉するか、あるいは流体媒体に対して薬剤の脱離を行うリアクタであって、
前記リアクタは、第1の端部(250)、第2の端部(260)およびこれらの端部間に内壁(148)を有する円筒状の反応容器(120,230)と、前記反応容器内に取り付けられた形質転換装置(100)と、を具備し、
前記形質転換装置は、
基本的に円筒形状を有し、基本的に平坦な第1の面(104)と、基本的に平坦な第2の面(106)と、基本的に円形断面形状をもつ周壁(108)と、前記第1及び/又は第2の面の中央に近接して配置され、流体媒体を受け入れるために適合され、かつ浮遊する固体反応部材を最初に受けるために任意に適合された少なくとも1つの流体媒体入口(110)と、前記周壁に配置され、前記流体媒体は通すが前記固体反応部材は通さない少なくとも1つの流体媒体出口(112)と、前記流れ分配器の回転または振動を可能とするために前記第1の面に配置された駆動軸(114,226)と、前記固体反応部材が捕捉され、かつ前記形質転換が行われる少なくとも1つの閉じ込め部と、を有する流れ分配器(102,212)と、
前記形質転換装置を回転及び/又は揺動させる手段(116,214)と、を具備し、
前記反応容器の前記内壁(148)は、前記第1の端部(250)と前記第2の端部(260)との間の前記内壁に沿う2つの回転方向のいずれでも流体せん断応力を強化する手段(122,124,126,128,140,232)を有することを特徴とするリアクタ。
[2]前記流体せん断応力を強化する手段(122,124,126,128,140,232)は、前記内壁(148)内において前記第1の端部(250)から前記第2の端部(260)のほうに延び出す少なくとも半楕円断面形状のグローブ(122)を有する[1]に記載のリアクタ。
[3]前記流体せん断応力を強化する手段(122,124,126,128,140,232)は、前記内壁(148)内に少なくとも1つの中空構造物(124,126,128,140)を有し、該中空構造物は前記第1の端部(250)から前記第2の端部(260)のほうに延び出し、該中空構造物は開口端部および該開口端部間を通り抜ける流路を有し、これにより前記反応容器の上部と下部との間での流体媒体の通流を促進させる[1]に記載のリアクタ。
[4]前記流路は、矩形、三角形、楕円形または半楕円形の断面を有する[3]に記載のリアクタ。
[5]2〜30個の前記流体せん断応力を強化する手段(122,124,126,128,140,232)を有する[1]乃至[4]のいずれか1に記載のリアクタ。
[6]少なくとも1つの固体反応部材を用いて、流体媒体を生物学的または化学的に形質転換するか、あるいは流体媒体から物理的または化学的に捕捉するか、あるいは流体媒体に対して薬剤の脱離を行うキットであって、
a)第1の端部(250)、第2の端部(260)およびこれらの端部間に内壁(148)を有する円筒状の反応容器(120,230)を有し、前記内壁(148)が、前記第1の端部(250)と前記第2の端部(260)との間の前記内壁に沿う2つの回転方向のいずれでも流体せん断応力を強化する手段(122,124,126,128,140,232)を有することと、
b)基本的に円筒形状を有し、基本的に平坦な第1の面(104)と、基本的に平坦な第2の面(106)と、基本的に円形断面形状をもつ周壁(108)と、前記第1及び/又は第2の面の中央に近接して配置され、流体媒体を受け入れるために適合され、かつ浮遊する固体反応部材を最初に受けるために任意に適合された少なくとも1つの流体媒体入口(110)と、前記周壁に配置され、前記流体媒体は通すが前記固体反応部材は通さない少なくとも1つの流体媒体出口(112)と、前記流れ分配器の回転または振動を可能とするために前記第1の面に配置された駆動軸(114,226)と、前記固体反応部材が捕捉され、かつ前記形質転換が行われる少なくとも1つの閉じ込め部(130)と、を具備する流れ分配器(102,212)を有することを特徴とするキット。
[7]前記流体せん断応力を強化する手段(122,124,126,128,140,232)は、前記内壁(148)内において前記第1の端部(250)から前記第2の端部(260)のほうに延び出す少なくとも半楕円断面形状のグローブ(122)を有する[6]に記載のキット。
[8]前記流体せん断応力を強化する手段(122,124,126,128,140,232)は前記内壁(148)内に少なくとも1つの中空構造物(124,126,128,140)を有し、該中空構造物は前記第1の端部(250)から前記第2の端部(260)のほうに延び出し、該中空構造物は開口端部および該開口端部間を通り抜ける流路を有し、これにより前記反応容器の上部と下部との間での流体媒体の通流を促進させる[6]に記載のキット。
[9]前記流路は、矩形、三角形、楕円形または半楕円形の断面を有する[8]に記載のキット。
[10]2〜30個の前記流体せん断応力を強化する手段(122,124,126,128,140,232)を有する[6]乃至[9]のいずれか1に記載のキット。
[11]少なくとも1つの固体反応部材を用いて、流体媒体を生物学的または化学的に形質転換するか、あるいは流体媒体から物理的または化学的に捕捉するか、あるいは流体媒体に対して薬剤の脱離を行う[1]乃至[5]のいずれか1に係るリアクタを使用する方法。
【符号の説明】
【0049】
12…反応容器、14…入口開口部、16…ストッパ、18…蓋、20…閉鎖手段、22…出口開口部、24…閉鎖手段、26…撹拌手段、28…駆動軸、32,34,36…バッフル、38,40…連結部材、
100…形質転換装置、102…流れ分配器、104…第1の面、106…第2の面、108…周壁、110…流体媒体入口、112…流体媒体出口、120…リアクタ、122…グローブ(木立)、124…チューブ、126…流路(チャネル)、
130…閉じ込め部、132…分離壁、134…周縁保持メッシュ、136…メッシュ保持具、138…インナー保持メッシュ、140…流路(チャネル)、148…周壁、
212…流れ分配器、214…モータ、226…駆動軸、228…蓋、230…リアクタ、232…分離壁、234…入口開口部、236…ストッパ、244…出口手段、250…第1の端部、260…第2の端部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12