(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
軌条車両は、敷設された軌道に沿って運行される車両の総称であり、鉄道車両、モノレール車両、新交通システム車両、路面電車等を意味する。
また、ここに開示する実施例は、金属製の芯材とこの芯材の上下両面に備えられる複合材料から構成される枕梁と、台枠を構成する側梁および中梁にこの枕梁をリベットまたはボルト等の機械的締結手段によって備える構体に関するものである。
以下に、軌条車両の代表として鉄道車両を例に挙げて、本発明による一実施例を、図面を参照して説明する。
【0014】
なお、以下の説明に供する鉄道車両に関係する各方向を、鉄道車両の長手方向(レール方向)100と、鉄道車両の幅方向(枕木方向)110と、長手方向100および幅方向110に交差する鉄道車両の高さ方向120と定義する。以下、単に長手方向100、幅方向110、高さ方向120と記す。
【0015】
図1は、鉄道車両の側面図である。鉄道車両は、鉄道車両構体(以下、構体1と記す)と、台車5と、電機品や内装品等から構成される。構体1は、床面をなす台枠10(
図2参照)と、台枠10の幅方向の両端部に立設される側構体20と、台枠10の長手方向の両端部に立設される妻構体30と、側構体20の上端部と妻構体30の上端部とに支持される屋根構体40からなる6面体である。側構体20は、採光や換気のための窓部22や、乗客等の乗降に供される側出入り口21などを備える。
【0016】
構体1の長手方向100の両端部は、台車5によって軌道上を移動可能に支持されている。構体1の床面をなす台枠の下面であって台車5が備えられる部位には、台枠10の幅方向に沿って板状の枕梁14が備えられる。構体1は、枕梁14の下方に備えられる台車5の台車枠6の長手方向100の中央部に配設される一対の空気ばね8(一方のみ図示)に弾性支持される。空気ばね8は、軌道不整等に起因する台車5の振動等が構体1に伝播することを抑制したり、乗客数の増減に合わせて高さ方向120に変位する構体1の床面高さを一定に維持したりする機能を担う。
【0017】
図2は、鉄道車両構体を下方から見た斜視図である。構体1の床面をなす台枠10は、乗客や床下に備えられる機器の重量を支えるとともに、前後に連結される車両からの圧縮荷重や引張荷重が作用するため高い剛性を備える。台枠10は幅方向110の両端部に側構体20から延伸する態様で側梁11を備えており、長手方向100の両端部に端梁13を備える。さらに、端梁13の幅方向110の中央部から台枠10の長手方向100に沿って延伸する態様で、2本の中梁12が備えられる。中梁12は、車両と車両とを連結する連結器(図示なし)を備える。
【0018】
端梁13から台枠10の長手方向100の中央寄りに所定の距離だけ離れた位置には、台枠10の幅方向110に沿って一方の側梁11から他方の側梁11を接続する板状の枕梁14が設けられる。枕梁14は、その幅方向110の両端部の締結部82a(
図3参照)において、側梁11にボルト等の機械的締結手段で接続されるとともに、その幅方向110の中央寄りの締結部82b(
図3参照)において、2本の中梁12にボルト等の機械的締結手段によって締結される。
【0019】
図3は枕梁の平面図であり、
図4は
図3に示す枕梁を構成するパネル51の平面図である。枕梁14は板状の部品であり、E−E断面を示す仮想線に対して対称な形状である。枕梁14の幅方向110の両端部は、側梁11に締結される、両端部の締結部82aとなっている。また、枕梁14の幅方向110の中央部には、中梁12に締結される、中央寄りの締結部82bが長手方向100に沿う方向に突出している。
【0020】
本実施例における枕梁14は、金属製の芯材50とこの芯材50に沿って備えられる複合材とから構成されている。すなわち、金属製の芯材50の表面と複合材の表面との少なくとも一部分が略平行して存在している。芯材50は、金属製のパネル51と、パネル51の中央部に接続される金属製の中心ピン取り付け座75(
図5参照)と、から構成される。
このような構成を取ることにより、本実施例の枕梁は、金属部品のみで構成している従来の枕梁に比較して、軽量化を促進することができる。
【0021】
さらに、好ましくは、枕梁14は、金属製の芯材50(
図6参照)と、この芯材50を高さ方向120の上面に備えられる第1複合材33と、下面に備えられる第2複合材35から構成される。
このような構成を取ることにより、本実施例の枕梁は、枕梁14に曲げ荷重が作用する場合であっても、引張り強度および圧縮強度に優れる上記複合材が荷重を主に負担するので、軽量化を促進するとともに高い曲げ強度および剛性を備えることができる。
【0022】
さらに、好ましくは、枕梁14は、芯材50の上面を覆う第1複合材33と芯材50の下面を覆う第2複合材35で、芯材50のほぼ全面を包んで密封されている(
図6参照)。つまり、複合材は、芯材50を内部に備える筒状体であることとなる。
【0023】
このような構成を取ることにより、本実施例の枕梁は、高い強度と剛性と金属部品の耐久性(耐候性)を備えることができるとともにライフサイクルコストを低減できる軌条車両を提供することができる。
また、枕梁14は、金属製の芯材50と第1複合材33および第2複合材35からなるハイブリッド構造のため、経年劣化等によって複合材の機械的強度が損なわれる場合であっても、金属性の芯材50が残存強度を確保することができるため、高い信頼性を備えることができる。
【0024】
なお、図示はしないが、第1複合材33および第2複合材35に代えて、繊維を筒状に編んだ筒状部の開口部から芯材50を挿入した後この開口部を閉じて、芯材50を内蔵する筒状体を樹脂で含浸硬化することによって枕梁14を構成してもよい。
【0025】
図4は、枕梁14を構成るパネル51の平面図である。パネル51は、例えば、アルミ合金製であり、中央部に幅方向110に長辺を配置された長方形状の第1部材53と、第1部材53の長手方向100の両端縁に沿って備えられる第2部材55と、第1部材53および第2部材55の幅方向110の両端縁に長手方向100に沿って備えられる第3部材57と、第2部材55及び第3部材57に接続する第4部材58からなる。なお、個別に準備した第2部材55および第3部材57に代えて、第2部材55と第3部材57とを集約した一体の部材を準備しても良い。
【0026】
パネル51を構成する第1部材53の幅方向中央部には、中心ピン取り付け座75(
図5参照)を備えるための開口部61が備えられている。また、構体1を弾性支持するために、台車5の上面に備えられる空気ばねが当接される部位には、開口部60が備えられる。
【0027】
図5は、
図4に示す芯材に備えられる中心ピン取り付け座75の平面図である。中心ピン取り付け座75は、例えば、アルミ合金製を削り出して製造される長手方向100の寸法が幅方向110の寸法より大きい長方形の板状部材である。中心ピン取り付け座75の周縁には長手方向に沿うフランジ75bと幅方向110に沿うフランジ75cが備えられる。
【0028】
中心ピン取り付け座75は、その中央部に開口部75eを有しており、開口部75eの周囲には、高さ方向120に沿う軸を備える複数の筒部75dが削り出されている。中心ピン取り付け座75は、筒部75dに挿入されるボルトによって枕梁14に締結される(
図9参照)。
【0029】
図6は
図3のA−Aにおける枕梁の断面図である。
図6における50は、芯材50の範囲を示している。この断面において芯材50は、第1部材53及び第2部材55からなるパネル51、このパネル51に備えられる中心ピン取り付け座75などから構成される。そして、
図6における75は、中心ピン取り付け座75の範囲を示している。また、
図6における61は、開口部を示している。
【0030】
また、パネル51と中心ピン取り付け座75などからなる芯材50は、高さ方向120に分割されたシェル構造の第1複合材33および第2複合材35で全面密封されている。
【0031】
図7は
図3のB−Bにおける枕梁14の断面図である。枕梁14は、この断面において芯材50を構成している、第1部材53及び第2部材55が、高さ方向120に分割されたシェル構造の第1複合材33および第2複合材35によって全面密封されている。
【0032】
つまり、枕梁14は、芯として配置される金属性部材(芯材50)を上下方向(高さ方向120)の両面から複合材(第1複合材33、第2複合材35)で挟み込んだハイブリッド構造であり、芯材50を介して高さ方向120に2枚の複合材(33、35)が隔置された形態であることを示している。
また、第1複合材33と、第2複合材35と、芯材50の一部である第1部材53又は第2部材55には、高さ方向120に貫通する筒体59が形成されている。
【0033】
図8は
図3のC−Cにおける断面図である。この断面においても、枕梁14は、高さ方向120に分割されたシェル構造の第1複合材33および第2複合材35で組み立てられた芯材50を全面密封することによって構成される。
【0034】
図9は
図3のD−Dにおける枕梁の断面図である。
図9における75は中心ピン取り付け座75の範囲を示している。中心ピン取り付け座75は、第1部材53の下方の面板53cの開口部にフランジ75bが嵌合している。そして、筒部75dの部分を除いて、他の断面図の場合と同様に、シェル構造の第1複合材33および第2複合材35によって全面密封されている。
【0035】
図10は、
図7に示す枕梁のB−B断面のF部の拡大図である。
図10の断面構造は、芯材50(パネル51、中心ピン取り付け座75など)の表面に絶縁材36(ガラス繊維層、または、GFRP)を有しており、この絶縁層の外側を複合材(第1複合材33、第2複合材35)で密封した構造を示している。
【0036】
この構成によって、アルミ合金製の芯材50の電蝕による劣化を抑制することができるので、信頼性の高い枕梁14を備える軌条車両を提供することができる。
【0037】
次に、芯材50を覆う、第1複合材33および第2複合材35について説明する。第1複合材33および第2複合材35は、強化繊維に炭素繊維を選定し、マトリックス樹脂にエポキシ樹脂を選定した炭素繊維強化プラスティック(以下、CFRPと記す)で構成されている。なお、強化繊維は炭素繊維に限定されず、強化繊維にガラス繊維やアラミド繊維などを選定してもよい。同様に、マトリックス樹脂はエポキシ樹脂に限定されず、マトリックス樹脂に不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、フェノール樹脂などを選定してもよい。
【0038】
また、CFRPの弾性率とアルミ合金製の芯材のそれとを同等するため、CFRPに異方性を与えず疑似等方積層構成としてもよいし、荷重条件(荷重方向)に応じた強度をCFRPに付与するために異方性を与える積層構成としてもよい。
【0039】
以下に、枕梁14の製造工程を説明する。まず、芯材50をなすパネル51を製造する。パネル51を構成する第1部材53、第2部材55、第3部材57、第4部材58を準備する。
【0040】
第1部材53および第2部材55は、対向する2枚の面板53a(55a)及び面板53c(55c)とこれら面板を接続するリブ53b(55b)を有する中空押出形材であり、幅方向110に沿って押出成形される。パネル51は、第1部材53、第2部材55、第3部材57及び第4部材58の4点の部材を位置決めした後、接合線71、72、73に沿って、溶接(または摩擦撹拌接合)によって接合して製作される。
【0041】
続いて、後述する中心ピン取り付け座75が嵌合される部位を、パネル51に加工する。中心ピン取り付け座75の長方形状(長手方向100の寸法が幅方向110の寸法より大きい長方形状)に合わせて、第1部材53(パネル51)の中央部の下方の面板53cを取り除く。さらに、取り除かれた下方の面板に対向する上方の面板53aに、中心ピン取り付け座75に備えられる複数の筒部75dが嵌合する複数の孔80を加工する(
図3、
図4、
図9参照)。
【0042】
次に、アルミ合金製を削り出して中心ピン取り付け座75を製造する。長手方向100の寸法が幅方向110の寸法より大きい長方形に整形して、その中央部に開口部75eを加工する。中心ピン取り付け座75の全周縁には長手方向100に沿うフランジ75bと幅方向110に沿うフランジ75cと、開口部75eの周囲には、中心ピン15が締結される複数の筒部75dが高さ方向120に軸方向を向ける態様で削り出す。
【0043】
続いて、中心ピン取り付け座75をパネル51に接続して芯材50を製作する。まず、中心ピン取り付け座75を、パネル51(第1部材53)の加工した部位に嵌め込む。中心ピン取り付け座75の周縁に備えられるフランジ75b(75c)が第1部材53の面板53aに当接するまで嵌め込むとともに、中心ピン取り付け座75の複数の筒部75dを、パネル51(第1部材53)に加工した複数の孔80に嵌め込む。この時、第1部材53と第2部材55の接合線71に、中心ピン取り付け座75のフランジ75cが重なることを確認した後、第1部材53と中心ピン取り付け座75を溶接する。このように取り付けることにより、中心ピン取り付け座75をパネル51に強固に固着することが可能となる。
【0044】
次に、予め炭素繊維にエポキシ樹脂をなじませるプリプレグ工程を経てオートクレープ(加圧加熱)成形された第1複合材33および第2複合材35と、芯材50を、線膨張係数の差による残留応力が生じないように、常温硬化型接着剤で接着して組み立てる。この時、アルミ合金製の芯材50(パネル51、中心ピン取り付け座75など)に、接する複合材(第1複合材33、第2複合材35)の表面に電気的に絶縁して電食を抑制する薄い絶縁材36(ガラス繊維層、または、GFRP、
図10参照)を備える。さらに、強固な接着面を得るために、数百mmの間隔でビス(小ネジ)等を追設して接着時の面圧を確保しても良い。
【0045】
なお、複合材の製造方法の一例として、プリプレグ工程の後にオートクレープ成形する製造方法を示したが、この製造法に代えて、プレス成型や、RTM(Resin Transfer Molding)法や、RIM(Reaction Injection Molding)法、あるいは、プルトルージョン法など連続成形法により成形した各部材を、適当な寸法に切断した後、これら各部材を接合して組み立てても良い。さらに、成形部を減圧すると同時に注入するマトリックス樹脂の拡散材を配置する一体成型法(SCRIMP法)等を採用してもよい。
【0046】
組み立て完了後に、筒体59(ブッシュ、
図7参照)が挿入される孔81を機械加工した後、第1複合材33と第2複合材35と芯材50とを高さ方向120に貫通するとともにこれらを上下方向に拘束する筒体59を固定して枕梁14が完成する。
【0047】
図7に示されるように、筒体59の軸方向寸法t1は、第1複合材33の上面と第2複合材35の下面との間の寸法より若干大きく設定されている。筒体59の上端部は第1複合材33の上面より上方(台枠10の方向)に突出するとともに、筒体59の下端部は第2複合材35の下面(軌道側の面)より下方に突出する態様で枕梁14に固定される。
【0048】
また、図示はしないが、側梁11および中梁12の筒体59(枕梁14)が当接する部位に、筒体59の当接面の形状に合わせた凹部を加工し、側梁11および中梁12に備えられる凹部に筒体59の当接部を嵌め込こんだ状態で、枕梁14を側梁11および中梁12に機械締結してもよい。
なお、凹部は、全ての筒体59が当接する側梁11および中梁12に備えても良いし、選択した筒体59が当接する部位にのみ、凹部を備えても良い。
【0049】
このような、第1複合材33の上面と第2複合材35の面上から突出する態様の筒体59の形状に合わせて、側梁11および中梁12に凹部を備えると、台車5から枕梁14に牽引力やブレーキ力が作用しても、枕梁14が側梁11および中梁12に対して滑ることなく締結を維持することができる。さらに、凹部を備えることによって機械的締結部および筒体59の本数(個数)を少なくでき、製作コストを削減できるとともに軽量化を促進することができる。
【0050】
枕梁14は、筒体59に挿入されるボルトによって、台枠10を構成する側梁11および中梁12に機械的に締結される。さらに、中心ピン15は、筒部75dに挿入されるボルトによって枕梁14に機械的に締結される。筒体59はボルトの締め付け力による座面圧力によって座屈しないために備えられる部品であり、必ずしもアルミ合金でなくても良く、高い座屈強度を備える鉄等であってもよい。
【0051】
また、筒体59を導電性の材料で構成すれば、大電圧に起因する電流(以下、サージ電流)が発生した場合に、電気機器の破損やリセットを抑制できる信頼性の高い軌条車両を提供することができる。
【0052】
例えば、集電装置(パンタグラフ)が架線に接触したり、架線から離線したりする時や、集電装置と主変圧器とを接続する回路に備えられる真空遮断器(VCB)を入り切りした場合などに、瞬間的に非常に大きい電圧が発生するとともに、この大電圧に起因してサージ電流が発生する場合がある。
このサージ電流は、軌条車両に搭載される主変換装置、補助電源装置、空調装置などの電気機器を破壊したり、これら電気機器のリセット動作をさせたりする原因となることがある。このため、サージ電流から電気機器を保護するために、構体1と台車5とを電気的に接続して、台車5に備えられる輪軸7(車軸の両端部に車輪を備えたもの)を介して軌道(線路)に接地する接地回路が備えられる。
【0053】
つまり、複合材で覆われた枕梁の高さ方向120の上面及び下面を貫通する導電性または良導電性の部材を設けることによって、構体1(台枠10をなす中梁12や側梁11)から枕梁14を経て台車5に至る接地回路(
図11参照)を構成することができる。このため、金属等に比較して導電性の低い複合材で枕梁14が覆われていても、サージ電流による電気機器の破損やリセットを抑制できる信頼性の高い軌条車両を提供することができる。
【0054】
図11は台枠を構成する枕梁のE−E断面図(
図3参照)である。枕梁14は構体1の台枠を構成する側梁11および中梁12にボルト等の機械的締結手段で接続される。これらの締結に供される枕梁14に備えられる筒体59(ブッシュ)は、構体1の長手方向100に沿って2列あるいは1列の配列で備えられている。
【0055】
枕梁14の下面(台車5が備えられる側の面)の幅方向110の中央部には、台車5の旋回中心となる中心ピン15が備えられる。中心ピン15と台車は牽引装置で連結されており、牽引装置を介して台車5から構体1へ牽引力やブレーキ力が伝達される。また、枕梁14の長手方向100の中央部にその幅方向110に沿うとともに中心ピン15を挟む態様で、一組の空気ばね8が備えられる。
【0056】
台枠10の下面と枕梁14の上面の間には、十分な空間が存在しており、台枠10の下面に、複数の配線や配管を束ねた配管(配線)モジュール9を構体1の長手方向100に沿ってその端部から中央部に向かって枕梁14と干渉することなく敷設される。また、上記の空間に空気タンクを併設しても良い。
【0057】
以上説明したとおり、本実施例の構成を取ることにより、本実施例の枕梁14は、金属部品のみで構成しないので、枕梁14の軽量化を促進することができる。さらに、枕梁14は、板状の金属製の芯材50を上下方向(高さ方向)の両面に第1複合材33および第2複合材35を備えるので、枕梁14に曲げ荷重が作用する場合であっても、引張り強度および圧縮強度に優れる上記複合材が荷重を主に負担するので、軽量化を促進するとともに高い曲げ強度および剛性を備えることができる。
【0058】
さらに、本実施例の枕梁14は、板状の金属製の芯材50を上下方向(高さ方向)の両面から第1複合材33および第2複合材35で全面密封する構成により、高い強度と剛性と金属部品の耐久性(耐候性)を備えることができるとともにライフサイクルコストを低減できる軌条車両を提供することができる。
【0059】
さらに、本実施例の枕梁14は、金属製の芯材50と第1複合材33および第2複合材35からなるハイブリッド構造のため、経年劣化等によって複合材の機械的強度が損なわれる場合であっても、金属性の芯材50が残存強度を確保することができるため、高い信頼性を備えることができる。
【0060】
さらに、側梁11および中梁12に凹部を備え、この凹部に枕梁14をなす筒体59を嵌め込んだ状態で枕梁14と側梁11および中梁12とを機械的締結する構成によって、台車5から枕梁14に牽引力やブレーキ力が作用しても、枕梁14が側梁11および中梁12に対して滑ることなく締結を維持することができる。さらに、凹部を備えることによって機械的締結部および筒体59の本数(個数)を少なくでき、製作コストを削減できるとともに軽量を促進することができる。
【0061】
さらに、本実施例の枕梁14は金属性の芯材と複合材を接着材で組み立てられているため高い減衰率を備える。このため、台車5から牽引装置および中心ピン15を介して枕梁14に振動が入力された時、枕梁14の内部を振動が伝達する過程で振動が減衰するため、台枠10に振動が伝達されにくい。したがって、台車5から構体1が加振されることによる車内騒音や振動を低減することができるため、快適な軌条車両を提供することができる。
【0062】
さらに、本実施例の変形例として、台枠10を構成する枕梁14の上面(台枠10の下面に対向する面)に、加速度計90を備え、運用に供される状態の枕梁14の振動レベルを監視する状態監視システムを搭載してもよい。枕梁14を構成する第1(2)複合材33(35)の劣化が進行したり、枕梁14を構成する芯材50と複合材との接着面が剥がれたりした時、加速度計90によって監視される枕梁14の振動レベルや固有振動数が変化する。この振動レベル等の変化を監視することによって、枕梁14の健全性を常時監視することができるので、信頼性の高い軌条車両を提供することができる。
【0063】
さらに、枕梁14は、アルミ合金製の芯材50と複合材(第1複合材33、第2複合材35)の境界面に、絶縁材36となるガラス繊維層(
図10参照)を備える。この構成によって、アルミ合金製の芯材50の電蝕による劣化を抑制することができるので、信頼性の高い枕梁14を備える軌条車両を提供することができる。
【0064】
また、枕梁14は導電性のある筒体59を備えるため、この筒体59を経由して、構体1(台枠10をなす中梁12や側梁11)から枕梁14を経て台車5に至る接地回路(
図11参照)を容易に構成することができる。このため、サージ電流による電気機器の破損やリセットを抑制できる信頼性の高い軌条車両を提供することができる。
【0065】
以上の構成によって、信頼性が高くライフサイクルエネルギーを低減できる軽量の枕梁と、この枕梁を備える軌条車両構体を提供することができる。
【0066】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を変わりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、実施例の構成の一部を他の構成に置き換えることが可能であり、また、実施例の構成に他の構成を加えることも可能である。また、実施例の構成の一部について、構成の追加・削除・置換をすることが可能である。