【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成30年2月24日に、下記アドレスのウェブサイト(http://www.jspe.or.jp/wp/wp−content/uploads/jspe_meeting/2018/18−03−program.pdf)にて公開
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
レーザー光を照射して三次元計測を行う計測機により被計測物の位置、形状またはその他の属性を計測するために、前記被計測物の周囲において前記計測機を配置する計測機配置位置を決定する計測機配置位置決定装置であって、
カメラでその位置または方向を変えながら前記被計測物およびその周囲を撮影することにより得られた複数の画像を用いて生成され、複数の面分の集合により表現された前記被計測物およびその周囲の三次元モデルであるベースモデルを取得するベースモデル取得部と、
前記ベースモデルにおける前記被計測物のうち前記計測機で計測する計測部分を指定する計測部分指定部と、
前記ベースモデルにおける前記被計測物が置かれた床面において、前記計測機および前記計測機を支持する支持具を置くことができる複数の部分を認識し、当該認識した各部分に前記計測機および前記支持具を置いたときの前記計測機の計測基準位置を候補位置として決定する候補位置決定部と、
前記ベースモデルに含まれる複数の面分のうち、前記候補位置から見たときに可視であり、かつ前記計測部分指定部により指定された前記計測部分に対応する面分を選択面分として選択する面分選択部と、
前記候補位置決定部により決定された複数の前記候補位置のうち、計測される前記選択面分の個数が最大となる1つ以上の候補位置を数理計画法を用いて算出し、当該算出した候補位置を前記計測機配置位置として決定する配置位置決定部とを備え、
前記面分選択部は、前記候補位置から見た前記ベースモデルの展開画像を生成し、前記ベースモデルに含まれる複数の面分のうち、前記展開画像に描画されている面分を、前記候補位置から見たときに可視である面分として特定することを特徴とする計測機配置位置決定装置。
前記面分選択部は、前記ベースモデルに含まれる複数の面分に当該面分ごとに固有の色情報を割り当てた後に、前記候補位置から見た前記ベースモデルの展開画像を生成し、前記ベースモデルに含まれる複数の面分のうち、前記展開画像の各画素が有する色情報が割り当てられている面分を、前記候補位置から見て可視である面分として選択することを特徴とする請求項1に記載の計測機配置位置決定装置。
前記配置位置決定部は、算出される候補位置の個数が、設定された上限値以下であり、かつ前記候補位置決定部により決定された複数の前記候補位置のうち、1つ以上の候補位置から計測される前記選択面分の個数が最大となる最適な候補位置を線形整数最適化問題の厳密解法を用いて算出し、当該算出した最適な候補位置を前記計測機配置位置として決定することを特徴とする請求項1または2に記載の計測機配置位置決定装置。
前記配置位置決定部は、算出される候補位置の個数が、設定された上限値以下であり、かつ前記候補位置決定部により決定された複数の前記候補位置のうち、1つ以上の候補位置から計測される前記選択面分の個数が最大となる最適な候補位置を分枝限定法を用いて算出し、当該算出した最適な候補位置を前記計測機配置位置として決定することを特徴とする請求項1または2に記載の計測機配置位置決定装置。
前記高レベル計測条件は、前記計測機と前記ベースモデルに含まれる面分との間の距離が第1の距離範囲であることを含み、前記低レベル計測条件は、前記計測機と前記ベースモデルに含まれる面分との間の距離が第2の距離範囲であることを含み、前記第2の距離範囲は前記第1の距離範囲よりも大きいことを特徴とする請求項5に記載の計測機配置位置決定装置。
レーザー光を照射して三次元計測を行う計測機により被計測物の位置、形状またはその他の属性を計測するために、前記被計測物の周囲において前記計測機を配置する計測機配置位置を決定する計測機配置位置決定方法であって、
カメラでその位置または方向を変えながら前記被計測物およびその周囲を撮影することにより得られた複数の画像を用いて生成され、複数の面分の集合により表現された前記被計測物およびその周囲の三次元モデルであるベースモデルを取得するベースモデル取得工程と、
前記ベースモデルにおける前記被計測物のうち前記計測機で計測する計測部分を指定する計測部分指定工程と、
前記ベースモデルにおける前記被計測物が置かれた床面において、前記計測機および前記計測機を支持する支持具を置くことができる複数の部分を認識し、当該認識した各部分に前記計測機および前記支持具を置いたときの前記計測機の計測基準位置を候補位置として決定する候補位置決定工程と、
前記ベースモデルに含まれる複数の面分のうち、前記候補位置から見たときに可視であり、かつ前記計測部分指定工程において指定された前記計測部分に対応する面分を選択面分として選択する面分選択工程と、
前記候補位置決定工程において決定された複数の前記候補位置のうち、計測される前記選択面分の個数が最大となる1つ以上の候補位置を数理計画法を用いて算出し、当該算出した候補位置を前記計測機配置位置として決定する配置位置決定工程とを備え、
前記面分選択工程では、前記候補位置から見た前記ベースモデルの展開画像を生成し、前記ベースモデルに含まれる複数の面分のうち、前記展開画像に描画されている面分を、前記候補位置から見たときに可視である面分として特定することを特徴とする計測機配置位置決定方法。
レーザー光を照射して三次元計測を行う計測機により被計測物の位置、形状またはその他の属性を計測するために、前記被計測物の周囲において前記計測機を配置する計測機配置位置を決定する計測機配置位置決定方法をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記計測機配置位置決定方法は、
カメラでその位置または方向を変えながら前記被計測物およびその周囲を撮影することにより得られた複数の画像を用いて生成され、複数の面分の集合により表現された前記被計測物およびその周囲の三次元モデルであるベースモデルを取得するベースモデル取得工程と、
前記ベースモデルにおける前記被計測物のうち前記計測機で計測する計測部分を指定する計測部分指定工程と、
前記ベースモデルにおける前記被計測物が置かれた床面において、前記計測機および前記計測機を支持する支持具を置くことができる複数の部分を認識し、当該認識した各部分に前記計測機および前記支持具を置いたときの前記計測機の計測基準位置を候補位置として決定する候補位置決定工程と、
前記ベースモデルに含まれる複数の面分のうち、前記候補位置から見たときに可視であり、かつ前記計測部分指定工程において指定された前記計測部分に対応する面分を選択面分として選択する面分選択工程と、
前記候補位置決定工程において決定された複数の前記候補位置のうち、計測される前記選択面分の個数が最大となる1つ以上の候補位置を数理計画法を用いて算出し、当該算出した候補位置を前記計測機配置位置として決定する配置位置決定工程とを備え、
前記面分選択工程では、前記候補位置から見た前記ベースモデルの展開画像を生成し、前記ベースモデルに含まれる複数の面分のうち、前記展開画像に描画されている面分を、前記候補位置から見たときに可視である面分として特定することを特徴とするプログラム。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(計測機配置位置決定装置)
図1は本発明の実施形態の計測機配置位置決定装置1の構成を示している。
図1において、計測機配置位置決定装置1は、計測機により被計測物の計測を行うに当たり、被計測物の周囲において計測機を配置する位置(計測機配置位置)を決定する装置である。
【0022】
計測機は地上型の三次元レーザースキャナである。この計測機は、レーザー光を照射することにより、三次元空間における被計測物の各部の位置を示す点群データを生成することができ、これにより、被計測物の位置、形状およびその他の属性を計測することができる。また、計測機は、レーザー光の照射方向を水平面内において例えば180度変えることができ、かつ鉛直面内において例えば360度変えることができる。また、被計測物の計測の際、計測機は、例えば三脚等の支持具を用いて地面または床面上に置かれる。
【0023】
計測機配置位置決定装置1は、演算処理部2、記憶部3、操作部4、表示部5およびデータ入出力部6を備えている。計測機配置位置決定装置1は、コンピュータを計測機配置位置決定装置として機能させるコンピュータプログラムを、例えばパーソナルコンピュータ等のコンピュータに読み込ませて実行させることにより実現することができる。この場合、演算処理部2は、コンピュータに設けられたCPU(中央演算処理装置)およびGPU(グラフィックス・プロセッシング・ユニット)である。また、記憶部3は、コンピュータに設けられた記憶装置である。また、操作部4は、コンピュータに接続されたキーボードおよびポインティングデバイスであり、表示部5は、コンピュータに接続されたディスプレイ装置である。また、データ入出力部6は、コンピュータに設けられたディスクドライブ装置、USB(ユニバーサル・シリアル・バス)メモリ等の外部記憶装置との間でデータの入出力を行うデータ入出力装置、またはコンピュータネットワークを介して他のコンピュータと通信を行う通信装置等である。
【0024】
また、演算処理部2は、ベースモデル読込部11、計測部分指定部12、ボクセルモデル生成部13、候補位置決定部14、面分選択部15および配置位置決定部16を備えている。演算処理部2におけるこれらの部分は、演算処理部2が上記コンピュータプログラムを実行することにより実現される。
【0025】
ベースモデル読込部11は、カメラ撮影およびSfMにより生成された被計測物およびその周囲の三次元モデル(以下、これを「ベースモデル」という。)を記憶部3に読み込む処理を行う。ベースモデルは、被計測物およびその周囲を面分の集合(メッシュ)として表現したものである。なお、ベースモデル読込部11はベースモデル取得部の具体例である。
【0026】
計測部分指定部12は、被計測物において計測すべき部分、および計測すべき部分の重要度を作業者による入力に従って指定する処理を行う。
【0027】
ボクセルモデル生成部13は、ベースモデルをボクセル(体積要素)に分割する。以下、ベースモデルをボクセルにより分割したものを「ボクセルモデル」という。
【0028】
候補位置決定部14は、ボクセルモデルに基づいて計測機配置位置の候補となる位置(以下、これを「候補位置」という。)を決定する処理を行う。
【0029】
面分選択部15は、ベースモデルに含まれる複数の面分のうち、各候補位置から見て可視であり、作業者が指定した計測部分に対応し、かつ後述の計測条件を充たす面分を選択する処理を行う。
【0030】
配置位置決定部16は、候補位置決定部14により決定された候補位置の中から、面分選択部15により選択された各面分を計測するのに最適な位置を計測機配置位置として決定する処理を行う。
【0031】
図2は、計測機配置位置を決定するための準備作業および計測機配置位置決定装置1における処理の流れを示している。以下、計測機配置位置を決定するための準備作業が開始されてから、計測機配置位置決定装置1により計測機配置位置が決定されるまでの作業および処理について説明する。
【0032】
また、以下の説明では、被計測物が、
図3および
図4に示すような空調設備である場合を例にあげる。
図3は空調設備を上方から見た図であり、
図4は
図3中の空調設備の一部を側方から見た図である。
図3に示すように、空調設備は、複数のボイラ21、オイルタンク22、熱交換器23、還水タンク24、ダクト25、複数の配管26、複数のバルブ27等を備えている。各ボイラ21は、
図4に示すように、設備室28の床面29上に設置されている。オイルタンク22、熱交換器23および還水タンク24も、各ボイラ21と同様に、設備室28の床面29上に設置されている。ダクト25は設備室28の天井近傍に配置されている。各配管26は主に設備室28の天井近傍または側壁近傍に配置されている。各バルブ27も主に設備室28の天井近傍または側壁近傍に配置されている。
【0033】
(撮影およびベースモデルの生成)
まず、
図2中のステップS1に示すように、計測機配置位置決定装置1を用いて計測機配置位置を決定する際の準備作業として、作業者は、空調設備およびその周囲をカメラで撮影し、撮影により得られた複数の二次元画像を用いて空調設備およびその周囲のベースモデルを生成する。
【0034】
すなわち、作業者は、例えばデジタルスチルカメラまたはデジタルビデオカメラを用いて空調設備およびその周囲を撮影する。作業者は、カメラの位置または方向を変えながら空調設備およびその周囲を撮影する。例えば、作業者は設備室28内のボイラ21や配管26、バルブ27だけでなく、各ボイラ21が設置された床面29等も含むように撮影する。撮影により、様々な位置および方向から見た空調設備およびその周囲の多数の二次元画像が得られる。
【0035】
さらに、作業者は、SfMソフトウェアを用い、これら二次元画像に基づいて、空調設備およびその周囲の三次元モデルであるベースモデルを生成する。
図5はベースモデルを模式的に示している。
図5に示すように、ベースモデルは、空調設備およびその周囲を三角形の面分51の集合(メッシュ)として表現したものである。ベースモデルのデータには、各面分51の頂点の位置、各面分51の色情報、並びにカメラ位置および方向(撮影位置および撮影方向)の情報等が含まれている。なお、ベースモデルのデータに含まれる各面分51の頂点の位置は、三次元空間の直交座標系の座標値として表現されている。なお、ベースモデルは、三次元レーザースキャナにより空調設備を計測することにより生成される三次元点群モデル(最終的な三次元モデル)と比較して形状再現度が低い、粗いデータである。
【0036】
(ベースモデルデータの読込)
次に、
図2中のステップS2に示すように、作業者は、空調設備およびその周囲のベースモデルのデータを計測機配置位置決定装置1に読み込ませる。すなわち、作業者は、コンピュータを操作し、コンピュータを計測機配置位置決定装置1として機能させるコンピュータプログラムを起動する。これにより、当該コンピュータは計測機配置位置決定装置1となる。作業者は、計測機配置位置決定装置1の操作部4を操作し、ベースモデルのデータを計測機配置位置決定装置1に読み込ませる。SfMソフトウェアで生成されたベースモデルのデータの記憶場所として、例えば、計測機配置位置決定装置1として動作している当該コンピュータの記憶装置、USBメモリ等の外部記憶装置、計測機配置位置決定装置1として動作している当該コンピュータとコンピュータネットワークを介して接続された他のコンピュータの記憶装置等が考えられる。計測機配置位置決定装置1のベースモデル読込部11は、作業者の操作に応じ、このような記憶場所からベースモデルのデータを読み出し、記憶部3に記憶する。
【0037】
また、ベースモデルのデータを記憶部3に記憶した後、ベースモデル読込部11は、ベースモデルに含まれる各面分に識別番号を付す。以下、この識別番号を「面分ID」という。面分IDは、ベースモデルに含まれる面分ごとに異なる値である。
【0038】
(計測部分および重要度の指定)
次に、
図2中のステップS3に示すように、作業者は、空調設備のうち計測機により計測すべき部分(計測部分)および計測部分の重要度を指定する。すなわち、作業者は、計測部分および重要度を指定する処理を行う旨の指示を計測機配置位置決定装置1に入力する。これに応じ、計測機配置位置決定装置1の計測部分指定部12は、空調設備およびその周囲のベースモデルを表示部5の画面に表示する。ここで、
図6は、表示部5の画面に表示されたベースモデルを示している。作業者は、表示部5の画面に表示されたベースモデルを見ながら、操作部4を操作し、計測部分および重要度を指定する。例えば、
図6において、太い実線で囲まれた部分は重要度が高レベルの計測部分である。また、太い二点鎖線で囲まれた部分は重要度が低レベルの計測部分である。計測部分指定部12は、ベースモデルにおいて作業者により指定された、重要度が高レベルの計測部分に対応する面分の面分ID、および重要度が低レベルの計測部分に対応する面分の面分IDを示す計測部分データを生成し、これを記憶部3に記憶する。
【0039】
なお、計測部分指定部12には、作業者が計測部分およびそれらの重要度を指定するためのユーザーインターフェイスに関する機能として、例えば、(1)表示部5の画面に表示するベースモデルの角度や大きさを変える機能、(2)表示部5の画面に表示されたベースモデルにおいて、作業者により指定された計測部分に重要度ごとにそれぞれ異なる色を付して表示する機能、(3)重要度が高レベルの計測部分、および重要度が低レベルの計測部分を、座標の数値を入力して指定する機能等を持たせてもよい。
【0040】
(計測機情報および計測条件情報の入力)
次に、
図2中のステップS4に示すように、作業者は、操作部4を操作し、計測機情報および計測条件情報を計測機配置位置決定装置1へ入力する。計測機情報とは、計測機を支持する支持具と計測機とを合わせた全体の長さ、幅および高さをそれぞれ示す数値、並びに計測機においてレーザー光が出射される位置(レーザー光出射位置)を示す数値である。計測機を支持する支持具は例えば三脚(雲台を含む)である。この場合、計測機を支持する支持具と計測機とを合わせた全体の長さ、幅および高さとは、計測機を三脚に取り付けたときの三脚と計測機とを合わせた全体の長さ、幅および高さを意味する。また、計測機においてレーザー光出射位置を示す数値は、例えば、計測機を三脚に取り付けたとき、計測機を水平面内において回転させる回転機構における回転軸と計測機の上面との交点に対するレーザー光出射位置のオフセット値であり、上記交点を基準にした三次元座標値である。例えば、上記交点の真下100mmの位置にレーザー光出射位置がある場合には、レーザー光出射位置を示す数値(x、y、z)は(0、0、−100)である。なお、レーザー光出射位置が計測基準位置の具体例である。
【0041】
また、計測条件情報とは、計測機による被計測物の計測条件を示す情報である。また、この計測条件とは、(1)レーザー光の入射角、および(2)計測機と被計測物との距離である。厳密には、レーザー光の入射角とは、計測機から照射されたレーザー光と、当該レーザー光が入射する被計測物の部分の法線とのなす角である。また、計測機と被計測物との距離とは、計測機と、計測機から照射されたレーザー光が入射する被計測物の部分との間の距離である。
【0042】
作業者は計測条件を重要度ごとに任意に設定することができる。作業者は、例えば、空調設備のうち重要度が高レベルの部分を計測するためのレーザー光の入射角、および計測機と被計測物との距離を「高レベル計測条件」として計測機配置位置決定装置1に入力して設定することができ、また、空調設備のうち重要度が低レベルの部分を計測するためのレーザー光の入射角、および計測機と被計測物との距離を「低レベル計測条件」として計測機配置位置決定装置1に入力して設定することができる。作業者により入力された計測機情報および計測条件は記憶部3に記憶される。
【0043】
以上のベースモデルデータの読込、計測部分および重要度の指定、並びに計測機情報および計測条件の入力は、作業者の入力操作に応じて計測機配置位置決定装置1が随時処理を行うといった対話的処理であったが、この後に続く、ボクセルモデル生成処理、候補位置決定処理、面分選択処理および配置位置決定処理は、計測機配置位置決定装置1が単独で自動的に行う処理である。例えば、作業者が、計測機配置位置を決定すべき旨の指示を計測機配置位置決定装置1へ入力すると、これに応じ、計測機配置位置決定装置1は、ボクセルモデル生成処理、候補位置決定処理、面分選択処理および配置位置決定処理を連続的に実行する。
【0044】
(ボクセルモデル生成処理)
次に、
図2中のステップS5に示すように、計測機配置位置決定装置1のボクセルモデル生成部14がボクセルモデル生成処理を行う。ボクセルモデル生成処理とは、ベースモデルをボクセルに分割して被計測物およびその周囲のボクセルモデルを生成する処理である。
【0045】
図7はボクセルモデル生成処理の内容を示している。
図8はボクセルモデルの概念を示している。
図9はカメラの位置およびカメラの視錐台を示している。
図10はボクセルモデルの生成方法を示している。
【0046】
図7に示すボクセルモデル生成処理において、ボクセルモデル生成部14は、まず、ベースモデル読込部11により読み込まれた、空調設備およびその周囲のベースモデルのAABB(Axis−Aligned Bouding Box)を形成する。続いて、ボクセルモデル生成部14は、
図8に示すように、ベースモデルのAABBを複数のボクセル31に分割する(ステップS11)。
【0047】
続いて、ボクセルモデル生成部14は、ベースモデルのAABBに含まれる複数のボクセル31において、占有ボクセルを指定する(ステップS12)。占有ボクセルとは、その内部に物体が存在するボクセルである。
【0048】
ボクセルモデル生成部14は、占有ボクセルの指定を例えば次のように行う。すなわち、ボクセルモデル生成部14は、ベースモデルのAABBに含まれる各ボクセル31につき、ボクセル31の内部に、ベースモデルの面分51の全部または一部が含まれているか否かを判断する。そして、ボクセル31の内部にベースモデルの面分51の全部または一部が含まれている場合、ボクセルモデル生成部14は、そのボクセル31を占有ボクセルとして指定する。
【0049】
続いて、ボクセルモデル生成部14は、ベースモデルのAABBに含まれる複数のボクセル31において、非占有ボクセルおよび不明ボクセルを指定する(ステップS13)。非占有ボクセルとは、その内部に物体が存在しないボクセルである。不明ボクセルとは、内部に物体が存在する否かが不明のボクセルである。
【0050】
ボクセルモデル生成部14は、非占有ボクセルおよび不明ボクセルの指定を例えば次のように行う。まず、ボクセルモデル生成部14は、
図9に示すように、ベースモデルのデータに基づいて撮影時のカメラの位置Qおよび方向の1つの組合せを認識し、次に、認識した位置Qおよび方向のカメラの視錐台33を認識する。次に、ボクセルモデル生成部14は、視錐台33内に含まれるAABB境界面上のボクセル31の重心を認識する。次に、ボクセルモデル生成部14は、
図10に示すように、認識したカメラの位置Qを始点Cとし、認識したAABB境界面上の1つのボクセル31の重心を終点Dとする光線Lを仮想的に設定し、この光線Lと交わる1つのボクセル31を認識する。次に、ボクセルモデル生成部14は、当該認識した1つのボクセル31と始点Cとの間に占有ボクセルが存在するか否かを判断し、当該認識した1つのボクセル31と始点Cとの間に占有ボクセルが存在する場合には、当該認識した1つのボクセル31を不明ボクセルとして指定する。一方、当該認識した1つのボクセル31と始点Cとの間に占有ボクセルが存在しない場合には、ボクセルモデル生成部14は、次に、当該認識した1つのボクセル31の内部に物体が存在するか否かを判断し、当該認識した1つのボクセル31の内部に物体が存在する場合には、当該認識した1つのボクセル31が占有ボクセルであることを確認し、一方、当該認識した1つのボクセル31の内部に物体が存在しない場合には、当該認識した1つのボクセル31を非占有ボクセルとして指定する。ボクセルモデル生成部14は、このような処理を、撮影時のカメラの位置および方向の複数の組合せにより認識される複数の視錐台のそれぞれにおいて、視錐台におけるカメラの位置Qを始点Cとし、視錐台に含まれるAABB境界面上のボクセルの重心を終点Dとする複数の光線Lのそれぞれと交わる複数のボクセルにつき繰り返し行う。
【0051】
以上のステップS11からステップS13までの処理により、空調設備およびその周辺のボクセルモデルが生成される。
【0052】
(候補位置決定処理)
次に、
図2中のステップS6に示すように、計測機配置位置決定装置1の候補位置決定部14が候補位置決定処理を行う。候補位置決定処理とは、ボクセルモデルに基づいて候補位置(計測機配置位置の候補)を決定する処理である。
図11は候補位置決定処理の内容を示している。
【0053】
図11に示す候補位置決定処理において、候補位置決定部14は、まず、ボクセルモデルにおいて床面ボクセルを認識する(ステップS21)。
図12は床面ボクセルの認識方法を示している。候補位置決定部14は床面ボクセルの認識を例えば次のように行う。すなわち、
図12に示すように、候補位置決定部14は、ボクセルモデルに含まれる占有ボクセル31Aのうちの1つを選択し、当該選択した占有ボクセル31Aに一部または全部が含まれる面分51の法線Nを認識し、当該認識した法線Nの向きが鉛直方向上向きか否かを判断する。そして、当該認識した法線Nの向きが鉛直方向上向きである場合には、当該選択した占有ボクセル31Aを床面ボクセルとして認識する。なお、上記選択した占有ボクセル31Aに一部または全部が含まれる面分51が複数ある場合には、それらの面分51の法線Nを合成したベクトルの向きが鉛直方向上向きか否かを判断する。そして、当該合成したベクトルの向きが鉛直方向上向きである場合には、当該選択した占有ボクセル31Aを床面ボクセルとして認識する。候補位置決定部14は、ボクセルモデルに含まれるすべての占有ボクセル31Aにつき、このような処理を行い、ボクセルモデルに含まれるすべての床面ボクセルを認識する。なお、占有ボクセル31Aに含まれる面分51の法線N、または占有ボクセル31Aに含まれる複数の面分51の法線Nの合成ベクトルが鉛直方向上向きか否かの判断は、ある程度緩やかに行ってもよく、すなわち、上記法線Nまたは上記合成ベクトルが略鉛直方向上向きか否かといった判断でもよい。
【0054】
続いて、候補位置決定部14は計測機モデル37を形成する(ステップS22)。
図13は計測機モデルを示している。計測機モデル37とは、
図13に示すように、計測機38と、計測機38を支持する支持具39とを合わせた全体が占める空間の形状および大きさに対応する円柱状のモデルである。例えば、計測機38を支持する支持具39が三脚である場合には、計測機モデル37は、計測機38を三脚に取り付けたときの計測機38と三脚とを合わせた全体が占める空間の形状および大きさに対応する円柱状のモデルである。計測機モデル37の半径Rは、計測機38と支持具39とを合わせた全体の長さおよび幅のうちいずれか大きい値の2分の1に等しい。また、計測機モデル37の高さHは、計測機38と支持具39とを合わせた全体の高さに等しい。また、計測機モデル37は、計測機38と支持具39とを合わせた全体が占める空間の範囲を示すのみであり、計測機モデル37の内部は空虚である。候補位置決定部14は、
図2中のステップS4において作業者により入力された計測機情報を記憶部3から読み出し、この計測機情報に基づいて計測機モデル37を形成する。
【0055】
さらに、候補位置決定部14は計測機モデル37におけるレーザー光出射位置EPを設定する(ステップS23)。具体的には、計測機情報には、レーザー光出射位置EPを示す数値が含まれている。レーザー光出射位置EPを示す数値とは、上述したように、計測機を水平面内において回転させる回転機構における回転軸と計測機の上面との交点に対するレーザー光出射位置のオフセット値(三次元座標値)である。候補位置決定部14は、上記回転軸と計測機の上面との交点を円柱状の計測機モデル37の上面の中心点CPに配置し、当該中心点CPを基準にしたときの、上記オフセット値が対応する位置を計測機モデル37におけるレーザー光出射位置EPとして設定する。例えば、計測機情報においてレーザー光出射位置EPを示す数値(x、y、x)が(0、0、−100)である場合、計測機モデル37におけるレーザー光出射位置EPは、計測機モデル37の上面の中心点CPからその真下へ100mm離れた位置に設定される。
【0056】
続いて、候補位置決定部14は、ボクセルモデルにおける複数の床面ボクセルのうち、未選択の1つの床面ボクセルを選択する(
図11中のステップS24)。なお、ステップS24が初めて実行される前の段階において、ステップS21で認識されたすべての床面ボクセルは未選択の状態になっている。
【0057】
続いて、候補位置決定部14は、選択した床面ボクセル上に計測機モデル37を置くことができるか否かを判断する(ステップS25)。候補位置決定部14はこの判断を例えば次のように行う。まず、候補位置決定部14は、計測機モデル37の下面の中心が、選択した床面ボクセル上に接するように計測機モデル37をボクセルモデル中に置く。次に、候補位置決定部14は、このようにボクセルモデル中に置かれた計測機モデル37の内部に、ボクセルモデルにおける占有ボクセルが存在するか否かを判断する。計測機モデル37の内部に、ボクセルモデルにおける占有ボクセルが存在しない場合には、候補位置決定部14は、選択した床面ボクセル上に計測機モデル37を置くことができると判断する。一方、計測機モデル37の内部に、ボクセルモデルにおける占有ボクセルが存在する場合には、候補位置決定部14は、選択した床面ボクセル上に計測機モデル37を置くことができないと判断する。
【0058】
選択した床面ボクセル上に計測機モデル37を置くことができる場合には(ステップS25:YES)、候補位置決定部14は、ボクセルモデルにおいて、現在選択されている床面ボクセル上に置かれた計測機モデル37のレーザー光出射位置EPを1つの候補位置として決定し、当該候補位置の座標値を記憶部3に記憶する(ステップS26)。一方、選択した床面ボクセル上に計測機モデル37を置くことができない場合には(ステップS25:NO)、ステップS26をスキップしてステップS27へ移行する。
【0059】
次に、候補位置決定部14は、ボクセルモデルにおけるすべての床面ボクセルにつきステップS24からステップS26までの処理が完了したか否かを判断する(ステップS27)。そして、ボクセルモデルにおけるすべての床面ボクセルにつきステップS24からステップS26までの処理が完了していない場合には(ステップS27:NO)、候補位置決定部14は、処理をステップS24に戻し、ボクセルモデルにおける未選択の他の床面ボクセルについてステップS24からステップS26までの処理を行う。一方、ボクセルモデルにおけるすべての床面ボクセルにつきステップS24からステップS26までの処理が完了した場合には(ステップS27:YES)、候補位置決定部14は配置位置候補指定処理を終える。
【0060】
以上の候補位置決定処理により複数の候補位置が決定される。ここで、
図14は、
図3に示す空調設備の設備室28を上方から見た状態を模式的に示している。
図14に示すように、例えば、設備室28においてハッチングを付した部分が、候補位置決定処理により決定された複数の候補位置が存在する部分である。
【0061】
(面分選択処理)
次に、
図2中のステップS7に示すように、計測機配置位置決定装置1の面分選択部15が面分選択処理を行う。面分選択処理とは、ベースモデルに含まれる複数の面分のうち、各候補位置から見て可視であり、重要度が高レベルまたは低レベルの計測部分に対応し、かつ後述の計測条件を充たす面分を選択する処理である。
図15は面分選択処理の内容を示している。
【0062】
図15に示す面分選択処理において、面分選択部15は、まず、ベースモデルに含まれるそれぞれの面分51につき、ベースモデル生成当初の色情報を消去し、これらの面分51に、面分51ごとに固有の色情報を新たに割り当てる(ステップS31)。色情報は、例えば、赤、緑および青の三原色の値を組み合せたRGB情報であり、赤、緑および青のそれぞれは、0から255までのいずれかの値を有する。各面分に割り当てられた色情報は面分51ごとに異なる。
【0063】
続いて、面分選択部15は、ベースモデルに含まれるそれぞれの面分51の面分IDと、これらの面分51に割り当てた色情報との対応関係を面分51ごとに示す色割当データを生成し、この色割当データを記憶部3に記憶する(ステップS32)。
【0064】
続いて、面分選択部15は、候補位置決定処理において決定された複数の候補位置の個数の行と、ベースモデルに含まれる複数の面分51の個数の列とからなる行列(二次元配列)を、空調設備における計測部分の重要度ごとに生成する(ステップS33)。本実施形態では、空調設備における計測部分の重要度として高レベルおよび低レベルを指定する場合を例にあげる。この場合、面分選択部15は上記行列を2つ生成する。以下、これらの行列を「面分行列A」、「面分行列B」といい、面分行列Aの成分をa
jfと表現し、面分行列Bの成分をb
jfと表現する。「j」は、候補位置決定処理において決定された各候補位置を指し、「f」は、ベースモデルに含まれる各面分51を指す。さらに、面分選択部15は、ステップS33において、面分行列Aの各成分a
jf、および面分行列Bの各成分b
jfをそれぞれ「0」に初期化する。
【0065】
続いて、面分選択部15は、候補位置決定処理において決定された複数の候補位置のうち、未選択の1つの候補位置を選択する(ステップS34)。以下、ステップS34で選択された1つの候補位置を「選択中の候補位置」という。
【0066】
続いて、面分選択部15は、ベースモデルの原点を、選択中の候補位置に設定し、当該選択中の候補位置を原点として、ベースモデルに含まれる各面分51の各頂点の座標値を、直交座標系の座標値(x、y、z)から極座標系の座標値(r、φ、θ)に変換する(ステップS35)。ここで、rは原点からの距離であり、φは方位角であり、θは仰角である。
【0067】
面分選択部15は、ベースモデルに含まれる各面分51の各頂点の極座標系の座標を、横軸がφ(0度≦φ<360度)であり、縦軸がθ(−90度≦φ≦90度)である平面上に配列することにより、ベースモデルを、選択中の候補位置から、方位角φが0度以上かつ360度未満であり、仰角θが−90度以上かつ90度以下である範囲内においてあらゆる方向から見たベースモデルの展開画像を生成する(ステップS36)。展開画像を生成する際に、面分選択部15は、選択中の候補位置からベースモデルを見たときに、ベースモデルにおいて背面となる部分を除去する処理(バックフェースカリング)、およびベースモデルにおいて手前側の部分に隠れて見えない奥側の部分を除去する処理(隠面消去)を行う。なお、このような展開画像の生成は、現在広く普及しているOpenGL等を利用して行うことができる。
【0068】
ここで、
図16は、ステップS36で生成されたベースモデルの展開画像の一例を示している。
図17は、展開画像の一部を、各画素52を識別することができる程に拡大して示している。
図16に示すように、ステップS36で生成されたベースモデルの展開画像は、ベースモデルに含まれるすべての面分51のうち、選択中の候補位置からベースモデルを見たときに可視となる面分(以下、これを「可視面分」といい、符号51Aを付す。)のみが平面上に描画された画像となる。また、
図17に示すように、ステップS31で各面分51に割り当てた色情報はこの展開画像においても反映される。すなわち、この展開画像において、選択中の候補位置からベースモデルを見たときの各可視面分51Aに対応する各画素52は、ステップS31で当該面分に割り当てた色情報(例えばRGB情報)を有している。
【0069】
続いて、面分選択部15は、生成された展開画像を走査し、展開画像における各画素52が有する色情報を読み取り、読み取った各画素52の色情報に対応する可視面分51Aを、ステップS32で生成した色割当データに基づいて特定する(ステップS37)。
【0070】
続いて、面分選択部15は、特定した可視面分51Aのうち、重要度が高レベルの計測部分に対応し、かつ高レベル計測条件を充たす可視面分を選択する(ステップS38)。具体的には、ステップS38において、面分選択部15は、まず、可視面分51Aのうち、重要度が高レベルの計測部分に対応する可視面分を選択する。上述したように、
図2中のステップS3において、計測部分指定部12が、ベースモデルにおいて作業者により指定された重要度が高レベルの計測部分に対応する面分の面分IDを示す計測部分データを生成し、これを記憶部3に記憶している。面分選択部15はこの計測部分データに基づいて、可視面分51Aの中から、作業者により指定された、重要度が高レベルの計測部分に対応する可視面分を選択する。
【0071】
次に、ステップS38において、面分選択部15は、重要度が高レベルの計測部分に対応する可視面分51Aの中から、高レベル計測条件を充たす可視面分51Aを選択する。高レベル計測条件とは、空調設備において重要度が高レベルの計測部分を計測機により計測するための計測条件である。空調設備のうち重要度が高い計測部分を計測機により高い精度(例えばプラスマイナス1mm〜5mm以内の精度)で計測するためには、計測機から照射されるレーザー光の計測部分への入射角が例えば−45度以上かつ45度以下であり、かつ計測機と計測部分との間の距離が0.3m以上かつ5m以下であることが好ましい。したがって、高レベル計測条件は、例えば、(1)計測機から照射されるレーザー光の計測部分への入射角が−45度以上かつ45度以下であり、かつ(2)計測機と計測部分との間の距離が0.3m以上かつ5m以下であることである。なお、この高レベル計測条件は、上述した通り、作業者が任意に設定することができる。
【0072】
ここで、
図18は、上記高レベル計測条件を充たす可視面分51Aを選択する方法の一例を示している。
図18に示すように、面分選択部15は、例えば、選択中の候補位置Pjおよび可視面分51Aの重心Gの双方を通る直線Eと可視面分51Aの法線Wとのなす角Kが−45度以上かつ45度以下であり、かつ選択中の候補位置Pjと可視面分51Aの重心Gとの間の距離Mが例えば0.3m以上かつ5m以下である場合に、当該可視面分51Aを、上記高レベル計測条件を充たす可視面分として選択する。
【0073】
続いて、面分選択部15は、面分行列Aにおいて、ステップS38で選択した可視面分51A、すなわち、重要度が高レベルの計測部分に対応し、かつ高レベル計測条件を充たす可視面分51Aに対応する成分a
jfを「1」に設定する(ステップS39)。
【0074】
続いて、面分選択部15は、ステップS37で特定した可視面分51Aのうち、重要度が低レベルの計測部分に対応し、かつ低レベル計測条件を充たす可視面分を選択する(ステップS40)。この処理は、計測条件の設定内容が異なることを除き、上述したステップS38の処理と同じである。
【0075】
低レベル計測条件とは、空調設備において重要度が低レベルの計測部分を計測機により計測するための計測条件である。空調設備において重要度が低い計測部分を計測機により、低精度(例えばプラスマイナス15mm〜20mm以内の精度)で計測するためには、計測機から照射されるレーザー光の計測部分への入射角が例えば−90度よりも大きくかつ90度未満であり、かつ計測機と計測部分との間の距離が0.3m以上かつ20m以下であることが好ましい。したがって、低レベル計測条件は、例えば、(1)計測機から照射されるレーザー光の計測部分への入射角が−90度よりも大きくかつ90度未満であり、かつ(2)計測機と計測部分との間の距離が0.3m以上かつ20m以下であることである。なお、この低レベル計測条件も、高レベル計測条件と同様に、作業者が任意に設定することができる。
【0076】
続いて、面分選択部15は、面分行列Bにおいて、ステップS40で選択した可視面分51A、すなわち、重要度が低レベルの計測部分に対応し、かつ低レベル計測条件を充たす可視面分51Aに対応する成分b
jfを「1」に設定する(ステップS41)。
【0077】
続いて、面分選択部15は、候補位置決定処理において決定されたすべての候補位置につき、ステップS34からステップS41までの処理が完了したか否かを判断する(ステップS42)。そして、候補位置決定処理において決定されたすべての候補位置につきステップS34からステップS41までの処理が完了していない場合には(ステップS42:NO)、面分選択部15は、処理をステップS34に戻し、未選択の他の候補位置についてステップS34からステップS41までの処理を行う。一方、候補位置決定処理において決定されたすべての候補位置につきステップS34からステップS41までの処理が完了した場合には(ステップS42:YES)、面分選択部15は面分選択処理を終える。
【0078】
以上の面分選択処理を終えた後の面分行列Aにおいて、「1」に設定された成分a
jfは、面分fが、候補位置jから見て可視であり、重要度が高レベルの計測部分に対応し、かつ計測機を候補位置jに配置した場合に高レベル計測条件を充たすことを示す。一方、「0」に設定された成分a
jfは、面分fが、候補位置jから見て不可視であり、重要度が高レベルの計測部分に対応しておらず、または計測機を候補位置jに配置した場合に高レベル計測条件を充たさないことを示す。また、面分選択処理を終えた後の面分行列Bにおいて、「1」に設定された成分b
jfは、面分fが、候補位置jから見て可視であり、重要度が低レベルの計測部分に対応し、かつ計測機を候補位置jに配置した場合に低レベル計測条件を充たすことを示す。一方、「0」に設定された成分b
jfは、面分fが、候補位置jから見て不可視であり、重要度が低レベルの計測部分に対応しておらず、または計測機を候補位置jに配置した場合に低レベル計測条件を充たさないことを示す。これら面分行列AおよびBは記憶部3に記憶される。
【0079】
(配置位置決定処理)
次に、
図2中のステップS8に示すように、計測機配置位置決定装置1の配置位置決定部16が配置位置決定処理を行う。配置位置決定処理とは、候補位置決定部14により決定された候補位置の中から、面分選択部15により最終的に選択された各面分を計測するのに最適な位置を計測機配置位置として決定する処理である。配置位置決定処理では、最適な計測機配置位置の決定に数理計画法を用いる。最適な計測機配置位置を決定する問題は、組合せ最適化問題のうちの線形整数最適化問題に相当すると考えることができる。配置位置決定処理では、組合せ最適化問題における線形整数最適化問題の厳密解法を用いて最適な計測機配置位置を決定する。具体的には、配置位置決定処理では、分枝限定法を用いて最適な計測機配置位置を決定する。
【0080】
図19は配置位置決定処理の内容を示している。
図19に示すように、本実施形態における配置位置決定処理では、まず、候補位置決定部14により決定された候補位置の中から、重要度が高レベルの計測部分に対応し、かつ高レベル計測条件を充たす可視面分51Aを計測するのに最適な位置を「高レベル配置位置」として決定する高レベル配置位置決定処理を行う(ステップS51)。以下、重要度が高レベルの計測部分に対応し、かつ高レベル計測条件を充たす可視面分51Aを「高レベル選択面分」という。高レベル選択面分は、面分選択処理を終えた後の面分行列Aにおいて成分a
jfが「1」に設定された面分fである。また、高レベル配置位置は高精度計測用の計測機配置位置の具体例である。
【0081】
続いて、候補位置決定部14により決定された候補位置の中から、重要度が低レベルの計測部分に対応し、かつ低レベル計測条件を充たす可視面分51Aを計測するのに最適な位置を「低レベル配置位置」として決定する低レベル配置位置処理を行う(ステップS52)。以下、重要度が低レベルの計測部分に対応し、かつ低レベル計測条件を充たす可視面分51Aを「低レベル選択面分」という。低レベル選択面分は、面分選択処理を終えた後の面分行列Bにおいて成分b
jfが「1」に設定された面分fである。また、低レベル配置位置は低精度計測用の計測機配置位置の具体例である。
【0082】
最後に、高レベル配置位置決定処理により決定された高レベル配置位置、および低レベル配置位置決定処理により決定された低レベル配置位置が例えば表示部5に出力される(ステップS53)。
【0083】
図20は高レベル配置位置決定処理の内容を示している。
図20に示す高レベル配置位置決定処理において、配置位置決定部16は、まず、高レベル配置位置の個数の上限値Tを初期値に設定する(ステップS61)。この初期値は例えば1である。なお、この初期値は作業者が任意に設定することができる。
【0084】
続いて、配置位置決定部16は、面分選択処理において生成された面分行列Aを用いて、高レベル配置位置を決定するための最適化計算を行う(ステップS62)。ここで行う最適化計算では、当該最適化計算で算出される候補位置の個数が上限値T以下であり、かつ候補位置決定処理において決定された複数の候補位置のうち、1つ以上の候補位置から計測される高レベル選択面分の個数を最大化する最適な位置を算出する。この最適化計算で算出された最適な位置が高レベル配置位置である。高レベル配置位置を決定する問題を定式化すると次のようになる。
【数1】
ここで、
J:候補位置jの集合
F:高レベル選択面分fの集合
z
j=0:候補位置jに計測機を配置しない
z
j=1:候補位置jに計測機を配置する
x
f=0:高レベル選択面分fが計測されない
x
f=1:高レベル選択面分fが計測される
T:高レベル配置位置の個数の上限値
である。
【0085】
そして、配置位置決定部16は、この最適化計算により算出された高レベル配置位置と、当該高レベル配置位置に計測機を配置して計測される高レベル選択面分の総数mを記憶部3に記憶する。なお、高レベル配置位置は、例えばベースモデルの三次元空間の直交座標系における座標値として記憶部3に記憶される。
【0086】
続いて、配置位置決定部16は、前回の最適化計算により算出された高レベル配置位置に計測機を配置して計測される高レベル選択面分の総数mに対する、今回の最適化計算により算出された高レベル配置位置に計測機を配置して計測される高レベル選択面分の総数mの上昇率を計算する(ステップS63)。
【0087】
続いて、配置位置決定部16は、総数mの上昇率が上昇率基準値以下か否かを判断する(ステップS64)。上昇率基準値は例えば1%である。なお、上昇率基準値は作業者が任意に設定することができる。
【0088】
総数mの上昇率が上昇率基準値以下でない場合には(ステップS64:NO)、配置位置決定部16は、高レベル配置位置の個数の上限値Tを1増加させてから(ステップS65)、処理をステップS62に戻す。
【0089】
一方、総数mの上昇率が上昇率基準値以下である場合には(ステップS64:YES)、配置位置決定部16は、高レベル配置位置決定処理を終える。
【0090】
ここで、
図21は、高レベル配置位置の個数の上限値Tと、計測機を高レベル配置位置に配置して計測される高レベル選択面分の総数mとの関係の一例を示している。
図21において、m2は、高レベル配置位置の個数の上限値Tを2に設定して最適化計算を行うことにより得られた高レベル配置位置に計測機を配置して計測される高レベル選択面分の総数mである。また、m3は、高レベル配置位置の個数の上限値Tを3に設定して最適化計算を行うことにより得られた高レベル配置位置に計測機を配置して計測される高レベル選択面分の総数mである。同様に、m8は、高レベル配置位置の個数の上限値Tを8に設定して最適化計算を行うことにより得られた高レベル配置位置に計測機を配置して計測される高レベル選択面分の総数mである。また、m9は、高レベル配置位置の個数の上限値Tを9に設定して最適化計算を行うことにより得られた高レベル配置位置に計測機を配置して計測される高レベル選択面分の総数mである。
図21を見るとわかる通り、高レベル配置位置の個数の上限値Tを2から3に増加させたことによる総数mの上昇率(m3/m2)と、高レベル配置位置の個数の上限値Tを8から9に増加させたことによる総数mの上昇率(m9/m8)とを比較すると、前者の方が後者よりも大きい。このように、高レベル配置位置の個数の上限値Tが増加すると総数mの上昇率が減少する。総数mの上昇率が極めて小さい値となった場合、それは、もはや高レベル配置位置の個数の上限値Tを増加させても、高レベル配置位置に計測機を配置して計測される高レベル選択面分がほとんど変化しなくなったことを意味する。したがって、総数mの上昇率が極めて小さい値となった場合には、高レベル配置位置の個数の上限値Tをそれ以上増加させて最適化計算を繰り返すメリットがない。そこで、
図20に示すように、配置位置決定部16は、総数mの上昇率が上昇率基準値以下となった場合には、高レベル配置位置決定処理を終了する。
【0091】
図22は低レベル配置位置決定処理の内容を示している。低レベル配置位置決定処理(ステップS71〜S75)は、次の点を除き、上述した高レベル配置位置決定処理と同じである。(1)上述した高レベル配置位置決定処理では、高レベル配置位置の個数の上限値Tを用いるが、低レベル配置位置決定処理では、低レベル配置位置の個数の上限値Uを用いる。(2)上述した高レベル配置位置決定処理では、面分選択処理において生成された面分行列Aを用いて、高レベル配置位置を決定するための最適化計算を行うが、低レベル配置位置決定処理では、面分選択処理において生成された面分行列Bを用いて、低レベル配置位置を決定するための最適化計算を行う。具体的には、低レベル配置位置決定処理で行う最適化計算では、当該最適化計算で算出される候補位置の個数が上限値U以下であり、かつ候補位置決定処理において決定された複数の候補位置のうち、1つ以上の候補位置から計測される低レベル選択面分の個数を最大化する最適な位置を算出する。この最適化計算で算出された最適な位置が低レベル配置位置である。(3)低レベル配置位置決定処理で用いる上昇率基準値は、高レベル配置位置決定処理で用いる上昇率基準値と異なる場合がある。なお、高レベル配置位置決定処理および低レベル配置位置決定処理でそれぞれ用いる上昇率基準値は作業者が任意に設定することができる。それぞれの上昇率基準値を異ならせてもよいし、同じにしてもよい。
【0092】
高レベル配置位置決定処理の終了後、高レベル配置位置決定処理において最後に行われた最適化計算により算出された高レベル配置位置が記憶部3に記憶されている。また、低レベル配置位置決定処理の終了後、低レベル配置位置決定処理において最後に行われた最適化計算により算出された低レベル配置位置が記憶部3に記憶されている。配置位置決定部16は、これら高レベル配置位置および低レベル配置位置を記憶部3から読み出し、読み出した高レベル配置位置および低レベル配置位置を表示部5等に出力する(
図19中のステップS53)。なお、ここで記憶部3から読み出した低レベル配置位置には、記憶部3から読み出した高レベル配置位置と同一の位置が含まれている場合がある。その場合には、配置位置決定部16により低レベル配置位置を表示部5に出力する際に、高レベル配置位置と同一の位置を低レベル配置位置から除外するようにしてもよい。
【0093】
図23は計測機配置位置決定装置1により決定された設備室28内における計測機配置位置(高レベル配置位置および低レベル配置位置)の一例を示している。この例では、設備室28内において7つの計測機配置位置P1〜P7が計測機配置位置決定装置1により決定された。作業者は、計測機配置位置P1〜P7のそれぞれに計測機を順次配置して三次元計測を行い、三次元計測により得られた計測データを用いて空調設備の最終的な三次元モデルを生成することができる。
【0094】
以上説明した通り、本発明の実施形態の計測機配置位置決定装置1では、面分選択処理において、候補位置から見たベースモデルの展開画像を生成し、ベースモデルに含まれる複数の面分のうち、展開画像に描画されている面分を、候補位置から見た可視面分51Aとして特定する(
図15中のステップS35〜S37を参照)。これにより、計測機配置位置決定装置1において、計測機配置位置を決定する処理にかかる時間を、上記非特許文献1に記載された従来技術と比較して大幅に短縮することができる。したがって、計測機配置位置の決定作業の効率を向上させることができる。
【0095】
これについて具体的に検討する。上記非特許文献1に記載された従来技術においては、計測機配置候補ボクセルから可観測である計測対象ボクセルを特定する処理を行う。この処理が、本発明の実施形態の計測機配置位置決定装置において候補位置から見た可視面分51Aを特定する処理に対応する。従来技術において、計測機配置候補ボクセルの個数をnaとし、計測対象ボクセルの個数をnbとし、1つの計測機配置候補ボクセルから可観測である計測対象ボクセルをnb個の計測対象ボクセルの中から特定する処理Prにかかる時間をtとすると、na個のすべての計測機配置候補ボクセルについて処理Prを行うのにかかる時間はna×nb×tである。一方、本発明の実施形態の計測機配置位置決定装置1において、候補位置の個数をma個とし、ベースモデルに含まれる面分の個数をmb個とし、1つの候補位置から見たベースモデルの展開画像を形成し、ベースモデルに含まれるmb個の面分のうち展開画像に描画されている面分を、当該1つの候補位置から見た可視面分51Aとして特定する処理Qrにかかる時間をuとすると、ma個のすべての候補位置について処理Qrを行うのにかかる時間はma×uである。ここで、仮に、計測機配置候補ボクセルの個数と候補位置の個数が互いに等しく、かつ1つの計測機配置候補ボクセルについて処理Prを行うのにかかる時間と1つの候補位置について処理Qrを行うのにかかる時間とが互いに等しいとすると、ma個のすべての候補位置について処理Qrを行うのにかかる時間は、na個のすべての計測機配置候補ボクセルについて処理Prを行うのにかかる時間のnb分の1である。被計測物の体積が空調設備等のように大きい場合、計測対象ボクセルの個数は膨大であり、1千個を超える場合が多く、1万個を超える場合もある。したがって、この場合、ma個のすべての候補位置について処理Qrを行うのにかかる時間は、na個のすべての計測機配置候補ボクセルについて処理Prを行うのにかかる時間の1千分の1未満、または1万分の1未満となる。大ざっぱな検討方法であるが、この検討から、本発明の実施形態の計測機配置位置決定装置1において候補位置から見た可視面分51Aを特定する処理にかかる時間が、従来技術において計測機配置候補ボクセルから可観測である計測対象ボクセルを特定する処理にかかる時間よりも桁違いに短いことは明らかである。このように、本発明の実施形態の計測機配置位置決定装置1において候補位置から見た可視面分51Aを特定する処理にかかる時間を、従来技術において計測機配置候補ボクセルから可観測である計測対象ボクセルを特定する処理にかかる時間よりも大幅に短くすることができるので、計測機配置位置決定装置1において、計測機配置位置を決定する処理にかかる時間を、上記従来技術と比較して大幅に短縮することができる。
【0096】
実際に、面積が180m
2であり、天井高さが4.6mである空調設備(熱源機械室)について、上記従来技術により計測機配置位置を決定する処理を行ったところ、その処理にかかった時間は24.1分であった。また、同一の空調設備について、本発明の実施形態の計測機配置位置装置1により計測機配置位置を決定する処理を行ったところ、その処理にかかった時間は1.9分であった。これにより、上記従来技術よりも本発明の実施形態の計測機配置位置装置1の方が計測機配置位置を決定する処理にかかる時間が大幅に短いことが実際に確認された。
【0097】
また、本発明の実施形態の計測機配置位置決定装置1では、面分選択処理において、ベースモデルに含まれる複数の面分に当該面分ごとに固有の色情報を割り当てた後に、候補位置から見たベースモデルの展開画像を生成し、ベースモデルに含まれる複数の面分のうち、展開画像の各画素が有する色情報が割り当てられている面分を、候補位置から見た可視面分51Aとして選択する。これにより、可視面分51Aの特定を容易に行うことができる。また、この色情報によって展開画像から可視面分51Aを特定する処理方法は、可視面分51Aを特定する処理時間の短縮化に貢献している。
【0098】
また、本発明の実施形態の計測機配置位置決定装置1では、高レベル配置位置決定処理において、算出される候補位置の個数が、高レベル配置位置の個数の上限値T以下であり、かつ候補位置決定部14により決定された複数の候補位置のうち、1つ以上の候補位置から計測される高レベル選択面分の個数が最大となる最適な候補位置を分枝限定法を用いて算出し、当該算出した最適な候補位置を計測機配置位置(高レベル配置位置)として決定する。この計測機配置位置決定装置1によれば、計測機配置位置を貪欲法を用いて決定する上記従来技術と比較して、広い範囲の計測が可能な、より少ない個数の計測機配置位置を決定することができる。したがって、三次元計測機を用いた設備等の計測作業の効率を向上させることができる。また、計測機配置位置決定装置1における低レベル配置位置決定処理においても、高レベル配置位置決定処理と同様に、計測機配置位置を貪欲法を用いて決定する上記従来技術と比較して、広い範囲の計測が可能な、より少ない個数の計測機配置位置(低レベル配置位置)を決定することができる。
【0099】
実際に、面積が180m
2であり、天井高さが4.6mである空調設備(熱源機械室)について、上記従来技術により計測機配置位置を決定する処理を行ったところ、当該空調設備において重要度が高レベルである計測部分の範囲の約87.9%を計測が可能な、10個の計測機配置位置が決定された。また、同一の空調設備について、本発明の実施形態の計測機配置位置装置1により計測機配置位置を決定する処理を行ったところ、当該空調設備において重要度が高レベルである計測部分の範囲の約88.2%を計測が可能な、7つの計測機配置位置が決定された。これにより、本発明の実施形態の計測機配置位置装置1によれば、上記従来技術と比較し、ほぼ同一の範囲が計測される計測機配置位置の個数を減らすことができることが実際に確認された。
【0100】
また、本発明の実施形態の計測機配置位置決定装置1では、ベースモデルにおける被計測物のうち計測機で計測する計測部分に少なくとも高レベルまたは低レベルの重要度を指定する。また、高レベル計測条件におけるレーザー光の入射角範囲が低レベル計測条件におけるレーザー光の入射角範囲よりも小さくなり、かつ高レベル計測条件における計測機とベースモデルの面分との間の距離が、低レベル計測条件における計測機とベースモデルの面分との間の距離よりも小さくなるように、高レベル計測条件および低レベル計測条件を設定する。そして、ベースモデルに含まれる複数の面分のうち、候補位置から見たときに可視であり、重要度が高レベルである計測部分に対応し、かつ高レベル計測条件を充たす面分を高レベル選択面分として選択し、候補位置決定部14により決定された複数の候補位置のうち、計測される高レベル選択面分の個数が最大となる1つ以上の候補位置を分枝限定法を用いて算出し、当該算出した候補位置を高レベル配置位置として決定する。また、ベースモデルに含まれる複数の面分のうち、候補位置から見たときに可視であり、重要度が低レベルである計測部分に対応し、かつ低レベル計測条件を充たす面分を低レベル選択面分として選択し、候補位置決定部14により決定された複数の候補位置のうち、計測される低レベル選択面分の個数が最大となる1つ以上の候補位置を分枝限定法を用いて算出し、当該算出した候補位置を低レベル配置位置として決定する。この構成により、空調設備において重要度の高い部分を高精度に計測することができる計測機配置位置と、空調設備において重要度の低い部分を、精度を落として迅速に計測することができる計測機配置位置とをそれぞれ決定することができる。これにより、要求される計測品質を維持しつつ、三次元計測の作業時間を短縮することができ、全体的に見て三次元計測作業の効率を向上させることができる。
【0101】
なお、上記実施形態では、計測機配置位置の決定を分枝限定法を用いて行う場合を例にあげたが、計測機配置位置の決定を、線形整数最適化問題の他の厳密解法を用いて行ってもよい。また、計測機配置位置の決定を線形整数最適化問題の近似解法を用いて行ってもよい。計測機配置位置の決定を線形整数最適化問題の近似解法で行うこととした場合でも、計測機配置位置を決定する処理時間を短くするという作用効果は発揮される。
【0102】
また、上記実施形態では、高レベル計測条件および低レベル計測条件のそれぞれに、計測機から照射されるレーザー光の計測部分への入射角と、計測機と計測部分との間の距離とが含まれる場合を例にあげた。しかしながら、高レベル計測条件および低レベル計測条件のそれぞれに、計測機から照射されるレーザー光の計測部分への入射角のみを含めるようにしてもよいし、高レベル計測条件および低レベル計測条件のそれぞれに、計測機と計測部分との間の距離のみを含めるようにしてもよい。
【0103】
また、上記実施形態では、計測部分の重要度として高レベルおよび低レベルの2通りの重要度を指定し、これら2通りの重要度に対応する高レベル配置位置および低レベル配置位置を決定する場合を例にあげたが、例えば高レベル、中レベル、低レベルといったように、計測部分の重要度を3通り以上指定することとし、これら3通り以上の重要度に対応する3種類以上の計測機配置位置を決定するようにしてもよい。また、計測部分の重要度を指定しないこととし、1種類の計測機配置位置を決定するようにしてもよい。
【0104】
また、上記実施形態において、ベースモデルの面分の形状は三角形であるが、面分の形状は三角形に限らない。
【0105】
また、上記実施形態では、被計測物として空調設備を例にあげたが、本発明は、空調設備に限らず、給排水、電気通信等の設備や機械、建築物等、様々な被計測物を計測機で計測するための計測機配置位置の決定に用いることができる。
【0106】
また、
図2中のステップS2がベースモデル取得工程の具体例であり、ステップS3が計測部分指定工程の具体例であり、ステップS5およびS6が候補位置決定工程の具体例である。また、ステップS7が面分選択工程の具体例であり、ステップS8が配置位置決定工程の具体例である。
【0107】
また、本発明は、請求の範囲および明細書全体から読み取ることのできる発明の要旨または思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う計測機配置位置決定装置、計測機配置位置決定方法およびプログラムもまた本発明の技術思想に含まれる。
【解決手段】計測機配置位置決定装置は、SfMにより生成された被計測物等のベースモデルに含まれる複数の面分のうち、候補位置から被計測物を見たときに可視であり、かつ指定された計測部分に対応する面分を選択面分として選択する面分選択処理(S7)と、決定された複数の候補位置のうち、計測される選択面分の個数が最大となる1つ以上の候補位置を数理計画法を用いて算出し、当該算出した候補位置を計測機配置位置として決定する配置位置決定処理(S8)等を行い、面分選択処理では、候補位置から見たベースモデルの展開画像に基づいて、候補位置から被計測物を見たときに可視である面分を特定する。