特許第6535810号(P6535810)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本たばこ産業株式会社の特許一覧

特許6535810喫煙物品用フィルター、喫煙物品、および喫煙物品用フィルターの製造方法
<>
  • 特許6535810-喫煙物品用フィルター、喫煙物品、および喫煙物品用フィルターの製造方法 図000002
  • 特許6535810-喫煙物品用フィルター、喫煙物品、および喫煙物品用フィルターの製造方法 図000003
  • 特許6535810-喫煙物品用フィルター、喫煙物品、および喫煙物品用フィルターの製造方法 図000004
  • 特許6535810-喫煙物品用フィルター、喫煙物品、および喫煙物品用フィルターの製造方法 図000005
  • 特許6535810-喫煙物品用フィルター、喫煙物品、および喫煙物品用フィルターの製造方法 図000006
  • 特許6535810-喫煙物品用フィルター、喫煙物品、および喫煙物品用フィルターの製造方法 図000007
  • 特許6535810-喫煙物品用フィルター、喫煙物品、および喫煙物品用フィルターの製造方法 図000008
  • 特許6535810-喫煙物品用フィルター、喫煙物品、および喫煙物品用フィルターの製造方法 図000009
  • 特許6535810-喫煙物品用フィルター、喫煙物品、および喫煙物品用フィルターの製造方法 図000010
  • 特許6535810-喫煙物品用フィルター、喫煙物品、および喫煙物品用フィルターの製造方法 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6535810
(24)【登録日】2019年6月7日
(45)【発行日】2019年6月26日
(54)【発明の名称】喫煙物品用フィルター、喫煙物品、および喫煙物品用フィルターの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A24D 3/16 20060101AFI20190617BHJP
   A24D 3/12 20060101ALI20190617BHJP
【FI】
   A24D3/16
   A24D3/12
【請求項の数】12
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-507840(P2018-507840)
(86)(22)【出願日】2016年3月28日
(86)【国際出願番号】JP2016059916
(87)【国際公開番号】WO2017168516
(87)【国際公開日】20171005
【審査請求日】2018年4月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004569
【氏名又は名称】日本たばこ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜飼 健
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(72)【発明者】
【氏名】北岡 龍
(72)【発明者】
【氏名】宮内 正人
【審査官】 岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−102250(JP,A)
【文献】 国際公開第03/056947(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/090659(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/066656(WO,A1)
【文献】 国際公開第2006/092962(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24D 3/16
A24D 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
200μm〜1000μmの平均粒径を有するコア粒子と、
前記コア粒子の表面の少なくとも一部の上に担持され、ハイドロタルサイト類化合物からなり、1〜200nmの平均粒径を有するナノ粒子と
から構成される複合粒子を含む喫煙物品用フィルター。
【請求項2】
前記コア粒子が保水性を有する請求項1に記載の喫煙物品用フィルター。
【請求項3】
前記コア粒子が70%以上の保水率を有する請求項2に記載の喫煙物品用フィルター。
【請求項4】
前記コア粒子が多孔質粒子である請求項2または3に記載の喫煙物品用フィルター。
【請求項5】
前記多孔質粒子が活性炭粒子である請求項4に記載の喫煙物品用フィルター。
【請求項6】
前記ナノ粒子が、一般式:
[M 2+ 1-x3+ x (OH)2 ][(A n-x/n ・m H2O]
(ここで、M 2+は、Mg、Zn、NiおよびCaからなる群より選択される2価の金属イオンであり、M 3+は、Alイオンであり、A n-は、CO3、SO4、OOC−COO、Cl、Br、F、NO3、Fe(CN)6 3-、Fe(CN)6 4-、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、アルケニル酸およびその誘導体、リンゴ酸、サリチル酸、アクリル酸、アジピン酸、コハク酸、クエン酸ならびにスルホン酸からなる群より選択されるn価のアニオンであり、xは0.1<x<0.4であり、mは0<m<2である)で表されるハイドロタルサイト類化合物からなる請求項1〜5の何れか1項に記載の喫煙物品用フィルター。
【請求項7】
前記一般式において、M 2+は、Mgイオンであり、M 3+は、Alイオンであり、A n-は、CO3 2-またはSO4 2-であり、xは0.1<x<0.4であり、mは0<m<2である請求項6に記載の喫煙物品用フィルター。
【請求項8】
前記一般式が、Mg6Al2(OH)16CO3・4H2Oである請求項6に記載の喫煙物品用フィルター。
【請求項9】
前記コア粒子の平均粒径が300μm〜700μmであり、好ましくは400μm〜600μmである請求項1〜8の何れか1項に記載の喫煙物品用フィルター。
【請求項10】
前記ナノ粒子の平均粒径が10nm〜150nmであり、好ましくは10nm〜50nmである請求項1〜9の何れか1項に記載の喫煙物品用フィルター。
【請求項11】
請求項1〜10の何れか1項に記載の喫煙物品用フィルターと、前記喫煙物品用フィルターの一端に接続されたたばこロッドとを含む喫煙物品。
【請求項12】
ハイドロタルサイト類化合物からなり、1〜200nmの平均粒径を有するナノ粒子と、200μm〜1000μmの平均粒径を有するコア粒子とを水中に含む懸濁液を撹拌し、その後、前記懸濁液を乾燥させて、前記コア粒子の表面の少なくとも一部の上に前記ナノ粒子が担持された複合粒子を調製すること、および
得られた複合粒子を喫煙物品用フィルターに組み込むこと
を含む、喫煙物品用フィルターの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、喫煙物品用フィルター、喫煙物品、および喫煙物品用フィルターの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シガレットなどの喫煙物品では、フィルターに吸着剤粒子を添加して、主流煙中の化学成分を吸着除去する。吸着剤粒子として、活性炭粒子が代表的に使用されるが、種々の吸着剤粒子の使用が試みられている。たとえば、200〜800μmの平均粒径を有するハイドロタルサイト粒子をシガレットフィルターに添加して、主流煙中のホルムアルデヒドを選択的に除去することが報告されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2003/056947号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、吸着剤粒子の粒径を小さくして比表面積を増大させると、吸着能が向上することは知られている。本発明者らは、ハイドロタルサイト粒子の粒径をナノレベルまで小さくしてシガレットフィルターに添加し、吸着能の向上を試みたところ、通気抵抗が著しく増大し、シガレットフィルターの吸着剤としての使用に適していないという問題を見出した。
【0005】
そこで、本発明は、通気抵抗を過度に増大させることなく、主流煙中のホルムアルデヒドをより効果的に除去することができる喫煙物品用フィルターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一つの側面によれば、
200μm〜1000μmの平均粒径を有するコア粒子と、
前記コア粒子の表面の少なくとも一部の上に担持され、ハイドロタルサイト類化合物からなり、200nm以下の平均粒径を有するナノ粒子と
から構成される複合粒子を含む喫煙物品用フィルター
が提供される。
【0007】
別の側面によれば、かかる喫煙物品用フィルターと、前記喫煙物品用フィルターの一端に接続されたたばこロッドとを含む喫煙物品が提供される。
【0008】
更に別の側面によれば、
200μm〜1000μmの平均粒径を有するコア粒子と200nm以下の平均粒径を有するハイドロタルサイト粒子とを水中に含む懸濁液を撹拌し、その後、前記懸濁液を乾燥させて、前記コア粒子の表面の少なくとも一部の上に前記ハイドロタルサイト粒子が担持された複合粒子を調製すること、および
得られた複合粒子を喫煙物品用フィルターに組み込むこと
を含む、喫煙物品用フィルターの製造方法
が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、通気抵抗を過度に増大させることなく、主流煙中のホルムアルデヒドをより効果的に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】コア粒子とナノ粒子とから構成される複合粒子の一例を模式的に示す図。
図2】本発明のフィルターの一例を示す分解斜視図。
図3】複合粒子含有フィルターおよびナノ粒子含有フィルターのフィルター通気抵抗を示すグラフ。
図4】複合粒子含有フィルターおよびコア粒子含有フィルターのフィルター通気抵抗を示すグラフ。
図5】実施例で作製されたシガレットを模式的に示す図。
図6】シガレット主流煙中のホルムアルデヒドの測定装置を示す図。
図7】シガレットのホルムアルデヒド低減率を示すグラフ。
図8】ハイドロタルサイト粒子のコア粒子への付着力を示すグラフ。
図9】ハイドロタルサイト粒子の粒径とホルムアルデヒド吸着率との関係を示すグラフ。
図10】ハイドロタルサイト粒子の粒径と通気抵抗との関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を説明するが、以下の説明は、本発明を詳説することを目的とし、本発明を限定することを意図しない。
【0012】
本発明の喫煙物品用フィルターは、
200μm〜1000μmの平均粒径を有するコア粒子と、
前記コア粒子の表面の少なくとも一部の上に担持され、ハイドロタルサイト類化合物からなり、200nm以下の平均粒径を有するナノ粒子と
から構成される複合粒子を含む。
【0013】
図1は、コア粒子11aとナノ粒子11bとから構成される複合粒子11の一例を模式的に示す。図1に示されるように、ナノ粒子11bは、コア粒子11aの表面の少なくとも一部の上に担持される。
【0014】
コア粒子は、吸着剤粒子としての機能を有することが好ましい。コア粒子が、吸着剤粒子としての機能を有する場合、ナノ粒子は、コア粒子の表面全体を被覆していないことが好ましい。コア粒子が、吸着剤粒子としての機能を有し、その表面に細孔を有している場合、ナノ粒子は、細孔内に入り込んでいてもよいが、ナノ粒子の少なくとも一部は、細孔表面を除くコア粒子の表面に担持されていることが好ましい。
【0015】
コア粒子が、その表面にナノ粒子を効率よく付着するために、コア粒子は、保水性を有することが好ましい。保水性とは、コア粒子の表面に水を保持する性質を指す。具体的には、保水性とは、コア粒子の表面が親水性および/または多孔性であることにより、コア粒子の表面に水を保持する性質を指す。
【0016】
コア粒子の保水性は、以下で定義する保水率により数値化することができる。
【0017】
コア粒子1gを水10mLに浸漬して、1分間経過後に金属メッシュ(0.1mm)を用いて濾過し、コア粒子と水とを分離する。分離されたコア粒子の重量を測定する。測定された重量から、コア粒子の保水率を以下の式により求める。
保水率(%)=[{(金属メッシュを通過した後のコア粒子の重量)−(水に浸漬する前のコア粒子の重量)}/(水に浸漬する前のコア粒子の重量)]×100
【0018】
コア粒子は、好ましくは70%以上、より好ましくは70〜150%、更に好ましくは70〜100%の保水率を有する。
【0019】
コア粒子として、たとえば、多孔質粒子を使用することができる。より具体的には、多孔質粒子として、喫煙物品用フィルターで吸着剤として使用される多孔質粒子、たとえば、活性炭粒子、シリカ粒子、ハイドロタルサイト粒子、リン酸カルシウム粒子、ゼオライト粒子などを使用することができる。好ましくは、多孔質粒子として、活性炭粒子が使用される。活性炭粒子は、好ましくは400〜2800m2/gのBET比表面積を有する。コア粒子として、非多孔質粒子を使用することもでき、たとえば、炭酸カルシウム粒子、糖類粒子(たとえば、単糖、二糖、オリゴ糖、多糖、またはこれらの任意の組み合わせから構成される粒子)、セルロース粒子、セルローストリアセテート粒子などを使用することができる。
【0020】
コア粒子は、200μm〜1000μmの平均粒径、好ましくは300μm〜700μmの平均粒径、より好ましくは400μm〜600μmの平均粒径を有する。本明細書においてコア粒子の平均粒径は、CCDカメラで撮影された粒子のデジタル画像を用いて測定された値を指し、たとえば画像解析式粒度分布測定装置(カムサイザー、Retsch technology社)を用いて測定された値を指す。ナノ粒子の平均粒径は、透過型電子顕微鏡(TITAN80−300、FEI社)を用いて測定された値を指す。コア粒子およびナノ粒子の平均粒径は、統計学的に十分な個数(たとえば30個)の粒子を無作為に選択して粒径を測定し、算術平均を求めることにより得ることができる。なお、複合粒子の平均粒径は、コア粒子と同様に測定することができる。
【0021】
ナノ粒子は、1〜200nmの平均粒径、好ましくは10nm〜150nmの平均粒径、より好ましくは10nm〜50nmの平均粒径を有する。ナノ粒子は、ハイドロタルサイト類化合物からなる。
【0022】
ナノ粒子を構成するハイドロタルサイト類化合物は、金属水酸化物の八面体層が多数積層された層状構造を呈し、これら層の間にアニオンがインターカレーションされている。八面体層はホストと呼ばれ塩基性を示す。ハイドロタルサイト類化合物によるホルムアルデヒド除去は、ホストの塩基性の寄与およびインターカレーションされたアニオンによるイオン交換作用などの結果として生じるものと考えられる。ハイドロタルサイト類化合物は、天然のものでも合成品でもよい。
【0023】
ハイドロタルサイト類化合物は、下記一般式
[M 2+ 1-x3+ x (OH)2 ][(A n-x/n ・m H2O]
(ここで、M 2+は、Mg、Zn、NiおよびCaからなる群より選択される2価の金属イオンであり、M 3+は、Alイオンであり、A n-は、CO3、SO4、OOC−COO、Cl、Br、F、NO3、Fe(CN)6 3-、Fe(CN)6 4-、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、アルケニル酸およびその誘導体、リンゴ酸、サリチル酸、アクリル酸、アジピン酸、コハク酸、クエン酸ならびにスルホン酸からなる群より選択されるn価のアニオンであり、xは0.1<x<0.4であり、mは0<m<2である)で表される。
【0024】
上記一般式において、M 2+は、Mgイオンであり、M 3+は、Alイオンであり、A n-は、CO3 2-またはSO4 2-であり、xは0.1<x<0.4であり、mは0<m<2であることが好ましい。かかるMg−Al系ハイドロタルサイト類化合物は、xが0.20〜0.33の範囲にある場合に安定である。上記一般式は、Mg6Al2(OH)16CO3・4H2Oであることが最も好ましい。
【0025】
Mg−Al系ハイドロタルサイト類化合物は、硫酸アルミニウム、酢酸アルミニウムおよび明ばんから選ばれる水溶性のアルミニウム塩またはアルミン酸と水溶性マグネシウム塩との水溶液に、炭酸アルカリまたは炭酸アルカリと苛性アルカリを添加し、反応混合物のpHを8.0以上に保って反応させることにより製造することができる。得られたハイドロタルサイト類化合物を、粉砕して分級することにより、200nm以下の平均粒径を有するナノ粒子とすることができる。
【0026】
コア粒子およびナノ粒子は、それぞれ、公知の方法に従って調製したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
【0027】
コア粒子とナノ粒子とから構成される複合粒子は、以下で説明するとおり調製することができる。ナノ粒子とコア粒子とを水中に含む懸濁液を撹拌し、その後、懸濁液を乾燥させることにより、コア粒子の表面上にナノ粒子が担持された複合粒子を調製することができる。
【0028】
コア粒子およびナノ粒子は、上記で説明したものを使用することができる。コア粒子は、好ましくは70%以上、より好ましくは70〜150%、更に好ましくは70〜100%の保水率を有する。コア粒子が、高い保水率を有する(すなわち、表面に水を保持する能力が高い)ほど、ナノ粒子の担持率を高めることができる。これは、コア粒子とナノ粒子が、懸濁液中で、主に液架橋付着力により結合するため、コア粒子が高い保水率を有するほど、液架橋付着力も大きくなるためである。一方で、保水率が高すぎる場合、複合粒子同士の凝集が発生し、フィルターへの均一添加が困難となるため、製造適性上70〜100%の保水率が特に望ましい。また、懸濁液の乾燥後は、コア粒子の表面に、主にファンデルワールス力によりナノ粒子が担持され、その付着が維持される。
【0029】
複合粒子の調製において、コア粒子とナノ粒子は、たとえば1000:1〜1:1の重量比、好ましくは100:1〜2:1の重量比で混合される。20mgのコア粒子と10mgのナノ粒子を混合する場合、これらの粒子をたとえば30〜1000μLの水に添加して、懸濁液を調製することができる。かかる懸濁液を、80〜200℃で5〜120分間乾燥させて、複合粒子を含むサンプルを得ることができる。乾燥は、好ましくは、水分の全量が除去されるまで行われる。
【0030】
使用したナノ粒子の全てがコア粒子に担持されなかった場合、サンプル中には、コア粒子に担持されなかったナノ粒子が含まれる。この場合、ふるいを用いて複合粒子とナノ粒子とを分離してもよい。
【0031】
コア粒子に担持されたナノ粒子の割合(担持率)が低い場合、ナノ粒子をコア粒子に担持させるための処理を繰り返し行ってもよい。具体的には、複合粒子の調製後に、ふるいを用いて複合粒子とナノ粒子とを分離し、分離されたナノ粒子を水に懸濁し、得られた懸濁液を、分離された複合粒子と混合して乾燥させる。これにより、追加のナノ粒子を複合粒子に更に付着させることができる。この操作を繰り返し行って、担持率を高めることができる。
【0032】
複合粒子は、直径7.7mm、長さ27mmのサイズを有するフィルターに、一般に10〜100mg、好ましくは15〜40mgの量で添加することができる。複合粒子は、一般にフィルターの全体積の3〜33%、好ましくはフィルターの全体積の5〜13%を占めるように添加することができる。
【0033】
複合粒子は、喫煙物品用フィルターに組み込んで、以下のような種々の形態の喫煙物品用フィルターを作製することができる。
(1)複合粒子を濾材、たとえばセルロースアセテートなどの繊維のトウまたは不織布に分散させたフィルター。
(2)複合粒子を原料に添加して抄紙したペーパーシートを成形したフィルター。
(3)2セグメント以上からなるフィルターであって、少なくとも1セグメントは(1)または(2)のフィルターからなるフィルター。この場合、他のセグメントは、従来のセルロースアセテートフィルターまたはチャコールフィルターとすることができる。
(4)互いに離間して配置された2つ以上のフィルタープラグの間のスペース(フィルターキャビティー部)に複合粒子を充填したフィルター。この場合、フィルタープラグは、従来のセルロースアセテートフィルターもしくはチャコールフィルターであってもよいし、または(1)もしくは(2)のフィルターであってもよい。また、2つ以上のスペースがある場合には、少なくとも1つのスペースに複合粒子を充填すればよく、他のスペースには活性炭粒子を充填することもできる。このフィルターの一例を図2に示す。
【0034】
図2に示されるフィルター10において、複合粒子11は、互いに離間して配置された2つのフィルタープラグ12の間のスペース(フィルターキャビティー部)に配置され、2つのフィルタープラグ12の周囲にはプラグ巻取紙13が巻かれている。
【0035】
以下の説明において、複合粒子が組み込まれたフィルターを複合粒子含有フィルターともいう。複合粒子含有フィルターは、任意の喫煙物品に組み込むことができ、具体的には、たばこ充填材を燃焼させる燃焼型喫煙物品、たとえばシガレット、またはたばこ充填材を燃焼させない非燃焼型吸引物品、たとえば加熱型吸引器などに組み込むことができる。加熱型吸引器は、たとえばWO2006/073065またはWO2010/110226号を参照することができる。たとえば、複合粒子含有フィルターの一端に、たばこ充填材を含むたばこロッドを連結して、燃焼型喫煙物品、たとえばシガレットを作製することができる。あるいは、たとえば、空洞を形成する筒状部材の一端あるいは両端に複合粒子含有フィルターを配し、前記空洞に香味源を配して、非燃焼型喫煙物品、たとえば加熱型吸引器を作製することができる。
【0036】
複合粒子含有フィルターは、ナノ粒子を直接添加したフィルターと比べて、フィルター通気抵抗が増大しにくい(後述の実験1を参照)。複合粒子は、直径7.7mm、長さ27mmのサイズを有するフィルターに10〜100mgの量で添加した場合、複合粒子含有フィルターは、たとえば40〜80mmH2Oのフィルター通気抵抗を示すことができる。これにより、上記フィルター通気抵抗を示す複合粒子含有フィルターをシガレットに組み込んだ場合、得られたシガレットは、たとえば80〜120mmH2Oのシガレット通気抵抗を示すことができる。
【0037】
また、複合粒子含有フィルターをシガレットに組み込んだ場合、得られたシガレットは、主流煙中のホルムアルデヒドをより効果的に除去することができる(後述の実験2を参照)。
【実施例】
【0038】
実験1:フィルター通気抵抗
(1−1)複合粒子含有フィルターの作製
活性炭粒子(平均粒径:400μm;BET比表面積:1252m2/g)に、ハイドロタルサイト粒子(Mg6Al2(OH)16CO3・4H2O、平均粒径:50nm;BET比表面積:111.5m2/g)を担持させて、ハイドロタルサイト担持活性炭(以下、複合粒子ともいう)を調製した。ハイドロタルサイト粒子の活性炭粒子への担持は、具体的には、以下のとおり行った。活性炭粒子20mgとハイドロタルサイト粒子10mgとの混合物に、水40μLを添加し、これを活性炭粒子とハイドロタルサイト粒子が均一に混ざるまで撹拌して、スラリー状のサンプルを得た。得られたスラリー状のサンプルをオーブン(100℃、60分)で乾燥させ、その後、22℃の温度および60%の湿度の条件下に48時間置いて調和し、複合粒子を得た。
【0039】
得られた複合粒子を、互いに離間して配置された2つのフィルタープラグ(濾材:アセテートトウ;直径:7.7mm;長さ:5mm)の間のスペース(フィルターキャビティー部)に配置して、フィルタープラグの周囲にプラグ巻取紙を巻くことにより、複合粒子含有フィルターを作製した(図5参照)。
【0040】
(1−2)ナノ粒子含有フィルターの作製
ハイドロタルサイト粒子(Mg6Al2(OH)16CO3・4H2O、平均粒径:50nm;BET比表面積:111.5m2/g)を、2つのフィルタープラグ(濾材:アセテートトウ;直径:7.7mm;長さ:5mm)の間のスペース(フィルターキャビティー部)に配置して、フィルタープラグの周囲にプラグ巻取紙を巻くことにより、ナノ粒子含有フィルター(比較例1)を作製した。
【0041】
(1−3)コア粒子含有フィルターの作製
活性炭粒子(平均粒径:400μm;BET比表面積:1252m2/g)を、2つのフィルタープラグ(濾材:アセテートトウ;直径:7.7mm;長さ:5mm)の間のスペース(フィルターキャビティー部)に配置して、フィルタープラグの周囲にプラグ巻取紙を巻くことにより、コア粒子含有フィルター(比較例2)を作製した。
【0042】
(1−4)フィルター通気抵抗の測定
フィルター通気抵抗はISO6565:2015Draw resistance of cigarettes and pressure drop of filter rodsに準拠し測定を実施した。
【0043】
(1−5)結果
複合粒子含有フィルターおよびナノ粒子含有フィルターのフィルター通気抵抗を図3に示す。複合粒子含有フィルターおよびコア粒子含有フィルターのフィルター通気抵抗を図4に示す。
【0044】
図3において、横軸の添加量は、ハイドロタルサイト粒子(ナノ粒子)の添加量(mg)を指す。また、図3において、複合粒子含有フィルターのフィルター通気抵抗は、以下の式により計算される値を示す。
(複合粒子含有フィルターのフィルター通気抵抗)=(複合粒子含有フィルターを用いて測定されたフィルター通気抵抗)−(複合粒子含有フィルターで使用された活性炭粒子と同量の活性炭粒子を含むフィルターで測定されたフィルター通気抵抗)
また、図3において、ナノ粒子含有フィルターのフィルター通気抵抗は、以下の式により計算される値を示す。
(ナノ粒子含有フィルターのフィルター通気抵抗)=(ナノ粒子含有フィルターを用いて測定されたフィルター通気抵抗)−(ナノ粒子を含まないフィルターを用いて測定されたフィルター通気抵抗)。
【0045】
図4において、横軸の添加量は、複合粒子または活性炭粒子の添加量(mg)を指す。また、図4において、複合粒子含有フィルターのフィルター通気抵抗は、以下の式により計算される値を示す。
(複合粒子含有フィルターのフィルター通気抵抗)=(複合粒子含有フィルターを用いて測定されたフィルター通気抵抗)−(複合粒子を含まないフィルターで測定されたフィルター通気抵抗)
また、図4において、コア粒子含有フィルターのフィルター通気抵抗は、以下の式により計算される値を示す。
(コア粒子含有フィルターのフィルター通気抵抗)=(コア粒子含有フィルターを用いて測定されたフィルター通気抵抗)−(コア粒子を含まないフィルターを用いて測定されたフィルター通気抵抗)。
【0046】
図3の結果から以下のことがわかる。平均粒径50nmのハイドロタルサイト粒子を直接フィルターに添加すると、ハイドロタルサイト粒子の添加量に応じて、フィルター通気抵抗が著しく増大する。一方、平均粒径50nmのハイドロタルサイト粒子をハイドロタルサイト担持活性炭(複合粒子)の形態でフィルターに添加すると、ハイドロタルサイト粒子の存在が、フィルター通気抵抗を大きく増大させない。
【0047】
図4の結果から以下のことがわかる。平均粒径50nmのハイドロタルサイト粒子をハイドロタルサイト担持活性炭(複合粒子)の形態でフィルターに添加すると、かかるフィルターは、同量の活性炭粒子を添加したフィルターと同等のフィルター通気抵抗を示し、ハイドロタルサイト粒子の存在が、フィルター通気抵抗を大きく増大させない。
【0048】
これらの結果から、平均粒径50nmのハイドロタルサイト粒子は、ハイドロタルサイト担持活性炭(複合粒子)の形態でフィルターに添加すると、直接フィルターに添加した場合と比べて、ハイドロタルサイト粒子の存在が、フィルター通気抵抗を増加させにくいことがわかる。
【0049】
実験2:ホルムアルデヒド低減率
(2−1)本発明のシガレットの作製
実験1と同様の方法で、複合粒子含有フィルターを作製した。作製された複合粒子含有フィルターをたばこロッド(直径:7.7mm;長さ:57mm;たばこ充填材:605mg)に連結して、本発明のシガレットを作製した。連結は、チップペーパー(図示せず)で連結部を覆うように行った。作製された本発明のシガレットを模式的に図5に示す。
【0050】
図5において、フィルター10は、互いに離間して配置された2つのフィルタープラグ12と、その周囲に巻かれたプラグ巻取紙13と、フィルタープラグ12の間に配置された複合粒子11とから構成される。たばこロッド20は、たばこ充填材21とその周囲に巻かれたたばこ巻紙22とから構成される。
【0051】
(2−2)比較例のシガレットの作製
ハイドロタルサイト担持活性炭(複合粒子)の代わりに、10mgのハイドロタルサイト粒子(Mg6Al2(OH)16CO3・4H2O、平均粒径:700μm;BET比表面積:103.8m2/g)を用いた以外は、本発明のシガレットと同様の方法で、比較例のシガレットを作製した。平均粒径700μmのハイドロタルサイト粒子は、先行技術文献(WO2003/056947)で使用される吸着剤粒子に相当する。
【0052】
(2−3)主流煙中のホルムアルデヒド量の測定
主流煙中のホルムアルデヒドの量をカナダ公定法(2,4−DNPH−HPLC法)により測定し、ホルムアルデヒドの低減率を求めた。
【0053】
まず、2,4−ジニトロフェニルヒドラジン(DNPH)9.51gをアセトニトリル1Lに加温して溶解した後、60%過塩素酸5.6mLを加え、超純水を加えて2Lの捕集液を調製した。
【0054】
図6を参照して測定装置の概要を説明する。図6に示すように、捕集用洗気瓶31にDNPH捕集液32を入れる。洗気瓶31の容量は100mLであり、DNPH捕集液32の量を80mLとした。この洗気瓶31を氷水バス33に入れて氷冷する。洗気瓶31内の捕集液32に、シガレット30が取り付けられるガラス管34の下端を浸漬する。洗気瓶31のデッドボリュームに連通するように、ガラス管35およびケンブリッジパッド36を取り付け、ケンブリッジパッド36と自動喫煙器37とを接続する。
【0055】
ガラス管34にシガレット30を取り付け、ISO準拠の標準喫煙条件でシガレット30を自動喫煙させる。すなわち、シガレット1本につき、空パフ1回で2秒間35mL吸煙する動作を58秒間隔で繰り返す。主流煙がバブリングしている間に、ホルムアルデヒドはDNPHによって誘導体化される。測定用シガレットは2本とした。このとき、いずれの吸着剤粒子を用いたシガレットでも圧力損失が同一になるように調整した。
【0056】
上記のようにして生成した誘導体を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって測定する。まず、捕集液を濾過した後、Trizma Base液で希釈する(捕集液4mL、Trizma Base液6mL)。この液をHPLCで測定する。HPLC測定条件は以下の通りである。
カラム:HP LiChrospher 100RP−18(5μ)250×4mm
ガードカラム:HP LiChrospher 100RP−18(5μ)4×4mm
カラム温度:30℃
検出波長:DAD356nm
注入量:20μL
移動相:3相によるグラジエント(A液:アセトニトリル30%、テトラヒドロフラン10%およびイソプロパノール1%を含有する超純水水溶液、B液:アセトニトリル65%、テトラヒドロフラン1%およびイソプロパノール1%を含有する超純水水溶液、C液:アセトニトリル100%)。
【0057】
コントロール実験として、ハイドロタルサイト担持活性炭(複合粒子)もハイドロタルサイト粒子(平均粒径:700μm)も含有しないフィルターを備えたシガレット(以下、コントロールシガレットという)について、主流煙中のホルムアルデヒド量を測定した。
【0058】
測定されたホルムアルデヒド量を以下の式に代入することにより、ホルムアルデヒド低減率を求めた。
(ホルムアルデヒド低減率)=[{(コントロールシガレットで測定されたホルムアルデヒド量)−(本発明のシガレットまたは比較例のシガレットで測定されたホルムアルデヒド量)}/(コントロールシガレットで測定されたホルムアルデヒド量)]×100
【0059】
(2−4)結果
本発明のシガレットおよび比較例のシガレットのホルムアルデヒド(FA)低減率を図7に示す。
【0060】
図7の結果から、ハイドロタルサイト担持活性炭(複合粒子)は、平均粒径700μmのハイドロタルサイト粒子と比べて、主流煙中のホルムアルデヒドを効果的に除去できることがわかる。
【0061】
実験3:ハイドロタルサイト粒子のコア粒子への付着力
(3−1)ハイドロタルサイト担持粒子の作製
コア粒子として、以下のコア粒子A〜Cを使用した。
コア粒子A:活性炭粒子(平均粒径:400μm;BET比表面積:1252m2/g)
コア粒子B:ハイドロタルサイト粒子(Mg6Al2(OH)16CO3・4H2O、平均粒径:700μm;BET比表面積:103.8m2/g)
コア粒子C:セルローストリアセテート顆粒(平均粒径:400μm;日本国特許第5786038号に記載の粒子)
コア粒子Aおよびコア粒子Bは、多孔質粒子である。
【0062】
100mgのハイドロタルサイト粒子(Mg6Al2(OH)16CO3・4H2O、平均粒径:50nm;BET比表面積:111.5m2/g)を水500μLに懸濁し、1gのコア粒子と混合し、ハイドロタルサイト粒子とコア粒子が均一に混ざるまで撹拌し、スラリー状のサンプルを得た。得られたスラリー状のサンプルをオーブン(100℃、60分)で乾燥させて、ハイドロタルサイト担持粒子(複合粒子)を作製した。コア粒子Aを用いて得られたハイドロタルサイト担持粒子を、複合粒子Aと呼び、コア粒子Bを用いて得られたハイドロタルサイト担持粒子を、複合粒子Bと呼び、コア粒子Cを用いて得られたハイドロタルサイト担持粒子を、複合粒子Cと呼ぶ。
【0063】
また、100mgのハイドロタルサイト粒子(Mg6Al2(OH)16CO3・4H2O、平均粒径:50nm;BET比表面積:111.5m2/g)を、1gのコア粒子Aと振とう器を用いてよく混合して、ハイドロタルサイト担持粒子(複合粒子)を作製した。この複合粒子を複合粒子Dと呼ぶ。
【0064】
(3−2)保水率の測定
コア粒子1gを水10mLに浸漬して、1分間経過後に金属メッシュ(0.1mm)を用いて濾過し、コア粒子と水とを分離した。分離されたコア粒子の重量を測定した。測定された重量から、コア粒子の保水率を以下の式により求めた。
保水率(%)=[{(金属メッシュを通過した後のコア粒子の重量)−(水に浸漬する前のコア粒子の重量)}/(水に浸漬する前のコア粒子の重量)]×100
【0065】
(3−3)付着力の測定
ハイドロタルサイト粒子のコア粒子への付着力を以下のとおり測定した。
【0066】
複合粒子A〜Cの場合
100mgのハイドロタルサイト粒子(Mg6Al2(OH)16CO3・4H2O、平均粒径:50nm;BET比表面積:111.5m2/g)を水500μLに懸濁し、1gのコア粒子と混合し、混合液をハイドロタルサイト粒子とコア粒子が均一に混ざるまで撹拌し、スラリー状のサンプルを得た。得られたスラリー状のサンプルをオーブン(100℃、60分)で乾燥させた。乾燥させたサンプルを、メッシュ0.15mmのふるいにかけた。
【0067】
ふるいを透過した微粉体を水500μLに懸濁し、ふるいを透過しなかった粒子に添加して混合し、オーブン(100℃、60分)で乾燥させた。乾燥させたサンプルを再度ふるいにかけた。この作業(混合、乾燥およびふるい分けの作業)を合計3回繰り返した。最後にふるいを透過した微粉体の重量を測定した。
【0068】
複合粒子Dの場合
100mgのハイドロタルサイト粒子(Mg6Al2(OH)16CO3・4H2O、平均粒径:50nm;BET比表面積:111.5m2/g)を、1gのコア粒子Aと振とう器を用いてよく混合した。得られた混合物を、メッシュ0.15mmのふるいにかけた。
【0069】
ふるいを透過した微粉体を、ふるいを透過しなかった粒子に添加して混合した。得られた混合物を再度ふるいにかけた。この作業(混合およびふるい分けの作業)を合計3回繰り返した。最後にふるいを透過した微粉体の重量を測定した。
【0070】
ハイドロタルサイト粒子(平均粒径:50nm)のコア粒子への付着力を以下の式により求めた。
付着力(%)={(100(mg)−ふるいを透過した微粉体の重量(mg))/100(mg)}×100
【0071】
(3−4)結果
コア粒子A〜Cの保水率を以下に示す。
コア粒子A: 保水率95%
コア粒子B: 保水率74%
コア粒子C: 保水率34%
【0072】
ハイドロタルサイト粒子(平均粒径:50nm)のコア粒子への付着力(%)を図8に示す。
【0073】
保水率の結果および図8の結果から以下のことがわかる。ナノ粒子と保水率を有するコア粒子とを水の存在下で混合し、混合物を乾燥させて複合粒子を作製すると、ナノ粒子をコア粒子に担持(付着)させることができる(複合粒子A〜C)。一方、ナノ粒子と保水率を有するコア粒子とを水の非存在下で混合して複合粒子を作製すると、ハイドロタルサイト粒子の付着率は低くなる(複合粒子D)。また、複合粒子A〜Cの結果から、コア粒子が、高い保水率を有する(すなわち、表面に水を保持する能力が高い)ほど、ハイドロタルサイト粒子の付着率を高めることができることがわかる。
【0074】
実験4:参考例
ハイドロタルサイト粒子の粒径とホルムアルデヒド吸着率との関係、並びにハイドロタルサイト粒子の粒径と通気抵抗との関係について調べた。
【0075】
(4−1)ハイドロタルサイト粒子の調製
ハイドロタルサイト粒子(Mg6Al2(OH)16CO3・4H2O)を粉砕して分級することにより、100〜300μmの粒子径のハイドロタルサイト粒子、300〜500μmの粒子径のハイドロタルサイト粒子、500〜700μmの粒子径のハイドロタルサイト粒子、および700μm以上の粒子径のハイドロタルサイト粒子を調製した。
【0076】
(4−2)シガレットの作製
得られたハイドロタルサイト粒子を、互いに離間して配置された2つのフィルタープラグ(濾材:アセテートトウ;直径:7.7mm;長さ:5mm)の間のスペース(フィルターキャビティー部)に配置して、フィルタープラグの周囲にプラグ巻取紙を巻くことにより、吸着剤粒子含有フィルターを作製した。
【0077】
作製された吸着剤粒子含有フィルターをたばこロッド(直径:7.7mm;長さ:57mm;たばこ充填材:605mg)に連結して、シガレットを作製した(図5参照)。連結は、チップペーパーで連結部を覆うように行った。
【0078】
(4−3)ホルムアルデヒド吸着率の測定
実験2に記載の方法と同じ方法で、主流煙中のホルムアルデヒド量を測定し、測定されたホルムアルデヒド量を以下の式に代入することにより、ホルムアルデヒド吸着率を求めた。
(ホルムアルデヒド吸着率)=[{(コントロールシガレットで測定されたホルムアルデヒド量)−(測定されたホルムアルデヒド量)}/(コントロールシガレットで測定されたホルムアルデヒド量)]
なお、コントロールシガレットは、吸着剤粒子を添加しなかったことを除いて、上記で作製されたシガレットと同じ構成を有する。
【0079】
(4−4)フィルター通気抵抗の測定
実験1に記載の方法と同じ方法で、フィルター通気抵抗を測定した。
【0080】
(4−5)結果
ホルムアルデヒド吸着率およびシガレット通気抵抗の結果をそれぞれ図9および図10に示す。図9の横軸は、フィルターに添加されたハイドロタルサイト粒子の量を体積で表す。図10の横軸は、フィルターに添加されたハイドロタルサイト粒子の量を重量で表す。
【0081】
図9の結果から、吸着剤粒子の粒径を小さくすると、ホルムアルデヒド吸着能が向上することがわかる。図10の結果から、吸着剤粒子の粒径を小さくすると、通気抵抗が増大することがわかる。
【符号の説明】
【0082】
10・・・フィルター、11・・・複合粒子、11a・・・コア粒子、11b・・・ナノ粒子、12・・・フィルタープラグ、13・・・プラグ巻取紙、20・・・たばこロッド、21・・・たばこ充填材、22・・・たばこ巻紙、30・・・シガレット、31・・・洗気瓶、32・・・捕集液、33・・・氷水バス、34・・・ガラス管、35・・・ガラス管、36・・・ケンブリッジパッド、37・・・自動喫煙器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10