【実施例】
【0038】
実験1:フィルター通気抵抗
(1−1)複合粒子含有フィルターの作製
活性炭粒子(平均粒径:400μm;BET比表面積:1252m
2/g)に、ハイドロタルサイト粒子(Mg
6Al
2(OH)
16CO
3・4H
2O、平均粒径:50nm;BET比表面積:111.5m
2/g)を担持させて、ハイドロタルサイト担持活性炭(以下、複合粒子ともいう)を調製した。ハイドロタルサイト粒子の活性炭粒子への担持は、具体的には、以下のとおり行った。活性炭粒子20mgとハイドロタルサイト粒子10mgとの混合物に、水40μLを添加し、これを活性炭粒子とハイドロタルサイト粒子が均一に混ざるまで撹拌して、スラリー状のサンプルを得た。得られたスラリー状のサンプルをオーブン(100℃、60分)で乾燥させ、その後、22℃の温度および60%の湿度の条件下に48時間置いて調和し、複合粒子を得た。
【0039】
得られた複合粒子を、互いに離間して配置された2つのフィルタープラグ(濾材:アセテートトウ;直径:7.7mm;長さ:5mm)の間のスペース(フィルターキャビティー部)に配置して、フィルタープラグの周囲にプラグ巻取紙を巻くことにより、複合粒子含有フィルターを作製した(
図5参照)。
【0040】
(1−2)ナノ粒子含有フィルターの作製
ハイドロタルサイト粒子(Mg
6Al
2(OH)
16CO
3・4H
2O、平均粒径:50nm;BET比表面積:111.5m
2/g)を、2つのフィルタープラグ(濾材:アセテートトウ;直径:7.7mm;長さ:5mm)の間のスペース(フィルターキャビティー部)に配置して、フィルタープラグの周囲にプラグ巻取紙を巻くことにより、ナノ粒子含有フィルター(比較例1)を作製した。
【0041】
(1−3)コア粒子含有フィルターの作製
活性炭粒子(平均粒径:400μm;BET比表面積:1252m
2/g)を、2つのフィルタープラグ(濾材:アセテートトウ;直径:7.7mm;長さ:5mm)の間のスペース(フィルターキャビティー部)に配置して、フィルタープラグの周囲にプラグ巻取紙を巻くことにより、コア粒子含有フィルター(比較例2)を作製した。
【0042】
(1−4)フィルター通気抵抗の測定
フィルター通気抵抗はISO6565:2015Draw resistance of cigarettes and pressure drop of filter rodsに準拠し測定を実施した。
【0043】
(1−5)結果
複合粒子含有フィルターおよびナノ粒子含有フィルターのフィルター通気抵抗を
図3に示す。複合粒子含有フィルターおよびコア粒子含有フィルターのフィルター通気抵抗を
図4に示す。
【0044】
図3において、横軸の添加量は、ハイドロタルサイト粒子(ナノ粒子)の添加量(mg)を指す。また、
図3において、複合粒子含有フィルターのフィルター通気抵抗は、以下の式により計算される値を示す。
(複合粒子含有フィルターのフィルター通気抵抗)=(複合粒子含有フィルターを用いて測定されたフィルター通気抵抗)−(複合粒子含有フィルターで使用された活性炭粒子と同量の活性炭粒子を含むフィルターで測定されたフィルター通気抵抗)
また、
図3において、ナノ粒子含有フィルターのフィルター通気抵抗は、以下の式により計算される値を示す。
(ナノ粒子含有フィルターのフィルター通気抵抗)=(ナノ粒子含有フィルターを用いて測定されたフィルター通気抵抗)−(ナノ粒子を含まないフィルターを用いて測定されたフィルター通気抵抗)。
【0045】
図4において、横軸の添加量は、複合粒子または活性炭粒子の添加量(mg)を指す。また、
図4において、複合粒子含有フィルターのフィルター通気抵抗は、以下の式により計算される値を示す。
(複合粒子含有フィルターのフィルター通気抵抗)=(複合粒子含有フィルターを用いて測定されたフィルター通気抵抗)−(複合粒子を含まないフィルターで測定されたフィルター通気抵抗)
また、
図4において、コア粒子含有フィルターのフィルター通気抵抗は、以下の式により計算される値を示す。
(コア粒子含有フィルターのフィルター通気抵抗)=(コア粒子含有フィルターを用いて測定されたフィルター通気抵抗)−(コア粒子を含まないフィルターを用いて測定されたフィルター通気抵抗)。
【0046】
図3の結果から以下のことがわかる。平均粒径50nmのハイドロタルサイト粒子を直接フィルターに添加すると、ハイドロタルサイト粒子の添加量に応じて、フィルター通気抵抗が著しく増大する。一方、平均粒径50nmのハイドロタルサイト粒子をハイドロタルサイト担持活性炭(複合粒子)の形態でフィルターに添加すると、ハイドロタルサイト粒子の存在が、フィルター通気抵抗を大きく増大させない。
【0047】
図4の結果から以下のことがわかる。平均粒径50nmのハイドロタルサイト粒子をハイドロタルサイト担持活性炭(複合粒子)の形態でフィルターに添加すると、かかるフィルターは、同量の活性炭粒子を添加したフィルターと同等のフィルター通気抵抗を示し、ハイドロタルサイト粒子の存在が、フィルター通気抵抗を大きく増大させない。
【0048】
これらの結果から、平均粒径50nmのハイドロタルサイト粒子は、ハイドロタルサイト担持活性炭(複合粒子)の形態でフィルターに添加すると、直接フィルターに添加した場合と比べて、ハイドロタルサイト粒子の存在が、フィルター通気抵抗を増加させにくいことがわかる。
【0049】
実験2:ホルムアルデヒド低減率
(2−1)本発明のシガレットの作製
実験1と同様の方法で、複合粒子含有フィルターを作製した。作製された複合粒子含有フィルターをたばこロッド(直径:7.7mm;長さ:57mm;たばこ充填材:605mg)に連結して、本発明のシガレットを作製した。連結は、チップペーパー(図示せず)で連結部を覆うように行った。作製された本発明のシガレットを模式的に
図5に示す。
【0050】
図5において、フィルター10は、互いに離間して配置された2つのフィルタープラグ12と、その周囲に巻かれたプラグ巻取紙13と、フィルタープラグ12の間に配置された複合粒子11とから構成される。たばこロッド20は、たばこ充填材21とその周囲に巻かれたたばこ巻紙22とから構成される。
【0051】
(2−2)比較例のシガレットの作製
ハイドロタルサイト担持活性炭(複合粒子)の代わりに、10mgのハイドロタルサイト粒子(Mg
6Al
2(OH)
16CO
3・4H
2O、平均粒径:700μm;BET比表面積:103.8m
2/g)を用いた以外は、本発明のシガレットと同様の方法で、比較例のシガレットを作製した。平均粒径700μmのハイドロタルサイト粒子は、先行技術文献(WO2003/056947)で使用される吸着剤粒子に相当する。
【0052】
(2−3)主流煙中のホルムアルデヒド量の測定
主流煙中のホルムアルデヒドの量をカナダ公定法(2,4−DNPH−HPLC法)により測定し、ホルムアルデヒドの低減率を求めた。
【0053】
まず、2,4−ジニトロフェニルヒドラジン(DNPH)9.51gをアセトニトリル1Lに加温して溶解した後、60%過塩素酸5.6mLを加え、超純水を加えて2Lの捕集液を調製した。
【0054】
図6を参照して測定装置の概要を説明する。
図6に示すように、捕集用洗気瓶31にDNPH捕集液32を入れる。洗気瓶31の容量は100mLであり、DNPH捕集液32の量を80mLとした。この洗気瓶31を氷水バス33に入れて氷冷する。洗気瓶31内の捕集液32に、シガレット30が取り付けられるガラス管34の下端を浸漬する。洗気瓶31のデッドボリュームに連通するように、ガラス管35およびケンブリッジパッド36を取り付け、ケンブリッジパッド36と自動喫煙器37とを接続する。
【0055】
ガラス管34にシガレット30を取り付け、ISO準拠の標準喫煙条件でシガレット30を自動喫煙させる。すなわち、シガレット1本につき、空パフ1回で2秒間35mL吸煙する動作を58秒間隔で繰り返す。主流煙がバブリングしている間に、ホルムアルデヒドはDNPHによって誘導体化される。測定用シガレットは2本とした。このとき、いずれの吸着剤粒子を用いたシガレットでも圧力損失が同一になるように調整した。
【0056】
上記のようにして生成した誘導体を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって測定する。まず、捕集液を濾過した後、Trizma Base液で希釈する(捕集液4mL、Trizma Base液6mL)。この液をHPLCで測定する。HPLC測定条件は以下の通りである。
カラム:HP LiChrospher 100RP−18(5μ)250×4mm
ガードカラム:HP LiChrospher 100RP−18(5μ)4×4mm
カラム温度:30℃
検出波長:DAD356nm
注入量:20μL
移動相:3相によるグラジエント(A液:アセトニトリル30%、テトラヒドロフラン10%およびイソプロパノール1%を含有する超純水水溶液、B液:アセトニトリル65%、テトラヒドロフラン1%およびイソプロパノール1%を含有する超純水水溶液、C液:アセトニトリル100%)。
【0057】
コントロール実験として、ハイドロタルサイト担持活性炭(複合粒子)もハイドロタルサイト粒子(平均粒径:700μm)も含有しないフィルターを備えたシガレット(以下、コントロールシガレットという)について、主流煙中のホルムアルデヒド量を測定した。
【0058】
測定されたホルムアルデヒド量を以下の式に代入することにより、ホルムアルデヒド低減率を求めた。
(ホルムアルデヒド低減率)=[{(コントロールシガレットで測定されたホルムアルデヒド量)−(本発明のシガレットまたは比較例のシガレットで測定されたホルムアルデヒド量)}/(コントロールシガレットで測定されたホルムアルデヒド量)]×100
【0059】
(2−4)結果
本発明のシガレットおよび比較例のシガレットのホルムアルデヒド(FA)低減率を
図7に示す。
【0060】
図7の結果から、ハイドロタルサイト担持活性炭(複合粒子)は、平均粒径700μmのハイドロタルサイト粒子と比べて、主流煙中のホルムアルデヒドを効果的に除去できることがわかる。
【0061】
実験3:ハイドロタルサイト粒子のコア粒子への付着力
(3−1)ハイドロタルサイト担持粒子の作製
コア粒子として、以下のコア粒子A〜Cを使用した。
コア粒子A:活性炭粒子(平均粒径:400μm;BET比表面積:1252m
2/g)
コア粒子B:ハイドロタルサイト粒子(Mg
6Al
2(OH)
16CO
3・4H
2O、平均粒径:700μm;BET比表面積:103.8m
2/g)
コア粒子C:セルローストリアセテート顆粒(平均粒径:400μm;日本国特許第5786038号に記載の粒子)
コア粒子Aおよびコア粒子Bは、多孔質粒子である。
【0062】
100mgのハイドロタルサイト粒子(Mg
6Al
2(OH)
16CO
3・4H
2O、平均粒径:50nm;BET比表面積:111.5m
2/g)を水500μLに懸濁し、1gのコア粒子と混合し、ハイドロタルサイト粒子とコア粒子が均一に混ざるまで撹拌し、スラリー状のサンプルを得た。得られたスラリー状のサンプルをオーブン(100℃、60分)で乾燥させて、ハイドロタルサイト担持粒子(複合粒子)を作製した。コア粒子Aを用いて得られたハイドロタルサイト担持粒子を、複合粒子Aと呼び、コア粒子Bを用いて得られたハイドロタルサイト担持粒子を、複合粒子Bと呼び、コア粒子Cを用いて得られたハイドロタルサイト担持粒子を、複合粒子Cと呼ぶ。
【0063】
また、100mgのハイドロタルサイト粒子(Mg
6Al
2(OH)
16CO
3・4H
2O、平均粒径:50nm;BET比表面積:111.5m
2/g)を、1gのコア粒子Aと振とう器を用いてよく混合して、ハイドロタルサイト担持粒子(複合粒子)を作製した。この複合粒子を複合粒子Dと呼ぶ。
【0064】
(3−2)保水率の測定
コア粒子1gを水10mLに浸漬して、1分間経過後に金属メッシュ(0.1mm)を用いて濾過し、コア粒子と水とを分離した。分離されたコア粒子の重量を測定した。測定された重量から、コア粒子の保水率を以下の式により求めた。
保水率(%)=[{(金属メッシュを通過した後のコア粒子の重量)−(水に浸漬する前のコア粒子の重量)}/(水に浸漬する前のコア粒子の重量)]×100
【0065】
(3−3)付着力の測定
ハイドロタルサイト粒子のコア粒子への付着力を以下のとおり測定した。
【0066】
複合粒子A〜Cの場合
100mgのハイドロタルサイト粒子(Mg
6Al
2(OH)
16CO
3・4H
2O、平均粒径:50nm;BET比表面積:111.5m
2/g)を水500μLに懸濁し、1gのコア粒子と混合し、混合液をハイドロタルサイト粒子とコア粒子が均一に混ざるまで撹拌し、スラリー状のサンプルを得た。得られたスラリー状のサンプルをオーブン(100℃、60分)で乾燥させた。乾燥させたサンプルを、メッシュ0.15mmのふるいにかけた。
【0067】
ふるいを透過した微粉体を水500μLに懸濁し、ふるいを透過しなかった粒子に添加して混合し、オーブン(100℃、60分)で乾燥させた。乾燥させたサンプルを再度ふるいにかけた。この作業(混合、乾燥およびふるい分けの作業)を合計3回繰り返した。最後にふるいを透過した微粉体の重量を測定した。
【0068】
複合粒子Dの場合
100mgのハイドロタルサイト粒子(Mg
6Al
2(OH)
16CO
3・4H
2O、平均粒径:50nm;BET比表面積:111.5m
2/g)を、1gのコア粒子Aと振とう器を用いてよく混合した。得られた混合物を、メッシュ0.15mmのふるいにかけた。
【0069】
ふるいを透過した微粉体を、ふるいを透過しなかった粒子に添加して混合した。得られた混合物を再度ふるいにかけた。この作業(混合およびふるい分けの作業)を合計3回繰り返した。最後にふるいを透過した微粉体の重量を測定した。
【0070】
ハイドロタルサイト粒子(平均粒径:50nm)のコア粒子への付着力を以下の式により求めた。
付着力(%)={(100(mg)−ふるいを透過した微粉体の重量(mg))/100(mg)}×100
【0071】
(3−4)結果
コア粒子A〜Cの保水率を以下に示す。
コア粒子A: 保水率95%
コア粒子B: 保水率74%
コア粒子C: 保水率34%
【0072】
ハイドロタルサイト粒子(平均粒径:50nm)のコア粒子への付着力(%)を
図8に示す。
【0073】
保水率の結果および
図8の結果から以下のことがわかる。ナノ粒子と保水率を有するコア粒子とを水の存在下で混合し、混合物を乾燥させて複合粒子を作製すると、ナノ粒子をコア粒子に担持(付着)させることができる(複合粒子A〜C)。一方、ナノ粒子と保水率を有するコア粒子とを水の非存在下で混合して複合粒子を作製すると、ハイドロタルサイト粒子の付着率は低くなる(複合粒子D)。また、複合粒子A〜Cの結果から、コア粒子が、高い保水率を有する(すなわち、表面に水を保持する能力が高い)ほど、ハイドロタルサイト粒子の付着率を高めることができることがわかる。
【0074】
実験4:参考例
ハイドロタルサイト粒子の粒径とホルムアルデヒド吸着率との関係、並びにハイドロタルサイト粒子の粒径と通気抵抗との関係について調べた。
【0075】
(4−1)ハイドロタルサイト粒子の調製
ハイドロタルサイト粒子(Mg
6Al
2(OH)
16CO
3・4H
2O)を粉砕して分級することにより、100〜300μmの粒子径のハイドロタルサイト粒子、300〜500μmの粒子径のハイドロタルサイト粒子、500〜700μmの粒子径のハイドロタルサイト粒子、および700μm以上の粒子径のハイドロタルサイト粒子を調製した。
【0076】
(4−2)シガレットの作製
得られたハイドロタルサイト粒子を、互いに離間して配置された2つのフィルタープラグ(濾材:アセテートトウ;直径:7.7mm;長さ:5mm)の間のスペース(フィルターキャビティー部)に配置して、フィルタープラグの周囲にプラグ巻取紙を巻くことにより、吸着剤粒子含有フィルターを作製した。
【0077】
作製された吸着剤粒子含有フィルターをたばこロッド(直径:7.7mm;長さ:57mm;たばこ充填材:605mg)に連結して、シガレットを作製した(
図5参照)。連結は、チップペーパーで連結部を覆うように行った。
【0078】
(4−3)ホルムアルデヒド吸着率の測定
実験2に記載の方法と同じ方法で、主流煙中のホルムアルデヒド量を測定し、測定されたホルムアルデヒド量を以下の式に代入することにより、ホルムアルデヒド吸着率を求めた。
(ホルムアルデヒド吸着率)=[{(コントロールシガレットで測定されたホルムアルデヒド量)−(測定されたホルムアルデヒド量)}/(コントロールシガレットで測定されたホルムアルデヒド量)]
なお、コントロールシガレットは、吸着剤粒子を添加しなかったことを除いて、上記で作製されたシガレットと同じ構成を有する。
【0079】
(4−4)フィルター通気抵抗の測定
実験1に記載の方法と同じ方法で、フィルター通気抵抗を測定した。
【0080】
(4−5)結果
ホルムアルデヒド吸着率およびシガレット通気抵抗の結果をそれぞれ
図9および
図10に示す。
図9の横軸は、フィルターに添加されたハイドロタルサイト粒子の量を体積で表す。
図10の横軸は、フィルターに添加されたハイドロタルサイト粒子の量を重量で表す。
【0081】
図9の結果から、吸着剤粒子の粒径を小さくすると、ホルムアルデヒド吸着能が向上することがわかる。
図10の結果から、吸着剤粒子の粒径を小さくすると、通気抵抗が増大することがわかる。