(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の噴射ノズルと前記第2の噴射ノズルの間の距離が、前記打止め深度と前記根固めグラウト上端深度との間の距離以下であることを特徴とする請求項3又は4に記載の杭の施工方法。
前記流動性固化材がセメントミルクであって、周面グラウト用のセメントミルクの水セメント比が、根固めグラウト用のセメントミルクの水セメント比よりも大きいことを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載の杭の施工方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2の杭の施工方法では、杭の周面グラウトが必要な区間は流動性固化材のジェットを併用したバイブロハンマ工法で杭を打ち込むが、流動性固化材は一般に水に比べて粘度が高く比重が重いため、同じ吐出圧力の場合、ウォータージェットに比べてジェット吐出量が少なくなる。その一方、周面グラウトが必要な区間には、元の地盤強度が高い場合や、礫塊等の障害物が埋没している場合もある。このような地盤では、ジェット吐出量が少なくなると杭の打込み及び礫塊等の排除が困難になるため、長時間のジェット噴射が必要となって大量の流動性固化材が必要となり、著しく不経済になる。
【0009】
ウォータージェットのように現場近傍の河川や海から比較的自由に水を調達できる場合と比べて、流動性固化材の場合は事前に準備できる量に限りがあるため、大量の使用により不足を生じると施工を継続できなくなることがある。さらに、特許文献2の杭の施工方法は、杭打ち込み中に流動性固化材を噴射するため、杭が打ち込み不能になった場合、直ちに対応措置を講じないと流動性固化材の硬化が進み杭の撤去が困難又は不能となり、工費増大と工期遅延を生じるおそれがある。
【0010】
特許文献3では、周面グラウトを形成するために、杭の打込み完了後に噴射ノズルを引張ることにより杭から脱離可能としているが、杭の打込み中に噴射ノズルが外れた場合、それ以上の杭が打込み不能となるという問題がある。
【0011】
また、特許文献3の施工方法の一部を変更し、根固めグラウトの形成後に噴射ノズルを引き抜かずにその位置にて流動性固化材を噴射し続けることにより、杭を伝って上昇する流動性固化材により周面グラウトを形成させる工法も考えられる。しかしながらこの工法には幾つかの問題がある。先ず、周面グラウトの確実な形成が担保されず、施工管理が困難である。さらに、杭先端から流動性固化材を噴射し続けると、杭内にも流動性固化材が充填されるため不経済である上、施工時間も長くかかる。またさらに、流動性固化材がセメントミルクである場合、周面グラウト用のセメントミルクは水セメント比(W/C%)が150%程度が適切である一方、根固めグラウト用のセメントミルクは65%程度を用いる必要がある。従って、根固めグラウト用の流動性固化材を周面グラウト処理にも兼用するとさらに不経済となる。
【0012】
以上の問題点から本発明は、少なくとも周面グラウトを適切に形成でき、好適には根固めグラウト及び周面グラウトをそれぞれ適切に形成できると共に、流動性固化材を効率的に使用できる杭の施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を実現するために本発明は、以下の構成を提供する。
・本発明の態様は、杭の先端近傍に取り付けられた複数の噴射ノズルと、前記杭の上端に取り付けられたバイブロハンマとを用いて前記杭を地盤に打ち込むための杭の施工方法において、
前記バイブロハンマによる振動を与えかつ前記噴射ノズルから水を噴射しながら前記杭を打止め深度まで打ち込む打設工程と、
前記打設工程の後、
前記打設工程により緩められた周辺地盤に流動性固化材を注入することにより杭周面に周面グラウトを形成するべく、前記バイブロハンマによる振動を与えながら前記杭と共に前記噴射ノズルを周面グラウト上端深度まで引上げかつ前記周面グラウト上端深度から降下させ、少なくとも前記周面グラウト上端深度からの降下時に前記噴射ノズルから流動性固化材を注入する周面グラウト処理工程とを有することを特徴とする。
・ 上記態様において、前記周面グラウト処理工程において周面グラウト用の流動性固化材を注入し、かつ、
前記打設工程の後であって前記周面グラウト処理工程の前又は後に、前記バイブロハンマによる振動を与えながら前記杭と共に前記噴射ノズルを前記打止め深度と根固めグラウト上端深度との間で引上げかつ降下させ、前記噴射ノズルから根固めグラウト用の流動性固化材を注入する根固めグラウト処理工程をさらに有することが、好適である。
・ 上記態様において、前記複数の噴射ノズルが、前記杭の先端に対し相対的に近い位置にある複数の第1の噴射ノズルと、相対的に遠い位置にある複数の第2の噴射ノズルとから構成され、
前記周面グラウト処理工程において、前記バイブロハンマによる振動を与えかつ前記杭と共に前記第2の噴射ノズルを周面グラウト上端深度まで引上げかつ前記周面グラウト上端深度から降下させ、少なくとも前記周面グラウト上端深度からの降下時に前記第2の噴射ノズルから周面グラウト用の流動性固化材を注入し、かつ、
前記打設工程の後であって前記周面グラウト処理工程の前又は後に、前記バイブロハンマによる振動を与えながら前記杭と共に前記第1の噴射ノズルを前記打止め深度と根固めグラウト上端深度との間で引上げかつ降下させ、前記第1の噴射ノズルから根固めグラウト用の流動性固化材を注入する根固めグラウト処理工程をさらに有することが、好適である。
・ 上記態様において、前記複数の噴射ノズルが、前記杭の先端に対し相対的に近い位置にある複数の第1の噴射ノズルと、相対的に遠い位置にある複数の第2の噴射ノズルとから構成され、
前記周面グラウト処理工程において、前記バイブロハンマによる振動を与えかつ前記杭と共に前記第2の噴射ノズルを周面グラウト上端深度まで引上げかつ前記周面グラウト上端深度から降下させ、少なくとも前記周面グラウト上端深度からの降下時に前記第2の噴射ノズルから周面グラウト用の流動性固化材を注入し、かつ、
前記周面グラウト処理工程と並行して、前記第1の噴射ノズルから根固めグラウト用の流動性固化材を注入する根固めグラウト処理工程を行うことが、好適である。
・ 上記態様において、前記第1の噴射ノズルと前記第2の噴射ノズルの間の距離が、前記打止め深度と前記根固めグラウト上端深度との間の距離以下であることが、好適である。
・ 上記態様において、前記流動性固化材がセメントミルクである場合、周面グラウト用のセメントミルクの水セメント比が、根固めグラウト用のセメントミルクの水セメント比よりも大きいことが、好適である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の杭の施工方法では、打設工程において流動性固化材を用いず、JV工法を用いて杭を打止め深度まで打ち込むことで、杭打設中のジェットの吐出量を最大吐出能力程度に高く保ち続けることが可能である。その結果、予定された打止め深度まで速やかに杭を打ち込むことができる。従って、上述した特許文献2における杭の打設中に流動性固化材を噴射することによって生じる種々の問題を生じない。
【0015】
また、JV工法により一度杭を打ち込んだ後に行われる流動性固化材注入工程は、JV工法によって地盤が緩められかつ障害物も除去された範囲において杭を軸方向に移動させて行うので、水に比べて吐出量が少ない流動性固化材の注入であっても杭が移動不能となる事態を生じることなく、円滑に流動性固化材の注入を行うことができる。
【0016】
さらに上述した特許文献3における噴射ノズルの引上げによる周面グラウト処理を行わず、杭を軸方向に移動させつつ根固めグラウト範囲と周面グラウト範囲の各々に応じて適切な流動性固化材(セメントミルクの場合は水セメント比)を使い分けて注入することによって、杭の先端及び周面の双方において適切な支持力が得られる。加えて、流動性固化材を無駄なく効率的に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に示した本発明の各実施形態の例を参照して本発明による杭の施工方法を説明する。
【0019】
(1)施工システムの構成
図1は、本発明の杭の施工方法を実施するための施工システムの一例を概略的に示す斜視図である。一例としてここでは、鋼管杭を海底の地盤に鉛直方向に打ち込むための海上での施工システムを示している。しかしながら、杭は、鋼管杭以外の杭、例えば鋼管矢板、鋼矢板等とすることができる。また本発明は、陸上での施工にも適用可能であり、打込み方向は傾斜方向でもよい。
【0020】
図1の施工システムは、起重機船10の上に設置されている。ここでは一例として、流動性固化材としてセメントミルクを用いる。セメントサイロ11に貯留されたセメントと、水タンク13に貯留された水をそれぞれ1又は複数のミキシングプラント12に送り、1又は複数のミキシングプラント12において、水とセメントを混練することによりセメントミルクが調製される。
【0021】
セメントミルクにおける水とセメントの重量比率である水セメント比(W/C%)は、杭の用途及び地盤条件により適宜設定される。水セメント比は、例えば50〜150%の範囲が一般的である。セメントミルクには、必要に応じて、減水、凝結遅延、膨張、水中不分離等に関係する添加材が添加される。ミキシングプラント12の台数は、施工条件等から必要に応じて決定される。複数のミキシングプラント12を設けることにより、異なるW/C%を有するセメントミルクを調製することもできる。
【0022】
ミキシングプラント12で生成されたセメントミルクは、図示しない適宜の切替装置を介して1又は複数の高圧流体送出装置14の各々へ供給可能である。
【0023】
一方、海から取水して水タンク13に貯留された水は、図示しない適宜の切替装置を介して1又は複数の高圧流体送出装置14の各々へ供給可能である。なお、海水に塵等の浮遊物がない場合は水タンク13を省略してもよい。
【0024】
各高圧流体送出装置14は、供給されたセメントミルク又は水を高圧にて送出することができる。複数の高圧流体送出装置14を設けたり、各高圧流体送出装置に供給する流体を変えることにより、水とセメントミルクを必要に応じて切り替えて吐出可能となる。また、同様な方法により、異なるW/C%を有するセメントミルクを必要に応じて切り替えて吐出可能となる。高圧流体送出装置14の台数は、施工条件等から必要に応じて決定される。図示しないが、各高圧流体送出装置14の送出口には、適宜の切替装置と、吐出量を管理するために流量計とが設けられている。
【0025】
1又は複数の高圧流体送出装置14から送出されたセメントミルク又は水は、複数の高圧ホース17を介して、鋼管杭1に取り付けられた複数のジェット配管部材へ圧送される。鋼管杭1の上端にはバイブロハンマ2が取り付けられている。バイブロハンマ2はクレーンにより吊下されている。
図1の例では電動式であるバイブロハンマ2を駆動するために発動発電機20が設けられ、操作ユニット21により操作される。陸上施工の場合、これらの装置は全て作業ヤードに設置される。
【0026】
図2は、複数のジェット配管部材とバイブロハンマを取り付けた鋼管杭の一例の概略側面図である。複数のジェット配管部材は、複数の導通管9と、各導通管9の先端に接続された集約管8と、各集約管8における分岐した各先端にそれぞれ接続された噴射ノズル7とから構成されている。別の例として、複数のジェット配管部材が、複数の導通管9と、各導通管9の先端に接続された噴射ノズル7とから構成されることもできる。いずれの場合も、鋼管杭1の先端近傍に複数の噴射ノズル7が周方向に配置される。複数の噴射ノズル7は、例えば、周方向に60°、90°、120°、180°毎に配置することができる。
【0027】
(2)杭の施工方法の第1の実施形態
図3(a)〜(h)は、
図1に示した施工システム及び
図2に示した鋼管杭を用いた杭の施工方法の第1の実施形態の一例を概略的に示す図である。施工方法についても、一例として、流動性固化材がセメントミルクの場合について説明する(以下の各実施形態も同じ)。なお、本発明の施工方法は、セメントミルク等のセメント系固化材以外の流動性固化材にも適用可能である。
【0028】
<準備工程>
図3(a)は準備工程を示す。打込み対象地盤は、下層側に位置する支持層G1と、支持層界面D0から地表(本例では海底)までの間に存在する所定の地盤G2とからなる。鋼管杭1の上端にはバイブロハンマ2が取り付けられる。鋼管杭1の周囲には、一例として、複数の導通管9と、各導通管9の下端に接続される集約管8と、集約管8の分岐した複数の先端にそれぞれ接続される噴射ノズル7とから構成される複数のジェット配管部材が取り付けられる。各導通管9の上端には、着脱可能な高圧ホース17がカプラーを介してそれぞれ接続されている。高圧ホース17を通して、導通管9に水又はセメントミルクを圧送可能である。
【0029】
本発明の施工方法では、ジェット配管部材を鋼管杭1から取り外す必要がないため、ジェット配管部材の、特に噴射ノズルの鋼管杭1への取り付けに関して詳細な設計は不要であり、所要の強度が確保できれば簡易かつ低コストの手段で取り付けることができる。
【0030】
<打設工程>
図3(b)(c)は、準備工程に続く打設工程を示している。
図3(b)に示すように、打設工程はウォータージェットを用いたJV工法により行う。すなわち、噴射ノズル7から打込み方向に水(符号Wで示す)を噴射しながらバイブロハンマ2による振動を与えることにより、鋼管杭1を杭先端の地盤に対して打ち込む。
【0031】
打込みにおいて水を用いることには、幾つかの利点がある。まず、水はセメントミルクに比べて比重が軽いので、吐出量を、高圧流体送出装置の最大吐出能力程度に高く維持することが可能である。従って、地盤を緩め切削する効果が大きい。一方、セメントミルクを打込みに用いた場合(特許文献2)、長時間のジェット噴射が必要となる結果、大量のセメントミルクを使用することになり不経済となる。水は、現場近傍の河川や海等から自由に調達できる場合が多いが、セメントミルクは調製量に限界があるため、打込みに用いた場合にセメントミルクの不足が起こり得る。
【0032】
従って、鋼管杭1の初期打込みにおいては、バイブロハンマ2による打込みを助けるため、噴射ノズル7からできるだけ高圧のウォータージェットを噴射することが、好適である。
【0033】
バイブロハンマ2は、起振機とチャック装置を有し、チャック装置により鋼管杭1の上端を把持する。電動式バイブロハンマの場合、起振機は、電動モータにより偏心重錘を回転させることにより鋼管杭1の軸方向の振動を発生する。起振機の電動モータ出力は例えば30〜500kW、振動周波数は例えば10〜60Hzである。大型杭の場合は、複数のバイブロハンマを連動させてもよい。
【0034】
図3(c)に示すように、鋼管杭1は、その先端が所定の打止め深度D11に到達するまで打ち込まれる。打止め深度D11は、支持層界面D0よりも所定の距離(例えば杭の直径の3倍程度)だけ深い位置とすることができる。
【0035】
ここで
図4を参照する。
図4は、杭の施工方法における施工管理方法の一例を概略的に示す図である。施工システムには施工管理システムが組み込まれている。施工管理装置26が中心的役割を担い、計測装置等の各機器からデータを収集し制御を行う。施工管理装置26は、所定のプログラムを導入されたコンピュータ、好適にはパーソナルコンピュータにより実施可能である。
【0036】
施工管理装置26は、有線及び/又は無線の通信機能を備えている。本例は海上施工であるので、起重機船10上の機器との間は無線にて通信を行っている。陸上における各機器との通信は、有線又は無線のいずれでもよい。
【0037】
施工管理装置26は、高圧流体送出装置14の送出口に設けた流量計19から水の流量データを連続的に受信する。また、バイブロハンマ2に取り付けたプリズム25と、それを追尾するトータルステーション24により鋼管杭1の鉛直高さが計測される。施工管理装置26は、計測された鉛直高さデータをトータルステーション24から連続的に受信する。
【0038】
施工管理装置26は、水の流量データと鋼管杭1の鉛直高さデータを、予め記憶された施工計画データと比較することにより、杭の打込み速度や水の吐出量を調節するための制御情報を生成する。これにより、打込み中、リアルタイムでの施工管理が可能となる。例えば、計測データ及び/又は制御情報は、施工管理装置26からクレーン22の操作室のモニター23に送信される。
【0039】
施工管理装置26は、鋼管杭1の鉛直高さデータに基づいて、鋼管杭1の打込み停止位置である打止め深度D11を判定する。
図3(c)に示す打止め深度D11に鋼管杭1が到達したならば、ウォータージェットの流量を、アイドリング流量まで下げて、打込みを停止する。アイドリング流量は、機械の性能上、安定して吐出可能な最低流量である。ウォータージェットを停止しないことにより、周辺地盤の土粒子の逆流による噴射ノズルの閉塞を防止できる。噴射ノズルに逆止弁等の逆流防止装置が装備されていれば、ウォータージェットを停止してもよい。バイブロハンマ2は、停止してもよいが、次の引上工程のために稼動させたままでもよい。
【0040】
本発明の打設工程においては、セメントミルクを用いず、水を噴射しながらバイブロハンマによる振動を与えて杭を打ち込むことで、杭打込み中のジェットの吐出量を最大吐出能力程度に高く保ち続けることが可能である。従って、杭の打込み中にセメントミルクを噴射する場合に生じる種々の問題を生じない。
【0041】
<周面グラウト処理工程>
打設工程に続いて周面グラウト処理工程を行う。周面グラウト処理工程は、主として、引上工程とセメントミルク注入工程とからなる。先ず、
図3(d)(e)の引上工程を行う。引上工程は、JV工法又はバイブロハンマ単独工法のいずれを用いて行ってもよい。鋼管杭1の先端が周面グラウト上端深度D12に到達するまで、クレーンにより鋼管杭1を引き上げる。すなわち噴射ノズル7を周面グラウト上端深度D12まで引き上げる。周面グラウト上端深度D12は、後述するセメントミルク注入工程における杭の周面グラウトの上端として予定されている深度であり、設計上別途定められている。
【0042】
引上工程においてJV工法を用いる場合は、水を噴射しながらバイブロハンマによる振動を与えて鋼管杭1を引き上げる。引上工程においてウォータージェットを併用する主たる目的は、上述した通り噴射ノズルの閉塞防止である。噴射ノズルの閉塞防止のための水の吐出量は必要最小限でよく、打設時に比べて少量とする。なお、噴射ノズルに逆流防止装置が装備されていれば、バイブロハンマ単独工法を用いて引上工程を行うことができる。
【0043】
さらに別の実施例として、引上工程において、バイブロハンマによる振動を与えながら、水の噴射ではなくセメントミルクの注入を行うこともできる。
【0044】
図4の施工管理装置26は、鋼管杭1の鉛直高さのデータに基づいて、鋼管杭1の引き上げ停止位置である周面グラウト上端深度D12を判定する。鋼管杭1が、引き上げ停止位置に到達したならば、引き上げを停止する。
【0045】
次に、
図3(f)(g)のセメントミルク注入工程を行う。鋼管杭1が、引上工程の引き上げ停止位置に到達したならば、水をセメントミルク(符号Cで示す)に切り替える。セメントミルクのW/Cは、例えば50〜150%の範囲で必要に応じて設定される。そして、セメントミルクを噴射ノズル7の先端から噴射しながらバイブロハンマ2による振動を与えて、鋼管杭1を定着深度D13まで打ち込む。セメントミルクが固化することにより杭周面グラウトが形成される。定着深度D13は、支持層G1内にあり、打止め深度D11とほぼ同じ位置、それより若干深い位置、又はそれより若干浅い位置でもよい。定着深度D13は、例えば、支持層界面D0よりも杭の直径の2倍程度だけ深い位置とすることができる。
【0046】
セメントミルク注入工程は、一度杭が打ち込まれた地盤に再度打ち込む工程であるため、地盤が緩められているとともに礫塊等の障害物も排除されている。従って、セメントミルク注入による打込みであっても、セメントミルク注入工程で杭が打設不能となる事態を生じない。
【0047】
鋼管杭1の再打込み中は、周面グラウト形成のために鋼管杭1の先端深度毎に必要量のセメントミルクを噴射ノズル7から注入する。鋼管杭1の再打込み速度は、セメントミルク注入時におけるバイブロハンマ2の打込み能力以上には速くできない。従って、
図1に示した高圧流体送出装置14の回転数を下げ、アイドリング状態で運転したとしても、セメントミルクを必要以上に注入することとなり、不経済になるおそれがある。このようなとき、
図1に示すように高圧流体送出装置14が複数台あれば、その一部を停止することが好適である。杭の打込み速度とセメントミルクの必要注入量との兼ね合いにより、必要に応じて高圧流体送出装置14の一部を停止してセメントミルクの注入量を適正に保ち、経済化を図ることが可能である。
【0048】
セメントミルク注入工程では、バイブロハンマ2による振動が、鋼管杭1及び周辺地盤に与えられている。従って、周辺地盤が砂質土の場合には、注入されたセメントミルクが砂質土の間隙に浸透し易くなる。また、周辺地盤が粘性土の場合には、バイブロハンマの振動によって鋼管杭1と地盤に隙間が形成され、その隙間にセメントミルクが浸透し易くなる。その結果、鋼管杭1の外周面とその周囲の土層の間に摩擦力の大きなグラウト層が均一に形成される。これにより、鋼管杭1の支持力を効果的に高めることができる。
【0049】
図4に示した施工管理装置26は、高圧流体送出装置14の送出口に設けた流量計19からセメントミルクの吐出量のデータを連続的に受信する。また、バイブロハンマ2に取り付けたプリズム25とトータルステーション24により鋼管杭1の鉛直高さが計測され、施工管理装置26はそのデータをトータルステーション24から連続的に受信する。
【0050】
施工管理装置26は、セメントミルクの吐出量と鋼管杭1の鉛直高さの各データを併せて、予め記憶されている施工計画データと比較して杭の打込み速度やセメントミルクの吐出量を調節するための制御情報を生成する。これにより、杭の周面グラウト処理をリアルタイムで施工管理することできる。
【0051】
施工管理装置26は、鋼管杭1の鉛直高さのデータに基づいて、鋼管杭1の打込み停止位置である定着深度D13を判定する。
図7(g)に示す定着深度D13に鋼管杭1が到達したならば、バイブロハンマ2とセメントミルク注入を停止し、周面グラウト処理を完了する。
【0052】
周面グラウト処理の施工管理は、鋼管杭1の先端深度毎のセメントミルク注入量を、施工計画と許容公差以内で合致させることを目的として行う。具体的には、鋼管杭1の再打設速度と、セメントミルクの吐出量を調整することによって行う。施工計画におけるセメントミルク注入量は、
図5に基づいて計算する。
【0053】
図5は、セメントミルクの設計注入量を計算するための模式図であって、(a)は、杭及びその周囲の縦断面図であり、(b)は横断面図である。鋼管杭の直径pは、例えば600mm〜1500mm、注入幅qは、例えば150mm〜300mmであるが、この範囲に限定しない。一例として、非特許文献1では、注入幅qを300mmと、セメントミルクの注入により土中に形成されたグラウト中のセメント量をグラウト1m
3中300kgと想定したことが報告されている。なお、非特許文献1のセメントミルクのW/Cは100%である。
【0054】
<後処理工程>
周面グラウト処理工程が完了しセメントミルクの注入を終えた後、
図7(h)に示すように、導通管9のカプラーに接続されていた高圧ホース17を取り外し、解放された接合端を、例えば濁水処理施設への注入管に接続する。続いて、高圧洗浄機により、
図1のミキシングプラント12に注水して洗浄し、ポンプを介して洗浄水を高圧流体送出装置14に送水し、さらに高圧流体送出装置14から高圧ホース17を通し、最後に高圧ホース17から注入管を介して濁水処理施設に注水する。これにより、セメントミルクの圧送系統の洗浄を行う。さらに、濁水処理施設に滞留したスラッジを廃棄して全工程を終了する。この濁水処理施設は必須ではない。
【0055】
本発明では、ジェット配管部材を取り外さず杭に取り付けたまま施工完了するので、ジェット配管装置を回収する場合に比べて、ジェット配管部材特に噴射ノズルの取り付けのために特別な構造が不要であるため、低コストとすることができる。
【0056】
図6は、
図3に示した施工方法の第1の実施形態を模式的に示した図である。
図6の縦方向は地盤中の深度を、横方向は時間の経過をそれぞれ概略的に示している(縦横方向共に、実際の各区間の配分割合を再現したものではない)。
図6中、太線は、杭先端の移動を概略的に示したものである。これは、杭先端近傍に取り付けられた噴射ノズルの概略的な移動にほぼ一致する。太線の塗り潰し模様は、噴射ノズルから送出される高圧流体の種類を区別している。符号Wは水を、符号Cはセメントミルクを表している。引上工程に付した括弧付きのWは、必要に応じて水の噴射が選択されることを示している。
図6中に、
図3(b)〜(g)の各工程との対応関係を示している。
【0057】
(3)杭の施工方法の第2の実施形態
図7(a)(b)は、
図1に示した施工システム、
図2に示した鋼管杭及び
図4に示した施工管理装置を用いた杭の施工方法の第2の実施形態の一例を概略的に示す図である。以下の第2の実施形態の説明において、第1の実施形態と同じ構成については説明を省略する場合がある(以下の他の実施形態についても同じ)。
【0058】
図7(a)は、
図6と同様の図であり、施工方法を模式的に示した図である。太線の塗り潰し模様により、異なるW/C%のセメントミルクを区別している。符号C65は、W/C65%を示し、符号C150は、W/C150%を示す。括弧付きの符号Wは、セメントミルクC150を、水に置換可能であることを示す(以下の同様の図においても同じ)。
図7(b)は、施工後の杭の状態を概略的に示した側面図であり、(a)と(b)は縦方向の深度を揃えて描いている。
【0059】
<準備工程/打設工程>
準備工程及び打設工程は、上述した第1の実施形態で説明した通りである。打設工程は、
図7の区間Iに対応する。打設工程は、ウォータージェットを用いたJV工法により行い、打止め深度D21まで打ち込む。打止め深度D21は、例えば、支持層界面D0よりも所定の距離(例えば杭の直径の3倍程度)だけ深い位置である。
【0060】
<グラウト処理工程>
グラウト処理工程は、
図7の区間IIの根固めグラウト処理工程と、区間IIIの周面グラウト処理工程とからなる。
【0061】
区間IIの根固めグラウト処理工程では、先ず、噴射ノズルから噴射する高圧流体を水からセメントミルクC65に切り替え、打止め深度D21で所定の時間、セメントミルクC65を注入した後、バイブロハンマによる振動を与えながら打止め深度D21から根固めグラウト上端深度D22まで杭を引き上げつつセメントミルクC65を注入する。根固めグラウト上端深度D22は、例えば、支持層界面D0とほぼ同じか又はそれより若干浅い位置である。セメントミルクC65は、根固めグラウト用のセメントミルクである。
【0062】
根固めグラウト上端深度D22で所定の時間、セメントミルクC65を注入した後、バイブロハンマによる振動を与えながら根固めグラウト上端深度D22から定着深度D23まで杭を打ち込みつつセメントミルクC65を注入する。その後、定着深度D23で所定の時間、セメントミルクC65を注入する。定着深度D23は、最終的に杭を定着させる予定の深度であるが、この時点では厳密にこの深度である必要はない。定着深度D23は、例えば、支持層界面D0よりも所定の距離(例えば杭の直径の2倍程度)だけ深い位置である。その後、セメントミルクC65を注入しつつ杭を再び根固めグラウト上端深度D22まで引上げる。
【0063】
杭が根固めグラウト上端深度D22に到達したならば、セメントミルクC65をセメントミルクC150に切り替える。セメントミルクC150は、周面グラウト用のセメントミルクである。周面グラウト用のセメントミルクのW/Cは、通常、根固めグラウト用のセメントミルクのそれよりも大きい。各々のセメントミルクのW/Cの値は一例であり、これらに限られないが、好適には50〜150%の範囲内で必要に応じてそれぞれ設定する(以下の実施形態においても同じ)。
【0064】
濃度の異なるセメントミルクに切り替えた後、引き続き区間IIIの周面グラウト処理工程を行う。この周面グラウト処理工程は、上述した第1の実施形態の周面グラウト処理工程と類似する。
【0065】
第2の実施形態の周面グラウト処理工程も、杭先端を周面グラウト上端深度D24まで引き上げる引上工程と、再び根固めグラウト上端深度D22まで降下させる打込み工程とを有する。第2の実施形態では、この引上げと降下の間、バイブロハンマによる振動を与えながらセメントミルクC150の注入を行う。
【0066】
なお別の実施例として、引上工程は、セメントミルクC150に替えて噴射ノズルの閉塞防止のための水を噴射しつつ行ってもよい。
【0067】
杭の先端が再び根固めグラウト上端深度D22まで到達したならば、セメントミルクC150の注入を停止する。その後、区間IVにおいて、バイブロハンマによる振動のみを与えて杭の先端を定着深度D23まで打込む。
【0068】
なお、区間IIIでは、区間IIで形成した根固め部(D21〜D22)から一旦鋼管が引き抜かれるので、支持層地盤が砂質等の比較的流動性の高い地質の場合、形成した根固め部の周囲地盤が内側に崩れることが懸念される。そのような懸念のある地質においては、区間IVにおいて再びセメントミルクC65を注入しながら、杭の先端を定着深度D23まで打込むことが好適である。
【0069】
これによりグラウト処理工程を完了する。
図7(b)に示すように、第2の実施形態では、杭1の周囲に周面グラウトg1が形成され、杭1の先端に根固めグラウトg2が形成される。
【0070】
第2の実施形態では、濃度の濃い根固めグラウト用流動性固化材を先に注入し、濃度の薄い周面グラウト用流動性固化材を後に注入し、かつ、双方の注入深度が重ならないため、根固めグラウト用流動性固化材が周面グラウト用流動性固化材により薄まったり乱されたりすることがない。
【0071】
(4)杭の施工方法の第3の実施形態
図8は、
図1に示した施工システム、
図2に示した鋼管杭及び
図4に示した施工管理装置を用いた杭の施工方法の第3の実施形態の一例を概略的に示す図である。
図8は、
図6と同様に施工方法を模式的に示した図である。
【0072】
<準備工程/打設工程>
準備工程及び打設工程は、上述した第1の実施形態で説明した通りである。打設工程は、
図8の区間Iに対応する。打設工程は、ウォータージェットを用いたJV工法により行い、打止め深度D31まで打ち込む。打止め深度D31は、例えば、支持層界面(図示せず)よりも所定の距離(例えば杭の直径の3倍程度)だけ深い位置である。
【0073】
<グラウト処理工程>
グラウト処理工程は、
図8の区間IIの周面グラウト処理工程と、区間IIIの根固めグラウト処理工程とからなる。
【0074】
区間IIの周面グラウト処理工程の前に、先ず、バイブロハンマによる振動を与えながら打止め深度D31から根固めグラウト上端深度D32まで杭を引き上げる。この間、噴射ノズルの閉塞防止のための水を噴射してもよい。根固めグラウト上端深度D32は、例えば、支持層界面とほぼ同じか又はそれより若干浅い位置である。
【0075】
杭が根固めグラウト上端深度D32に到達したならば、区間IIの周面グラウト処理工程を開始する。この周面グラウト処理工程は、上述した第1の実施形態の周面グラウト処理工程と類似する。
【0076】
第3の実施形態の周面グラウト処理工程も、杭先端を周面グラウト上端深度D33まで引き上げる引上工程と、再び根固めグラウト上端深度D32まで降下させる打込み工程とを有する。第3の実施形態では、この引上げと打込みの間、バイブロハンマによる振動を与えながらセメントミルクC150の注入を行う。
【0077】
なお別の実施例として、引上工程は、セメントミルクC150に替えて噴射ノズルの閉塞防止のための水を噴射しつつ行ってもよい。
【0078】
杭の先端が再び根固めグラウト上端深度D22まで到達したならば、セメントミルクC150をセメントミルクC65に切替え、引き続き根固めグラウト処理工程を行う。
【0079】
区間IIIの根固めグラウト処理工程では、バイブロハンマによる振動を与えながら打止め深度D31まで杭を打ち込みつつセメントミルクC65を注入する。打止め深度D31において所定の時間、セメントミルクC65を注入した後、打止め深度D31から再び根固めグラウト上端深度D32まで杭を引き上げつつセメントミルクC65を注入する。
【0080】
根固めグラウト上端深度D32で所定の時間、セメントミルクC65を注入した後、バイブロハンマによる振動を与えながら根固めグラウト上端深度D32から定着深度D34まで杭を打ち込みつつセメントミルクC65を注入する。定着深度D34は、例えば、支持層界面よりも所定の距離(例えば杭の直径の2倍程度)だけ深い位置である。その後、定着深度D34で所定の時間、セメントミルクC65を注入し、グラウト処理工程を完了する。
【0081】
第3の実施形態では、濃度の薄い周面グラウト用流動性固化材を先に注入し、濃度の濃い根固めグラウト用流動性固化材を後に注入し、かつ、双方の注入深度が重ならないため、根固めグラウト用流動性固化材が周面グラウト用流動性固化材により薄まったり乱されることがない。
【0082】
(5)杭の施工方法の第4の実施形態
以下の第4〜第7の実施形態では、
図2に示した杭に替えて、
図9に示す杭を用いる。
【0083】
図9(a)は、鋼管杭の一例の概略側面図である。
図9(a)の鋼管杭1は、
図2の鋼管杭と同じ態様で取り付けられた複数の第1のジェット配管部材に加えて、複数の第2のジェット配管部材を取り付けられている。
【0084】
複数の第1のジェット配管部材は、複数の導通管9と、各導通管9の下端に接続される集約管8と、集約管8の分岐した複数の先端にそれぞれ接続される第1の噴射ノズル7とを有し、導通管9の上端には、着脱可能な高圧ホース17がカプラーを介して接続されている。なお、複数の第1のジェット配管部材において、集約管8を用いずに、導通管9を延長してその下端に第1の噴射ノズル7を直接接続してもよい。複数の第1の噴射ノズル7の数は施工条件に応じて設定され、杭1の周方向に均等に配置される。
【0085】
複数の第2のジェット配管部材は、複数の導通管5と、各導通管5の下端に接続される第2の噴射ノズル4とを有し、導通管5の上端には、着脱可能な高圧ホース18がカプラーを介して接続されている。高圧ホース18を通して、水又はセメントミルクが圧送される。複数の第2の噴射ノズル4は、周方向に等角度間隔で配置されている。高圧ホース18を介した水又はセメントミルクの送出は、高圧ホース17を介したそれらの送出とは独立して制御することができる。複数の第2の噴射ノズル4の数は、複数の第1の噴射ノズルの数と同じでなくともよく、施工条件に応じて設定され、杭1の周方向に均等に配置される。
【0086】
ここで鋼管杭1の先端に対し、複数の第1の噴射ノズル7は相対的に近い位置に配置され、複数の第2の噴射ノズル4は相対的に遠い位置に配置されている。
図9では、噴射ノズル7と噴射ノズル4の間の軸方向距離をΔLで示している。この距離ΔLは、杭1の全長に比べれば十分に小さい距離であり、複数の第2の噴射ノズル4も、杭1の全長から視れば杭の先端近傍に位置している。好適には、距離ΔLは、設計上の打止め深度と根固めグラウト上端深度との間の距離以下とする。一例として、打止め深度と根固めグラウト上端深度との間の距離が、杭の直径の3倍程度の場合、ΔLを杭の直径の2倍〜3倍程度とする。
【0087】
図9(b)は、一例として、(a)の第2の噴射ノズル4の近傍の概略拡大図であり、(c)は(b)の底面図である。この例では、第2の噴射ノズル4は、閉塞防止の効果がある逆止弁ノズルであり、ノズル孔の周囲が保護カバー6により覆われている。保護カバー6は鋼管杭1に固定されている。逆止弁ノズルは、汎用ノズルに比べてコストが高いが、これを用いることにより閉塞防止用に水を噴射する必要がなくなる。
【0088】
図10(a)(b)は、
図1に示した施工システム、
図9に示した鋼管杭及び
図4に示した施工管理装置を用いた杭の施工方法の第4の実施形態の一例を概略的に示す図である。
【0089】
図10(a)は、
図6と同様の図であり、施工方法を模式的に示した図である。第1の噴射ノズルの移動を太線で示している。さらに、第2の噴射ノズルから高圧流体を噴射する区間については、第2の噴射ノズルの移動をやや細い線で示している(以下の実施形態においても同じ)。太線と細線との間の縦方向の距離は、
図9に示した距離ΔLに対応する。一例としてここでは、距離ΔLは杭の直径の2倍程度とする。
【0090】
<準備工程>
準備工程は、第1の噴射ノズルについては上述した第1の実施形態で説明した通りである。第2の噴射ノズルについても、第1の噴射ノズルとは独立して高圧流体を噴射可能であるように配管接続される。
【0091】
<打設工程>
打設工程は、
図10の区間Iに対応する。打設工程は、上述した第1の実施形態で説明した通りである。すなわち、バイブロハンマによる振動を与えながら第1の噴射ノズルによるウォータージェットを用いてJV工法により行い、打止め深度D41まで打ち込む。打止め深度D41は、例えば、支持層界面D0よりも所定の距離(例えば杭の直径の3倍程度)だけ深い位置である。なお、第2の噴射ノズルが逆止弁ノズルでない場合は、
図10に示すように、第2の噴射ノズルからも閉塞防止のために水を噴射することが好適である。
【0092】
<グラウト処理工程>
グラウト処理工程は、
図10の区間IIの根固めグラウト処理工程と、区間IIIの周面グラウト処理工程とからなる。
【0093】
区間IIの根固めグラウト処理工程では、第2の噴射ノズルは用いない。先ず、第1の噴射ノズルにおいて水をセメントミルクC65に切り替え、打止め深度D41で所定の時間、セメントミルクC65を注入した後、バイブロハンマによる振動を与えながら打止め深度D41から根固めグラウト上端深度D42まで杭を引き上げつつセメントミルクC65を注入する。根固めグラウト上端深度D42は、例えば、支持層界面D0とほぼ同じか又はそれより若干浅い位置である。セメントミルクC65は、根固めグラウト用のセメントミルクである。
【0094】
根固めグラウト上端深度D42で所定の時間、セメントミルクC65を注入した後、バイブロハンマによる振動を与えながら根固めグラウト上端深度D42から定着深度D43まで杭を打ち込みつつセメントミルクC65を注入する。その後、定着深度D43で所定の時間、セメントミルクC65を注入し、セメントミルクC65の注入を停止する。
【0095】
定着深度D43は、最終的に杭を定着させる予定の深度であるが、この時点では厳密にこの深度である必要はない。定着深度D43は、例えば、支持層界面D0よりも所定の距離(例えば杭の直径の2倍程度)だけ深い位置である。一方、この例では、第2の噴射ノズルは、第1の噴射ノズルよりも距離ΔL(杭の直径の2倍程度)だけ高い位置にあるので、第2の噴射ノズルは、ほぼ根固めグラウト上端深度D42に位置する。
【0096】
その後、区間IIIの周面グラウト処理工程を行う。周面グラウト処理工程は、上述した第1の実施形態のグラウト処理工程と類似しているが、ここでは第2の噴射ノズルを用いて行う。
【0097】
第4の実施形態の周面グラウト処理工程は、第2の噴射ノズルを周面グラウト上端深度D44’まで引き上げる引上工程と、再び根固めグラウト上端深度D42まで降下させる打込み工程とを有する。第4の実施形態では、この引上げと打込みの間、バイブロハンマによる振動を与えながらセメントミルクC150の注入を行う。なお、周面グラウト処理工程の間、第1の噴射ノズルは、
図10の深度D44まで引き上げられるが、高圧流体の噴射は停止されている。
【0098】
周面グラウト処理工程を行う第2の噴射ノズルは、杭先端から少なくとも距離ΔL以上離れているため、第2の噴射ノズルから吐出されるセメントミルクC150が杭先端から杭の内部に浸入することを回避できる。
【0099】
別の実施例として、引上工程は、セメントミルクC150に替えて噴射ノズルの閉塞防止のための水を噴射しつつ行ってもよい。
【0100】
第2の噴射ノズルが再び根固めグラウト上端深度D42まで到達したならば、セメントミルクC150の注入を停止する。このとき、杭先端は定着深度D43に位置している。これによりグラウト処理工程を完了する。
【0101】
なお、支持層地盤が砂質等の比較的流動性の高い地質の場合、区間IIで形成した根固め部(D41〜D42)の周囲地盤が区間IIIにおいて内側に崩れる懸念があるときは、区間IIIの少なくとも打込み工程において第1の噴射ノズルからもセメントミルクC65を注入しながら、杭の先端を定着深度D23まで打込むことが好適である。
【0102】
図10(b)に示すように、第4の実施形態では、杭1の周囲に周面グラウトg1が形成され、杭1の先端に根固めグラウトg2が形成される。
【0103】
第4の実施形態においても、根固めグラウト用流動性固化材が周面グラウト用流動性固化材により薄まったり乱されることがない。加えて、周面グラウト用流動性固化材が杭の内部に浸入することが回避できる。
【0104】
(6)第5の実施形態
図11に示す第5の実施形態は、
図10の第4の実施形態の変形形態である。区間Iの打設工程は第4の実施形態と同様に行う。
【0105】
第5の実施形態では、区間IIにおいて先に周面グラウト処理工程を行い、その後、区間IIIにおいて根固めグラウト処理工程を行う。
【0106】
(7)第6の実施形態
図12は、
図1に示した施工システム、
図9に示した鋼管杭及び
図4に示した施工管理装置を用いた杭の施工方法の第6の実施形態の一例を概略的に示す図である。第4の実施形態と同じ工程については説明を省略する場合がある。
【0107】
<準備工程/打設工程>
準備工程及び打設工程は、上述した第4の実施形態で説明した通りである。打設工程の完了時、第1の噴射ノズルは打止め深度D61に、第2の噴射ノズルはそれより距離ΔLだけ高い位置にある。この例では、打止め深度D61は、支持層界面より杭の直径の3倍程度深い位置とし、距離ΔLは杭の直径の2倍程度とする。
【0108】
<グラウト処理工程>
グラウト処理工程は、
図12の区間IIの根固めグラウト処理工程と、区間IIIの周面グラウト処理工程とからなる。第6の実施形態では、根固めグラウト処理工程と周面グラウト処理工程が、並行して行われる。「並行して」とは、根固めグラウト処理工程を行う区間IIと、周面グラウト処理工程を行う区間IIIが、少なくとも部分的に時間的に重なることを意味する。
【0109】
区間IIの根固めグラウト処理工程では、先ず、第1の噴射ノズルにおいて水をセメントミルクC65に切り替え、打止め深度D61で所定の時間、セメントミルクC65を注入した後、バイブロハンマによる振動を与えながら打止め深度D61から杭を引き上げつつセメントミルクC65を注入する。
【0110】
この例では、杭先端すなわち第1の噴射ノズルが定着深度D62まで引き上げられた時点で、第2の噴射ノズルはほぼ根固めグラウト上端深度D62’に位置する。根固めグラウト上端深度D62’は支持層界面より若干浅い位置にあり、この例では、定着深度D62は支持層界面より杭の直径の2倍程度深い位置である。
【0111】
この時点から区間IIIの周面グラウト処理工程を開始する。すなわち第2の噴射ノズルからセメントミルクC150の注入を開始する。そして第1の噴射ノズルからのセメントミルクC65の注入も継続し、杭をさらに引上げる。
【0112】
周面グラウト処理工程では、第2の噴射ノズルを周面グラウト上端深度D63’まで引き上げる引上工程と、再び根固めグラウト上端深度D62’まで降下させる打込み工程とを有する。第6の実施形態では、この引上げと打込みの間、バイブロハンマによる振動を与えながらセメントミルクC150の注入を行う。なお、周面グラウト処理工程では、第1の噴射ノズルは、セメントミルクC65の注入を継続しつつ
図12の深度D63まで引き上げられる。
【0113】
周面グラウト処理工程を行う第2の噴射ノズルは、杭先端から少なくとも距離ΔL以上離れているため、第2の噴射ノズルから吐出されるセメントミルクC150が杭先端から杭の内部に浸入することを回避できる。
【0114】
別の実施例として、引上工程は、セメントミルクC150に替えて噴射ノズルの閉塞防止のための水を噴射しつつ行ってもよい。
【0115】
第2の噴射ノズルが再び根固めグラウト上端深度D62’まで到達したならば、セメントミルクC150の注入を停止する。このとき、杭先端は定着深度D62に位置している。その後、第1の噴射ノズルから所定の時間、セメントミルクC65の注入を行った後、セメントミルク65の注入を停止する。これによりグラウト処理工程を完了する。
【0116】
第6の実施形態においても、根固めグラウト用流動性固化材が周面グラウト用流動性固化材により薄まったり乱されたりすることがない。加えて、周面グラウト用流動性固化材が杭の内部に浸入することが回避できる。しかしながら、区間IIIの周面グラウト処理工程の間に、根固めグラウト上端深度D62’より上の領域に根固めグラウト用流動性固化材が注入されるので、この部分の流動性固化材が無駄となる。
【0117】
(8)第7の実施形態
図13に示す第7の実施形態は、
図12の第6の実施形態の変形形態である。第7の実施形態は、第1の噴射ノズルと第2の噴射ノズルの先端同士の距離ΔLが、第6の実施形態よりも長く設定されている。ここでは、距離ΔLがその設定の上限である、設計上の打止め深度と根固めグラウト上端深度との間の距離に設定されている。例えば、この距離は杭の直径の3倍程度である。
【0118】
このような杭を用いて、第6の実施形態と同様に区間Iの打設工程を行った後、やはり同様に、区間IIの根固めグラウト処理工程と区間IIIの周面グラウト処理工程を並行して行う。
【0119】
第7の実施形態では、第1の噴射ノズルと第2の噴射ノズルの間の距離ΔLが、第6の実施形態のそれよりも長いため、区間IIIの周面グラウト処理工程の間に第1の噴射ノズルが根固めグラウト上端深度D72’より上に引き上げられる距離が短くなる。この結果、区間IIIの周面グラウト処理工程の間に第1の噴射ノズルから注入される無駄なセメントミルクC65の量を低減することができる。
【0120】
上述した本発明の各実施形態は、本発明の主旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。