特許第6535871号(P6535871)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6535871
(24)【登録日】2019年6月14日
(45)【発行日】2019年7月3日
(54)【発明の名称】産業用車両
(51)【国際特許分類】
   F15B 11/00 20060101AFI20190625BHJP
   E02F 9/22 20060101ALI20190625BHJP
【FI】
   F15B11/00 Q
   E02F9/22 R
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-242853(P2014-242853)
(22)【出願日】2014年12月1日
(65)【公開番号】特開2016-105001(P2016-105001A)
(43)【公開日】2016年6月9日
【審査請求日】2017年10月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 真一郎
【審査官】 冨永 達朗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−052799(JP,A)
【文献】 特開2012−159131(JP,A)
【文献】 特開平11−351203(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F15B 11/00
E02F 9/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力が走行に利用されるエンジンと、
前記エンジンにより駆動される、レギュレータにより傾転角が変更される油圧ポンプと、
前記油圧ポンプからタンクへ延びる、作業用の油圧アクチュエータを駆動するための作業回路のセンターバイパスラインを構成する循環ラインであって、前記作業回路の下流側に絞りが設けられた循環ラインと、
前記循環ラインにおける前記作業回路と前記絞りの間の部分と前記レギュレータとを接続するパイロットラインと、
前記パイロットラインに設けられた切換弁であって、前記油圧ポンプの傾転角を最小とする基準圧以上の圧力の圧力源ラインが接続され、走行可能時には前記循環ラインにおける前記絞りの上流側の圧力を前記レギュレータへ導く第1位置に位置し、待機状態中に前記圧力源ラインの圧力を前記レギュレータへ導く第2位置に切り換わる切換弁と、
を備える、産業用車両。
【請求項2】
前記切換弁は、パーキングブレーキスイッチがオフのときに前記第1位置に位置し、前記パーキングブレーキスイッチがオンとなったときに前記第2位置に切り換わる、請求項1に記載の産業用車両。
【請求項3】
前記切換弁を制御する制御装置をさらに備え、
前記制御装置は、走行レバーがニュートラル位置に位置する第1条件と走行ブレーキが作動する第2条件の双方が満たされてから一定時間経過したときに、前記切換弁を前記第1位置から前記第2位置に切り換える、請求項1または2に記載の産業用車両。
【請求項4】
前記油圧ポンプはメインポンプであり、
前記エンジンにより駆動されるアクセサリポンプをさらに備え、
前記圧力源ラインは、前記アクセサリポンプから吐出される作動油を導く供給ラインに接続されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の産業用車両。
【請求項5】
前記供給ラインは、前記アクセサリポンプをアンローダバルブと接続する主流路と、前記アンローダバルブを走行ブレーキおよびパーキングブレーキと接続する第1支流と、前記アンローダバルブを前記エンジンの冷却用のファン回路と接続する第2支流を含み、
前記アンローダバルブは、前記第1支流の圧力が設定圧を下回ったときには前記第1支流に優先的に作動油を供給し、前記第1支流の圧力が前記設定圧を上回ったときは前記第2支流に作動油を供給するように構成されており、
前記第1支流には、上流側から順に、逆止弁およびアキュムレータが設けられており、この第1支流における前記逆止弁の下流側部分に、前記圧力源ラインが接続されている、請求項4に記載の産業用車両。
【請求項6】
前記圧力源ラインは、前記循環ラインにおける前記作業回路の上流側部分に接続されており、前記圧力源ラインには、上流側から順に、逆止弁およびアキュムレータが設けられている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の産業用車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばホイールローダなどの産業用車両に関する。
【背景技術】
【0002】
ホイールローダ、ショベルローダ、フォークリフトなどの産業用車両は、走行用の車輪と作業用の油圧アクチュエータを含む。このような産業用車両では、エンジンの出力が走行および油圧ポンプの駆動に利用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ホイールローダに搭載される油圧駆動システムが開示されている。この油圧駆動システムは、エンジンにより駆動される油圧ポンプと、ブームシリンダおよびバケットシリンダを駆動するための荷役回路(作業回路)を含む。油圧ポンプは、可変容量型のポンプであり、その傾転角はレギュレータにより変更される。
【0004】
特許文献1に開示された油圧駆動システムでは、ネガティブコントロールにより油圧ポンプの傾転角が調整される。具体的に、油圧ポンプからは、荷役回路のセンターバイパスラインを構成する循環ラインがタンクへ延びており、循環ラインには、荷役回路の下流側に絞りが設けられている。そして、レギュレータには、循環ラインにおける絞りの上流側の圧力であるネガティブコントロール圧Pnがパイロットラインを通じて導かれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−101940号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、エンジンの出力が走行に利用される産業用車両では、走行状態によってエンジンの回転数が大きく変動する(例えば、900〜2300rpm)。エンジンの回転数が変動すると、ネガティブコントロール圧Pnも変動する。すなわち、車両の走行中は、エンジンの回転数が大きいため、ネガティブコントロール圧Pnが高くなる。その結果、油圧アクチュエータが稼働していないときには、油圧ポンプの吐出流量が最小限に抑えられる。一方、車両が走行していないときは、エンジンの回転数が小さいため、ネガティブコントロール圧Pnが低くなる。その結果、油圧アクチュエータが稼働していないときでも、油圧ポンプの吐出流量を最小限に抑えることができない。従って、車両が走行しない待機状態でも、油圧ポンプの駆動にある程度のトルクが必要となり、エンジンでの燃料消費量が多くなる。
【0007】
そこで、本発明は、待機状態でのエンジンの燃費を改善することができる産業用車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明の産業用車両は、出力が走行に利用されるエンジンと、前記エンジンにより駆動される、レギュレータにより傾転角が変更される油圧ポンプと、前記油圧ポンプからタンクへ延びる、作業用の油圧アクチュエータを駆動するための作業回路のセンターバイパスラインを構成する循環ラインであって、前記作業回路の下流側に絞りが設けられた循環ラインと、前記循環ラインにおける前記作業回路と前記絞りの間の部分と前記レギュレータとを接続するパイロットラインと、前記パイロットラインに設けられた切換弁であって、前記メインポンプの傾転角を最小とする基準圧以上の圧力の圧力源ラインが接続され、走行可能時には前記循環ラインにおける前記絞りの上流側の圧力を前記レギュレータへ導く第1位置に位置し、待機状態中に前記圧力源ラインの圧力を前記レギュレータへ導く第2位置に切り換わる切換弁と、を備える、ことを特徴とする。
【0009】
上記の構成によれば、循環ラインにおける絞りの上流側の圧力であるネガティブコントロール圧Pnはエンジンの回転数によって変動するが、待機状態中に切換弁が第2位置に切り換わることによって、そのネガティブコントロール圧Pnではなく、圧力源ラインの圧力がレギュレータに導かれる。これにより、待機状態でも、油圧アクチュエータが稼働していないときには、油圧ポンプの吐出流量を最小限に抑えることができる。その結果、待機状態でのエンジンの燃費を改善することができる。
【0010】
前記切換弁は、パーキングブレーキスイッチがオフのときに前記第1位置に位置し、前記パーキングブレーキスイッチがオンとなったときに前記第2位置に切り換わってもよい。この構成によれば、駐車状態(待機状態の一形態)中は常に切換弁を第2位置に維持することができる。また、パーキングブレーキスイッチの電気信号を利用して切換弁を自動的に第2位置に切り換えることができるため、制御装置を用いて特別な判定を行う必要がない。
【0011】
上記の産業用車両は、前記切換弁を制御する制御装置をさらに備え、前記制御装置は、走行レバーがニュートラル位置に位置する第1条件と走行ブレーキが作動する第2条件の双方が満たされてから一定時間経過したときに、前記切換弁を前記第1位置から前記第2位置に切り換えてもよい。この構成によれば、走行が中断された少しの合間の停車状態(待機状態の一形態)でも切換弁が第2位置に切り換わるため、エンジンの燃費改善の効果を待機状態の広い範囲で得ることができる。
【0012】
前記油圧ポンプはメインポンプであり、上記の産業用車両は、前記エンジンにより駆動されるアクセサリポンプをさらに備え、前記圧力源ラインは、前記アクセサリポンプから吐出される作動油を導く供給ラインに接続されていてもよい。この構成によれば、アクセサリポンプの吐出圧を圧力源として合理的に利用することができる。
【0013】
前記供給ラインは、前記アクセサリポンプをアンローダバルブと接続する主流路と、前記アンローダバルブを走行ブレーキおよびパーキングブレーキと接続する第1支流と、前記アンローダバルブを前記エンジンの冷却用のファン回路と接続する第2支流を含み、前記アンローダバルブは、前記第1支流の圧力が設定圧を下回ったときには前記第1支流に優先的に作動油を供給し、前記第1支流の圧力が前記設定圧を上回ったときは前記第2支流に作動油を供給するように構成されており、前記第1支流には、上流側から順に、逆止弁およびアキュムレータが設けられており、この第1支流における前記逆止弁の下流側部分に、前記圧力源ラインが接続されていてもよい。この構成によれば、走行ブレーキおよびパーキングブレーキ用の圧力である第1支流の圧力はほぼ一定に保たれるため、待機状態中にはこの安定した圧力をレギュレータに導くことができる。
【0014】
あるいは、前記圧力源ラインは、前記循環ラインにおける前記作業回路の上流側部分に接続されており、前記圧力源ラインには、上流側から順に、逆止弁およびアキュムレータが設けられていてもよい。この構成によれば、圧力源ラインの逆止弁よりも下流側の圧力はほぼ一定に保たれるため、待機状態中にはこの安定した圧力をレギュレータに導くことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、待機状態でのエンジンの燃費を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1実施形態に係る産業用車両の概略構成を模式的に示す図である。
図2図1に示す産業用車両の側面図である。
図3】荷役回路の概略構成図である。
図4】第1実施形態の第1変形例の産業用車両の概略構成を模式的に示す図である。
図5】第1実施形態の第2変形例の産業用車両の概略構成を模式的に示す図である。
図6】本発明の第2実施形態に係る産業用車両の概略構成を模式的に示す図である。
図7】本発明の第3実施形態に係る産業用車両の概略構成を模式的に示す図である。
図8】本発明の第4実施形態に係る産業用車両の概略構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1実施形態)
図2に、本発明の第1実施形態に係る産業用車両1Aを示し、図1に、産業用車両1Aの概略構成を模式的に示す。図2に示す産業用車両1Aはホイールローダであるが、本発明は、ショベルローダやフォークリフトなどの産業用車両にも適用可能である。
【0018】
図2に示すように、産業用車両1Aは、互いに水平方向に揺動可能に連結された前側車体10Aおよび後側車体10Bを含む。前側車体10Aには前車輪15Aが取り付けられ、後側車体10Bには後車輪15Bが取り付けられている。なお、図示は省略するが、前側車体10Aと後側車体10Bの間には、左右一対のステアリングシリンダが配置されている。
【0019】
後側車体10Bには、運転室17が設けられているとともに、エンジン11が搭載されている。前側車体10Aには、ブーム18が鉛直方向に揺動可能に連結され、ブーム18の先端にはバケット19が鉛直方向に揺動可能に連結されている。また、前側車体10Aには、ブーム18を作動させるブームシリンダ24と、バケット19を作動させるバケットシリンダ25が設けられている。ブームシリンダ24およびバケットシリンダ25は、本発明の作業用の油圧アクチュエータに相当する。
【0020】
ブームシリンダ24、バケットシリンダ25および図略のステアリングシリンダは、図1に示す油圧駆動システム2の構成要素である。エンジン11の出力は、走行に利用されるとともに、油圧駆動システム2の動力源として利用される。
【0021】
具体的に、エンジン11は、図1および図2に示すように、トルクコンバータ12、トランスミッション13およびアクスル14A,14Bを介して車輪15A,15Bと連結されている。なお、トランスミッション13は、入力軸と出力軸の速度比を変更することができるとともに、車両の前進と後進を切り換えるために出力軸の回転方向を入力軸と同方向にするか逆方向にするかを切り換えることができる。
【0022】
図1に示す油圧駆動システム2は、トルクコンバータ12に連結されたメインポンプ(油圧ポンプ)21およびアクセサリポンプ23を含む。つまり、メインポンプ21およびアクセサリポンプ23は、エンジン11により駆動される。また、油圧駆動システム2は、ブームシリンダ24およびバケットシリンダ25を駆動するための荷役回路(本発明の作業回路に相当)34と、図略のステアリングシリンダを駆動するためのステアリング回路36を含む。
【0023】
メインポンプ21から吐出される作動油は、荷役回路34およびステアリング回路36に供給される。具体的に、油圧ポンプ21からは循環ライン31がタンク32へ延びている。循環ライン31は、荷役回路34のセンターバイパスライン34aを構成する。また、循環ライン31からは、荷役回路34の上流側で分岐ライン35が分岐しており、この分岐ライン35がステアリング回路36につながっている。
【0024】
メインポンプ21は、可変容量型のポンプであり、その傾転角はレギュレータ22により変更される。メインポンプ21は、斜板ポンプであってもよいし、斜軸ポンプであってもよい。
【0025】
荷役回路34は、図3に示すように、ブームシリンダ24用のコントロールバルブ72と、バケットシリンダ25用のコントロールバルブ71を含む。上述したセンターバイパスライン34aは、これらのコントロールバルブ71,72を貫通するように延びている。ブームシリンダ24用のコントロールバルブ72へは、ブーム操作弁82からパイロット圧が出力され、バケットシリンダ25用のコントロールバルブ71へは、バケット操作弁81からパイロット圧が出力される。ブーム操作弁82およびバケット操作弁81は、運転室17内に配置されている。また、ブーム操作弁82およびバケット操作弁81は、操作レバーを含み、その操作レバーの操作量に応じたパイロット圧を出力する。
【0026】
ステアリング回路36は、図示は省略するが、ステアリングシリンダに対する作動油の給排を制御するステアリングバルブを含む。このステアリングバルブへは、例えば、オービットロール(登録商標)などの操舵信号出力装置から操舵信号(パイロット流)が出力される。操舵信号出力装置は、ステアリングシャフトを介して、運転室17内に配置されたステアリングホイールと連結される。
【0027】
図1に戻って、循環ライン31には、荷役回路34の下流側に絞り33が設けられている。また、図示は省略するが、循環ライン31には、絞り33をバイパスするバイパスラインが接続されており、このバイパスラインにリリーフ弁が設けられている。そして、循環ライン31における荷役回路34と絞り33の間の部分は、パイロットライン51によりレギュレータ22と接続されている。
【0028】
ブームシリンダ24およびバケットシリンダ25の双方が駆動されていないときには、メインポンプ21から荷役回路34に供給される作動油の全量が絞り33を通過するため、循環ライン31における絞り33の上流側の圧力であるネガティブコントロール圧Pnが高くなる。一方、ブームシリンダ24および/またはバケットシリンダ25が駆動されているときは、メインポンプ21から荷役回路34に供給される作動油の一部のみが絞り33を通過するため、ネガティブコントロール圧Pnが低くなる。
【0029】
レギュレータ22は、パイロットライン51を通じて導かれる圧力が高ければメインポンプ21の傾転角を小さくし、パイロットライン51を通じて導かれる圧力が低ければメインポンプ21の傾転角を大きくする。メインポンプ21の傾転角が小さくなると、メインポンプ21の吐出流量が減少し、メインポンプ21の傾転角が大きくなると、メインポンプ21の吐出流量が増大する。パイロットライン51により導かれる圧力が基準圧Ptよりも高くなると、メインポンプ21の傾転角が最小になり、メインポンプ21の吐出流量が最小限に抑えられる。
【0030】
パイロットライン51には、切換弁52が設けられている。この切換弁52については、後述にて詳細に説明する。
【0031】
アクセサリポンプ23から吐出される作動油は、供給ライン4を通じて、ファン回路42、走行ブレーキ45およびパーキングブレーキ46に導かれる。アクセサリポンプ23は、本実施形態では固定容量型のポンプであるが、可変容量型のポンプであってもよい。
【0032】
ファン回路42は、エンジン11用のラジエータ16(図2参照)へ風を送るファンモータ26(図2参照)を駆動するためのものである。すなわち、ファン回路42は、エンジン11の冷却用の回路である。
【0033】
供給ライン4には、アンローダバルブ41が設けられており、このアンローダバルブ41でアクセサリポンプ23から吐出された作動油がブレーキ45,46側とファン回路42側とに分配される。すなわち、供給ライン4は、アクセサリポンプ23をアンローダバルブ41と接続する主流路4aと、アンローダバルブ41を走行ブレーキ45およびパーキングブレーキ46と接続する第1支流4bと、アンローダバルブ41をファン回路42と接続する第2支流4cを含む。
【0034】
アンローダバルブ41は、走行ブレーキ45またはパーキングブレーキ46の作動によって第1支流4bの圧力が設定圧Pbを下回ったときは第1支流4bに優先的に作動油を供給し、第1支流4bの圧力が設定圧Pbを上回ったときは第2支流4cに作動油を供給するように構成されている。
【0035】
第1支流4bには、上流側から順に、逆止弁43およびアキュムレータ44が設けられている。第1支流4bのアキュムレータ44が設けられた位置から下流側部分は、さらに走行ブレーキ45につながる第1末端流路4dとパーキングブレーキ46につながる第2末端流路4eに分かれている。
【0036】
第2末端流路4eには、パーキングブレーキ46を作動させるか否かを切り換える切換弁47が設けられている。切換弁47は、運転室17内に配置されたパーキングブレーキスイッチ6と電気的に接続されている。そして、切換弁47は、パーキングブレーキスイッチ6がオフのときは第2末端流路4eを開放してパーキングブレーキ46をブレーキ解除状態に保ち、パーキングブレーキスイッチ6がオンとなったときに第2末端流路4eを遮断してパーキングブレーキ46を作動させる。
【0037】
なお、供給ライン4からは、上述したブーム操作弁82およびバケット操作弁81(図3参照)にも作動油が導かれる。
【0038】
上述したパイロットライン51に設けられた切換弁52には、圧力源ライン53が接続されている。本実施形態では、圧力源ライン53が供給ライン4に接続されている。より詳しくは、圧力源ライン53は、第1支流4bにおける逆止弁43の下流側部分に接続されている。図例では、圧力源ライン53が第1支流4bのパーキングブレーキ46側の第2末端流路4eに接続されているが、圧力源ライン53は、走行ブレーキ45側の第1末端流路4dに接続されていてもよいし、第1支流4bにおける逆止弁43とアキュムレータ44の間の部分に接続されていてもよい。
【0039】
アクセサリポンプ23の吐出圧は、メインポンプ21の傾転角を最小とする上述した基準圧Pt以上に設定されている。このため、供給ライン4および圧力源ライン53の圧力も、基準圧Pt以上になっている。
【0040】
切換弁52は、走行可能時にはパイロットライン51の下流側部分を上流側部分と連通する第1位置に位置し、待機状態中にパイロットライン51の下流側部分を圧力源ライン53と連通する第2位置に切り換わる。すなわち、切換弁52は、第1位置ではネガティブコントロール圧Pnをレギュレータ22へ導き、第2位置では圧力源ライン53の圧力をレギュレータ22へ導く。
【0041】
本実施形態では、切換弁52が上述したパーキングブレーキスイッチ6と電気的に接続されている。そして、切換弁52は、パーキングブレーキスイッチ6がオフのときに第1位置に位置し、パーキングブレーキスイッチ6がオンとなったときに第2位置に切り換わる。
【0042】
本実施形態の産業用車両1Aでは、ネガティブコントロール圧Pnはエンジン11の回転数によって変動するが、待機状態中(本実施形態では、駐車状態となったとき)に切換弁52が第2位置に切り換わることによって、そのネガティブコントロール圧Pnではなく、圧力源ライン53の圧力がレギュレータ22に導かれる。これにより、待機状態でも、ブームシリンダ24およびバケットシリンダ25が稼働していないときには、メインポンプ21の吐出流量を最小限に抑えることができる。その結果、待機状態でのエンジン11の燃費を改善することができる。
【0043】
また、本実施形態では、切換弁52がパーキングブレーキスイッチ6のオンおよびオフに連動して切り換わる。このため、駐車状態中は常に切換弁52を第2位置に維持することができる。また、パーキングブレーキスイッチ6の電気信号を利用して切換弁52を自動的に第2位置に切り換えることができるため、制御装置を用いて特別な判定を行う必要がない。
【0044】
さらに、本実施形態では、圧力源ライン53がアクセサリポンプ23から延びる供給ライン4に接続されている。このため、アクセサリポンプ23の吐出圧を圧力源として合理的に利用することができる。
【0045】
また、本実施形態では、圧力源ライン53が供給ライン4の第1支流4bにおける逆止弁43の下流側部分に接続されている。走行ブレーキ45およびパーキングブレーキ46用の圧力である第1支流4bの圧力はほぼ一定に保たれる。従って、待機状態中にはこの安定した圧力をレギュレータ22に導くことができる。
【0046】
<変形例>
前記実施形態では、圧力源ライン53が供給ライン4の第1支流4bにおける逆止弁43の下流側部分に接続されていた。しかし、図4に示す第1変形例の産業用車両1Bのように、圧力源ライン53は供給ライン4の第2支流4cに接続されていてもよい。
【0047】
あるいは、図5に示す第2変形例の産業用車両1Cのように、圧力源ライン53は供給ライン4の主流路4aに接続されていてもよい。この場合、圧力源ライン53には、上流側から順に、逆止弁54およびアキュムレータ55が設けられることが望ましい。
【0048】
(第2実施形態)
次に、図6を参照して、本発明の第2実施形態に係る産業用車両1Dを説明する。なお、本実施形態および後述する第3および第4実施形態において、第1実施形態と同一構成要素には同一符号を付し、重複した説明は省略する。
【0049】
本実施形態の産業用車両1Dが第1実施形態の産業用車両1Aと異なる点は、第1実施形態では、切換弁52がパーキングブレーキスイッチ6と直接的に電気的に接続されていたが、本実施形態では、切換弁52が制御装置7を介してパーキングブレーキスイッチ6と電気的に接続されている点だけである。
【0050】
制御装置7は、運転状況に基づいて切換弁52を制御する。具体的に、制御装置7は、運転室17内に配置された図略の走行レバーがニュートラル位置に位置する第1条件と走行ブレーキ45が作動する第2条件の双方が満たされてから一定時間(例えば、30秒)経過したときに、切換弁52を、パイロットライン51の下流側部分を上流側部分と連通する第1位置からパイロットライン51の下流側部分を圧力源ライン53と連通する第2位置に切り換える。
【0051】
また、制御装置7は、切換弁52を、パーキングブレーキスイッチ6がオフのときに第1位置に位置させ、パーキングブレーキスイッチ6がオンとなったときに第2位置に切り換える。
【0052】
本実施形態でも、第1実施形態と同様に、待機状態中(本実施形態では、停車状態のうちの上記の特定状態となったときと、駐車状態となったとき)に切換弁52が第2位置に切り換わるため、待機状態でも、ブームシリンダ24およびバケットシリンダ25が稼働していないときには、メインポンプ21の吐出流量を最小限に抑えることができる。その結果、待機状態でのエンジン11の燃費を改善することができる。
【0053】
特に、本実施形態では、図略の走行レバーがニュートラル位置に位置する第1条件と走行ブレーキ45が作動する第2条件の双方の双方が満たされてから一定時間経過したときに切換弁52が第2位置に切り換えられる。このように、走行が中断された少しの合間の停車状態でも切換弁52が第2位置に切り換わるため、エンジン11の燃費改善の効果を待機状態の広い範囲で得ることができる。
【0054】
なお、圧力源ライン53がアクセサリポンプ3から延びる供給ライン4に接続されていることによる効果は、第1実施形態と同様である。また、図4および図5に示す第1実施形態の第1および第2変形例が本実施形態に適用可能であることは言うまでもない。
【0055】
(第3実施形態)
次に、図7を参照して、本発明の第2実施形態に係る産業用車両1Eを説明する。本実施形態の産業用車両1Eが第1実施形態の産業用車両1Aと異なる点は、第1実施形態では、圧力源ライン53がアクセサリポンプ23から延びる供給ライン4に接続されていたが、本実施形態では、圧力源ライン53が循環ライン31における荷役回路34の上流側部分に接続されている点だけである。
【0056】
圧力源ライン53には、上流側から順に、逆止弁54およびアキュムレータ55が設けられている。循環ライン31の圧力は変動するが、圧力源ライン53には逆止弁54およびアキュムレータ55が設けられているため、アキュムレータ55には、循環ライン31の最も高い圧力が蓄積される。当然ながら、アキュムレータ55に蓄積される圧力は、第1実施形態で説明した、メインポンプ21の傾転角を最小とする基準圧Pt以上である。
【0057】
本実施形態でも、第1実施形態と同様に、待機状態中(駐車状態となったとき)に切換弁52が第1位置から第2位置に切り換わるため、待機状態でのエンジン11の燃費を改善することができる。また、本実施形態では、圧力源ライン53の逆止弁54よりも下流側の圧力はほぼ一定に保たれるため、待機状態中にはこの安定した圧力をレギュレータ22に導くことができる。
【0058】
なお、本実施形態でも、第2実施形態と同様に、制御装置7を用いて切換弁52を制御してもよい。すなわち、切換弁52は、図略の走行レバーがニュートラル位置に位置する第1条件と走行ブレーキ45が作動する第2条件の双方が満たされてから一定時間経過したときに、第1位置から第2位置に切り換えられてもよい。
【0059】
(第4実施形態)
次に、図8を参照して、本発明の第4実施形態に係る産業用車両1Fを説明する。本実施形態では、油圧駆動システム2が、メインポンプ21およびアクセサリポンプ23に加えて、補助ポンプ27を含む。そして、圧力源ライン53が補助ポンプ27に接続されている。
【0060】
また、圧力源ライン53からはリリーフライン56が分岐しており、このリリーフライン56にリリーフ弁57が設けられている。リリーフ弁57の設定圧は、第1実施形態で説明した、メインポンプ21の傾転角を最小とする基準圧Pt以上に設定されている。
【0061】
本実施形態でも、第1実施形態と同様に、待機状態中(駐車状態となったとき)に切換弁52が第1位置から第2位置に切り換わるため、待機状態でのエンジン11の燃費を改善することができる。
【0062】
なお、本実施形態でも、第2実施形態と同様に、制御装置7を用いて切換弁52を制御してもよい。すなわち、切換弁52は、図略の走行レバーがニュートラル位置に位置する第1条件と走行ブレーキ45が作動する第2条件の双方が満たされてから一定時間経過したときに、第1位置から第2位置に切り換えられてもよい。
【0063】
(その他の実施形態)
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0064】
例えば、図7および図8に示す構成の場合、産業用車両は、アクセサリポンプ23を有さなくてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、エンジンの出力が走行に利用されるとともに油圧駆動システムの動力源として利用される種々の産業用車両に適用可能である。
【符号の説明】
【0066】
1A〜1F 産業用車両
21 メインポンプ(油圧ポンプ)
22 レギュレータ
23 アクセサリポンプ
24 ブームシリンダ(油圧アクチュエータ)
25 バケットシリンダ(油圧アクチュエータ)
31 循環ライン
32 タンク
33 絞り
34 荷役回路(作業回路)
34a センターバイパスライン
4 供給ライン
4a 主流路
4b 第1支流
4c 第2支流
41 アンローダバルブ
42 ファン回路
43 逆止弁
44 アキュムレータ
45 走行ブレーキ
46 パーキングブレーキ
51 パイロットライン
52 切換弁
53 圧力源ライン
54 逆止弁
55 アキュムレータ
6 パーキングブレーキスイッチ
7 制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8