特許第6535894号(P6535894)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6535894
(24)【登録日】2019年6月14日
(45)【発行日】2019年7月3日
(54)【発明の名称】非接触電力伝送装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/12 20160101AFI20190625BHJP
   H02J 50/80 20160101ALI20190625BHJP
   H02J 50/90 20160101ALI20190625BHJP
【FI】
   H02J50/12
   H02J50/80
   H02J50/90
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-163464(P2014-163464)
(22)【出願日】2014年8月11日
(65)【公開番号】特開2016-39749(P2016-39749A)
(43)【公開日】2016年3月22日
【審査請求日】2017年5月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】591156799
【氏名又は名称】ユニパルス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山本 雄
(72)【発明者】
【氏名】杉田 俊郎
【審査官】 坂東 博司
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2014/0183967(US,A1)
【文献】 特開2013−138599(JP,A)
【文献】 特開2011−142769(JP,A)
【文献】 特開2010−252468(JP,A)
【文献】 特開2012−223070(JP,A)
【文献】 特開2003−257604(JP,A)
【文献】 特開2011−109739(JP,A)
【文献】 特開2013−172490(JP,A)
【文献】 特開2013−005526(JP,A)
【文献】 特開2012−205411(JP,A)
【文献】 再公表特許第2011/036702(JP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/12
H02J 50/80
H02J 50/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送電回路の送電コイルと受電回路の受電コイルとの間を電磁界共振結合により非接触で電力を伝送する非接触電力伝送装置であって、
前記受電回路に発生した電力の電気的パラメータを計測する計測手段と、
前記計測手段にて計測した前記電気的パラメータを、ワイヤレス信号として外部に送信する受電側通信手段と、
前記受電側通信手段からの前記ワイヤレス信号を受信する送電側通信手段と、
前記送電側通信手段が受信した前記ワイヤレス信号より前記電気的パラメータを取得し、前記受電回路に繋がった負荷が所望する前記電気的パラメータの上限値と下限値との比較に基づいて演算して、前記送電コイルに供給する交流電圧の所望の周波数を中間に挟む2以上のスイッチング周波数と前記2以上のスイッチング周波数の切換え時間とを設定する周波数設定手段と、
前記周波数設定手段の指令に基づき前記交流電圧を生成するためのスイッチングパルスをそれぞれ出力する2以上のスイッチングパルス発生手段と、
前記2以上のスイッチングパルス発生手段から出力される何れかの前記スイッチングパルスを前記切換え時間に応じて切換えて前記送電コイルへ供給するパルス切換手段と、を備えたことを特徴とする非接触電力伝送装置。
【請求項2】
前記電気的パラメータは、電流値,電圧値または電力値の何れか1つを含むことを特徴とする請求項1に記載の非接触電力伝送装置。
【請求項3】
前記送電側通信手段と前記受電側通信手段との間の前記ワイヤレス信号の授受は、赤外線によるものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の非接触電力伝送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触で電力伝送を行う非接触電力伝送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エネルギーを効率的に伝送できる非接触電力伝送装置として、電磁界共振結合を利用したものが知られている(特許文献1)。電磁界共振結合とは、共振周波数の等しい物体同士がその共振伏態において電界または磁界で結合することで、高い伝送効率でエネルギーを伝送できるというものである。
【0003】
このような電磁界共振結合を利用した非接触電力伝送装置では、送電コイルと受電コイルとの対向する位置のズレや両者間の距離であるエアギャップの違いにより、共振周波数が変化し、エネルギー伝送効率が劣化することがあった。(特許文献2)
【0004】
そこで、特許文献1には、送電側や受電側に整合回路を挿入し、インピーダンスの整合を図り、コイル間のエアギャップの距離の変化や位置ズレによる共振周波数の変化に伴うエネルギー伝送効率の劣化を防ぐようにしたものが記載されている。また、特許文献2には、コイル間の位置ズレに対応させて、送電コイルを備えた送電部が複数存在し、その中で最も電力供給の効率が高い位置関係にある送電コイルを選択するものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−130061号公報
【特許文献2】特開2014−103820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の非接触電力伝送では、送電側や受電側に整合回路を挿入しているため、回路が複雑化する傾向にあった。また、インピーダンスの整合の調整は複雑であり、処理時間が長くなっていた。特許文献2の非接触電力伝送では、送電装置内に複数の送電部を設けて送電コイルと受電コイルとが対向する位置のズレに対応しているため装置が大型化し、さらにコストアップにつながっていた。
【0007】
本発明は、装置の大型化やコストアップを招くことなく、高いエネルギー伝送効率を可能とする非接触電力伝送装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の非接触電力伝送装置は、送電回路の送電コイルと受電回路の受電コイルとの間を電磁界共振結合により非接触で電力を伝送する非接触電力伝送装置であって、受電回路に発生した電力の電気的パラメータを計測する計測手段と、計測手段にて計測した電気的パラメータを、ワイヤレス信号として外部に送信する受電側通信手段と、受電側通信手段からのワイヤレス信号を受信する送電側通信手段と、送電側通信手段が受信したワイヤレス信号より電気的パラメータを取得し、受電回路に繋がった負荷が所望する電気的パラメータの上限値と下限値との比較に基づいて演算して、送電コイルに供給する交流電圧の所望の周波数を中間に挟む2以上のスイッチング周波数と2以上のスイッチング周波数の切換え時間とを制御する周波数設定手段と、周波数設定手段の指令に基づき交流電圧を生成するためのスイッチングパルスをそれぞれ出力する2以上のスイッチングパルス発生手段と、2以上のスイッチングパルス発生手段から出力される何れかの前記スイッチングパルスを切換え時間に応じて切換えて送電コイルへ供給するパルス切換手段と、を備えている。
【発明の効果】
【0009】
この構成によると、送電コイルと受電コイルとが対向する位置のズレが防止され、エアギャップの違いによる共振周波数変動の影響を回避した上で、共振状態を維持し、高いエネルギー効率での電力伝送を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態の構成を示すブロック図である。
図2】本発明の送電コイルおよび受電コイルの配置例を示す斜視図である。
図3】送電側および受電側制御部の処理を示すフローチャートである。
図4】送電側の電力伝送初期値を設定する処理を示すフローチャートである。
図5】送電側のスイッチング周波数を決定する処理を示すフローチャートである。
図6】送電側のスイッチング周波数分解能と受電側の電流値との関係を示すグラフ例である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細について説明をする。
【0012】
図1は、実施形態に係る非接触電力伝送装置1の基本的な構成を示すブロック図である。本発明の非接触電力伝送装置1は、送電回路10および受電回路20から成る。送電回路10には供給する電力源となる直流電源2が接続され、また受電回路20には、受電した電力を供給する負荷3、例えば電動歯ブラシ、またはスマートフォンやタブレット端末の充電装置等が接続される。
【0013】
図1に示すように、送電回路10は、送電コイル100と、コンデンサ101と、インバータ回路102と、ダイオード106、インダクタンス107、平滑用コンデンサ108、スイッチング用トランジスタ109からなる変圧回路105と、周波数設定部111と、第一パルス発生部112aおよび第二パルス発生部112bと、パルス切換部113と、送電側赤外線受発光部115、送電側赤外線通信ドライバ116からなる送電側赤外線通信モジュール114と、変圧制御部117と、送電側制御部118から構成されている。
【0014】
送電コイル100は、図2に示すように、板状の磁芯151に導線152を平面的に巻回したものである。コンデンサ101は、送電コイル100と直列に接続され、共振回路を構成している。
【0015】
送電回路10では、入力端子119および120に接続された直流電源2から、変圧回路105によって所望する直流電圧を生成する。これは、図1のスイッチング用トランジスタ109に与えるゲート電流のONならびにOFFを繰り返す周期を変更することで実現される。周期の変更は、変圧制御部117によって行われ、送電側制御部118からの指令によって制御される。
【0016】
変圧回路105によって生成された直流電圧は、インバータ回路102によって交流電圧へと変換される。変圧回路105から給電された直流電圧は、4つのスイッチング用MOSFET(Metal 0xide Semiconductor Field Effect Transistor)103a〜103dを直並列ブリッジ状に組み合わせて構成されるインバータ回路102によって、交流電圧へと変換される。
【0017】
インバータ回路102のスイッチング用MOSFET103a〜103dは、二つずつ(103aと103dおよび103bと103c)組み合わせて、異なるタイミングで導通するように制御すると、図1のA点とB点との間で交流電圧が発生する。
【0018】
交流電圧の振幅を変化させたり発生を停止するには、2組のスイッチング用MOSFET103a,103d及び103b,103cのゲートに印加するスイッチングパルスの時間幅を変化させたり、印加するスイッチングパルスを停止させることにより実現可能となる。ここで104は、平滑用コンデンサである。
【0019】
2組のスイッチング用MOSFET103a,103d及び103b,103cのゲートに印加するスイッチングパルスは、第一パルス発生部112aおよび、第二パルス発生部112bによって生成されたスイッチングパルスのどちらか一方が、パルス切換部113によって供給される。第一パルス発生部112aおよび、第二パルス発生部112bによって生成されるスイッチングパルスの周波数は、ともに周波数設定部111によって設定される。
【0020】
送電側赤外線受発光部115は、後述する受電側赤外線受発光部207との間でワイヤレス通信によるデータの授受を行う。
【0021】
送電側赤外線通信ドライバ116は、送電側制御部118が送電側赤外線受発光部115および受電側赤外線受発光部207を介して、後述する受電側制御部210との間で、データの授受を行うためのインターフェース部である。
【0022】
送電側制御部118は、CPU、RAM,ROMおよびI/O等から構成される。前述のように、送電側制御部118は、負荷3が所望する電力供給に必要とする直流電圧を生成するため、変圧制御部117がスイッチング用トランジスタ109に与える周期の指令、送電コイル100とコンデンサ101からなる共振回路に供給するスイッチング周波数を周波数設定部111に設定する指令、さらに送電側赤外線受発光部115と送電側赤外線通信ドライバ116からなる送電側赤外線通信モジュール114を介した受電回路20とのデータの授受等を行う。
【0023】
一方、受電回路20は、受電コイル200と、コンデンサ201と、整流器202と、コンデンサ203と、電流計測部204と、電流監視抵抗器205と、受電側赤外線受発光部207および受電側赤外線通信ドライバ208とからなる受電側赤外線通信モジュール206と、外部出力スイッチ209、および受電側制御部210より構成される。
【0024】
受電コイル200は、図2に示すように、板状の磁芯261に導線262を平面的に巻回したものである。コンデンサ201は、受電コイル200と直列に接続され、共振回路を構成している。
【0025】
整流器202は、受電コイル200からの電力を整流して、直流電源に変換する。なお、コンデンサ203は、平滑、ノイズ除去用のコンデンサである。
【0026】
電流計測部204は、電流監視抵抗器205の両端に生じる電位差を計測し、その結果をもとに受電側に供給された電流値Aを検出する。
【0027】
受電側制御部210は、CPU、RAM,ROMおよびI/O等から構成される。受電側制御部210では、出力端子211および212に接続される負荷3(電動歯ブラシ、スマートフォン、タブレット端末等の充電装置)が必要とする電力の情報等を予め記憶している。この負荷3が必要とする電力の情報や、前述の電流計測部204で検出した電流値Aは、受電側赤外線受発光部207、受電側赤外線通信ドライバ208からなる受電側赤外線通信モジュール206を介して、送電側制御部118との間でワイヤレス通信によるデータの通信を行う。さらに、負荷3への電力供給の実行および停止を切換える、出力切換スイッチ209の制御も行う。
【0028】
次に、実施形態に係る非接触電力伝送装置の動作を、フローチャートおよびグラフをもとに説明する。
【0029】
図3〜5のフローチャートは、本実施形態の非接触電力伝送装置の制御を示したものである。図の左側は受電側制御部210の処理を、右側には送電側制御部118の処理を表している。
【0030】
図3において、送電側制御部118は、変圧回路105が出力する直流電圧を設定する変圧制御部117と、第一パルス発生部112aおよび第二パルス発生部112bによって供給される、インバータ回路102へのスイッチングパルスの周波数を決定する周波数設定部111に与える指令をOFFにして初期化を行う。(S101)
【0031】
一方、受電側制御部210は受電側赤外線通信モジュール206を介して、給電する負荷3の仕様に合致した供給電力量、電流値および電圧値などの電力供給条件を送電側制御部118に送信する(S201)。このとき送電側制御部118は、送電側赤外線通信モジュール114を介して、受電側制御部210からの送信通知を待つ(S102)。
【0032】
ここで使用する赤外線受発光部(115、207)に関しては、赤外線の指向性が強く指向角が狭いが故、通信が確立するためには、光軸の一致が十分となる必要がある。したがって、送電側と受電側の赤外線受発光部(115、207)が通信可能となるように光軸の位置を合わすことで、送電側赤外線受発光部115と送電コイル100、および受電側赤外線受発光部207と受電コイル200の物理的な位置関係が一致しているため、結果として、両コイル(100、200)間の対向する位置を一致させることができる。よって、赤外線通信の成立することによって、送電コイル100と受電コイル200とが対向する位置関係にあることが確保される。
【0033】
送電側制御部118は受信した負荷3への電力供給条件が、送電回路10によって供給可能であるかを判断し、不可能な条件の場合(S103で「NO」)は終了する。
【0034】
一方、電力供給条件が可能な条件の場合(S103で「YES」)は、伝送する電力に合せた条件で初期設定を行う(S104)。
【0035】
伝送電力に合せた条件での初期設定としては、図4に示すように、まず直流電源2から電力伝送に必要とする直流電圧を、スイッチング用トランジスタ109のスイッチングにて生成するため、109のゲートに入力する制御パルスを変圧制御部117によって発生させる(S150)。次に、送電コイル100に与える交流電圧を決定するため、周波数設定部111により第一パルス発生部112aのスイッチング周波数faを初期値であるf1に設定(S151)し、パルス切換部113を第一パルス発生部112aに設定(S152)する。最後に、送電回路10の初期設定完了を送電側制御部118が送電側赤外線通信モジュール114を介して、受電側赤外線通信モジュール206へ送信し、受電側制御部210に通知(S153)を行う。
【0036】
図3に戻り、受電側制御部210は、送電側制御部118から初期設定完了を受信するまで待つ(S202で「NO」)が、所定の時間内に応答がない場合(S203で「YES」)はそのまま終了する。応答があった場合(S202で「YES」)は、受電コイル200が交流電圧を受電し、整流器202で直流電圧に変換された後の電流値Aを、電流測定部204によって測定する。電流値Aは、受電側赤外線通信モジュール206を介して、送電側赤外線通信モジュール114へと送信し、送電側制御部118に通知(S204)される。
【0037】
通知を受けた送電側制御部118では、インバータ回路102を制御するスイッチング周波数の決定処理(S105)を実行する。
【0038】
図5で示すように、スイッチング周波数の決定処理(S105)では、受電側制御部210送電側制御部118が受信した受電回路20の電流値A(n)と受電回路20に接続した負荷3が所望する電流値Atgの上限値Atg+dAおよび下限値Atg−dAとの比較を行うことで、第一パルス発生部のスイッチング周波数faおよび第二パルス発生部のスイッチング周波数fbとその切換時間であるtaおよびtbを決定し出力を行う。尚、nは送電側制御部118が受信した回数を示す。
【0039】
まず、送電側制御部118が受信した電流値A(n)を受電回路20に接続した負荷3が所望する電流値Atgの上限値Atg+dAおよび下限値Atg+dAと比較する(S160)。尚、dAは負荷3の電流変動許容値を表す。
【0040】
比較の結果、電流値A(n)が所望する電流値範囲内の場合(S160が「YES」)は、第一パルス発生部のスイッチング周波数faを現状値f(n)に設定(S161)して終了する。
【0041】
一方、現状の電流値A(n)が所望した電流値の下限値未満の場合(S160が「下限値未満」)は、さらに前回の受信した電流値A(n−1)と上限値との比較(S162)を行う。
【0042】
ここで、電流値A(n−1)が上限値以下の場合(S162が「NO」)は、第一パルス発生部112aのスイッチング周波数faをdfだけプラス(S165)して、再度受電側制御部210から電流値Aが送信されるのを待ち、所望した電流値範囲内か否かの判定(S160)を繰り返す。
【0043】
電流値A(n−1)が上限値より大きい場合(S162が「YES」)は、第一パルス発生部112aのスイッチング周波数faを現状のf(n)に設定(S163)し、第二パルス発生部112bのスイッチング周波数fbを一回前の周波数f(n−1)に設定(S164)する。続いて、上述の二つパルス発生部112a、112bの出力パルスの切換時間を設定(S170)し、何れかを切換えて、インバータ回路102のゲートに入力する(S171)が、切換時間の設定についての詳細は、後述する。
【0044】
再び、送電側制御部118が受信した電流値A(n)を受電回路20に接続した負荷3が所望した電流値Atgの上限値Atg+dAおよび下限値Atg+dAと比較にもどり、現状の電流値A(n)が所望した電流値の上限値より大きい場合(S160が「上限値より大」)の処理について説明する。
【0045】
次に前回の受信した電流値A(n−1)と下限値との比較(S166)を行い、電流値A(n−1)が下限値以上場合(S166が「NO」)は、第一パルス発生部112aのスイッチング周波数faをdfだけマイナス(S169)して、再度受電側制御部210から電流値Aが送信されるのを待ち、所望した電流値範囲内か否かの判定(S160)を繰り返す。
【0046】
電流値A(n−1)が下限値未満の場合(S166が「YES」)は、第一パルス発生部112aのスイッチング周波数faを現状のf(n)に設定(S167)し、第二パルス発生部112bのスイッチング周波数fbを一回前の周波数f(n−1)に設定(S168)する。続いて、上述の二つパルス発生部112a、112bの出力パルスの切換時間を設定(S170)し、何れかを切換えて、インバータ回路102のゲートに入力する(S171)。
【0047】
ここで、第一パルス発生部112aと、第二パルス発生部112bの出力パルスの切換え時間設定(S170)について説明する。第一パルス発生部112aのスイッチング周波数faと第二パルス発生部112bのスイッチング周波数fbを出力する時間の割合をそれぞれta、tbとすると、taとtbは次式で設定する。
ta=(A(fb)−Atg)/(A(fb)−A(fa))・dt…(1)
tb=(Atg−A(fa))/(A(fb)−A(fa))・dt…(2)
ここで、A(fa),A(fb)は、それぞれスイッチング周波数faの出力パルス、スイッチング周波数fbの出力パルスでインバータ回路102をスイッチングした場合に、受電回路20の電流計測部204で測定される電流値を示す。dtはスイッチング単位時間を示す。
【0048】
スイッチング周波数fa、fbを交互に切換える利点について、説明を加える。受電回路20で発生する電流Aを目標とする電流値Atgに寄り近づけるためには、パルス発生部のスイッチング周波数を調整するdfを細かく設定する必要がある。しかしながら、送電側制御部118が出力可能なスイッチング周波数には分解能の制約があり、dfはその分解能に依存する。よって、df単位でのスイッチング周波数増減では、所望する電流値Atgまたは、その上限値、下限値の範囲内の電流値を生成するスイッチング周波数ftgが達成できない場合がある。
【0049】
そこで、送電側制御部118が出力可能なスイッチング周波数のうち、ftgに最も近いスイッチング周波数fa,fb(fa>ftg>fb)を第一パルス生成部112aと第二パルス生成部112bにそれぞれ設定し、パルス切換部113を単位時間おきに切換えて交互に出力することで所望のスイッチング周波数ftgを出力する場合と同等の効果を得ることができる。
【0050】
図3に戻り、送電側制御部118ではスイッチング周波数faないしfbでの定電流制御でインバータ回路102を駆動する(S106)。
【0051】
ここで、所望する電流値Atgと測定した電流値Aの差が所定の時間継続して所定の範囲内にあるとき、定電流制御が安定して行われているものと判定(S107で「YES」)し、送電側赤外線モジュール114を介して、受電側赤外線通信モジュール206に送信(S108)する。
【0052】
定電流制御が安定である通知を受け(S206で「YES」)、受電側制御部210は、外部出力スイッチ209をON状態へと切換え(S207)、負荷3への非接触電力供給を開始する。
【0053】
その後も、送電側制御部は負荷3の変動に応じて、出力周波数を調整することで定電流制御を行う。
【0054】
電力供給の停止は、送電側制御部118で電力供給停止を判断(S109)し、受電回路20への送電を停止(S110)する。直接的には、送電スイッチング用MOSFET103a〜103dへのパルス出力を停止、スイッチング用トランジスタのゲート電流供給の停止が実行される。
【0055】
次に、送電側制御部118は送電停止を、送電側および受電側赤外線通信モジュール114、206を介して受電側制御部210に通知(S111)し終了する。
【0056】
受電側制御部210は、送電中止を認識(S208が「NO」)した後、外部出力スイッチ209をOFFに切換え(S209)終了する。
【0057】
以上説明したように、本実施形態に係る電磁界共振結合を利用した非接触電力伝送装置1では、送電コイル100と受電コイル200とで対向する位置が、指向性が強い送電側赤外線受発光部115と受電側赤外線受発光部207との光軸が一致にする位置と相対的に合致しているため、位置のズレ防止が可能となる。また、負荷3への電力供給する前段において、電磁界共有結合に最適なスイッチング周波数を、受電回路20で発生する電流値を元に調整するため、コイル間のエアギャップの変化にも対応可能となる。さらに、受電回路20で発生する電流値Aが所望する電流値Atgに近い2つのスイッチング周波数fa,fbを交互に与えることで、設定可能なスイッチング周波数の分解能が低い場合においても、所望する電流値Atgの許容範囲(図6のAtg−dA〜Atg+dA)での電力伝送が可能となる。よって、小型で安価、かつ高いエネルギー伝送効率が可能な非接触電力伝送装置を実現する。
【0058】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。例えば、電流計測部204での測定を電圧測定手段や電力測定手段による測定として、電圧値、電力値とすることも可能である。
【符号の説明】
【0059】
1 非接触電力伝送装置、2 直流電源、3 負荷、10 送電回路、20 受電回路、100 送電コイル、101 コンデンサ、102 インバータ回路、103a,103b,103c,103d スイッチング用MOSFET、104 平滑用コンデンサ、105 変圧回路、106 ダイオード、107 インダクタンス、108 平滑用コンデンサ、109 スイッチング用トランジスタ、111 周波数設定部(周波数設定手段)、112a 第一パルス発生部(スイッチングパルス発生手段)、112b 第二パルス発生部(スイッチングパルス発生手段)、113 パルス切換部(パルス切換手段)、114 送電側赤外線通信モジュール(送電側通信手段)、115 送電側赤外線受発光部、116 送電側赤外線通信ドライバ、117 変圧制御部、118 送電側制御部、119,120 入力端子、200 受電コイル、201 コンデンサ、202 整流器、203 コンデンサ、204 電流計測部(計測手段)、205 電流監視抵抗器、206 受電側赤外線通信モジュール(受電側通信手段)、207 受電側赤外線受発光部、208 受電側赤外線通信ドライバ、209 外部出力スイッチ、210 受信側制御部、211,212 出力端子
図1
図2
図3
図4
図5
図6