(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、健康志向の上昇により、ウォーキング、ジョギングおよびハイキングなどの軽い運動をする人口が増加している。軽い運動は、健康を増進する一方で、特に、足腰の筋力が低下している高齢者において、転倒事故のリスクをかかえている。これら高齢者は、転倒事故を起こすと関節痛などの運動器疼痛を患う可能性がある。運動器疼痛は、場合により歩行時に杖などの使用を余儀なくされ、歩行などの日常生活に大きな支障をきたすため、速やかな治療が必要である。
【0003】
運動器疼痛の治療は、薬物による痛みの除去が中心であり、一般的に、NSAIDsを第一選択薬として用いる。NSAIDsは、当初経口剤として開発され、速やかに優れた消炎鎮痛効果を発現することから、運動器疼痛をはじめとした各種疼痛に対し広く用いられている。
【0004】
一方、NSAIDs含有の経口剤は、長期にわたり用いた場合、胃腸障害などの副作用を生じることが知られている。また、運動器疼痛のように、患部が局所にある疾患にNSAIDsを用いる場合には、患部局所に選択的に薬物を分布させる方が、効率的な治療を期待できる。そのため、運動器疼痛の治療には、胃腸障害などの副作用を回避でき、かつ、患部局所への選択的薬物分布を達成できるNSAIDs含有の剤形が望まれていた。このような背景から、経口剤の投与経路変更が図られ、NSAIDs含有の外用剤が開発された。
【0005】
NSAIDs含有の外用剤は、特許文献1で開示されている液剤などの外用塗布剤と、特許文献2で開示されているテープ剤などの外用貼付剤に大別され、各々の利点を活かして使い分けられている。外用塗布剤は、外用貼付剤に比べ関節部などに投与した場合に除去されにくく、薬物の送達性が損なわれない利点を有している。特に、液剤は、他の外用塗布剤と比べ投与後の患部がべたつかない点で優れているため、運動器疼痛の治療に好まれて用いられているが、他の外用塗布剤と同様に、容器から内液を手に出して投与する必要があるため、手に残存するなどの不快感があった。この不快感は、特許文献3で開示されている、塗布部を備えた容器に内液を充填し、塗布部に内液を含浸させて患部に投与できる液剤を用いることで解決される。
【0006】
しかしながら、この液剤は、投与時に塗布部が患部に直接接触するため、後述の点で満足のいくものではなかった。すなわち、汗、皮脂および皮膚常在菌などで塗布部が汚染されるため、塗布部および内液の清潔性が損なわれる。また、腫脹した患部に投与した場合、塗布部の物理的な刺激により、激しい苦痛を伴うことがある。このように、塗布部が患部に接触することは、清潔性を損ない、また、場合により激しい苦痛を伴うため、使用感の低下を招いている。
【0007】
さらに、この液剤は、塗布部に含浸させる内液量を調節することが難しく、所望される一定量を簡易な操作で投与できない課題がある。そのため、この液剤の使用者は、投与量を容易に把握することができず、過剰量を投与した場合に、副作用を生じるリスクがある。
【0008】
そこで、NSAIDsを含有する内液を、容器が患部に接触せず、一定量を簡易な操作で投与可能な、NSAIDs含有液剤の開発が望まれていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、上述の状況を鑑みてなされたもので、NSAIDsを含有する内液を、容器が患部に接触せず、一定量を簡易な操作で投与可能な、NSAIDs含有液剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上述の課題を解決すべく鋭意検討した結果、NSAIDsを含有する内液を、特定のポンプスプレー容器に充填することにより、容器が患部に接触せず、一定量を簡易な操作で投与可能な、NSAIDs含有液剤を得ることができることを見出し、この知見に基づき、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下の(1)〜(7)に示したものである。
(1)NSAIDsを含有する内液を、容器が患部に接触せず、一定量を簡易な操作で投与可能な外用の液剤であって、
前記内液が、容器本体、装着キャップ、ポンプディスペンサーおよび押し下げヘッドにより構成されるポンプスプレー容器に充填され、
容器本体が、内側に内液の充填空間と、開口させた口頸部を有し、
装着キャップが、中央部を開口させた天壁部と、天壁部の外周縁から下方に向けて延設された周壁部と、天壁部に前記開口と同軸に配置されるとともに上方に向けて延設され押し下げヘッドの上下動を案内する案内筒とを備えており、
ポンプディスペンサーが、シリンダーと、上方付勢状態で下方移動可能に設置されたステムを有するピストン部材と、ステムを上方に向けて付勢する付勢部材とを備え、容器本体の口頸部を通して充填空間に吊り下げられており、そのピストン部材が、シリンダーに内蔵され、そのステムの上部が、シリンダーの上端および装着キャップの天壁部から上方に突出し、装着キャップの案内筒内に配置され、そのシリンダーが、上端に取り付けフランジ、下端に汲み上げパイプを設け、パッキンを介して装着キャップにより容器本体の口頸部に取り付けられ、
押し下げヘッドが、頂壁部と、頂壁部の下面における中央部から下方に向けて延設された装着筒部と、頂壁部の外周縁から下方に向けて延設され装着筒部を径方向の外側から囲繞する外周壁部と、外周壁部に設置された噴霧口とを備え、その装着筒部が、ステムの上端部を嵌合する機能を有し、その噴霧口が、寒天培地中にコロニーを形成できる細菌を検出せず、
前記内液が、押し下げヘッドの頂壁部を押しこんでポンプディスペンサーを作動させることで、内部に形成した導通路を通じて噴霧口から噴霧され、噴霧された内液量の変動が、規格の±10%以下であることを特徴とする、NSAIDs含有液剤。
(2)ポンプディスペンサーが、蓄圧吐出弁を内装した蓄圧式ポンプディスペンサーである、上記(1)に記載のNSAIDs含有液剤。
(3)ポンプディスペンサーが、直立および倒立の両位置での作動を可能とするアダプターを備えた、上記(1)または(2)に記載のNSAIDs含有液剤。
(4)容器本体の容量が、50〜150mLである、上記(1)〜(3)のいずれかに記載のNSAIDs含有液剤。
(5)容器本体の横断面の形状が、オーバル状である、上記(1)〜(4)のいずれかに記載のNSAIDs含有液剤。
(6)ポンプディスペンサーを1回作動させた際に、噴霧された内液量が、0.05〜0.5mLである、上記(1)〜(5)のいずれかに記載のNSAIDs含有液剤。
(7)ポンプディスペンサーを1回作動させ、10cm離れた垂直板面に向けて内液を噴霧した際に、その板面における濡れた部分の最大径が5cm〜30cmであり、かつ、濡れた部分の面積が10cm
2〜700cm
2である、(1)〜(6)のいずれかに記載のNSAIDs含有液剤。
【発明の効果】
【0012】
以上述べたように、本発明は、NSAIDsを含有する内液を、容器が患部に接触せず、一定量を簡易な操作で投与可能な、NSAIDs含有液剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を用いて、本発明のNSAIDs含有液剤をより詳細に説明する。
図1は、本発明のNSAIDs含有液剤の構成例を模式的に示したものである。なお、本明細書に記載の例示は、本発明を特に限定するものではない。
【0015】
本発明の「清潔性」は、NSAIDs含有液剤の噴霧口または塗布部をLuria−Bertani寒天培地に接触させ、その寒天培地を37℃で24時間静置後に肉眼で認める細菌のコロニー数(cfu:cоllоny fоrming unit)で判断した。すなわち、コロニーを認めなかった場合は、投与後の容器または内液に「清潔性があった」とし、1cfu以上のコロニー数を認めた場合は、投与後の容器または内液に「清潔性がなかった」とした。
【0016】
本発明の「苦痛」は、NSAIDs含有液剤を用いて内液を患部に投与した際に、物理的な刺激によって起こる、苦しみまたは痛みを意味する。なお、苦痛を5段階の苦痛スコアで評価した際に、5名の被験者の合計スコアが5点未満だった場合は、「苦痛を伴わなかった」とし、5点以上だった場合は、「苦痛を伴った」とした。
【0017】
本発明の「一定量」は、NSAIDs含有液剤を用いて、被験者5名が各人1回ずつ内液を投与した際、投与された内液量の相対標準偏差で判断した。すなわち、相対標準偏差が0.1以下であった場合は、「一定量を投与できた」とし、0.1を超えた場合は、「一定量を投与できなかった」とした。
【0018】
本発明のNSAIDs含有液剤は、内液1をポンプスプレー容器に充填したものである。本発明に用いるポンプスプレー容器は、容器本体A、装着キャップB、ポンプディスペンサーCおよび押し下げヘッドDにより構成される。
【0019】
本発明に用いる容器本体A、装着キャップB、ポンプディスペンサーCおよび押し下げヘッドDの材質は、たとえば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(高密度ポリエチレン:HDPE、低密度ポリエチレン:LDPE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリスチレンなどのプラスチック、アルミなどの金属、ガラスなどが挙げられ、単独または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0020】
容器本体Aは、内側に内液1の充填空間と、開口させた口頸部2を有する。口頸部2には、外周にねじ3が備えられている。容器本体Aの形状は、特に制限されないが、横転した際に転がりにくい形状が紛失防止の観点で好ましい。すなわち、容器本体Aは、横断面の形状がオーバル状または1つ以上の角を有する形であることが好ましく、更に、容器の持ちやすさを考慮すると、特に、オーバル状であることが好ましい。また、容器本体Aの容量は、特に制限されないが、50mL未満であると経済的に好ましくなく、150mLを超えると容器がかさばり携帯性に欠くため、50〜150mLであることが好ましい。
【0021】
装着キャップBは、中央部を開口させた天壁部4と、天壁部4の外周縁から下方に向けて延設された周壁部5と、天壁部4に前記開口と同軸に配置されるとともに上方に向けて延設され押し下げヘッドDの上下動を案内する案内筒6とを備えている。周壁部5は、内周面にねじ部が形成されている。
【0022】
ポンプディスペンサーCは、シリンダーC1と、シリンダーC1に内蔵され上方付勢状態で下方移動可能に設置されたステム7を有するピストン部材C2と、ステム7を上方に向けて付勢する付勢部材とを備えており、容器本体Aの口頸部2を通して充填空間に吊り下げられている。ステム7の上部は、シリンダーC1の上端および装着キャップBの天壁部4から上方に突出し、装着キャップBの案内筒6内に配置されている。シリンダーC1は、上端に取り付けフランジ8が設けられ、パッキンを介して、装着キャップBにより容器本体Aの口頸部2にねじ係合で取り付けられている。また、シリンダーC1の下端には、汲み上げパイプ9が設けられている。汲み上げパイプ9は、容器本体Aの底面の近傍に配置されるようになっている。
【0023】
押し下げヘッドDは、頂壁部10と、頂壁部10の下面における中央部から下方に向けて延設された装着筒部と、頂壁部10の外周縁から下方に向けて延設され装着筒部を径方向の外側から囲繞する外周壁部11と、外周壁部11に設置された噴霧口12とを備えている。装着筒部は、ステム7の上端部を嵌合する機能を有する。外周壁部11の外径は、装着キャップBの案内筒6の内径よりも小さくなっている。そのため、外周壁部11は、押し下げヘッドDの上下動に伴い、案内筒6内を上下動できるようになっている。噴霧口12は、外周壁部11の内側を通してステム7の内部と連通している。頂壁部10を押しこむと、ポンプディスペンサーCが作動し、内液1は、内部に形成した導通路を通じて、噴霧口12から噴霧される。
【0024】
ポンプディスペンサーCは、押し下げヘッドDの上下動に応じて、一定量の内液1を噴霧口12から噴霧できるものであればよい。すなわち、ステム7を連接したピストン、ばねなどを備え、汲み上げパイプ9を通して、内液1を吸引、圧縮、圧送する一般的な機構であるが、好ましくは、特許3614599号公報で開示されているような蓄圧吐出弁を内装した蓄圧式ポンプディスペンサーである。蓄圧式ポンプディスペンサーは、押し下げヘッドDを上下動させることでポンプディスペンサーCを作動させ、所定圧以上の液圧においてのみ噴霧口12から一定量の内液1を噴霧できる機構を有する。そのため、NSAIDsの投与量を厳密に管理する必要がある場合に適している。
【0025】
本発明のNSAIDs含有液剤は、投与部位によって、ポンプスプレー容器を直立状態または倒立状態で使用することがある。そのため、ポンプディスペンサーCには、特開平11−197562号公報で開示されているような、直立および倒立の両位置での作動を可能とするアダプターを設ける方が好ましい。
【0026】
本発明のNSAIDs含有液剤は、噴霧口12の清潔性を保つ目的で、オーバーキャップEを装着することができる。オーバーキャップEは、噴霧口12が覆い隠されていればよいため、噴霧口12のみを覆い隠してもよく、噴霧口12および押し下げヘッドDを覆い隠してもよく、噴霧口12、押し下げヘッドDおよび装着キャップBを覆い隠してもよく、または、噴霧口12、押し下げヘッドD、装着キャップBおよび容器本体Aを覆い隠してもよい。その取り付け方法は、アンダーカット係合またはねじ係合などから自由に選択でき、着脱自在に固定保持されていればよい。オーバーキャップEの材質は、たとえば、PP、HDPE、LDPE、PET、ポリスチレンなどのプラスチック、アルミなどの金属、ガラスなどが挙げられ、単独または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0027】
本発明のNSAIDs含有液剤は、噴霧された内液量、噴霧された内液の形状および面積などの噴霧特性に、特に制限がなく、噴霧口12の口径などを調節することで、適宜変えることができる。ただし、ポンプディスペンサーCを1回作動させた際に噴霧された内液量は、0.05mL未満であると充分な消炎鎮痛効果が得られず、また、0.5mLを超えるとポンプディスペンサーCの表面積の増大に伴って容器本体Aが大きくなり携帯性を欠くため、0.05〜0.5mLであることが好ましい。さらに、本発明のNSAIDs含有液剤は、関節痛などに使用されるため、ポンプディスペンサーCを1回作動させた際に、内液1が関節全体に噴霧された方が好ましい。そのため、10cm離れた垂直板面に向けて内液1を噴霧した際、その板面における濡れた部分の最大径が5cm〜30cmであり、かつ、濡れた部分の面積が10cm
2〜700cm
2であることが好ましい。濡れた部分の面積が10cm
2未満であると所望される範囲に噴霧できず、また、700cm
2を超えると所望される範囲以外にも噴霧されて無駄を生じるため、好ましくない。
【0028】
本発明に用いるNSAIDsとしては、たとえば、インドメタシン、イブプロフェン、ケトプロフェン、イブプロフェンピコノール、ピロキシカム、アスピリン、フェルビナク、アルクロフェナック、クリダナク、サルサラート、ナプロキセン、フェンブフェン、フルフェナム酸、フルルビプロフェン、メチアジン酸、メフェナム酸、ベンダザック、ブフェキサマク、ウフェナマート、ロキソプロフェンおよびこの塩、グリチルレチン酸およびこの塩、サリチル酸メチル、サリチル酸グリコールなどが挙げられ、単独または2種以上組み合わせて用いることができる。NSAIDsの含量は、内液の全量に対して、0.01質量%未満であると充分な消炎鎮痛効果が得られず、また、5質量%を超えると副作用を発現するリスクが高くなるため、0.01〜5質量%であることが好ましいが、より好ましくは、0.5〜3.5質量%である。
【0029】
本発明に用いるアルコールとしては、たとえば、エタノール、無水エタノール、各種変性エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノールなどが挙げられ、単独または2種以上組み合わせて用いることができる。アルコールの含量は、内液の全量に対して、10質量%未満であるとNSAIDsを充分に溶解または分散させることが困難であり、また、60質量%を超えると皮膚刺激性が高くなるため、10〜60質量%であることが好ましいが、より好ましくは、20〜40質量%である。
【0030】
本発明に用いる水としては、たとえば、精製水、滅菌水、天然水、常水、注射用水などが挙げられ、単独または2種以上組み合わせて用いることができるが、好ましくは精製水である。
【0031】
本発明のNSAIDs含有液剤には、本発明の効果を損なわない範囲で医薬品を製造するにあたって許容される各種成分、すなわち、界面活性剤、増粘剤、保湿剤、油性成分、pH調整剤、キレート剤、香料・清涼化剤、酸化防止剤、防腐剤、吸収促進剤などを適宜配合することができる。
【0032】
界面活性剤としては、たとえば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリプロピレンアルキルエーテルなどのエーテル系化合物、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルなどのエステル系化合物、ポリオキシエチレンヒマシ油・硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン重合体などのノニオン界面活性剤、ラウリルジメチルベタインなどのアルキルベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタインなどのアルキルアミドベタイン、アルキルスルホベタイン、イミダゾリンなどの両性界面活性剤、飽和高級脂肪酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルエーテルスルホン酸塩、アルキルエーテルスルホン酸塩などのアニオン界面活性剤が挙げられ、単独または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0033】
増粘剤としては、たとえば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルメロース、クロスカルメロース、メチルセルロースなどのセルロース誘導体、部分α化澱粉などの加工澱粉、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、クロスポピドン、ポリエチレングリコール、カルボキシビニルポリマー、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体、キサンタンガム、カラギーナン、アルギン酸ナトリウム、アラビアゴム、グアーガム、ローカストビーンガム、プルラン、ゼラチン、ポリアクリル酸ナトリウムなどが挙げられ、単独または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0034】
保湿剤としては、たとえば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジブチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリンや、ショ糖、乳糖、マルトース、マンニトール、エリスリトール、キシリトールなどの糖類および糖アルコールなどが挙げられ、単独または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0035】
油性成分としては、たとえば、パルミトオレイルアルコール、オレイルアルコール、エイコソニルアルコール、エライジルアルコール、リノレイルアルコールなどの不飽和脂肪族アルコール、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、ウンデシレン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、リンデル酸、ラウロレイン酸、ツズ酸、ペテロセリン酸、バセニン酸、ゴンドイン酸などの不飽和脂肪酸、グリセリンモノオレイン酸エステルグリセリン、ジオレイン酸エステル、オレイン酸オクチルドデシル、オレイン酸オレイルなどの不飽和脂肪酸エステル、オレイルアルコール、エライジルアルコール流動パラフィン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックスなどの炭化水素類、メチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキン、ジメチルシクロポリシロキサンなどのシリコン油類、ミツロウなどのロウ類、セチルアルコール、ステアリルアルコールなどの高級アルコール類、コレステロールなどのステロール類、オレイン酸オクチルドデシル、オレイン酸オレイル、オクタン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ミリスチルなどの脂肪酸エステル類、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウムなどの金属石鹸類などが挙げられ、単独または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0036】
pH調整剤としては、たとえば、酢酸、ギ酸、乳酸、酒石酸、シュウ酸、グリコール酸、リンゴ酸、クエン酸、コハク酸、フマル酸、リン酸、塩酸、硝酸、硫酸およびこれらの塩、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、アルギニン、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、モノメタノールアミン、モノエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジメタノールアミン、ジエタノールアミン、ジプロパノールアミン、トリメタノールアミン、トリエタノールアミン、イソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリプロパノールアミン、アンモニア水、炭酸グアニジン、炭酸水素ナトリウム、炭酸アンモニウムなどが挙げられ、単独または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0037】
キレート剤としては、たとえば、ピロリン酸、ヘキサメタリン酸、グルコン酸などが挙げられ、単独または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0038】
香料・清涼化剤としては、たとえば、ハッカ油、ハッカハク油、ケイヒ油、チョウジ油、ウイキョウ油、ヒマシ油、テレピン油、ユーカリ油、オレンジ油、ラベンダー油、レモン油、ローズ油、レモングラス油、ダイウイキョウ油、チミアン油、ヘノポジ油、ヤマジン油、トウカ油、ベルガモット油、シトロネラ油、樟脳油、ゼラニウム油などやローズマリーやセージをはじめとする植物抽出物などの香料、l−メントール、カンフル、チモール、N−エチル−p−メンタン−カルボキシアミド、p−メンタン−3,8−ジオール、l−イソプレゴール、l−メンチルグリセリルエーテルなどの清涼化剤が挙げられ、単独または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0039】
酸化防止剤としては、たとえば、アスコルビン酸、没食子酸プロピル、ブチルヒドロキシアニソール、ジブチルヒドロキシトルエン、ノルジヒドログアヤレチン酸、トコフェロール、酢酸トコフェロールなどが挙げられ、単独または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0040】
防腐剤としては、たとえば、チモール、イソプロピルメチルフェノール、安息香酸、安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、ベンジルアルコール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウムなどが挙げられ、単独または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0041】
吸収促進剤としては、たとえば、ジイソプロピルアジペート、レシチン、スクワラン、スクワレン、エイゾン、l−メントール、ポリエチレングリコール、ミリスチン酸イソプロピル、ジメチルスルホキシド、ハッカ油、ユーカリ油、d−リモネン、dl−リモネンなどが挙げられ、単独または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0042】
本発明に用いる内液は、上述した各成分が混合溶解された均一な状態であってもよく、また、微粉末として均一に分散された状態であってもよい。
【0043】
本発明のNSAIDs含有液剤は、従来公知の常法または今後新しく提供される方法で製造することができる。その代表的な方法としては、NSAIDs、アルコールを精製水に充分に溶解または分散させ、さらに界面活性剤、増粘剤、保湿剤、油性成分、pH調整剤、キレート剤、香料・清涼化剤、酸化防止剤、防腐剤、吸収促進剤などを加え、十分に溶解または分散させて、内液を調製する。調製した内液を、ポンプスプレー容器に充填し、本発明のNSAIDs含有液剤を製造することができる。
【0044】
次に、本発明のNSAIDs含有液剤の使用態様について説明する。まず、押し下げヘッドDの頂壁部10を手で押しこむと、ステム7は、下方に向けて移動する。このステム7の移動に追従して、ピストン部材C2は、下方に移動する。これにより、シリンダーC1内の内液1は、圧縮されてステム7内に侵入し、このステム7内を上方に向けて移動する。そして、この内液1は、外周壁部11の内側を通って噴霧口12から外部に噴霧される。その後、押し下げヘッドDの頂壁部10から手を離すと、ピストン部材C2は、付勢部材の上方付勢力により、上方に向けて復元移動する。これにより、シリンダーC1内が減圧され、容器本体Aに充填された内液1は、汲み上げパイプ9を通してシリンダーC1内に吸引される。
【実施例】
【0045】
以下に、実施例によりさらに詳細に本発明を説明するが、本発明は、これに限定されるものではない。
(実施例1)
表1に示す配合に基づき、後述する調製法1の方法により調製し、本発明のNSAIDs含有液剤1を得た。得られたNSAIDs含有液剤1を使用して、試験例1に従って清潔性確認試験を実施した結果、全ての被験者で投与後の容器または内液に清潔性があった。結果を表2に示す。次に、試験例2に従って苦痛確認試験を実施した結果、合計スコアが0点となり、投与時に苦痛を伴わなかった。結果を表3に示す。また、試験例3に従って一定量確認試験を実施した結果、相対標準偏差が0.01となり、一定量を投与できた。さらに、試験例3において、全ての被験者で投与された内液量が規格の±10%であった。結果を表4に示す。
【0046】
【表1】
【0047】
(調製法1)
精製水に、フェルビナク、エタノール、グリセリンを順次加え、攪拌・溶解して得た内液を、容器本体の容量が100mLで、1回に噴霧される内液量が0.1mLであるポンプスプレー容器に充填し、NSAIDs含有液剤を得た。
【0048】
(試験例1)
清潔性確認試験
前述した実施例1のNSAIDs含有液剤1および後述する比較例1の液剤1を使用し、次に示す方法で清潔性確認試験を実施した。運動器疼痛を患う5名の被験者を対象として、各NSAIDs含有液剤を用いて内液を患部に投与してもらった。投与後に、噴霧口または塗布部をLuria−Bertani寒天培地に接触させ、その寒天培地を37℃で24時間静置した。24時間後、寒天培地を肉眼で観察し、細菌のコロニー数を計数した。コロニーを認めなかった場合は、投与後の容器または内液に「清潔性があった」とし、1cfu以上のコロニー数を認めた場合は、投与後の容器または内液に「清潔性がなかった」とした。結果を表2に示す。
【0049】
【表2】
【0050】
(試験例2)
苦痛確認試験
前述した実施例1のNSAIDs含有液剤1および後述する比較例1の液剤1を使用し、次に示す方法で苦痛確認試験を実施した。運動器疼痛を患う5名の被験者を対象として、各NSAIDs含有液剤を用いて内液を患部に投与してもらい、投与時における物理的な刺激による苦しみまたは痛みを、5段階の苦痛スコアで評価してもらった。耐えがたい苦しみまたは痛みを5点とし、4、3、2、1点となるに従って苦しみまたは痛みが弱くなり、苦しみまたは痛みが全くなかった場合に0点とした。5名の被験者の合計スコアが5点未満だった場合は、「苦痛を伴わなかった」とし、5点以上だった場合は、「苦痛を伴った」とした。結果を表3に示す。
【0051】
【表3】
【0052】
(試験例3)
一定量確認試験
前述した実施例1のNSAIDs含有液剤1および後述する比較例1の液剤1を使用し、次に示す方法で一定量確認試験を実施した。大腿部に運動器疼痛を患う被験者5名を対象として、各人の大腿部に同じ大きさの被験区域を設け、被験区域内に内液を投与してもらった。実施例1のNSAIDs含有液剤1は、押し下げヘッドを1回押しこむことで、被験区域内全体に投与してもらった。また、比較例1の液剤1は、被験区域内を3往復することで、被験区域内全体に投与してもらった。投与された内液量は、投与開始前後におけるNSAIDs含有液剤の重量差を、比重で除すことで算出した。各NSAIDs含有液剤について、平均値、標準偏差および相対標準偏差を算出し、相対標準偏差が0.1以下であった場合は、「一定量を投与できた」とし、0.1を超えた場合は、「一定量を投与できなかった」とした。結果を表4に示す。
【0053】
【表4】
【0054】
(比較例1)
実施例1において、内液を充填した容器を、ポンプスプレー容器から塗布部を備えた容器にした以外、実施例1と全く同じ調製法を繰り返して、液剤1を得た。得られた液剤1を使用して、試験例1に従って清潔性確認試験を実施した結果、4名の被験者で容器または内液に清潔性がなかった。結果を表2に示す。次に、試験例2に従って苦痛確認試験を実施した結果、合計スコアが19点となり、投与時に苦痛を伴った。結果を表3に示す。また、試験例3に従って一定量確認試験を実施した結果、相対標準偏差が0.61となり、一定量を投与できなかった。結果を表4に示す。