特許第6535946号(P6535946)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6535946
(24)【登録日】2019年6月14日
(45)【発行日】2019年7月3日
(54)【発明の名称】介護マットレス
(51)【国際特許分類】
   A47C 27/12 20060101AFI20190625BHJP
   A61G 7/05 20060101ALI20190625BHJP
【FI】
   A47C27/12 B
   A61G7/05
【請求項の数】3
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2019-512022(P2019-512022)
(86)(22)【出願日】2018年9月26日
(86)【国際出願番号】JP2018035673
【審査請求日】2019年3月12日
(31)【優先権主張番号】特願2017-184609(P2017-184609)
(32)【優先日】2017年9月26日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】300054206
【氏名又は名称】株式会社シーエンジ
(74)【代理人】
【識別番号】100103207
【弁理士】
【氏名又は名称】尾崎 隆弘
(72)【発明者】
【氏名】高岡 佳久
【審査官】 松江 雅人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−097223(JP,A)
【文献】 特開2003−310395(JP,A)
【文献】 特開2014−168683(JP,A)
【文献】 特開2017−014681(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 27/12
A61G 7/05−7/075
D04H 3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂のフィラメントを不規則に接点で接触絡合させたカール状のスプリング構造を有し、
線径φ0.1〜2.0mmであり、
押出方向に疎の構成単位と密の構成単位を繰り返し設ける第1立体疎密構造を有し、
該第1立体疎密構造において、前記疎の構成単位の嵩密度が0.01〜0.08g/cm、前記密の構成単位の嵩密度が0.03〜0.09g/cm、前記疎の構成単位の嵩密度に対する前記密の構成単位の嵩密度の比率が1.01〜5、前記疎の構成単位の押出方向での長さが1〜50cm、前記密の構成単位の押出方向での長さが3〜60cm、長さの比率が0.1〜10であり、
厚さ方向に疎の構成単位と密の構成単位を設ける第2立体疎密構造を有し、
該第2立体疎密構造において、前記疎の構成単位の嵩密度が0.01〜0.08g/cm、前記密の構成単位の嵩密度が0.03〜0.09g/cm、前記疎の構成単位に対する前記密の構成単位の嵩密度の比率が1.01〜5、前記疎の構成単位の厚さが0.5〜10cm、前記密の構成単位の厚さが2〜30cm、前記疎の構成単位に対する前記密の構成単位の厚さの比率が0.2〜60であり、
前記押出方向に対して直交する方向に疎の構成単位と密の構成単位を繰り返し設ける第3立体疎密構造を有し、
該第3立体疎密構造において、前記疎の構成単位の嵩密度が0.0〜0.07g/cm、前記密の構成単位の嵩密度が0.0128〜0.09g/cm、前記疎の構成単位の嵩密度に対する前記密の構成単位の嵩密度の比率が1.01〜5、前記疎の構成単位の幅が40〜100cm、前記密の構成単位の幅が4〜30cm、前記疎の構成単位の幅に対する前記密の構成単位の幅の比率が0.02〜30であり、
該第3立体粗密構造において、前記疎の構成単位は第1の疎の構成単位と、前記第1の疎の構成単位の両側に設けられ、前記第1の疎の構成単位よりも嵩密度の小さい第2の疎の構成単位を有し、前記第2の疎の構成単位の幅は前記第1の疎の構成単位より狭く、
前記第1立体疎密構造、前記第2立体疎密構造、及び前記第3立体疎密構造により、疎の構成単位同士による複数の交差立体領域を有する三次元網状構造体からなる介護マットレス。
【請求項2】
前記第2立体疎密構造において、前記密の構成単位を表面層に設ける請求項1の介護マットレス。
【請求項3】
前記第2立体疎密構造において、前記密の構成単位を中間層に設け、疎の構成単位を表面層に設ける請求項1の介護マットレス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元網状構造体を備える介護ベッドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
モーター駆動式介護用ベッドは、近年、技術の進展が進み、主に、背上げ機能、高さ調節機能、膝上げ機能の3つの機能を一部又は全部備えたものが販売されている。また、介護ベッドのモーターで駆動されるが、その種類としては、1モーターベッド、2モーターベッド、3モーターベッド、4モーターベッド等が販売され、ベッドに搭載されているモーターの数によって機能性が異なる。最近では、モーター数が多く、多段階で変形できる介護ベッドが要望されている。
【0003】
このような介護ベッドに使用される三次元構造体に関連して、特許文献1〜4の発明が提案されている。
【0004】
特許文献1に示す発明は、ベッド用クッションのシームレスな構造を実現し、クッション同士のずれと、クッション間の段差をなくし、軽量化を実現することを課題として、熱可塑性樹脂を原料又は主原料とし、押し出し成形によってループ状に無秩序に絡まり合い部分的に熱接着する連続中空線条又は中実線条から構成されるスプリング構造の立体網状構造体であり、該立体網状構造体の下面から上面に向かって短手方向に貫通する複数の連続溝を長手方向に沿って所定間隙又は適宜間隙で形成し、該立体網状構造体が上方に屈曲するときに該溝が拡開することを特徴とするスプリング構造のベッド用クッションが提案されている。
【0005】
特許文献2に示す発明は、ギャッジ性に優れているマットレス用中材及びそれを用いたマットレスを提供するため、マットレス用中材は、三次元網状構造体からなる層を複数積層させた積層体であって、前記三次元網状構造体からなる各層が、前記積層体の一方の端部において、連続的にあるいは断続的に固定され、他方の端部は固定されていないことを特徴とする。
【0006】
特許文献3に示す発明は、熱可塑性樹脂から構成される三次元網状構造体を円滑に曲げることを目的として、せん断速度に対してスウェル比が依存するポリエチレンから製造され、フィラメントを不規則に接触絡合させたカール状のスプリング構造を有し、押し出し方向に対して横方向に立体筋状疎密構造を有し、線径φ0.2〜1.3mm、嵩密度0.01〜0.2g/cmである三次元網状構造体であり、前記スウェル比が、温度190℃、管内径Dがφ1.0mm、長さ10mmのキャピラリーから溶融した前記ポリエチレンを押し出し、押し出された該ポリエチレンの前記フィラメントを冷却し、該フィラメントの切断面の直径をDとしたとき、せん断速度に対してD/Dで表されるものである。
【0007】
特許文献4に示す発明は、熱可塑性樹脂から構成される三次元網状構造体を円滑に曲げることを目的として、せん断速度に対してスウェル比が依存するポリエステルから製造され、フィラメントを不規則に接触絡合させたカール状のスプリング構造を有し、押し出し方向に対して横方向に立体筋状疎密構造を有し、線径φ0.2〜1.3mm、嵩密度0.01〜0.2g/cmである三次元網状構造体であり、前記スウェル比が、温度210℃、管内径Dがφ1.0mm、長さ10mmのキャピラリーから溶融した前記ポリエステルを押し出し、押し出された該ポリエステルの前記フィラメントを冷却し、該フィラメントの切断面の直径をDとしたとき、せん断速度に対してD/Dで表されるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−6924号公報
【特許文献2】特開2008−295824号公報
【特許文献3】国際公開WO2013/088736号公報
【特許文献4】国際公開WO2013/088737号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、最近、医療用、一般用マットレスも、単純な背上げだけではなく、3つ以上のモーターを使い、背中、足の部分、また、食事などで使用者が複雑な動きをするため、今までの三次元網状構造体では、複雑な動きに対応できないことが表れてきた。特に、誤瞭性肺炎などを起こさないためには、人体を特定の角度でホールドすることも必要であり、三次元網状構造体の縦と横の滑らかな動き、ベッド本体への動きの追従が必要になる。
【0010】
特許文献1では、ベッド用クッションを部分的に多数段階で切断する必要があり、また、曲げ特性も円滑で十分なものではなかった。特許文献2ないし4では、ベッド本体の複雑な動きに追従する性能、円滑に多段階にマットレスを曲げる性能については、未だ十分ではなく、介護ベッドの駆動底板とマットレスとの間に隙間を生じ追従性の課題があった。複数のモーターを用いて複雑に駆動底板を駆動する介護ベッドに対して、これに適合するマットレスが要望されている。
【0011】
そこで、本発明は、熱可塑性樹脂から構成される三次元網状構造体を有する介護ベッドを、モータによるベッド本体の複雑な動き、使用者の特定の動きに対応させ、介護ベッドへの追従性を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、熱可塑性樹脂のフィラメントを不規則に接点で接触絡合させたカール状のスプリング構造を有し、線径φ0.1〜2.0mmであり、押出方向に疎の構成単位と密の構成単位を繰り返し設ける第1立体疎密構造を有し、該第1立体疎密構造において、前記疎の構成単位の嵩密度δが0.01〜0.08g/cm、前記密の構成単位の嵩密度δが0.03〜0.09g/cm、前記疎の構成単位の嵩密度に対する前記密の構成単位の嵩密度の比率δ/δが1.01〜5、好ましくは、1.03〜4、特に好ましくは1.05〜3、前記疎の構成単位の押出方向での長さAが1〜50cm、好ましくは1〜30cm、前記密の構成単位の押出方向での長さAが3〜60cm、好ましくは3〜30cm、長さの比率A/Aが0.1〜10、好ましくは0.2〜8、特に好ましくは0.5〜5であり、厚さ方向に疎の構成単位と密の構成単位を設ける第2立体疎密構造を有し、該第2立体疎密構造において、前記疎の構成単位の嵩密度δが0.01〜0.08g/cm、前記密の構成単位の嵩密度δが0.03〜0.09g/cm、前記疎の構成単位に対する前記密の構成単位の嵩密度の比率δ/δが1.01〜5、好ましくは、1.1〜4、特に好ましくは、1.15〜2、前記疎の構成単位の厚さが0.5〜10cm、前記密の構成単位の厚さが2〜30cm、前記疎の構成単位に対する前記密の構成単位の厚さの比率が0.2〜60であり、前記押出方向に対して直交する方向に疎の構成単位と密の構成単位を繰り返し設ける第3立体疎密構造を有し、該第3立体疎密構造において、前記疎の構成単位の嵩密度が0.0〜0.07g/cm、前記密の構成単位の嵩密度が0.0128〜0.09g/cm、前記疎の構成単位の嵩密度に対する前記密の構成単位の嵩密度の比率が1.01〜5、前記疎の構成単位の幅が40〜100cm、前記密の構成単位の幅が4〜30cm、前記疎の構成単位の幅に対する前記密の構成単位の幅の比率が0.02〜30であり、該第3立体粗密構造において、前記疎の構成単位は第1の疎の構成単位と、前記第1の疎の構成単位の両側に設けられ、前記第1の疎の構成単位よりも嵩密度の小さい第2の疎の構成単位を有し、前記第2の疎の構成単位の幅は前記第1の疎の構成単位より狭く、前記第1立体疎密構造、前記第2立体疎密構造、及び前記第3立体疎密構造により、疎の構成単位同士による複数の交差立体領域を有する三次元網状構造体を備えることを特徴とする介護マットレスである。

【0013】
本発明は、前記第2立体疎密構造において、前記密の構成単位を表面層に設ける。
【0014】
前記第2立体疎密構造において、前記密の構成単位を中間層に設け、疎の構成単位を表面層に設ける。
【0016】
前記熱可塑性樹脂は、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル系熱可塑性エラストマー(TPEE、TPC)等が例示される。また、上記の原料にオレフィン、プロピレンと相溶性のあるエラストマーを配合させたものも使われる。この素材は透明性が高く、マットレス中材についた汚れを容易に発見できる。また、配合比率を変えることで弾力性を調整出来る。
【0017】
三次元網状構造体のヒステリシスロスは20〜80%であることが好ましい。
【0018】
ポリエチレンを用いる場合、具体的には、一般的なポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(VLPE)等が挙げられる。ポリエチレン原料の密度は0.82〜0.95g/cmであることが好ましく、0.85〜0.94g/cmであることがより好ましい。
【0019】
ポリエステルを用いる場合、主として、結晶性芳香族ポリエステル単位からなる高融点結晶性重合体セグメント(a)と、主として脂肪族ポリエーテル単位および/または脂肪族ポリエステル単位からなる低融点重合体セグメント(b)とを主たる構成成分とするポリエステルブロック共重合体(A)である三次元網状構造体が例示される。
【0020】
熱可塑性樹脂として、特許文献3,4に記載の特定範囲のスウェル比の熱可塑性樹脂を採用してもよい。
【0021】
フィラメントは中実でも中空でもどちらでもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、第1立体疎密構造及び第2立体疎密構造の疎の構成単位同士による複数の交差立体領域を有するので、モーターで駆動底板を駆動する介護ベッドへの追従性を高めることができる。介護ベッドの背上げの動作に対して介護ベッドの駆動底板と三次元網状構造体の底面の隙間が少なくなる。介護ベッドの仕様に対して三次元網状構造体の粗密を調整することができるので、一般の介護ベッドのほかに病院でも利用できる。
【0023】
本発明は、第1立体疎密構造、第2立体疎密構造及び第3立体粗密構造の疎の構成単位同士による複数の交差立体領域を有するので、モーターで駆動底板を駆動する介護ベッドへの追従性を高め、人体の左右への動きの規制を高める。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明第1実施形態の介護ベッドの三次元網状構造体の斜視図である。
図2】該三次元網状構造体の斜視図(寸法符号を示すもの)である。
図3】該三次元網状構造体の第1立体疎密構造を示す分解斜視図である。
図4】該三次元網状構造体の第2立体疎密構造を示す分解斜視図である。
図5】本発明第2実施形態の介護ベッドの三次元網状構造体の斜視図である。
図6】該介護ベッドの変更形態である三次元網状構造体の正面図である。
図7】本発明第3実施形態の介護ベッドの三次元網状構造体の斜視図である。
図8】該三次元網状構造体の斜視図(寸法符号を示すもの)である。
図9】該三次元網状構造体の第1立体疎密構造を示す分解斜視図である。
図10】該三次元網状構造体の第2立体疎密構造を示す分解斜視図である。
図11】該三次元網状構造体の第3立体疎密構造を示す分解斜視図である。
図12】本発明第4実施形態の介護ベッドの三次元網状構造体の斜視図である。
図13】該三次元網状構造体の斜視図(寸法符号を示すもの)である。
図14】該三次元網状構造体の第1立体疎密構造を示す分解斜視図である。
図15】該三次元網状構造体の第2立体疎密構造を示す分解斜視図である。
図16】該三次元網状構造体の第3立体疎密構造を示す分解斜視図である。
図17】本発明第4実施形態の介護ベッドの三次元網状構造体の使用状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
第1実施形態の三次元網状構造体101は、介護ベッドのマットレスの中材として適用したものである。この三次元網状構造体101は、熱可塑性樹脂のフィラメントを不規則に接点で接触絡合させたカール状のスプリング構造を有し、線径φ0.1〜2.0mm、嵩密度0.01〜0.15g/cmである。三次元網状構造体101の横幅Mは60〜200cm、長さLは90〜220cm、厚さは10〜100cmである。
【0026】
三次元網状構造体101は、図1図4に示す通り、押出方向Yに疎の構成単位1a〜1aと密の構成単位1b〜1bとを繰り返し設ける第1立体疎密構造1を有し、この第1立体疎密構造1において、疎の構成単位1a〜1aの嵩密度δは0.01〜0.08g/cm、密の構成単位1b〜1bの嵩密度δは0.03〜0.10g/cm、疎の構成単位1a〜1aに対する密の構成単位1b〜1bの嵩密度の比率δ/δが1.01〜5、疎の構成単位1a〜1aの長さAは1〜30cm、密の構成単位1b〜1bの長さAは3〜30cm、疎の構成単位1a〜1aに対する密の構成単位1b〜1bの長さの比率A/Aが0.5〜3である。
【0027】
三次元網状構造体101は、図1図4に示す通り、厚さ方向Zに疎の構成単位2cと密の構成単位2d,2dとを繰り返し設ける第2立体疎密構造2を有し、介護ベッドの中材に適用した場合、第2立体疎密構造2において、疎の構成単位の嵩密度は0.01〜0.08g/cm、密の構成単位の嵩密度δは0.03〜0.10g/cm、疎の構成単位に対する密の構成単位の嵩密度の比率δ/δが1.01〜5、好ましくは、1.1〜4、特に好ましくは、1.15〜2、疎の構成単位の厚さは0.5〜10cm、密の構成単位の厚さは2〜30cm、疎の各々の構成単位に対する密の構成単位2dの厚さの比率B/Bが0.2〜60である。前記第1立体疎密構造及び前記第2立体疎密構造により、疎の構成単位同士による複数の交差立体領域を有する三次元網状構造体を備えるので、三次元網状構造体101の介護ベッドの駆動底板に対する追従性が高くなる。
【0028】
三次元網状構造体101は、図4に示す通り、第1立体疎密構造1及び第2立体疎密構造2の疎の構成単位同士により、複数の疎の交差立体領域4のうち、嵩密度の小さい領域4a〜4aを備え、当該領域の嵩密度は、構成単位2d,2d、及び、複数の疎の交差立体領域4のうち、領域4a〜4aに挟まれた領域4b〜4bよりも小さくなる。上記は3層の場合であるが、疎密を2層とする場合でも適用できるし、4層以上でもよい。
【0029】
三次元網状構造体の詳細な製造方法は日本国特許第4350286号、U.S.Patent No.7,625,629等、特許出願人の公報を参照されたい。第1立体疎密構造は、基本的にはローラー又はキャタピラの速度を可変とすることで、疎密が形成される。また、第2立体疎密構造と、第3立体疎密構造は口金の孔の単位面積当たりの数の密度及び/又は径の大きさを調整することにより、疎密が形成される。
【0030】
第2実施形態の介護ベッドの三次元網状構造体201について図5を参照して説明する。この三次元網状構造体201は基本的には三次元網状構造体101と同様の構成を備えるので、共通する説明は第1実施形態の図示及び記載を援用するとともに、相違点を説明する。第2実施形態では、第1実施形態の第2立体疎密構造2の疎の構成単位2c、密の構成単位2d,2dの厚さ方向Zの位置の構成を変更し、疎の構成単位2c,2c、密の構成単位2dとし、粗密の位置を入れ替えたものである。第2実施形態では、密の構成単位2dが中間層となり、疎の構成単位2c,2cを表面層側に備えるものである。疎の構成単位2c,2cを表面層としたのは、介護ベッドへの追従性を高めるためである。密の構成単位2dが中間層となるのは、疎の構成単位2cのフィラメントの融着部分の剥離を防止するとともに、介護ベッドへの追従性を高める。
【0031】
三次元網状構造体201は、図5に示す通り、厚さ方向Zに疎の構成単位2c,2cと密の構成単位2dとを設ける第2立体疎密構造2を有し、この第2立体疎密構造2において、疎の構成単位2cの嵩密度δは0.01〜0.08g/cm、密の構成単位2dの嵩密度δは0.03〜0.10g/cm、疎の構成単位2c,2cに対する密の構成単位2dの嵩密度の比率δ/δが1.01〜5、好ましくは、1.1〜4、特に好ましくは、1.15〜2、疎の構成単位2c,2cの厚さBは0.5〜10cm、密の構成単位2dの厚さBは2〜30cm、疎の各々の構成単位2c,2cのそれぞれに対する密の構成単位2dの厚さの比率B/Bが0.2〜60である。表面層側を疎に構成し、中間層を密に構成するので、適切な嵩密度の範囲であれば、三次元網状構造体101が曲がりやすくなる。以上は3層の場合であるが、疎密を2層とする場合でも適用できるし、4層以上でもよい。
【0032】
第2実施形態の三次元網状構造体201の変更形態である三次元網状構造体201’は、図6に示す通り、介護ベッドへの追従性を高めるため、密の構成単位2dの上面と下面に、それぞれ、密の構成単位2d,2dを含んで設け、構成単位2d,2dの嵩密度を、構成単位2d,2dにより上下に挟まれた中間層の嵩密度よりも高い高密度層としたものである。構成単位2d,2dは密の構成単位2dの両側に設けてもよいし、片方のみを設けてもよい。
【0033】
第3実施形態の介護ベッドの三次元網状構造体301について図7図11を参照して説明する。この三次元網状構造体301は基本的には三次元網状構造体201と同様の構成を備えるので、共通する説明は第2実施形態の図示及び記載を援用するとともに、相違点を説明する。相違点としては、第2実施形態の三次元網状構造体に、第3立体疎密構造3を追加形成したものである。ここでは第2実施形態を基本としたが、第1実施形態に対して適用できる。X方向に沿って、口金のノズル孔の孔径の変更及び/又は孔数を増減することで、第3立体疎密構造を設ける。
【0034】
三次元網状構造体301は、押出方向Yに対して直交する方向Xに疎の構成単位3eと密の構成単位3f,3fとを繰り返し設ける第3立体疎密構造3を有する。この第3立体疎密構造3において、疎の構成単位3eの嵩密度δが0.009〜0.08g/cm、密の構成単位3f,3fの嵩密度δが0.0128〜0.10g/cm、疎の構成単位3eの嵩密度δに対する密の構成単位3f,3fの嵩密度の比率δ/δが1.01〜5、好ましくは、1.03〜4、1.05〜3である。疎の構成単位3eの幅Cは40〜100cm、密の構成単位3f,3fの各々の幅Cは4〜30cm、疎の構成単位3eに対する、各々の密の構成単位3f,3fの幅の比率C/Cが0.02〜30である。
【0035】
介護ベッドへの追従性を高める上に、三次元網状構造体301が人体を両側から挟んで人体の横への動きを規制することができる。
【0036】
第4実施形態の介護ベッドの三次元網状構造体401について図12図17を参照して説明する。この三次元網状構造体401は基本的には三次元網状構造体301と同様の構成を備えるので、共通する説明は第3実施形態の図示及び記載を援用するとともに、相違点を説明する。相違点としては、第3実施形態の三次元網状構造体の第3立体疎密構造3に疎の別の構造を追加構成したものである。ここでは第3実施形態を基本としたが、第1実施形態に対して適用できることは当然である。
【0037】
三次元網状構造体401は、押出方向Yに対して直交する方向Xに疎の構成単位3e,3e,3eと密の構成単位3f,3fとを繰り返し設ける第3立体疎密構造3を有する。この第3立体疎密構造3において、疎の構成単位3e,3e, 3eの嵩密度δが0.009〜0.07g/cm、密の構成単位3f, 3fの嵩密度δが0.0128〜0.09g/cm、疎の構成単位3e,3eに対する嵩密度は、疎の構成単位 3eよりも小さく設定される。疎の構成単位3e,3e, 3eの嵩密度δに対する密の構成単位3f, 3fの嵩密度δの比率δ/δが1.01〜5、好ましくは、1.03〜4、1.05〜3である。疎の構成単位3e,3e, 3eの合計の幅Cは40〜100cm、疎の構成単位3e,3eは、疎の構成単位3eよりも狭く設定される。密の構成単位3f,3fの各々の幅Cは4〜30cm、疎の各々の構成単位3e,3e, 3eの合計値に対する、各々の密の構成単位3f,3fの幅の比率C/Cが0.02〜30である。
【0038】
図17に示す通り、一例として、介護ベッドの三次元網状構造体401が人体を両側から挟んで人体の横への動きを規制することができる。
【実施例1】
【0039】
ポリエチレンを材料とする、介護ベッドの三次元網状構造体を製造するのに使用した押出機、引取機の諸条件を説明する。スクリュー径90mmの押出機で、第2立体疎密構造に対応するキャピラリー径(ノズル径)φ1.6mm、厚み80mm、幅83cm、長さ195cmの三次元網状構造体を製造した。スクリューの回転数44.0rpm(押し出し量毎時約125kg)のとき、三次元網状構造体が良好に曲がる引き取り速度および嵩密度を範囲で示すと、引取機の引き取り速度が第1立体疎密構造に対応させて、密の構成単位の場合には、8.93mm/secで、疎の構成単位の場合には、9.80mm/secが例示される。引き取り速度の制御により、第1立体疎密構造を設ける。表面層を設ける場合、三次元網状構造体が良好に曲がる表面層の嵩密度およびフィラメントの径の範囲は、嵩密度が0.05g/cm、フィラメントの径がφ0.7mmとなった。この嵩密度およびフィラメントの径の組み合わせであれば、ノズル径やノズル穴数等により厚み方向における嵩密度を変化させることにより、三次元網状構造体に第2立体疎密構造を設ける。
【0040】
上記三次元網状構造体では、第1立体疎密構造は、押出方向に5cm間隔で、嵩密度0.050g/cmの疎の構成単位と嵩密度0.055g/cmの密の構成単位が繰り返し設けられている。第2立体疎密構造は、厚さ方向において、嵩密度0.048g/cmの疎の構成単位が厚さ2cmで表面層に設けられ、続いて嵩密度0.054g/cmの密の構成単位が厚さ6cmで設けられている。本発明の三次元網状構造体をマットレス(ポリエチレン)に適用し、このマットレスのベッドへの追従性の確認試験を行った。マットレスのベッドへの追従性の測定は、株式会社プラッツのベッド(P100−3)を使用した。ベッドは、背部および腰部の2か所それぞれで角度調整が可能なものであり、背部の角度を40度、腰部の角度を20度に設定し、腰の部分でのベッドの駆動底板とマットレス底面の垂直距離を測定した。本発明の三次元網状構造体のマットレスでは、介護ベッドの駆動底板からマットレス底面までの垂直距離の最大値が4.6cmとなり、距離が少なくなることで、追従性が向上する。第3立体疎密構造を設け、押出方向に対して直交する方向Xにおいて、嵩密度0.080g/cmの密の構成単位が6cmで両端に、その間に嵩密度0.053g/cmの疎の構成単位が71cmで設けられている構造体において、フランスベッド株式会社、FB640を使用し、XYZ方向への追従性を確認し、同様の結果を得られた。
【0041】
[比較例1]
実施例1と同じ寸法のポリエチレンの三次元網状構造体のマットレスについて、マットレスの長手方向Yにおいて、頭部分65cmの嵩密度が0.050g/cm、頭部分に続く腰部分65cmの嵩密度が0.055g/cm、腰部分に続く足部分65cmの嵩密度が0.050g/cmであった。製造条件は引き取り速度の制御は実施例1と同一であり、口金の孔の密度は均一である。株式会社プラッツのベッド(P100−3)を使用して、マットレスのベッドへの追従性の確認試験を行った。この三次元網状構造体のマットレスでは、介護ベッドの駆動底板からマットレス底面までの垂直距離の最大値が6cmであり、実施例1よりも1.4cm大きく、追従性が劣る。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の三次元網状構造体はモータによって駆動底板が駆動する介護ベッドに用いられる。
【符号の説明】
【0043】
1・・・立体疎密構造
1a〜1a・・・構成単位
1b〜1b・・・構成単位
2・・・立体疎密構造
2c・・・構成単位
2c,2c・・・構成単位
2d・・・構成単位
2d,2d・・・構成単位
3・・・立体疎密構造
3e,3e・・・構成単位
3f〜3f・・・構成単位
4a〜4a・・・領域
4b〜4b・・・領域
101・・・三次元網状構造体
201・・・三次元網状構造体
201’・・・三次元網状構造体
301・・・三次元網状構造体
401・・・三次元網状構造体
501・・・三次元網状構造体
【要約】
熱可塑性樹脂から構成される三次元網状構造体を有する介護ベッドを、ベッド本体の複雑な動きや、使用者の特定の動きに対応させて、円滑に多段階に曲げることを目的とする。三次元網状構造体101は、押出方向Yに疎の構成単位1a〜1aと密の構成単位1b〜1bとを繰り返し設ける第1立体疎密構造1を有し、この第1立体疎密構造1において、疎の構成単位1a〜1aの嵩密度δは0.01〜0.08g/cm、密の構成単位1b〜1bの嵩密度δは0.03〜0.10g/cm、疎の構成単位1a〜1aに対する密の構成単位1b〜1bの嵩密度の比率δ/δが1.01〜5、疎の構成単位1a〜1aの長さAは1〜50cm、密の構成単位1b〜1bの長さAは3〜60cm、疎の構成単位1a〜1aに対する密の構成単位1b〜1bの長さの比率A/Aが0.1〜10である。
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