(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の典型的な実施形態を図面に基づいて説明する。なお、本実施形態においては、レンズメータの奥行き方向(眼鏡が配置された際の眼鏡フレームの上下端方向)をZ方向(眼鏡レンズの光学中心の垂直方向)、奥行き方向に垂直(眼鏡が配置された際の眼鏡フレームの左右方向)な平面上の水平方向をX方向(眼鏡レンズの光学中心の水平方向)、鉛直方向をY方向として説明する。なお、本実施形態では、眼鏡レンズの光学特性及び眼鏡レンズの瞳孔間距離の双方を精度よく取得する場合の構成を例に挙げて説明するがこれに限定されない。本開示の技術は、眼鏡レンズの光学特性及び眼鏡レンズの瞳孔間距離の少なくとも一方を精度よく取得するために用いることができる。
図1は本実施形態に係るレンズメータの外観略図である。例えば、本実施形態におけるレンズメータ1は、ディスプレイ2、載置部4、レンズテーブル7、操作部8等を備える。
【0010】
例えば、ディスプレイ(モニタ)2は、装置本体に搭載されたディスプレイであってもよいし、本体に接続されたディスプレイであってもよい。パーソナルコンピュータ(以下、「PC」という。)のディスプレイを用いてもよい。複数のディスプレイが併用されてもよい。また、ディスプレイ2は、タッチパネルであってもよい。なお、ディスプレイ2がタッチパネルである場合に、ディスプレイ2を操作部として機能させてもよい。ディスプレイ2には、眼鏡レンズの測定によって取得された眼鏡レンズの光学特性(光学特性データ)等が表示される。
例えば、載置部4は、レンズテーブル7に連結(設置)される。例えば、載置部4としては、眼鏡レンズLEが載置されるレンズ受、眼鏡レンズLEの取り付けられた眼鏡フレームFが載置されるフレーム支持部等が挙げられる。すなわち、載置部4としては、眼鏡Lを支持できるものであればよい。なお、本実施形態においては、載置部4としてレンズ受(レンズ支持部)が用いられる。例えば、本実施形態におけるレンズ受4は、左右の一方の眼鏡レンズを2点で支持する載置部材が用いられる。なお、レンズ受4は、左右の一方の眼鏡レンズを2点で支持するものに限定されない。レンズ受は、眼鏡レンズを左右の一方、又は、双方で支持できるものであればよい。例えば、一方の眼鏡レンズを1点、3点、4点等で支持するものであってもよい。また、例えば、レンズ受4の全体部分で眼鏡レンズを支持するものであってもよい。
【0011】
また、本実施形態においては、レンズ受4は、左側レンズ受4Lと、右側レンズ受4Rと、の左右一対のレンズ受を有する。左側レンズ受4Lと右側レンズ受4Rによって、左右の眼鏡レンズが支持される。なお、本実施形態のレンズメータにおいては、レンズ受4に眼鏡レンズを載置する際には、眼鏡フレームの下端がレンズメータの奥側に位置し、眼鏡レンズの上端が手前側に位置するように載置される。もちろん、レンズメータとしては、眼鏡フレームの上端をレンズメータの奥側に位置し、眼鏡レンズの下端を手前側に位置するように載置させ、測定を行うレンズメータであってもよい。
【0012】
例えば、操作部8は、眼鏡レンズの測定を開始するための測定開始信号を制御部40(
図2参照)に向けて出力するために用いられる。例えば、操作部8が操作されることによって、制御部40は、測定を開始し、光学特性及び瞳孔間距離を取得(演算)する。制御部40は、取得された光学特性及び瞳孔間距離をディスプレイ2に表示すると共に、レンズメータ1のメモリ42(
図2参照)に記憶させる。例えば、本実施形態において、操作部8としては、スイッチが用いられる。なお、操作部8には、例えば、マウス、キーボード、タッチパネル等を用いるようにしてもよい。なお、操作部8における操作によって測定が開始される構成に限定されない。眼鏡がレンズメータに載置されたことを検知し、測定を開始させ、光学特性及び瞳孔間距離を取得(演算)する構成としてもよい。この場合、例えば、取得された光学特性及び瞳孔間距離は、ディスプレイ上に表示されるとともに、メモリ42に記憶される。
【0013】
図2は本実施形態における測定光学系と制御系の概略構成図である。なお、本実施形態においては、左右の眼鏡レンズをそれぞれ測定するために、左右一対の測定光学系をレンズメータ1の内部に有する。また、レンズメータ1は、装置全体の動作等を制御する制御部40を有する。本実施形態のレンズメータ1は、測定を開始した場合に、測定光学系に対して眼鏡を移動させることなく、左右の眼鏡レンズの光学特性をそれぞれ取得することができる。なお、左右一対の測定光学系は、同一の構成を備える。以下の説明においては、左右一対の構成が同一であるため、一方の構成(左側の構成)を例に挙げて説明する。
【0014】
例えば、左側の測定光学系10Lは、測定光源11、コリメーティングレンズ12、一定の規則性を持った所定の指標パターン(
図3参照)が形成された測定指標板であるグリッド板14、2次元受光センサ15を備える。例えば、グリッド板14はレンズメータ1の保持部材16に保持され、グリッド板14の上にレンズ受4Lの開口4aが位置する。なお、本実施形態における開口4aの開口は、直径8mmの円形となっている。なお、測定指標板に形成される指標パターンの他の構成としては、例えば、規則正しく並んだ格子パターン等が考えられる。
【0015】
例えば、制御部40は、CPU(プロセッサ)、RAM、ROM等を備える。制御部40のCPUは、装置全体の制御を司る。RAMは、各種情報を一時的に記憶する。制御部40のROMには、装置全体の動作を制御するための各種プログラム、初期値等が記憶されている。なお、制御部40は、複数の制御部(つまり、複数のプロセッサ)によって構成されてもよい。
【0016】
例えば、制御部40には、不揮発性メモリ(記憶手段)42、操作部(スイッチ)8、およびディスプレイ2等が電気的に接続されている。不揮発性メモリ(メモリ)42は、電源の供給が遮断されても記憶内容を保持できる非一過性の記憶媒体である。例えば、ハードディスクドライブ、フラッシュROM、及び、レンズメータ1に着脱可能に装着されるUSBメモリ等を不揮発性メモリ42として使用することができる。メモリ42には、測定光学系による眼鏡レンズの光学特性及び瞳孔間距離を取得するための測定制御プログラムが記憶されている。
【0017】
図3は、本実施形態におけるグリッド板14に形成された指標パターンの一例を示す図である。グリッド板14の外径はレンズ受4Lの開口4aの内径よりやや大きく形成されている。グリッド板14の後面(受光センサ15側の面)には、多数の円形孔からなる測定指標20が形成されている。本実施例のおける測定指標20は、測定光軸L1(
図2参照)が通る中心位置に形成された中心孔21と、その回りに格子状に配置された多数の小孔22からなる。なお、中心孔21は、他の孔21の対応関係を特定するための基準指標、すなわち、レンズLE無しの状態の「0D基準」に対して、レンズLEが置かれたときに対応する各ドット像を特定するための基準指標として使用される。なお、制御部40は、装置の電源投入時にレンズLE無しの状態で検出される「0D基準」のドット像(指標像)の座標及び測定情報等をメモリ42に記憶させる。もちろん、予め、「0D基準」のドット像(指標像)の座標及び測定情報等をメモリ42に記憶されていてもよい。また、受光センサ15の受光面の外にある小孔22は、被検レンズLEの測定光路に配置することによってプリズム度数が発生したときに、受光センサ15に受光されるように設けられたものである。
【0018】
なお、レンズ受4の開口4a内等の所定領域の屈折度数分布を測定可能な測定光学系は、
図2に示した構成に限られるものでは無い。例えば、グリッド板14は、レンズLEより光源11側に配置しても良いし、光源11をグリッド状に配置する構成であっても良い。屈折度数分布の測定としては、少なくとも測定光軸を中心に上下方向及び左右方向に測定位置を形成することが好ましい。
【0019】
なお、上記説明においては、左側の測定光学系10Lを例に挙げて説明したが右側の測定光学系についても同一の構成を備えている。このため、右側の測定光学系の説明については、省略する。
以下、以上のような構成を備えるレンズメータを用いた一連の光学特性及び瞳孔間距離取得の動作について説明する。
図4は、光学特性及び瞳孔間距離の取得動作について説明するフローチャートを示している。
【0020】
初めに、測定者は、眼鏡をレンズメータ1に載置させる。測定者は、左右のレンズ受4L,4Rに左右の眼鏡レンズをそれぞれ載置させることによって、眼鏡をレンズメータ1に載置する。次いで、測定者は、スイッチ8を押す。スイッチ8が押されると、制御部40は、左右の一対の測定光学系の光源11をそれぞれ点灯させ、眼鏡レンズの測定を行う(S1)。
【0021】
測定光源11からの光束は、コリメーティングレンズ12により平行光束とされた後、レンズ受4L上に載置される眼鏡レンズLEに投光される。そして、眼鏡レンズLEを透過した光のうち、グリッド板14の孔21及び孔22を通過した光束が受光センサ15に指標パターン像として受光される。
【0022】
受光センサ15からの出力信号は、制御部40に入力される制御部40はレンズLEが載置されていない場合に、受光センサ15に入射した小孔22のドット像の座標位置を基準にし、所定の屈折力を持つレンズLEを置いた場合の各ドット像の位置変化から、レンズLEの光学特性(球面度数S、柱面度数C、乱視軸角度A、プリズム量Δ)を演算する(S2)。また、制御部40は、光学特性(光学特性情報)として、プリズムが発生している偏位方向(偏位方向情報)を演算する。なお、偏位方向は、測定光学系の光軸L1に対して、プリズムが発生している方向を示している。
【0023】
例えば、プラス度数を持つ球面レンズを載置した場合には、被検レンズLEが無い場合に対して、各ドット像間の距離が小さくなった指標パターン像(ドットパターン像)が受光センサ15上に投影される。一方、マイナス度数を持つ球面レンズを載置した場合には、被検レンズLEが無い場合に対して、各ドット像間の距離が大きくなった指標パターン像が受光センサ15上に投影される。また、所定の乱視軸を持つ乱視レンズを載置したときには、レンズの持つ乱視軸および乱視度数に応じて楕円状に歪んだ指標パターン像が投影される。また、プリズム量Δ及び偏位方向は、レンズLEの中心ドット像又はその付近のドット像の平行移動量によって求められる(例えば、特開2008−241694号公報参照)。
【0024】
ここで、左右一対の測定光学系の光軸L1に対して、眼鏡レンズの光学中心Oがずれた状態で載置されて、光学特性の測定が行われた場合に、眼鏡レンズの光学特性を良好に取得することができない(
図5参照)。例えば、光学特性の内の乱視軸角度Aは、眼鏡(眼鏡フレーム)が測定光学系の光軸L1に対して、回転(傾斜)しているため、回転した状態での乱視軸角度Aを取得してしまう。このため、乱視軸角度Aの演算結果にずれが生じる。また、左右の眼鏡レンズ間における瞳孔間距離(左右の眼鏡レンズの光学中心間の距離)は、眼鏡(眼鏡フレーム)が測定光学系の光軸L1に対して、回転(傾斜)しているため、回転した状態での瞳孔間距離が取得されてしまう。このため、瞳孔間距離の演算結果にずれが生じる。これらの理由から、光学特性及び瞳孔間距離を良好に取得することができない。このため、眼鏡フレームの回転を考慮して光学特性及び瞳孔間距離を取得する必要がある。
【0025】
光学特性及び瞳孔間距離の取得動作の説明に戻る。測定結果から光学特性の演算が完了すると、制御部40は、光学特性に基づいて、測定光学系の光軸L1に対する眼鏡レンズLEの光学中心Oの偏位量を算出する(S3)。例えば、偏位量としては、水平方向(眼鏡レンズの光学中心の水平方向)における水平偏位量、及び、垂直方向(眼鏡レンズの光学中心の垂直方向)における垂直偏位量の少なくとも一方を用いる構成が挙げられる。本実施形態においては、偏位量として水平偏位量及び垂直偏位量を算出する。
図5を参照して説明する。なお、
図5の紙面上の上側に位置する眼鏡フレーム部分が眼鏡フレーム下端FDであり、紙面上の下側に位置する眼鏡フレームF部分が眼鏡フレーム上端FFである。
【0026】
制御部40は、水平偏位量ΔX1,ΔX2として、左右の測定光学系のそれぞれ光軸L1と、左右の眼鏡レンズLEL,LERのそれぞれの光学中心Oと、の水平方向における距離を算出する。例えば、水平偏位量ΔX1は、左側の眼鏡レンズLELの水平方向における偏位量を示している。また、水平偏位量ΔX2は、右側の眼鏡レンズLERの水平方向における偏位量を示している。
【0027】
制御部40は、垂直偏位量ΔZ1,ΔZ2として、左右の測定光学系のそれぞれ光軸L1と、左右の眼鏡レンズLEL,LERのそれぞれの光学中心Oと、の垂直方向における距離を算出する。例えば、垂直偏位量ΔZ1は、左側の眼鏡レンズLELの垂直方向における偏位量を示している。また、垂直偏位量ΔZ2は、右側の眼鏡レンズLERの垂直方向における偏位量を示している。
【0028】
例えば、水平偏位量ΔX1,ΔX2、及び垂直偏位量ΔZ1,ΔZ2は、プレンティスの公式を用いて算出される。制御部40は、プレンティスの公式を用いて、水平偏位量ΔX1,ΔX2、及び垂直偏位量ΔZ1,ΔZ2を算出する。なお、水平偏位量ΔX1,ΔX2及び垂直偏位量ΔZ1,ΔZ2は、プラス値(例えば、4mm等)又はマイナス値(例えば、−4mm等)で算出される。
【0029】
本実施形態において、水平偏位量ΔX1,ΔX2がプラス値の場合には、眼鏡レンズLEの光学中心Oが測定光学系の左側(
図5における紙面上の左側)にずれていることを示すように構成されている。もちろん、水平偏位量ΔX1,ΔX2がプラス値の場合には、眼鏡レンズLEの光学中心Oが測定光学系の右側にずれていることを示すように構成されてもよい。例えば、左側の眼鏡レンズLELにおける水平偏位量ΔX1がプラス値であった場合には、眼鏡レンズの光学中心Oは、左側の測定光学系の光軸L1よりも偏位量ΔX1分だけ、外側(眼鏡フレームの外側)に位置しているとわかる。なお、右側の眼鏡レンズLERにおける水平偏位量ΔX2がプラス値であった場合には、眼鏡レンズの光学中心Oは、右側の測定光学系の光軸L1よりも偏位量ΔX2分だけ、内側(眼鏡フレームの内側)に位置しているとわかる。なお、水平偏位量がマイナス値の場合には、上記記載の逆の結果になる。
【0030】
例えば、
図5においては、左側の眼鏡レンズLELにおける水平偏位量ΔX1は、プラス値で算出される。また、右側の眼鏡レンズLERにおける水平偏位量ΔX2は、マイナス値で算出される。
【0031】
また、本実施形態において、垂直偏位量ΔZ1,ΔZ2がプラス値の場合には、眼鏡レンズLEの光学中心Oが測定光学系の光軸L1よりも手前側(
図5における紙面上の下側)にずれていることを示すことになる。すなわち、左側の眼鏡レンズLELにおける垂直偏位量ΔZ1がプラス値であった場合には、眼鏡レンズの光学中心Oは、左側の測定光学系の光軸L1よりも偏位量ΔZ1分だけ、下側(眼鏡フレームの上端FF側)に位置しているとわかる。なお、右側の眼鏡レンズLERにおける垂直偏位量ΔZ2がプラス値であった場合には、眼鏡レンズの光学中心Oは、右側の測定光学系の光軸L1よりも偏位量ΔZ2分だけ、下側(眼鏡フレームの上端FF側)に位置しているとわかる。なお、垂直偏位量がマイナス値の場合には、上記記載の逆の結果となる。例えば、
図5においては、左側の眼鏡レンズLELにおける垂直偏位量ΔZ1は、プラス値で算出される。また、右側の眼鏡レンズLERにおける垂直偏位量ΔZ2は、マイナス値で算出される。
【0032】
次いで、制御部40は、算出した偏位量に基づいて、光学特性及び瞳孔間距離の補正処理を行う(S5)。
図6は、補正処理の動作について説明するフローチャートを示している。初めに、制御部40は、水平偏位量ΔX1,ΔX2に基づいて左右の眼鏡レンズの光学中心間の距離(瞳孔間距離)PD1を算出する。本実施形態においては、左右の測定光学系が固定された構成であり、左右の測定光学系の光軸L1間の距離は予め設定されている。このため、左右の測定光学系の光軸L1間の距離PD(固定PD)を、水平偏位量ΔX1,ΔX2を用いて補正処理することによって、左右の眼鏡レンズの光学中心O間の距離である瞳孔間距離PD1を取得することができる(S51)。なお、例えば、左右の測定光学系の光軸L1間の距離PDは、被検者の平均的な瞳孔間距離(例えば、64mm等)で設定されている。もちろん、左右の測定光学系の光軸L1間の距離PDは、任意の距離にて構成することができる。
【0033】
例えば、制御部40は、光軸L1間の距離PDに対して、水平偏位量ΔX1,ΔX2分を足し合わす処理又は引く処理(足算処理又は引算処理)することによって、光軸L1間の距離PDを補正処理し、瞳孔間距離PD1を取得する。なお、本実施形態において、水平偏位量ΔX1,ΔX2分を足し合わせる処理を実行するか、又は、引く処理を実行するか、については、それぞれの眼鏡レンズの光学中心Oの位置が光軸L1の外側に位置する場合と、内側に位置する場合と、いずれの場合であるかによって設定することができる。例えば、上記水平偏位量がプラス値又はマイナス値のいずれであるかの結果に基づいて、それぞれの眼鏡レンズの光学中心Oの位置が光軸L1の外側に位置する場合と、眼鏡レンズの光学中心Oの位置が光軸L1の内側に位置する場合と、が識別できる。
【0034】
例えば、それぞれの眼鏡レンズにおいて、眼鏡レンズの光学中心Oの位置が光軸L1の外側に位置する場合には、制御部40は、光軸L1間の距離PDに対して水平偏位量ΔX1,ΔX2分を足し合わす処理を行う。また、それぞれの眼鏡レンズにおいて、眼鏡レンズの光学中心Oの位置が光軸L1の内側に位置する場合には、制御部40は、光軸L1間の距離PDに対して水平偏位量ΔX1,ΔX2分を差し引く処理を行う。また、それぞれの眼鏡レンズにおいて、左側の眼鏡レンズの光学中心Oの位置が光軸L1の内側に位置し、右側の眼鏡レンズの光学中心Oの位置が光軸L1の外側に位置する場合には、制御部40は、光軸L1間の距離PDに対して水平偏位量ΔX1分を差し引き、ΔX2分を足し合わす、処理を行う。また、それぞれの眼鏡レンズにおいて、左側の眼鏡レンズの光学中心Oの位置が光軸L1の外側に位置し、左側の眼鏡レンズの光学中心Oの位置が光軸L1の内側に位置する場合には、制御部40は、光軸L1間の距離PDに対して水平偏位量ΔX1分を足し合わし、ΔX2分を差し引く、処理を行う。
【0035】
例えば、
図5に示されるような場合、制御部40は、光軸L1間の距離PDに対して、水平偏位量分ΔX1及び水平偏位量分ΔX2をそれぞれ足し合わせる処理を行うことによって、光軸L1間の距離PDを補正処理する。これによって、瞳孔間距離PD1(補正されたPD)を取得する。
【0036】
次いで、制御部40は、水平偏位量に基づいて補正された瞳孔間距離PD1と、垂直偏位量ΔZ1,ΔZ2と、に基づいて、補正された瞳孔間距離PD1を再補正処理する(S52)。すなわち、上記のS1の補正処理によって、算出された瞳孔間距離PD1は、眼鏡フレームFの回転を考慮していないものであり、眼鏡フレームFが回転をしていた場合には、眼鏡レンズの実際の瞳孔間距離とは、ずれが生じている。このため、水平偏位量に基づいて補正された瞳孔間距離PD1と、垂直偏位量ΔZ1,ΔZ2と、を用いて、眼鏡フレームFの回転を補正した瞳孔間距離を取得する。
【0037】
図7は、眼鏡フレームFの回転を補正した光学特性及び瞳孔間距離の取得について説明する図である。
図8は、光学特性及び瞳孔間距離を補正するための概念について説明する図である。例えば、
図7に示されるように、眼鏡フレームFが角度θ分だけ回転をしていた場合に、瞳孔間距離PD1は、実際の瞳孔間距離PD2とは異なる。
なお、本実施形態において、例えば、眼鏡フレームFの位置が回転していない位置(角度θが0°の位置)とは、左側の眼鏡フレームFLの上端FFと、右側の眼鏡フレームFRの上端FFと、を結んだ基準線Bが水平となる位置で設定されている。もちろん、眼鏡フレームFの位置が回転していない位置(角度θが0°の位置)の設定はこれに限定されない。例えば、眼鏡フレームFの位置が回転していない位置は、左側の眼鏡フレームFLの下端FDと、右側の眼鏡フレームFRの下端FDと、を結んだ基準線が水平となる位置で設定されてもよい。また、例えば、レンズメータ1のレンズテーブル7の側壁面7a(
図1参照)を基準線としてもよい。
例えば、眼鏡フレームFの回転量を示す角度θは、眼鏡レンズLEが測定された際における、左側の眼鏡フレームFLの上端FFと、右側の眼鏡フレームFRの上端FFと、を結んだ直線B’と、基準線Bと、の成す角にて示される。
【0038】
例えば、本実施形態において、実際の瞳孔間距離PD2を取得する場合、左側の眼鏡レンズLELの垂直偏位量ΔZ1と右側の眼鏡レンズLERの垂直偏位量ΔZ2との差分量(左側の眼鏡レンズLELの光学中心と、右側の眼鏡レンズLERの光学中心と、の間の垂直方向における距離)ΔZと、補正された瞳孔間距離PD1と、から取得することができる。例えば、実際の瞳孔間距離PD2は、上記差分量ΔZと、補正された瞳孔間距離PD1と、からピタゴラスの定理を用いて、以下の演算式(1)によって演算することができる。
【0040】
以上のようにして、制御部40は、水平偏位量に基づいて補正された瞳孔間距離PD1と、垂直偏位量ΔZ1,ΔZ2と、に基づいて、補正された瞳孔間距離PD1を再補正処理して実際の瞳孔間処理(眼鏡フレームFの回転を補正した瞳孔間距離)PD2を取得する。
【0041】
次いで、制御部40は、水平偏位量に基づいて補正された瞳孔間距離PD1と、垂直偏位量ΔZ1,ΔZ2と、に基づいて、眼鏡フレームFの回転情報を取得する(S54)。制御部40は、取得した眼鏡フレームFの回転情報を用いて、乱視軸角度を補正処理する(S55)。例えば、眼鏡フレームFが角度θ分だけ回転をしていた場合に、乱視軸角度は、眼鏡フレームFが角度θ分だけずれてしまい、実際の乱視軸角度とは異なる。すなわち、S2の演算処理によって、取得された乱視軸角度は、眼鏡フレームFの回転を考慮していないものであり、眼鏡フレームFが回転をしていた場合には、実際の眼鏡レンズの乱視軸角度とは、ずれが生じている。このため、水平偏位量に基づいて補正された瞳孔間距離PD1と、垂直偏位量ΔZ1,ΔZ2と、を用いて、眼鏡フレームFの回転を補正した乱視軸角度を取得する。
【0042】
例えば、眼鏡フレームFの回転情報としては、眼鏡フレームFの回転角度(眼鏡フレームFの回転量を示す角度)θ、眼鏡フレームFの回転方向(回転方向情報)が挙げられる。例えば、眼鏡フレームFの回転角度θは、下記の演算式(2)によって演算することができる。
【0044】
なお、本実施形態において、取得された眼鏡フレームFの回転角度θより回転方向を取得することができる。例えば、本実施形態において、眼鏡フレームFの回転角度θがプラス値(例えば、θ=45°等)の場合には、眼鏡フレームFが反時計周り方向R1に回転していることを示すように構成されている(
図7参照)。また、本実施形態において、眼鏡フレームFの回転角度θがマイナス値(例えば、θ=−45°等)の場合には、眼鏡フレームFが時計周り方向R2に回転していることを示すように構成されている
制御部40は、眼鏡フレームFの回転情報を用いて、乱視軸角度の補正処理を行う。例えば、制御部40は、左右の眼鏡レンズのそれぞれの乱視軸角度に対して、眼鏡フレームFの回転角度θを足し合わす処理又は引く処理(足算処理又は引算処理)することによって、それぞれの乱視軸角度を補正処理する。なお、本実施形態において、眼鏡フレームFの回転角度θを足し合わせる処理を実行するか、又は、引く処理を実行するか、の決定は、眼鏡フレームFの回転角度θがプラス値又はマイナス値のいずれであるかによって設定することができる。例えば、眼鏡フレームFの回転角度θがプラス値である場合、制御部40は、乱視軸角度に対して、角度θ分を差し引く処理を行う。また、例えば、眼鏡フレームFの回転角度θがマイナス値である場合、制御部40は、乱視軸角度に対して、角度θ分を足し合わす処理を行う。例えば、
図7に示されるような場合には、制御部40は、左右の眼鏡レンズの乱視軸角度に対して、それぞれ角度θ分を差し引く処理を行う。このようにして、制御部40は、水平偏位量に基づいて補正された瞳孔間距離PD1と、垂直偏位量ΔZ1,ΔZ2と、に基づいて、乱視軸角度を補正処理する。
【0045】
以上のように、左右一対の測定光学系を備えたレンズメータ1において、偏位量を算出し、偏位量に基づいて光学特性を補正することによって、載置部4に対して眼鏡の位置を厳密(細かく)に調整することなく、精度のよい光学特性を取得することができる。すなわち、眼鏡レンズの測定にかかる手間、時間等が少なくなる。また、別途、眼鏡の位置を調整するための複雑な構成、複雑な制御が必要なく、容易に精度よく眼鏡レンズの光学特性を算出することができる。
【0046】
さらに、左右一対の測定光学系によって左右の眼鏡レンズを同時に測定できることによって、左右一対の測定光学系の光軸L1に対する左右の眼鏡レンズの光学中心の位置(位置情報)をそれぞれ取得することができ、垂直方向における垂直偏位量を算出できる。これによって、眼鏡が左右一対の載置部に載置された際における眼鏡フレームの回転の影響を補正した(考慮した)光学特性を算出することができる。
【0047】
さらに、水平偏位量に基づいて、眼鏡レンズの光学特性を補正することによって、左右一対の測定光学系の光軸L1間の距離が所定の距離で固定されているようなレンズメータにおいても精度よく光学特性を算出することができる。
【0048】
なお、本実施形態においては、垂直偏位量に基づいて、乱視軸角度及び瞳孔間距離が補正される場合を例に挙げて説明したがこれに限定されない。例えば、垂直偏位量に基づいて、乱視軸角度及び瞳孔間距離の少なくとも一方が補正される構成としてもよい。
【0049】
なお、本実施形態においては、水平偏位量及び垂直偏位量に基づいて、補正処理を行う構成を例に挙げて説明したがこれに限定されない。水平偏位量及び垂直偏位量の少なくとも一方に基づいて、補正処理を行う構成としてもよい。例えば、水平偏位量のみによって補正処理を行う場合には、瞳孔間距離(測定光学系の光軸L1間の距離)PDのみを補正するようにしてもよい。この場合、一対の測定光学系の光軸L1間の距離が予め設定されているレンズメータを用いて、眼鏡フレームの瞳孔間距離を測定した場合であっても、精度よく瞳孔間距離を求めることができる。特に、眼鏡が回転することなく、載置部に載置された場合には、精度よく瞳孔間距離を求めることができる。また、例えば、垂直偏位量のみによって補正処理を行う場合には、左右の測定光学系の光軸L1間の距離(固定値の瞳孔間距離)PDと、垂直偏位量と、に基づいて、光学特性を補正するようにしてもよい。この場合、眼鏡フレームが回転(傾斜)によって生じる光学特性の精度低下を抑制することができる。
【0050】
なお、本実施形態においては、左右一対の測定光学系が同様の構成を備える場合を例に挙げて説明しているがこれに限定されない。測定光学系の部材の内の一部の部材が一対の測定光学系間で兼用される構成としてもよい。例えば、光源、受光センサ等を兼用する構成が挙げられる。光源を兼用する場合、光源から出射された光束をビームスプリッタ等によって分離して、それぞれの測定光学系に出射させる構成が挙げられる。また、受光センサを兼用する場合には、一対の測定光学系の光源から出射されるタイミングをずらし、その光束を異なるタイミングで受光する構成が挙げられる。
【0051】
なお、本開示の技術は、本実施形態におけるレンズメータ1において適用する場合に限定されない。本開示の技術は、一対の測定光学系を備え、この測定光学系を用いて、左右の眼鏡レンズの光学特性を測定する装置であれば、適用することが可能である。例えば、本実施形態におけるレンズメータの測定光学系には、位相差方式によって、光学特性を測定するような測定光学系を適用することもできる。また、例えば、本実施形態におけるレンズメータの測定光学系には、眼鏡レンズの広い範囲に亘って光学特性を測定するような測定光学系を適用することもできる(例えば、特表2002−534665号公報参照)。
【0052】
なお、本開示の技術においては、本実施形態に記載した装置に限定されない。例えば、上記実施形態の機能を行う演算ソフトウェア(プログラム)をネットワーク又は各種記憶媒体等を介して、システムあるいは装置に供給する。そして、システムあるいは装置のコンピュータ(例えば、CPU等)がプログラムを読み出し、実行することも可能である。