(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【0006】
分散型電源装置の給電方式が単相3線式である場合、通常、AC200Vの交流が供給される。そのため、系統連系装置のインバータの出力側の電圧も、AC200Vに調整される。また、分散型電源装置が自立電源供給装置を有する場合において、商用電源の停電時には、例えば冷蔵庫のような家庭内の重要な電力負荷が、自立電源供給装置に接続される可能性が高い。家庭内の重要な電力負荷の駆動電圧は、AC100Vである場合が多い。そのため、自立電源供給装置から出力される交流の電圧は、AC100Vであることが望ましい。
【0007】
つまり、自立電源供給装置を有する分散型電源装置は、非停電時にAC200Vの交流が出力され、停電時にAC100Vの交流が出力されるように、構成されるのがよい。しかし、このように構成するためには、自立電源供給装置から出力される交流の電圧が、商用電源に接続される側から出力される交流の電圧よりも小さくなるように、分散型電源装置を設計しなければならない。
【0008】
自立電源供給装置の出力電圧を商用電源に接続される側の出力電圧よりも小さくするためには、系統連系装置に備えられるインバータの出力電圧を、停電時と非停電時とのそれぞれの場合において、別々に調整すればよい。しかし、この場合、停電時には、インバータの出力電圧の低下とともに出力自体も低下するという問題が発生する。例えば、非停電時に商用電源に接続される側にて得られる交流の出力の上限(連系出力)が700W(AC200V、3.5A)である場合、停電時に自立電源供給装置にて得られる交流の出力の上限(自立出力)は、インバータによる電圧調整によって350W(AC100V、3.5A)にされる。つまり、停電時には、非停電時の半分の電力しか得ることができない。
【0009】
これを解決するため、自立電源供給装置内にトランス(変圧器)を設け、インバータの出力電圧をトランスで降圧させるという手段が採用され得る。これによれば、理論上は、停電時であっても、電力(出力)を維持したまま、自立電源供給装置にてAC100Vの交流を得ることができる。しかしながら、トランスを設けた場合、トランスの変換効率が100%ではないことから、出力が低下するという問題が発生する。そのため、トランスを設けた場合であっても、停電時に得られる出力(自立出力)は、非停電時に得られる出力(連系出力)より小さい。非停電時に得られる出力が停電時には得られない場合、非停電時に使用していた電力負荷が停電時に使用できないことが起こり得る。こうした不具合の発生が、分散型電源装置の商品性の低下をもたらす。
【0010】
本発明は、自立出力が連系出力と同じ程度であり、それ故に商品性の高い分散型電源装置を提供することを目的とする。
【0011】
(課題を解決するための手段)
本発明は、直流を発電する発電装置(2)と、発電装置により発電された直流の電圧を昇圧する昇圧コンバータ(6)と、昇圧コンバータにより昇圧された直流を、商用電源(C)から出力される交流と同期した交流に変換するインバータ(7)と、インバータの出力側を商用電源に接続する連系用接続路(11)と、連系用接続路に介装され連系用接続路を遮断又は接続する連系用切換装置(8)と、を有する系統連系装置(3)と、連系用接続路のうちインバータと連系用切換装置との間の部分にその一次側が接続され、インバータの出力電圧を降圧して、その二次側に、降圧した交流を出力するトランス(12)と、トランスの二次側に接続された自立用接続路(15)と、自立用接続路に接続された自立用電源供給部(14)と、自立用接続路を遮断又は接続する自立用切換装置(13)と、を有する自立電源供給装置(4)と、商用電源の非停電時に連系用接続路が接続されるとともに自立用接続路が遮断され、商用電源の停電時に連系用接続路が遮断されるとともに自立用接続路が接続されるように、連系用切換装置及び自立用切換装置を制御する切換制御部(16)と、非停電時に、発電装置の出力電流の上限が第一上限電流値に制限されるように昇圧コンバータを制御し、停電時に、発電装置の出力電流の上限が第一上限電流値よりも高い第二上限電流値に制限されるように昇圧コンバータを制御する昇圧コンバータ制御部(17)と、非停電時に、インバータの出力の上限が第一上限出力値に制限されるようにインバータを制御し、停電時に、インバータの出力の上限が第一上限出力値よりも高い第二上限出力値に制限されるようにインバータを制御するインバータ制御部(18)と、
トランスの二次側の電圧値を検出する電圧センサと、を備え、
インバータ制御部は、停電時に、電圧センサにより検出される電圧値に基づいて、インバータの出力を補正する補正部(18a)を有する、分散型電源装置を提供する。
この場合、補正部は、停電時に、トランスの二次側の電圧値が予め定められた電圧値(例えばAC100V)に一致するように、インバータの出力を補正するのがよい。
【0012】
本発明によれば、停電時におけるインバータの出力の上限(第二上限出力値)が、非停電時におけるインバータの出力の上限(第一上限出力値)よりも高い値に設定される。つまり、停電時におけるインバータの出力の上限が、非停電時におけるインバータの出力の上限よりも高められるようにインバータが制御される。従って、停電時にトランスによってインバータの出力電圧が降圧された場合であっても、インバータの出力の上限が高められた分だけ、トランスの変換効率に起因する自立出力の低下分が補われる。このため、自立出力を連系出力と同じ程度にすることができ、それにより、商品性の高い分散型電源装置を提供することができる。
また、補正部によってインバータの出力が補正されることにより、トランスの二次側の電圧、すなわち、停電時における自立電源供給装置の出力電圧を、精度よく、目標とする電圧、例えばAC100Vにすることができる。
【0013】
また、本発明によれば、停電時における発電装置の出力電流の上限(第二上限電流値)が、非停電時における発電装置の出力電流の上限(第一上限電流値)よりも高い値に設定される。つまり、停電時における発電装置の出力電流の上限が、非停電時における発電装置の出力電流の上限よりも高められるように昇圧コンバータが制御される。従って、停電時にはより多くの電流を昇圧コンバータに流すことができ、これにより、停電時におけるインバータの出力を、非停電時におけるインバータの出力よりも大きくすることができる。その結果、自立出力を連系出力と同じ程度にすることができる。
【0014】
また、第二上限出力値は、トランスの変換効率に基づいて定められているのがよい。これによれば、第二上限出力値をトランスの変換効率に基づいて定めることにより、トランスの変換効率が100%ではないことに起因する自立出力の低下分を補うことができる。この場合、第二上限出力値は、トランスの二次側出力の上限が第一上限出力値になるように、トランスの変換効率及び第一上限出力値に基づいて定められるとよい。
【0015】
また、第二上限電流値は、第二上限出力値に基づいて定められているのがよい。具体的には、第二上限電流値は、停電時にインバータの出力の上限が第二上限出力値に達するように、定められているのがよい。これによれば、停電時にインバータの出力側にて第二上限出力値相当の出力を得ることができる。
【0016】
また、発電装置が燃料電池発電装置であってもよい。発電装置が燃料電池発電装置である場合、その劣化を防止するために、一般的に、出力電流の上限値が設定される。本発明では、非停電時に発電装置の出力電流の上限値を第一上限電流値に設定し、停電時に発電装置の出力電流の上限値を第二上限電流値に設定することで、燃料電池発電装置の劣化が防止される。
【0018】
また、インバータの出力電圧がAC200Vであり、トランスの二次側電圧がAC100Vであるとよい。これによれば、停電時に自立電源供給装置から、AC100Vの電力を取り出すことができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態につき説明する。
図1は、本実施形態に係る分散型電源装置のブロック図である。
図1に示すように、分散型電源装置1は、燃料電池発電装置2と、系統連系装置3と、自立電源供給装置4と、制御装置5とを備える。
【0021】
燃料電池発電装置2は、図示しないが商用電源Cに接続されており、商用電源Cから供給される電力により駆動される。なお、燃料電池発電装置2の駆動中に商用電源Cが停電したときは、燃料電池発電装置2は、自己が発電した電力、或いは、分散型電源装置1に備えられる内部バッテリからの電力により、駆動される。
【0022】
燃料電池発電装置2として、本実施形態では固体酸化物形燃料電池(SOFC)が用いられる。SOFCは、周知のように固体酸化物を電解質として用いる燃料電池であり、燃料ガスと空気との反応によって電気を生成することによって、直流を発電する。SOFCの運転温度は非常に高く、約500℃〜700℃である。非常に高温で運転されるが故に、その熱を利用した熱供給装置をこの分散型電源装置1に取り付けて、電気とともに熱を供給する熱電併給装置(コージェネレーション装置)を構成することもできる。
【0023】
系統連系装置3は、分散型電源装置1を商用電源Cに系統連系させるために用いられる。この系統連系装置3は、昇圧コンバータ6と、インバータ7と、連系用切換装置8と、これらの構成を接続する各接続路(第一接続路9、第二接続路10、第三接続路11)とを備える。
【0024】
昇圧コンバータ6は、第一接続路9を介して燃料電池発電装置2に接続されている。燃料電池発電装置2にて発電された直流は、第一接続路9を経由して昇圧コンバータ6に入力される。昇圧コンバータ6は、燃料電池発電装置2により発電された直流の電圧を昇圧する。例えば、燃料電池発電装置2にて発電された70Vの直流が、400Vに昇圧される。
【0025】
インバータ7は、第二接続路10を介して昇圧コンバータ6に接続されている。昇圧コンバータ6にて昇圧された直流は、第二接続路10を経由してインバータ7に入力される。インバータ7は、入力された直流(昇圧コンバータ6にて昇圧された直流)を、商用電源Cから出力される交流と同期した交流、すなわち、商用電源Cから出力される交流と同じ周波数の交流に変換する。また、本実施形態において、インバータ7からは、AC200Vの交流が出力される。なお、第二接続路10には、平滑コンデンサ25が設けられている。
【0026】
また、インバータ7の出力側は、第三接続路11(連系用接続路)により商用電源Cに接続される。第三接続路11には、インバータ7により変換された交流が流れる。この第三接続路11の途中に、連系用切換装置8が介装される。連系用切換装置8は、第三接続路11を遮断又は接続する。
【0027】
自立電源供給装置4は、商用電源Cの停電時に、電力負荷に電力を供給することができるように構成される。自立電源供給装置4は、オートトランス12と、自立用切換装置13と、自立用電源供給部14と、オートトランス12と自立用電源供給部14とを接続する自立用接続路15とを備える。
【0028】
オートトランス12(単巻変圧器)は、周知のように、巻線の一部が一次側と二次側とで共用された変圧器である。オートトランス12の一次側が、分岐路24を介して、第三接続路11のうちインバータ7と連系用切換装置8との間の部分に接続される。また、オートトランス12の二次側が、自立用接続路15を介して自立用電源供給部14に接続される。自立用電源供給部14は、例えばこの分散型電源装置1の筐体に取り付けられたコンセントプラグにより構成される。オートトランス12は、その一次側に印加された交流の電圧を降圧し、降圧した交流を二次側に出力する。本実施形態においてはオートトランス12の二次側には、一次側に印加された電圧の半分の大きさの電圧が印加される。よって、オートトランス12の二次側からは、インバータ7の出力電圧(AC200V)の半分の大きさの電圧(AC100V)の交流が、出力される。
【0029】
自立用切換装置13は、自立用接続路15に介装される。自立用切換装置13は、自立用接続路15を遮断又は接続する。
【0030】
制御装置5は、CPU、ROM、RAMを備えるマイクロコンピュータにより構成される。制御装置5は、商用電源Cに接続されており、商用電源Cから供給される電力に基づいて駆動される。なお、制御装置5の駆動中に商用電源Cが停電したときは、制御装置5は、燃料電池発電装置2により発電された電力、或いは、分散型電源装置1に備えられる内部バッテリからの電力により、駆動される。
【0031】
図1に示すように、制御装置5は、切換制御部16と、昇圧コンバータ制御部17と、インバータ制御部18とを有する。切換制御部16は、連系用切換装置8の切換作動(すなわち第三接続路11の遮断及び接続)及び自立用切換装置13の切換作動(すなわち自立用接続路15の遮断及び接続)を制御する。昇圧コンバータ制御部17は、昇圧コンバータ6の動作を制御する。インバータ制御部18は、インバータ7の動作を制御する。
【0032】
また、分散型電源装置1は、第一電流センサ19、第二電流センサ20、第一電圧センサ21、及び、第二電圧センサ22を備える。第一電流センサ19は、第一接続路9に介装されており、燃料電池発電装置2の出力電流値i1、すなわち昇圧コンバータ6に入力される直流の電流値を検出するとともに、検出した電流値i1に相当する信号を制御装置5に出力する。第二電流センサ20は、第三接続路11に介装されており、インバータ7の出力電流値i2を検出するとともに検出した電流値i2に相当する信号を制御装置5に出力する。第一電圧センサ21も第三接続路11に介装されており、インバータ7の出力電圧値V2を検出するとともに検出した電圧値V2に相当する信号を制御装置5に出力する。第二電圧センサ22は、自立用接続路15に介装されており、オートトランス12の二次側電圧値V3を検出するとともに、検出した電圧値V3に相当する信号を制御装置5に出力する。
【0033】
また、図示はしないが、分散型電源装置1に備えられる筐体には、起動ボタン及び停止ボタンが取り付けられている。ユーザが起動ボタンを押下することにより、分散型電源装置1の作動が開始される。また、ユーザが停止ボタンを押下することにより、分散型電源装置1の作動が停止される。なお、起動ボタン及び停止ボタンは、図示していないリモートコントローラに取り付けられ、このリモートコントローラが筐体に取り付けられる構成としてもよい。
【0034】
上記構成を備える分散型電源装置1において、ユーザが起動ボタンを押下すると、まず、商用電源Cから制御装置5に電力が供給されることにより制御装置5が駆動する。すると、制御装置5は、燃料電池発電装置2に作動開始指令を出力する。これにより、燃料電池発電装置2に商用電源Cから電力が供給されて、燃料電池発電装置2が作動し、発電が開始される。
【0035】
また、起動ボタンが押下された場合、制御装置5の切換制御部16が、切換制御処理を実行する。
図2は、切換制御部16が実行する切換制御処理ルーチンの流れを示すフローチャートである。このルーチンが起動すると、切換制御部16は、まず、ステップ(以下、ステップ番号をSと略記する)101にて、商用電源Cが非停電であるか否か、つまり商用電源Cから電力が供給されているか否かを判断する。商用電源Cが非停電である場合(S101:Yes)、切換制御部16は、接続信号を連系用切換装置8に出力する(S102)。これにより、連系用切換装置8が第三接続路11を接続する。次いで、切換制御部16は、遮断信号を自立用切換装置13に出力(S103)する。これにより、自立用切換装置13が自立用接続路15を遮断する。
【0036】
また、S101にて、商用電源Cが停電していると判断した場合(S101:No)、切換制御部16は、遮断信号を連系用切換装置8に出力する(S104)。これにより、連系用切換装置8が第三接続路11を遮断する。次いで、切換制御部16は、接続信号を自立用切換装置13に出力する(S105)。これにより、自立用切換装置13が自立用接続路15を接続する。
【0037】
切換制御部16は、S103の処理又はS105の処理の実行後、S106に処理を進める。S106では、切換制御部16は、停止ボタンが押下されたか否かを判断する。停止ボタンが押下されていない場合(S106:No)、切換制御部16は、S101に処理を戻し、上記した処理を繰り返す。一方、停止ボタンが押下されている場合(S106:Yes)、切換制御部16は、このルーチンを終了する。
【0038】
切換制御部16が上記した切換制御処理ルーチンを実行すると、商用電源Cの非停電時には、第三接続路11の接続が確立されるとともに自立用接続路15が遮断される。従って、燃料電池発電装置2にて発電された直流は、昇圧コンバータ6、インバータ7を経由して商用電源Cの交流と同期したAC200Vの交流として商用電源Cに供給される。一方、商用電源Cの停電時には、第三接続路11が遮断されるとともに自立用接続路15の接続が確立される。従って、燃料電池発電装置2にて発電された直流は、昇圧コンバータ6、インバータ7、分岐路24を経由して、オートトランス12の一次側に入力される。そして、オートトランス12にてAC100Vに降圧された後に、自立用電源供給部14に電力供給される。このため、停電時に電力負荷を自立用電源供給部14に接続することにより、停電時であっても電力負荷を駆動させることができる。
【0039】
また、起動ボタンが押下された後に、制御装置5の昇圧コンバータ制御部17が、コンバータ制御処理を実行する。
図3は、昇圧コンバータ制御部17が実行するコンバータ制御処理ルーチンの流れを示すフローチャートである。このルーチンが起動すると、昇圧コンバータ制御部17は、まず、
図3のS111にて、商用電源Cが非停電である否かを判断する。
【0040】
商用電源Cが非停電である場合(S111:Yes)、昇圧コンバータ制御部17は、上限電流値i
Lを10Aに設定する(S112)。一方、商用電源Cが停電している場合(S111:No)、昇圧コンバータ制御部17は、上限電流値i
Lを10.55Aに設定する。S112にて設定された上限電流値i
L(=10A)が、本発明における第一上限電流値(i
L_1)であり、S113にて設定された上限電流値i
L(=10.55A)が、本発明における第二上限電流値(i
L_2)である。
【0041】
S112又はS113にて上限電流値i
Lを設定した後に、昇圧コンバータ制御部17は、昇圧コンバータ6に入力される電流、すなわち、燃料電池発電装置2の出力電流の上限が、上限電流値i
Lに制限されるように、燃料電池発電装置2から供給される直流を昇圧する(S114)。なお、燃料電池発電装置2の出力電流は、第一電流センサ19により検出された電流値i1から得ることができる。
【0042】
S114の処理の実行によって、非停電時には、燃料電池発電装置2の出力電流の上限が10A(第一上限電流値i
L_1)に制限されるように、燃料電池発電装置2により発電された直流が昇圧コンバータ6により昇圧され、一方、停電時には、燃料電池発電装置2の出力電流値の上限が10.55A(第二上限電流値i
L_2)に制限されるように、燃料電池発電装置2により発電された直流が昇圧コンバータ6により昇圧される。このようにして、燃料電池発電装置2の出力電流値を制限することにより、燃料電池発電装置2の出力電流が過大であることによる燃料電池発電装置2の劣化の促進が防止される。
【0043】
S114の処理を実行した後は、昇圧コンバータ制御部17は、停止ボタンが押下されたか否かを判断する(S115)。停止ボタンが押下されていない場合(S115:No)、昇圧コンバータ制御部17はS111に処理を戻し、上記した処理を繰り返す。一方、停止ボタンが押下されている場合(S115:Yes)、昇圧コンバータ制御部17は、制御停止指令を昇圧コンバータ6に出力する(S116)。これにより、昇圧コンバータ6による昇圧が停止される。その後、昇圧コンバータ制御部17は、このルーチンを終了する。
【0044】
また、起動ボタンが押下された後に、制御装置5のインバータ制御部18が、インバータ制御処理を実行する。
図4は、インバータ制御部18が実行するインバータ制御処理ルーチンの流れを示すフローチャートである。このルーチンが起動すると、インバータ制御部18は、まず、
図4のS121にて、商用電源Cが非停電であるか否かを判断する。商用電源Cが非停電であると判断した場合(S121:Yes)、インバータ制御部18は、上限出力値W
Lを700Wに設定する(S122)。また、商用電源Cが停電していると判断した場合(S121:No)、インバータ制御部18は、上限出力値W
Lを738Wに設定する。S122にて設定された上限出力値W
L(=700W)が、本発明における第一上限出力値(W
L_1)であり、S123にて設定された上限出力値W
L(=738W)が、本発明における第二上限出力値(W
L_2)である。
【0045】
S122又はS123にて上限出力値W
Lを設定した後に、インバータ制御部18は、インバータ7の出力の上限が上限出力値W
Lに制限されるようにインバータ7を制御する(S124)。これにより、昇圧コンバータ6で昇圧された直流が、AC200Vの交流に変換される。この場合において、非停電時におけるインバータ7の最大出力は700W(第一上限出力値W
L_1)であり、停電時におけるインバータ7の最大出力は738W(第二上限出力値W
L_2)である。また、インバータ7の出力は、第二電流センサ20により検出されるインバータ7の出力電流値i2と、第一電圧センサ21により検出されるインバータ7の出力電圧値V2との積(V2×i2)により求められる。
【0046】
その後、インバータ制御部18は、S125にて、停止ボタンが押下されたか否かを判断する。停止ボタンが押下されていない場合(S125:No)、インバータ制御部18はS121に処理を戻し、上記した処理を繰り返す。一方、停止ボタンが押下されている場合(S125:Yes)、インバータ制御部18は、制御停止指令をインバータ7に出力する(S126)。これにより、インバータ7の動作が停止される。その後、インバータ制御部18は、このルーチンを終了する。
【0047】
切換制御部16、昇圧コンバータ制御部17、及び、インバータ制御部18が、上記した制御を実行した場合、非停電時においては、インバータ7から最大700Wの交流(AC200V、3.5A)が出力される。インバータ7から出力された交流は、第三接続路11及び連系用切換装置8を介して、商用電源Cに供給(系統連系)される。このように、本実施形態において、連系出力は、700Wである。
【0048】
一方、停電時においては、インバータ7から最大738Wの交流(AC200V)が出力される。インバータ7から出力された交流は、第三接続路11、分岐路24を経由して、オートトランス12の一次側に供給される。オートトランス12では、その一次側に印加された電圧が降圧され、その二次側に、AC100Vの交流が印加される。ここで、本実施形態において、オートトランス12の変換効率は約95%である。つまり、オートトランス12にて5%分の出力が損なわれる。従って、オートトランス12の一次側に入力される最大738Wの電力がオートトランス12により降圧されることにより、オートトランス12の二次側出力が、738Wの95%、すなわち、約700Wに低下する。
【0049】
オートトランス12の二次側に生成された最大700Wの交流(AC100V、7A)は、自立用接続路15、自立用切換装置13を介して自立用電源供給部14に供給される。従って、停電時に、自立用電源供給部14にて、700Wの電力を、電力負荷、例えば冷蔵庫などの重要な電力負荷に供給することができる。このように、本実施形態において、自立出力は、連系出力と同じ700Wである。
【0050】
本実施形態によれば、上記に示したように、停電時におけるインバータ7の出力の上限(738W)が、非停電時におけるインバータ7の出力の上限(700W)よりも高い。従って、停電時にオートトランス12によってインバータ7の出力電圧が降圧された場合であっても、インバータ7の出力の上限が高められた分だけ、オートトランス12の変換効率(95%)に起因する自立出力の低下分が補われる。このため、自立出力を連系出力と同じ程度(700W)にすることができ、それにより、商品性の高い分散型電源装置1を提供することができる。
【0051】
また、本実施形態において、停電時におけるインバータ7の出力の上限すなわち第二上限出力値W
L_2(738W)は、非停電時におけるインバータ7の出力の上限すなわち第一上限出力値W
L_1(700W)及びオートトランス12の変換効率(95%)に基づいて定められている。具体的には、第二上限出力値W
L_2(738W)は、オートトランス12の二次側に、第一上限出力値W
L_1(700W)と同じ電力を発生させることができるように、定められる。より具体的には、第二上限出力値W
L_2(738W)は、第一上限出力値W
L_1(700W)を、オートトランス12の変換効率(95%)で除した値以上の値に設定される。このようにして停電時におけるインバータ7の出力の上限(第二上限出力値)を定めることにより、オートトランス12の変換効率に起因する自立出力の低下分を補うことができる。
【0052】
また、非停電時には、燃料電池発電装置2の出力電流の上限が10Aに制限されるように昇圧コンバータ6が入力した直流を昇圧し、停電時には、燃料電池発電装置2の出力電流の上限が10.55Aに制限されるように昇圧コンバータ6が入力した直流を昇圧する。これによれば、燃料電池発電装置2の出力電流の上限が10A以下又は10.55A以下に制限されることにより、燃料電池発電装置2の劣化の促進を防止できる。従って、700Wの電力を確保しつつも、燃料電池発電装置2の長寿命化を図ることができる。
【0053】
また、非停電時には、燃料電池発電装置2の出力電流の上限が10Aであるのに対し、停電時には、燃料電池発電装置2の出力電流の上限が、10Aよりも高い10.55Aである。すなわち、停電時には、燃料電池発電装置2の出力電流の上限が大きくされることによって、電流値の上限制限が緩和される。本実施形態において、このように、停電時の燃料電池発電装置2の出力電流の上限が、非停電時の燃料電池発電装置2の上限よりも高くされる理由は、以下のように説明される。
【0054】
商用電源Cの停電時において、燃焼電池発電装置2の出力が770Wであり、燃料電池発電装置2の出力電圧が70Vであると仮定する。この場合、燃料電池発電装置2の出力電流は、理論上は、11Aである。しかし、燃料電池発電装置2の出力電流の上限が10Aに制限されている場合、燃料電池発電装置2の出力電流は10Aとなるため、出力は700Wにされる。
【0055】
燃料電池発電装置2の出力が700Wである場合、インバータ7に入力される直流の電力も700Wである。このため、インバータ7の出力が738Wに達せず、その結果、自立出力が、インバータ7の出力(700W)にオートトランス12の変換効率(95%)を乗じた電力、即ち、665W(AC100V)にされる。つまり、停電時に燃料電池発電装置2の出力電流の上限を10Aに制限した場合、自立電源供給装置4から665Wの電力が出力される。換言すれば、停電時に燃料電池発電装置2の出力電流の上限値を10Aに制限した場合、自立電源供給装置4から700Wの電力を得ることができない。
【0056】
一方、燃料電池発電装置2の出力電流の上限が10.55Aに制限されている場合、燃料電池発電装置2の出力電流が10.55Aとなり、出力が738Wにされる。燃料電池発電装置2からの直流は、インバータ7で738Wの交流に変換された後、オートトランス12により降圧される。このとき、オートトランス12の二次側出力は、738Wの95%、即ち、約700W(AC100V)である。つまり、停電時に燃料電池発電装置2の出力電流の上限値を10.55Aに制限した場合、自立電源供給装置4から700Wの電力を得ることができる。
【0057】
以上のことからわかるように、停電時における燃料電池発電装置2の出力電流の上限を、非停電時における燃料電池発電装置2の出力電流の上限よりも高くすることにより、インバータ7により大きい電力を供給することができる。このため、燃料電池発電装置2の出力電流の電流制限によってインバータ7の出力が目標の出力(第二上限出力値)に達しないような事態の発生を回避することができる。よって、停電時に自立出力が700Wである状態を維持することができる。
【0058】
なお、停電時における燃料電池発電装置2の出力電流の上限を高くすることにより、燃料電池発電装置2の劣化が促進される虞があるが、停電時は非停電時と比較して短時間であるため、停電時のみ、燃料電池発電装置2の出力電流の上限を高くしたからといって、燃料電池発電装置2の劣化はそれほど進行しない。つまり、本実施形態によれば、燃料電池発電装置2の劣化をさほど進行させることなく、自立出力を連系出力と同じ程度に維持することができる。
【0059】
また、本実施形態においては、停電時における燃料電池発電装置2の出力電流の上限値である第二上限電流値i
L_2(10.55A)は、停電時にインバータ制御部18が設定する第二上限出力値W
L_2(738W)に基づいて定められている。具体的には、第二上限電流値i
L_2は、停電時にインバータ7の出力の上限が第二上限出力値W
L_2に達するように、定められる。このようにして停電時における燃料電池発電装置2の出力電流の上限を定めることにより、オートトランス12の変換効率に起因した自立出力の低下分を補うことができる。
【0060】
また、本実施形態において、第一上限電流値i
L_1(10A)に対する第二上限電流値i
L_2(10.55A)の比(i
L_2/i
L_1)、及び、第一上限出力値W
L_1(700W)に対する第二上限出力値W
L_2(738W)の比(W
L_2/W
L_1)は、約1.055である。比(i
L_2/i
L_1)及び比(W
L_2/W
L_1)を、1.04以上且つ1.06以下の範囲に設定することにより、燃料電池発電装置2の劣化の進行を抑えつつ、停電時における自立出力を、非停電時における連系出力と同じ程度にすることができる。
【0061】
また、本実施形態において、制御装置5のインバータ制御部18は、
図1に示すように、自立出力補正部18aを備えていてもよい。この自立出力補正部18aは、自立出力補正処理を実行することにより、停電時に自立電源供給装置4にて得られる電力が精度良くAC100Vの交流にされる。
図5は、自立出力補正部18aが実行する自立出力補正処理ルーチンの流れを示すフローチャートである。このルーチンが起動すると、自立出力補正部18aは、まず、
図5のS131にて、商用電源Cが停電しているか否かを判断する。商用電源Cが停電していない場合(S131:No)、自立出力補正部18aは、このルーチンを終了する。一方、商用電源Cが停電している場合(S131:Yes)、自立出力補正部は、S132に処理を進める。
【0062】
S132では、自立出力補正部18aは、第二電圧センサ22により検出されるオートトランス12の二次側電圧値V3が100Vを越えているか否かを判断する。二次側電圧値V3が100Vを越えている場合(S132:Yes)、自立出力補正部18aは、インバータ7のスイッチング素子のオンデューティ比を僅かに減少させる。これにより、インバータ7の出力電圧が僅かに低下し、それに伴って、オートトランス12の二次側電圧値V3も僅かに低下する。
【0063】
一方、S132にて、二次側電圧値V3が100Vを越えていないと判断された場合(S132:No)、自立出力補正部18aは、S134に処理を進め、二次側電圧値V3が100V未満であるか否かを判断する。S134にて二次側電圧値V3が100V未満ではないと判断された場合(S134:No)は、二次側電圧値V3が100Vである。この場合は、出力を補正する必要がないため、自立出力補正部18aは、このルーチンを終了する。
【0064】
また、S134にて、二次側電圧値V3が100V未満であると判断した場合(S134:Yes)、自立出力補正部18aは、インバータ7のスイッチング素子のオンデューティ比を僅かに増加させる。これにより、インバータ7の出力電圧が僅かに上昇し、それに伴って、オートトランス12の二次側電圧値V3も僅かに上昇する。
【0065】
S133又はS134にてインバータ7のスイッチング素子のオンデューティ比を変更した後に、自立出力補正部18aは、停止ボタンが押圧されたか否かを判断する(S136)。停止ボタンが押圧されていない場合(S136:No)、自立出力補正部18aは、S131に処理を戻し、上記した処理を繰り返す。一方、停止ボタンが押圧されている場合(S136:Yes)、本ルーチンに基づくインバータ7の制御を停止する。その後、このルーチンを終了する。
【0066】
自立出力補正部18aが上記した自立出力補正処理を実行することによって、停電時に自立専用電力供給部から得られる電力の電圧を、精度良く、AC100V電圧にすることができる。
【0067】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるべきものではない。例えば、上記実施形態においては、発電装置として燃料電池発電装置を用いる例を説明したが、直流を生成する発電装置であれば、それ以外の発電装置、例えば太陽光発電装置でもよい。本発明は、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、変形可能である。