特許第6536166号(P6536166)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱電機株式会社の特許一覧 ▶ 三菱電機ホーム機器株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6536166-加湿器 図000002
  • 特許6536166-加湿器 図000003
  • 特許6536166-加湿器 図000004
  • 特許6536166-加湿器 図000005
  • 特許6536166-加湿器 図000006
  • 特許6536166-加湿器 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6536166
(24)【登録日】2019年6月14日
(45)【発行日】2019年7月3日
(54)【発明の名称】加湿器
(51)【国際特許分類】
   F24F 6/00 20060101AFI20190625BHJP
   F24F 6/12 20060101ALI20190625BHJP
   F24F 6/04 20060101ALI20190625BHJP
   F24F 13/20 20060101ALI20190625BHJP
   F24F 13/26 20060101ALI20190625BHJP
【FI】
   F24F6/00 B
   F24F6/12 101Z
   F24F6/12 101A
   F24F6/04
   F24F13/20 205
   F24F13/26
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-102971(P2015-102971)
(22)【出願日】2015年5月20日
(65)【公開番号】特開2016-217626(P2016-217626A)
(43)【公開日】2016年12月22日
【審査請求日】2017年12月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000176866
【氏名又は名称】三菱電機ホーム機器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082175
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 守
(74)【代理人】
【識別番号】100106150
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100148057
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 淑己
(72)【発明者】
【氏名】小林 朋生
(72)【発明者】
【氏名】任田 保満
(72)【発明者】
【氏名】柳内 敏行
(72)【発明者】
【氏名】服巻 茉莉花
(72)【発明者】
【氏名】美寿見 奈穂
【審査官】 河内 誠
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−265383(JP,A)
【文献】 特開2015−081710(JP,A)
【文献】 特開2014−184075(JP,A)
【文献】 特開2010−203760(JP,A)
【文献】 特開平04−225737(JP,A)
【文献】 特開平04−151325(JP,A)
【文献】 実公昭47−021580(JP,Y1)
【文献】 実開昭54−080659(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 6/00−6/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯水部と、前記貯水部に貯水された水で高湿空気を生成する高湿空気生成部と、気流を発生させる送風ファンとを有する本体と、
前記高湿空気を前記本体の外部に送出する高湿空気送出ノズルと、
前記高湿空気送出ノズルの上部又は下部に並んで設けられ、前記気流を前記本体の外部に送出する気流送出ノズルとを備え、
前記高湿空気送出ノズル及び前記気流送出ノズルは、送出された前記高湿空気及び前記気流が併進して上下方向から互いに混ざるように、それぞれ前記高湿空気及び前記気流を前記本体に対して横方向に送出し、
前記気流送出ノズルは前記高湿空気送出ノズルと一体となって前記本体に対して回動可能に構成されていることを特徴とする加湿器。
【請求項2】
前記本体は、前記気流を加熱する加熱部を有し、
前記高湿空気送出ノズルは前記気流送出ノズルの上部に設けられていることを特徴とする請求項に記載の加湿器。
【請求項3】
前記高湿空気生成部は、前記貯水部に貯留された水を振動させることによりミストを発生する超音波振動子を有することを特徴とする請求項に記載の加湿器。
【請求項4】
前記高湿空気生成部は、前記貯水部に貯留された水を蒸散させる気化フィルターを有することを特徴とする請求項に記載の加湿器。
【請求項5】
前記加熱部は自己温度制御式のヒータを有することを特徴とする請求項の何れか1項に記載の加湿器。
【請求項6】
前記高湿空気生成部は、前記水を加熱して前記高湿空気を生成する加熱部を有し、
前記高湿空気送出ノズルは前記気流送出ノズルの下部に設けられていることを特徴とする請求項に記載の加湿器。
【請求項7】
前記加熱部は、前記水を貯水する蒸発皿と、前記蒸発皿に貯水された前記水を加熱するヒータとを有することを特徴とする請求項に記載の加湿器。
【請求項8】
前記高湿空気及び前記気流の送出方向を変更する送出方向変更部を更に備えることを特徴とする請求項に記載の加湿器。
【請求項9】
前記送出方向変更部は自動的に送出方向を変更することを特徴とする請求項に記載の加湿器。
【請求項10】
前記送出方向変更部が送出方向を変更する際に、前記高湿空気の水分量と前記送風ファンの回転数の少なくとも1つを変更することを特徴とする請求項又はに記載の加湿器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は加湿器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、機器内部において、ファンにより発生させた風を、超音波振動子などの水を霧化する霧化装置により生成された高湿空気に一部混合し、供給したい位置に高湿空気の吹出口を向けることで、当該位置に向けて高湿空気を供給する加湿器がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平4−1334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の構成では、高湿空気の吹出口が横上方向に向いているため、本体から送出した高湿空気が到達する横方向の距離が短いという問題があった。
【0005】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、その目的は本体から送出した高湿空気が到達する横方向の距離を長くすることができる加湿器を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る加湿器は、貯水部と、前記貯水部に貯水された水で高湿空気を生成する高湿空気生成部と、気流を発生させる送風ファンとを有する本体と、前記高湿空気を前記本体の外部に送出する高湿空気送出ノズルと、前記高湿空気送出ノズルの上部又は下部に並んで設けられ、前記気流を前記本体の外部に送出する気流送出ノズルとを備え、前記高湿空気送出ノズル及び前記気流送出ノズルは、送出された前記高湿空気及び前記気流が併進して上下方向から互いに混ざるように、それぞれ前記高湿空気及び前記気流を前記本体に対して横方向に送出し、前記気流送出ノズルは前記高湿空気送出ノズルと一体となって前記本体に対して回動可能に構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、高湿空気送出ノズル及び前記気流送出ノズルは、送出された高湿空気及び気流が併進して上下方向から互いに混ざるように、それぞれ高湿空気及び気流を本体に対して横方向に送出する。これにより、本体から送出した高湿空気が到達する横方向の距離を長くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施の形態1に係る加湿器を示す斜視図である。
図2】本発明の実施の形態1に係る加湿器を示す斜視図である。
図3】本発明の実施の形態1に係る加湿器を示す断面図である。
図4】本発明の実施の形態1に係る加湿器の動作を示すフローチャートである。
図5】本発明の実施の形態2に係る加湿器を示す断面図である。
図6】本発明の実施の形態3に係る加湿器を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施の形態に係る加湿器について図面を参照して説明する。同じ又は対応する構成要素には同じ符号を付し、説明の繰り返しを省略する場合がある。
【0010】
実施の形態1.
図1及び図2は、本発明の実施の形態1に係る加湿器を示す斜視図である。図3は、本発明の実施の形態1に係る加湿器を示す断面図である。加湿器の本体1に給水タンク2が装着されている。
【0011】
給水タンク2から供給された水を貯水部3が貯める。貯水部3には、本体1の後側に位置し、上方に向けて開口する凹形状の空間を有するタンク受け部4が形成されている。給水タンク2は、加湿器の本体1から取り外して水の補充が可能となるように、貯水部3に形成されたタンク受け部4に着脱可能に連結される。給水タンク2の下面部には、タンク受け部4に連結されたときに開弁し、当該位置から取外されたときに閉弁する給水弁5が設けられている。タンク受け部4には、給水弁5が下となるように給水タンク2の下部(給水弁5が開閉する開口)が入り込んだ状態で給水タンク2が取り付けられる。このように給水タンク2を貯水部3に装着可能に構成することで、貯水部3の給水弁5が開閉する給水タンク2の開口の高さの位置まで給水タンク2から貯水部3に水が供給される。
【0012】
貯水部3の内部には、高湿空気生成部である超音波振動子6が設けられている。超音波振動子6は、振動子が振動して発する超音波により貯水部3に貯められた水を微細な粒子であるミスト状にして高湿空気W0を生成し、貯水部3の外部に噴出する。
【0013】
送風ファン7が本体1の内部から外部に向けて流れる気流W1を発生させる。送風ファン7からの気流W1と超音波振動子6からの高湿空気W0により生成される高湿空気W2を高湿空気ダクト8が本体1の外部に導く。高湿空気生成部となる高湿空気ダクト8は、送風ファン7に向けて開口して気流W1を取込む気流取込口9と、高湿空気W2を外部に送出する高湿空気送出口10と、送風ファン7側の固定ダクト11と、固定ダクト11に連通して高湿空気送出口10の方向を水平方向に変更可能な高湿空気送出ノズル12とを有する。固定ダクト11は、気流取込口9が下方を向き、この気流取込口9から垂直方向に伸び、途中から前方に向けて湾曲して、高湿空気送出口10に至る筒形状を成している。
【0014】
高湿空気送出口10には風向調整部13が設けられている。風向調整部13は板状であり、高湿空気送出口10の開口縁の上側に設けられ、左右が軸支されていて先端が上下に回動可能である。
【0015】
固定ダクト11の途中部位は、高湿空気ダクト8の内部に貯水部3の一部分が入り込むように構成されている。高湿空気ダクト8の内部に入り込んだ貯水部3の位置に、超音波振動子6が設けられている。つまり、貯水部3の一部分は、高湿空気ダクト8と上下となるように構成されている。超音波振動子6の設けられている貯水部3の位置の上方には、高湿空気ダクト8が開口する。このように構成することで、超音波振動子6により生成され上方に向けて噴出する高湿空気W0が高湿空気ダクト8の内部へと流れ込みやすい。
【0016】
加熱部14が送風ファン7からの気流W1を加熱して温風W3を生成する。送風ダクト15が温風W3を本体1の外部に導く。送風ダクト15は、送風ファン7に向けて開口して気流W1を取込む気流取込口16と、温風W3を外部に送出する温風送出口17と、下方を向いた気流取込口16から垂直方向に伸びる円筒形状の垂直ダクト18と、水平方向に温風送出口17に至る筒形状の温風送出ノズル19とを有する。温風送出口17に設けられたガードリブ20が高温部への異物の落下や手の侵入を防止する。
【0017】
以上のように、高湿空気ダクト8と送風ダクト15はそれぞれ独立した風路を形成している。また、送風ダクト15の気流取込口16は高湿空気ダクト8の気流取込口9の前方に位置し、高湿空気送出口10は温風送出口17の上方に位置する。温風送出ノズル19は、垂直ダクト18に風路を連通した状態で回動可能に嵌合され、温風送出口17の方向を水平方向に変更可能に構成される。また、温風送出ノズル19は、高湿空気送出ノズル12と一体となって水平方向に回動可能に構成される。
【0018】
温風送出ノズル19は、送出方向変更部21の駆動によって水平方向に回動する。送出方向変更部21は、駆動モータ22と、駆動ギヤ23と、温風送出ノズル19の垂直ダクト18との嵌合部に設けられた動力伝達歯車24とを有する。駆動モータ22の回転力を動力伝達歯車24に伝達することにより、温風送出ノズル19が水平方向に回動する。これにより、温風送出ノズル19と一体的に構成された高湿空気送出ノズル12も同時に回動する。この結果、高湿空気W2及び温風W3の送出方向を変更することができる。
【0019】
図2では、温風送出ノズル19と高湿空気送出ノズル12の方向を本体1の左側に回動させている。このように温風送出ノズル19と高湿空気送出ノズル12が回動しても、それぞれ垂直ダクト18及び固定ダクト11との風路が連通状態を維持するため、温風送出ノズル19と高湿空気送出ノズル12からそれぞれ温風W3及び高湿空気W2が本体1の外部に送出される。そして、温風W3及び高湿空気W2が併進しながら熱交換して高湿温風W4が生成され、本体1の左側に送出される。
【0020】
送風ファン7は、モータ25と、このモータ25により回転されることで気流W1を生み出す翼部26とを有する。送風ファン7は、本体1の下部領域に形成された吸気風路27の内部に設けられている。送風ファン7のモータ25は、後述する制御部28により通電制御されることで、駆動・停止・風量・風速がコントロールされる。
【0021】
吸気風路27は、本体1の後部に開口する吸気口29から送風ダクト15の気流取込口16及び高湿空気ダクト8の気流取込口9に至る空間である。翼部26は、送風ダクト15と高湿空気ダクト8の下方に位置し、送風ダクト15の気流取込口16と高湿空気ダクト8の気流取込口9に跨って配置されている。これにより、1つの送風ファン7で2つのダクトに気流W1を供給することができる。
【0022】
なお、本実施の形態では、送風ファン7としてシロッコファンを用いるが、高湿空気ダクト8と送風ダクト15の各気流取込口9,16に跨るように軸流ファンを設けても同様の効果を得ることができる。また、送風ファン7として軸流ファンを用いて吸気口29の近傍の吸気風路27に設けてもよい。
【0023】
また、本実施の形態では、1つ送風ファン7を用いて高湿空気ダクト8と送風ダクト15に対して気流W1を供給しているが、それぞれの気流取込口9,16に送風ファンを設けて気流を各ダクト内部へ供給してもよい。これにより、高湿空気ダクト8と送風ダクト15に供給する気流の強さや量をそれぞれ独立して制御することができる。
【0024】
運転開始や停止・出力の変更・運転状態を表示する操作表示部30が本体1の前面に設けられている。操作表示部30は、加湿器の電源スイッチや各種の操作及び設定を行うスイッチ等の操作手段31と、加湿器の状態を示すランプやLED等の表示手段32とを有する。操作手段31と表示手段32は後述する制御部28と通信可能に接続されている。操作手段31を操作した際の信号が制御部28に入力される。表示手段32は制御部28により点灯・消灯の制御が行われる。
【0025】
制御部28は、操作表示部30への入力に基づいて、操作表示部30の表示や、送風ファン7及び加熱部14の通電を制御する。制御部28は、印刷配線基板上に、ROM、RAM、不揮発性メモリ等を有する記憶回路と、記憶回路に記憶された各種の制御プログラムを実行する演算処理部(CPU)と、演算処理部に対して信号を入出力する入出力回路と、時間を計測するタイマー回路とを備えている。
【0026】
制御部28の入力側には、加湿器の各部制御に必要な情報を取得するセンサ系統(図示せず)が接続されている。センサ系統には、例えば、給水タンク2内の水位を検出する水位検出部、後述する温風W3の温度を検出する温度検出部、加湿器周辺の湿度を検出する湿度検出部、加湿器の周囲に存在する人を検出する人体検出部、温風送出口17に人が接近したことを検出する近接センサ等が含まれている。
【0027】
制御部28の出力側には、表示手段32、加熱部14を構成するヒータ、送風ファン7が接続され、通電制御が行われる。このように構成された制御部28は、本体1の内部であって、吸気風路27の前方で、送風ダクト15の前方かつ下方の空間に設けられている。
【0028】
この制御部28の配置空間は、水や湿気がある給水タンク2や貯水部3や超音波振動子6(高湿空気生成部)や高湿空気ダクト8から離れた位置にある。これらの水や湿気のある各部と制御部28との間に水や湿気のない吸気風路27や送風ダクト15が介在する。これにより、水や湿気から最も離れた位置に電子部品を有する制御部28を位置させることができ、湿気から制御部28を守ることができる。
【0029】
以上のように構成された本実施の形態に係る加湿器は次のように動作する。図4は、本発明の実施の形態1に係る加湿器の動作を示すフローチャートである。まず、ステップS1では、操作手段31に設けられた電源スイッチ(運転開始スイッチ)が押されると、加湿器の電源がONとなり、加湿運転が開始される。次に、ステップS2では、制御部28により加熱部14のヒータと、超音波振動子6と、送風ファン7が起動(ON)される。
【0030】
このように動作することで、高湿空気ダクト8の内部では、超音波振動子6が貯水部3に貯留された水を振動させることによりミスト(微細な粒子)を発生させて高湿空気W0を生成する。この高湿空気W0が貯水部3の上方に噴出して高湿空気ダクト8の内部に流入する。また、高湿空気ダクト8の内部には、送風ファン7から送り出された気流W1が流入しており、高湿空気W0と混ざり合って高湿空気W2となり、高湿空気送出口10に至る。また、気流W1は、高湿空気生成部である超音波振動子6の側方を下方から上方に向けて流れるので、高湿空気W0が気流W1に引っ張られて(誘引されて)高湿空気送出口10に流れていきやすい。従って、高湿空気W0が高湿空気生成部付近に滞留しにくく、効率よく高湿空気W0を高湿空気ダクト8の内部に送り込むことができる。
【0031】
次に、上記の高湿空気ダクト8の内部の動作と同時に、送風ダクト15の内部には、送風ファン7から送り出された気流W1が流入する。そして、気流W1が送風ダクト15の内部を流れ、加熱部14を通過する際に暖められて温風W3となり、温風送出口17に至る。そして、温風W3と高湿空気W2は、次のように高湿空気送出口10と温風送出口17から本体1の前方に向けて送出される。
【0032】
高湿空気送出口10は、本体1を前方から見て、温風送出口17の上部に並んで設けられている。温風W3は、温風送出口17から本体1の前方に向かって水平方向に送出される。高湿空気送出口10は、本体1を前方から見て、温風送出口17の上方に位置する。高湿空気W2は、高湿空気送出口10から本体1の前方に向かって水平方向より下方向(前斜め下方向)に送出される。つまり、高湿空気W2は、温風送出口17から送出された温風W3の流れに向かって高湿空気送出口10から送出される。
【0033】
ここで、温風W3は、温風送出口17より送出されると上昇しながら前方に進む。高湿空気W2は、ミスト状の水を含む気流であり、低温であることから、上昇せずに
高湿空気送出口10から送出された方向(前斜め下方向)に進む。
【0034】
従って、前斜め下方向に進む高湿空気W2と、上昇しながら前方に進む温風W3が、併進して上下方向から混じりあい、熱交換しながら温かい高湿温風W4となって前方向に流れ、より本体から遠い位置まで湿度が高く温かい空気を届けることができる。つまり、温風W3と高湿空気W2が混ざるように吹き出すことで、低風速の高湿空気W2でも、水平方向への送風距離をより長くすることができ、本体から送出した高湿温風W4が到達する距離をより長くすることが可能となる。
【0035】
また、高湿空気送出口10から送出する高湿空気W2は、温風送出口17からの温風W3の送出方向に交わる方向に向くので、上昇しようとする温風W3と高湿空気W2が混合しやすい。また、高湿空気生成部として超音波振動子6を用いているので、貯水部3に保持されている水を容易にミスト化することができ、効率よく高湿空気W0を生成することができる。
【0036】
次に、ステップS3では、センサ系統により人体の検出、人体との距離の検出、室内の湿度の検出を実行する。そして、例えば、センサ系統による検出結果と、ユーザによる運転条件の設定とに基づいて、加湿器の運転状態を調整する。具体例を挙げると、制御部28には、例えば、加湿器の位置での湿度と、ユーザまでの距離との関係と、ユーザの位置での湿度との関係を示す特性データが予め記憶されている。制御部28は、センサ系統により実際に検出した湿度及び距離に基づいて、前記特性データからユーザの位置の湿度を推定する。この推定した湿度に基づいて、例えば、加熱部14、送風ファン7、高湿空気生成部(超音波振動子6)を間欠運転することにより、加湿器の運転状態を調整する。
【0037】
例えば、制御部28は、推定した湿度が適切な湿度範囲を下回る場合に、加熱部14、送風ファン7、高湿空気生成部(超音波振動子6)をON状態とし、推定した湿度が前記湿度範囲を上回る場合に、加熱部14、送風ファン7、高湿空気生成部(超音波振動子6)をOFF状態とする。
【0038】
次に、ステップS4では、予め設定された各種の条件に基づいて加湿器の電源をOFFするか否かを判定する。例えば、下記の条件(1)〜(5)の少なくとも1つが成立した場合にステップS5に移行し、加湿器の電源をOFFする。一方、条件(1)〜(5)の全てが不成立である場合にはステップS3,S4の処理を繰り返す。
(1)ユーザにより電源スイッチがOFFされたか?
(2)タイマーに設定された時間が経過したか?
(3)給水タンク2から水が無くなったか?
(4)高湿空気ダクト8内の温度が許容範囲を超えて上昇したか?
(5)高湿空気送出口10等に人体が接触したか?
【0039】
高湿温風W4を本体1の横方向に送出する場合は、次のように動作する。操作手段31に設けられたノズル右(左)回動スイッチが押されると、制御部28により駆動モータ22が駆動され、駆動ギヤ23を介して動力伝達歯車24が回動する。動力伝達歯車24の回動により、温風送出ノズル19が右に(左に)回動する。このように、本体1の長手方向に対して横方向にも高湿温風を送出することができ、また、高湿温風の到達距離を長くすることができるため、設置空間が狭い場合においても、本体1の設置の自由度が高くなる。
【0040】
また、操作手段31に設けられたノズル自動回動スイッチが押されると、制御部28は駆動モータ22を駆動して、本体1の右方向と左方向に、所定時間ずつ交互に高湿温風W4を送出する動作を繰り返す。この動作を行わせることにより、1台の加湿器を2人の使用者の間に設置して、両使用者に対して交互に高湿温風の供給を行うことができる。
【0041】
ここで、制御部28は駆動モータ22の駆動中に送風ファン7と加熱部14を停止するように構成してもよい。このように制御することにより、高湿温風W4の送出方向の変更過程において送風音を低減するとともに高湿温風を生成する消費電力を低減することができる。
【0042】
なお、本実施の形態では、高湿空気ダクト8内部に貯水部3が一部分入り込んだ構成となっているが、高湿空気ダクト8の外に貯水部3を構成し、貯水部3の上方から高湿空気ダクト8を繋ぐ接続ダクトを設けて、この接続ダクトを通して高湿空気W0を高湿空気ダクト8の内部に導くように構成してもよい。これにより、貯水部3が高湿空気ダクト8の内部に突出しないので、気流W1の流れを妨げにくくすることができる。
【0043】
また、加湿運転を開始後、超音波振動子6と送風ファン7を同時に動作開始する形態で説明したが、運転開始後、先に送風ファン7を動作させた後に超音波振動子6を動作させてもよい。このように、超音波振動子6を送風ファン7より遅れて動作を開始させることにより、超音波振動子6が生成した高湿空気W0が、高湿空気ダクト8の内部を送風ファン7に向かって逆流することを防ぐことができる。
【0044】
また、加湿運転終了後、超音波振動子6の動作を停止した後、所定の間、送風ファン7を動作させ続けてもよい。これにより、高湿空気ダクト8内部に気流W1を送り続けることで、高湿空気ダクト8の内部の湿気を乾かすことができ、雑菌の繁殖を抑止することができる。尚、加湿運転終了後、送風ファン7の追加動作は、通常の加湿運転時の際の送風出力より押えた出力で運転すると、省エネ・静音運転を行うことができる。また、送風ファン7を追加動作させている際には、表示手段32に追加動作を行っている旨の表示を行うとよい。
【0045】
以上説明したように、本実施の形態では、高湿空気送出ノズル12及び温風送出ノズル19は、送出された高湿空気W2及び温風W3が併進して上下方向から互いに混ざるように、それぞれ高湿空気W2及び温風W3を本体1に対して横方向に送出する。これにより、本体1から送出した高湿空気が到達する横方向の距離を長くすることができる。
【0046】
また、温風送出ノズル19は高湿空気送出ノズル12と一体となって本体1に対して回動可能に構成されている。これにより、本体1の長手方向に対して横方向にも高湿空気を送出することができる。
【0047】
また、従来の加湿器には温かい高湿空気を発生させる手段がないため、吹出口から送出された高湿空気が人体の届くと寒さを感じさせていた。これに対して、本実施の形態では加熱部14により気流を加熱するため、温かい高湿空気を人体に届けることができる。
【0048】
また、一例として温風送出口17が高湿空気送出口10の下方に位置し、温風W3は前方であって水平方向に温風送出口17から送出され、高湿空気W2は前方であって水平方向より下方向(前斜め下方向)に高湿空気送出口10から送出する形態で説明したが、温風送出口17が高湿空気送出口10の下方に位置する構成であれば、温風W3と高湿空気W2の送出方向が交わるように、高湿空気ダクト8と送風ダクト15を構成することで、高湿空気W2をより遠くへ狙った位置に送出することができる。
【0049】
また、加熱部14を構成するヒータとしてPTCヒータなどの自己温度制御式のヒータを用いてもよい。自己温度制御式のヒータを用いることにより、制御部28を用いることなく、容易にヒータの温度調節を適切に行うことができ、温風W3の温度を適切に保つことができる。
【0050】
また、高湿空気生成部(超音波振動子6)又は貯水部3に、水に含まれる雑菌を減少させる除菌手段を設けても良い。除菌手段は、例えば、赤外線照射装置や放電装置や抗菌剤装着構造を用いるとよい。これにより、貯水部3に保持されている水や高湿空気生成部(超音波振動子6)に至った水に含まれる菌を殺菌したり、また、菌が増殖しないように維持したりすることができる。
【0051】
実施の形態2
図5は、本発明の実施の形態2に係る加湿器を示す断面図である。本実施の形態では、加湿器の貯水部3に設けられる高湿空気生成部として、貯水部3に貯留された水を蒸散させる気化フィルター33が用いられる。気化フィルター33は、水を吸収する材料(例えば、レーヨン等)により構成されており、給水部34と蒸発部35を有する。蒸発部35の表面積は給水部34の表面積より大きい。給水部34が貯水部3に保持された水の内部に浸る位置にあり、蒸発部35が高湿空気ダクト8の内部に位置する。
【0052】
以上のように構成された本実施の形態に係る加湿器は次のように動作する。操作手段31に設けられた電源スイッチ(運転開始スイッチ)が押されると、加湿器の電源がONとなり、加湿運転が開始される。そして、制御部28により加熱部14を構成するヒータと、送風ファン7が起動(ON)される。このように動作することで、高湿空気ダクト8の内部には、送風ファン7から送り出された気流W1が流入する。気流W1は、気化フィルター33の周囲を含む高湿空気ダクト8内を流れ、高湿空気送出口10に向けて流下する。このとき、気流W1が気化フィルター33の周囲を流れる際に、蒸発部35に含まれている水分が気化し、高湿空気W0が生成される。高湿空気W0と気流W1が高湿空気送出口10に至る高湿空気ダクト8の内部で混ざり合うことで高湿空気W2が生成される。気化フィルター33においては、蒸発部35から水分が蒸発すると、給水部34が貯水部3内部の水を吸い上げ、毛細管現象が生じて蒸発部35へと水分を供給する。
【0053】
以上のように、気化フィルター33により貯水部3に保持された水を気化し、気流W1と混ざり合うことで高湿空気W2を形成することができる。従って、気化フィルター33を用いることで、高湿空気生成部において電力を用いることなく、容易な構成で水を気化することができる。また、気化フィルター33は、蒸発部35の表面積は給水部34の表面積より大きく構成されているので、給水部34から毛細管現象により吸い上げた水分を、効率よく気化させることができる。
【0054】
実施の形態3
図6は、本発明の実施の形態3に係る加湿器を示す断面図である。本実施の形態では、高温高湿空気生成部36が内部で生成するW5と気流W1を混合して高温高湿空気W6を生成する。貯水部3は底部に接続されたホース37によって、高温高湿空気生成部36を構成する蒸発皿38と底面で連通し、水を供給する。
【0055】
高温高湿空気生成部36は、水を貯水する蒸発皿38と、蒸発皿38の側面周囲に設けられ蒸発皿38に貯水された水を加熱するヒータ39と、蒸気W5と気流W1の一部を混合する蒸気混合空間40と、気流W1を蒸気混合空間40に導くガイド風路41とを有する。蒸気W5は、アルミニウム材で構成された蒸発皿38に貯水された水を、ヒータ39の加熱により沸騰させて生成する。ガイド風路41は、蒸気混合空間40の中央から水平方向に偏った位置に配置されている。ガイド風路41は気流W1の一部を蒸気混合空間40内に導く。円筒形状に構成された蒸気混合空間40内に流入した気流W1は旋回しながら蒸気W5と効率よく混合されて、高温高湿空気W6が生成される。
【0056】
高温高湿空気送出ノズル42が、蒸気混合空間40で生成された高温高湿空気W6を本体1の外部に水平方向に送出する。高温高湿空気送出口43にはガードリブ20が設けられ、高温部への異物の落下や手の侵入を防止する。高温高湿空気送出ノズル42の底面は高温高湿空気送出口43に向かって上方に傾斜しており、高温高湿空気W6によって高温高湿空気送出ノズル42内部に発生する結露水が蒸気混合空間40側に戻るように構成される。
【0057】
搬送風ダクト44が気流W1を高温高湿空気W6の上側に導いて、高温高湿空気W6の搬送風W7として本体1の外部に導く。搬送風ダクト44は、送風ファン7に向けて開口して気流W1を取込む気流取込口45と、気流W1を搬送風W7として外部に送出する搬送風送出口46と、送風ファン7側の固定ダクト47と、固定ダクト47に連通し、搬送風送出口46の方向を水平方向に変更可能な搬送風送出ノズル48とを有する。固定ダクト47は、気流取込口45が下方を向き、この気流取込口45から垂直方向に伸び、途中から前方に向けて湾曲して、搬送風送出口46に至る筒形状を成している。また、搬送風W1の一部はガイド風路41から高温高湿空気生成部36に分岐する。
【0058】
搬送風送出口46には風向調整部13が設けられている。風向調整部13は、板状を成しており、左右を軸支することで、先端を上下可能に搬送風送出口46の開口縁の上側に設けられている。
【0059】
以上のように、搬送風ダクト44と高温高湿空気送出ノズル42は、それぞれ独立した風路を形成している。また、搬送風送出口46は高温高湿空気送出口43の上方に位置する。高温高湿空気送出ノズル42は、蒸気混合空間40の上部に風路を連通した状態で回動可能に嵌合され、高温高湿空気送出口43の方向を水平方向に変更可能に構成される。また、高温高湿空気送出ノズル42は、搬送風送出ノズル48と一体となって回動可能に構成される。
【0060】
高温高湿空気送出ノズル42は、送出方向変更部21の駆動によって水平方向に回動する。送出方向変更部21は、駆動モータ22と駆動ギヤ23と、高温高湿空気送出ノズル42の蒸気混合空間40の上部との嵌合部に設けられた動力伝達歯車24とによって構成され、駆動モータ22の回転力を動力伝達歯車24に伝達することにより、高温高湿空気送出ノズル42が水平方向に回動する。これにより、高温高湿空気送出ノズル42と一体的に構成された搬送風送出ノズル48が同時に回動する。
【0061】
高温高湿空気送出ノズル42と搬送風送出ノズル48が回動しても、それぞれ、蒸気混合空間40の上部、固定ダクト47と風路は連通状態を維持するため、高温高湿空気W6、搬送風W7が送出される。そして、高温高湿空気W6と搬送風W7が併進しながら熱交換して高湿温風W8が生成される。
【0062】
高温高湿空気送出口43は、本体1を前方から見て、搬送風送出口46の下部に並んで設けられている。高温高湿空気W6は、高温高湿空気送出口43から、本体1の前方であって水平方向に向かって送出される。
【0063】
搬送風送出口46は、本体1を前方から見て、高温高湿空気送出口43の上方に位置する。搬送風W7は、搬送風送出口46から、本体1の前方であって、水平方向より下方向(前斜め下方向)に送出される。つまり、搬送風W7は、高温高湿空気送出口43から送出された高温高湿空気W6の流れに向かって、搬送風送出口46から送出される。
【0064】
ここで、高温高湿空気W6は、高温高湿空気送出口43より送出されると上昇しながら前方に進む。搬送風W7は常温の気流であるため、上昇せずに搬送風送出口46から送出された方向(前斜め下方向)に進む。従って、前斜め下方向に進む搬送風W7と、上昇しながら前方に進む高温高湿空気W6が、併進して上下方向から混じりあい、熱交換しながら温かい高湿温風W8となって前方向に流れ、より本体から遠い位置まで湿度が高く温かい空気を届けることができる。つまり、高温高湿空気W6と搬送風W7を混ざるように吹き出すことで、低風速の高温高湿空気W6でも、水平方向への送風距離をより長くすることができ、本体1から送出した高湿温風W8が到達する距離をより長くすることが可能となる。
【0065】
また、搬送風送出口46から送出する搬送風W7は、高温高湿空気送出口43からの高温高湿空気W6の送出方向に交わる方向に向くので、上昇しようとする高温高湿空気W6と搬送風W7が、より混合しやすく構成することができる。
【0066】
以上説明したように、本実施の形態では、高温高湿空気送出ノズル42及び搬送風送出ノズル48は、送出された高温高湿空気W6及び搬送風W7が併進して上下方向から互いに混ざるように、それぞれ高温高湿空気W6及び搬送風W7を本体1に対して横方向に送出する。これにより、本体1から送出した高湿空気が到達する横方向の距離を長くすることができる。
【0067】
なお、実施の形態1〜3において、送出方向変更部21が自動的に送出方向を変更するようにしてもよい。また、送出方向変更部21が送出方向を変更する際に、高湿空気の水分量と送風ファン7の回転数の少なくとも1つを変更するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0068】
1 本体、3 貯水部、6 超音波振動子(高湿空気生成部)、7 送風ファン、12 高湿空気送出ノズル、14 加熱部、19 温風送出ノズル(気流送出ノズル)、21 送出方向変更部、33 気化フィルター(高湿空気生成部)、36 高湿空気生成部、38 蒸発皿、39 ヒータ、42 高温高湿空気送出ノズル(高湿空気送出ノズル)、48 搬送風送出ノズル(気流送出ノズル)
図1
図2
図3
図4
図5
図6