特許第6536319号(P6536319)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6536319
(24)【登録日】2019年6月14日
(45)【発行日】2019年7月3日
(54)【発明の名称】ロボットシステム
(51)【国際特許分類】
   H02P 3/22 20060101AFI20190625BHJP
   B25J 19/06 20060101ALI20190625BHJP
   H02P 27/06 20060101ALI20190625BHJP
【FI】
   H02P3/22 B
   B25J19/06
   H02P27/06
【請求項の数】7
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2015-188078(P2015-188078)
(22)【出願日】2015年9月25日
(65)【公開番号】特開2017-63565(P2017-63565A)
(43)【公開日】2017年3月30日
【審査請求日】2018年4月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(72)【発明者】
【氏名】西野 秀幸
【審査官】 上野 力
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−067017(JP,A)
【文献】 特開2006−268130(JP,A)
【文献】 特開2012−150618(JP,A)
【文献】 特開平04−331493(JP,A)
【文献】 特開2009−213313(JP,A)
【文献】 特開2012−055981(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 3/22
B25J 19/06
H02P 27/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータ巻線を有し、ロボットの各回転軸を駆動する3相モータと、
ハイサイドスイッチ及びローサイドスイッチの直列接続体を有し、前記ハイサイドスイッチ及び前記ローサイドスイッチが交互にオンされることにより、外部電源を電力供給源として前記ステータ巻線に交流電圧を印加する3相インバータと、を備えるロボットシステムにおいて、
前記ハイサイドスイッチ及び前記ローサイドスイッチの各相の接続点には、前記ステータ巻線が接続されており、
前記ハイサイドスイッチ及び前記ローサイドスイッチのうち一方をブレーキ用スイッチとし、前記ブレーキ用スイッチの駆動制御を行う第1制御部及び第2制御部を備え、
前記第1制御部及び前記第2制御部のそれぞれは、前記ロボットシステムを監視する機能を有しており、
前記第1制御部及び前記第2制御部のそれぞれは、前記ロボットシステムに異常が生じていることを検知した場合、少なくとも2相分の前記ブレーキ用スイッチをオンし、
前記第1制御部及び前記第2制御部の少なくとも一方を副制御部とし、前記副制御部は、前記ブレーキ用スイッチを駆動する副駆動信号を出力し、
オンされることにより前記外部電源と前記インバータとの間を電気的に接続した状態とし、オフされることにより前記外部電源と前記インバータとの間を電気的に遮断した状態とする遮断用スイッチと、
前記インバータから前記モータに交流電圧を印加すべく前記ハイサイドスイッチ及び前記ローサイドスイッチのそれぞれを駆動する主駆動信号を出力する主制御部と、
駆動用電源から給電されることにより動作可能に構成され、前記主制御部から出力された前記主駆動信号を入力信号として前記ハイサイドスイッチ及び前記ローサイドスイッチを交互にオンする主駆動部と、
前記副制御部から出力された前記副駆動信号を入力信号として前記ブレーキ用スイッチを駆動する副駆動部と、を備え、
前記副制御部は、前記主制御部の異常を監視する機能を有しており、
前記副制御部は、前記主制御部に異常が生じていることを検知した場合、前記副駆動信号として前記ブレーキ用スイッチのオン駆動信号を前記副駆動部に対して出力することにより少なくとも2相分の前記ブレーキ用スイッチをオンするとともに、前記駆動用電源から前記主駆動部への給電を遮断することを特徴とするロボットシステム。
【請求項2】
記副制御部は、前記ロボットシステムに異常が生じていることを検知した場合、さらに、前記遮断用スイッチをオフする請求項1に記載のロボットシステム。
【請求項3】
前記第1制御部及び前記第2制御部のそれぞれは、互いに異常を監視し合う機能を有しており、
前記第1制御部は、前記第2制御部に異常が生じていることを検知した場合、少なくとも2相分の前記ブレーキ用スイッチをオンし、
前記第2制御部は、前記第1制御部に異常が生じていることを検知した場合、少なくとも2相分の前記ブレーキ用スイッチをオンする請求項1又は2に記載のロボットシステム。
【請求項4】
前記駆動用電源と前記主駆動部とを電気的に接続する電源経路上に設けられた電源用スイッチと、
前記電源経路のうち前記電源用スイッチよりも前記主駆動部側に電気的に接続され、前記電源用スイッチを介して前記駆動用電源から供給された電力を蓄積可能な蓄電素子と、を備え、
前記副制御部は、前記電源用スイッチをオフすることにより、前記駆動用電源から前記主駆動部への給電を遮断し、
前記副制御部は、前記電源用スイッチの駆動状態を検知する検知部を有しており、前記モータの駆動中に前記電源用スイッチをオンオフ駆動した場合における前記検知部の検知結果に基づいて、前記電源用スイッチの異常を診断する請求項1〜3のいずれか1項に記載のロボットシステム。
【請求項5】
前記電源経路のうち前記蓄電素子の接続箇所と前記電源用スイッチとの間に第1端が電気的に接続され、第2端がグランドに電気的に接続された抵抗体と、
前記電源経路のうち前記抵抗体の接続箇所と前記蓄電素子の接続箇所との間に設けられ、前記駆動用電源から前記主駆動部へと向かう規定方向に流れる電流の流通を許容し、前記規定方向とは逆方向の電流の流通を阻止する電源用整流素子と、を備え、
前記蓄電素子は、前記電源用スイッチ及び前記電源用整流素子を介して前記駆動用電源から供給された電力を蓄積可能なものであり、
前記検知部は、前記電源経路のうち前記電源用スイッチ及び前記電源用整流素子の間の電位を検知することにより前記電源用スイッチの駆動状態を検知する請求項に記載のロボットシステム。
【請求項6】
前記副制御部としての前記第1制御部は、前記ブレーキ用スイッチを駆動する第1副駆動信号を出力し、
前記副制御部としての前記第2制御部は、前記ブレーキ用スイッチを駆動する第2副駆動信号を出力し、
前記副駆動部は、
前記ブレーキ用スイッチのゲートに電気的に接続され、前記第1制御部から出力された前記第1副駆動信号を入力信号として前記ゲートの充放電処理を行うことにより、前記ブレーキ用スイッチを駆動する第1副駆動部と、
前記ゲートに電気的に接続され、前記第2制御部から出力された前記第2副駆動信号を入力信号として前記ゲートの充放電処理を行うことにより、前記ブレーキ用スイッチを駆動する第2副駆動部と、であり
前記第1制御部及び前記第2制御部のそれぞれは、互いに異常を監視し合う機能を有しており、
前記第1制御部は、前記第2制御部に異常が生じていることを検知した場合、前記第1副駆動信号として前記ブレーキ用スイッチのオン駆動信号を前記第1副駆動部に対して出力し、
前記第1副駆動部は、前記オン駆動信号を入力信号として前記ゲートの充電処理を行うことにより、少なくとも2相分の前記ブレーキ用スイッチをオンし、
前記第2制御部は、前記第1制御部に異常が生じていることを検知した場合、前記第2副駆動信号として前記ブレーキ用スイッチのオン駆動信号を前記第2副駆動部に対して出力し、
前記第2副駆動部は、前記オン駆動信号を入力信号として前記ゲートの充電処理を行うことにより、少なくとも2相分の前記ブレーキ用スイッチをオンし、
前記第1副駆動部と前記ゲートとを電気的に接続する経路上に設けられ、前記第1副駆動部から前記ゲートへと向かう第1方向に流れる電流の流通を許容し、前記第1方向とは逆方向に流れる電流の流通を阻止する第1整流素子と、
前記第2副駆動部と前記ゲートとを電気的に接続する経路上に設けられ、前記第2副駆動部から前記ゲートへと向かう第2方向に流れる電流の流通を許容し、前記第2方向とは逆方向に流れる電流の流通を阻止する第2整流素子と、を備える請求項1〜のいずれか1項に記載のロボットシステム。
【請求項7】
前記副制御部としての前記第1制御部は、前記ブレーキ用スイッチのオンを指示する論理Hのオン駆動信号及び前記ブレーキ用スイッチのオフを指示する論理Lのオフ駆動信号のいずれかである第1副駆動信号を出力し、
前記副制御部としての前記第2制御部は、前記ブレーキ用スイッチのオンを指示する論理Hのオン駆動信号及び前記ブレーキ用スイッチのオフを指示する論理Lのオフ駆動信号のいずれかである第2副駆動信号を出力し、
前記第1制御部に電気的に接続され、前記第1制御部から出力された前記第1副駆動信号を伝達する第1信号経路と、
前記第2制御部に電気的に接続され、前記第2制御部から出力された前記第2副駆動信号を伝達する第2信号経路と、
前記第1信号経路及び前記第2信号経路のそれぞれに電気的に接続され、前記第1信号経路及び前記第2信号経路のそれぞれから伝達された信号を伝達する共通信号経路と、を備え、
前記副駆動部は、
前記ブレーキ用スイッチのゲートに電気的に接続され、前記共通信号経路を介して伝達された前記オン駆動信号又は前記オフ駆動信号を入力信号として前記ゲートの充放電処理を行うことにより、前記ブレーキ用スイッチを駆動する第1副駆動部と、
前記ゲートに電気的に接続され、前記共通信号経路を介して伝達された前記オン駆動信号又は前記オフ駆動信号を入力信号として前記ゲートの充放電処理を行うことにより、前記ブレーキ用スイッチを駆動する第2副駆動部と、であり
前記第1制御部及び前記第2制御部のそれぞれは、互いに異常を監視し合う機能を有しており、
前記第1制御部は、前記第2制御部に異常が生じていることを検知した場合、前記第1副駆動信号として前記オン駆動信号を出力し、
前記第1副駆動部は、前記オン駆動信号を入力信号として前記ゲートの充電処理を行うことにより、少なくとも2相分の前記ブレーキ用スイッチをオンし、
前記第2制御部は、前記第1制御部に異常が生じていることを検知した場合、前記第2副駆動信号として前記オン駆動信号を出力し、
前記第2副駆動部は、前記オン駆動信号を入力信号として前記ゲートの充電処理を行うことにより、少なくとも2相分の前記ブレーキ用スイッチをオンし、
前記第1信号経路のうち前記共通信号経路の接続箇所よりも前記第1制御部側に設けられ、前記第1制御部から前記共通信号経路へと向かう第1方向に流れる電流の流通を許容し、前記第1方向とは逆方向に流れる電流の流通を阻止する第1整流素子と、
前記第2信号経路のうち前記共通信号経路の接続箇所よりも前記第2制御部側に設けられ、前記第2制御部から前記共通信号経路へと向かう第2方向に流れる電流の流通を許容し、前記第2方向とは逆方向に流れる電流の流通を阻止する第2整流素子と、を備える請求項1〜のいずれか1項に記載のロボットシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば下記特許文献1に見られるように、ロボットの各回転軸を駆動する3相モータと、モータを駆動すべく、外部電源を電力供給源としてモータのステータ巻線に交流電圧を印加する3相インバータとを備えるロボットシステムが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−87874号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ロボットシステムとしては、このシステムに異常が生じた場合においてロボットの停止を保証するために、図9に示すように、外部電源100とインバータ101との間に設けられた2つのコンタクタを備えるものもある。詳しくは、第1,第2コンタクタ102a,102bは、外部電源100と整流器103との間に設けられている。整流器103は、外部電源100から出力された交流電圧を直流電圧に変換してインバータ101に印加し、インバータ101は、印加された直流電圧を交流電圧に変換してモータ104に印加する。また、第1コンタクタ102aは、第1制御部105aにより駆動され、第2コンタクタ102bは、第2制御部105bにより駆動される。この構成により、ロボットを停止させる手段を2重化し、ロボットシステムの異常時におけるロボットの停止を保証している。
【0005】
ここで、ロボットシステムに異常時にコンタクタがオフされる構成を採用する場合、外部電源からモータへの電力供給が遮断されるものの、モータが惰性で回転し続けるいわゆるフリーラン状態が発生する。この場合、ロボットシステムの異常時においてロボットを迅速に停止させることができなくなるといった問題が生じる。
【0006】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、ロボットシステムの異常時におけるロボットの停止手段を2重化しつつ、モータのフリーラン状態の発生を回避できるロボットシステムを提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、ステータ巻線を有し、ロボットの各回転軸を駆動する3相モータと、ハイサイドスイッチ及びローサイドスイッチの直列接続体を有し、前記ハイサイドスイッチ及び前記ローサイドスイッチが交互にオンされることにより、外部電源を電力供給源として前記ステータ巻線に交流電圧を印加する3相インバータと、を備えるロボットシステムにおいて、前記ハイサイドスイッチ及び前記ローサイドスイッチの各相の接続点には、前記ステータ巻線が接続されており、前記ハイサイドスイッチ及び前記ローサイドスイッチのうち一方をブレーキ用スイッチとし、前記ブレーキ用スイッチの駆動制御を行う第1制御部及び第2制御部を備え、前記第1制御部及び前記第2制御部のそれぞれは、前記ロボットシステムを監視する機能を有しており、前記第1制御部及び前記第2制御部のそれぞれは、前記ロボットシステムに異常が生じていることを検知した場合、少なくとも2相分の前記ブレーキ用スイッチをオンすることを特徴とする。
【0008】
上記発明では、3相インバータを構成するハイサイドスイッチ及びローサイドスイッチのうち一方をブレーキ用スイッチとし、第1制御部及び第2制御部のそれぞれによりブレーキ用スイッチを駆動できる構成とされている。第1制御部及び第2制御部のそれぞれは、ロボットシステムの異常を監視する機能を有している。
【0009】
そして上記発明では、ロボットシステムに異常が生じていることを第1制御部及び第2制御部の少なくとも一方が検知した場合、異常を検知した制御部により少なくとも2相分のブレーキスイッチがオンされる。これにより、ステータ巻線及びブレーキ用スイッチを含む閉回路が形成され、モータにダイナミックブレーキをかけてモータを減速停止させることができる。したがって、ロボットシステムの異常時におけるモータのフリーラン状態の発生を回避することができ、ロボットを迅速に停止させることができる。さらに上記発明によれば、第1制御部及び第2制御部のそれぞれがブレーキ用スイッチをオンする構成により、ロボットを停止させる手段を2重化することができる。
【0010】
第2の発明は、オンされることにより前記外部電源と前記インバータとの間を電気的に接続した状態とし、オフされることにより前記外部電源と前記インバータとの間を電気的に遮断した状態とする遮断用スイッチを備え、前記第1制御部及び前記第2制御部の少なくとも一方を副制御部とし、前記副制御部は、前記ロボットシステムに異常が生じていることを検知した場合、さらに、前記遮断用スイッチをオフすることを特徴とする。
【0011】
上記発明では、第1制御部及び第2制御部の少なくとも一方である副制御部により、遮断用スイッチを駆動できる構成とされている。そして上記発明では、ロボットシステムに異常が生じていることを副制御部が検知した場合、副制御部により、ブレーキ用スイッチがオンされ、さらに遮断用スイッチがオフされる。このため、外部電源からインバータへと供給される電力が遮断された状態でモータにダイナミックブレーキかけられる。これにより、遮断用スイッチがオフされてからモータの回転(ロボットの駆動)が停止されるまでの時間を短縮できる。
【0012】
第3の発明は、前記第1制御部及び前記第2制御部のそれぞれは、互いに異常を監視し合う機能を有しており、前記第1制御部は、前記第2制御部に異常が生じていることを検知した場合、少なくとも2相分の前記ブレーキ用スイッチをオンし、前記第2制御部は、前記第1制御部に異常が生じていることを検知した場合、少なくとも2相分の前記ブレーキ用スイッチをオンすることを特徴とする。
【0013】
上記発明では、第1制御部及び第2制御部のいずれに異常が生じた場合であっても、モータにダイナミックブレーキをかけることができ、モータを減速停止させることができる。
【0014】
第4の発明は、前記第1制御部及び前記第2制御部の少なくとも一方を副制御部とし、前記副制御部は、前記ブレーキ用スイッチを駆動する副駆動信号を出力し、オンされることにより前記外部電源と前記インバータとの間を電気的に接続した状態とし、オフされることにより前記外部電源と前記インバータとの間を電気的に遮断した状態とする遮断用スイッチと、前記インバータから前記モータに交流電圧を印加すべく前記ハイサイドスイッチ及び前記ローサイドスイッチのそれぞれを駆動する主駆動信号を出力する主制御部と、駆動用電源から給電されることにより動作可能に構成され、前記主制御部から出力された前記主駆動信号を入力信号として前記ハイサイドスイッチ及び前記ローサイドスイッチを交互にオンする主駆動部と、前記副制御部から出力された前記副駆動信号を入力信号として前記ブレーキ用スイッチを駆動する副駆動部と、を備え、前記副制御部は、前記主制御部の異常を監視する機能を有しており、前記副制御部は、前記主制御部に異常が生じていることを検知した場合、前記副駆動信号として前記ブレーキ用スイッチのオン駆動信号を前記副駆動部に対して出力することにより少なくとも2相分の前記ブレーキ用スイッチをオンするとともに、前記駆動用電源から前記主駆動部への給電を遮断することを特徴とする。
【0015】
上記発明では、主制御部からの主駆動信号が主駆動部に入力されることにより、ハイサイドスイッチ及びローサイドスイッチが交互にオンされる。これにより、モータに交流電圧が印加され、モータが駆動される。ここで、主制御部に異常が生じると、主制御部の誤動作により、遮断用スイッチがオンされた状態で同相のハイサイドスイッチ及びローサイドスイッチがオンされ得る。この場合、ハイサイドスイッチ及びローサイドスイッチに短絡電流が流れ、これらスイッチの信頼性が低下するおそれがある。
【0016】
そこで上記発明は、第1制御部及び第2制御部の少なくとも一方を副制御部とし、主駆動部に加え、副制御部から出力された副駆動信号を入力信号としてブレーキ用スイッチを駆動する副駆動部を備えている。そして、副制御部が、主制御部の異常を監視する機能を有している。主制御部に異常が生じていることを副制御部が検知した場合、副駆動信号としてブレーキ用スイッチのオン駆動信号が副制御部から副駆動部に対して出力されることにより、少なくとも2相分のブレーキスイッチがオフされ、ダイナミックブレーキがかけられる。
【0017】
また、主制御部に異常が生じていることを副制御部が検知した場合、副制御部により駆動用電源から主駆動部への給電が遮断される。これにより、主駆動部の動作を停止させることができる。したがって、主制御部に異常が生じている場合において、主制御部の誤動作によりハイサイドスイッチ及びローサイドスイッチに短絡電流が流れることを回避できる。
【0018】
第5の発明は、前記駆動用電源と前記主駆動部とを電気的に接続する電源経路上に設けられた電源用スイッチと、前記電源経路のうち前記電源用スイッチよりも前記主駆動部側に電気的に接続され、前記電源用スイッチを介して前記駆動用電源から供給された電力を蓄積可能な蓄電素子と、を備え、前記副制御部は、前記電源用スイッチをオフすることにより、前記駆動用電源から前記主駆動部への給電を遮断し、前記副制御部は、前記電源用スイッチの駆動状態を検知する検知部を有しており、前記モータの駆動中に前記電源用スイッチをオンオフ駆動した場合における前記検知部の検知結果に基づいて、前記電源用スイッチの異常を診断することを特徴とする。
【0019】
上記発明では、主制御部に異常が生じていることを副制御部が検知した場合、副制御部により電源用スイッチがオフされることで、駆動用電源から主駆動部への給電が遮断される。ここで、電源用スイッチに異常が生じると、主制御部に異常が生じた場合に駆動用電源から主駆動部への給電を遮断できなくなるおそれがある。
【0020】
そこで上記発明では、副制御部が、電源用スイッチの駆動状態を検知する検知部を有している。そして副制御部により、電源用スイッチがオンオフ駆動された場合における検知部の検知結果に基づいて、電源用スイッチの異常を診断できる。
【0021】
さらに上記発明は、駆動用電源と主駆動部とを電気的に接続する電源経路のうち電源用スイッチよりも主駆動部側に電気的に接続され、電源用スイッチを介して駆動用電源から供給された電力を蓄積可能な蓄電素子を備えている。このため、診断のために電源用スイッチがオフされて駆動用電源と主駆動部との間が一時的に遮断された場合であっても、蓄電素子により主駆動部の電源を確保できる。これにより、電源用スイッチの異常を診断するために電源用スイッチのオンオフ駆動をモータの駆動中に行うことができる。したがって、電源用スイッチの診断の機会を増やすことができる。
【0022】
第6の発明は、前記電源経路のうち前記蓄電素子の接続箇所と前記電源用スイッチとの間に第1端が電気的に接続され、第2端がグランドに電気的に接続された抵抗体と、前記電源経路のうち前記抵抗体の接続箇所と前記蓄電素子の接続箇所との間に設けられ、前記駆動用電源から前記主駆動部へと向かう規定方向に流れる電流の流通を許容し、前記規定方向とは逆方向の電流の流通を阻止する電源用整流素子と、を備え、前記蓄電素子は、前記電源用スイッチ及び前記電源用整流素子を介して前記駆動用電源から供給された電力を蓄積可能なものであり、前記検知部は、前記電源経路のうち前記電源用スイッチ及び前記電源用整流素子の間の電位を検知することにより前記電源用スイッチの駆動状態を検知することを特徴とする。
【0023】
上記発明は、駆動用電源と主駆動部とを接続する電源経路のうち、蓄電素子の接続箇所と電源用スイッチとの間に第1端が電気的に接続され、第2端がグランドに電気的に接続された抵抗体を備えている。このため、電源用スイッチのオンオフに応じて、電源経路のうち電源用スイッチ及び主駆動部の間の電位が変化する。したがって、検知部により、電源経路のうち電源用スイッチ及び主駆動部の間の電位を検知することで電源用スイッチの駆動状態を検知できる。
【0024】
ここで、電源用スイッチのオンオフに応じて電源用スイッチ及び主駆動部の間の電位変化を生じさせるために電源経路とグランドとを抵抗体で接続しているものの、蓄電素子に蓄積された電荷が抵抗体を介してグランドへと流れ出て、蓄電素子に蓄積される電力が低下するおそれがある。この場合、主駆動部の駆動に要する電力が不足するおそれがある。
【0025】
そこで上記発明は、電源経路のうち抵抗体の接続箇所と蓄電素子の接続箇所との間に設けられた電源用整流素子を備えている。電源用整流素子は、駆動用電源から主駆動部へと向かう規定方向に流れる電流の流通を許容し、規定方向とは逆方向の電流の流通を阻止する。これにより、電源経路とグランドとを接続する抵抗体を介して、蓄電素子に蓄積された電荷がグランドへと流れ出て、蓄電素子に蓄積される電力が低下することを回避できる。したがって、電源用スイッチの診断時における主駆動部の電源を的確に確保できる。
【0026】
第7の発明は、前記第1制御部は、前記ブレーキ用スイッチを駆動する第1副駆動信号を出力し、前記第2制御部は、前記ブレーキ用スイッチを駆動する第2副駆動信号を出力し、前記ブレーキ用スイッチのゲートに電気的に接続され、前記第1制御部から出力された前記第1副駆動信号を入力信号として前記ゲートの充放電処理を行うことにより、前記ブレーキ用スイッチを駆動する第1副駆動部と、前記ゲートに電気的に接続され、前記第2制御部から出力された前記第2副駆動信号を入力信号として前記ゲートの充放電処理を行うことにより、前記ブレーキ用スイッチを駆動する第2副駆動部と、を備え、前記第1制御部及び前記第2制御部のそれぞれは、互いに異常を監視し合う機能を有しており、前記第1制御部は、前記第2制御部に異常が生じていることを検知した場合、さらに、前記第1副駆動信号として前記ブレーキ用スイッチのオン駆動信号を前記第1副駆動部に対して出力し、前記第1副駆動部は、前記オン駆動信号を入力信号として前記ゲートの充電処理を行うことにより、少なくとも2相分の前記ブレーキ用スイッチをオンし、前記第2制御部は、前記第1制御部に異常が生じていることを検知した場合、前記第2副駆動信号として前記ブレーキ用スイッチのオン駆動信号を前記第2副駆動部に対して出力し、前記第2副駆動部は、前記オン駆動信号を入力信号として前記ゲートの充電処理を行うことにより、少なくとも2相分の前記ブレーキ用スイッチをオンし、前記第1副駆動部と前記ゲートとを電気的に接続する経路上に設けられ、前記第1副駆動部から前記ゲートへと向かう第1方向に流れる電流の流通を許容し、前記第1方向とは逆方向に流れる電流の流通を阻止する第1整流素子と、前記第2副駆動部と前記ゲートとを電気的に接続する経路上に設けられ、前記第2副駆動部から前記ゲートへと向かう第2方向に流れる電流の流通を許容し、前記第2方向とは逆方向に流れる電流の流通を阻止する第2整流素子と、を備えることを特徴とする。
【0027】
上記発明において第1制御部及び第2制御部のそれぞれは、互いに異常を監視し合う機能を有している。この構成において、第2制御部に異常が生じていることを第1制御部が検知した場合、第1制御部から第1副駆動部へとオン駆動信号が出力される。これにより、第1副駆動部によりブレーキ用スイッチのゲートの充電処理が行われ、少なくとも2相分のブレーキ用スイッチがオンされる。その結果、ダイナミックブレーキがかけられる。
【0028】
一方、第1制御部に異常が生じていることを第2制御部が検知した場合、第2制御部から第2副駆動部へとオン駆動信号が出力される。これにより、第2副駆動部によりブレーキ用スイッチのゲートの充電処理が行われ、少なくとも2相分のブレーキ用スイッチがオンされる。その結果、ダイナミックブレーキがかけられる。
【0029】
ここで、例えば第2制御部に異常が生じていることを第1制御部が検知した場合、第1副駆動部によりブレーキ用スイッチのゲートの充電処理が行われる。この際、異常が生じている第2制御部の誤作動により、第2制御部から第2副駆動部へとオフ駆動信号が出力されることにより、第2副駆動部によりゲートの放電処理が行われる懸念がある。この場合、ブレーキ用スイッチのゲート電荷が第2副駆動部により引き抜かれ、ブレーキ用スイッチをオンさせることができなくなるおそれがある。その結果、ダイナミックブレーキをかけることができなくなるおそれがある。
【0030】
そこで上記発明では、第1副駆動部とブレーキ用スイッチのゲートとを電気的に接続する経路上に第1整流素子が設けられている。第1整流素子は、第1副駆動部からゲートへと向かう第1方向に流れる電流の流通を許容し、第1方向とは逆方向に流れる電流の流通を阻止する。また、第2副駆動部とゲートとを電気的に接続する経路上に第2整流素子が設けられている。第2整流素子は、第2副駆動部からゲートへと向かう第2方向に流れる電流の流通を許容し、第2方向とは逆方向に流れる電流の流通を阻止する。
【0031】
このため、例えば、第1制御部によってダイナミックブレーキをかけようとする場合において、第2制御部の誤作動により、第2制御部から第2副駆動部へとオフ駆動信号が出力されたときであっても、ブレーキ用スイッチのゲート電荷が第2副駆動部により引き抜かれることを第2整流素子により回避できる。これにより、ダイナミックブレーキを的確にかけることができる。
【0032】
第8の発明は、前記第1制御部は、前記ブレーキ用スイッチのオンを指示する論理Hのオン駆動信号及び前記ブレーキ用スイッチのオフを指示する論理Lのオフ駆動信号のいずれかである第1副駆動信号を出力し、前記第2制御部は、前記ブレーキ用スイッチのオンを指示する論理Hのオン駆動信号及び前記ブレーキ用スイッチのオフを指示する論理Lのオフ駆動信号のいずれかである第2副駆動信号を出力し、前記第1制御部に電気的に接続され、前記第1制御部から出力された前記第1副駆動信号を伝達する第1信号経路と、前記第2制御部に電気的に接続され、前記第2制御部から出力された前記第2副駆動信号を伝達する第2信号経路と、前記第1信号経路及び前記第2信号経路のそれぞれに電気的に接続され、前記第1信号経路及び前記第2信号経路のそれぞれから伝達された信号を伝達する共通信号経路と、前記ブレーキ用スイッチのゲートに電気的に接続され、前記共通信号経路を介して伝達された前記オン駆動信号又は前記オフ駆動信号を入力信号として前記ゲートの充放電処理を行うことにより、前記ブレーキ用スイッチを駆動する第1副駆動部と、前記ゲートに電気的に接続され、前記共通信号経路を介して伝達された前記オン駆動信号又は前記オフ駆動信号を入力信号として前記ゲートの充放電処理を行うことにより、前記ブレーキ用スイッチを駆動する第2副駆動部と、を備え、前記第1制御部及び前記第2制御部のそれぞれは、互いに異常を監視し合う機能を有しており、前記第1制御部は、前記第2制御部に異常が生じていることを検知した場合、さらに、前記第1副駆動信号として前記オン駆動信号を出力し、前記第1副駆動部は、前記オン駆動信号を入力信号として前記ゲートの充電処理を行うことにより、少なくとも2相分の前記ブレーキ用スイッチをオンし、前記第2制御部は、前記第1制御部に異常が生じていることを検知した場合、前記第2副駆動信号として前記オン駆動信号を出力し、前記第2副駆動部は、前記オン駆動信号を入力信号として前記ゲートの充電処理を行うことにより、少なくとも2相分の前記ブレーキ用スイッチをオンし、前記第1信号経路のうち前記共通信号経路の接続箇所よりも前記第1制御部側に設けられ、前記第1制御部から前記共通信号経路へと向かう第1方向に流れる電流の流通を許容し、前記第1方向とは逆方向に流れる電流の流通を阻止する第1整流素子と、前記第2信号経路のうち前記共通信号経路の接続箇所よりも前記第2制御部側に設けられ、前記第2制御部から前記共通信号経路へと向かう第2方向に流れる電流の流通を許容し、前記第2方向とは逆方向に流れる電流の流通を阻止する第2整流素子と、を備えることを特徴とする。
【0033】
上記発明において第1制御部及び第2制御部のそれぞれは、互いに異常を監視し合う機能を有している。この構成において、第2制御部に異常が生じていることを第1制御部が検知した場合、第1制御部から第1信号経路及び共通信号経路を介して、第1副駆動部及び第2副駆動部のそれぞれへと論理Hのオン駆動信号が出力される。これにより、第1副駆動部及び第2副駆動部のそれぞれによりブレーキ用スイッチのゲートの充電処理が行われ、少なくとも2相分のブレーキ用スイッチがオンされる。その結果、ダイナミックブレーキがかけられる。
【0034】
一方、第1制御部に異常が生じていることを第2制御部が検知した場合、第2制御部から第2信号経路及び共通信号経路を介して、第1副駆動部及び第2副駆動部のそれぞれへと論理Hのオン駆動信号が出力される。これにより、第1副駆動部及び第2副駆動部のそれぞれによりブレーキ用スイッチのゲートの充電処理が行われ、少なくとも2相分のブレーキ用スイッチがオンされる。その結果、ダイナミックブレーキがかけられる。
【0035】
このように、共通信号経路を設ける構成により、ブレーキ用スイッチのオンを第1副駆動部及び第2副駆動部の双方に実施させることができ、ダイナミックブレーキを的確にかける。
【0036】
ここで、例えば第2制御部に異常が生じていることを第1制御部が検知した場合、第1制御部から論理Hのオン駆動信号が出力される。この際、異常が生じている第2制御部の誤作動により、第1制御部から出力された論理Hのオン駆動信号が、第1信号経路、共通信号経路及び第2信号経路を介して第2制御部へと引き込まれることがある。この場合、第1副駆動部及び第2副駆動部のそれぞれにオン駆動信号が伝達されず、ブレーキ用スイッチをオンさせることができなくなるおそれがある。その結果、ダイナミックブレーキをかけることができなくなるおそれがある。
【0037】
そこで上記発明では、第1信号経路のうち共通信号経路の接続箇所よりも第1制御部側に第1整流素子が設けられている。第1整流素子は、第1制御部から共通信号経路へと向かう第1方向に流れる電流の流通を許容し、第1方向とは逆方向に流れる電流の流通を阻止する。また、第2信号経路のうち共通信号経路の接続箇所よりも第2制御部側に第2整流素子が設けられている。第2整流素子は、第2制御部から共通信号経路へと向かう第2方向に流れる電流の流通を許容し、第2方向とは逆方向に流れる電流の流通を阻止する。
【0038】
このため、例えば、第1制御部から論理Hのオン駆動信号が出力される場合において、第2制御部の誤作動により、オン駆動信号が第2制御部に引き込まれることを第2整流素子により回避できる。これにより、ダイナミックブレーキを的確にかけることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】第1実施形態に係るロボットシステムの概要を示す図。
図2】ロボットシステムの電気的構成を示す図。
図3】ハイサイド,ローサイドスイッチの駆動に係る回路を示す図。
図4】第1制御部によって実行される処理の手順を示すフローチャート。
図5】第2制御部によって実行される処理の手順を示すフローチャート。
図6】第1制御部に異常が生じた場合における第2制御部の処理を示すタイムチャート。
図7】主制御部に異常が生じた場合における第1制御部の処理を示すタイムチャート。
図8】第2実施形態に係るハイサイド,ローサイドスイッチの駆動に係る回路を示す図。
図9】関連技術に係るロボットシステムの電気的構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0040】
(第1実施形態)
以下、ロボットシステムを具体化した第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。本実施形態に係るロボットは、例えば産業用ロボットとして機械組立工場などの組立システムにて用いられる。
【0041】
まず、図1を用いて、本実施形態に係るロボットシステムの概要について説明する。
【0042】
図1に示すように、ロボットシステムを構成するロボット10は、複数の回転部と、各回転部を互いに連結する関節とを備えている。本実施形態に係るロボット10は、6軸の垂直多関節型ロボットとして構成されている。
【0043】
ロボット10は、床等に固定される固定部11と、その固定部11の上方に設けられる第1回転部12とを有している。ロボット10のアームは、第1回転部12に加え、下アーム13、上アーム14、手首部15、及びハンド部16を有している。第1回転部12は、アームの両端部のうち、アーム先端部とは反対側の根元部に相当する。第1回転部12は、鉛直方向に延びる第1軸線J1を回転中心として水平方向に回転可能になっている。
【0044】
第1回転部12には、水平方向に延びる第2軸線J2を回転中心として、時計回り方向又は反時計回り方向に回転可能に第2回転部としての下アーム13の下端部が連結されている。下アーム13の上端部には、上アーム14が、水平方向に延びる第3軸線J3を回転中心として、時計回り方向又は反時計回り方向に回転可能に連結されている。上アーム14は、基端側(回転の際に第3軸線J3を回転中心とする関節側)と先端側とで2つのアーム部に分割されて構成されており、基端側は第3回転部としての第1上アーム14A(第3回転部)、先端側は第4回転部としての第2上アーム14B(第4回転部)となっている。第2上アーム14Bは、上アーム14の長手方向に延びる第4軸線J4を回転中心として、第1上アーム14Aに対してねじり方向に回転可能になっている。
【0045】
第2上アーム14Bの先端部には、第5回転部としての手首部15が設けられている。手首部15は、水平方向に延びる第5軸線J5を回転中心として、第2上アーム14Bに対して回転可能になっている。手首部15の先端部には、ワークやツール等を取り付けるための第6回転部としてのハンド部16が設けられている。ハンド部16は、その中心線である第6軸線J6を回転中心として、ねじり方向に回転可能になっている。なお、ハンド部16の中心点16aであるTCP(Tool Center Point)が制御点として設定されている。
【0046】
ロボット10の各回転部は、それぞれに対応して設けられるモータ43(図2参照)により駆動される。モータは、正逆両方向の回転が可能であり、モータ43の駆動により原点位置を基準として各回転部が駆動される。
【0047】
ロボットシステムは、さらに、ロボット10を制御するコントローラ20と、コントローラ20に電気的に接続されたティーチングペンダント30とを備えている。ティーチングペンダント30は、CPU、ROM、及びRAMを含むマイクロコンピュータ、各種の手動操作キー、並びにディスプレイ等を備えている。ペンダント30は、コントローラ20と通信可能となっている。オペレータ(使用者)は、このペンダント30を手動操作して、ロボット10の動作プログラムの作成、修正、登録、各種パラメータの設定を行うことができる。動作プログラムの修正等を行うティーチングでは、作業において制御点であるTCPが通過する教示点を教示する。そして、オペレータは、コントローラ20を介して、ティーチングされた動作プログラムに基づきロボット10を動作させることができる。
【0048】
続いて、図2を用いて、ロボットシステムの電気的構成について説明する。
【0049】
コントローラ20は、外部電源40(商用電源)から出力された交流電圧を直流電圧に変換する整流器42と、整流器42から出力される直流電圧を平滑化する平滑コンデンサ43とを備えている。コントローラ20は、さらに、整流器42から出力された直流電圧を交流電圧に変換し、モータ43の各ステータ巻線43U,43V,43Wに印加する3相インバータ44を備えている。モータ43及びインバータ44は、ロボット10の各回転部のそれぞれに対応して個別に設けられている。
【0050】
インバータ44は、ハイサイドスイッチSWHとローサイドスイッチSWLとの直列接続体を3組備えている。U相のハイサイド,ローサイドスイッチSWH,SWLの接続点には、U相のステータ巻線43Uの第1端が接続されている。V相のハイサイド,ローサイドスイッチSWH,SWLの接続点には、V相のステータ巻線43Vの第1端が接続されている。W相のハイサイド,ローサイドスイッチSWH,SWLの接続点には、W相のステータ巻線43Wの第1端が接続されている。各ステータ巻線43U,43V,43Wの第2端は、互いに中性点で接続されている。ちなみに本実施形態では、各スイッチSWH,SWLとして、電圧制御形の半導体スイッチング素子を用いており、より具体的には、IGBTを用いている。そして、各スイッチSWH,SWLには、各フリーホイールダイオードDH,DLが逆並列に接続されている。
【0051】
コントローラ20は、外部電源40と平滑コンデンサ43とを接続する電気経路上に設けられた遮断用スイッチとしてのコンタクタ45(電磁開閉器)を備えている。コンタクタ45は、オンされることにより外部電源40と整流器42との間を電気的に接続した状態とし、オフされることにより外部電源40と整流器42との間を電気的に遮断した状態とする。本実施形態において、コンタクタ45は、自身の異常の有無を診断するバックチェック機能を有している。
【0052】
コントローラ20は、ロボット10を駆動させるためのモータ制御を行う主制御部50を備えている。主制御部50は、マイクロプロセッサを主体として構成されている。主制御部50は、各回転軸に対応して設けられるモータ43の制御量(例えば回転速度)をその指令値に制御すべく、ハイサイド,ローサイドスイッチSWH,SWLを駆動する主駆動信号であるハイサイド,ローサイド駆動信号SigH,SigLを出力する。本実施形態において、各駆動信号SigH,SigLは、論理Hによってオン駆動信号を示し、論理Lによってオフ駆動信号を示す。
【0053】
コントローラ20は、主制御部50とは独立した制御部である第1制御部51及び第2制御部52を備えている。第1制御部51及び第2制御部52のそれぞれは、互いに異常を監視し合う機能を有している。また、第1制御部51及び第2制御部52のそれぞれは、主制御部50の異常を監視する副制御部に相当する。第1制御部51は、マイクロプロセッサを主体として構成され、コンタクタ45を駆動対象とする。なお、第1制御部51は、コンタクタ45のバックチェック機能により、コンタクタ45の異常の有無を把握する。
【0054】
第2制御部52は、第1制御部51及び第2制御部52のいずれかに異常が生じた場合に備えてロボット10を停止させる構成を2重化するために、第1制御部51とともにロボットシステムに備えられている。以下、図3図5を用いて、ロボット10の停止を保証する構成について説明する。
【0055】
図3に、ロボット10の停止を保証する構成について説明する。なお本実施形態において、図3に示す構成のうち、主制御部50、第1制御部51及び第2制御部52以外の構成については、3相のそれぞれに対応して個別に設けられている。
【0056】
ハイサイドスイッチSWHのゲートには、主駆動部としてのハイサイドドライバDrHが接続されている。ハイサイドドライバDrHは、ハイサイド駆動用電源60を電力供給源として動作可能に構成されている。ハイサイドドライバDrHは、主制御部50からハイサイド駆動信号SigHとしてオン駆動信号が入力された場合、ハイサイドスイッチSWHのゲートの充電処理を行うことにより、ハイサイドスイッチSWHをオンする。一方、ハイサイドドライバDrHは、主制御部50からハイサイド駆動信号SigHとしてオフ駆動信号が入力された場合、ゲートの放電処理を行うことによりハイサイドスイッチSWHをオフする。
【0057】
ローサイドスイッチSWLのゲートには、主駆動部としてのローサイドドライバDrLが接続されている。ローサイドドライバDrLは、ローサイド駆動用電源70を電力供給源として動作可能に構成されている。ローサイドドライバDrLは、主制御部50からローサイド駆動信号SigLとしてオン駆動信号が入力された場合、ローサイドスイッチSWLのゲートの充電処理を行うことにより、ローサイドスイッチSWLをオンする。一方、ローサイドドライバDrLは、主制御部50からローサイド駆動信号SigLとしてオフ駆動信号が入力された場合、ゲートの放電処理を行うことによりローサイドスイッチSWLをオフする。
【0058】
ハイサイドドライバDrHには、ハイサイド電源回路61を介してハイサイド駆動用電源60から電力が供給される。ハイサイド電源回路61は、ハイサイド駆動用電源60とハイサイドドライバDrHとを接続するハイサイド電源経路上において、第1電源用スイッチ62と第2電源用スイッチ63との直列接続体を備えている。本実施形態では、各電源用スイッチ62,63として、半導体スイッチ(具体的にはNチャネルMOSFET)を用いている。第1電源用スイッチ62のドレインにはハイサイド駆動用電源60が接続され、第1電源用スイッチ62のソースには第2電源用スイッチ63のドレインが接続されている。第2電源用スイッチ63は、第2制御部52によってオンオフされ、第1電源用スイッチ62は、第1制御部51によってオンオフされる。
【0059】
第2電源用スイッチ63のソースには、電源用整流素子としてのハイサイドダイオード64のアノードが接続されている。ハイサイドダイオード64のカソードには、ハイサイドドライバDrHが接続されている。
【0060】
第2電源用スイッチ63とハイサイドダイオード64との接続点には、ハイサイド抵抗体65を介してハイサイドスイッチSWHのエミッタ(グランド)が接続されている。ハイサイド抵抗体65は、第1,第2電源用スイッチ62,63のオンオフに応じて、第2電源用スイッチ63及びハイサイドダイオード64の接続点における電位(以下「ハイサイド診断用電位」という。)の変化を生じさせるためのものである。ハイサイドダイオード64のアノードには、蓄電素子としてのハイサイドコンデンサ66を介してハイサイドスイッチSWHのエミッタが接続されている。
【0061】
ハイサイドコンデンサ66は、第1,第2電源用スイッチ62,63のいずれかが一時的にオフされた場合において、ハイサイドドライバDrHの電源となる。ハイサイドダイオード64は、ハイサイドコンデンサ66に蓄積された電荷がハイサイド抵抗体65を介してエミッタへと流れ出て、ハイサイドコンデンサ66に蓄積される電力が低下するのを回避するためのものである。
【0062】
第2電源用スイッチ63及びハイサイドダイオード64の接続点には、ハイサイドバッファ回路67を介して第2制御部52が接続されている。第2制御部52は、ハイサイドバッファ回路67を介して入力されるハイサイド診断用電位に基づいて、第2電源用スイッチ63の異常の有無を診断する。詳しくは、第2制御部52は、第1電源用スイッチ62がオン指示されている状況下において、第2電源用スイッチ63に対してオンを指示しているにもかかわらず、ハイサイド診断用電位が0(グランド電位)であると判定した場合、第2電源用スイッチ63のオープン故障であると判定する。一方、第2制御部52は、第1電源用スイッチ62がオン指示されている状況下において、第2電源用スイッチ63に対してオフを指示しているにもかかわらず、ハイサイド診断用電位が第1規定値(>0)以上であると判定した場合、第2電源用スイッチ63のクローズ故障であると判定する。なお上記第1規定値は、第1,第2電源用スイッチ62,63がオンされる場合にハイサイド抵抗体65に流れる電流によりこの抵抗体65に生じる電位差に基づいて設定される。
【0063】
第2電源用スイッチ63及びハイサイドダイオード64の接続点には、さらに、ハイサイドバッファ回路67を介して第1制御部51が接続されている。第1制御部51は、ハイサイドバッファ回路67を介して入力されるハイサイド診断用電位に基づいて、第1電源用スイッチ62の異常の有無を診断する。詳しくは、第1制御部51は、第2電源用スイッチ63がオン指示されている状況下において、第1電源用スイッチ62に対してオンを指示しているにもかかわらず、ハイサイド診断用電位が0であると判定した場合、第1電源用スイッチ62のオープン故障であると判定する。一方、第1制御部51は、第2電源用スイッチ63がオン指示されている状況下において、第1電源用スイッチ62に対してオフを指示しているにもかかわらず、ハイサイド診断用電位が上記第1規定値以上であると判定した場合、第1電源用スイッチ62のクローズ故障であると判定する。
【0064】
ローサイドドライバDrLには、ローサイド電源回路71を介してローサイド駆動用電源70から電力が供給される。ローサイド電源回路71は、ハイサイド電源回路61と同様に、第3電源用スイッチ72、第4電源用スイッチ73、ローサイドダイオード74、ローサイド抵抗体75、ローサイドコンデンサ76、及びローサイドバッファ回路77を備えている。第3電源用スイッチ72は、第2制御部52によってオンオフされ、第4電源用スイッチ73は、第1制御部51によってオンオフされる。ローサイド抵抗体75の一端と、ローサイドコンデンサ76の一端とには、ローサイドスイッチSWLのエミッタ(グランド)が接続されている。
【0065】
第4電源用スイッチ73及びローサイドダイオード74の接続点には、ローサイドバッファ回路77を介して第1制御部51が接続されている。第4電源用スイッチ73及びローサイドダイオード74の接続点における電位をローサイド診断用電位とすると、第1制御部51は、ローサイドバッファ回路77を介して入力されるローサイド診断用電位に基づいて、第4電源用スイッチ73の異常の有無を診断する。詳しくは、第1制御部51は、第3電源用スイッチ72がオン指示されている状況下において、第4電源用スイッチ73に対してオンを指示しているにもかかわらず、ローサイド診断用電位が0であると判定した場合、第4電源用スイッチ73のオープン故障であると判定する。一方、第1制御部51は、第3電源用スイッチ72がオン指示されている状況下において、第4電源用スイッチ73に対してオフを指示しているにもかかわらず、ローサイド診断用電位が第2規定値(>0)以上であると判定した場合、第4電源用スイッチ73のクローズ故障であると判定する。なお上記第2規定値は、第3,第4電源用スイッチ72,73がオンされる場合にローサイド抵抗体75に流れる電流によりこの抵抗体75に生じる電位差に基づいて設定される。
【0066】
第4電源用スイッチ73及びローサイドダイオード74の接続点には、さらに、ローサイドバッファ回路77を介して第2制御部52が接続されている。第2制御部52は、ローサイド診断用電位に基づいて、第3電源用スイッチ72の異常の有無を診断する。詳しくは、第2制御部52は、第4電源用スイッチ73がオン指示されている状況下において、第3電源用スイッチ72に対してオンを指示しているにもかかわらず、ローサイド診断用電位が0であると判定した場合、第3電源用スイッチ72のオープン故障であると判定する。一方、第2制御部52は、第4電源用スイッチ73がオン指示されている状況下において、第3電源用スイッチ72に対してオフを指示しているにもかかわらず、ローサイド診断用電位が上記第2規定値以上であると判定した場合、第3電源用スイッチ72のクローズ故障であると判定する。ちなみに、第1制御部51及び第2制御部52による上述した診断処理は、例えば、一定の周期毎に実行すればよい。
【0067】
本実施形態において、ローサイドスイッチSWLは、副駆動部としての第1サブドライバDr1及び第2サブドライバDr2によって駆動可能とされている。詳しくは、ローサイドスイッチSWLのゲートには、第1整流素子としての第1ダイオード80のカソード側が接続され、第1ダイオード80のアノード側には第1サブドライバDr1が接続されている。第1サブドライバDr1は、ローサイド駆動用電源70を電力供給源として動作可能に構成されている。第1サブドライバDr1は、第1制御部51から第1副駆動信号Sig1として論理Hのオン駆動信号が入力された場合、ローサイドスイッチSWLのゲートの充電処理を行うことにより、ローサイドスイッチSWLをオンする。一方、第1サブドライバDr1は、第1制御部51から第1副駆動信号Sig1として論理Lのオフ駆動信号が入力された場合、ゲートの放電処理を行うことによりローサイドスイッチSWLをオフする。
【0068】
ローサイドスイッチSWLのゲートには、第2整流素子としての第2ダイオード81のカソード側が接続され、第2ダイオード81のアノード側には第2サブドライバDr2が接続されている。第2サブドライバDr2は、ローサイド駆動用電源70を電力供給源として動作可能に構成されている。第2サブドライバDr2は、第2制御部52から第2副駆動信号Sig2として論理Hのオン駆動信号が入力された場合、ゲートの充電処理を行うことによりローサイドスイッチSWLをオンする。一方、第2サブドライバDr2は、第2制御部52から第2副駆動信号Sig2として論理Lのオフ駆動信号が入力された場合、ゲートの放電処理を行うことによりローサイドスイッチSWLをオフする。
【0069】
続いて、図4を用いて、第1制御部51が行う処理について説明する。この処理は、第1制御部51によって例えば所定周期で繰り返し実行される。
【0070】
この一連の処理では、まずステップS10において、第1電源用スイッチ62及び第4電源用スイッチ73のオンを維持するとともに、第1副駆動信号Sig1をオフ駆動信号に維持する。
【0071】
続くステップS11では、第1制御部51の監視機能により、第2制御部52に異常が生じているか否かを判定する。ステップS11で異常が生じていると判定した場合には、ステップS12に進み、コンタクタ45をオフする。これにより、外部電源40からインバータ44への電力供給が遮断され、ロボット10が停止される。
【0072】
その後ステップS13では、第1副駆動信号Sig1をオン駆動信号とすることにより、インバータ44を構成する3相分のローサイドスイッチSWLを全てオンする。これにより、各ステータ巻線43U,43V,43W、ローサイドスイッチSWLを含む閉回路が形成され、ステータ巻線43U,43V,43Wの誘起電圧に起因して流れる電流を上記閉回路にて熱に変換する。その結果、ロボット10にダイナミックブレーキをかけることができる。
【0073】
一方、ステップS11において第2制御部52に異常が生じていないと判定した場合には、ステップS14に進み、主制御部50に異常が生じているか否かを判定する。ステップS14で主制御部50に異常が生じていると判定した場合には、ステップS15に進み、第1電源用スイッチ62及び第4電源用スイッチ73をオフする。これにより、ハイサイド駆動用電源60からハイサイドドライバDrHへの給電と、ローサイド駆動用電源70からローサイドドライバDrLへの給電とが遮断される。
【0074】
ステップS15の処理は、インバータ44の信頼性が低下するのを回避するためのものである。つまり、主制御部50に異常が生じると、主制御部50の誤動作により、コンタクタ45がオンされた状態で例えばU相のハイサイドスイッチSWH及びローサイドスイッチSWLがオンされ得る。この場合、ハイサイドスイッチSWH及びローサイドスイッチSWLに短絡電流が流れ、ひいてはインバータ44の信頼性が低下するおそれがある。このため、主制御部50に異常が生じていると判定された場合には、ハイサイドドライバDrH及びローサイドドライバDrLへの給電を遮断することにより、これらドライバDrH,DrLの動作を停止させる。なお、ステップS15の処理の完了後、ステップS12に進む。
【0075】
なお、第1制御部51による診断処理により電源スイッチ62,73のいずれかに異常が生じている旨診断された場合にも、ステップS12,S13の処理を行ってもよい。
【0076】
続いて、図5を用いて、第2制御部52が行う処理について説明する。この処理は、第2制御部52によって例えば所定周期で繰り返し実行される。
【0077】
この一連の処理では、まずステップS20において、第2電源用スイッチ63及び第3電源用スイッチ72のオンを維持するとともに、第2副駆動信号Sig2をオフ駆動信号に維持する。
【0078】
続くステップS21では、第2制御部52の監視機能により、第1制御部51に異常が生じているか否かを判定する。なお本実施形態では、コンタクタ45に異常が生じていると第1制御部51が判定した場合にも、第1制御部51に異常が生じている旨が第2制御部52によって検知されるものとする。
【0079】
ステップS21で異常が生じていると判定した場合には、ステップS22に進み、第2副駆動信号Sig2をオン駆動信号とすることにより、インバータ44を構成する3相分のローサイドスイッチSWLを全てオンする。これにより、ロボット10にダイナミックブレーキをかけることができる。
【0080】
一方、ステップS21において第1制御部51に異常が生じていないと判定した場合には、ステップS23に進み、主制御部50に異常が生じているか否かを判定する。ステップS23で主制御部50に異常が生じていると判定した場合には、ステップS24に進み、第2電源用スイッチ63及び第3電源用スイッチ72をオフする。これにより、ハイサイド駆動用電源60からハイサイドドライバDrHへの給電と、ローサイド駆動用電源70からローサイドドライバDrLへの給電とが遮断される。ステップS24の処理は、上記ステップS15の処理と同じ趣旨で設けられたものである。なお、ステップS24の処理の完了後、ステップS22に進む。
【0081】
なお、第2制御部52による診断処理により電源スイッチ63,72のいずれかに異常が生じている旨診断された場合にも、ステップS22の処理を行ってもよい。
【0082】
次に、図6を用いて、第1制御部51に異常が生じた場合の第2制御部52の処理について説明する。ここで、図6(a),(b)は、主制御部50から出力されるハイサイド,ローサイド駆動信号SigH,SigLの推移を示し、図6(c)は、第2制御部52から出力される第2副駆動信号Sig2の推移を示す。なお図6(a),(b)では、デットタイムの図示を省略している。
【0083】
図6に示す例では、ハイサイド駆動信号SigH及びローサイド駆動信号SigLが交互にオン駆動信号とされる状況下、時刻tAにおいて第1制御部51に異常が生じていると第2制御部52により判定される。このため、第2制御部52から出力される第2副駆動信号Sig2がオン駆動信号に切り替えられ、3相分のローサイドスイッチSWLがブレーキ用スイッチとしてオンされる。その結果、ロボット10にダイナミックブレーキがかけられ、その後ロボット10を停止させることができる。
【0084】
続いて、図7を用いて、主制御部50に異常が生じた場合の第1制御部51の処理について説明する。ここで、図7(a),(b)は、先の図6(a),(b)に対応しており、図7(c)は、第1制御部51から出力される第1副駆動信号Sig1の推移を示す。図7(d)は、コンタクタ45の駆動状態の推移を示し、図7(e)は、第1電源用スイッチ62及び第4電源用スイッチ73の駆動状態の推移を示す。
【0085】
図7に示す例では、ハイサイド駆動信号SigH及びローサイド駆動信号SigLが交互にオン駆動信号とされる状況下、時刻tBにおいて主制御部50に異常が生じていると第1制御部51により判定される。このため、第1制御部51によってコンタクタ45がオフに切り替えられた後、第1制御部51から出力される第1副駆動信号Sig1がオン駆動信号に切り替えられる。その結果、外部電源40からインバータ44への給電が遮断された状態でロボット10にダイナミックブレーキがかけられる。また、第1電源用スイッチ62及び第4電源用スイッチ73がオフに切り替えられる。その結果、ハイサイドドライバDrH及びローサイドドライバDrLへの給電が遮断される。
【0086】
以上詳述した本実施形態は、以下の利点を有する。
【0087】
第2制御部52に異常が生じていると第1制御部51により判定された場合、第1制御部51により3相分のローサイドスイッチSWLをオンした。一方、第1制御部51に異常が生じていると第2制御部52により判定された場合、3相分のローサイドスイッチSWLを第2制御部52によりオンした。このため、第1制御部51及び第2制御部52のいずれかに異常が生じた場合であっても、モータ43にダイナミックブレーキをかけることができる。このため、モータ43のフリーラン状態の発生を回避することができ、ロボット10を迅速に停止させることができる。さらに、第1制御部51及び第2制御部52のそれぞれが3相分のローサイドスイッチSWLをオンする構成により、図9に示すように外部電源とインバータとの間にコンタクタを2つ設けることなく、ロボット10を停止させる手段を2重化することができる。
【0088】
ローサイドスイッチSWL及びステータ巻線43U,43V,43Wといったインバータ44及びモータ43のそれぞれの構成部品を用いてダイナミックブレーキ用の閉回路を形成した。このため、ロボットシステムの構成部品のうちダイナミックブレーキ用の部品数を削減することができる。
【0089】
第2制御部52に異常が生じていると第1制御部51により判定された場合、第1制御部51により、コンタクタ45をオフした後、3相分のローサイドスイッチSWLをオンした。このため、外部電源40からインバータ44への給電が遮断された状態において、モータ43にダイナミックブレーキがかけられる。これにより、インバータ44への給電の遮断後においてモータ43のフリーラン状態の発生を回避でき、コンタクタ45がオフされてからモータ43の回転速度が0になる(ロボット10のアームが停止する)までの時間を短縮できる。
【0090】
ハイサイド,ローサイドドライバDrH,DrLに加え、第1,第2制御部51,52により駆動が指示される第1,第2サブドライバDr1,Dr2をロボットシステムに備えた。そして、第1制御部51及び第2制御部52の少なくとも一方は、主制御部50に異常が生じていると判定した場合、ダイナミックブレーキをかけるとともに、ハイサイド,ローサイド駆動用電源60,70からハイサイド,ローサイドドライバDrH,DrLへの給電を遮断した。これにより、ハイサイド,ローサイドドライバDrH,DrLの動作を停止させることができ、主制御部50の誤動作によりハイサイドスイッチSWH及びローサイドスイッチSWLに短絡電流が流れることを回避できる。
【0091】
ハイサイド駆動用電源60とハイサイドドライバDrHとを接続するハイサイド電源経路のうち、ハイサイドダイオード64よりもハイサイドドライバDrH側にハイサイドコンデンサ66を接続した。このため、第1電源用スイッチ62又は第2電源用スイッチ63の診断のためにこれらいずれかのスイッチが一時的にオフされた場合であっても、ハイサイドコンデンサ66によりハイサイドドライバDrHの電源を確保できる。これにより、第1電源用スイッチ62及び第2電源用スイッチ63の異常を診断するためにこれらスイッチ62,63のオンオフ駆動をモータ43の駆動中に行うことができる。したがって、第1電源用スイッチ62及び第2電源用スイッチ63の診断の機会を増やすことができる。なお、ローサイド側についても同様に、ローサイドコンデンサ76を設けることにより、第3電源用スイッチ72及び第4電源用スイッチ73の診断の機会を増やすことができる。
【0092】
第1サブドライバDr1とローサイドスイッチSWLのゲートとを電気的に接続する経路上に第1ダイオード80を設けた。また、第2サブドライバDr2とローサイドスイッチSWLのゲートとを電気的に接続する経路上に第2ダイオード81を設けた。このため、例えば、第2制御部52に異常が生じてかつ第1制御部51によってダイナミックブレーキをかけようとする場合において、第2制御部52の誤作動に起因してゲート電荷が第2サブドライバDr2により引き抜かれることを第2ダイオード81により回避できる。これにより、ダイナミックブレーキを的確にかけることができる。
【0093】
(第2実施形態)
以下、第2実施形態について、上記第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、第1ダイオード80及び第2ダイオード81に代えて、図8に示すように、第1サブダイオード90、第2サブダイオード91及び第3サブダイオード92を備えている。なお、図8において、先の図3に示した構成と同一の構成については、便宜上、同一の符号を付している。
【0094】
図示されるように、第1制御部51には、第1制御部51から出力された第1副駆動信号Sig1を伝達する第1信号経路L1が接続され、第2制御部52には、第2制御部52から出力された第2副駆動信号Sig2を伝達する第2信号経路L2が接続されている。主制御部50には、主制御部50から出力されたローサイド駆動信号SigLを伝達する第3信号経路L3が接続されている。
【0095】
第1信号経路L1、第2信号経路L2及び第3信号経路L3のそれぞれの合流点Pには、これら信号経路L1,L2,L3のそれぞれから伝達された駆動信号Sig1,Sig2,SigLを伝達する共通信号経路LLが接続されている。共通信号経路LLには、ローサイドドライバDrL、第1サブドライバDr1及び第2サブドライバDr2のそれぞれが接続されている。
【0096】
第1信号経路L1のうち合流点Pよりも第1制御部51側には、第1サブダイオード90が設けられている。第1サブダイオード90は、アノードが第1制御部51側に接続され、カソードが合流点P側に接続されている。
【0097】
第2信号経路L2のうち合流点Pよりも第2制御部52側には、第2サブダイオード91が設けられている。第2サブダイオード91は、アノードが第2制御部52側に接続され、カソードが合流点P側に接続されている。
【0098】
第3信号経路L3のうち合流点Pよりも主制御部50側には、第3サブダイオード93が設けられている。第3サブダイオード91は、アノードが主制御部50側に接続され、カソードが合流点P側に接続されている。
【0099】
第1〜第3サブダイオード90〜92は、主制御部50、第1制御部51及び第2制御部52のうちいずれかに異常が生じた場合であっても、ダイナミックブレーキを的確にかけるために設けられている。つまり、例えば主制御部50に異常が生じていることを第1制御部51が検知した場合、第1制御部51から論理Hのオン駆動信号が出力される。この際、異常が生じている主制御部50の誤作動により、第1制御部51から出力された論理Hのオン駆動信号が、第1信号経路L1、共通信号経路LL及び第3信号経路L3を介して主制御部50へと引き込まれることがある。この場合、ローサイドドライバDrL、第1サブドライバDr1及び第2サブドライバDr2のいずれにもオン駆動信号が伝達されず、ローサイドスイッチSWLをオンさせることができなくなるおそれがある。その結果、ダイナミックブレーキをかけることができなくなるおそれがある。
【0100】
そこで本実施形態では、第1〜第3サブダイオード90〜92を備えている。このため、例えば、第1制御部51から論理Hのオン駆動信号が出力される場合において、主制御部50の誤作動により、オン駆動信号が主制御部50に引き込まれることを第3サブダイオード92により回避できる。これにより、ダイナミックブレーキを的確にかけることができる。
【0101】
(その他の実施形態)
なお、上記各実施形態を以下のように変更して、実施することもできる。
【0102】
・上記各実施形態において、2相分のローサイドスイッチSWLをオンすることによりダイナミックブレーキをかけてもよい。
【0103】
・上記各実施形態において、ローサイドスイッチSWLに代えて、2相分のハイサイドスイッチSWHをオンすることによりダイナミックブレーキをかけてもよい。
【0104】
・上記各実施形態において、主制御部50の異常を監視する機能を、第1制御部51及び第2制御部52のいずれか一方に持たせてもよい。
【0105】
・上記各実施形態において、第1制御部51の異常を検知した場合にコンタクタ45をオフさせる機能を第2制御部52に持たせてもよい。
【0106】
・上記各実施形態において、第1制御部51及び第2制御部52の少なくとも一方に、制御部に加えてインバータ44及びモータ43を含むロボットシステムの異常を監視する機能を持たせてもよい。この場合、この異常を監視する機能を有する制御部がロボットシステムの異常を検知した場合、ダイナミックブレーキをかければよい。
【0107】
・上記各実施形態において、第1制御部51により第2制御部52の異常が検知された場合、第1制御部51によりコンタクタ45がオフされなくてもよい。この場合であっても、3相のローサイドスイッチSWLが全てオンされてダイナミックブレーキがかけられているときにおいて、3相のハイサイドスイッチSWHが全てオフされているため、整流器42からインバータ44へと電流が流れない。このため、モータ43を減速停止させることはできる。
【0108】
・上記第1実施形態の図3において、ローサイドドライバDrLとローサイドスイッチSWLのゲートとを電気的に接続する経路上に、アノードがローサイドドライバDrL側に接続されて、かつ、カソードがゲート側に接続されたダイオードを設けてもよい。この場合、ローサイド駆動信号SigLのオフ駆動信号に従ってローサイドスイッチSWLをオフさせるために、ローサイドスイッチSWLのゲートとエミッタとを抵抗体によって接続すればよい。
【0109】
・上記第1実施形態において、第1ダイオード80及び第2ダイオード81は必須ではない。
【0110】
・上記第2実施形態では、各信号経路L1,L2,L3の合流点Pと、各サブダイオード90〜92が、各ドライバDrL,Dr1,Dr2の外部に設けられていたがこれに限らず、各ドライバDrL,Dr1,Dr2に内蔵されていてもよい。
【0111】
・上記第2実施形態において、第3信号経路L3を、合流点Pに接続することなくローサイドドライバDrLのみに接続してもよい。
【0112】
・各電源用スイッチ62,63,72,73の駆動状態を検知する手法としては、上記実施形態に例示したものに限らない。例えば、第2電源用スイッチ63を例にすると、第2電源用スイッチ63のドレイン及びソース間電圧に基づいて、第2電源用スイッチ63の駆動状態を検知してもよい。
【0113】
・モータとしては、同期機に限らず、例えば誘導機であってもよい。
【0114】
・ロボットとしては、垂直多関節型のものに限らず、例えば水平多関節型のものを採用してもよい。
【符号の説明】
【0115】
10…ロボット、43…モータ、44…インバータ、45…コンタクタ、50…主制御部、51…第1制御部、52…第2制御部、SWH…ハイサイドスイッチ、SWL…ローサイドスイッチ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9