(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基板上の塗布膜のうちの予め設定した位置にある塗布膜除去部に向けて吐出口から除去液を吐出する除去液供給手段と、前記吐出された除去液を回収口から回収する除去液回収手段とを有する塗布膜除去装置本体と、
前記基板表面と、前記塗布膜除去装置本体の前記吐出口と前記回収口との間に位置する平坦な底面との間の距離を調整する処理ギャップ調整装置と、
を備え、
前記除去液供給手段の前記除去液の吐出口および前記除去液回収手段の前記除去液の回収口の外周側に、撥水処理を施した撥水外郭部を、前記基板表面と対向するように備えることを特徴とする塗布膜除去装置。
基板上の塗布膜のうちの予め設定した位置にある塗布膜除去部に向けて除去液を吐出する除去液供給手段と、吐出された前記除去液を回収する除去液回収手段とを有する塗布膜除去装置本体を備え、
前記除去液供給手段は、前記除去液を吐出するための1箇所以上の吐出口を有し、
前記除去液回収手段は、前記除去液を回収するための1箇所以上の回収口を有し、
前記塗布膜除去装置本体の前記吐出口側の底面と前記基板表面との間の距離である第1の距離と、
前記塗布膜除去装置本体の前記回収口側の底面と前記基板表面との間の距離である第2の距離と、が異なるように、前記底面が前記基板表面に対し、高さ方向に傾きを持って配置されていることを特徴とする塗布膜除去装置。
基板上の塗布膜のうちの予め設定した位置にある塗布膜除去部に向けて吐出口から除去液を吐出する除去液供給手段と、前記吐出された除去液を回収口から回収する除去液回収手段とを有する塗布膜除去装置本体を備え、
前記塗布膜除去装置本体は、前記吐出口と前記回収口との間に位置する平坦な底面を有し、
前記基板表面と前記塗布膜除去装置本体の前記吐出口側の底面との間の距離である第1の距離と、前記基板表面と前記塗布膜除去装置本体の前記回収口側の底面との間の距離である第2の距離とが異なることを特徴とする塗布膜除去装置。
少なくとも前記塗布膜除去装置本体の底面と前記基板表面との間に前記除去液が存在するときに、前記処理ギャップ調整装置を介して、前記底面が、前記基板表面に対し、高さ方向に0.05度以上の傾きになるように調整する制御部を備えることを特徴とする請求項14に記載の塗布膜除去装置。
少なくとも前記塗布膜除去装置本体の底面と前記基板表面との間に前記除去液が存在するときに、前記処理ギャップ調整装置を介して、前記底面と前記基板表面との間の距離を3.0mm以下とする制御部を備えることを特徴とする請求項17に記載の塗布膜除去装置。
少なくとも前記塗布膜除去装置本体の底面と前記基板表面との間に前記除去液が存在するときに、前記処理ギャップ調整装置を介して、前記基板表面に対する前記底面の傾きを、1回以上変更する制御部を備えることを特徴とする請求項17又は請求項18に記載の塗布膜除去装置。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の第1実施形態から第5実施形態に係る各塗布膜除去装置について、図面を参照して説明する。なお、以下の詳細な説明では、本発明の実施形態の完全な理解を提供するように多くの特定の細部について記載される。しかしながら、かかる特定の細部がなくても1つ以上の実施形態が実施できることは明らかであろう。他にも、図面を簡潔にするために、周知の構造及び装置が略図で示されている。また、各図において、同様又は類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0009】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態に係る塗布膜除去装置101について、図面を参照して説明する。
(塗布膜除去装置101の全体構成)
図1は、本発明の第1実施形態に係る塗布膜除去装置101を示す概略構成図である。また、
図2は、本発明の第1実施形態に係る塗布膜除去装置の動作の一例を説明するための斜視図である。なお、
図1では、後述する第1から第4の各実施形態に係る塗布膜除去装置101〜104を「塗布膜除去装置100」として示している。また、後述する第1から第4の各実施形態に係る移動部31a〜34aを「移動部3a」として示し、後述する第1から第4の各実施形態に係る移動部31b〜34bを「移動部3b」として示している。
塗布膜除去装置101は、基板上の塗布膜のうちの一部である塗布膜除去部を除去する装置である。すなわち、基板上の、塗布膜の塗布が不要である成膜不要領域に塗布された塗布膜除去部の塗布膜を除去する装置である。
【0010】
図1において、符号1は塗布膜除去対象の基板を、符号2は基板1上に形成された塗布膜を、符号11は、基板1上に塗布された塗布膜のうち基板1上の必要成膜領域を表す。必要成膜領域11以外の塗布膜部分が、塗布膜除去部が形成された領域、つまり塗布膜を選択的に除去すべき領域である成膜不要領域e1〜e7となる。
塗布膜除去装置101は、塗布膜除去装置本体3と、塗布膜除去対象の基板1を吸着保持するステージ10と、処理ギャップ調整装置13(
図2参照)とを備える。また、塗布膜除去装置本体3は、
図1においてステージ10の左右方向に沿って移動し基板1に対し縦方向(
図1においてY軸方向)の塗布膜除去を行う塗布膜除去装置本体(縦)(以下、単に「移動部」ともいう。)31aと、
図1においてステージ10の前後方向に移動し、基板1の横方向(
図1においてX軸方向)の塗布膜除去を行う塗布膜除去装置本体(横)(以下、単に「移動部」ともいう。)31bと、を備える。
【0011】
移動部31aは、ステージ10上に吸着保持された基板1を跨ぐように、ステージ10のY軸方向に沿って配置され、その移動部31aに処理ギャップ計測装置(以下、単に「高さ計測装置」ともいう。)4が支持されている。高さ計測装置4は、基板1の表面と移動部31aの底面との間の距離(つまり、間隙)h1を測定する。処理ギャップ調整装置(以下、単に「高さ調整装置」ともいう。)13は、高さ計測装置4が測定した距離h1が予め設定した設定値となるように移動部31aを昇降させる。この移動部31aは、例えば、ステージ10のY軸方向の両側にX軸方向に沿って配置されたガイド及び昇降機構(共に図示せず)により、X軸方向及び高さ方向(つまり、Z軸方向)に移動する。これにより、例えば、
図2及び
図3に示すように、基板1の表面と移動部31aを所定の距離h1に保持した状態で、移動部31aが基板1のX軸方向に移動するようになっている。
【0012】
図1に示すように、第1実施形態では、必要成膜領域11が格子状に配置されている。これに合わせて、移動部31bは、平面視で移動部31aと90度ずれた角度で配置される。すなわち、移動部31bは、ステージ10上に吸着保持された基板1を跨ぐように、ステージ10のX軸方向に沿って配置される。そして使用時には、移動部31bの処理高さ位置を移動部31aの処理高さ位置に揃える。すなわち、移動部31aに固定された高さ計測装置4によって測定された距離h1に基づき、高さ調整装置13が、基板1の表面と移動部31bとの距離h1が設定値となるように移動部31bを昇降させる。この移動部31bは、例えば、ステージ10のX軸方向の両側にY軸方向に沿って配置されたガイド及び昇降機構(共に図示せず)により、Y軸方向及びZ軸方向に移動する。これにより、移動部31bが基板1のY軸方向に移動するようになっている。すなわち、移動部31a、31bは、必要成膜領域11の並び方向に、例えば直交座標を設定して2方向に移動可能となっていればよい。
ここで、第1実施形態では、昇降機構が高さ調整装置13で構成されている。より詳しくは、昇降機構を、移動部31a、31bの各両端部に配置された高さ調整装置13で構成してもよい。
【0013】
なお、高さ計測装置4は、移動部31aに固定せず、移動部31bに固定してもよい。更には、例えば、ステージ10のY軸方向の両側にX軸方向に沿って配置されたガイド(図示せず)を案内として、X軸方向に移動するように独立して走査するようにしてもよい。また、例えば、ステージ10のX軸方向の両側にY軸方向に沿って配置されたガイド(図示せず)を案内として、Y軸方向に移動するように走査するようにしてもよい。要は、処高さ計測装置4は、移動部31a、31bと基板1の表面(塗布膜表面)との距離h1を測定し、その測定値に基づき、高さ調整装置13により基板1の表面との距離h1が設定値となるよう高さ調整が可能に構成されていればよい。
【0014】
移動部31a、31bは、それぞれ、駆動装置(図示せず)によって、基板1に沿って移動可能となっている。また、移動部31a、31bには、それぞれ、基板1上の必要成膜領域11を除く領域である成膜不要領域に除去処理部31が設けられている。すなわち、
図1(d)に示すように、基板1のY軸方向に延びる成膜不要領域を、左から順にe1、e2、e3、e4とし、基板1のX軸方向に延びる成膜不要領域を、上から順にe5、e6、e7とすると、移動部31aは、駆動装置によって、除去処理部31が成膜不要領域e1と対応する位置に移動し、塗布膜除去を施す。そして、成膜不要領域e1の塗布膜が取り除かれるまで位置移動と塗布膜除去とを繰り返す。なお、成膜不要領域e2〜e4についても同様にして塗布膜除去を順次行う。
【0015】
一方、移動部31bは、駆動装置によって、例えば、除去処理部31が成膜不要領域e5と対応する位置に移動し、塗布膜除去を施す。さらに、成膜不要領域e5の塗布膜が取り除かれるまで位置移動と塗布膜除去とを繰り返す。また、成膜不要領域e6及び成膜不要領域e7についても同様にして塗布膜除去を順次行う。なお、移動部31a、31bそれぞれの除去処理部31は、同一構成を有するが、この構成に限定されるものではない。
【0016】
(除去処理部31の構成)
図3は、
図1(d)に示す除去処理部31のA−A断面図の一例である。
図3に示すように、除去処理部31は、除去液供給手段5と、除去液回収手段6と、ガス供給装置7とを備える。
除去液供給手段5は、除去液供給口5aと、除去液供給口5aに除去液8を供給する除去液供給部5bと、を備える。除去液供給口5aは、除去処理部31に、基板1上の成膜不要領域(例えば、e1)と対向するように配置される。除去液供給部5bを作動させることにより、塗布膜2除去用の除去液8が、除去液供給部5bにより除去液供給口5aに供給され、除去液供給口5aの基板1側の開口端から除去液8が基板1上に吐出される。除去液供給部5bは定量吐出が可能なシリンジポンプ等で構成され、一定量の除去液8を、除去液供給口5aを介して基板1上に吐出する。
【0017】
除去液回収手段6は、基板1上の成膜不要領域(例えば、e1)と対向するように配置された除去液回収口6aと、除去液回収部6bと、を備える。そして、例えば、除去液供給口5aを挟むように、複数の除去液回収口6aが配置される。また、除去液回収口6aは、
図3に示すように、基板1と対向する側の開口端が除去液供給口5a側に湾曲している。なお、除去処理部31の断面形状、特に除去液供給口5aと除去液回収口6aの形状及び位置関係については、これに限定されるものではない。
【0018】
除去液回収部6bは、例えば、エジェクタータンク等の吸引機器を備えており、除去液回収部6bを作動させることにより、基板1上の除去液8が、除去液回収口6aを介して除去液回収部6bに回収される。
また、撥水外郭部12は、除去液回収口6aを挟んで形成される。こうすることで、撥水外郭部12の内側に位置する除去液供給口5aから吐出される除去液8が外側に濡れ広がることを抑制するようにしている。
【0019】
ガス供給装置7は、
図3に示すように、基板1上の成膜不要領域(例えば、e1)と対向するように配置されたガス供給口7aと、ガス供給部7bと、を備える。ガス供給口7aは、例えば、除去液回収口6aを挟んで形成される。そして、ガス供給部7bを作動させることにより、基板1にガス(例えば、エア)が吹き付けられるようになっている。
【0020】
図3に示すように、移動部31aの長手方向に沿ったガス供給口7aの幅w1は、移動部31aの長手方向に沿った成膜不要領域e1の幅よりも多少短く設定される。
ガス供給部7bを作動させることにより、ガス供給口7aから吹き出されるエアがエアカーテンの役割を果たし、ガス供給口7aの内側に配置された除去液供給口5aから吐出される除去液8が、成膜不要領域e1の外側に飛散したり流れ出たりすることを防止している。
【0021】
このような構成を有する除去処理部31が、成膜不要領域e1〜e4と対向するように移動部31aを移動配置した状態で、除去液供給手段5、除去液回収手段6、ガス供給装置7を動作させることによって、成膜不要領域e1〜e4の外側に除去液8が流れ出ることを防止しつつ、成膜不要領域e1〜e4に除去液8を吐出するとともに除去液8を回収できるようになっている。
移動部31bの場合には、例えば、
図1(d)に示すように、成膜不要領域e5〜e7と除去処理部31とが対向するように、移動部31bを移動配置した状態で、除去液供給手段5、除去液回収手段6、ガス供給装置7を動作させればよい。
【0022】
なお、除去液供給部5b、除去液回収部6b、ガス供給部7bは、移動部31aとは別体として設け、変形可能な除去液供給用チューブを介して除去液供給部5bと除去液供給口5aとを接続してもよい。同様に、変形可能な除去液回収用チューブを介して除去液回収部6bと除去液回収口6aとを接続してもよい。また、変形可能なエア供給用チューブを介して、ガス供給部7bとガス供給口7aとを接続してもよい。また、除去液供給部5b、除去液回収部6b、ガス供給部7bの全てを、移動部31a、31bに設ける必要はなく、除去液供給部5b、除去液回収部6b、ガス供給部7bのうち少なくとも1つを移動部31a、31bに設けるようにしてもよい。
【0023】
また、移動部31a、31bに設けられている除去処理部31は、必要成膜領域11を除く領域である成膜不要領域e1〜e7と対向し塗布膜除去が施されればよいため、移動部31aには、
図5に示すように、成膜不要領域e5〜e7のそれぞれと個別に対応する位置に、複数の除去処理部31が配置されていてもよい。同様に、移動部31bには、成膜不要領域e1〜e4のそれぞれと個別に対応する位置に、複数の除去処理部31が配置されていてもよい。なお、各除去処理部31は、同一構成を有する。
【0024】
また、除去処理部31における除去液供給口5a、除去液回収口6a、撥水外郭部12の配置は、上記形態に限るものではない。例えば、除去液供給口5aは、複数設けられていてもよい。また、除去液回収口6aは、除去液供給口5aを挟むように配置されていたが、除去液供給口5aを四角もしくは円形状に取り囲むように配置されていてもよい。また、除去液回収口6aは、除去液供給口5aの外周側にランダムに配置されていてもよい。また、撥水外郭部12は、除去液供給口5a、除去液回収口6aを挟むように形成したが、除去液回収口6aを四角もしくは円形状に取り囲むように配置されていてもよい。また、撥水外郭部12は、成膜不要領域内の境界付近と対向する位置にランダムに配置されていてもよい。要は、除去液供給口5a及び除去液回収口6aが、撥水外郭部12で囲まれる範囲内にあり、撥水外郭部12の撥水性で、除去液供給口5aにより吐出された除去液8が成膜不要領域外へ移動することを抑制することができればよい。
【0025】
また、除去処理部31における除去液供給口5a、除去液回収口6a、撥水外郭部12、ガス供給口7aの配置は、上記形態に限るものではない。例えば、ガス供給口7aは、除去液供給口5a、除去液回収口6a、撥水外郭部12を挟むように配置されていたが、除去液供給口5a、除去液回収口6a、撥水外郭部12を四角もしくは円形状に取り囲むように配置されていてもよい。また、ガス供給口7aは、複数設けられてもよい。また、ガス供給口7aは、成膜不要領域内の境界付近と対向する位置にランダムに配置されていてもよい。要は、除去液供給口5a、除去液回収口6a及び撥水外郭部12が、ガス供給装置7によるエアカーテンで囲まれる範囲内にあり、除去液供給口5aにより吐出された除去液8が成膜不要領域外への飛散や移動することを回避することができればよい。
【0026】
(動作その他)
次に、上記実施形態の動作を説明する。
まず、
図1に示すように、高さ計測装置4によって、基板1の表面と移動部31aとの距離h1を測定する。そして、高さ調整装置13により基板1の表面との距離h1が設定値となるように配置される。その後、基板1に成膜された塗布膜2に近接するように、例えば、移動部31aを対向させて配置する。次に、移動部31aと、塗布膜2が成膜された基板1との間隙に、一定量の除去液8が保持されるように、除去液供給部5bから除去液供給口5aを介して除去液8を基板1に吐出し、この状態を所定時間保持する。
上記設定値に設定された距離h1は、移動部31aと塗布膜2が成膜された基板1との間の除去液8が、除去液8の吐出量や粘度などの特性に応じて一定の幅で保持される距離とすることが望ましい。
また、上記所定時間は、塗布膜2が除去液8により、溶解もしくは剥離するのに充分な時間である。
【0027】
成膜不要領域上に、除去液8を所定時間保持することにより塗布膜2が溶解もしくは剥離する。そして、塗布膜2が溶解もしくは剥離すると推定される時間が経過すると、移動部31aと基板1との間で塗布膜2と交じり合った除去液8を除去液回収手段6により回収し排出する。すなわち、除去液回収部6bを作動させ、除去液回収口6aを介して基板1上の除去液8を回収する。
この、除去液8の供給と回収とを繰り返すことで、基板1上の成膜不要領域に存在する塗布膜2の除去が行なわれ、より清浄な基板表面を得ることができる。
【0028】
また、このとき、除去液供給手段5による除去液8の吐出が開始されてから基板1上の除去液8の回収が終了するまでの間、ガス供給装置7を作動させ、ガス供給口7aを介して基板1にエアを吐出させる。このガス供給口7aは、
図3に示すように、除去液供給口5a及び除去液回収口6aの周囲に配置されているため、ガス供給口7aから吐出されるエアによって、基板1上に吐出された除去液8が、成膜不要領域の外側に飛散したり流れ出たりすることを回避することができる。
【0029】
そして、この操作を、
図1(a)に示すように、移動部31aをX軸方向に移動させながら各地点において行う。
移動部31aによる基板1のY軸方向に延びる成膜不要領域の塗布膜の除去が終了した後に、
図1(b)に示すように、移動部31bをY軸方向に移動させながら各地点において、基板1のX軸方向に延びる成膜不要領域の塗布膜に対して同様の手順で塗布膜の除去を行う。
このように、移動部31a及び31bを動作させることによって、
図1(d)に示すように、基板1の成膜不要領域の塗布膜のみが除去される。
なお、ガス供給装置7によって供給されるガスは、塗布膜2に使用される有機材料の特性への影響を考慮し、供給するガスを窒素ガス等の不活性ガスとしてもよい。
【0030】
また、
図3に示すように、撥水処理を施した撥水外郭部12が除去液供給口5a及び除去液回収口6aの周囲に配置されているため、基板1上に吐出された除去液8が、撥水外郭部12の撥水性により成膜不要領域の外側に濡れ広がることを抑制することができる。すなわち、ガス供給口7aから吐出されるガスによる除去液8の濡れ広がり抑制効果と併せて、必要成膜領域11の塗布膜2が、意図せず除去されてしまうことを抑制することができる。したがって、より確実に成膜不要領域内の塗布膜2のみを除去することができる。
【0031】
また、塗布膜2の除去性能向上のために吐出した除去液8に、超音波振動を与えるようにしてもよい。すなわち、
図4に示すように、例えば、除去液供給口5aの開口部端部に超音波振動印加装置9を設け、この超音波振動印加装置9を動作させることで除去液8を振動させるようにすればよい。
また、吐出した除去液8の温度は常温でも構わないが揮発による弊害を考慮して、その温度を30℃以上40℃以下とすることで、塗布膜2を効率よく溶解させることができ、処理時間の短縮と、より確実な塗布膜2の除去を実現することができる。
【0032】
また、第1実施形態においては、
図1に示すように、90度の角度を持って配置された移動部31a、31bを、一方ずつ走査させることにより、基板1全面に対して塗布膜除去を行う場合について説明したが、これに限るものではない。例えば、
図5に示すように、高さ計測装置4を備える移動部31a、31bに複数の除去処理部31を配置した構成にしてもよい。例えば、移動部31aには、成膜不要領域e5〜e7のそれぞれと個別に対応する位置に、複数の除去処理部31を配置し、移動部31bには、成膜不要領域e1〜e4のそれぞれと個別に対応する位置に、複数の除去処理部31が配置した構成にしてもよい。なお、その場合には、除去処理部31を、移動部31a、31bに移動可能に配置してもよい。このようにすることによって、成膜不要領域の幅や間隔が異なる複数の基板に対して、除去処理を行う場合であっても、除去処理部31の位置をずらしながら除去処理を行ったり、除去処理部31の配置位置を成膜不要領域の間隔に併せて調整した後、除去処理を開始することなどにより、適切に対応することができる。
【0033】
また、例えば、
図6及び
図7に示すように、高さ計測装置4を備える塗布膜除去装置本体3を、Y軸方向及びX軸方向に移動可能に構成してもよい。
図6に示すように、基板1を跨ぐように基板1のY軸方向に沿ってガイドレール21を配置し、このガイドレール21に塗布膜除去装置本体3を移動可能に配置する。さらに、基板1のY軸方向の両側に、X軸方向に延びるガイド(図示せず)を設け、このガイドを案内としてガイドレール21をX軸方向に移動可能に配置する。
そして、ガイドレール21をX軸方向に移動させ、且つ、ガイドレール21上において塗布膜除去装置本体3をY軸方向に移動させることによって、塗布膜除去装置本体3を、基板1に対してそのY軸方向及びX軸方向に移動させ、すなわち基板1の全面にわたって塗布膜除去装置本体3による塗布液の供給及び回収を行う。
塗布膜除去に要する所要時間と制限タクト等との兼ね合いに応じて、
図1に示す構成とするか、
図6に示す構成とするかを選択することができる。
【0034】
なお、
図6に示すように、ガイドレール21に塗布膜除去装置本体3を設ける構成とする場合には、塗布膜除去装置本体3に1つの除去処理部31を設ければよい。また、1つの除去処理部31により複数の成膜不要領域に対して塗布膜2の除去処理を行う場合、除去処理部31の幅w1が、成膜不要領域の幅に対して大幅に狭い等、除去処理部31の幅w1が、成膜不要領域に対して適度な幅とならない可能性がある。この場合には、例えば、
図6において、塗布膜除去装置本体3をY軸方向だけでなく、X軸方向にも移動させ、X軸方向の微調整を行いつつ、Y軸方向に移動させて塗布膜除去を行うようにすればよい。
【0035】
なお、上記実施形態において、除去液供給手段5、除去液回収手段6、ガス供給装置7による除去液8の供給タイミング、除去液8の回収タイミング、ガスの供給タイミングの制御は、図示しない上位装置で行うようにすればよい。この上位装置によって、移動部31a、31bや塗布膜除去装置本体3を駆動する駆動装置の制御も行い、移動部31a、31bや塗布膜除去装置本体3の位置に応じて除去液供給手段5、除去液回収手段6、ガス供給装置7の動作タイミングを制御することにより、成膜不要領域の塗布膜2を的確に除去することができる。
【0036】
以上説明したように、本実施形態の塗布膜除去装置101は、基板1上の塗布膜2のうちの一部である塗布膜除去部を除去する装置である。すなわち、第1実施形態の塗布膜除去装置101は、基板1上の、塗布膜2の塗布が不要である成膜不要領域e1〜e7に塗布された塗布膜除去部の塗布膜2を除去する装置である。
また、上述したように、基板1上に塗布された塗布膜2のうち、基板1上の必要成膜領域11以外の塗布膜2の部分が、塗布膜除去部が形成された領域、すなわち、塗布膜2を選択的に除去すべき領域である成膜不要領域e1〜e7となる。
【実施例1】
【0037】
以下、本発明を、各実施例によりさらに詳しく説明する。
(実施例1−1)
第1実施形態に係る塗布膜除去装置101の一実施例として、有機ELディスプレイの正孔輸送層の成膜工程において、基板1上に正孔輸送層を形成する有機材料をスリットダイで塗工し、必要成膜範囲である発光領域の外周の不要な塗布膜2を除去する場合について説明する。
塗布する正孔輸送層材料として、ポリ(3,4)エチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸(PEDOT/PSS)を使用し、除去液8として純水を使用した。
【0038】
基板1には無アルカリガラスOA−10(日本電気硝子製)120mm×120mm×0.7mmを使用し、必要成膜範囲を50mm×50mmとしたときの外周4辺外側の不要な塗布膜2を選択的に除去することを試みた。
まず、洗浄済みの基板1に、前述の正孔輸送層材料を100mm×100mmの範囲でスリットダイにより塗工した後、減圧乾燥下で180℃、1時間乾燥することにより100nmの塗布膜2を得た。
【0039】
この正孔輸送層材料の塗布範囲の中心寄り50mm×50mmを必要成膜領域11の範囲と想定し、その外周4辺の外側を、
図3に示すような除去液供給手段5と除去液回収手段6とを有する塗布膜除去装置本体3を用いて塗布膜2の選択的除去を行った。なお、塗布膜除去装置本体3に取り付けたダイヤルゲージの計測値から塗布膜除去装置本体3の高さを調整し、基板1と塗布膜除去装置本体3の下端との距離h1を1mmとした。また、除去液供給手段5の除去液供給部5bとしてシリンジポンプを使用し、定量吐出を可能とすることで、基板1と塗布膜除去装置本体3の距離h1に保持される除去液8の量を規定した。
【0040】
実施例1−1では、基板1と塗布膜除去装置本体3の吐出口との距離h1を1mmとしたが、距離h1を設定する際には、所望の処理幅により除去液8の吐出量との組み合わせから選定する必要がある。基板1と塗布膜除去装置本体3の吐出口との距離h1を広く設定した場合に、基板1と塗布膜除去装置本体3の距離h1に除去液8を保持するためには吐出量が多く必要となり、それに応じて基板1と塗布膜除去装置本体3の距離h1に保持される除去液8の幅が広くなる。一方で、基板1と塗布膜除去装置本体3の下端との距離h1を狭く設定した場合には吐出量を少なくすることが可能となり、基板1と塗布膜除去装置本体3の距離h1に保持される除去液8の幅も狭くすることができる。すなわち、基板1と塗布膜除去装置本体3との距離h1を調整することで、除去液8の幅、つまり塗布膜2の除去幅を所望の範囲に調整することが可能となる。
【0041】
また、実施例1−1では高さ計測装置4としてダイヤルゲージを用いたが、これに限定されるものではなく、レーザ変位計等の非接触方式の計測器を用いた方がキズや異物抑制の点でより好ましい。
また、除去液回収手段6は排気をとり、基板1と塗布膜除去装置本体3との間に所望の時間で保持され、正孔輸送層材料を溶解した除去液8を回収した。なお、保持時間は30秒以上であれば概ね塗布膜2が除去されることが確認されたが、同様な動作をもう1度繰り返すことで、回収しきれずに残存してしまう材料を確実に取り除き、より良好な清浄度が期待できる。
【0042】
塗布膜除去装置本体3による走査を繰り返し行い、さらに走査方向を90度切り替え、必要成膜範囲の外周4辺の外側の成膜不要領域の不要塗布膜を順次処理することで、50mm×50mmの必要成膜範囲の外周に残存塗布膜のない状態が得られた。また、塗布膜除去装置本体3において、除去液供給口5a及び除去液回収口6aの外側に配置した撥水外郭部12の撥水性により必要成膜範囲への除去液8の濡れ広がりの抑制を確認できた。なお、撥水外郭部12は塗布膜2に対向する側の表面を、テフロン(登録商標)ニッケル鍍金処理を施すことで水接触角90度の撥水性が得られた。
さらに、塗布膜除去装置本体3において、除去液供給口5a及び除去液回収口6aの外側に配置したガス供給口7aによるガス供給によって、必要成膜範囲への除去液8の飛散もなく所望の状態を確認できた。
【0043】
(実施例1−2)
実施例1−1での各条件において、除去液8の温度条件は24℃であったのに対し、実施例1−2では、この除去液8の温度条件を24℃から30℃に変更して、同様に塗布膜2の除去を行った。なお、除去液8の温度条件を除く他の条件は、実施例1−1における各条件と同一とした。
その結果、除去液8の温度が24℃のときには、塗布膜2を概ね30秒で除去できるのに対し、除去液8の温度が30℃のときには、塗布膜2の除去に要する所要時間を、概ね20秒まで短縮することができ、除去性能の向上が確認された。また、除去液8の温度をさらに上げた場合には、より除去性能の向上が確認された。しかしながら、温度を40℃より高くすると除去性能向上の差異が大きくなく、効果が薄くなること、さらに一方で蒸気の影響が懸念される点から、温度条件の採用に当たっては、装置、材料への配慮が必要となる。
【0044】
(実施例1−3)
実施例1−3では、実施例1−2での各条件、すなわち、除去液8の温度条件は30℃とする条件下で、超音波振動印加装置9としての超音波振動子により、除去液8に超音波振動を加えながらの塗布膜除去装置本体3による塗布膜2の除去を行った。なお、超音波振動の出力は、50〜300W程度、振動数30〜100kHz程度とした。
その結果、超音波振動を加えないときには塗布膜2を、概ね20秒で除去することができるのに対し、超音波振動を加えることにより、塗布膜2の除去に要する所要時間を15秒まで短縮することができ、除去性能の向上が確認された。
したがって、このように、有機発光画素外周部の塗布膜2を確実に除去することができるため、成膜が簡便で且つ均一な塗布法を、正孔輸送層や正孔注入層等の画素ごとに塗り分けする必要のない共通層の成膜に採用した高分子有機ELパネルの生産が可能となる。
【0045】
(実施例1−4)
第1実施形態に係る塗布膜除去装置101の異なる一実施例として、液晶ディスプレイ用カラーフィルタの感光性樹脂層の成膜工程において、基板1上に感光性樹脂層を形成する有機材料をスリットダイで塗工し、必要成膜範囲である画素領域の外周の不要な塗布膜2を除去する場合について説明する。
塗布する感光性樹脂材料として、東京応化工業(株)製OFPR−800を使用し、除去液8として30℃の1.0重量%炭酸ナトリウム水溶液を使用した。
基板1には無アルカリガラスOA−10(日本電気硝子製)120mm×120mm×0.7mmを使用し、必要成膜範囲を50mm×50mmとしたときの外周4辺外側の不要な塗布膜2を選択的に除去することを試みた。
まず、洗浄済みの基板1に、前述の感光性樹脂材料を100mm×100mmの範囲でスリットダイにより塗工した後、1Torrの減圧乾燥下で乾燥することにより1.5μmの塗布膜2を得た。
【0046】
この感光性樹脂材料の塗布範囲の中心寄り50mm×50mmを必要成膜領域11の範囲と想定し、その外周4辺の外側を、
図3に示すような除去液供給手段5と除去液回収手段6とを有する塗布膜除去装置本体3を用いて塗布膜2の選択的除去を行った。なお、塗布膜除去装置本体3に取り付けたダイヤルゲージの計測値から塗布膜除去装置本体3の高さを調整し、基板1と塗布膜除去装置本体3の下端との距離h1を1mmとした。また、除去液供給手段5の除去液供給部5bとしてシリンジポンプを使用し、定量吐出を可能とすることで、基板1と塗布膜除去装置本体3の距離h1に保持される除去液8の量を規定した。
【0047】
また、除去液回収手段6は排気をとり、基板1と塗布膜除去装置本体3との間に所望の時間で保持され、感光性樹脂材料を溶解した除去液8を回収した。なお、保持時間は30秒以上であれば概ね塗布膜2が除去されることが確認されたが、同様な動作をもう1度繰り返すことで、回収しきれずに残存してしまう材料を確実に取り除き、より良好な清浄度が期待できる。
【0048】
塗布膜除去装置本体3による走査を繰り返し行い、さらに走査方向を90度切り替え、必要成膜範囲の外周4辺の外側の成膜不要領域の不要塗布膜を順次処理することで、50mm×50mmの必要成膜範囲の外周に残存塗布膜のない状態が得られた。また、塗布膜除去装置本体3において、除去液供給口5a及び除去液回収口6aの外側に配置した撥水外郭部12の撥水性により必要成膜範囲への除去液8の濡れ広がりの抑制を確認できた。なお、撥水外郭部12は塗布膜2に対向する側の表面を、テフロン(登録商標)ニッケル鍍金処理を施すことで水接触角90度の撥水性が得られた。
さらに、塗布膜除去装置本体3において、除去液供給口5a及び除去液回収口6aの外側に配置したガス供給口7aによるガス供給によって、必要成膜範囲への除去液8の飛散もなく所望の状態を確認できた。
【0049】
以上、本発明の実施例1−1〜1−4について説明したが、本発明は上記実施例に制限されない。上記では有機ELディスプレイと液晶ディスプレイ用カラーフィルタについて説明したが、これに限定されるものではなく、別の用途の成膜基板に適用してもよい。また、塗布膜2は、正孔輸送層を始めとする有機EL用途の材料や、液晶用ディスプレイ用カラーフィルタに使用する感光性樹脂材料などに限定されるものではなく、別の用途の材料に適用してもよい。また、除去液8もその塗布膜2の材料に応じたものを適宜選択でき、例えば、有機溶剤やエッチング液等も対象となる。
【0050】
<第2実施形態>
以下、本発明の第2実施形態に係る塗布膜除去装置102について、図面を参照して説明する。
(塗布膜除去装置102の全体構成)
図1は、本発明の第2実施形態に係る塗布膜除去装置102を示す概略構成図である。また、
図2は、本発明の第2実施形態に係る塗布膜除去装置102の動作の一例を説明するための斜視図である。なお、
図1(d)では、第2実施形態に係る除去液供給口5a及び除去液回収口6aの記載を省略している。
図1に示すように、塗布膜除去装置102の構成は、第1実施形態に係る塗布膜除去装置101の構成と略同じである。即ち、塗布膜除去装置102は、塗布膜除去装置本体3と、塗布膜2を除去する対象の基板1を吸着保持するステージ10と、高さ調整装置13を備えている。また、第2実施形態に係る塗布膜除去装置本体3は、第1実施形態の場合と同様に、移動部32aと移動部32bとを備えている。
【0051】
また、第2実施形態に係る移動部32a、32bには、第1実施形態の場合と同様に、それぞれ除去処理部32が設けられている。しかしながら、第2実施形態に係る除去処理部32と、第1実施形態に係る除去処理部31とは、
図1(d)のBa−Bb断面における構造が異なっている(
図8参照)。
そこで、第2実施形態では、除去処理部32の構造について主に説明し、第1実施形態で説明した部分と実質的に同じ部分については、その説明を省略する。また、第1実施形態で説明した動作や工程と実質的に同じ動作や工程についても、その説明を省略する。
【0052】
(塗布膜除去装置本体3の構成)
第2実施形態に係る塗布膜除去装置本体3は、
図1中でステージ10のX軸方向に沿って移動し、基板1に対しY軸方向の塗布膜除去を行う移動部32aと、
図1中でステージ10のY軸方向に移動し、基板1に対しX軸方向の塗布膜除去を行う移動部32bとを備える。
移動部32a、32bは、それぞれ、駆動装置(図示せず)によって、基板1に沿って移動可能となっている。また、移動部32a、32bには、それぞれ、基板1上の必要成膜領域11を除く領域である成膜不要領域に除去処理部32が設けられている。
【0053】
移動部32aは、前述の移動部31aと同様に、例えば、ステージ10のY軸方向の両側にX軸方向に沿って配置されたガイド及び昇降機構(共に図示せず)により、X軸方向及びZ軸方向に移動する。これにより、例えば、
図8に示すように、基板1の表面と移動部32aを所定の距離h1、h2になるよう傾斜して保持した状態で、移動部32aが基板1のX軸方向に移動するようになっている。換言すると、基板1の表面と、塗布膜除去装置本体3の除去液供給口5a側の底面との距離(第1の距離)h1、及び除去液回収口6a側の底面との距離(第2の距離)h2が異なった状態で、移動部32aが基板1のX軸方向に移動するようになっている。
【0054】
第2実施形態では、高さ計測装置4は、移動部32a、32bと基板1の表面(塗布膜表面)との距離hを測定し、その測定値に基づき、高さ調整装置13により、基板1の表面との距離h1、h2が設定値となるような高さ調整が可能に構成されていればよい。高さ調整装置13は、移動部32aの両端部に設置されており、高さ計測装置4が測定した距離hから、移動部32aの両端部における基板1の表面との距離h1、h2を予め設定した値となるように、移動部32aを昇降・傾斜させる。
【0055】
また、高さ調整装置13は、移動部32bを支持し、基板1上の、塗布膜2の塗布が不要である成膜不要領域e1〜e7に塗布された塗布膜除去部の塗布膜2を除去する処理を行う際には、移動部32aに固定された高さ計測装置4によって測定された距離hに基づき、基板1の表面と移動部32bとの距離h1、h2が予め設定した設定値となるように、移動部32bを昇降・傾斜させる。
ここで、第2実施形態では、一例として、上述した昇降機構が、高さ調整装置13を構成する場合について説明する。なお、昇降機構は、移動部32a、32bの各両端部に配置された高さ調整装置13で構成されてしてもよい。
【0056】
(除去処理部32の構成)
図8は、
図1(d)に示す除去処理部32のBa−Bb断面図の一例である。
図8に示すように、除去処理部32は、除去液供給手段5と、除去液回収手段6を備える。
除去液供給手段5は、除去液供給口5aと、除去液供給口5aに除去液を供給する除去液供給部5bを備える。除去液供給口5aは、除去処理部32のうち、基板1上の成膜不要領域(例えば、e1)と対向するように配置される。除去液供給部5bを作動させることにより、塗布膜2除去用の除去液8が、除去液供給部5bにより除去液供給口5aに供給され、除去液供給口5aの基板1側の開口端から除去液8が基板1上に吐出される。除去液供給部5bは、定量吐出が可能なシリンジポンプ等で構成されており、一定量の除去液8を、除去液供給口5aを介して基板1上に吐出する。
【0057】
除去液回収手段6は、基板1上の成膜不要領域(例えば、e1)と対向するように配置された除去液回収口6aと、除去液回収部6bを備えている。
除去液回収口6aは、例えば、除去処理部32の長手方向側端部近傍に配置される。
除去液回収部6bは、例えば、エジェクタータンク等の吸引機器を備えており、除去液回収部6bを作動させることにより、基板1上の除去液8が、除去液回収口6aを介して除去液回収部6bに回収される。
また、除去処理部32の底面のうち、少なくとも除去液供給口5aと除去液回収口6aとの間に位置する底面部分は平坦になっている。
【0058】
また、
図8に示すように、塗布膜除去装置102は、塗布膜2が形成された基板1の表面と除去液供給口5aとの距離h1に対し、塗布膜2が形成された基板1の表面と除去液回収口6aとの距離h2が小さくなるように、基板1の厚さ方向(
図8中では上下方向)に傾きを持って設置される。
また、
図8に示すように、塗布膜除去装置102は、塗布膜2が形成された基板1の表面と除去液供給口5aとの距離h1が、塗布膜2が形成された基板1の表面と除去液回収口6aとの距離h2よりも0.1mm以上長くなるように、基板1の厚さ方向に傾きを持って設置される。
なお、
図8において、除去液供給口5aは、除去処理部32の長手方向側端部近傍に一箇所のみ配置されているが、除去液供給口5aの配置については、これに限定されるものではない。例えば、除去液供給口5aと除去液回収口6aとの位置関係に関して、上述した塗布膜除去装置102と基板1の表面との距離の条件を満たしていればよい。また、除去液供給口5a及び除去液回収口6aは、それぞれ、複数箇所備えていてもよい。
【0059】
このような構成を有する除去処理部32が、成膜不要領域e1〜e4と対向するように移動部32aを移動配置した状態で、除去液供給手段5及び除去液回収手段6を動作させることによって、成膜不要領域の外側に除去液8が流れ出ることを防止しつつ、成膜不要領域に除去液8を吐出するとともに、除去液8を回収可能な構成としている。
移動部32bの場合には、例えば、
図1(d)に示すように、成膜不要領域e5〜e7と除去処理部32とが対向するように、移動部32bを移動配置した状態で、除去液供給手段5及び除去液回収手段6を動作させればよい。
【0060】
(動作その他)
次に、上記実施形態の動作を説明する。
まず、
図1に示すように、高さ計測装置4によって、基板1の表面と移動部32aの中央部との距離hを測定する。
そして、高さ調整装置13が、高さ計測装置4が測定した距離hから、移動部32aの両端部における基板1の表面との距離h1、h2が、予め設定した値となるように、移動部32aを昇降、傾斜させる。
その後、基板1に成膜された塗布膜2に近接するように、例えば、移動部32aを対向させて配置する。次に、移動部32aと、塗布膜2が成膜された基板1との間隙に、一定量の除去液8が保持されるように、除去液供給部5bから除去液供給口5aを介して除去液8を基板1上に吐出し、この状態を所定時間保持する。
その後、第1実施形態の場合と同様にして、除去液回収部6bを作動させ、除去液回収口6aを介して、基板1上の除去液8を回収する。
上記設定値に設定された距離h1、h2は、移動部32aと塗布膜2が成膜された基板1との間の除去液8が、除去液8の粘度や表面張力等の特性に応じて一定幅で保持される距離とすることが望ましい。
このように、移動部32a、32bを動作させることによって、
図1(d)に示すように、基板1の成膜不要領域e1〜e7の塗布膜2のみが除去される。
【実施例2】
【0061】
以下、本発明を、各実施例によりさらに詳しく説明する。
(実施例2−1)
第2実施形態に係る塗布膜除去装置102の一実施例として、有機ELディスプレイの正孔輸送層の成膜工程において、基板1上に正孔輸送層を形成する有機材料をスリットダイで塗工し、必要成膜範囲である発光領域の外周の不要な塗布膜2を除去する場合について説明する。
塗布する正孔輸送層材料としては、ポリ(3,4)エチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸(PEDOT/PSS)を使用し、除去液8として純水を使用した。
【0062】
基板1には無アルカリガラスOA−10(日本電気硝子製)120mm×120mm×0.7mmを使用し、必要成膜範囲を80mm×80mmとしたときの外周四辺の不要な塗布膜2を選択的に除去することを試みた。
まず、洗浄済みの基板1に、前述の正孔輸送層材料を90mm×90mmの範囲でスリットダイにより塗工した後、減圧乾燥下で180℃、1時間乾燥することにより100nmの塗布膜2を得た。
基板1には、無アルカリガラスOA−10(日本電気硝子製)120mm×120mm×0.7mmを使用し、必要成膜範囲を80mm×80mmとしたときの外周四辺の不要な塗布膜2を選択的に除去することを試みた。
【0063】
まず、洗浄済みの基板1に、正孔輸送層材料を90mm×90mmの範囲でスリットダイにより塗工した後、減圧乾燥下において、180℃の温度で1時間かけて乾燥することにより、100nmの塗布膜2を得た。
正孔輸送層材料の塗布範囲の中心寄り80mm×80mmを必要成膜領域11の範囲と想定し、その外周四辺を、
図8に示すような除去液供給手段5と除去液回収手段6を有する塗布膜除去装置本体3を用いて、塗布膜2の選択的除去を行った。なお、塗布膜除去装置本体3としては、除去処理部32の底面の大きさが、短手方向10mm、長手方向100mmのものを使用した。
【0064】
また、除去液供給手段5の除去液供給部5bとして、シリンジポンプを使用し、定量吐出を可能とすることで、基板1と塗布膜除去装置本体3との間に保持される除去液8を、除去処理部32から除去液8が溢れ出さない程度の適当量に調整した。
また、基板1の表面と除去液供給口5aとの距離h1と、基板1の表面と除去液回収口6aとの距離h2は、表1中に記載した条件で実施した。なお、除去液供給口5a及び除去液回収口6aの近傍に取り付けたダイヤルゲージの、それぞれの計測値から、それぞれ、距離h1、h2が設定値となるように、塗布膜除去装置本体3の高さ及び傾きを調整した。
【0065】
【表1】
【0066】
以下、上述した距離条件における評価結果を、表2及び表3に示す。
【0067】
【表2】
【0068】
【表3】
【0069】
表2は、基板1の表面と塗布膜除去装置本体3との距離に除去液8を供給し、液膜を形成したときの液膜形状を評価した結果である。
表2中に示されているように、除去液供給口5aと基板1の表面との距離が大きくなるにつれ、基板1側の除去液8が濡れ広がることで、裾広がりの形状になる。この裾広がりの形状は、除去液回収手段6による回収時に除去液残りの原因となり、確実に除去液8を回収するという好ましい状態が得られない原因となる。また、除去液8の液膜の形状を鑑みると、除去液供給口5aと基板1の表面との距離は、3.0mm以下が好ましく、2.0mm以下がより好ましいものといえる。
【0070】
表3は、基板1の表面と塗布膜除去装置本体3との間隙に除去液8を供給して形成された液膜を、エジェクタータンクにより吸引した際の、除去液8の回収の様子を評価した結果である。
表3に示されているように、基板1の表面と除去液供給口5aとの距離に関わらず、除去液供給口5a及び除去液回収口6aにおける、基板1の表面との距離の大きさに差を設けることによって、除去液8の回収が良好に行えるようになる。ただし、上述した距離差が小さい場合は回収が遅く、時間を要する点を鑑みると、適度な距離差が必要であり、具体的には、0.1mm以上がより好ましい条件といえる。
【0071】
また、本実施例では、高さ計測装置4としてダイヤルゲージを用いたが、これに限定されるものではなく、高さ計測装置4としては、例えば、レーザ変位計等の非接触方式の計測器を用いた方が、キズや異物抑制の点でより好ましい。
また、除去液回収手段6は排気をとり、基板1と塗布膜除去装置本体3との間に所望の時間で保持され、正孔輸送層材料を溶解した除去液8を回収した。なお、保持時間は、30秒以上であれば、概ね塗布膜2が除去されることが確認されたが、同様な動作をもう1度繰り返すことで、回収しきれずに残存してしまう材料を確実に取り除き、より良好な清浄度を期待することが可能となる。
上述したように、塗布膜除去装置本体3による走査を繰り返し行い、さらに、走査方向を90度切り替え、必要成膜範囲の外周四辺の成膜不要領域の不要塗布膜を順次処理することで、80mm×80mmの必要成膜範囲の外周に残存塗布膜のない状態が得られ、必要成膜範囲への除去液8の飛散もなく所望の状態を確認できた。
【0072】
(実施例2−2)
実施例2−2では、実施例2−1における表1の(5)に示す条件において、除去液8の温度条件は24℃であったのに対し、この除去液8の温度条件を24℃から30℃に変更して、同様に塗布膜2の除去を行った。なお、除去液8の温度条件を除く他の条件は、実施例2−1における条件と同一とした。
その結果、除去液8の温度が24℃のときには、塗布膜2を概ね30秒で除去することが可能であることに対し、除去液8の温度が30℃のときには、塗布膜2の除去に要する所要時間を、概ね20秒まで短縮することができ、除去性能の向上が確認された。また、除去液8の温度をさらに上げた場合には、より除去性能の向上が確認された。
しかしながら、温度を40℃よりも高くすると、除去性能向上の差異が大きくなく、効果が薄くなることと、さらに、一方で蒸気の影響が懸念される点から、温度条件の採用に当たっては、装置、材料への配慮が必要となる。
【0073】
(実施例2−3)
実施例2−3では、実施例2−2での条件、すなわち、実施例2−1における表1の(5)に示す条件において、除去液8の温度条件を30℃とし、さらに、超音波振動印加装置14としての超音波振動子により、除去液8に超音波振動を加えながらの塗布膜除去装置本体3による塗布膜2の除去を行った。なお、超音波振動の出力は、50〜300W程度、振動数30〜100kHz程度とした。
その結果、超音波振動を加えないときには、塗布膜2を、概ね20秒で除去することが可能であることに対し、超音波振動を加えることにより、塗布膜2の除去に要する所要時間を15秒まで短縮することができ、除去性能の向上が確認された。
したがって、このように、有機発光画素外周部の塗布膜2を確実に除去することが可能であるため、成膜が簡便で且つ均一な塗布法を、正孔輸送層や正孔注入層等の画素ごとに塗り分けする必要のない共通層の成膜に採用した、有機ELパネルの生産が可能となる。
【0074】
以上、本発明の実施例2−1〜2−3について説明したが、本発明は上記実施例に制限されない。上記の説明では、有機ELディスプレイについて説明したが、これに限定されるものではない。例えば、前述の第1実施形態の場合と同様に、液晶用カラーフィルタ等、別の用途の成膜基板に適用してもよい。
また、塗布膜2は正孔輸送層を始めとする有機EL用途の材料に限定されるものではなく、感光性レジスト等、別の用途の材料に適用してもよい。
また、除去液8も、その塗布膜2の材料に応じたものを適宜選択することが可能であり、アルカリ現像液、有機溶剤、エッチング液等も対象となる。
【0075】
<第3実施形態>
以下、本発明の第3実施形態に係る塗布膜除去装置103について、図面を参照して説明する。
(塗布膜除去装置103の全体構成)
図1は、本発明の第3実施形態に係る塗布膜除去装置103を示す概略構成図である。また、
図2は、本発明の第3実施形態に係る塗布膜除去装置103の動作の一例を説明するための斜視図である。なお、
図1(d)では、第3実施形態に係る除去液供給口5a及び除去液回収口6aの記載を省略している。
図1に示すように、塗布膜除去装置103の構成は、第2実施形態に係る塗布膜除去装置102の構成と略同じである。即ち、塗布膜除去装置103は、塗布膜除去装置本体3と、塗布膜2を除去する対象の基板1を吸着保持するステージ10と、高さ調整装置13を備えている。また、第3実施形態に係る塗布膜除去装置本体3は、第2実施形態の場合と同様に、移動部33aと移動部33bとを備えている。
【0076】
また、第3実施形態に係る移動部33a、33bには、第2実施形態の場合と同様に、それぞれ除去処理部33が設けられている。しかしながら、第3実施形態に係る除去処理部33と、第2実施形態に係る除去処理部32とは、
図1(d)のBa−Bb断面における構造が異なっている(
図9参照)。
そこで、第3実施形態では、除去処理部33の構造について主に説明し、前述の各実施形態で説明した部分と実質的に同じ部分については、その説明を省略する。また、前述の各実施形態で説明した動作や工程と実質的に同じ動作や工程についても、その説明を省略する。
【0077】
(除去処理部33の構成)
図9は、
図1(d)に示す除去処理部33のBa−Bb断面図の一例である。
図9に示すように、除去処理部33は、除去液供給手段5と、除去液回収手段6と、除去液検知手段5c、6cとを備える。
除去液供給手段5は、除去液供給口5aと、除去液供給口5aに除去液を供給する除去液供給部5bとを備える。なお、第3実施形態に係る除去液供給部5bは、吐出ポンプで構成され、非容積ポンプと容積ポンプとどちらでも問題ない。しかしながら、除去液検知後の停止時のタイムラグやバルブ開閉等を含む誤差を考慮すると、除去液供給部5bは、吐出速度が調整可能であるもので構成したほうが好ましい。
また、連続除去時には、容積ポンプのような定量吐出での供給でも、高さ調整の精度や除去液8の表面張力粘度によって必要吐出量にバラツキが生じる。このため、吐出量は、除去液検知手段5c、6cの検知結果に基づき供給量制御することにより、供給過多、供給不足を防ぐこと好ましい。
【0078】
除去液検知手段5c、6cの両方が除去液8を検知した時の信号を、制御部である制御装置15が受取り、制御装置15は、検知信号に基づき除去液8の供給停止指令を出し供給を停止する。
除去液検知手段5c、6cは、除去液供給口5aと除去液回収口6aの近傍の両端に最低2箇所設置すればよいが、液経経過状況など確認するために2箇所以上設けてもよい。
また、除去液検知手段5c、6cは、赤外線反射リフレクタ等が一般的だが、除去液検知可能な設備であれば、これに限ったものでなくてよい。
除去液回収手段6は、基板1上の成膜不要領域(例えば、e1)と対向するように配置された除去液回収口6aと、除去液回収部6bとを備えている。
除去液回収口6aは、例えば、除去処理部33の長手方向側端部近傍に配置される。
除去液回収部6bは、例えば、ポンプ、エジェクタータンク等の吸引機器を備えており、除去液回収部6bを作動させることにより、基板1上の除去液8が、除去液回収口6aを介して除去液回収部6bに回収される。
【0079】
制御装置15は、除去液検知手段5c、6cによる除去液検知信号の解除が確認されるまでエジェクタによる除去液回収口6aの回収を行い、除去液不在の信号を受信後に、除去液8の回収停止指令を出して回収を停止する。
除去液8の回収量は、定量ポンプやタイマ制御にて定量的に回収してもよいが、除去液検知手段5c、6cにて除去液8の有無を確認することが好ましい。こうすることで、除去液8の位置を把握でき、液残りや除去液供給口5aまでの除去液8の吸い取りすぎを防ぎ、連続除去の除去性のムラを回避することができる。
【0080】
(動作その他)
次に、上記実施形態の動作を説明する。
まず、
図1に示すように、高さ計測装置4によって、基板1表面と移動部33aの中央部の距離hを測定する。
そして、高さ調整装置13が、高さ計測装置4が測定した距離hから、移動部33aの両端部における基板1の表面との距離h1、h2を予め設定した値となるように移動部33aを昇降、傾斜させる。
その後、基板1に成膜された塗布膜2に近接するように、例えば、移動部33aを対向させて配置する。次に、移動部33aと塗布膜2が成膜された基板1との間隙に、一定量の除去液8が保持されるように、除去液供給部5bから除去液供給口5aを介して除去液8を基板1上に吐出し、除去液検知手段5c、6cにより除去液8を検知した後液吐出を停止し、この状態を所定時間保持する。
その後、前述の各実施形態の場合と同様にして、基板1上の除去液8を除去液回収手段6により回収する。
すなわち、制御装置15が、除去液回収部6bを作動させ、除去液回収口6aを介して基板1上の除去液8を回収する。また、制御装置15は、回収時間は除去液検知手段5c、6cによる除去液検知の信号がOFFを確認後、回収停止する。
このように、移動部33a、33bを動作させることによって、
図1(d)に示すように、基板1の成膜不要領域e1〜e7の塗布膜2のみが除去される。
【実施例3】
【0081】
以下、本発明を、各実施例によりさらに詳しく説明する。
(実施例3−1)
第3実施形態に係る塗布膜除去装置103の一実施例として、有機ELディスプレイの正孔輸送層の成膜工程において、基板1上に正孔輸送層を形成する有機材料をスリットダイで塗工し、必要成膜範囲である発光領域の外周の不要な塗布膜2を除去する場合について説明する。
塗布する正孔輸送層材料として、ポリ(3,4)エチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸(PEDOT/PSS)を使用し、除去液8として純水を使用した。
【0082】
基板1には無アルカリガラスOA−10(日本電気硝子製)120mm×120mm×0.7mmを使用し、必要成膜範囲を80mm×80mmとしたときの外周4辺の不要な塗布膜2を選択的に除去することを試みた。
まず、洗浄済みの基板1に、前述の正孔輸送層材料を90mm×90mmの範囲でスリットダイにより塗工した後、減圧乾燥下で180℃、1時間乾燥することにより100nmの塗布膜2を得た。
正孔輸送層材料の塗布範囲の中心寄り80mm×80mmを必要成膜領域11の範囲と想定し、その外周4辺を、
図9に示すような除去液供給手段5と除去液回収手段6とを有する塗布膜除去装置本体3を用いて、塗布膜2の選択的除去を行った。なお、塗布膜除去装置本体3として、除去処理部33の底面の大きさが、短手方向10mm、長手方向100mmのものを使用した。
【0083】
除去液検知手段5c、6cとして、除去液供給口5a内側及び除去液回収口6a内側にそれぞれ1点赤外センサを設置した。除去液供給部5bと除去液回収部6bのバルブ開閉とによる液量変化を想定し液量供給過多を防止するため除去液供給口5aと除去液回収口6aの内側にセンサを設置した方がよい。また、センサの数は、供給と回収1点ずつとは限らず、除去液8の経過状態を観測するために数点設置してもよい。
また、除去液供給手段5の除去液供給部5bとして、シリンジポンプを使用し、基板1と塗布膜除去装置103の間隙に保持される除去液8を除去液検知手段5c、6cの両方が検知し信号を出力するまで吐出する。制御装置15が検知信号を受け取ると同時に除去液8の供給を停止し、所定時間保持する。
【0084】
また、基板1の表面と、塗布膜除去装置本体3の除去液供給口5a側の底面との距離h1、及び除去液回収口6a側の底面との距離h2は、表4中に記載した条件で実施した。供給間隙が距離h1であり、回収間隙が距離h2である。なお、塗布膜除去装置本体3の除去液供給口5a、及び除去液回収口6a近傍に取り付けたダイヤルゲージのそれぞれの計測値から、それぞれ距離h1、h2が設定値となるように塗布膜除去装置本体3の高さや傾きを調整した。供給間隙と、供給間隙と回収間隙との差のそれぞれの実施条件を表4に示す。
【0085】
【表4】
【0086】
上記間隙条件における評価結果を、表5及び表6に示す。
【0087】
【表5】
【0088】
【表6】
【0089】
表5は、基板1の表面と塗布膜除去装置本体3の底面との間隙に除去液8を供給して、液膜を形成したときの液膜形状を評価した結果である。除去液供給口5a側での基板1の表面との間隙が大きくなるにつれ、基板1側の除去液8が濡れ広がることで、裾広がりの形状になる。この裾広がりの形状は除去液回収手段6による回収時に除去液残りの原因となり、確実に除去液8を回収するという好ましい状態が得られない原因となる。
除去液8の液膜の形状を鑑みると、表5から分かるように、除去液供給口5aにおける基板1の表面との間隙は3.0mm以下が好ましく、2.0mm以下がより好ましいものといえる。
【0090】
表6は、基板1の表面と塗布膜除去装置本体3の底面との間隙に除去液8を供給し形成された液膜を、エジェクタータンクにより吸引した際の除去液8の回収の様子を評価した結果である。除去液供給口5aにおける基板1の表面との間隙に関わらず、除去液供給口5a及び除去液回収口6aにおける、基板1の表面との間隙の寸法の広さに差を設けることによって、除去液8の回収が良好に行えるようになる。ただし、上記間隙差が小さい場合は回収が遅く、時間を要する点を鑑みると、適度な間隙差が必要であり、0.1mm以上がより好ましい条件といえる。
【0091】
また、本実施例では、高さ計測装置4としてダイヤルゲージを用いたが、これに限定されるものではなく、高さ計測装置4としては、例えば、レーザ変位計等の非接触方式の計測器を用いた方がキズや異物抑制の点でより好ましい。
また、除去液回収手段6は排気をとり、基板1と塗布膜除去装置本体3との間に所望の時間で保持され、正孔輸送層材料を溶解した除去液8を回収した。なお、保持時間は30秒以上であれば概ね塗布膜2が除去されることが確認されたが、同様な動作をもう1度繰り返すことで、回収しきれずに残存してしまう材料を確実に取り除き、より良好な清浄度が期待できる。
上述したように、塗布膜除去装置本体3による走査を繰り返し行い、さらに、走査方向を90度切り替え、必要成膜範囲の外周4辺の成膜不要領域の不要塗布膜を順次処理することで、80mm×80mmの必要成膜範囲の外周に残存塗布膜のない状態が得られ、必要成膜範囲への除去液8の飛散もなく所望の状態を確認できた。
【0092】
(実施例3−2)
実施例3−2では、実施例3−1における表4の(5)に示す条件において、除去液8の温度条件を除く他の条件は実施例3−1における同一条件として、同様に塗布膜2の除去を行った。結果を表7に示す。
【0093】
【表7】
【0094】
表7から分かるように、除去液8の温度が24℃のときには、塗布膜2を概ね30秒で除去できるのに対し、除去液8の温度が30℃のときには、塗布膜2の除去に要する所要時間を、概ね20秒まで短縮することができ、除去性能の向上が確認された。また、除去液8の温度をさらに上げた場合には、より除去性能の向上が確認された。しかしながら、温度を40℃より高くすると除去性能向上の差異が大きくなく、効果が薄くなること、さらに一方で蒸気の影響が懸念される点から、温度条件の採用に当たっては、装置、材料への配慮が必要となる。したがって、このように、有機発光画素外周部の塗布膜2を確実に除去することができるため、成膜が簡便で且つ均一な塗布法を、正孔輸送層や正孔注入層などの画素ごとに塗り分けする必要のない共通層の成膜に採用した有機ELパネルの生産が可能となる。
【0095】
以上、本発明の実施例3−1、3−2について説明したが、本発明は上記実施例に制限されない。上記では有機ELディスプレイについて説明したが、これに限定されるものではない。例えば、前述の第1実施形態の場合と同様に、液晶用カラーフィルタなど別の用途の成膜基板に適用してもよい。
また、塗布膜2は、正孔輸送層を始めとする有機EL用途の材料に限定されるものではなく、感光性レジストなど別の用途の材料に適用してもよい。
また、除去液8もその塗布膜2の材料に応じたものを適宜選択でき、アルカリ現像液、有機溶剤、エッチング液等も対象となる。
【0096】
<第4実施形態>
以下、本発明の第4実施形態に係る塗布膜除去装置104について、図面を参照して説明する。
(塗布膜除去装置104の全体構成)
図1は、本発明の第4実施形態に係る塗布膜除去装置104を示す概略構成図である。また、
図2は、本発明の第4実施形態に係る塗布膜除去装置104の動作の一例を説明するための斜視図である。なお、
図1(d)では、第4実施形態に係る除去液供給口5a及び除去液回収口6aの記載を省略している。
図1に示すように、塗布膜除去装置104の構成は、第1から第3の各実施形態に係る塗布膜除去装置101から103の構成と略同じである。即ち、塗布膜除去装置104は、塗布膜除去装置本体3と、塗布膜2を除去する対象の基板1を吸着保持するステージ10と、高さ調整装置13を備えている。また、第4実施形態に係る塗布膜除去装置本体3は、前述の各実施形態の場合と同様に、移動部34aと移動部34bとを備えている。
なお、第4実施形態に係る高さ調整装置13は、除去液供給口5a側の移動部34a、34bの底面19と基板1の表面との間の距離h1と、除去液回収口6a側の底面19と基板1の表面との間の距離h2とを個別に変更可能な間隙寸法調整装置である。
【0097】
この塗布膜除去装置104は、制御部20を備えている点で、塗布膜除去装置101から103とは異なっている(
図10参照)。そこで、第4実施形態では、制御部20について主に説明し、前述の各実施形態で説明した部分と実質的に同じ部分については、その説明を省略する。また、前述の各実施形態で説明した動作や工程と実質的に同じ動作や工程についても、その説明を省略する。
【0098】
(制御部20の構成)
図10は、第4実施形態に係る塗布膜除去装置104の動作の一例を説明するための斜視図である。また、
図11は、
図1(d)に示す除去処理部34のBa−Bb断面図の一例である。
図10及び
図11に示すように、制御部20は、少なくとも塗布膜除去装置104の底面19と基板1の表面との間に除去液8が存在するときに、高さ調整装置13を介して、塗布膜除去装置104の底面19について、底面19が基板1の表面に対し、底面19と基板1の表面との対向方向に0.05度以上の傾きになるように調整する。なお、底面19は、除去液供給口5aと除去液回収口6aとの間に位置している底面を指す。
また、制御部20は、少なくとも底面19と基板1の表面との間に除去液8が存在するときに、高さ調整装置13を介して、底面19と基板1の表面との間隙を3.0mm以下とするとよい。
【0099】
また、制御部20は、少なくとも底面19と基板1の表面との間に除去液8が存在するときに、高さ調整装置13を介して、底面19について、基板1の表面に対する底面19の傾きを、1回以上変更するとよい。
また、制御部20は、基板1の表面と底面19との距離を計測する高さ計測装置4を更に備え、高さ調整装置13を介して、高さ計測装置4の計測値に応じて基板1の表面と底面19との間隙を調整するとよい。
【0100】
また、除去液供給口5aより除去液8を供給する前に、相対的に除去液供給口5a側の底面19と基板1の表面との間の距離h1を、除去液回収口6a側の底面19と基板1の表面との間の距離h2よりも大きく設定する第1処理部と、除去液供給口5aより除去液8を吐出したと判定すると、予め設定した回数だけ、底面19について、基板1の表面に対する底面19の傾きを交互に傾きを可変させる第2処理部と、除去液回収口6aから除去液8を回収すると判定すると、相対的に除去液供給口5a側の底面19と基板1の表面との間の距離h1を、除去液回収口6a側の底面19と基板1の表面との間の距離h2よりも小さく設定する第3処理部とを備える制御部20を有するとよい。
なお、除去液供給部5bは、前述の各実施形態と同様に、定量吐出が可能なシリンジポンプ等で構成されている。また、第4実施形態では、除去液供給部5bを用いて、一定量の除去液8を、除去液供給口5aを介して基板1上に液滴形状となる様に吐出する。
【0101】
(動作その他)
次に、上記実施形態の動作を説明する。
まず、
図1に示すように、高さ計測装置4によって基板1の表面と移動部34aの中央部の距離hを測定する。高さ調整装置13は、高さ計測装置4が測定した距離hから、移動部34aの両端部における基板1の表面との距離h1、h2を予め設定した値となるように移動部34aを昇降、傾斜させる。その後、基板1に成膜された塗布膜2に近接するように、例えば、移動部34aを対向させて配置させる。次に、移動部34aと塗布膜2が成膜された基板1との間隙に、一定量の除去液8が保持されるように除去液供給部5bから除去液供給口5aを介して除去液8を基板1上に吐出し液滴形状にする。
【0102】
上記設定値に設定された距離h1、h2は、移動部34aと塗布膜2が成膜された基板1との間の除去液8が、除去液8の粘度や表面張力等の特性に応じて一定幅で液滴が保持される距離(3mm以下)とすることが望ましい。
この時、吐出された液滴形状の除去液8は間隙寸法の広いh1の方から間隙寸法の狭いh2の方へ向かって移動する。
除去液8が除去液回収口6aへ到達し、設定された一定時間を要した後、先ほどとは逆に除去液供給口5aの高さをh2に降下させ、反対に除去液回収口6aの高さをh1に上昇させることで除去液8がさらに塗布膜除去装置104の幅方向(X軸方向)に流動し、不要塗布膜の溶解性あるいは剥離性を向上させる。この時、除去液供給口5aの高さと除去液回収口6aの高さは予め設定されているh1とh2に規定されず、シーソー状に交互に高さを変えて傾きを持たせればよく、同じ高さにする必要は無い。
【0103】
この動作を複数回、繰り返し交互に変え、塗布膜2が溶解もしくは剥離すると推定される時間が経過すると、移動部34aと基板1との間で塗布膜2と交じり合った除去液8を除去液回収手段6により回収し排出する。すなわち、除去液回収部6bを作動させ、除去液回収口6aを介して基板1上の除去液8を回収する。
これにより基板1上の成膜不要領域e1〜e7に存在する塗布膜2の除去が行われ、より清浄な基板1の表面を得ることができる。また、除去液8を吐出して液膜を張り、一定時間放置した後に除去液8を回収する方法と比べ、除去液量を減らすことが可能となる。
このように、移動部34a、34bを動作させることによって、
図1(d)に示すように基板1の成膜不要領域e1〜e7の塗布膜2のみが除去される。
なお、第4実施形態における除去液回収工程は、前述の各実施形態で説明した工程と同様である。
【実施例4】
【0104】
以下、本発明を、各実施例によりさらに詳しく説明する。
(実施例4−1)
第4実施形態に係る塗布膜除去装置104の一実施例として、有機ELディスプレイの正孔輸送層の成膜工程において、基板1上に正孔輸送層を形成する有機材料をスリットダイで塗工し、必要成膜範囲である発光領域の外周の不要な塗布膜2を除去する場合について説明する。
塗布する正孔輸送層材料として、ポリ(3,4)エチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸(PEDOT/PSS)を使用し、除去液8として純水を使用した。
基板1には無アルカリガラスOA−10(日本電気硝子製)120mm×120mm×0.7mmを使用し、必要成膜範囲を80mm×80mmとしたときの外周4辺の不要な塗布膜2を選択的に除去することを試みた。
まず、洗浄済みの基板1に、正孔輸送層材料を90mm×90mmの範囲でスリットダイにより塗工した後、減圧乾燥下で180℃、1時間乾燥することにより100nmの塗布膜2を得た。
【0105】
正孔輸送層材料の塗布範囲の中心寄り80mm×80mmを必要成膜領域11の範囲と想定し、その外周4辺を
図11に示すような除去液供給手段5と除去液回収手段6とを有する塗布膜除去装置本体3により塗布膜2の選択的除去を行った。なお、塗布膜除去装置本体3は除去処理部34の底面の大きさ、短手方向10mm、長手方向100mmのものを使用した。
また、除去液供給手段5の除去液供給部5bとして定量吐出可能なシリンジポンプを使用し、基板1と塗布膜除去装置本体3の間隙に保持される除去液8が液滴になる様に0.4mlの吐出量に調整した。
【0106】
また、基板1の表面と、塗布膜除去装置本体3の除去液供給口5a下端との距離h1、及び除去液回収口6a下端との距離h2は、表8中に記載した条件で実施した。なお、塗布膜除去装置本体3の除去液供給口5a、及び除去液回収口6a近傍に取り付けたダイヤルゲージのそれぞれの計測値から、それぞれ距離h1、h2の設定値となるように塗布膜除去装置本体3の高さ、傾きを調整し、除去液供給口5aから液滴を吐出した後、距離h1と距離h2との高さを入れ替え、液滴を移動させた。そして再度除去液供給口5a、除去液回収口6aの距離をh1、h2に戻した後、除去液8を回収させた。
【0107】
【表8】
【0108】
上記条件における評価結果を表9及び表10に示す。
【0109】
【表9】
【0110】
【表10】
【0111】
表9は、基板1の表面と塗布膜除去装置本体3の間隙に除去液8を供給し形成された液膜を、エジェクタータンクにより吸引した際の除去液8の回収の様子を評価した結果である。表9から分かるように、除去液供給口5aにおける基板1の表面との間隙に関わらず、除去液供給口5a及び除去液回収口6aにおける、基板1の表面との間隙の大きさに差を設けることによって、除去液8の回収が良好に行えるようになる。ただし、間隙差が小さい場合は回収が遅く、時間を要する点を鑑みると、適度な間隙差が必要であり、0.1mm以上がより好ましい条件といえる。
【0112】
表10は、基板1の表面と塗布膜除去装置本体3の間隙に除去液8を供給し、液膜を形成したときの液膜形状を評価した結果である。表10から分かるように、除去液供給口5aでの基板1の表面との間隙が大きくなるにつれ、基板1側の除去液8が濡れ広がることで、裾広がりの形状になる。この裾広がりの形状は除去液回収手段6による回収時に除去液残りの原因となり、確実に除去液8を回収するという好ましい状態が得られない原因となる。除去液8の液膜の形状を鑑みると、除去液供給口5aにおける基板1の表面との間隙は3.0mm以下が好ましく、2.0mm以下がより好ましいものといえる。
また、本実施例では、高さ計測装置4としてダイヤルゲージを用いたが、これに限定されるものではなく、レーザ変位計等の非接触方式の計測器を用いた方がキズや異物抑制の点でより好ましい。
【0113】
また、除去液回収手段6は排気をとり、基板1と塗布膜除去装置本体3との間に所望の時間で保持され、正孔輸送層材料を溶解した除去液8を回収した。なお、保持時間は30秒以上であれば概ね塗布膜2が除去されることが確認されたが、同様な動作をもう1度繰り返すことで、回収しきれずに残存してしまう材料を確実に取り除き、より良好な清浄度が期待できる。
塗布膜除去装置本体3による走査を繰り返し行い、さらに走査方向を90度切り替え、必要成膜範囲の外周4辺の成膜不要領域の不要塗布膜を順次処理することで、80mm×80mmの必要成膜範囲の外周に残存塗布膜のない状態が得られ、必要成膜範囲への除去液8の飛散もなく所望の状態を確認できた。
【0114】
(実施例4−2)
実施例4−2では、実施例4−1における表8の(5)に示す条件において、除去液8の温度条件は24℃であったのに対し、この除去液8の温度条件を24℃から30℃に変更して、同様に塗布膜2の除去を行った。なお、除去液8の温度条件を除く他の条件は、実施例4−1における条件と同一とした。
その結果、除去液8の温度が24℃のときには、塗布膜2を概ね30秒で除去できるのに対し、除去液8の温度が30℃のときには、塗布膜2の除去に要する所要時間を、概ね20秒まで短縮することができ、除去性能の向上が確認された。また、除去液8の温度をさらに上げた場合には、より除去性能の向上が確認された。しかしながら、温度を40℃より高くすると除去性能向上の差異が大きくなく、効果が薄くなること、さらに一方で蒸気の影響が懸念される点から、温度条件の採用に当たっては、装置、材料への配慮が必要となる。
したがって、このように、有機発光画素外周部の塗布膜2を確実に除去することができるため、成膜が簡便で且つ均一な塗布法を、正孔輸送層や正孔注入層等の画素ごとに塗り分けする必要のない共通層の成膜に採用した有機ELパネルの生産が可能となる。
【0115】
以上、本発明の実施例4−1、4−2について説明したが、本発明は上記実施例に制限されない。上記では有機ELディスプレイについて説明したが、これに限定されるものではない。例えば、前述の第1実施形態の場合と同様に、液晶用カラーフィルタなど別の用途の成膜基板に適用してもよい。
また、塗布膜2は正孔輸送層を始めとする有機EL用途の材料に限定されるものではなく、感光性レジストなど別の用途の材料に適用してもよい。
また、除去液もその塗布膜の材料に応じたものを適宜選択でき、アルカリ現像液、有機溶剤、エッチング液なども対象となる。
【0116】
<第5実施形態>
以下、本発明の第5実施形態に係る塗布膜除去装置105について図面を参照して説明する。
(塗布膜除去装置105の全体構成)
図12は、第5実施形態に係る塗布膜除去装置の構成を説明する平面図である。また、
図13は、第5実施形態に係る塗布膜除去装置本体を示す正面図、平面図及び側面図である。また、
図14は、第5実施形態に係る塗布膜除去装置の動作の一例を説明するための斜視図である。また、
図15は、第5実施形態に係る塗布膜除去装置の構成を説明する断面図である。
【0117】
図12(a)及び
図14に示すように、塗布膜除去装置105は、塗布膜除去装置本体3と、塗布膜2が除去される基板1を吸着保持するステージ10と、高さ計測装置4と、高さ調整装置13とをそれぞれ備える。また、塗布膜除去装置本体3は、
図12(a)においてステージ10のX軸方向に沿って移動し基板1に対しY軸方向とX軸方向の塗布膜2を除去する移動部35aと、
図12(a)においてステージ10のY軸方向に移動し、基板1のX軸方向とY軸方向の塗布膜2を除去する移動部35bと、からなる。
移動部35aは、ステージ10上に吸着保持された基板1をY軸方向に跨ぐように、ステージ10のY軸方向に沿って配置される。移動部35aの表面の形状(平面形状)は、必要成膜領域11が格子状に形成されているため、
図12(a)、
図13及び
図14に示すように、X−Y平面においてX軸方向及びY軸方向に平行に直交するL字型としている。つまり、矩形の必要成膜領域11の4辺のうち2辺を同時に塗布膜除去処理することが可能な形状としている。
【0118】
移動部35aは、
図15(a)及び
図15(b)に示すように、除去液供給手段51、52と、除去液回収手段61とを備える。
除去液供給手段51、52は、除去液供給口51a、52aと、除去液供給口51a、52aに除去液8を供給する除去液供給部51b、52bと、をそれぞれ備える。また、除去液回収手段61は、除去液回収口61aと、除去液回収口61aを介して除去液8を回収する除去液回収部61bとを備える。
除去液供給口51a、52aは、
図13に示すように、移動部35aのL字に直交する辺の端部近傍にそれぞれ設けられる。また、除去液回収口61aは、移動部35aのL字に直交する角部近傍に設けられる。除去液供給口51a、52a及び除去液回収口61aは、基板1に対向して、Z軸方向に除去処理部35を貫通するように設けられる。
【0119】
また、
図13に示すように、除去液供給口51aと除去液回収口61aとは、移動部35aの底面側(
図14に示すZ軸負方向側)の開口部が、X1の角度の傾きを有するように設けられる。さらに、除去液供給口51aと除去液回収口61aとは、移動部35aの底面側の開口部が、X2の角度の傾きを有するように設けられる。このような除去処理部35の底面の傾きは、移動部35aの底面全体にわたって設けられる。すなわち、移動部35aのL字型形状において、X軸方向に延在する短い方の辺の底面はX−Y平面に対してX1の傾きをX軸方向に有し、Y軸方向に延在する長い方の辺の底面はX−Y平面に対してX2の傾きをY軸方向に有する。このとき、
図15(a)に示すように、角度X1は、移動部35aのY軸正方向側端部の底面と塗布膜2が塗布された基板1の表面との距離h1に対して、移動部35aのY軸負方向側端部の底面と塗布膜2が塗布された基板1の表面との距離h2が小さくなるように設けられる。同様に、角度X2は、移動部35aのX軸負方向側端部の底面と塗布膜2が塗布された基板1の表面との距離h2に対して、移動部35aのX軸正方向側端部の底面と塗布膜2が塗布された基板1の表面との距離h3が小さくなるように設けられる。
【0120】
除去液供給部51b、52bは、定量吐出が可能なシリンジポンプ等で構成され、一定量の除去液8を、除去液供給口51a、52aを介して基板1上に吐出する。また、除去液回収部61bはエジェクタータンク等の吸引機器を備えており、この除去液回収部61bを作動させることにより、基板1上の除去液8が、除去液回収口61aを介して除去液回収部61bに回収される。移動部35aは、除去液供給部51b、52bが作動することにより、除去液8を除去液供給部51b、52bから除去液供給口51a、52aに供給し、除去液供給口51a、52aの基板1側の開口端から除去液8を基板1上に吐出する。また、移動部35aは、除去液回収部61bが作動することにより、除去液供給部51b、52bから吐出された除去液8を除去液回収口61aから回収する。
【0121】
高さ計測装置4は、移動部35aのY軸方向中央のX軸正方向側端部に支持され、基板1表面と移動部35aのX軸方向中央部の底面との距離hを測定する。
高さ調整装置13は、移動部35aのY軸方向両端部に設けられ、高さ計測装置4が測定した距離hから、移動部35aのY軸方向両端部における基板1の表面との距離h2、h3が予め設定した値となるように移動部35aを昇降させる。
【0122】
移動部35aは、前述の各実施形態に係る移動部31a〜34aと同様に、例えば、ステージ10のY軸方向の両側にX軸方向に沿って配置されたガイド及び昇降機構(共に図示せず)によりX軸方向及びZ軸方向に移動する。これによって、例えば、
図14及び
図15に示すように、基板1の表面と移動部35aを所定の距離hを保持した状態で、移動部35aが基板1のX軸方向に移動するようになっている。なお、第5実施形態では、昇降機構が高さ調整装置13を構成する。昇降機構は、移動部35aにおけるY軸に沿った直線部分のY軸方向の両側に配置され、高さ調整装置13を構成してもよい。
【0123】
移動部35bは、移動部35aに対し、X−Y平面におけるL字型の形状が反転した状態となるように形成されるが、それ以外の構成については移動部35aと同様である。つまり、
図12(a)に示すように、移動部35aはX−Y平面において、長い方の辺がL字型の角部からY軸負方向に延在し、短い方の辺がL字型の角部からX軸正方向側に延在するように形成される。これに対して、移動部35bはX−Y平面において、長い方の辺がL字型の角部からX軸負方向に延在し、短い方の辺がL字型の角部からY軸正方向側に延在するように形成される。
【0124】
第5実施形態では、矩形の必要成膜領域11が格子状に配置されている。これに合わせて、移動部35bは、平面視で移動部35aと反転した方向で配置される。すなわち、移動部35bは、ステージ10上に吸着保持された基板1を跨ぐように、ステージ10のX軸方向に沿って配置される。そして、塗布膜除去処理時には、移動部35aに固定された高さ計測装置4によって測定された距離hに基づき、移動部35bを支持する高さ調整装置13が、基板1の表面と移動部35bとの距離h1、h2が予め設定した値となるように移動部35bを昇降させる。移動部35bは、例えば、ステージ10のX軸方向の両側にY軸方向に沿って配置されたガイド及び昇降機構(共に図示せず)によりY軸方向及びZ軸方向に移動する。これによって、移動部35bは、基板1のY軸方向に走査するようになっている。すなわち、移動部35a、35bは、X軸方向及びY軸方向の2方向に移動可能となっていればよい。なお、本実施形態における昇降機構は、前述の各実施形態に係る昇降機構と同様である。
【0125】
移動部35a、35bは、図示しない駆動装置によって、基板1に沿って移動されるようになっている。移動部35a、35bは、基板1に沿って移動し、移動部35a、35bを各成膜不要領域に重畳させ、重畳した成膜不要領域e1〜e7の塗布膜2をそれぞれ除去する。
図12(b)は、移動部35aが成膜不要領域e3及び成膜不要領域e4の一部分と対応する位置に順に移動した状態を示す。また、
図12(d)は、移動部35a、35bにより、成膜不要領域e1〜e7が除去された状態を示す。
なお、移動部35a、35bを用いた塗布膜2の除去工程は、前述の各実施形態で説明した塗布膜2の除去工程と同様である。
また、移動部35a、35bは、同一構成を有するが、基板1の表面と移動部35a、35bとの間の距離h1、h2は異なる設定としてもよい。
このように、第5実施形態に係る塗布膜除去装置本体3は、成膜不要領域e1〜e7の一部分と除去処理部35とが対向するように移動配置した状態で、除去液供給手段51、52及び除去液回収手段61を動作させることによって、成膜不要領域e1〜e7の外側に除去液8が流れ出ることを防止しつつ、成膜不要領域e1〜e7に除去液8を吐出するとともに除去液8を回収できるようになっている。
【0126】
(動作その他)
次に、上記実施形態の動作を説明する。
まず、
図12(a)に示すように、高さ計測装置4によって基板1の表面と移動部35aの中央部の距離hを測定する。高さ調整装置13は、高さ計測装置4が測定した距離hから、移動部35aのY軸方向の両端部における基板1の表面との距離h1、h2が予め設定した値となるように移動部35aを昇降させる。なお、距離h1、h2は、移動部35aと塗布膜2が成膜された基板1との間の除去液8が、除去液8の粘度や表面張力等の特性に応じて一定幅で保持される距離とすることが望ましい。
【0127】
次いで、基板1に成膜された塗布膜2に近接するように、例えば、移動部35aを基板1に対向させて配置する。その後、移動部35aと塗布膜2が成膜された基板1との間隙に、一定量の除去液8が保持されるように除去液供給部51b、52bから、除去液供給口51a、52aを介して除去液8を基板1上にそれぞれ吐出し、この状態を所定時間保持する。なお、所定時間とは、塗布膜2が除去液8により、溶解もしくは剥離するのに充分な時間である。
【0128】
さらに、各成膜不要領域e1〜e7上に、除去液8が所定時間保持されることにより塗布膜2が溶解もしくは剥離する。そして、塗布膜2が溶解もしくは剥離すると推定される時間が経過すると、移動部35aと基板1との間で塗布膜2と交じり合った除去液8を除去液回収部61bにより回収し排出する。すなわち、除去液回収部61bを作動させ、除去液回収口61aを介して基板1上の除去液8を回収する。このような除去液8の供給と回収とを繰り返すことで、基板1上の成膜不要領域e1〜e7に存在する塗布膜2の除去が行なわれ、より清浄な基板表面を得ることができる。
【0129】
その後、この操作を、
図12(a)及び
図12(b)に示すように、移動部35aを左右方向に移動させながら各地点においても同様に行う。これによって、移動部35aによる基板1の前後方向に延びる成膜不要領域e1〜e4の塗布膜2の除去が終了する(
図16参照)。
次いで、
図12(c)に示すように、移動部35bをY軸方向に移動させながら各地点において、基板1の成膜不要領域e5〜e7の塗布膜2に対して同様の手順で塗布膜2の除去を行う。
このように、移動部35a、35bを動作させることによって、
図12(d)に示すように、基板1の成膜不要領域e1〜e7の塗布膜2のみが除去される。
また、吐出した除去液8の温度を30℃以上40℃以下の範囲内とすることで、塗布膜2を効率よく溶解させることができ、処理時間の短縮と、より確実な塗布膜2の除去を実現することができる。
【0130】
(変形例)
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
例えば、上記実施形態では、除去液供給口51a、52aは除去処理部35の端部に、除去液回収口61aは除去処理部35の角部に配置しているが、除去液供給口51a、52a及び除去液回収口61aの位置と個数はかかる例に限定されない。つまり、除去処理部35の底面と基板1の表面との間隙の条件を満たしていればよく、例えば
図13と異なる位置に複数箇所備えていてもよい。
また、角度X1と角度X2とは異なる設定としてもよい。
【0131】
また、高さ計測装置4は移動部35aの除去処理部35に固定せず、移動部35bの除去処理部35に固定してもよい。更には、例えば、ステージ10のY軸方向の両側にX軸方向に沿って配置されたガイド(図示せず)を案内としてX軸方向に移動するように独立して走査するようにしてもよい。また、例えば、ステージ10のX軸方向の両側にY軸方向に沿って配置されたガイド(図示せず)を案内としてY軸方向に移動するように走査するようにしてもよい。つまり、移動部35a、35bの除去処理部35と基板1の表面(塗布膜表面)との距離hを測定し、その測定値に基づき、高さ調整装置13により基板1の表面との距離h1、h2が設定値となるよう高さ調整が可能に構成されていればよい。
【0132】
また、除去液供給部51b、52b及び除去液回収部61bは、除去処理部35とは別体として設け、変形可能な除去液供給用チューブを介して除去液供給部51bと除去液供給口51aとを接続してもよい。これと同様に、変形可能な除去液回収用チューブを介して除去液供給部52bと除去液供給口52aとを、除去液回収部61bと除去液回収口61aとを接続してもよい。また、これら除去液供給部51b、52b及び除去液回収部61bを塗布膜除去装置本体3と別に設けてもよい。
また、上記実施形態では、除去処理部35は、X−Y平面においてL字型の形状を有するが、本発明は係る例に限定されない。例えば、X軸またはY軸のいずれかの方向に延在する形状でもよい。このとき、除去液供給手段51、52及び除去液回収手段61は、長手方向の両端部付近にそれぞれ1箇所ずつ設けられてもよい。
【実施例5】
【0133】
以下、本発明を、各実施例によりさらに詳しく説明する。
(実施例5−1)
第5実施形態に係る塗布膜除去装置105の一実施例として、有機ELディスプレイの正孔輸送層の成膜工程において、基板1上に正孔輸送層を形成する有機材料をスリットダイで塗工し、必要成膜範囲である発光領域の外周の不要な塗布膜2を除去する場合について説明する。
塗布する正孔輸送層材料として、ポリ(3、4)エチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸(PEDOT/PSS)を使用し、除去液として純水を使用した。
基板1には無アルカリガラスOA−10(日本電気硝子製)120mm×120mm×0.7mmを使用し、必要成膜範囲を80mm×80mmとしたときの外周4辺の不要な塗布膜2を選択的に除去することを試みた。
まず、洗浄済みの基板1に、正孔輸送層材料を90mm×90mmの範囲でスリットダイにより塗工した後、減圧乾燥下で180℃、1時間乾燥することにより100nmの塗布膜2を得た。
【0134】
正孔輸送層材料の塗布範囲の中心寄り80mm×80mmを必要成膜領域11の範囲と想定し、その4辺の外周の塗布膜2を、塗布膜除去装置本体3を用いて選択的に除去した。本実施例における塗布膜除去装置本体3は、一方向に延在する除去処理部35を備える。除去処理部35は、
図17(a)に示すように、長手方向の両端部に除去液供給口51aと除去液回収口61aとをそれぞれ1箇所ずつ有する。除去液供給口51a及び除去液回収口61aの上側(Z軸正方向側)には、例えば、
図18に示すように、除去液供給部51b及び除去液回収部61bがそれぞれ設けられ、除去液供給手段51及び除去液回収手段61を形成する。除去処理部35は、短手方向10mm、長手方向100mmのものを使用した。
【0135】
また、除去液供給手段51の除去液供給部51bとしてシリンジポンプを使用し、定量吐出を可能とすることで、基板1と塗布膜除去装置本体3との間隙に保持される除去液8を、除去処理部35から除去液8が溢れ出さない程度の適当量に調整した。
また、基板1の表面と、塗布膜除去装置本体3の除去液供給口51a下端との距離h1、及び除去液回収口61a下端との距離h2は、表11中に記載した条件で実施した。なお、塗布膜除去装置本体3の除去液供給口51a、及び除去液回収口61a近傍に取り付けたダイヤルゲージのそれぞれの計測値から、それぞれ距離h1、h2の設定値となるように塗布膜除去装置本体3の高さ、傾きを調整した。
【0136】
【表11】
【0137】
上記間隙条件における評価結果を、表12及び表13に示す。
【0138】
【表12】
【0139】
【表13】
【0140】
表12は、基板1の表面と塗布膜除去装置本体3との間隙に除去液8を供給し、液膜を形成したときの液膜形状を評価した結果である。除去液供給口51aでの基板1の表面との間隙が大きくなるにつれ、基板1側の除去液8が濡れ広がることで、裾広がりの形状になる。この裾広がりの形状は除去液回収手段61による回収時に除去液残りの原因となり、確実に除去液8を回収するという好ましい状態が得られない原因となる。除去液8の液膜の形状を鑑みると、除去液供給口51aにおける基板1の表面との間隙は、3.0mm以下が好ましく、2.0mm以下がより好ましいものといえる。
【0141】
表13は、基板1の表面と塗布膜除去装置本体3との間隙に除去液8を供給し形成された液膜を、エジェクタータンクにより吸引した際の除去液8の回収の様子を評価した結果である。除去液供給口51aにおける基板1の表面との間隙に関わらず、除去液供給口51a及び除去液回収口61aにおける、基板1の表面との間隙の大きさに差を設けることによって、除去液8の回収が良好に行えるようになる。ただし、上記間隙差が小さい場合は回収が遅く、時間を要する点を鑑みると、適度な間隙差が必要であり、0.1mm以上がより好ましい条件といえる。
【0142】
また、本実施例では高さ計測装置4としてダイヤルゲージを用いたが、これに限定されるものではなく、レーザ変位計等の非接触方式の計測器を用いた方がキズや異物抑制の点でより好ましい。
また、除去液回収手段61は排気をとり、基板1と塗布膜除去装置本体3との間に所望の時間で保持され、正孔輸送層材料を溶解した除去液8を回収した。なお、保持時間は30秒以上であれば概ね塗布膜2が除去されることが確認されたが、同様な動作をもう1度繰り返すことで、回収しきれずに残存してしまう材料を確実に取り除き、より良好な清浄度が期待できる。
【0143】
塗布膜除去装置本体3を、
図17(a)及び
図17(b)に示すように、除去処理部35の長手方向がX軸と平行になる状態でY軸方向に平行に繰り返し走査させ、さらに除去処理部35の長手方向がY軸と平行になる状態にした後、X軸方向に平行に繰り返し走査させた。このように、
図20(a)及び
図20(b)の斜線領域で示す必要成膜範囲の外周4辺の成膜不要領域e1、e2、e5、e6の不要な塗布膜2を順次処理することで、80mm×80mmの必要成膜範囲の外周に残存する塗布膜2のない状態が得られ、必要成膜領域11への除去液8の飛散もなく所望の状態を確認できた。
【0144】
(実施例5−2)
実施例5−2では、必要成膜領域11が長方形形状であることから、2つの辺を同時に除去できる除去処理部35(
図13及び
図14と同様のL字型形状)の表面形状を持った塗布膜除去装置本体3により塗布膜2の除去を行った。このときの塗布膜除去装置本体3の除去処理部35の底面の大きさは、L字型の角部からそれぞれ延在する2辺をそれぞれ100mmとし、各辺における幅を10mmとした。また、除去液供給口51a、52aと除去液回収口61aそれぞれと基板1との距離h1〜3は、実施例5−1における表11の(5)に示す条件に基づく。
【0145】
実施例5−1と同じく、基板1には無アルカリガラスOA−10(日本電気硝子製)120mm×120mm×0.7mmを使用し、必要成膜範囲を80mm×80mmとしたときの外周4辺の不要な塗布膜2を除去処理部35の形状に合わせて2辺同時除去することを試みた。
塗布膜除去装置本体3による走査を繰り返し行い、さらに走査方向を180度切り替え、必要成膜範囲の外周4辺の成膜不要領域e1、e2、e5、e6の不要な塗布膜2を順次処理することで、80mm×80mmの必要成膜範囲の外周に残存塗布膜がない状態が得られ、必要成膜範囲への除去液8の飛散もなく所望の状態を確認できた。
本実施例では、必要成膜範囲の外周4辺の成膜不要領域e1、e2、e5、e6の不要な塗布膜2を2辺同時に処理できることにより、1つの必要成膜範囲に対して2回の処理で完了できるため処理時間の短縮が可能であることが確認できた。
【0146】
(実施例5−3)
実施例5−3では、実施例5−1における表11の(5)に示す条件において、除去液8の温度条件は24℃であったのに対し、この除去液8の温度条件を24℃から30℃に変更して同様に塗布膜2の除去を行った。なお、除去液8の温度条件を除く他の条件は、実施例5−1における条件と同一とした。
その結果、除去液8の温度が24℃のときには、塗布膜2を概ね30秒で除去できるのに対し、除去液8の温度が30℃のときには、塗布膜2の除去に要する所要時間を、概ね20秒まで短縮することができ、除去性能の向上が確認された。また、除去液8の温度をさらに上げた場合には、より除去性能の向上が確認された。しかしながら、温度を40℃より高くすると除去性能は大きくは向上しなくなることから、効果が薄くなることが確認された。さらに一方で蒸気の影響が懸念される点から、温度条件の採用に当たっては、装置、材料への配慮が必要となる。
したがって、このように、有機発光画素外周部の塗布膜2を確実に除去することができるため、成膜が簡便で且つ均一な塗布法を、正孔輸送層や正孔注入層などの画素ごとに塗り分けする必要のない共通層の成膜に採用した有機ELパネルの生産が可能となる。
【0147】
(実施例5−4)
第5実施形態に係る塗布膜除去装置105の異なる一実施例として、液晶ディスプレイ用カラーフィルタの感光性樹脂層の成膜工程において、基板1上に感光性樹脂層を形成する有機材料をスリットダイで塗工し、必要成膜範囲である画素領域の外周の不要な塗布膜を除去する場合について説明する。
塗布する感光性樹脂材料として、東京応化工業(株)製OFPR−800を使用し、除去液8として30℃の1.0重量%炭酸ナトリウム水溶液を使用した。
【0148】
なお、除去処理は実施例5−2と同様に、2つの辺を同時に除去できる除去処理部35(
図13及び
図14と同様のL字型形状)の表面形状を持った塗布膜除去装置本体3により塗布膜2の除去を行った。このときの塗布膜除去装置本体3の除去処理部35の底面の大きさは、L字型の角部からそれぞれ延在する2辺をそれぞれ100mmとし、各辺における幅を10mmとした。また、除去液供給口51a、52aと除去液回収口61aそれぞれと基板1との距離h1〜3は、実施例5−1における表11の(5)に示す条件に基づく。
【0149】
実施例5−2と同じく、基板1には無アルカリガラスOA−10(日本電気硝子製)120mm×120mm×0.7mmを使用し、必要成膜範囲を80mm×80mmとしたときの外周4辺の不要な塗布膜2を除去処理部35の形状に合わせて2辺同時除去することを試みた。
塗布膜除去装置本体3による走査を繰り返し行い、さらに走査方向を180度切り替え、必要成膜範囲の外周4辺の成膜不要領域e1、e2、e5、e6の不要な塗布膜2を順次処理することで、80mm×80mmの必要成膜範囲の外周に残存塗布膜がない状態が得られ、必要成膜範囲への除去液8の飛散もなく所望の状態を確認できた。
本実施例では、必要成膜範囲の外周4辺の成膜不要領域e1、e2、e5、e6の不要な塗布膜2を2辺同時に処理できることにより、1つの必要成膜範囲に対して2回の処理で完了できるため処理時間の短縮が可能であることが確認できた。
【0150】
以上、本発明の実施例5−1〜5−4について説明したが、本発明は上記実施例に制限されない。上記では有機ELディスプレイと液晶ディスプレイ用カラーフィルタについて説明したが、これに限定されるものではなく、別の用途の成膜基板に適用してもよい。また、塗布膜2は、正孔輸送層を始めとする有機EL用途の材料や、液晶用ディスプレイ用カラーフィルタに使用する感光性樹脂材料などに限定されるものではなく、別の用途の材料に適用してもよい。また、除去液8もその塗布膜2の材料に応じたものを適宜選択でき、例えば、有機溶剤やエッチング液等も対象となる。
【0151】
(有機EL素子について)
第1から第5の各実施形態では、主に有機ELディスプレイパネルの製造を例に挙げて、各実施例を説明した。そこで、この有機ELディスプレイパネルの構成等、特に有機ELディスプレイパネルに含まれる有機EL素子の構成等について、以下、簡単に説明する。
有機EL素子は、導電性の有機発光媒体層に電圧を印加することにより、注入された電子と正孔とを再結合させ、この再結合の際に、有機発光媒体層に含まれる有機発光層を構成する有機発光材料を発光させるものである。有機発光媒体層の両側には、有機発光層へ電圧を印加すると共に光を外部へ取り出すために、第一電極と第二電極とが設けられている。
この有機EL素子は、透明基板上に、第一電極、有機発光層、第二電極(対向電極)を順次積層して構成される。また、基板上に形成される第一電極は陽極として、有機発光層上に形成される対向電極は陰極として利用されることが通常である。
【0152】
さらに、発光効率を増大させる等の目的から、陽極と有機発光層との間に正孔輸送層及び正孔注入層が、有機発光層と陰極との間に電子輸送層及び電子注入層が、それぞれ適宜選択して設けられることで、有機EL素子として構成されることが多い。そして、前述の有機発光層、正孔輸送層、正孔注入層、電子輸送層、電子注入層をあわせた積層構造は、有機発光媒体層と呼ばれている。
この有機発光媒体層を構成し機能する物質(発光媒体材料)は、一般的に、低分子の化合物である。また、各層は、1nm以上100nm以下の範囲内程度の厚みで、抵抗加熱方式等の真空蒸着法等によって積層される。このため、低分子材料を用いる有機EL素子を製造するためには、複数の蒸着釜を連結した真空蒸着装置を必要とし、生産性が低く製造コストが高くなることがある。
【0153】
これに対し、有機発光媒体層として塗布型材料を用いたEL素子がある。
発光媒体層としては、トルエン、キシレン等の溶媒に低分子発光色素を溶解させたものや、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルカルバゾール等の高分子中に低分子の発光色素を溶解させたものや、ポリフェニレンビニレン誘導体(PPV)、ポリアルキルフルオレン誘導体(PAF)等の高分子材料の発光体が用いられる。これらの塗布型材料を用いたEL素子では、材料を溶剤に溶解または分散することにより、塗布法や印刷法といった湿式法により有機発光媒体層の各層となる塗布膜を形成することができる。このため、塗布型材料を用いたEL素子は、前述の真空蒸着法を用いたEL素子と比較して大気圧下での膜形成(各層の形成)が可能であり、設備コストが安いという利点がある。
【0154】
また、前述の湿式法、例えば塗布法としては、スピンコート法、バーコート法、スリットコート法、ディップコート法等があり、特に高精細なパターニングが必要でない場合は、成膜が簡便で、且つ均一な、このような塗布法が有効である。また、このような湿式法は、正孔輸送層や正孔注入層等、画素ごとに塗り分けする必要のない共通層の成膜に有効である。
一方、高精細なパターニングやRGBの3色塗り分けが必要な場合には、凹版印刷法、凸版印刷法、平版印刷法、スクリーン印刷法、インクジェット法等の印刷法による薄膜形成が最も有効である。
【0155】
次に、積層された有機発光媒体層の上に陰極を形成した後の工程である封止工程に関して説明する。
有機発光媒体層の上に陰極が形成された状態のままでは、特に水分(水蒸気)や酸素の影響を受けやすく、発光特性の低下や、金属電極の劣化によりダークスポットと称する非発光不具合が生じてしまう。そのため、水分や酸素を極限まで抑えたチャンバー内で、表示領域に対向する部分に吸湿剤を配置した封止ガラス基板を用いて封止するのが一般的である。
【0156】
有機発光媒体層が形成された基板上に封止ガラス基板を形成する場合、有機発光媒体層が形成された基板と封止ガラス基板とを接着するための一定の接着幅(封止スペース)が必要となる。その際、封止性能を充分に得るために、封止スペースには有機発光媒体層を構成する有機材料が塗られていないことが望ましい。しかしながら、正孔輸送層及び正孔注入層を塗布法により成膜した場合には、封止スペースにまで有機材料が成膜されるため、封止性能が損なわれることがある。
【0157】
その対応策として、パターニングが不要な正孔輸送層及び正孔注入層の成膜に印刷法を採用し、必要範囲のみを成膜する方法等がある。
また、成膜不要領域に成膜された被膜を除去する方法として、例えば、被膜を除去するための溶剤が貯留された貯蔵部に、不要な被膜が塗布された部分(例えば、基板端部)を浸漬させることで除去する方法等もある(例えば、特許文献1、2)。
また、従来技術に係る塗布法には、成膜の簡便性、均一性および印刷材料の選択性などの点で課題があり、本発明の属する技術の分野においては、その点に関してより優れた塗布法の適用が望まれている。
【0158】
以上で、特定の実施形態を参照して本発明を説明したが、これら説明によって発明を限定することを意図するものではない。本発明の説明を参照することにより、当業者には、開示された実施形態の種々の変形例とともに本発明の別の実施形態も明らかである。従って、特許請求の範囲は、本発明の範囲及び要旨に含まれるこれらの変形例または実施形態も網羅すると解すべきである。つまり、本発明は、各実施形態を組み合わせたものであってもよい。具体的には、本発明に係る塗布膜除去装置は、第1実施形態と、第2から第5の各実施形態とを組み合わせたものであってもよい。