特許第6536724号(P6536724)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6536724
(24)【登録日】2019年6月14日
(45)【発行日】2019年7月3日
(54)【発明の名称】光源装置、プロジェクタ
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/022 20060101AFI20190625BHJP
   H01S 5/40 20060101ALI20190625BHJP
   G03B 21/14 20060101ALI20190625BHJP
   F21S 2/00 20160101ALI20190625BHJP
   G02B 19/00 20060101ALI20190625BHJP
   G02B 13/00 20060101ALI20190625BHJP
   F21Y 115/30 20160101ALN20190625BHJP
【FI】
   H01S5/022
   H01S5/40
   G03B21/14 A
   F21S2/00 360
   F21S2/00 330
   G02B19/00
   G02B13/00
   F21Y115:30
【請求項の数】7
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2018-127850(P2018-127850)
(22)【出願日】2018年7月4日
【審査請求日】2019年3月6日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】三浦 雄一
【審査官】 小野 博之
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2017/029874(WO,A1)
【文献】 特開2009−103529(JP,A)
【文献】 特開2015−015305(JP,A)
【文献】 特開2010−140745(JP,A)
【文献】 特開2017−215570(JP,A)
【文献】 特開2016−114650(JP,A)
【文献】 特開2003−066369(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2017/0252859(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2018/0062342(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 21/00−21/10
21/12−21/30
21/56−21/64
33/00−33/16
H04N 5/66−5/74
F21K 9/00−9/90
F21S 2/00−19/00
F21V 1/00−15/04
23/00−37/00
99/00
H01S 3/00−5/50
G02B 9/00−21/36
25/00−25/04
F21Y 115/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一又は異なる半導体レーザチップ上に設けられた複数の光出射領域と、
異なる傾斜角を有する複数の平坦面を含み、隣接する複数の前記光出射領域から出射された複数の第一光線束それぞれの少なくとも一部が異なる前記平坦面に入射されて、複数の前記第一光線束のそれぞれの主光線を、相互に離れながら進行する複数の第二光線束に変換して出射する第一屈折光学系と、
前記第一屈折光学系から出射された複数の前記第二光線束が入射されて、複数の前記第二光線束のそれぞれの主光線の進行方向を光軸に対して略平行に変換するとともに、複数の前記第二光線束それぞれを、略平行光線束に変換して出射する第二屈折光学系と、を備えることを特徴とする光源装置。
【請求項2】
前記半導体レーザチップを収容すると共に、一部分に光に対する透過性を示す窓部を有してなるケーシング材を備え、
前記窓部は、前記第一屈折光学系によって構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の光源装置。
【請求項3】
前記半導体レーザチップ及び前記第一屈折光学系を収容すると共に、一部分に光に対する透過性を示す窓部を有してなるケーシング材を備え、
前記窓部は、前記第二屈折光学系によって構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の光源装置。
【請求項4】
前記ケーシング材は、複数の前記半導体レーザチップを収容することを特徴とする、請求項2または3に記載の光源装置。
【請求項5】
前記第一屈折光学系は、光入射面側に複数の前記平坦面を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の光源装置。
【請求項6】
前記第一屈折光学系の光出射面と、前記第二屈折光学系の光入射面とが、共通化されてなることを特徴とする、請求項5に記載の光源装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項の光源装置から出射された光を利用して画像を投影することを特徴とする、プロジェクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源装置に関し、特に半導体レーザチップから出射された光を利用する光源装置に関する。また、本発明は、このような光源装置を備えたプロジェクタに関する。
【背景技術】
【0002】
プロジェクタ用の光源として、半導体レーザチップを利用することが進められている。近年、このように半導体レーザチップを光源として用いながらも、更に光出力を高めた光源装置が市場から期待されている。
【0003】
光源側の光出力を高めるためには、複数の半導体レーザチップから出射された光を集光する方法が考えられる。しかし、半導体レーザチップには一定の幅が存在し、これらを密接して配置することには限界がある。つまり、単に複数の半導体レーザチップを配置するだけでは、光源装置が大型化してしまう。
【0004】
かかる観点から、例えば下記特許文献1のように、第一の領域に半導体レーザチップ群を配置し、第一の領域とは別の第二の領域に別の半導体レーザチップ群を配置し、両半導体レーザチップ群から出射される光を、スリットミラーからなる光合成手段を用いて合成する技術が存在する。かかる方法により、単に同一箇所に複数の半導体レーザチップを並べた場合と比較して、配置面積を縮小しながらも光強度を高めることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017−215570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、光源側の光強度を高める方法として、レーザ光を出射する領域(光出射領域:以下では「エミッタ」と称することがある。)を複数設けた半導体レーザチップを用いる方法が考えられる。このような半導体レーザチップは、「マルチエミッタ型」と称されることがある。本発明者らは、マルチエミッタ型の半導体レーザチップを光源に利用することで、光強度を高めることを検討したところ、以下のような課題が存在することを突き止めた。
【0007】
図1Aは、一つのエミッタを備えた半導体レーザチップの構造を模式的に示す斜視図である。このような半導体レーザチップは、「シングルエミッタ型」と称されることがある。なお、図1Aには、エミッタから出射される光(レーザ光)の光線束についても、模式的に図示している。なお、本明細書では、単一のエミッタから出射される束状に形成された光線群を「光線束」と称し、エミッタの中心から光軸と平行に出射される光線を「主光線」と称する。
【0008】
図1Aに示されるような、いわゆる「端面発光型」の半導体レーザチップ100の場合、エミッタ101から出射される光線束101Lは、楕円錐型を示すことが知られている。本明細書では、光軸(図1Aに示すZ方向)に直交する2方向(X方向及びY方向)のうち、光線束101Lの発散角が大きい方向(図1Aに示すY方向)を、「Fast軸方向」と呼び、光線束101Lの発散角が小さい方向(図1Aに示すX方向)を、「Slow軸方向」と呼ぶ。ここで、発散角とは、光強度が最大となる主光線の1/e2の光強度で進行する光線と、主光線とがなす角の2倍の角を指す。
【0009】
図1Bは、光線束101Lを、X方向から見た場合と、Y方向から見た場合とに分けて模式的に図示したものである。図1Bに示すように、Fast軸方向については光線束101Lの発散角θyが大きく、Slow軸方向については光線束101Lの発散角θxが小さい。
【0010】
なお、以下の各図では、説明の都合上、光線束の発散角が実際よりも誇張して図示されている場合がある。
【0011】
半導体レーザチップ100を複数配置し、各半導体レーザチップ100から出射される光(光線束101L)を集光して利用する場合、光学部材のサイズを抑制する観点から、各光線束101Lを平行光化した後、レンズによって集光するのが一般的である。具体的には、半導体レーザチップ100の後段にコリメートレンズ(「コリメーションレンズ」とも称される。)を配置して、各光線束101Lの発散角を縮小することが行われる。
【0012】
図2Aは、半導体レーザチップ100の後段にコリメートレンズ102を配置した場合において、YZ平面方向に進行する光線束を、模式的に示した図面である。なお、図2Aでは、エミッタの上端及び下端から出射される光線のみを描画している。
【0013】
図2Aによれば、光線束101Lは、コリメートレンズ102を通過した後、Fast軸方向(Y方向)に関して実質的な平行光線束(以下、「略平行光線束」と称する。)となる。なお、本明細書において、「実質的な平行光線束」又は「略平行光線束」とは、発散角が4°未満である光線束を指す。なお、図2Aないし以下の各図において、略平行光線束は完全な平行光線束として図示されている場合がある。
【0014】
図2Bは、半導体レーザチップ100の後段にコリメートレンズ102を配置した場合において、XZ平面方向に進行する光線束を、模式的に示した図面である。図2Bによれば、光線束101Lは、コリメートレンズ102を通過した後、Slow軸方向(X方向)に関しても略平行光線束となる。
【0015】
図3Aは、図1Aとは異なり、複数のエミッタを備えた半導体レーザチップの構造を模式的に示す斜視図である。図3Aでは、半導体レーザチップ110が2つのエミッタ(111,112)を備えている場合が示されている。
【0016】
図3Bは、図1Bにならって、各エミッタ(111,112)から出射される光線束(111L,112L)を、X方向から見た場合と、Y方向から見た場合とに分けて模式的に図示したものである。各エミッタ(111,112)は、Y方向については同一の座標位置に形成されるため、X方向から見たときに光線束(111L,112L)は完全に重なっている。一方、各エミッタ(111,112)は、X方向については異なる座標位置に形成されるため、Y方向から見たときに光線束(111L,112L)はそれぞれの位置がずれて表示される。
【0017】
図3Aに図示された半導体レーザチップ110の後段に、図2A及び図2Bと同様にコリメートレンズ102を配置した場合における光線束の態様について検討する。図3Bを参照して上述したように、X方向から見たときに光線束(111L,112L)は完全に重なっている。このため、Fast軸方向(Y方向)に関しては、各光線束(111L,112L)は、コリメートレンズ102を通過した後、図2Aと同様に略平行光線束となる。
【0018】
図4は、半導体レーザチップ110の後段にコリメートレンズ102を配置した場合において、XZ平面方向に進行する光線束を、模式的に示した図面である。半導体レーザチップ110は、X方向に離間して複数のエミッタ(111,112)を備えているため、コリメートレンズ102の中心位置におけるX座標と、各エミッタ(111,112)の中心位置におけるX座標には不可避的にずれが生じる。
【0019】
この結果、エミッタ111から出射された光線束111L、及びエミッタ112から出射された光線束112Lのそれぞれは、コリメートレンズ102を通過後に略平行光線束となるものの、光線束111Lの主光線111Lmと、光線束112Lの主光線112Lmとは、非平行となる。つまり、光線束111Lと光線束112Lとは、それぞれX方向に係る進行方向を異ならせてしまう。
【0020】
かかる構成の場合、後に集光光学系を用いて各光線束(111L,112L)を集光したとしても、集光後の光線束群に拡がりが生じ、目的とする方向に導くことのできない光線が生じてしまう。この結果、光の利用効率が低下する。特に、マルチエミッタ型の半導体レーザチップ110を複数配置して、各半導体レーザチップ110から出射される光を利用するような場合には、利用できない光が無視できない量となる。
【0021】
コリメートレンズ102を通過した後において、光線束111Lと光線束112LのX方向に係る進行方向の角度は、コリメートレンズ102の焦点距離に対する、エミッタ(111,112)間の距離の相対値によって決定される。より詳細には、コリメートレンズ102の光軸から、コリメートレンズ102の光軸から最も遠い各エミッタ(111,112)の位置までの距離をd、コリメートレンズ102の焦点距離fとしたときに、光線束(111L,112L)のそれぞれの主光線(111Lm,112Lm)の進行方向とコリメートレンズの光軸とのなす角θは、θ= tan-1(d/f)で規定される。
【0022】
特に、マルチエミッタ型の半導体レーザチップ110を複数配置し、角θが小さくなるように構成する場合には、焦点距離の長いコリメートレンズ102を複数使用する必要があるため、装置規模が極めて大きくなってしまう。
【0023】
上記の課題は、シングルエミッタ型の半導体レーザチップ100でも起こり得る。すなわち、上記の課題は、半導体レーザチップ100の出力を上昇させるべく、エミッタ101の幅を広くした場合や、シングルエミッタ型の半導体レーザチップ100を複数配置して、複数の半導体レーザチップ100から出射された光線束を一つのコリメートレンズ102に対して入射させる場合においても同様に起こり得る。
【0024】
本発明は、上記の課題に鑑み、複数の半導体レーザチップを用いて、装置規模の拡大を抑制しながら光出力を高めた光源装置を提供することを課題とする。また、本発明は、かかる光源装置を備えたプロジェクタを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明に係る光源装置は、
同一又は異なる半導体レーザチップ上に設けられた複数の光出射領域と、
異なる傾斜角を有する複数の平坦面を含み、隣接する複数の前記光出射領域から出射された複数の第一光線束それぞれの少なくとも一部が異なる前記平坦面に入射されて、複数の前記第一光線束のそれぞれの主光線を、相互に離れながら進行する複数の第二光線束に変換して出射する第一屈折光学系と、
前記第一屈折光学系から出射された複数の前記第二光線束が入射されて、複数の前記前記第二光線束のそれぞれの主光線の進行方向を光軸に対して略平行に変換するとともに、複数の前記第二光線束それぞれを、略平行光線束に変換して出射する第二屈折光学系と、を備えることを特徴とする。
【0026】
上記光源装置は、レーザ光源の後段に、異なる傾斜角を有する複数の平坦面を含む第一屈折光学系を備える。レーザ光源から出射された複数の第一光線束は、それぞれの少なくとも一部が、第一屈折光学系の異なる平坦面に入射される。平坦面に形成された傾斜角に応じて、複数の第一光線束は屈折し、その進行方向が変化する。ここで、各平坦面は、複数の第一光線束のそれぞれの主光線が、相互に離れながら進行するように、傾斜角が設定されている。この結果、第一屈折光学系を通過した後の各第二光線束は、相互に離れながら進行する。
【0027】
従って、第一屈折光学系を通過した後の第二光線束の主光線同士は、光の進行方向とは反対方向(レーザ光源側)に向かう延長線上で、一定の範囲内に収束する。第一屈折光学系を通過した第二光線束の主光線同士は、実質的に一つの光出射領域から出射された光となる。
【0028】
上記光源装置は、第一屈折光学系の後段に、複数の第二光線束のそれぞれの主光線の進行方向を光軸に対して略平行に変換するとともに、複数の第二光線束それぞれを、略平行光線束に変換して出射する第二屈折光学系を備える。第二屈折光学系を通過した各第二光線束は、相互に進行方向が実質的に同一方向となる。
【0029】
従って、上記光源装置は、複数の光出射領域から出射された第一光線束を、第一屈折光学によって実質的に一つの領域から出射された第二光線束へと変換し、それらを第二屈折光学系によって各光線束同士と各光線同士を、実質的に平行光(略平行光)として出射するものである。
【0030】
この略平行光は、各光線束同士が交差することがなく、若しくは、きわめて微細な光線同士が交差するにとどまる。この結果、これらの光線束を後段で集光することで、高い放射照度を有する光が得られる。
【0031】
そして、上記光源装置によれば、第一屈折光学系の後段に、第二屈折光学系を配置することで、光線の拡がりが抑制されるため、焦点距離の長い大型のコリメートレンズを配置する必要がなく、装置規模の拡大が抑制される。
【0032】
上記光源装置は、同一の半導体レーザチップ上に複数の光出射領域(いわゆる「エミッタ」)を有してなるマルチエミッタ型の半導体レーザチップを複数備えるものとしても構わないし、同一の半導体レーザチップ上に単一の光出射領域(エミッタ)を有してなるシングルエミッタ型の半導体レーザチップを複数備えるものとしても構わない。
【0033】
上記光源装置において、
前記半導体レーザチップを収容すると共に、一部分に光に対する透過性を示す窓部を有してなるケーシング材を備え、
前記窓部は、前記第一屈折光学系によって構成されているものとしても構わない。
【0034】
上記構成によれば、レーザ光源と第一屈折光学系をケーシングして一つの光源装置として構成できる。この光源装置と、用途に応じた焦点距離の第二屈折光学系を外部に配置することで、略平行光が得られる。
【0035】
上記光源装置において、
前記半導体レーザチップ及び前記第一屈折光学系を収容すると共に、一部分に光に対する透過性を示す窓部を有してなるケーシング材を備え、
前記窓部は、前記第二屈折光学系によって構成されているものとしても構わない。
【0036】
上記構成によれば、レーザ光源と第一屈折光学系及び第二屈折光学系をケーシングして一つの光源装置として構成できる。この光源装置のみで略平行光が得られる。
【0037】
上記光源装置において、
前記ケーシング材は、複数の前記半導体レーザチップを収容するものとしても構わない。
【0038】
上記光源装置において、
前記第一屈折光学系は、光入射面側に複数の前記平坦面を有するものとしても構わない。
【0039】
光出射領域から出射された複数の第一光線束は、その主光線を中心に広がりながら進行する。それぞれの主光線は平行を保ちながら進行するが、光線束は広がりながら進行し、やがて光線束の一部が光軸に到達する。各光線束の一部が光軸に到達すると、その後も光線束は広がりながら進行するため、光線束の一部が光軸を越えて、互いの光線束の一部が重なりながら進行する。そして、光線束の重なりは進行するにつれて大きくなる。
【0040】
したがって、第一屈折光学系は、第一光線束の一部が光軸に到達してしまう位置よりも前段に配置されるものであることが好ましい。このように配置することで、各エミッタから出射された各第一光線束が、光軸を越えての各第一光線束の一部が重なり合う前に、第一屈折光学系のそれぞれの平坦面に入射することができる。
【0041】
つまり、第一光線束の一部が光軸に到達してしまう位置よりも前段に第一屈折光学系が配置されることで、光出射領域から射出された複数の第一光線束は、それぞれ完全に第一屈折光学系の異なる平坦面上に入射される。この結果、各第一光線束に含まれる全ての光線を、前記第二屈折光学系によって略平行光化して、後段に導くことができる。
【0042】
逆に、第一屈折光学系は、第一光線束の一部が光軸に到達してしまう位置よりも後段に配置されるものとしても構わない。この場合、隣接する第一光線束同士が一部重なり合いを有した状態で、第二屈折光学系の平坦面に入射される。
【0043】
ところで、光出射領域から出射された第一光線束は、主光線の位置において最も光強度が高く、主光線から離れるほど光強度が急激に低下するような配光分布、例えば、ガウス分布のような分布を示す。
【0044】
この構成の場合、第一屈折光学系の平坦面に入射された第一光線束に含まれる一部の光線は、同光線束の主光線とは異なる方向に進行することとなる。この光線は、後段の第二屈折光学系によって主光線と略平行とはならずに、迷光となる可能性がある。しかし、上述したように、各第一光線束は例えばガウス分布のような分布を示し、且つ、各第一光線束に含まれる主光線近傍の光線は、第二屈折光学系によって主光線と同方向に進行するため、これらの光線は後段の集光光学系によって目的の位置に集光される。つまり、この態様においても、利用できない光線の強度は極めて低いものであって、装置全体として鑑みた場合、光の利用効率に大きく影響するものではない。
【0045】
上記光源装置において、
前記第一屈折光学系の光出射面と、前記第二屈折光学系の光入斜面とが、共通化されてなるものとしても構わない。
【0046】
上記構成とすることで、一つの光学系によって、複数の光出射領域を備えるレーザ光源から出射される光線束を略平行光に変換し、さらに各光線束同士も略平行光に変換できる。一つの光学系で略平行光に変換できることで、装置規模の拡大は抑制される。また、第一屈折光学系と第二屈折光学系それぞれを配置するための部材が一つとなり、さらに装置規模の拡大が抑制される。
【0047】
本発明に係るプロジェクタは、
上記光源装置から出射された光を利用して画像を投影することを特徴とする。
【発明の効果】
【0048】
本発明によれば、複数の半導体レーザチップを用いて、装置規模の拡大を抑制しながらも、光出力を高めた光源装置が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1A】シングルエミッタ型の半導体レーザチップの構造を模式的に示す斜視図である。
図1B図1Aの半導体レーザチップから出射される光線束を、X方向から見た場合と、Y方向から見た場合とに分けて模式的に図示したものである。
図2A】半導体レーザチップの後段にコリメートレンズを配置した場合において、YZ平面方向に進行する光線束を、模式的に示した図面である。
図2B】半導体レーザチップの後段にコリメートレンズを配置した場合において、XZ平面方向に進行する光線束を、模式的に示した図面である。
図3A】マルチエミッタ型の半導体レーザチップの構造を模式的に示す斜視図である。
図3B図3Aの半導体レーザチップから出射される光線束を、X方向から見た場合と、Y方向から見た場合とに分けて模式的に図示したものである。
図4図3Aの半導体レーザチップの後段にコリメートレンズを配置した場合において、XZ平面方向に進行する光線束を、模式的に示した図面である。
図5】光源装置の一実施形態の構成を模式的に示す図面である。
図6A図3Aの半導体レーザチップの後段に第一屈折光学系を配置した場合において、XZ平面方向に進行する光線束を、模式的に示した図面である。
図6B図6Aの一部拡大図である。
図7】第一屈折光学系と第二屈折光学系を一体化させて、結合屈折光学系とした構成例を模式的に示す図面である。
図8】ケーシングされた光源装置の一実施形態の構成を模式的に示す図面である。
図9】ケーシングされた光源装置の別の構成例を模式的に示す図面である。
図10】ケーシングされた光源装置の別の構成例を模式的に示す図面である。
図11】ケーシングされた光源装置の別の構成例を模式的に示す図面である。
図12A】ケーシングされた光源装置の別の構成例を模式的に示す図面である。
図12B図12AのXY平面視の図面である。
図12C】ケーシングされた光源装置の別の構成例を模式的に示す図面である。
図12D図12CのXY平面視の図面である。
図13A】複数の半導体レーザチップが同一のケーシング材でケーシングされた光源装置の斜視図である。
図13B】複数の半導体レーザチップが、一つのケーシング材で個別に区切られてケーシングされた光源装置の一実施形態の構成を模式的に示す図面である。
図14A】複数の半導体レーザチップが同一のケーシング材でケーシングされた光源装置の斜視図である。
図14B】複数の半導体レーザチップが、一つのケーシング材の同一空間内でケーシングされた光源装置の一実施形態の構成を模式的に示す図面である。
図14C】複数の半導体レーザチップが、一つのケーシング材の同一空間内でケーシングされた光源装置の別の構成例を模式的に示す図面である。
図14D】複数の半導体レーザチップが、一つのケーシング材の同一空間内でケーシングされた光源装置の別の構成例を模式的に示す図面である。
図15】光源装置を含むプロジェクタの構成例を模式的に示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下、本発明に係る光源装置、及びプロジェクタの各実施形態について、適宜図面を参照して説明する。なお、以下の各図面は、いずれも模式的に図示されたものであり、実際の寸法比と図面上の寸法比とは必ずしも一致していない。
【0051】
図5は、光源装置の一実施形態の構成を模式的に示す図面である。光源装置1は、半導体レーザチップ5と、第一屈折光学系2と、第二屈折光学系3を備える。
【0052】
図5には、一例として、半導体レーザチップ5が、二つの光出射領域(10,20)を有するマルチエミッタ型のレーザ光源である場合が図示されている。なお、以下の各図においても、図1A図4と同様に、XYZの3軸を規定する。すなわち、光軸をZ方向とし、光出射領域(10,20)の離間する方向をX方向とし、X方向及びZ方向に直交する方向をY方向とする。
【0053】
第一屈折光学系2は、半導体レーザチップ5の光出射領域(10,20)から出射された第一光線束(11,21)を所定の角度屈折させる光学系である。本実施形態において、第一屈折光学系2は、第一光線束(11,21)の入射面側に異なる傾斜角を有する平坦面(2a,2b)を備えたプリズムである。傾斜角の説明については図6Bを参照して後述される。
【0054】
第二屈折光学系3は、第一屈折光学系2から出射された第二光線束(12,22)が入射されて、第二光線束のそれぞれの主光線(12Lm,22Lm)の進行方向を光軸に対して略平行に変換するとともに、複数の前記第二光線束(12,22)それぞれを、略平行光線束に変換する光学系である。本実施形態において第二屈折光学系3はコリメートレンズである。
【0055】
図6Aは、半導体レーザチップ5の後段に第一屈折光学系2を配置した場合において、XZ平面方向に進行する光線束を、模式的に示した図面である。半導体レーザチップ5の光出射領域(10,20)から出射された第一光線束(11,21)は、第一屈折光学系2によって屈折し、各主光線(12Lm,22Lm)は互いに離れるように進行する。その後、第一屈折光学系2から出射された第二光線束(12,22)は、各主光線(12Lm,22Lm)を基準として発散しながら進行する。
【0056】
図6Bは、図6Aの一部拡大図である。第一屈折光学系2の平坦面(2a,2b)については傾斜角(θa,θb)が設定されている。より詳細には、各平坦面(2a,2b)は、第一光線束(11,21)が、離間した光出射領域(10,20)から出射されているにもかかわらず、あたかも同一の収束領域6から出射されているように光学的に模擬する機能を有するように、傾斜角(θa,θb)が設定されている。
【0057】
ここで、平坦面(2a,2b)の傾斜角(θa,θb)とは、第一光線束(11,21)の光軸60を基準としたときの角度を指し、この角度には回転方向に応じて正負の値を付して区別するものとする。ここでは、回転方向が反時計方向である場合を正とし、時計方向である場合を負とする。すなわち、図6Bの例によれば、第一屈折光学系2の平坦面2aは、光軸60に対して反時計方向に傾いており、傾斜角θaは正の値である。一方、第一屈折光学系2の平坦面2bは、光軸60に対して時計方向に傾いており、傾斜角θbは負の値である。つまり、平坦面2aの傾斜角θaと、平坦面2bの傾斜角θbとは、それぞれ異なる値である。
【0058】
また、本実施形態においては、収束領域6が半導体レーザチップ5の光出射領域(10,20)の中間に位置するように、平坦面(2a,2b)の傾斜角(θa,θb)が設定されているが、半導体レーザチップ5の光出射領域(10,20)の中間に位置していなくても構わない。さらには、光軸60上でなくても構わない。
【0059】
図6Bに図示されているように、第一屈折光学系2の平坦面(入射面)(2a,2b)と出射面2cによって屈折した光線束の各主光線(12Lm,22Lm)を、進行方向とは逆方向に延長する仮想線(11a,21a)を引いた場合に、各仮想線が収束領域6に収束している。すなわち、第一屈折光学系2を通過したそれぞれの光線束(11,21)は、仮想的な収束領域6から、すなわち実質的にシングルエミッタから出射された光線束となる。
【0060】
図2Bを参照して上述したように、シングルエミッタ型の半導体レーザチップ100のエミッタ(光出射領域)101から出射された光線束101Lは、コリメートレンズ102によって略平行光に変換される。これと同様に、図5に示す半導体レーザチップ5から出射された光線束(11,21)は、第一屈折光学系2によって、実質的にシングルエミッタから出射された光線束に変換された後、第二屈折光学系3に入射し、各光線束(12,22)が略平行光線束となるように変換される。
【0061】
図7は、光源装置1の別の構成例を模式的に示す図面である。図7に示すように、光源装置1は、第一屈折光学系2と第二屈折光学系3を一体化させてなる結合屈折光学系4を備えるものとしても構わない。図7に示す符号7は、第一屈折光学系2と第二屈折光学系3との境界面を指している。図6Aと同様の理由により、結合屈折光学系4の前段に配置された第一屈折光学系2の入射面(図6Bにおける平坦面(2a,2b))で屈折した第一光線束(11,21)は、主光線(11m,21m)を基準として発散するように第一屈折光学系2中を進行する。境界面7に到達した光線束(11,21)はそのまま第二屈折光学系3に入射し、第二屈折光学系3中を進行する。そして、第二屈折光学系3(結合屈折光学系4)の出射面で屈折し、略平行光として出射される。
【0062】
結合屈折光学系4は、同一の屈折率を有する第一屈折光学系2と第二屈折光学系3を結合することで構成してもよく、又は異なる屈折率を有する第一屈折光学系2と第二屈折光学系3を結合することで構成してもよい。
【0063】
また、結合屈折光学系4は二つの部材を結合させるのではなく、一つの部材として構成してもよい。例えば、出射面側が凸曲面を有し、入射面側に傾斜角の異なる平坦面を有する光学部材で構成しても構わない。
【0064】
光源装置1は、半導体レーザチップ5を所定の材料によってケーシングすることで実現しても構わない。図8は、ケーシングされた光源装置1の一実施形態の構成を模式的に示す図面である。図8に示される例では、光源装置1が備えるケーシング材30は、半導体レーザチップ5をケーシングし、第一屈折光学系2と、第二屈折光学系3とは、ケーシング材30の外部に配置されている。ケーシング材30の一部には、光に対する透過性を示す窓部30aが設けられている。
【0065】
ケーシング材30は、窓部30a以外の部分は、例えばコバールのようなガラスと熱膨張率が近い金属からなり、窓部30aは、例えばBK−7のような光学ガラスからなる。図8に示す光源装置1において、窓部30aは、半導体レーザチップ5の光出射領域(10a,20a)に対向する位置に配置されており、各光出射領域(10a,20a)から出射された第一光線束(11,21)が、窓部30aを通過してケーシング材30の外部に配置された第一屈折光学系2に入射される。
【0066】
すなわち、図8に示す光源装置1は、図5を参照して説明した光源装置1と比較した場合、半導体レーザチップ5の光出射領域(10a,20a)と第一屈折光学系2の間に、第一光線束(11,21)の進行には光学的に影響を与えないケーシング材30の窓部30aが配置されているだけであるため、重複を避ける観点から、窓部30a以後の各光線束の進行についての説明を省略する。
【0067】
図9は、ケーシングされた光源装置1の別の構成例を模式的に示す図面である。図9に示される例では、光源装置1が備えるケーシング材30は、半導体レーザチップ5と第一屈折光学系2とをケーシングし、第二屈折光学系3は、ケーシング材30の外部に配置されている。ケーシング材30の一部には、光に対する透過性を示す窓部30aが設けられている。
【0068】
図9に示す光源装置1においても、半導体レーザチップ5と、半導体レーザチップ5の後段に配置された第一屈折光学系2と、第一屈折光学系2の後段に配置された第二屈折光学系3とを備えるという点においては、図5を参照して説明した光源装置1と同じであるため、重複を避ける観点から各光線束の進行についての説明を省略する。
【0069】
図9に示す光源装置1は、ケーシング材30の内部に第一屈折光学系2を配置する構成であるため、ケーシング材30に第一屈折光学系2を配置できる空間を設ける必要がある。しかしながら、その影響は小さく、第一屈折光学系2をケーシング材30外部に配置する必要がなくなる点によって、光源装置1全体の装置規模としては縮小化ができる。
【0070】
さらに、図9に示す光源装置1によれば、図8に示された光源装置1よりも、第一屈折光学系2を半導体レーザチップ5の近くに配置できる。このため、半導体レーザチップ5がマルチエミッタ型である場合、各光出射領域(10,20)から出射される第一光線束(11,21)が大きく広がる前に、第一屈折光学系2の所定の入射面(平坦面2a,2b)に入射することができる。この結果、第一屈折光学系2の入射面(平坦面2a,2b)の大きさを縮小化できるため、光源装置1全体の小型化に寄与する。
【0071】
図10は、ケーシングされた光源装置1の別の構成例を模式的に示す図面である。より詳細には、第一屈折光学系2が、図8におけるケーシング材30の窓部30aの機能を兼ね備えた構成である。
【0072】
図10に示す光源装置1においても、半導体レーザチップ5と、半導体レーザチップ5の後段に配置された第一屈折光学系2と、第一屈折光学系2の後段に配置された第二屈折光学系3とを備えるという点においては、図5を参照して説明した光源装置1と同じであるため、重複を避ける観点から各光線束の進行についての説明を省略する。
【0073】
図11は、ケーシングされた光源装置1の別の構成例を模式的に示す図面である。より詳細には、第二屈折光学系3が、図8におけるケーシング材30の窓部30aの機能を兼ね備えた構成であって、第一屈折光学系2をケーシング材の内部に配置したものである。
【0074】
図11に示す光源装置1においても、半導体レーザチップ5と、半導体レーザチップ5の後段に配置された第一屈折光学系2と、第一屈折光学系2の後段に配置された第二屈折光学系3とを備えるという点においては、図5を参照して説明した光源装置1と同じであるため、重複を避ける観点から各光線束の進行についての説明を省略する。
【0075】
図11に示す光源装置1においても、図9の構成と同様にケーシング材30の内部に第一屈折光学系2を配置する構成であるため、ケーシング材30に第一屈折光学系2を配置できる空間を設ける必要がある。しかしながら、その影響は小さく、第一屈折光学系2を半導体レーザチップ5の近くに配置できる点、及び第一屈折光学系2と、第二屈折光学系3とをケーシング材30外部に配置する必要がなくなる点によって、光源装置1全体の装置規模としては縮小化ができる。
【0076】
図12Aは、ケーシングされた光源装置1を別の構成例を模式的に示す図面である。より詳細には、第一屈折光学系2と第二屈折光学系3が一体化されてなる結合屈折光学系4が、図8におけるケーシング材30の窓部30aの機能を兼ね備えた構成である。第一屈折光学系2と第二屈折光学系3との間に、空間を設ける必要がなく、図11に示す光源装置1よりも、さらに装置規模の縮小化ができる。
【0077】
図12Aは、ケーシング材30の窓部を第二屈折光学系3で構成し、第一屈折光学系2と第二屈折光学系3を接合して結合屈折光学系4を構成している。図12Bでは、図12Aにおける、XY平面視での第一屈折光学系2と第二屈折光学系3の形状を示している。ただし、XY平面視において第一屈折光学系2は第二屈折光学系3と同一形状であるため、図12Bでは、第一屈折光学系2が第二屈折光学系3の後ろに隠れている。
【0078】
図12Cも、ケーシング材30の窓部を第二屈折光学系3で構成し、第一屈折光学系2と第二屈折光学系3を接合して結合屈折光学系4を構成している。図12Dでは、図12Cにおける、XY平面視での第一屈折光学系2と第二屈折光学系3の形状を示している。
【0079】
図12C及び図12Dの実施形態のように、第二屈折光学系3に相当する部分の一部が、ケーシング材30の外壁面に接触するように配置しても構わない。また、第一屈折光学系2と第二屈折光学系3は、XY平面視で円や四角形でなくても構わない。
【0080】
図12A及び12Bに示す光源装置1においても、半導体レーザチップ5と、半導体レーザチップ5の後段に配置された第一屈折光学系2と第二屈折光学系3を一体化させてなる結合屈折光学系4を備えるという点においては、図7を参照して説明した光源装置1と同じであるため、重複を避ける観点から各光線束の進行についての説明を省略する。
【0081】
光源装置1は、複数の半導体レーザチップ5を備えても構わない。この場合において、各半導体レーザチップ5を同一のケーシング材でケーシングしても構わない。図13Aは、複数の半導体レーザチップ5を同一のケーシング材31(以下、「マルチケーシング材31」と称することがある。)でケーシングされた光源装置1の模式的な斜視図である。本発明の光源装置も、マルチケーシング材31で構成し、プロジェクタ等の光源として用いることができる。図13Aはその一例を模式的に図示したものである。図13Aに示す光源装置1では、半導体レーザチップ5が、マルチケーシング材31内で個別に区切られた配置領域に配置されている。なお、図13Aでは、説明の都合上、屈折光学系(2,3)の図示を省略している。
【0082】
図10図11と同様に、マルチケーシング材31の窓部を第一屈折光学系2や第二屈折光学系3で構成しても構わない。また、図12A図12Dと同様に、第一屈折光学系2と第二屈折光学系3とが共通化された結合屈折光学系4によって構成しても構わない。
【0083】
複数の半導体レーザチップ5と、屈折光学系(2,3)を一つのケーシング材で構成すれば、外部に配置する光学系の点数を削減でき、さらに、各半導体レーザチップ5に対して電圧を印加するための電極も共有化することもできるため、装置規模の縮小化に寄与する。同一のマルチケーシング材31内に収容される半導体レーザチップ5の数や、各半導体レーザチップ5の配列方法には特に制限はない。
【0084】
図13Bは、図13Aに図示されたマルチケーシング材31と、その後段に配置された屈折光学系(2,3)とを併せて示す図面である。複数の半導体レーザチップが、一つのケーシング材で個別に区切られてケーシングされている。図13Bに示す光源装置1は、マルチケーシング材31内に複数の半導体レーザチップ5を配置し、マルチケーシング材31の外部に第一屈折光学系2と第二屈折光学系3を配置して構成されている。
【0085】
図14Aは、複数の半導体レーザチップ5が同一のケーシング材でケーシングされた光源装置の別の斜視図である。図14Aに示す光源装置1では、図13Aに示す光源装置1とは異なり、半導体レーザチップ5が、マルチケーシング材32内において個別の区切りなく配置されている。なお、図14Aは、図13Aと同様に、説明の都合上、屈折光学系(2,3)の図示を省略している。
【0086】
図14Bは、図14Aに図示されたマルチケーシング材32と、その後段に配置された屈折光学系(2,3)とを併せて示す図面である。図14Bに示す光源装置1は、マルチケーシング材32内に複数の半導体レーザチップ5を配置し、マルチケーシング材32の窓部32aで仕切られた外部に第一屈折光学系2と第二屈折光学系3を配置して構成されている。
【0087】
図14Cは、複数の半導体レーザチップが、一つのケーシング材の同一空間内でケーシングされた光源装置の別の構成例を模式的に示す図面である。図14Cに示すように、複数の第一屈折光学系2が結合して、光学部材33を構成するものであっても構わない。
【0088】
図14Dは、複数の半導体レーザチップが、一つのケーシング材の同一空間内でケーシングされた光源装置の別の構成例を模式的に示す図面である。図14Dに示すように、複数の第一屈折光学系2が結合して、一つの光学部材33を構成し、さらに光学部材33がマルチケーシング材32の窓部32bを構成するものであっても構わない。
【0089】
さらに別実施例として、図14Dの光学部材33の出射面側と、第二屈折光学系の入射面側が接触または共通化されて、一つの光学部材を構成するものであっても構わない。
【0090】
図15は、上述した光源装置1を含むプロジェクタの構成例を模式的に示す図面である。プロジェクタ9は、光源装置1を含む照明光学系70と、照明光学系70から導かれた光を分光した後にスクリーン90に投影する分光・投影光学系80とを備える。
【0091】
図15に示す例では、光源装置1を赤色用光源とした場合が想定されている。すなわち、照明光学系70は、赤色用光源としての光源装置1と、青色光源71と、青色光源71から出射された青色光を受光して蛍光を生成する蛍光光源72と、拡散反射光学系73と、ダイクロイックミラー(74,75)と、インテグレータ光学系50と、合成光学系76と、1/4波長板77とを備える。
【0092】
光源装置1から出射された、光密度の高い赤色光Rは、ダイクロイックミラー74で反射された後、インテグレータ光学系50へと導かれる。また、青色光源71から出射された青色光Bは、偏光に応じてダイクロイックミラー75で反射される光と透過する光とに分離される。例えば、ダイクロイックミラー75には、偏光方向によって光の進行方向を制御することのできる偏光分離素子を含むものとしてもよい。
【0093】
ダイクロイックミラー75で反射されたある偏光方向の青色光は、蛍光光源72に導かれて、蛍光光源72に含まれる蛍光体の励起光として用いられ、得られた蛍光がダイクロイックミラー(75,74)を透過してインテグレータ光学系50へと導かれる。ダイクロイックミラー75を透過した別の偏光方向の青色光は、1/4波長板77を通過した後、拡散反射光学系73に入射され、その拡散光が拡散反射光学系73から反射されて、再度1/4波長板77を通過して、ダイクロイックミラー75に導かれる。この光は、ダイクロイックミラー75で反射された後、ダイクロイックミラー74を透過してインテグレータ光学系50へと導かれる。
【0094】
インテグレータ光学系50において、各色の光は照度分布が均一化された後、合成光学系76によって白色光に合成される。合成光学系76は、偏光方向を均一化させる偏光変換素子を含むものとしても構わない。
【0095】
合成光学系76を通過した白色光は、分光・投影光学系80に導かれる。分光・投影光学系80に含まれる各ダイクロイックミラー(81a,81b,81c)によって、色分離された各色の光は、適宜ミラー(81d,81e)を介して進行方向が調整された後、各色の変調装置(82R,82G,82B)に入射される。変調装置(82R,82G,82B)は、画像情報に応じて各色光を変調し、色合成光学系83に出力する。色合成光学系83は、前記画像情報に応じた光を合成して投射光学系84に入射する。投射光学系84は、前記画像情報に応じた光をスクリーン90に投射する。
【0096】
なお、図15に示すプロジェクタ9において、本実施形態の光源装置1は赤色光を生成する光源に利用した場合を想定しているが、青色光を生成する光源とすることも可能である。この場合、青色光を生成する光源装置1と、この光源装置1から出射された青色光が励起光として入射し蛍光を生成する蛍光光源と、を備え、青色光と蛍光とが合成光学系76を介して合成されて白色光を生成するものとしてもよい。
【0097】
更に、プロジェクタ9は、本実施形態の光源装置1によって、R,G,B各色の光を生成し、これらを合成光学系76によって合成する態様とすることも可能である。すなわち、光源装置1が、青色光を生成する半導体レーザチップ5、赤色光を生成する半導体レーザチップ5、緑色光を生成する半導体レーザチップ5をそれぞれ備えるものとしても構わない。この場合、各光源装置1から出射された各色の光は、光ファイバなどの導光部材を通じて伝搬されて、各色の変調装置(82R,82G,82B)に入射されるものとしても構わない。
【0098】
なお、図15に示すプロジェクタ9は、変調装置(82R,82G,82B)が透過型の液晶素子で構成されている場合を想定して図示されたものであるが、反射型の変調装置(DMD:デジタル・マイクロミラー・デバイス、登録商標)が用いられていても構わない。分光・投影光学系80は、変調装置の構成に応じて適宜設定される。
【0099】
[別実施形態]
以下、別実施形態につき説明する。
【0100】
〈1〉 図5等を参照して上述した半導体レーザチップ5は、2つの光出射領域(10,20)を有するマルチエミッタ型の構成であった。この半導体レーザチップ5が備える光出射領域の数は、2個に限定されず、3個以上であっても構わない。第一屈折光学系2が備える、傾斜角の異なる平坦面(2a,2b,‥‥)の数は、光出射領域の数に応じて設定される。
【0101】
逆に、各半導体レーザチップ5は、例えば図1Aを参照して上述したように、単独の光出射領域を有するシングルエミッタ型の構成であり、複数の半導体レーザチップ5からの出射光が、第一屈折光学系2に入射される構成であっても構わない。更に、複数の半導体レーザチップ5からの出射光が、第一屈折光学系2に入射される態様において、各半導体レーザチップ5がマルチエミッタ型の構造であっても構わない。また、第一屈折光学系2は各半導体レーザチップ5に対応して設けられていれば良く、該第一屈折光学系2自身が個別に設けられていても、アレー状に一体形成されていても構わない。
【0102】
〈2〉 上記実施形態では、各半導体レーザチップ5の光出射領域(10,20)が半導体レーザチップ5の端面に形成された、いわゆる「端面発光型」の構造である場合を想定して説明した。しかし、本発明は、各半導体レーザチップ5が、半導体層の積層方向に光が取り出される、いわゆる「面発光型」の構造であっても、同様に適用可能である。
【0103】
〈3〉 本発明に係る光源装置1は、複数の光線束を集光して、所定の照射対象物に照射するアプリケーションであれば、プロジェクタ以外にも適用可能である。一例として、光源装置1を露光装置用の光源として利用することが可能である。
【0104】
〈4〉 上述した光源装置1が備える光学配置態様は、あくまで一例であり、本発明は、図示された各構成に限定されない。例えば、ある光学系と別の光学系との間において、光の進行方向を変化させるための反射光学系が適宜介在されていても構わない。
【符号の説明】
【0105】
1 : 光源装置
2 : 第一屈折光学系
2a,2b: 第一屈折光学系が備える平坦面
3 : 第二屈折光学系
4 : 結合屈折光学系
5 : 半導体レーザチップ
6 : 収束領域
7 : 境界面
9 : プロジェクタ
10,20 : 光出射領域
11,21 : 第一光線束
12,22 : 第二光線束
30 : ケーシング材
30a,30b,30c,30d,30e : ケーシング材の窓部
31,32 : マルチケーシング材
31a,32a,32b : マルチケーシング材の窓部
33 : 光学部材
40 : 後段光学系
50 : インテグレータ光学系
60 : 光軸
70 : 照明光学系
71 : 青色光源
72 : 蛍光光源
73 : 拡散反射光学系
74,75 : ダイクロイックミラー
76 : 合成光学系
77 : 波長板
80 : 分光・投影光学系
81a,81,81c : ダイクロイックミラー
81d,81e : ミラー
82B,82G,82R : 変調装置
84 : 投射光学系
85 : 色合成光学系
90 : スクリーン
100,110 : 半導体レーザチップ
101,111,112 : エミッタ
101L,111L,112L : エミッタから出射される光線束
102 : コリメートレンズ
【要約】
【課題】 複数の半導体レーザチップを用いて、装置規模の拡大を抑制しながら光出力を高めた光源装置を提供する。
【解決手段】 光源装置は、同一又は異なる半導体レーザチップ上に設けられた複数の光出射領域と、異なる傾斜角を有する複数の平坦面を含み、隣接する複数の光出射領域から出射された複数の第一光線束それぞれの少なくとも一部が異なる前記平坦面に入射されて、複数の第一光線束のそれぞれの主光線が、相互に離れながら進行する複数の第二光線束に変換して出射する第一屈折光学系と、第一屈折光学系から出射された複数の第二光線束が入射されて、複数の第二光線束のそれぞれの主光線の進行方向を光軸に対して略平行に変換するとともに、複数の第二光線束それぞれを、略平行光線束に変換して出射する第二屈折光学系と、を備える。
【選択図】 図5
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5
図6A
図6B
図7
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図12C
図12D
図13A
図13B
図14A
図14B
図14C
図14D
図15