(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
エンジンからのトルクが伝達される回転要素の回転中心の周りに該回転要素と一体に回転する支持部材と、前記支持部材に連結されると共に該支持部材の回転に伴って揺動可能な復元力発生部材と、前記復元力発生部材を介して前記支持部材に連結されると共に該支持部材の回転に伴って該復元力発生部材に連動して前記回転中心の周りに揺動する慣性質量体とを含む振動減衰装置において、
前記エンジンから前記回転要素に伝達される入力トルクの振動の振幅が大きくなるにつれて前記振動減衰装置の次数が大きくなる振動減衰装置。
エンジンからのトルクが伝達される回転要素の回転中心の周りに該回転要素と一体に回転する支持部材と、前記支持部材に連結されると共に該支持部材の回転に伴って揺動可能な復元力発生部材と、前記復元力発生部材を介して前記支持部材に連結されると共に該支持部材の回転に伴って該復元力発生部材に連動して前記回転中心の周りに揺動する慣性質量体とを含む振動減衰装置において、
前記エンジンから前記回転要素に伝達される入力トルクの振動の振幅が変化しても前記振動減衰装置の次数が変化しないように設計された振動減衰装置。
エンジンからのトルクが伝達される回転要素の回転中心の周りに該回転要素と一体に回転する支持部材と、前記支持部材に連結されると共に該支持部材の回転に伴って揺動可能な復元力発生部材と、前記復元力発生部材を介して前記支持部材に連結されると共に該支持部材の回転に伴って該復元力発生部材に連動して前記回転中心の周りに揺動する慣性質量体とを含む振動減衰装置において、
前記支持部材、前記復元力発生部材および前記慣性質量体の何れか1つに設けられると共に前記支持部材の径方向に沿って延びる第1ガイド部と、
前記支持部材、前記復元力発生部材および前記慣性質量体の前記何れか1つ以外の2つの一方に形成されると共に円弧状に延びる第2ガイド部とを備え、
前記支持部材、前記復元力発生部材および前記慣性質量体の前記何れか1つ以外の2つの他方は、前記第1および第2ガイド部によりガイドされ、
前記復元力発生部材の重心と該復元力発生部材の前記第2ガイド部に沿った揺動の支点との距離を“L3”とし、前記支点と前記回転中心との距離を“L4”とし、前記エンジンの気筒数を“n”としたときに、
L3/(L3+L4)>α+β・n+γ
を満たす振動減衰装置。ただし、“α”,“β”および“γ”は、予め定められる定数である。
エンジンからのトルクが伝達される回転要素の回転中心の周りに該回転要素と一体に回転する支持部材と、前記支持部材に連結されると共に該支持部材の回転に伴って揺動可能な復元力発生部材と、前記復元力発生部材を介して前記支持部材に連結されると共に該支持部材の回転に伴って該復元力発生部材に連動して前記回転中心の周りに揺動する慣性質量体とを含む振動減衰装置において、
前記支持部材と前記復元力発生部材とを相対回転自在に連結する第1の連結軸と、
前記復元力発生部材および前記慣性質量体の一方により支持されると共に、前記復元力発生部材および前記慣性質量体を相対回転自在に連結する第2の連結軸と、
前記復元力発生部材および前記慣性質量体の他方に形成され、前記支持部材の回転に伴って、前記第2の連結軸が前記第1の連結軸との軸間距離を一定に保ちながら該第1の連結軸の周りに揺動すると共に前記慣性質量体に対する相対位置が不変となるように定められた仮想的な第3の連結軸との軸間距離を一定に保ちながら該第3の連結軸の周りに揺動するように該第2の連結軸をガイドするガイド部と備え、
前記第1の連結軸と前記第2の連結軸との軸間距離を“L2”とし、前記第2の連結軸と前記第3の連結軸との軸間距離を“L3”とし、前記第3の連結軸と前記回転中心との軸間距離を“L4”とし、前記第1の連結軸から前記復元力発生部材の重心までの距離を“Lg”とし、前記エンジンの気筒数を“n”としたときに、
L3/(L3+L4)>α・(Lg/L2)+β・n+γ
を満たす振動減衰装置。ただし、“α”,“β”および“γ”は、予め定められる定数である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、図面を参照しながら、本開示の発明を実施するための形態について説明する。
【0011】
図1は、本開示の振動減衰装置20を含む発進装置1の概略構成図である。同図に示す発進装置1は、例えば駆動装置としてのエンジン(内燃機関)EGを備えた車両に搭載されてエンジンEGからの動力を車両のドライブシャフトDSに伝達するためのものであり、振動減衰装置20に加えて、エンジンEGのクランクシャフトに連結される入力部材としてのフロントカバー3や、フロントカバー3に固定されて当該フロントカバー3と一体に回転するポンプインペラ(入力側流体伝動要素)4、ポンプインペラ4と同軸に回転可能なタービンランナ(出力側流体伝動要素)5、自動変速機(AT)、無段変速機(CVT)、デュアルクラッチトランスミッション(DCT)、ハイブリッドトランスミッションあるいは減速機である変速機(動力伝達装置)TMの入力軸ISに固定される出力部材としてのダンパハブ7、ロックアップクラッチ8、ダンパ装置10等を含む。
【0012】
なお、以下の説明において、「軸方向」は、特に明記するものを除いて、基本的に、発進装置1やダンパ装置10(振動減衰装置20)の中心軸(軸心)の延在方向を示す。また、「径方向」は、特に明記するものを除いて、基本的に、発進装置1やダンパ装置10、当該ダンパ装置10等の回転要素の径方向、すなわち発進装置1やダンパ装置10の中心軸から当該中心軸と直交する方向(半径方向)に延びる直線の延在方向を示す。更に、「周方向」は、特に明記するものを除いて、基本的に、発進装置1やダンパ装置10、当該ダンパ装置10等の回転要素の周方向、すなわち当該回転要素の回転方向に沿った方向を示す。
【0013】
ポンプインペラ4は、
図2に示すように、フロントカバー3に密に固定されるポンプシェル40と、ポンプシェル40の内面に配設された複数のポンプブレード41とを有する。タービンランナ5は、
図2に示すように、タービンシェル50と、タービンシェル50の内面に配設された複数のタービンブレード51とを有する。タービンシェル50の内周部は、複数のリベットを介してダンパハブ7に固定される。
【0014】
ポンプインペラ4とタービンランナ5とは、互いに対向し合い、両者の間には、タービンランナ5からポンプインペラ4への作動油(作動流体)の流れを整流するステータ6が同軸に配置される。ステータ6は、複数のステータブレード60を有し、ステータ6の回転方向は、ワンウェイクラッチ61により一方向のみに設定される。これらのポンプインペラ4、タービンランナ5およびステータ6は、作動油を循環させるトーラス(環状流路)を形成し、トルク増幅機能をもったトルクコンバータ(流体伝動装置)として機能する。ただし、発進装置1において、ステータ6やワンウェイクラッチ61を省略し、ポンプインペラ4およびタービンランナ5を流体継手として機能させてもよい。
【0015】
ロックアップクラッチ8は、油圧式多板クラッチとして構成されており、ダンパ装置10を介してフロントカバー3とダンパハブ7すなわち変速機TMの入力軸ISとを連結するロックアップを実行すると共に当該ロックアップを解除する。ロックアップクラッチ8は、フロントカバー3に固定されたセンターピース3sにより軸方向に移動自在に支持されるロックアップピストン80と、ダンパ装置10の入力要素であるドライブ部材11に一体化されたクラッチドラムとしてのドラム部11dと、ロックアップピストン80と対向するようにフロントカバー3の内面に固定される環状のクラッチハブ82と、ドラム部11dの内周面に形成されたスプラインに嵌合される複数の第1摩擦係合プレート(両面に摩擦材を有する摩擦板)83と、クラッチハブ82の外周面に形成されたスプラインに嵌合される複数の第2摩擦係合プレート(セパレータプレート)84とを含む。
【0016】
更に、ロックアップクラッチ8は、ロックアップピストン80を基準としてフロントカバー3とは反対側、すなわちロックアップピストン80よりもダンパ装置10側に位置するようにフロントカバー3のセンターピース3sに取り付けられる環状のフランジ部材(油室画成部材)85と、フロントカバー3とロックアップピストン80との間に配置される複数のリターンスプリング86とを含む。図示するように、ロックアップピストン80とフランジ部材85とは、係合油室87を画成し、当該係合油室87には、図示しない油圧制御装置から作動油(係合油圧)が供給される。そして、係合油室87への係合油圧を高めることにより、第1および第2摩擦係合プレート83,84をフロントカバー3に向けて押圧するようにロックアップピストン80を軸方向に移動させ、それによりロックアップクラッチ8を係合(完全係合あるいはスリップ係合)させることができる。なお、ロックアップクラッチ8は、油圧式単板クラッチとして構成されてもよい。
【0017】
ダンパ装置10は、
図1および
図2に示すように、回転要素として、上記ドラム部11dを含むドライブ部材(入力要素)11と、中間部材(中間要素)12と、ドリブン部材(出力要素)15とを含む。更に、ダンパ装置10は、トルク伝達要素として、同一円周上に周方向に間隔をおいて交互に配設されるそれぞれ複数(本実施形態では、例えば4個ずつ)の第1スプリング(第1弾性体)SP1および第2スプリング(第2弾性体)SP2を含む。第1および第2スプリングSP1,SP2としては、荷重が加えられてないときに円弧状に延びる軸心を有するように巻かれた金属材からなるアークコイルスプリングや、荷重が加えられてないときに真っ直ぐに延びる軸心を有するように螺旋状に巻かれた金属材からなるストレートコイルスプリングが採用される。また、第1および第2スプリングSP1,SP2としては、図示するように、いわゆる二重バネが採用されてもよい。
【0018】
ダンパ装置10のドライブ部材11は、外周側に上記ドラム部11dを含む環状部材であり、内周部から周方向に間隔をおいて径方向内側に延出された複数(本実施形態では、例えば90°間隔で4個)のスプリング当接部11cを有する。中間部材12は、環状の板状部材であり、外周部から周方向に間隔をおいて径方向内側に延出された複数(本実施形態では、例えば90°間隔で4個)のスプリング当接部12cを有する。中間部材12は、ダンパハブ7により回転自在に支持され、ドライブ部材11の径方向内側で当該ドライブ部材11により包囲される。
【0019】
ドリブン部材15は、
図2に示すように、環状の第1ドリブンプレート16と、図示しない複数のリベットを介して当該第1ドリブンプレート16に一体に回転するように連結される環状の第2ドリブンプレート17とを含む。第1ドリブンプレート16は、板状の環状部材として構成されており、第2ドリブンプレート17よりもタービンランナ5に近接するように配置され、タービンランナ5のタービンシェル50と共にダンパハブ7に複数のリベットを介して固定される。第2ドリブンプレート17は、第1ドリブンプレート16よりも小さい内径を有する板状の環状部材として構成されており、当該第2ドリブンプレート17の外周部が図示しない複数のリベットを介して第1ドリブンプレート16に締結される。
【0020】
第1ドリブンプレート16は、それぞれ円弧状に延びると共に周方向に間隔をおいて(等間隔に)配設された複数(本実施形態では、例えば4個)のスプリング収容窓16wと、それぞれ対応するスプリング収容窓16wの内周縁に沿って延びると共に周方向に間隔をおいて(等間隔に)並ぶ複数(本実施形態では、例えば4個)のスプリング支持部16aと、それぞれ対応するスプリング収容窓16wの外周縁に沿って延びると共に周方向に間隔をおいて(等間隔に)並んで対応するスプリング支持部16aと第1ドリブンプレート16の径方向において対向する複数(本実施形態では、例えば4個)のスプリング支持部16bと、複数(本実施形態では、例えば4個)のスプリング当接部16cとを有する。第1ドリブンプレート16の複数のスプリング当接部16cは、周方向に沿って互いに隣り合うスプリング収容窓16w(スプリング支持部16a,16b)の間に1個ずつ設けられる。
【0021】
第2ドリブンプレート17も、それぞれ円弧状に延びると共に周方向に間隔をおいて(等間隔に)配設された複数(本実施形態では、例えば4個)のスプリング収容窓17wと、それぞれ対応するスプリング収容窓17wの内周縁に沿って延びると共に周方向に間隔をおいて(等間隔に)並ぶ複数(本実施形態では、例えば4個)のスプリング支持部17aと、それぞれ対応するスプリング収容窓17wの外周縁に沿って延びると共に周方向に間隔をおいて(等間隔に)並んで対応するスプリング支持部17aと第2ドリブンプレート17の径方向において対向する複数(本実施形態では、例えば4個)のスプリング支持部17bと、複数(本実施形態では、例えば4個)のスプリング当接部17cとを有する。第2ドリブンプレート17の複数のスプリング当接部17cは、周方向に沿って互いに隣り合うスプリング収容窓17w(スプリング支持部17a,17b)の間に1個ずつ設けられる。なお、本実施形態において、ドライブ部材11は、
図2に示すように、第1ドリブンプレート16を介してダンパハブ7により支持される第2ドリブンプレート17の外周面により回転自在に支持され、これにより、当該ドライブ部材11は、ダンパハブ7に対して調心される。
【0022】
ダンパ装置10の取付状態において、第1および第2スプリングSP1,SP2は、ダンパ装置10の周方向に沿って交互に並ぶように、ドライブ部材11の互い隣り合うスプリング当接部11cの間に1個ずつ配置される。また、中間部材12の各スプリング当接部12cは、互い隣り合うスプリング当接部11cの間に配置されて対をなす(直列に作用する)第1および第2スプリングSP1,SP2の間で両者の端部と当接する。これにより、ダンパ装置10の取付状態において、各第1スプリングSP1の一端部は、ドライブ部材11の対応するスプリング当接部11cと当接し、各第1スプリングSP1の他端部は、中間部材12の対応するスプリング当接部12cと当接する。また、ダンパ装置10の取付状態において、各第2スプリングSP2の一端部は、中間部材12の対応するスプリング当接部12cと当接し、各第2スプリングSP2の他端部は、ドライブ部材11の対応するスプリング当接部11cと当接する。
【0023】
一方、第1ドリブンプレート16の複数のスプリング支持部16aは、
図2からわかるように、それぞれ対応する1組の第1および第2スプリングSP1,SP2のタービンランナ5側の側部を内周側から支持(ガイド)する。また、複数のスプリング支持部16bは、それぞれ対応する1組の第1および第2スプリングSP1,SP2のタービンランナ5側の側部を外周側から支持(ガイド)する。更に、第2ドリブンプレート17の複数のスプリング支持部17aは、
図2からわかるように、それぞれ対応する1組の第1および第2スプリングSP1,SP2のロックアップピストン80側の側部を内周側から支持(ガイド)する。また、複数のスプリング支持部17bは、それぞれ対応する1組の第1および第2スプリングSP1,SP2のロックアップピストン80側の側部を外周側から支持(ガイド)する。
【0024】
また、ドリブン部材15の各スプリング当接部16cおよび各スプリング当接部17cは、ダンパ装置10の取付状態において、ドライブ部材11のスプリング当接部11cと同様に、対をなさない(直列に作用しない)第1および第2スプリングSP1,SP2の間で両者の端部と当接する。これにより、ダンパ装置10の取付状態において、各第1スプリングSP1の上記一端部は、ドリブン部材15の対応するスプリング当接部16c,17cとも当接し、各第2スプリングSP2の上記他端部は、ドリブン部材15の対応するスプリング当接部16c,17cとも当接する。この結果、ドリブン部材15は、複数の第1スプリングSP1と、中間部材12と、複数の第2スプリングSP2とを介してドライブ部材11に連結され、互いに対をなす第1および第2スプリングSP1,SP2は、ドライブ部材11とドリブン部材15との間で、中間部材12のスプリング当接部12cを介して直列に連結される。なお、本実施形態では、発進装置1やダンパ装置10の軸心と各第1スプリングSP1の軸心との距離と、発進装置1等の軸心と各第2スプリングSP2の軸心との距離とが等しくなっている。
【0025】
更に、本実施形態のダンパ装置10は、中間部材12とドリブン部材15との相対回転および第2スプリングSP2の撓みを規制する第1ストッパと、ドライブ部材11とドリブン部材15との相対回転を規制する第2ストッパとを含む。第1ストッパは、エンジンEGからドライブ部材11に伝達されるトルクがダンパ装置10の最大捩れ角θmaxに対応したトルクT2(第2の閾値)よりも小さい予め定められたトルク(第1の閾値)T1に達した段階で中間部材12とドリブン部材15との相対回転を規制するように構成される。また、第2ストッパは、ドライブ部材11に伝達されるトルクが最大捩れ角θmaxに対応したトルクT2に達した段階でドライブ部材11とドリブン部材15との相対回転を規制するように構成される。これにより、ダンパ装置10は、2段階(2ステージ)の減衰特性を有することになる。なお、第1ストッパは、ドライブ部材11と中間部材12との相対回転および第1スプリングSP1の撓みを規制するように構成されてもよい。また、ダンパ装置10には、ドライブ部材11と中間部材12との相対回転および第1スプリングSP1の撓みを規制するストッパと、中間部材12とドリブン部材15との相対回転および第2スプリングSP2の撓みを規制するストッパとが設けられてもよい。
【0026】
振動減衰装置20は、ダンパ装置10のドリブン部材15に連結され、作動油で満たされる流体伝動室9の内部に配置される。
図2から
図4に示すように、振動減衰装置20は、支持部材(第1リンク)としての第1ドリブンプレート16と、それぞれ第1連結軸21を介して第1ドリブンプレート16に回転自在に連結される復元力発生部材(第2リンク)としての複数(本実施形態では、例えば4個)のクランク部材22と、1体の環状の慣性質量体(第3リンク)23と、それぞれ対応するクランク部材22と慣性質量体23とを相対回転自在に連結する複数(本実施形態では、例えば4個)の第2連結軸24とを含む。
【0027】
第1ドリブンプレート16は、
図3に示すように、その外周面161から周方向に間隔をおいて(等間隔に)径方向外側に突出するように形成された複数(本実施形態では、例えば4個)の突出支持部162を有する。図示するように、各クランク部材22の一方の端部は、対応する第1ドリブンプレート16の突出支持部162に第1連結軸21(
図3参照)を介して回転自在に連結される。本実施形態において、各クランク部材22は、
図4に示すように、2枚のプレート部材220を有する。各プレート部材220は、円弧状の平面形状を有するように金属板により形成されており、本実施形態において、プレート部材220の外周縁の曲率半径は、慣性質量体23の外周縁の曲率半径と同一に定められている。
【0028】
2枚のプレート部材220は、対応する突出支持部162および慣性質量体23を介してダンパ装置10の軸方向に対向し合うと共に第1連結軸21により互いに連結される。本実施形態において、第1連結軸21は、第1ドリブンプレート16の突出支持部162に形成された滑り軸受け部としての連結孔(円孔)と、各プレート部材220に形成された滑り軸受け部としての連結孔(円孔)とに挿通されると共に両端がカシメられるリベットである。これにより、第1ドリブンプレート16(ドリブン部材15)と、各クランク部材22とは、互いに回り対偶をなす。なお、第1連結軸21は、突出支持部162と2枚のプレート部材220との一方に形成された滑り軸受け部としての連結孔とに挿通されると共に、他方により支持(嵌合または固定)されるものであってもよい。また、プレート部材220と第1連結軸21との間および突出支持部162と第1連結軸21との間の少なくとも何れか一方に、ボールベアリング等の転がり軸受が配置されてもよい。
【0029】
慣性質量体23は、金属板により形成された2枚の環状部材230を含み、慣性質量体23(2枚の環状部材230)の重量は、1個のクランク部材22の重量よりも十分に重く定められる。
図3および
図4に示すように、環状部材230は、短尺円筒状(円環状)の本体231と、本体231の内周面から周方向に間隔をおいて(等間隔に)径方向内側に突出する複数(本実施形態では、例えば4個)の突出部232とを有する。2枚の環状部材230は、突出部232同士が当該環状部材230の軸方向に対向するように図示しない固定具を介して連結される。
【0030】
各突出部232には、クランク部材22と慣性質量体23とを連結する第2連結軸24をガイドするガイド部235が形成されている。ガイド部235は、円弧状に延びる開口部であり、凹曲面状のガイド面236と、当該ガイド面236よりも環状部材(第1ドリブンプレート16)の径方向における内側(環状部材230の中心側)でガイド面236と対向する凸曲面状の支持面237と、ガイド面236および支持面237の両側で両者に連続する2つのストッパ面238とを含む。ガイド面236は、一定の曲率半径を有する凹円柱面である。支持面237は、円弧状に延びる凸曲面であり、ストッパ面238は、円弧状に延びる凹曲面である。
図3に示すように、ガイド部235(ガイド面236、支持面237およびストッパ面238)は、ガイド面236の曲率中心と環状部材230の中心(第1ドリブンプレート16の回転中心RC)とを通る直線に関して左右対称に形成される。そして、振動減衰装置20では、ガイド面236の曲率中心を通って突出部232(環状部材230)に直交する直線が、2枚の環状部材230、すなわち慣性質量体23に対する相対位置が不変となる(慣性質量体23に対して移動しない)仮想軸(第3の連結軸)25として定められる。
【0031】
第2連結軸24は、中実(あるいは中空)の丸棒状に形成されると共に、両端から軸方向外側に突出する例えば丸棒状の2つの突起部24aを有する。
図4に示すように、第2連結軸24の2つの突起部24aは、それぞれクランク部材22のプレート部材220に形成された連結孔(円孔)に嵌合(固定)される。本実施形態において、突起部24aが嵌合されるプレート部材220の連結孔は、その中心がクランク部材22の重心G(プレート部材220の長手方向における中央部付近)を通る直線と同軸に延在するように各プレート部材220に形成される。これにより、第1ドリブンプレート16(突出支持部162)とクランク部材22とを連結する第1連結軸21の中心からクランク部材22の重心Gまでの長さは、第1連結軸21と、クランク部材22と慣性質量体23とを連結する第2連結軸24との軸間距離(中心間距離)に一致する。また、クランク部材22(プレート部材220)の他方の端部は、第2連結軸24に関して第1連結軸21とは反対側に位置する。なお、第2連結軸24の各突起部24aは、クランク部材22のプレート部材220に形成された滑り軸受け部としての連結孔(円孔)に挿通されてもよい。すなわち、第2連結軸24は、2枚のプレート部材すなわちクランク部材22により両側から回転自在に支持されてもよい。更に、プレート部材220と、第2連結軸24の突起部24aとの間にボールベアリング等の転がり軸受が配置されてもよい。
【0032】
図4に示すように、第2連結軸24は、複数のコロ(転動体)26を介して円筒状の外輪27を回転自在に支持する。外輪27の外径は、上記ガイド部235のガイド面236と支持面237との間隔よりも僅かに小さく定められる。第2連結軸24および外輪27は、クランク部材22により支持されると共に、当該外輪27がガイド面236上を転動するように慣性質量体23の対応するガイド部235内に配置される。これにより、慣性質量体23は、第1ドリブンプレート16の回転中心RCと同軸かつ当該回転中心RCの周りに回転自在に配置されることになる。また、複数のコロ26、外輪27および第2連結軸24は、転がり軸受を構成することから、クランク部材22と慣性質量体23との相対回転が許容され、各クランク部材22と慣性質量体23とは、互いに回り対偶をなす。なお、第2連結軸24と外輪27との間には、複数のコロ26の代わりに複数のボールが配設されてもよい。
【0033】
上述のように、振動減衰装置20では、第1ドリブンプレート16(ドリブン部材15)と、各クランク部材22とが互いに回り対偶をなし、各クランク部材22と慣性質量体23のガイド部235によりガイドされる第2連結軸24とが互いに回り対偶をなす。また、慣性質量体23は、第1ドリブンプレート16の回転中心RCの周りに回転自在に配置される。これにより、第1ドリブンプレート16が一方向に回転すると、各第2連結軸24は、慣性質量体23のガイド部235によりガイドされながら第2リンクに連動し、第1連結軸21との軸間距離を一定に保ちながら当該第1連結軸21の周りに揺動(往復回転運動)すると共に仮想軸25との軸間距離を一定に保ちながら当該仮想軸25の周りに揺動(往復回転運動)する。すなわち、各クランク部材22は、第2連結軸24の移動に応じて第1連結軸21の周りに揺動し、仮想軸25および慣性質量体23は、移動する第2連結軸24の周りに揺動すると共に第1ドリブンプレート16の回転中心RCの周りに揺動(往復回転運動)することになる。この結果、第1ドリブンプレート16、クランク部材22、慣性質量体23、第1および第2連結軸21,24、並びにガイド部235は、実質的に、第1ドリブンプレート16を固定節とする4節回転連鎖機構を構成する。
【0034】
更に、第1ドリブンプレート16の回転中心RCと第1連結軸21との軸間距離を“L1”とし、第1連結軸21と第2連結軸24との軸間距離を“L2”とし、第2連結軸24と仮想軸25との軸間距離を“L3”とし、仮想軸25と回転中心RCとの軸間距離を“L4”としたときに(
図2参照)、本実施形態では、第1ドリブンプレート16、クランク部材22、慣性質量体23、第2連結軸24および慣性質量体23のガイド部235が、L1+L2>L3+L4という関係を満たすように構成される。また、本実施形態では、第2連結軸24と仮想軸25との軸間距離L3(ガイド面236の曲率半径−外輪27の半径)が、軸間距離L1,L2およびL4よりも短く、かつ各クランク部材22および慣性質量体23の動作に支障のない範囲で、できるだけ短く定められる。更に、本実施形態において、第1リンクとしての第1ドリブンプレート16(突出支持部162)は、回転中心RCと第1連結軸21との軸間距離L1が、軸間距離L2,L3およびL4よりも長くなるように構成される。
【0035】
これにより、本実施形態の振動減衰装置20では、L1>L4>L2>L3という関係が成立し、第1ドリブンプレート16、クランク部材22、慣性質量体23、第1および第2連結軸21,24、並びにガイド部235は、実質的に、第2連結軸24と仮想軸25とを結ぶ線分(仮想リンク)と対向する第1ドリブンプレート16を固定節とする両てこ機構を構成する。加えて、本実施形態の振動減衰装置20では、第1連結軸21の中心からクランク部材22の重心Gまでの長さを“Lg”としたときに、Lg=L2という関係が成立する。
【0036】
また、振動減衰装置20の「平衡状態(釣り合い状態)」は、振動減衰装置20の構成要素に作用する遠心力の総和と、振動減衰装置20の第1および第2連結軸21,24の中心並びに回転中心RCに作用する力との合力がゼロになる状態である。振動減衰装置20の平衡状態では、
図2に示すように、第2連結軸24の中心と、仮想軸25の中心と、第1ドリブンプレート16の回転中心RCとが一直線上に位置する。更に、本実施形態の振動減衰装置20は、第2連結軸24の中心、仮想軸25の中心および第1ドリブンプレート16の回転中心RCが一直線上に位置する平衡状態で、第1連結軸21の中心から第2連結軸24の中心に向かう方向と、第2連結軸24の中心から回転中心RCに向かう方向とがなす角度を“φ”としたときに、60°≦φ≦120°、より好ましくは70°≦φ≦90°を満たすように構成される。
【0037】
上記ダンパ装置10および振動減衰装置20を含む発進装置1では、ロックアップクラッチ8によりロックアップが解除されている際、
図1からわかるように、原動機としてのエンジンEGからのトルク(動力)が、フロントカバー3、ポンプインペラ4、タービンランナ5、ダンパハブ7という経路を介して変速機TMの入力軸ISへと伝達される。また、ロックアップクラッチ8によりロックアップが実行される際には、
図1からわかるように、エンジンEGからのトルク(動力)が、フロントカバー3、ロックアップクラッチ8、ドライブ部材11、第1スプリングSP1、中間部材12、第2スプリングSP2、ドリブン部材15、ダンパハブ7という経路を介して変速機TMの入力軸ISへと伝達される。
【0038】
ロックアップクラッチ8によりロックアップが実行されている際、エンジンEGの回転に伴ってロックアップクラッチ8によりフロントカバー3に連結されたドライブ部材11が回転すると、ドライブ部材11に伝達されるトルクがトルクT1に達するまで、ドライブ部材11とドリブン部材15との間で、第1および第2スプリングSP1,SP2が中間部材12を介して直列に作用する。これにより、フロントカバー3に伝達されるエンジンEGからのトルクが変速機TMの入力軸ISへと伝達されると共に、当該エンジンEGからのトルクの変動がダンパ装置10の第1および第2スプリングSP1,SP2により減衰(吸収)される。また、ドライブ部材11に伝達されるトルクがトルクT1以上になると、当該トルクがトルクT2に達するまで、エンジンEGからのトルクの変動がダンパ装置10の第1スプリングSP1により減衰(吸収)される。
【0039】
更に、発進装置1では、ロックアップの実行に伴ってロックアップクラッチ8によりフロントカバー3に連結されたダンパ装置10がフロントカバー3と共に回転すると、ダンパ装置10の第1ドリブンプレート16(ドリブン部材15)も発進装置1の軸心の周りにフロントカバー3と同方向に回転する。第1ドリブンプレート16の回転に伴い、振動減衰装置20を構成する各クランク部材22および慣性質量体23は、
図5A、
図5Bおよび
図5Cに示すように、第1ドリブンプレート16に対して揺動する。これにより、揺動する慣性質量体23から、エンジンEGからドライブ部材11に伝達される振動とは逆位相の振動を各ガイド部235、各第2連結軸24および各クランク部材22を介して第1ドリブンプレート16に付与し、当該第1ドリブンプレート16の振動を減衰することが可能となる。すなわち、振動減衰装置20は、エンジンEGから第1ドリブンプレート16に伝達される振動の次数(励振次数:エンジンEGが例えば3気筒エンジンである場合、1.5次、エンジンEGが例えば4気筒エンジンである場合、2次)に応じた次数を有するように構成され、エンジンEG(第1ドリブンプレート16)の回転数に拘わらず、エンジンEGから第1ドリブンプレート16に伝達される振動を減衰する。これにより、ダンパ装置10の重量増加を抑制しつつ、当該ダンパ装置10と振動減衰装置20との双方により振動を極めて良好に減衰することが可能となる。
【0040】
そして、振動減衰装置20では、クランク部材22および慣性質量体23の双方に連結されるリンク、すなわち一般的な4節回転連鎖機構における連接ロッドを用いることなく、4節回転連鎖機構を構成することができる。従って、振動減衰装置20では、厚みや重量を増やして当該連接ロッドの強度や耐久性を確保する必要がなくなることから、装置全体の重量の増加や大型化を良好に抑制することが可能となる。加えて、連接ロッドを含まない振動減衰装置20では、当該連接ロッドの重量(慣性モーメント)の増加によりクランク部材22の重心Gが回転中心RC側に移動することに起因して当該クランク部材22に作用する復元力が低下するのを抑制し、振動減衰性能を良好に確保することができる。
【0041】
また、振動減衰装置20の仮想軸25には滑り軸受や転がり軸受といった軸受を設ける必要がないことから、第2連結軸24と仮想軸25との軸間距離L3、すなわち一般的な4節回転連鎖機構における連接ロッドの長さの設定の自由度を向上させて、軸間距離L3を容易に短くすることが可能となる。従って、当該軸間距離L3の調整により振動減衰装置20の振動減衰性能を容易に向上させることができる。更に、クランク部材22および慣性質量体23の双方に連結されるリンク(連接ロッド)が不要となることで、クランク部材22に作用する遠心力Fcの分力が当該クランク部材22および慣性質量体23の双方に連結されるリンクを平衡状態での位置へと戻すのに使われることはない。従って、クランク部材22の重量の増加を抑制しつつ、振動減衰装置20の振動減衰性能を向上させることができる。この結果、振動減衰装置20では、装置全体の重量の増加や大型化を抑制しつつ、振動減衰性能をより向上させることが可能となる。
【0042】
次に、振動減衰装置20における設計手順について説明する。
【0043】
上述のような振動減衰装置20から連接ロッドや慣性質量体が省略されたものは、遠心振子式吸振装置に相当するともいえるが、遠心振子式吸振装置では、振子質量体の支持部材に伝達される入力トルクの振動の振幅が増加するのに伴って振子質量体の振れ角が大きくなり、当該振れ角が大きくなるにつれて振子質量体を平衡状態(釣り合い位置)に戻そうとする復元力が小さくなる。このため、振子質量体の慣性モーメントすなわち遠心振子式吸振装置の等価質量の変化量に対する復元力すなわち遠心振子式吸振装置の等価剛性の減少量が大きくなることで、遠心振子式吸振装置が最も良好に減衰し得る振動の次数である有効次数は、振子質量体の振れ角が大きくなるにつれて小さくなる。そして、遠心振子式吸振装置では、有効次数の減少量(励振次数との差)が大きくなるほど、振動減衰性能が悪化してしまう。従って、遠心振子式吸振装置は、一般に、振れ角が大きくなったときの有効次数の減少量ができるだけ小さくなるように設計される。
【0044】
これに対して、上述のような振動減衰装置20では、ドライブ部材11からドリブン部材15に伝達されるトルク(以下、「入力トルク」という)の振動の振幅λが大きくなって慣性質量体23の振れ角が大きくなると、振動減衰装置20によって本来減衰されるべき振動の次数、すなわちエンジンEGの励振次数q
tagと、当該振動減衰装置20により最も良好に減衰される振動の次数である有効次数q
effとの間にズレを生じる。すなわち、振動減衰装置20では、慣性質量体23の振れ角すなわち入力トルクの振動の振幅λが大きくなるにつれて、振動減衰装置の諸元によっては、有効次数q
effがエンジンEGの励振次数q
tagよりも小さくなることもあり、大きくなることもある。
【0045】
そこで、本発明者らは、まず、クランク部材22の質量Mや慣性質量体23の慣性モーメント(イナーシャ)J、エンジンEGの気筒数n、振動減衰装置20の搭載要件に依存する軸間距離L1等を一定にして、入力トルクの振動の振幅λが変化しても有効次数q
effを変化させない軸間距離L2,L3,L4、および長さLg(第1連結軸21の中心からクランク部材22の重心Gまでの長さ)の組み合わせを探索するシミュレーションを行った。シミュレーションは、軸間距離L2,L3,L4、および長さLgを変えた複数の振動減衰装置20のモデルにおいて、平衡状態での位置から慣性質量体23を回転中心RCの周りにある初期角度(慣性質量体23の回転中心RC周りの振れ角に相当する角度)だけ回転させた状態を初期状態とし、複数の初期角度ごとに第1ドリブンプレート16に振動成分を含まないトルクを付与して当該第1ドリブンプレート16を一定の回転数(例えば、1000rpm)で回転させ、慣性質量体23等を初期角度に応じた周波数で揺動させるものである。シミュレーションに用いられた複数のモデルは、何れも3気筒エンジンにおける励振次数q
tag=1.5の振動を減衰するように作成され、シミュレーションに際しては、流体伝動室9内でクランク部材22等に作用する遠心油圧や、部材間の摩擦の影響を無視した。
【0046】
そして、シミュレーションの結果、振動減衰装置20において次式(1)の関係が成立する場合、入力トルクの振動の振幅λが変化しても有効次数q
effが概ね一定に保たれることが判明した。ただし、式(1)(および式(2)並びに式(3))における“α”,“β”および“γ”は、何れも、シミュレーションによって定まる定数であり、例えば、0.02≦α≦0.15 0.04≦β≦0.06 0.6≦γ≦0.75である。また、本発明者らの解析の結果、振動減衰装置20において次式(2)の関係が成立する場合、入力トルクの振動の振幅λが大きくなるにつれて有効次数q
effが大きくなり、振動減衰装置20において次式(3)の関係が成立する場合、入力トルクの振動の振幅λが大きくなるにつれて有効次数q
effが小さくなることも判明した。更に、解析の結果、式(1)、(2)および(3)の何れかを満たす振動減衰装置20において、クランク部材22の質量Mや慣性質量体23の慣性モーメントJを変化させることで、入力トルクの振動の振幅λが小さくなっていくときの有効次数q
effの収束値(以下、「基準次数q
ref」という)が変化することが判明した。この場合、基準次数q
refは、クランク部材22の質量Mが小さいほど大きくなり、慣性質量体23の慣性モーメントJが大きいほど大きくなる。
【0047】
L4/(L3+L4)=α・(Lg/L2)+β・n+γ …(1)
L4/(L3+L4)>α・(Lg/L2)+β・n+γ …(2)
L4/(L3+L4)<α・(Lg/L2)+β・n+γ …(3)
【0048】
更に、本発明者らは、上述のようなシミュレーションや解析の結果に基づいて、入力トルクの振動の振幅λに応じた有効次数q
effのズレ量と、振動減衰装置20の振動減衰性能との関係について検討を行った。ここでは、上記(1)〜(3)式を用いて、有効次数q
effの励振次数q
tagからのズレ量の当該励振次数q
tagに対する割合ρが互いに異なり、かつ基準次数q
refがエンジンEGの励振次数q
tagに一致するように軸間距離L2,L3,L4、長さLg、質量M、慣性モーメントJが定められた複数の振動減衰装置20のモデルについて、エンジンEG(ここでは、4気筒エンジン)の回転数Neとドリブン部材15のトルク変動T
Flucとの関係を評価した。なお、有効次数q
effの励振次数q
tagからのズレ量は、入力トルクの振動の振幅λが最大となって慣性質量体23の振れ角が最大となるときの有効次数q
effから励振次数q
tagを差し引いたものである。
【0049】
図6に、クランク部材22の質量Mを一定にすると共に慣性質量体23の慣性モーメントJを変化させることにより基準次数q
refが調整された複数のモデルM0,M1,M2,M3,M4およびM5における回転数Neとドリブン部材15のトルク変動T
Flucとの関係を示す。同図は、ロックアップの実行によりエンジンEGからドリブン部材15にトルクが伝達された状態での当該ドリブン部材15のトルク変動T
Fluc(振動レベル)の解析結果を示すものである。
【0050】
図6におけるモデルM0は、
図7に示すように、上述の有効次数q
effの励振次数q
tagからのズレ量の当該励振次数q
tagに対する割合ρが0%、すなわち入力トルクの振動の振幅λが変化しても有効次数q
effが変化しないように作成された振動減衰装置20のモデルである。
図6におけるモデルM1は、
図7に示すように、割合ρが10%になるように作成された振動減衰装置20のモデルである。モデルM1における慣性質量体23の慣性モーメントJは、モデルM0における慣性質量体23の慣性モーメントJのおよそ1.5倍である。
図6におけるモデルM2は、
図7に示すように、割合ρが20%になるように作成された振動減衰装置20のモデルである。モデルM2における慣性質量体23の慣性モーメントJは、モデルM0における慣性質量体23の慣性モーメントJのおよそ2倍である。
図6におけるモデルM3は、
図7に示すように、割合ρが30%になるように作成された振動減衰装置20のモデルである。モデルM3における慣性質量体23の慣性モーメントJは、モデルM0における慣性質量体23の慣性モーメントJのおよそ2.5倍である。
図6におけるモデルM4は、
図7に示すように、割合ρが50%になるように作成された振動減衰装置20のモデルである。モデルM4における慣性質量体23の慣性モーメントJは、モデルM0における慣性質量体23の慣性モーメントJのおよそ7倍である。
図6におけるモデルM5は、
図7に示すように、割合ρが−10%になるように(入力トルクの振動の振幅λが大きくなるにつれて有効次数q
effが小さくなるように)作成された振動減衰装置20のモデルである。モデルM5における慣性質量体23の慣性モーメントJは、モデルM0における慣性質量体23の慣性モーメントJのおよそ0.5倍である。
【0051】
図6からわかるように、入力トルクの振動の振幅λが大きくなるにつれて有効次数q
effが小さくなるモデルM5では、ロックアップクラッチ8のロックアップ回転数Nlup(例えば、1000rpm)付近におけるドリブン部材15のトルク変動T
Flucが非常に大きくなり、ロックアップ領域内の回転数Neが比較的低い領域でのドリブン部材15のトルク変動T
Flucも比較的大きくなってしまっている。これに対して、入力トルクの振動の振幅λが大きくなるにつれて有効次数q
effが大きくなるモデルM1からM4では、ロックアップ回転数Nlup付近におけるドリブン部材15のトルク変動T
Flucが充分小さくなって割合ρが0%であるモデルM0のものを下回っており、ロックアップ領域内の回転数Neが比較的低い領域でのドリブン部材15のトルク変動T
Flucも充分に小さくなっている。更に、モデルM1からM4では、慣性質量体23の慣性モーメントJが大きくなるほど、ロックアップ回転数Nlup付近におけるドリブン部材15のトルク変動T
Flucが小さくなっている。
【0052】
また、
図8に、慣性質量体23の慣性モーメントJを一定にすると共にクランク部材22の質量Mを変化させることにより基準次数q
refが調整された複数のモデルM10,M11,M12,M13,M14,M15,M16およびM17における回転数Neとドリブン部材15のトルク変動T
Flucとの関係を示す。同図も、ロックアップの実行によりエンジンEGからドリブン部材15にトルクが伝達された状態での当該ドリブン部材15のトルク変動T
Flucの解析結果を示すものである。
【0053】
図8におけるモデルM10は、上述の有効次数q
effの励振次数q
tagからのズレ量の当該励振次数q
tagに対する割合ρが0%、すなわち入力トルクの振動の振幅λが変化しても有効次数q
effが変化しないように作成された振動減衰装置20のモデルである。
図8におけるモデルM11は、割合ρが10%になるように作成された振動減衰装置20のモデルである。モデルM11におけるクランク部材22の質量Mは、モデルM10におけるクランク部材22の質量Mのおよそ0.65倍である。
図8におけるモデルM12は、割合ρが18%になるように作成された振動減衰装置20のモデルである。モデルM12におけるクランク部材22の質量Mは、モデルM10におけるクランク部材22の質量Mのおよそ0.6倍である。
図8におけるモデルM13は、割合ρが20%になるように作成された振動減衰装置20のモデルである。モデルM13におけるクランク部材22の質量Mは、モデルM10におけるクランク部材22の質量Mのおよそ0.5倍である。
図8におけるモデルM14は、割合ρが30%になるように作成された振動減衰装置20のモデルである。モデルM14におけるクランク部材22の質量Mは、モデルM10におけるクランク部材22の質量Mのおよそ0.4倍である。
図8におけるモデルM15は、割合ρが50%になるように作成された振動減衰装置20のモデルである。モデルM15におけるクランク部材22の質量Mは、モデルM10におけるクランク部材22の質量Mのおよそ0.15倍である。
図8におけるモデルM16は、割合ρが−8%になるように作成された振動減衰装置20のモデルである。モデルM16におけるクランク部材22の質量Mは、モデルM10におけるクランク部材22の質量Mのおよそ1.2倍である。
図8におけるモデルM17は、割合ρが−10%になるように作成された振動減衰装置20のモデルである。モデルM17におけるクランク部材22の質量Mは、モデルM10におけるクランク部材22の質量Mのおよそ2倍である。
【0054】
図8からわかるように、入力トルクの振動の振幅λが大きくなるにつれて有効次数q
effが小さくなるモデルM17では、ロックアップクラッチ8のロックアップ回転数Nlup付近におけるドリブン部材15のトルク変動T
Flucが非常に大きくなり、ロックアップ領域内の回転数Neが比較的低い領域でのドリブン部材15のトルク変動T
Flucも比較的大きくなってしまっている。これに対して、割合ρが−8%であるモデルM16、割合ρが0%であるモデルM10、割合ρが10%であるモデルM11、割合ρが18%であるモデルM12、割合ρが20%であるモデルM13では、ロックアップ回転数Nlup付近におけるドリブン部材15のトルク変動T
Flucが充分に小さくなっており、ロックアップ領域内の回転数Neが比較的低い領域でのドリブン部材15のトルク変動T
Flucも充分に小さくなっている。また、割合ρが20%から50%であるモデルM13,M14およびM15では、クランク部材22の質量Mが小さくなるほど、ロックアップ回転数Nlup付近におけるドリブン部材15のトルク変動T
Flucが大きくなっている。
【0055】
図6および
図8に示す解析結果を踏まえて、本実施形態の振動減衰装置20は、上記式(2)に基づいて、エンジンEGからドリブン部材15に伝達される入力トルクの振動の振幅λが大きくなるにつれて有効次数q
effが大きくなるように設計される。このように、入力トルクの振動の振幅λが大きくなるにつれて有効次数q
effが大きくなる場合、当該振幅λが小さいほど有効次数q
effが小さくなる。また、入力トルクの振動の振幅λが小さいときの有効次数q
effが小さいということは、当該振幅λが小さいとき(静止状態)の振動減衰装置20の等価質量M
eqが大きいか、あるいは振動減衰装置20の等価剛性K
eqが小さいということを意味する。
【0056】
すなわち、上記振幅λが大きくなるにつれて有効次数q
effが大きくなる振動減衰装置20では、等価質量M
eqが大きくなるように慣性質量体23の慣性モーメント(イナーシャ)Jを大きくしたり(
図6参照)、あるいは等価剛性K
eqが小さくなるようにクランク部材22の質量M(復元力発生部材に作用する復元力)を小さくして慣性質量体23の慣性モーメントJを相対的に大きくしたりことができる(
図8参照)。そして、
図6および
図8に示す解析結果から、このような慣性質量体23の慣性モーメントJの増加による振動減衰性能の向上幅は、有効次数q
effのズレによる振動減衰性能の低下幅に比べて充分に大きいことが理解されよう。従って、入力トルクの振動の振幅λが大きくなるにつれて有効次数q
effが大きくなるようにすることで、クランク部材22と当該クランク部材22に連動して揺動する慣性質量体23とを含む振動減衰装置20の振動減衰性能をより向上させることが可能となる。
【0057】
また、本実施形態の振動減衰装置20において、上記ズレ量、すなわち入力トルクの振動の振幅λが最大になるときの有効次数q
effとエンジンの励振次数q
tagとの差は、励振次数q
tagの50%未満(例えば、20%未満)とされる。すなわち、
図6に関連したシミュレーションで用いられた上記割合ρが50%となるモデルM4では、慣性質量体23の慣性モーメントJがモデルM0における慣性質量体23の慣性モーメントJのおよそ7倍となることから、慣性質量体23ひいては振動減衰装置20が大型化してしまうおそれがある。更に、
図8に関連したシミュレーションで用いられた上記割合ρが50%となるモデルM15では、慣性質量体23の慣性モーメントJがモデルM10におけるクランク部材22の質量Mのおよそ0.15倍となることから、クランク部材22ひいては振動減衰装置20の耐久性が低下してしまうおそれがある。従って、上記割合ρが50%未満になるように振動減衰装置20を設計することで、慣性質量体23の慣性モーメントJの増加に伴う振動減衰装置20の大型化や、クランク部材22の軽量化に伴う耐久性の低下を抑制しつつ、振動減衰性能を向上させることが可能となる。そして、
図6および
図8からわかるように、振動減衰性能をより向上させるためには、上記割合ρが20%以下になるように振動減衰装置20を設計すると好ましい。
【0058】
ただし、振動減衰装置20は、上記式(1)に基づいて、上記割合が0%になるように、すなわちエンジンEGからドリブン部材15に伝達される入力トルクの振動の振幅λが変化しても有効次数q
effが変化しないように設計されてもよい。これにより、
図6および
図8に示す解析結果からわかるように、慣性質量体23の慣性モーメントJの増加や、クランク部材22の軽量化に伴う耐久性の低下を抑制しつつ、有効次数q
effのズレによる振動減衰性能の低下を良好に抑えることができる。この結果、振動減衰装置20の小型化や耐久性の向上を図りつつ、振動減衰性能を向上させることが可能となる。
【0059】
また、振動減衰装置20において、基準次数q
refは必ずしも励振次数q
tagに一致している必要はなく、振動減衰装置20は、基準次数q
refが励振次数q
tagよりも大きく設計されてもよい。すなわち、本発明者らの研究によれば、上述のような振動減衰装置20では、基準次数q
refをエンジンEGの励振次数q
tagに一致させるよりも、当該励振次数q
tagよりも大きくすることで、振動減衰性能をより向上させ得ることが判明している。そして、この場合、振動減衰装置20は、1.00×q
tag<q
ref≦1.03×q
tag、より好ましくは1.01×q
tag≦q
ref≦1.02×q
tagを満たすように設計されるとよい。ただし、振動減衰装置20は、基準次数q
refが励振次数q
tagよりも若干小さくなるように設計されてもよい。
【0060】
なお、振動減衰装置20は、
図9に示すように、Lg>L2という関係を満たすように構成されてもよい。これにより、Lg=L2という関係を満たす場合に比べて第1連結軸21の支持部(軸受部)に作用する荷重(負荷)が増加することになるが、てこの作用によってクランク部材22に作用する復元力Frをより一層大きくすることが可能となる。この場合、必ずしも重心Gが第1および第2連結軸21,24の中心を通る直線上に位置している必要はない。
【0061】
また、ガイド部235は、クランク部材22に形成されてもよく、第2連結軸24は、慣性質量体23により支持されてもよい。更に、上記ガイド部235は、ガイド面236と対向する凸曲面状の支持面237およびストッパ面238を含むが、
図10に示すように、当該支持面237およびストッパ面238は省略されてもよい。
図10に示す環状部材230Vの突出部232に形成されるガイド部235Vは、一定の曲率半径を有する凹曲面状(凹円柱面状)のガイド面236を有する概ね半円状の切り欠きとされる。これにより、第2連結軸24をガイドするガイド部235Vの構造、ひいては振動減衰装置20の構造を簡素化することが可能となる。また、ガイド部235Vと同様のガイド部がクランク部材22のプレート部材220に形成されてもよい。加えて、ガイド面236は、第2連結軸24を上述のように移動させるものであれば、例えば曲率半径が段階的あるいは徐々に変化するように形成された凹曲面であってもよい。
【0062】
更に、環状の慣性質量体23は、第1ドリブンプレート16により回転自在により支持(調心)されるように構成されてもよい。これにより、クランク部材22が揺動する際に、慣性質量体23を第1ドリブンプレート16の回転中心RCの周りにスムースに揺動させることが可能となる。
【0063】
また、上記振動減衰装置20において、環状の慣性質量体23は、互いに同一の諸元(寸法、重量等)を有する複数(例えば4個)の質量体で置き換えられてもよい。この場合、各質量体は、平衡状態で周方向に間隔をおいて(等間隔に)並ぶと共に回転中心RCの周りに揺動するようにクランク部材22(2枚のプレート部材220)、第2連結軸24およびガイド部235を介して第1ドリブンプレート16に連結される例えば円弧状の平面形状を有する金属板により構成されてもよい。この場合、第1ドリブンプレート16の外周部には、各質量体に作用する遠心力(遠心油圧)を受けながら各質量体を回転中心RCの周りに揺動するようにガイドするガイド部が設けられてもよい。
【0064】
更に、振動減衰装置20は、クランク部材22を揺動自在に支持して当該クランク部材22と回り対偶をなすと共に慣性質量体23と回り待遇をなす専用の支持部材(第1リンク)を含むものであってもよい。すなわち、クランク部材22は、第1リンクとしての専用の支持部材を介して間接的に回転要素に連結されてもよく、この場合、振動減衰装置20の支持部材は、振動の減衰対象となる例えばダンパ装置10のドライブ部材11、中間部材12あるいは第1ドリブンプレート16といった回転要素に同軸かつ一体に回転するように連結されればよい。このように構成される振動減衰装置20によっても、回転要素の振動を良好に減衰することが可能となる。
【0065】
また、
図11に示す振動減衰装置20Xのように、上記振動減衰装置20におけるガイド部235が省略されてもよく、代わりに、同図に示す連接ロッド35が用いられてもよい。連接ロッド35は、第2連結軸24Xを介してクランク部材22に回転自在に連結されると共に第3連結軸30を介して慣性質量体23Xの突出部232に回転自在に連結される。かかる振動減衰装置20Xも、上記式(1)または(2)に基づいて設計されることで、上記振動減衰装置20と同様の作用効果を奏する。
【0066】
図12は、本開示の他の振動減衰装置20Yを示す拡大図であり、
図13は、振動減衰装置20Yの要部拡大断面図である。これらの図面に示す振動減衰装置20Yは、上記第1ドリブンプレート16と同様に構成された支持部材としてのドリブンプレート16Yと、それぞれ連結軸(連結部材)214を介して第1ドリブンプレート16に回転自在に連結される復元力発生部材としての複数(本実施形態では、例えば4個)の錘体22Yと、連結軸214を介してドリブンプレート16Yおよび各錘体22Yに連結される1体の環状の慣性質量体23Yとを含む。
【0067】
図12および
図13に示すように、ドリブンプレート16Yは、その外周部に周方向に間隔をおいて(等間隔に)配設された複数(本実施形態では、例えば90°間隔で4個)の長穴(貫通孔)16h(第1ガイド部)を有する。図示するように、各長穴16hは、中実(あるいは中空)の丸棒状に形成された連結軸214すなわち錐体22Yをガイドするものであり、長手方向に延びる中心軸がドリブンプレート16Yの径方向に延在して回転中心RCを通るように当該ドリブンプレート16Yに形成される。また、長穴16hの幅(長手方向と直交する方向の内寸)は、連結軸214の外径よりも僅かに大きく定められる。各錘体22Yは、
図13に示すように、連結軸214を介して互いに連結される2枚のプレート部材220Yを有する。本実施形態において、各プレート部材220Yは、金属板により円盤状に形成されている。更に、連結軸214は、その軸心が錘体22Yの重心Gを通るように2枚のプレート部材220Yに固定(連結)される。
【0068】
慣性質量体23Yは、金属板により形成された2枚の環状部材230Yを含み、慣性質量体23Y(2枚の環状部材230Y)の重量は、1個の錘体22Yの重量よりも十分に重く定められる。
図12および
図13に示すように、環状部材230Yは、周方向に間隔をおいて(等間隔に)配設された複数(本実施形態では、例えば90°間隔で4個)のガイド部235Y(第2ガイド部)を有する。各ガイド部235Yは、円弧状に延びる開口部であって、上記連結軸214すなわち錐体22Yをガイドするものである。
【0069】
図示するように、ガイド部235Yは、凹曲面状のガイド面236と、当該ガイド面236よりも環状部材230Yの内周側(環状部材230Yの中心側)でガイド面236と対向する凸曲面状の支持面237と、ガイド面236および支持面237の両側で両者に連続する2つのストッパ面238とを含む。本実施形態において、ガイド面236は、一定の曲率半径を有する凹円柱面である。支持面237は、円弧状に延びる凸曲面であり、ストッパ面238は、円弧状に延びる凹曲面である。また、ガイド面236と支持面237との間隔は、連結軸214の外径よりも僅かに大きく定められる。
図12に示すように、ガイド部235Y(ガイド面236、支持面237およびストッパ面238)は、ガイド面236の曲率中心と環状部材230Yの中心(ドリブンプレート16Yの回転中心RC)とを通る直線に関して左右対称に形成される。
【0070】
図13に示すように、2枚の環状部材230Yは、互いに対応するガイド部235Yが当該環状部材230Yの軸方向に対向するようにドリブンプレート16Yの軸方向における両側に1枚ずつ当該ドリブンプレート16Yと同軸に配置される。更に、2枚の環状部材230Yの内周面は、それぞれドリブンプレート16Yに軸方向に突出するように設けられた複数の突起16p(
図12参照)により支持され、それにより各環状部材230Y(慣性質量体23Y)は、ドリブンプレート16Yにより回転中心RCの周りに回転自在に支持される。
【0071】
また、2枚のプレート部材220Yは、対応するドリブンプレート16Yおよび2枚の環状部材230Yを介して軸方向に対向するように配置されると共に、連結軸214により互いに連結される。2枚のプレート部材220Yを連結する連結軸214は、
図13に示すように、ドリブンプレート16Yの対応する長穴16hと、2枚の環状部材230Yの対応するガイド部235Yとを貫通する。これにより、連結軸214を介して、ドリブンプレート16Y、錘体22Yおよび慣性質量体23Yが連結され、各連結軸214は、ドリブンプレート16Yの対応する長穴16hおよび慣性質量体23Yの対応するガイド部235Yの双方に沿って移動可能となる。
【0072】
上述のような振動減衰装置20Yでは、錘体22Y(連結軸214)がドリブンプレート16Yおよび慣性質量体23Yとすべり対偶をなし、ドリブンプレート16Yと慣性質量体23Yとが回り対偶をなす。これにより、長穴16hを有するドリブンプレート16Y、複数の錘体22Y、およびガイド部235Yを有する慣性質量体23Yは、スライダクランク機構(両スライダクランク連鎖)を構成する。また、振動減衰装置20Yの平衡状態は、連結軸214がガイド部235Yの周方向における中央に位置し、長穴16hの径方向外側の端部に位置する状態である(
図12参照)。
【0073】
振動減衰装置20Yの平衡状態でドリブンプレート16Yが回転し始めると、2枚のプレート部材220Yを連結する連結軸214が錘体22Yへの遠心力の作用により慣性質量体23Yのガイド部235Yのガイド面236に押し付けられて当該ガイド面236上をガイド部235Yの一方の端部に向けて転動または摺動する。更に、ドリブンプレート16Yの回転に伴い、連結軸214は、ドリブンプレート16Yの長穴16hに沿って当該長穴16hの径方向内側の端部に向けてドリブンプレート16Yの径方向に移動する。また、連結軸214がガイド部235Yの一方の端部および長穴16hの径方向内側の端部に達すると、錘体22Yに作用する遠心力の分力が連結軸214を上記平衡状態へと戻す復元力として作用する。これにより、連結軸214は、ガイド面236上をガイド部235Yの他方の端部に向けて転動または摺動すると共に、長穴16hに沿って当該長穴16hの径方向外側の端部に向けてドリブンプレート16Yの径方向に移動する。
【0074】
従って、ドリブンプレート16Yが回転する際、錘体22Yは、長穴16h内でドリブンプレート16Yに対して径方向に往復移動(揺動)すると共に、ガイド部235Yに沿って慣性質量体23Yに対して往復移動(揺動)する。この結果、慣性質量体23Yは、錘体22Yの移動(揺動)に伴って、第1ドリブンプレート16の回転中心RCの周りに揺動(往復回転運動)することになる。これにより、揺動する慣性質量体23から、エンジンEGからドライブ部材11に伝達される振動とは逆位相の振動を各ガイド部235Y、各連結軸214を介してドリブンプレート16Yに付与し、当該ドリブンプレート16Yの振動を減衰することが可能となる。
【0075】
そして、上述のような振動減衰装置20Yも、上記式(1)または(2)に基づいて設計されることで、上記振動減衰装置20,20Xと同様の作用効果を奏する。すなわち、スライダクランク機構である振動減衰装置20Yは、上記式(1)または(2)における“Lg/L2”をLg/L2=1とした次式(4)または次式(5)に基づいて、エンジンEGからドリブン部材15に伝達される入力トルクの振動の振幅が変化しても有効次数q
effが変化しないか、あるいは、振幅λが大きくなるにつれて有効次数q
effが大きくなるように設計されるとよい。この場合、式(4)または式(5)において、錘体22Yの重心Gと当該錘体22Yのガイド部235Y(第2ガイド部)に沿った揺動の支点との距離を“L3”とし、錘体22Yのガイド部235Yに沿った揺動の支点と回転中心RCとの距離を“L4”とすればよい(
図12参照)。本実施形態において、錘体22Yのガイド部235Yに沿った揺動の支点は、ガイド面236(ガイド部235Y)の曲率中心に一致する。また、式(4)および式(5)における定数α,βおよびγも、例えば、0.02≦α≦0.15 0.04≦β≦0.06 0.6≦γ≦0.75とされればよい。
【0076】
L4/(L3+L4)=α+β・n+γ …(4)
L4/(L3+L4)>α+β・n+γ …(5)
【0077】
なお、振動減衰装置20Yには、
図14に示すように、それぞれ複数のコロ(あるいはボールすなわち転動体)26Yを介して連結軸214により回転自在に支持されて転がり軸受を構成する複数の円筒状の外輪27Yが設けられてもよい。
図14に示す例では、各連結軸214に、ドリブンプレート16Yの長穴16hの内面および慣性質量体23Y(環状部材230Y)のガイド部235Y(ガイド面236)上を転動または摺動するように、3個の外輪27Yが装着されている。これにより、各錘体22Yおよび慣性質量体23Yをよりスムースに揺動させることが可能となる。
【0078】
また、振動減衰装置20Yでは、ガイド部235Yのガイド面236が一定の曲率半径を有する凹円柱面とされているが、ガイド面236は、曲率半径が段階的あるいは徐々に変化するように形成された凹曲面であってもよい。更に、上記ガイド部235Yから支持面237およびストッパ面238が省略されてもよい。また、振動減衰装置20Yにおいて、慣性質量体23Yは、必ずしもドリブンプレート16Yにより回転中心RCの周りに回転自在に支持される必要はない。そして、長穴16hをその中心軸がドリブンプレート16Yの径方向に延在して回転中心RCを通るように当該ドリブンプレート16Yに形成することで、慣性質量体23の揺動を左右対称にすることが可能となるが、これに限られるものではない。すなわち、
図15に示すように、長穴16hは、その中心軸が円弧状に延在するようにドリブンプレート16Yに形成されてもよい。この場合、
図15に示すように、長穴16hの中心軸の曲率中心を上記振動減衰装置20における第1連結軸21の中心軸上にとり、かつ長穴16hの中心軸の曲率半径を上記振動減衰装置20における第1連結軸21と第2連結軸24との軸間距離L2に一致させれば、振動減衰装置20Yを上記振動減衰装置20と同様に動作させることが可能となる。
【0079】
更に、スライダクランク機構である振動減衰装置20Yは、
図16に示すように、支持部材としての2枚のドリブンプレート16Yと、2枚のドリブンプレート16Yの軸方向における間に配置される単一の環状部材である慣性質量体23Yと、それぞれ各ドリブンプレート16Yの長穴16hと慣性質量体23Yのガイド部235Y(ガイド面236)によりガイドされる複数の錐体22Yとを含むものであってもよい。この場合、錐体22Yは、図示するように、慣性質量体23Yのガイド部235Yによりガイドされる大径の本体22aと、それぞれ対応するドリブンプレート16Yの長穴16hによってガイドされるように本体22aから軸方向における両側に延出された軸部22bとを含むものであってもよい。
【0080】
また、振動減衰装置20Yにおいて、ガイド部235Yに相当するガイド部(第2ガイド部)が錘体22Yに形成されてもよく、連結軸214が慣性質量体23Yに連結(固定)されてもよい。更に、上記長穴16hに相当する第1ガイド部は、錘体22Yに設けられてもよく、この場合、ガイド部235Yに相当する第2ガイド部は、ドリブンプレート16Y(支持部材)および慣性質量体23Yの一方に設けられてもよく、連結軸214は、ドリブンプレート16Yおよび慣性質量体23Yの他方に設けられてもよい。また、上記長穴16hに相当する第1ガイド部は、慣性質量体23Yに設けられてもよく、この場合、ガイド部235Yに相当する第2ガイド部は、ドリブンプレート16Yおよび錘体22Yの一方に設けられてもよく、連結軸214は、ドリブンプレート16Yおよび錘体22Yの他方に設けられてもよい。
【0081】
更に、上記振動減衰装置20,20X,20Yは、作動油で満たされる流体伝動室9内に配置される湿式の振動減衰装置であるが、これに限られるものではない。すなわち、振動減衰装置20,20X,20Yは、いわゆる乾式の振動減衰装置としても用いられてもよい。
【0082】
そして、振動減衰装置20,20X,20Yは、上記ダンパ装置10の中間部材12に連結されてもよく、ドライブ部材(入力要素)11に連結されてもよい(
図1における二点鎖線参照)。また、振動減衰装置20,20X,20Yは、
図17に示すダンパ装置10Bに適用されてもよい。
図17のダンパ装置10Bは、上記ダンパ装置10から中間部材12を省略したものに相当し、回転要素としてドライブ部材(入力要素)11およびドリブン部材15(出力要素)を含むと共に、トルク伝達要素としてドライブ部材11とドリブン部材15との間に配置されるスプリングSPを含むものである。この場合、振動減衰装置20,20X,20Yは、図示するようにダンパ装置10Bのドリブン部材15に連結されてもよく、図中二点鎖線で示すように、ドライブ部材11に連結されてもよい。
【0083】
更に、振動減衰装置20,20X,20Yは、
図18に示すダンパ装置10Cに適用されてもよい。
図18のダンパ装置10Cは、回転要素としてドライブ部材(入力要素)11、第1中間部材(第1中間要素)121、第2中間部材(第2中間要素)122、およびドリブン部材(出力要素)15を含むと共に、トルク伝達要素としてドライブ部材11と第1中間部材121との間に配置される第1スプリングSP1、第2中間部材122とドリブン部材15との間に配置される第2スプリングSP2、および第1中間部材121と第2中間部材122との間に配置される第3スプリングSP3を含む。この場合、振動減衰装置20,20X,20Yは、図示するようにダンパ装置10Cのドリブン部材15に連結されてもよく、図中二点鎖線で示すように、第1中間部材121、第2中間部材122あるいはドライブ部材11に連結されてもよい。何れにしても、ダンパ装置10,10B,10Cの回転要素に振動減衰装置20,20X,20Yを連結することで、ダンパ装置10〜10Cの重量の増加を抑制しつつ、当該ダンパ装置10〜10Cと振動減衰装置20,20X,20Yとの双方により振動を極めて良好に減衰することが可能となる。
【0084】
以上説明したように、本開示の振動減衰装置は、エンジン(EG)からのトルクが伝達される回転要素(15)の回転中心(RC)の周りに該回転要素(15)と一体に回転する支持部材(16,16Y)と、前記支持部材(16,16Y)に連結されると共に該支持部材(16,16Y)の回転に伴って揺動可能な復元力発生部材(22,22Y)と、前記復元力発生部材(22,22Y)を介して前記支持部材(16,16Y)に連結されると共に該支持部材(16,16Y)の回転に伴って該復元力発生部材(22,22Y)に連動して前記回転中心(RC)の周りに揺動する慣性質量体(23,23X,23Y)とを含む振動減衰装置(20,20X,20Y)において、前記エンジン(EG)から前記回転要素(15)に伝達される入力トルクの振動の振幅(λ)が大きくなるにつれて前記振動減衰装置の次数(q
eff)が大きくなるものである。
【0085】
このように、入力トルクの振動の振幅が大きくなるにつれて振動減衰装置の次数が大きくなる場合、入力トルクの振動の振幅が小さいほど当該次数が小さくなる。また、入力トルクの振動の振幅が小さいときの振動減衰装置の次数が小さいということは、入力トルクの振動の振幅が小さいとき(静止状態)の振動減衰装置の等価質量が大きいか、あるいは振動減衰装置の等価剛性が小さいということを意味する。すなわち、入力トルクの振動の振幅が大きくなるにつれて次数が大きくなる振動減衰装置では、等価質量が大きくなるように慣性質量体の慣性モーメント(イナーシャ)を大きくしたり、あるいは等価剛性が小さくなるように復元力発生部材の質量(復元力発生部材に作用する復元力)を小さくして慣性質量体の慣性モーメントを相対的に大きくしたりことができる。そして、本発明者らの研究によれば、このような慣性質量体の慣性モーメントの増加による振動減衰性能の向上幅は、次数のズレによる振動減衰性能の低下幅に比べて充分に大きいことが判明した。従って、入力トルクの振動の振幅が大きくなるにつれて振動減衰装置の次数が大きくなるようにすることで、復元力発生部材と当該復元力発生部材に連動して揺動する慣性質量体とを含む振動減衰装置の振動減衰性能をより向上させることが可能となる。
【0086】
また、前記入力トルクの振動の振幅(λ)が最大になるときの前記振動減衰装置の次数(q
eff)と、前記エンジンの励振次数(q
tag)との差は、前記励振次数の50%よりも小さくてもよく、前記励振次数の20%よりも小さくてもよい。これにより、慣性質量体の慣性モーメントの増加に伴う振動減衰装置の大型化や、復元力発生部材の軽量化に伴う耐久性の低下を抑制しつつ、振動減衰性能を向上させることが可能となる。
【0087】
更に、前記振動減衰装置は(20Y)は、前記支持部材(16Y)、前記復元力発生部材(22Y)および前記慣性質量体(23Y)の何れか1つに設けられると共に該支持部材(16Y)の径方向に沿って延びる第1ガイド部(16h)と、前記支持部材(16Y)、前記復元力発生部材(22Y)および前記慣性質量体(23Y)の前記何れか1つ以外の2つの一方に形成されると共に円弧状に延びる第2ガイド部(235Y)とを備えてもよく、前記支持部材(16Y)、前記復元力発生部材(22Y)および前記慣性質量体(23Y)の前記何れか1つ以外の2つの他方は、前記第1および第2ガイド部(16h、235Y)によりガイドされてもよい。かかる振動減衰装置においても、入力トルクの振動の振幅が大きくなるにつれて振動減衰装置の次数が大きくなるようにすることで、装置全体の重量の増加や大型化を抑制しつつ、振動減衰性能をより向上させることが可能となる。
【0088】
また、前記振動減衰装置は(20Y)は、前記復元力発生部材(22Y)の重心と該復元力発生部材(22Y)の前記第2ガイド部に沿った揺動の支点との距離を“L3”とし、前記支点と前記回転中心(RC)との距離を“L4”とし、前記エンジンの気筒数を“n”としたときに、L3/(L3+L4)>α+β・n+γを満たしてもよい。ただし、“α”,“β”および“γ”は、予め定められる定数である。これにより、エンジンから回転要素に伝達される入力トルクの振動の振幅が大きくなるにつれて次数を大きくすることが可能となる。
【0089】
更に、前記振動減衰装置(20)は、前記支持部材(16)と前記復元力発生部材(22)とを相対回転自在に連結する第1の連結軸(21)と、前記復元力発生部材(22)および前記慣性質量体(23)の一方により支持されると共に、前記復元力発生部材(22)および前記慣性質量体(23)を相対回転自在に連結する第2の連結軸(24)と、前記復元力発生部材(22)および前記慣性質量体(23)の他方に形成され、前記支持部材(16)の回転に伴って、前記第2の連結軸(24)が前記第1連結軸(21)との軸間距離(L2)を一定に保ちながら該第1連結軸(21)の周りに揺動すると共に前記慣性質量体(23)に対する相対位置が不変となるように定められた仮想的な第3の連結軸(25)との軸間距離(L3)を一定に保ちながら該第3の連結軸(25)の周りに揺動するように該第2の連結軸(24)をガイドするガイド部(235,235V)とを備えてもよい。これにより、振動減衰装置全体の重量の増加や大型化を抑制しつつ、振動減衰性能をより向上させることが可能となる。
【0090】
また、前記振動減衰装置(20X)は、第2の連結軸(24X)を介して前記復元力発生部材(22)に回転自在に連結されると共に、第3の連結軸(30)を介して前記慣性質量体(23X)に回転自在に連結される連接部材(35)を更に備えてもよい。
【0091】
更に、前記振動減衰装置(20,20X)は、前記回転要素(15)の前記回転中心(RC)と前記第1の連結軸(21)との軸間距離を“L1”とし、前記第1の連結軸(21)と前記第2の連結軸(24,24X)との軸間距離を“L2”とし、前記第2の連結軸(24,24X)と前記第3の連結軸(25,30)との軸間距離を“L3”とし、前記第3の連結軸(25,30)と前記回転中心(RC)との軸間距離を“L4”としたときに、L1+L2>L3+L4を満たしてもよい。これにより、振動減衰装置の等価質量に対する復元力発生部材の重量の影響を非常に小さくして、等価剛性および等価質量すなわち振動次数の設定の自由度をより向上させることができる。この結果、復元力発生部材ひいては装置全体の重量の増加や大型化を抑制しつつ、振動減衰性能を極めて良好に向上させることが可能となる。
【0092】
また、前記振動減衰装置(20,20X)は、前記連結軸(21)から前記復元力発生部材(22)の重心(G)までの距離を“Lg”とし、前記エンジン(EG)の気筒数を“n”としたときに、L3/(L3+L4)>α・(Lg/L2)+β・n+γを満たしてもよい。ただし、“α”,“β”および“γ”は、予め定められる定数である。このような関係式を満たすように、振動減衰装置を設計することで、エンジンから回転要素に伝達される入力トルクの振動の振幅が大きくなるにつれて次数を大きくすることが可能となる。
【0093】
更に、前記振動減衰装置(20,20X,20Y)は、前記回転要素(15)に伝達される入力トルクの振動の振幅(λ)が小さくなっていくときの前記振動減衰装置の次数(q
eff)の収束値である基準次数(q
ref)が前記エンジン(EG)の励振次数(q
tag)よりも大きくなるように設定されてもよい。これにより、復元力発生部材と当該復元力発生部材に連動して揺動する慣性質量体とを含む振動減衰装置の振動減衰性能をより向上させることが可能となる。
【0094】
また、前記支持部材(16,16Y)は、少なくとも入力要素(11)および出力要素(15)を含む複数の回転要素(11,12,121,122,15)と、前記入力要素(11)と前記出力要素(15)との間でトルクを伝達する弾性体(SP,SP1,SP2,SP3)とを有するダンパ装置(10,10B,10C)の何れかの回転要素と同軸かつ一体に回転してもよい。このようにダンパ装置の回転要素に上記振動減衰装置を連結することで、ダンパ装置の重量増加を抑制しつつ、当該ダンパ装置と上記振動減衰装置との双方により振動を極めて良好に減衰することが可能となる。
【0095】
更に、前記ダンパ装置(10,10B,10C)の前記出力要素(15)は、変速機(TM)の入力軸(IS)に作用的(直接的または間接的)に連結されてもよい。
【0096】
本開示の他の振動減衰装置は、エンジン(EG)からのトルクが伝達される回転要素(15)の回転中心(RC)の周りに該回転要素(15)と一体に回転する支持部材(16,16Y)と、前記支持部材(16,16Y)に連結されると共に該支持部材(16,16Y)の回転に伴って揺動可能な復元力発生部材(22,22Y)と、前記復元力発生部材(22,22Y)を介して前記支持部材(16,16Y)に連結されると共に該支持部材(16,16Y)の回転に伴って該復元力発生部材(22,22Y)に連動して前記回転中心(RC)の周りに揺動する慣性質量体(23,23X,23Y)とを含む振動減衰装置(20,20X,20Y)において、前記エンジン(EG)から前記回転要素(15,16,16Y)に伝達される入力トルクの振動の振幅(λ)が変化しても前記振動減衰装置の次数(q
eff)が変化しないように設計されたものである。
【0097】
このように、入力トルクの振動の振幅が変化しても次数が変化しないように振動減衰装置を設計することで、慣性質量体の慣性モーメントの増加や、復元力発生部材の軽量化による耐久性低下を抑制しつつ、次数のズレによる振動減衰性能の低下を良好に抑えることができる。この結果、振動減衰装置の小型化や耐久性の向上を図りつつ、振動減衰性能を向上させることが可能となる。
【0098】
本開示の更に他の振動減衰装置は、エンジン(EG)からのトルクが伝達される回転要素(15)の回転中心(RC)の周りに該回転要素(15)と一体に回転する支持部材(16Y)と、前記支持部材(16Y)に連結されると共に該支持部材(16Y)の回転に伴って揺動可能な復元力発生部材(22Y)と、前記復元力発生部材(22Y)を介して前記支持部材(16Y)に連結されると共に該支持部材(16Y)の回転に伴って該復元力発生部材(22Y)に連動して前記回転中心(RC)の周りに揺動する慣性質量体(23Y)とを含む振動減衰装置(20Y)において、前記支持部材(16Y)、前記復元力発生部材(22Y)および前記慣性質量体(23Y)の何れか1つに設けられると共に該支持部材(16Y)の径方向に沿って延びる第1ガイド部(16h)と、前記支持部材(16Y)、前記復元力発生部材(22Y)および前記慣性質量体(23Y)の前記何れか1つ以外の2つの一方に形成されると共に円弧状に延びる第2ガイド部(235Y)とを備え、前記支持部材(16Y)、前記復元力発生部材(22Y)および前記慣性質量体(23Y)の前記何れか1つ以外の2つの他方は、前記第1および第2ガイド部(16h、235Y)によりガイドされ、前記復元力発生部材(22Y)の重心と該復元力発生部材(22Y)の前記第2ガイド部に沿った揺動の支点との距離を“L3”とし、前記支点と前記回転中心(RC)との距離を“L4”とし、前記エンジンの気筒数を“n”としたときに、L3/(L3+L4)>α+β・n+γを満たすものである。ただし、“α”,“β”および“γ”は、予め定められる定数である。
【0099】
本開示の他の振動減衰装置は、エンジン(EG)からのトルクが伝達される回転要素(15)の回転中心(RC)の周りに該回転要素(15)と一体に回転する支持部材(16)と、前記支持部材(16)に連結されると共に該支持部材(16)の回転に伴って揺動可能な復元力発生部材(22)と、前記復元力発生部材(22)を介して前記支持部材(16)に連結されると共に該支持部材(16)の回転に伴って該復元力発生部材(22)に連動して前記回転中心(RC)の周りに揺動する慣性質量体(23)とを含む振動減衰装置(20)において、前記支持部材(16)と前記復元力発生部材(22)とを相対回転自在に連結する第1の連結軸(21)と、前記復元力発生部材(22)および前記慣性質量体(23)の一方により支持されると共に、前記復元力発生部材(22)および前記慣性質量体(23)を相対回転自在に連結する第2の連結軸(24)と、前記復元力発生部材(22)および前記慣性質量体(23)の他方に形成され、前記支持部材(16)の回転に伴って、前記第2の連結軸(24)が前記第1連結軸(21)との軸間距離(L2)を一定に保ちながら該第1連結軸(21)の周りに揺動すると共に前記慣性質量体(23)に対する相対位置が不変となるように定められた仮想的な第3の連結軸(25)との軸間距離(L3)を一定に保ちながら該第3の連結軸(25)の周りに揺動するように該第2の連結軸(24)をガイドするガイド部(235,235V)とを備え、前記第1の連結軸(21)と前記第2の連結軸(24,24X)との軸間距離を“L2”とし、前記第2の連結軸(24,24X)と前記第3の連結軸(25,30)との軸間距離を“L3”とし、前記第3の連結軸(25,30)と前記回転中心(RC)との軸間距離を“L4”とし、前記連結軸(21)から前記復元力発生部材(22)の重心(G)までの距離を“Lg”とし、前記エンジン(EG)の気筒数を“n”としたときに、L3/(L3+L4)>α・(Lg/L2)+β・n+γを満たしてもよい。ただし、“α”,“β”および“γ”は、予め定められる定数である。
【0100】
そして、本開示の発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本開示の外延の範囲内において様々な変更をなし得ることはいうまでもない。更に、上記発明を実施するための形態は、あくまで発明の概要の欄に記載された発明の具体的な一形態に過ぎず、発明の概要の欄に記載された発明の要素を限定するものではない。