特許第6536747号(P6536747)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6536747
(24)【登録日】2019年6月14日
(45)【発行日】2019年7月3日
(54)【発明の名称】排ガス測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/22 20060101AFI20190625BHJP
   G01N 15/02 20060101ALI20190625BHJP
【FI】
   G01N1/22 M
   G01N15/02 F
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-518025(P2018-518025)
(86)(22)【出願日】2016年5月19日
(86)【国際出願番号】JP2016064920
(87)【国際公開番号】WO2017199404
(87)【国際公開日】20171123
【審査請求日】2018年7月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100205981
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 大輔
(72)【発明者】
【氏名】奥田 浩史
(72)【発明者】
【氏名】西尾 達哉
【審査官】 福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】 特表2002−505421(JP,A)
【文献】 特開2008−096170(JP,A)
【文献】 米国特許第5376163(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/22
G01N 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料ガスと希釈用ガスとを混合して測定ガスにする混合部と、
試料ガスを前記混合部に導入する入口流路と、
前記混合部からの測定ガスの測定を行なう測定部と、
前記混合部で混合された試料ガス及び希釈用ガスからなる測定ガスを前記測定部へ導入する測定ガス流路と、
前記測定部を経た測定済みガスが流れる測定済みガス流路と、
前記測定済みガス流路の下流端に接続され、前記測定済みガスの一部を希釈用ガスとして前記混合部へ導く希釈用ガス流路と、
前記測定済みガス流路の下流端に接続され、前記測定済みガスのうち前記希釈用ガス以外のガスを外部へ排出するための排出流路と、
前記測定済みガスのうち少なくとも前記希釈用ガスの精製を行なうガス精製部と、
前記入口流路を流れる試料ガス流、前記測定ガス流路を流れる測定ガス流、前記測定済みガス流路を流れる測定済みガス流、前記希釈用ガス流路を流れる希釈用ガス流及び前記排出流路を流れる測定済みガス流を形成するためのポンプと、
前記排出流路を流れるガス流量を測定する排出流量測定部と、
前記排出流量測定部の測定値に基づいて、前記排出流路を流れるガス流量を予め設定された流量に制御する排出流量制御部と、を備えた排ガス測定装置。
【請求項2】
前記ポンプは、前記測定ガス流路上又は前記測定済みガス流路上に設けられた単一のポンプである請求項1に記載の排ガス測定装置。
【請求項3】
前記排出流量制御部は、前記排出流量測定部の測定値に基づいて開度が調節されるバルブである請求項1又は2に記載の排ガス測定装置。
【請求項4】
前記ガス精製部は前記測定済みガス流路上に設けられている請求項1から3のいずれか一項に記載の排ガス測定装置。
【請求項5】
前記測定済みガス流路の途中に設けられ、前記測定済みガス流路を流れる測定済みガスの少なくとも一部を外部へ排出するか否かを切り替える測定済みガス流量切替部をさらに備えている請求項1から4のいずれか一項に記載の排ガス測定装置。
【請求項6】
前記測定ガス流路上に測定ガス中の粒子を帯電させる荷電装置をさらに備え、
前記測定部は、測定ガスが流れる測定流路、その測定流路の内側に沿って設けられた平板状の分級電極、及び前記分級電極と対向し、前記測定流路を流れる測定ガス流に沿って配列され、互いに電気的に絶縁された複数の測定電極を備え、前記分級電極と前記測定電極との間に電圧を印加して電界を発生させることにより、帯電した粒子をその粒径ごとに分級して各測定電極に捕捉し、その個数をカウントする粒子分級測定装置である請求項1から5のいずれか一項に記載の排ガス測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の排ガス等を試料ガスとして取り込み、その試料ガス中に含まれる粒子数を測定する排ガス測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車のエンジン等から排出されるガス中の粒子状物質の数を計測するために、試料ガスにエアなどの希釈用ガスを混合して希釈し、混合されたガスを粒子数計測装置に導入して、排ガス中に含まれる粒子数を計測するように構成されているシステムがある。かかるシステムの粒子数計測装置には、例えば試料ガス中の微粒子をその大きさによって分級して測定する微粒子測定装置が用いられる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO2013−183652A1
【特許文献2】特開2012−127773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記システムでは、試料ガスと希釈用ガスとを混合する混合部からの混合ガスの流量を測定する流量計と混合部に供給される希釈用ガスの流量を測定する流量計を備え、これらの流量計の測定値に基づいて、粒子数計測装置に導入される試料ガスの流量とその希釈率を一定に制御することが一般的である。
【0005】
上記のガス流量制御方法では、粒子数計測装置に導入される試料ガスの流量を、混合ガス流量の測定値から希釈用ガス流路流量の測定値を差し引くことによって求め、その流量が一定流量になるように試料ガス側に設けられたバルブを制御することとなる。そのため、試料ガス流量の制御のために、混合ガスのための流量計と希釈用ガスのための流量計の2つの流量計の測定値を用いる必要がある。
【0006】
流量計として、例えばフルスケールが10L/minの流量計を使用し、その精度がフルスケールに対して±1%である場合に、希釈率を10倍として混合ガスの流量を9L/min、希釈用ガスの流量を8.1L/minに設定したとすると、実際の混合ガス流量は9±0.1L/min、希釈用ガス流量は8.1±0.1L/minとなり、試料ガス流量は0.9±0.2L/minとなる。これは、本来の試料ガス流量の設定値から最大で20%程度の誤差が出ることを意味する。試料ガス流量の誤差は測定精度に大きな影響を与えるものであるため、試料ガスの流量制御をより高精度に行なうことが望ましい。
【0007】
また、排ガスを混合部に導入する流路上に流量計を設置し、その流量計の測定値に基づいて試料ガスの流量を制御すれば、1つの流量計の測定値に基づいて試料ガス流量を制御することはできる。しかし、油分や粒子物質を含んだ高濃度の排ガスを流量計に導入すると、流量計の内部が汚染されて流量計の測定精度が低下したり、排ガス中の粒子物質が流量計内に沈着して測定部に導入されるべき粒子が失われたりすることが懸念される。
【0008】
そこで、本発明は、試料ガス中の粒子の損失を防止しつつ、試料ガス流量の制御を高精度に行なうことができる排ガス分析装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る排ガス測定装置の一実施形態は、混合部、入口流路、測定部、測定ガス流路、測定済みガス流路、希釈用ガス流路、排出流路、ガス精製部、ポンプ、排出流量測定部及び排出流量制御部を備えている。混合部は試料ガスと希釈用ガスを混合して測定ガスにするものである。入口流路は試料ガスを混合部に導入するものであり、測定ガス流路は混合部で混合された試料ガス及び希釈用ガスからなる測定ガスを測定部に導入するものである。測定部は測定ガスの測定を行なう。測定済みガス流路は、測定部を経た測定済みガスが流れ、希釈流路と排出流路が、測定済みガス流路の下流端に接続されている。希釈用ガス流路は測定済みガスの一部を希釈用ガスとして混合部へ導く流路であり、排出流路は測定済みガスのうち希釈用ガス以外のガスを外部へ排出する流路である。ガス精製部は、測定済みガスのうち少なくとも希釈用ガスの精製を行なうものである。ポンプは、入口流路を流れる試料ガス流、測定ガス流路を流れる測定ガス流、測定済みガス流路を流れる測定済みガス流、希釈用ガス流路を流れる希釈用ガス流及び排出流路を流れる測定済みガス流を形成する。排出流量測定部は排出流路を流れるガス流量を測定し、排出流量制御部は排出流量測定部の測定値に基づいて、排出流路を流れるガス流量を予め設定された流量に制御する。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る排ガス測定装置の一実施形態では、測定部を経た測定済みガスの一部が希釈用ガスとして混合部へ導かれ、測定済みガスの残りのガスが排出流路を通じて外部へ排出されるように構成されているので、外部へ排出されるガスと同じ流量の試料ガスが入口流路から流入するようになる。そして、排出流路上には排出流量測定部及び排出流量制御部が設けられ、排出流量測定部の測定値に基づいて排出流路を流れるガス流量が制御されるので、入口流路から流入する試料ガスの流量を排出流量測定部の測定値に基づいて排出流量制御部により制御することができる。1つの流量計(排出流量測定部)によって試料ガス流量を制御できるため、2つの流量計の測定値の差分をとる方法に比べて、流量制御の精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】排ガス測定装置の一実施例を示す流路構成図である。
図2】同実施例の制御系統の一例を示すブロック図である。
図3】排ガス測定装置の他の実施例を示す流路構成図である。
図4】測定部の一例を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
希釈用ガスを外部から取り込む従来の方式では、試料ガスを混合部に導入するためのポンプとは別に希釈用ガスを混合部に導入するためのポンプが必要であるために測定装置が大型化していた。
これに対し、本発明に係る排ガス測定装置の一実施形態では、入口流路を流れる試料ガス流、測定ガス流路を流れる測定ガス流、測定済みガス流路を流れる測定済みガス流、希釈用ガス流路を流れる希釈用ガス流及び排出流路を流れる測定済みガス流を、測定ガス流路上又は測定済みガス流路上に設けられた単一のポンプによって形成することができる。そのため、複数のポンプを必要とせず、装置の小型化を図ることができる。
【0013】
排出流量制御部として、排出流量測定部の測定値に基づいて開度が調節されるバルブが挙げられる。
【0014】
本発明に係る排ガス測定装置の一実施形態において、ガス精製部は測定済みガス流路上に設けられていることが好ましい。そうすれば、排出流量測定部で流量を測定するガスを、ガス精製部により精製されたクリーンエアにすることができ、排出流量測定部の内部汚染を防止して測定精度の低下や流量計の故障を防止することができる。
【0015】
また、測定済みガス流路の途中に設けられ、測定済みガス流路を流れる測定済みガスの少なくとも一部を外部へ排出するか否かを切り替える測定済みガス流量切替部をさらに備えていることが好ましい。そうすれば、測定済みガス流路を流れる測定済みガスの流量を可変にすることができ、測定済みガス流量切替部の切替えによって希釈用ガスの流量を変えることができる。希釈用ガスの流量を変更することで、試料ガスの希釈率を変更することができる。
【0016】
測定ガス流路上に測定ガス中の粒子を帯電させる荷電装置をさらに備え、
測定部としては、測定ガスが流れる測定流路、その測定流路の内側に沿って設けられた平板状の分級電極、及び分級電極と対向し、測定流路を流れる測定ガス流に沿って配列され、互いに電気的に絶縁された複数の測定電極を備え、分級電極と測定電極との間に電圧を印加して電界を発生させることにより、帯電した粒子をその粒径ごとに分級して各測定電極に捕捉し、その個数をカウントする粒子分級測定装置を挙げることができる。かかる粒子分級測定装置は特許文献1に示されているものであり、送風機構以外に可動部をもたず、単純で堅牢な構造を有するものであるため、携帯可能である。したがって、かかる粒子分級測定装置を用いることで、排ガス測定装置のさらなる小型化が図られ、携帯可能な排ガス測定装置を実現することもできる。
【0017】
排ガス測定装置の一実施例について図面を用いて説明する。
【0018】
図1に示されているように、この実施例の排ガス測定装置は、入口流路2を通じて試料ガスを混合部16に導入し、混合部16で試料ガスを希釈用ガスによって希釈して測定ガスとし、その測定ガスを測定ガス流路3を通じて測定部18へ導入する。測定部18で測定された測定済みガスは測定済みガス流路4を流れ、分岐部6において、排出流路8を介して外部へ排出される排出ガスと希釈用ガス流路10を介して混合部16に導入される希釈用ガスに分けられる。
【0019】
入口流路2上における混合部16よりも上流側に、試料ガスの加熱を行なうヒータ12と、試料ガスを、細隙を通して吸引し、一定以上の大きさをもつ粒子を、その細隙の直後に配置した板に衝突させて除去するように調整されたインパクタ14が設けられている。ヒータ12は、試料ガス中の粒子に付着した水分や油分などの揮発性物質を除去するものである。混合部16に導入される試料ガスを加熱するヒータ12を設けることで、試料ガス中の粒子が凝縮して大きな粒子になり粒子数が減少することや、混合部16内に粒子が付着することを防止し、測定精度の向上に繋がる。混合部16と測定部18の間の測定ガス流路3上に、測定部18に導入される測定ガス中の粒子を帯電させるための荷電装置17が設けられている。
【0020】
なお、この実施例の測定部18は、後述のように、複数の測定電極が測定ガスの流れ方向に沿って配列され、粒子の大きさごとに分級してその数をカウントする粒子分級測定装置であるために、荷電装置17が設けられている。しかし、測定部18は必ずしもそのような測定装置である必要はなく、特許文献2に示されているような粒子数計測装置を用いることもできる。そのような場合には荷電装置17は不要である。
【0021】
測定部18の一例を図4に示す。
【0022】
測定部18は内部に測定流路43を有し、ガス入口38から流入した測定ガスが測定流路43を流れてガス出口40から流出する。ガス入口38には測定ガス流路3(図1参照)が接続され、ガス出口40には測定済みガス流路4(図1参照)が接続されている。
【0023】
測定流路43の内側に、分級電極42、トラップ電極44、測定電極46、48、50、52、54及び56が設けられている。分級電極42は測定流路43の測定ガス流に沿って上流側から下流側へ伸びるように設けられた平板電極である。トラップ電極44は測定流路43の上流端側で分級電極42と対向して配置されている。各測定電極46、48、50、52、54及び56は分級電極42と対向するとともに、測定流路43に沿って互いに間隔をもって配置されている。トラップ電極44、測定電極46、48、50、52、54及び56は互いに電気的に絶縁されている。
【0024】
分級電極42とトラップ電極44、各測定電極46、48、50、52、54及び56との間には分級用の電界がかけられ、測定ガス中の荷電された粒子が粒径ごとに分級されて各測定電極46、48、50、52、54及び56に捕捉され、その数がカウントされる。
【0025】
図1に戻って、測定部18を経た測定済みガスが流れる測定済みガス流路4上には、上流側から、測定済みガス流量制御部20、ポンプ22、3方弁24、精製カラム26及びフィルタ28が設けられている。測定済みガス流量制御部20は、測定済みガスの流量を測定する流量計とその流量計の測定値が予め設定された値になるように開度が制御される流量制御弁により構成されている。ポンプ22は例えばダイヤフラムポンプであり、一定駆動される。測定部18に導入される測定ガス(試料ガス+希釈用ガス)の流量は測定済みガス流量制御部20により制御される。
【0026】
この排ガス測定装置におけるガスの流れ、すなわち、入口流路2から混合部に導入される試料ガスの流れ、測定部18に導入される測定ガスの流れ、希釈用ガス流路10から混合部16に導入される希釈用ガスの流れ、及び排出流路8から排出される測定済みガスの流れは、すべて1台のポンプ22によって形成される。これにより、試料ガス導入用のポンプとは別に希釈用ガス導入用のポンプを設ける必要がなく、装置の小型化を図ることができる。なお、ポンプ22は測定ガス流路3上に設けられていてもよい。
【0027】
精製カラム26及びフィルタ28は、測定済みガスを精製してクリーンエアにするガス精製部を構成するものである。精製カラム26には、例えば、測定済みガス中の水分を除去するためのシリカゲルと、測定済みガス中の窒素酸化物や炭化水素を除去するための活性炭が充填されている。フィルタ28は、測定済みガス中の粒子を含む固形物を除去するものである。
【0028】
測定済みガス流路4の下流端は、排出流路8と希釈用ガス流路10に分岐する分岐部6となっている。分岐部6に到達した測定済みガスの一部は排出流路8を通じて外部へ排出され、残りの測定済みガスが希釈用ガスとして希釈用ガス流路10を通じて混合部16に供給される。混合部16に供給される希釈用ガスは測定済みガスを精製したものであるため、希釈用ガスをさらにヒータに導入して水分の除去を行なうことは必ずしも必要ではない。外部から別途希釈用ガスを導入する場合には希釈用ガス中の水分を除去するためのヒータを試料ガス用のヒータとは別に設ける必要があるが、この実施例のように、希釈用ガス専用のヒータを設けないことで、装置の小型化をさらに図ることができる。なお、図において破線で示されているように、水分の凝集を防ぐために、希釈用ガス流路10上にヒータ29を設けてもよい。
【0029】
排出流路8上に流量計30(排出流量測定部)及び排出流量制御バルブ32(排出流量制御部)が設けられており、排出流路8を通じて排出される測定済みガスの流量が予め設定された流量となるように、流量計30の測定値に基づいて排出流量制御バルブ32の開度が調節される。
【0030】
測定部18を流れる測定ガスの流量は、混合部16に供給される入口流路2からの試料ガスの流量と希釈用ガス流路10からの希釈用ガスの流量の合計の流量である。希釈用ガス流路10からの希釈用ガスの流量は、測定ガスの流量から排出流路8を通じて排出される測定済みガスの流量を差し引いたものであるから、混合部16に供給される試料ガスの流量は排出流路8から排出される測定済みガスの流量に等しい。すなわち、この実施例のシステムでは、1つの流量計30の測定値に基づいて入口流路2からの試料ガスの流量の制御がなされることになる。
【0031】
したがって、測定部18に導入する試料ガスの流量を1つの流量計30の測定値のみに基づいて制御することができるため、2つの流量計の測定値の差分に基づいて試料ガスの流量を制御する場合に比べて、より高精度の制御が可能になる。
【0032】
例えば、測定済みガス流量制御部20の設定値を9L/min、希釈率を10倍に設定した場合には、試料ガスの流量を0.9L/minに制御する必要がある。流量計30の精度がフルスケール10L/minに対して±1%であったとすると、試料ガスの流量は流量計30の測定値にのみ基づいて制御されるため、試料ガス流量の誤差は0.1L/min程度であり、約10%である。これに対し、同じ条件で2つの流量計の測定値の差分に基づいて制御する場合には、既述のように約20%の誤差が生じることになる。したがって、この実施例の構成により、試料ガス流量の制御精度の向上を図ることができる。
【0033】
さらに、この実施例の構成では、精製カラム26及びフィルタ28によって精製されたクリーンエアが流量計30及び排出流量制御バルブ32を流れるため、流量計30や流量制御バルブ32内に、試料ガス中に含まれていた油分や粒子物質が沈着するなどの問題が生じることはない。
【0034】
この実施例では、試料ガスの希釈を行なうか否かを切り替えるための3方弁24が設けられている。以上における説明では、試料ガスの希釈を行なうことを前提として説明しているが、この実施例では、3方弁24の切替えによって、測定済みガス流路4を流れる測定済みガスを分岐部6に到達させることなく、外部へ排出することができるようになっている。測定済みガス流路4の途中で測定済みガスを排出すると、混合部16には希釈用ガス流路10から希釈用ガスが供給されないため、測定済みガス流量制御部20で設定された流量の試料ガスが希釈されずに測定部18に導入されることとなる。
【0035】
なお、図において破線で示されているように、外部へ測定済みガスを排出するために3方弁24に接続された流路上に、外部へ排出する測定済みガスの流量を調節するバルブ25を設け、3方弁24の切替えによって測定済みガス流路4を流れる測定済みガスの一部を外部へ排出することができるようにしてもよい。そうすれば、希釈用ガス流路10を通じて混合部16に導入される希釈用ガスの流量が変化し、それに応じて入口流路2から混合部16に導入される試料ガスの流量も変化するため、試料ガスの希釈率を変更することができるようになる。
【0036】
図2を用いてこの実施例の制御系統の一例について説明する。
【0037】
測定済みガス流量制御部20、ポンプ22、3方弁24及び排出流量制御バルブ32は制御部34から与えられた情報に基づいた動作を行なうようになっている。ユーザは、測定部18に導入する試料ガス流量や希釈率といった測定条件を制御部34に対して設定し、その設定値が測定済みガス流量制御部20、ポンプ22、3方弁24及び排出流量制御バルブ32に与えられる。排出流量制御バルブ32は、流量計30の測定値が制御部34から与えられた設定値となるように開度の調節を行なう。測定部18で得られた測定データ18は制御部34に取り込まれる。
【0038】
制御部34は、例えばシステムコントローラなどの専用のコンピュータ又は汎用のパーソナルコンピュータによって実現されるものである。
【0039】
他の実施形態として、図3に示されているように、精製カラム26及びフィルタ28を希釈用ガス流路10上に設けてもよい。この場合、流量計30及び排出流量制御バルブ32には、水分や窒素酸化物等の物資を含むガスが導入されることとなるが、排出流路を流れるガスは希釈されているため、入口流路2を流れる排ガスに比べて低濃度になっており、入口流路2上に流量計やバルブを設ける場合に比べて、それらの物質による影響は小さい。
【符号の説明】
【0040】
2 入口流路
3 測定ガス流路
4 測定済みガス流路
6 分岐部
8 排出流路
10 希釈用ガス流路
12,29 ヒータ
14 インパクタ
16 混合部
17 荷電装置
18 測定部
20 測定済みガス流量制御部
22 ポンプ
24 3方弁
25 バルブ
26 精製カラム
28 フィルタ
30 流量計(排出流量測定部)
32 排出流量制御バルブ(排出流量制御部)
34 制御部
38 ガス入口
40 ガス出口
42 分級電極
43 測定流路
44 トラップ電極
46,48,50,52,54,56 測定電極
図1
図2
図3
図4