(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1記載のガラスクロスにおいて、前記ガラス糸被覆率C、前記経糸を構成するガラスフィラメント本数と前記緯糸を構成するガラスフィラメント本数との平均値F及び、前記経糸の織密度と前記緯糸の織密度との平均値Dが、下記式(2)を満たすことを特徴とする、ガラスクロス。
53.6≦C×F1/2/D1/2≦55.9 ・・・(2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
今日、電子機器のさらなる小型化、薄型化、高機能化のために、前記プリント配線基板及び前記プリプレグの薄型化の要求はさらに高まり、かつ、軽量化の要求も同様に高まっている。これらの要求に応じて、前記プリント配線基板及び前記プリプレグに用いられる樹脂量の低減が図られている。樹脂量が低減されると、ガラスクロスに樹脂を含浸させてプリプレグとしたときに、ピンホールがより発生し易くなる。前記ピンホールがより発生し易くなることを抑制するために、ガラスクロス中のガラス糸量、すなわち、経糸と緯糸との織密度を増加させる必要がある。
【0006】
しかしながら、織密度を増加させると、前記プリント配線基板及び前記プリプレグの軽量化が困難になるという不都合がある。
【0007】
例えば、特許文献1に記載されたガラスクロスにおいて、経糸と緯糸との織密度がそれぞれ100本/25mm以上となった場合には、ガラスクロスの質量が9.1g/m
2以上となって、ガラスクロスの軽量化が不十分になる。そのため、前記プリント配線基板及び前記プリプレグは十分に軽量化することができない。
【0008】
また、ガラス糸量を増加させつつ、前記プリント配線基板及び前記プリプレグを薄型化するためには、ガラスクロスに対して、より強い開繊処理を施す必要がある。前記開繊処理とは、ガラス糸の糸幅を広げることで、ガラス糸の厚さを低減し、それにより、ガラスクロスの厚さを低減する処理である。
【0009】
しかしながら、より強い開繊処理をガラスクロスに施した場合には、ガラスクロスに歪が生じ、この歪に起因して、プリプレグの外観が悪化するという不都合がある。
【0010】
また、ガラス糸量を増加させて、ガラス糸を製織する際には、ガラス糸、特に経糸の切断が生じ、それによりガラスクロスを効率的に製造することができないという不都合が生じることがある。
【0011】
本発明は、かかる不都合を解消して、経糸と緯糸との織密度をそれぞれ100本/25mm以上としてガラス糸量を増加させても、ガラスクロスの質量が9.1g/m
2未満となってガラスクロスの軽量化を実現することができるとともに、効率的に製造することができ、かつ、該ガラスクロスを含むプリプレグにおいてもピンホールの発生を抑制することができ、優れた外観を維持することができるガラスクロスを提供することを目的とする。
【0012】
さらに、本発明は、該ガラスクロスを含むプリプレグ及び、ガラス繊維強化樹脂成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
かかる目的を達成するために、本発明のガラスクロスは、それぞれ3.0〜4.0μmの範囲の直径を備えるガラスフィラメントが30〜44本の範囲で集束されてなる経糸と緯糸とから構成され、該経糸と該緯糸との織密度がそれぞれ100〜125本/25mmの範囲にあり、6.5〜11.0μmの範囲の厚さを備え、ガラス糸被覆率C(100×(25000(μm)×経糸の糸幅(μm)×経糸の織密度(本/25mm)+25000(μm)×緯糸の糸幅(μm)×緯糸の織密度(本/25mm)−経糸の糸幅(μm)×経糸の織密度(本/25mm)×緯糸の糸幅(μm)×緯糸の織密度(本/25mm))/(25000(μm)×25000(μm)))が、85.5〜99.5%の範囲にあり、前記ガラス糸被覆率Cと、前記経糸を構成するガラスフィラメント本数と前記緯糸を構成するガラスフィラメント本数との平均値Fと、前記経糸の織密度と前記緯糸の織密度との平均値Dとが、次式(1)を満た
し、
(緯糸の糸幅)/(緯糸を構成するガラスフィラメントの直径×緯糸を構成するガラスフィラメントの本数)の値は、1.21〜1.50の範囲にあることを特徴とする。
【0014】
53.0≦C×F
1/2/D
1/2≦57.3 ・・・(1)
本発明のガラスクロスは、ガラスクロスの質量を9.1g/m
2未満としてガラスクロスの軽量化し、かつ、該ガラスクロスを含むプリプレグにおいてもピンホールの発生を抑制し、優れた外観を維持するために、前記ガラス糸被覆率Cと、前記経糸を構成するガラスフィラメント本数と前記緯糸を構成するガラスフィラメント本数との平均値Fと、前記経糸の織密度と前記緯糸の織密度との平均値Dとが、前記式(1)を満たすことが必要である。前記C×F
1/2/D
1/2の値が、53.0未満となる場合には、該ガラスクロスを含むプリプレグにおけるピンホール発生を抑制すること、該プリプレグにおける外観を維持すること、又は、ガラスクロスを効率的に製造することが困難になる。前記C×F
1/2/D
1/2の値が、57.3超の場合には、ガラスクロスを十分に軽量化することができない。
【0015】
本発明のガラスクロスにおいて、前記経糸と前記緯糸とは、それぞれ3.0〜4.0μmの範囲の直径を備えるガラスフィラメントが30〜44本の範囲で集束されてなることが必要である。前記経糸又は前記緯糸を構成する前記ガラスフィラメントの直径が4.0μm超であるか又は、該ガラスフィラメントの本数が44本超であるときには、ガラスクロスを十分に軽量化することができない。また、前記経糸又は前記緯糸を構成する前記ガラスフィラメントの直径を3.0μm未満とすると、人体への影響が懸念される。そして、前記ガラスフィラメントの本数を30本未満とすると、該ガラスクロスを含むプリプレグにおけるピンホールの発生を抑制することが困難になる。
【0016】
また、本発明のガラスクロスにおいて、前記経糸と前記緯糸とを使用した場合には、前記経糸と前記緯糸との織密度が、それぞれ100〜125本/25mmの範囲にあることが必要である。前記経糸又は前記緯糸の織密度が125本/25mmを超えると、ガラスクロスを十分に軽量化することができず、ガラスクロスを効率的に製造することが困難になる。一方、前記経糸又は前記緯糸の織密度を100本/25mm未満とした場合には、該ガラスクロスを含むプリプレグにおけるピンホールの発生を抑制することが困難になる。
【0017】
また、本発明のガラスクロスは、6.5〜11.0μmの範囲の厚さを備えることが必要である。本発明のガラスクロスにおいて、該ガラスクロスに加えられた開繊処理が不十分であると、厚さが11.0μm超となる。この場合には、該ガラスクロスを含むプリプレグにおけるピンホールの発生を抑制することが困難になる。また、本発明のガラスクロスにおいて、厚さを6.5μm未満とすることは、技術的に困難である。
【0018】
また、本発明のガラスクロスは、ガラス糸被覆率Cが、85.5〜99.5%の範囲にあることが必要である。ここで、
ガラス糸被覆率C=(100×(25000(μm)×経糸の糸幅(μm)×経糸の織密度(本/25mm)+25000(μm)×緯糸の糸幅(μm)×緯糸の織密度(本/25mm)−経糸の糸幅(μm)×経糸の織密度(本/25mm)×緯糸の糸幅(μm)×緯糸の織密度(本/25mm))/(25000(μm)×25000(μm)))
である。
【0019】
本発明のガラスクロスにおいて、ガラス糸被覆率Cが、85.5%未満である場合には、該ガラスクロスを含むプリプレグにおけるピンホールの発生を抑制することが困難になる。また、本発明のガラスクロスにおいて、ガラス糸被覆率Cを99.5%超とすることは、技術的に困難である。
【0020】
前述の構成を備える本発明のガラスクロスは、前記ガラス糸被覆率Cと、前記経糸を構成するガラスフィラメント本数と前記緯糸を構成するガラスフィラメント本数との平均値Fと、前記経糸の織密度と前記緯糸の織密度との平均値Dとが、次式(2)を満たすことが好ましい。
【0021】
53.6≦C×F
1/2/D
1/2≦55.9 ・・・(2)
本発明のガラスクロスは、前記式(2)を満たすことにより、該ガラスクロスを高度に軽量化することができ、該ガラスクロスの質量を8.7g/m
2未満とすることができる。また、本発明のガラスクロスは、前記式(2)を満たすことにより、該ガラスクロスを含むプリプレグにおいてピンホールの発生をより確実に抑制することができる。
【0022】
本発明のプリプレグは、前述の構成を備える本発明のガラスクロスを含むことを特徴とする。本発明のプリプレグは、前述の構成を備える本発明のガラスクロスを含むことにより、ピンホールの発生を抑制することができ、また、優れた外観を維持することができ、高度に薄型化することができ、高度に軽量化することができる。
【0023】
本発明のガラス繊維強化樹脂成形品は、前述の構成を備える本発明のガラスクロスを含むことを特徴とする。本発明のガラス繊維強化樹脂成形品は、前述の構成を備える本発明のガラスクロスを含むことにより、高度に薄型化することができ、高度に軽量化することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。
【0025】
本実施形態のガラスクロスは、経糸と緯糸とから構成される。前記経糸と前記緯糸とは、それぞれガラスフィラメントを30〜44本の範囲で集束してなる。前記ガラスフィラメントは、3.0〜4.0μmの範囲の直径(以下、フィラメント径と記載することがある)を備える。前記経糸と前記緯糸との織密度は、それぞれ100〜125本/25mmの範囲にある。
【0026】
本実施形態のガラスクロスにおいて、前記経糸と前記緯糸とは、それぞれ3.0〜3.9μmの範囲のフィラメント径を備えるガラスフィラメントを33〜43本の範囲で集束したものであることが好ましく、3.1〜3.8μmの範囲のフィラメント径を備えるガラスフィラメントを35〜42本の範囲で集束したものであることがより好ましく、3.2〜3.7μmの範囲のフィラメント径を備えるガラスフィラメントを36〜39本の範囲で集束したものであることがさらに好ましい。
【0027】
また、本実施形態のガラスクロスにおいて、前記経糸と前記緯糸とは、実質的に同一のフィラメント径を備えるガラスフィラメントを、実質的に同一本数集束したものであることが好ましい。ここで、「実質的に同一のフィラメント径を備えるガラスフィラメントを、実質的に同一本数集束したものである」とは、IPC−4412規格に基づいて、同一の命名コード(US System Nomeuclature又はSI Nomeuclature)を有することを意味する。例えば、前記経糸と前記緯糸とが、IPC−4412規格に基づいて、BC5000として取り扱われる場合には、仮に前記経糸と前記緯糸とのフィラメント径又はフィラメント本数の実測値が完全に一致しなくても、「実質的に同一のフィラメント径を備えるガラスフィラメントを、実質的に同一本数集束したものである」とみなす。
【0028】
本実施形態のガラスクロスにおいて、前記経糸と前記緯糸との織密度は、それぞれ100〜125本/25mmであることが好ましく、102〜115本/25mmであることがより好ましく、103〜112本/25mmであることがさらに好ましい。
【0029】
また、本実施形態のガラスクロスにおいて、経糸の織密度に対する緯糸の織密度の比(緯糸の織密度/経糸の織密度)は、本実施形態のガラスクロスを含むプリプレグを用いたプリント配線基板において、熱加工等に対する異方性を低減するという観点から、0.85〜1.15であることが好ましく、0.90〜1.10であることがより好ましく、0.95〜1.05であることがさらに好ましく、1.00〜1.05であることが最も好ましい。
【0030】
本実施形態のガラスクロスは、6.5〜11.0μmの範囲の厚さを備えており、8.0〜10.6μmの範囲の厚さを備えることが好ましく、8.5〜10.4μmの範囲の厚さを備えることがさらに好ましく、9.0〜10.2μmの範囲の厚さを備えることが特に好ましく、9.5〜10.1μmの範囲の厚さを備えることが最も好ましい。
【0031】
本実施形態にガラスクロスにおいて、経糸の糸幅は、例えば、110〜150μmの範囲にあり、115〜150μmの範囲にあることが好ましく、117〜145μmの範囲にあることがより好ましく、118〜140μmの範囲にあることがさらに好ましく、119〜139μmの範囲にあることが特に好ましく、120〜138μmの範囲にあることが最も好ましい。また、緯糸の糸幅は、例えば、155〜210μmの範囲にあり、160〜200μmの範囲にあることが好ましく、165〜195μmの範囲にあることがより好ましく、170〜190μmの範囲にあることがさらに好ましく、171〜189μmの範囲にあることが特に好ましく、172〜188μmの範囲にあることが最も好ましい。
【0032】
なお、前記経糸の糸幅は、該経糸を構成するガラスフィラメントの直径及び本数、該経糸の織密度、前述の開繊処理の強度により制御可能である。また、前記緯糸の糸幅は、該緯糸を構成するガラスフィラメントの直径及び本数、該緯糸との織密度、前述の開繊処理の強度により制御可能である。
【0033】
本実施形態のガラスクロスは、85.5〜99.5%の範囲のガラス糸被覆率Cを備えており、87.0〜98.0%の範囲のガラス糸被覆率Cを備えることが好ましく、88.0〜95.0%の範囲のガラス糸被覆率Cを備えることがより好ましく、89.0〜94.0%の範囲のガラス糸被覆率Cを備えることがさらに好ましく、89.5〜93.8%の範囲のガラス糸被覆率Cを備えることがとりわけ好ましく、90.0〜93.5%の範囲のガラス糸被覆率Cを備えることが特に好ましく、90.5〜93.0%の範囲のガラス糸被覆率Cを備えることが殊に好ましく、91.0〜92.5%の範囲のガラス糸被覆率Cを備えることが最も好ましい。
【0034】
ここで、ガラス糸被覆率Cは、経糸と緯糸とのそれぞれの糸幅及び織密度に基づき、次式により算出することができる。
【0035】
ガラス糸被覆率C=100×(25000(μm)×経糸の糸幅(μm)×経糸の織密度(本/25mm)+25000(μm)×緯糸の糸幅(μm)×緯糸の織密度(本/25mm)−経糸の糸幅(μm)×経糸の織密度(本/25mm)×緯糸の糸幅(μm)×緯糸の織密度(本/25mm))/(25000(μm)×25000(μm))
したがって、ガラス糸被覆率Cは、経糸又は緯糸の糸幅と同様に、経糸又は緯糸を構成するガラスフィラメントの直径及び本数、経糸又は緯糸の織密度、前述の開繊処理の強度により制御することができ、これらの諸要素を総合的に反映した特性である。とりわけ、ガラス糸被覆率Cは、開繊処理の強度を有効に表現することができる。
【0036】
本実施形態のガラスクロスは、前記ガラス糸被覆率Cと、前記経糸を構成するガラスフィラメント本数と前記緯糸を構成するガラスフィラメント本数との平均値Fと、前記経糸の織密度と前記緯糸の織密度との平均値Dとが、次式(3)を満たす。
【0037】
53.0≦C×F
1/2/D
1/2≦57.3 ・・・(3)
また、本実施形態のガラスクロスは、前記C、F及びDが、次式(4)を満たすことが好ましく、次式(5)を満たすことがより好ましく、次式(6)を満たすことがさらに好ましく、次式(7)を満たすことが特に好ましく、次式(8)を満たすことが殊に好ましく、次式(9)を満たすことが殊に好ましく、次式(10)を満たすことが最も好ましい。
【0038】
53.3≦C×F
1/2/D
1/2≦56.5 ・・・(4)
53.6≦C×F
1/2/D
1/2≦55.9 ・・・(5)
53.9≦C×F
1/2/D
1/2≦55.7 ・・・(6)
54.0≦C×F
1/2/D
1/2≦55.5 ・・・(7)
54.2≦C×F
1/2/D
1/2≦55.2 ・・・(8)
54.4≦C×F
1/2/D
1/2≦55.1 ・・・(9)
54.5≦C×F
1/2/D
1/2≦55.0 ・・・(10)
本実施形態のガラスクロスにおいて、(経糸の糸幅)/(経糸を構成するガラスフィラメントの直径×経糸を構成するガラスフィラメントの本数)の値は、例えば、0.80〜1.10の範囲にあり、好ましくは、0.85〜1.05の範囲にある。また、本実施形態にガラスクロスにおいて、(緯糸の糸幅)/(緯糸を構成するガラスフィラメントの直径×緯糸を構成するガラスフィラメントの本数)の値は、1.21〜1.50の範囲にあり、好ましくは、1.25〜1.40の範囲にある。
【0039】
本実施形態のガラスクロスは、前述の構成を備えることにより、9.1g/m
2未満の質量を備えており、8.7g/m
2未満の質量を備えることが好ましい。本実施形態のガラスクロスの質量の下限は、例えば、5.0g/m
2である。
【0040】
前記ガラスクロスの厚さは、JIS R 3420に準拠して、ガラスクロス中15点でその厚さをマイクロメーターで測定したときの測定値の平均値である。
【0041】
前記ガラスクロスの質量は、JIS R 3420に準拠した秤で、200mm×200mmの大きさにカットしたガラスクロスの質量を3点測定し、それぞれを1m
2当たりの質量に換算した値の平均値である。
【0042】
また、前記経糸又は緯糸のフィラメント径は、該経糸又は該緯糸の断面それぞれ50点について、走査型電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、商品名:S-3400N、倍率:3000倍)で、該経糸又は該緯糸を構成するガラスフィラメントの直径を測定したときの測定値の平均値である。また、前記経糸又は緯糸を構成するガラスフィラメントの本数は、該経糸又は該緯糸の断面それぞれ50点について、走査型電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ製、商品名:S-3400N、倍率:500倍)で、該経糸又は該緯糸を構成するガラスフィラメントの本数を計測したときの計測値の平均値である。
【0043】
また、前記経糸の織密度は、JIS R 3420に準拠して、織物分解鏡を用い、経方向の25mmの範囲にある経糸の本数を数えることにより求めることができる。また、前記緯糸の織密度は、JIS R 3420に準拠して、織物分解鏡を用い、緯方向の25mmの範囲にある緯糸の本数を数えることにより求めることができる。
【0044】
また、前記経糸又は緯糸の糸幅は、ガラスクロスから60mm×100mmのサンプル3枚を切り出し、各サンプル当たりそれぞれ30本の経糸又は緯糸について、マイクロスコープ(株式会社キーエンス製、商品名:VHX−2000、倍率:200倍)で測定したときの測定値の平均値である。
【0045】
前記ガラスフィラメントは、所定のガラスバッチ(ガラス原材料)を溶融して繊維化することにより得ることができ、例えば、Eガラス繊維(汎用ガラス繊維)組成、高強度ガラス繊維組成、低誘電率ガラス繊維組成等の組成を備えるものを用いることができる。ここで、前記Eガラス繊維組成は、SiO
2を52〜56質量%、B
2O
3を5〜10質量%、Al
2O
3を12〜16質量%、CaOとMgOとを合計20〜25質量%、Na
2OとK
2OとLi
2Oとを合計0〜1質量%含む。また、前記高強度ガラス繊維組成は、SiO
2を57〜70質量%、Al
2O
3を18〜30質量%、CaOを0〜13質量%、MgOを5〜15質量%、Na
2OとK
2OとLi
2Oとを合計0〜1質量%、TiO
2を0〜1質量%、B
2O
3を0〜2質量%含む。また、前記低誘電率ガラス繊維組成は、SiO
2を48〜62質量%、B
2O
3を17〜26質量%、Al
2O
3を9〜18質量%、CaOを0.1〜9質量%、MgOを0〜6質量%、Na
2OとK
2OとLi
2Oとを合計0.05〜0.5質量%、TiO
2を0〜5質量%、SrOを0〜6質量%、F
2とCl
2とを合計で0〜3質量%、P
2O
5を0〜6質量%含む。
【0046】
前記ガラスフィラメントは、汎用性の観点からは前記Eガラス繊維組成であることが好ましく、プリプレグとした際の反りの抑制という観点からは前記高強度ガラス繊維組成であることが好ましい。このとき、前記高強度ガラス繊維組成は、SiO
2を64〜66質量%、Al
2O
3を24〜26質量%、MgOを9〜11質量%含み、SiO
2とAl
2O
3とMgOとを合計で99質量%以上含むことがさらに好ましい。
【0047】
前記ガラスフィラメントは、30〜44本の範囲の本数で、それ自体公知の方法により集束され、前記経糸又は前記緯糸とされる。なお、ガラスバッチを溶融し、繊維化してガラスフィラメントを得て、次いで、このガラスフィラメント複数本を集束して経糸又は緯糸を得ることを紡糸という。
【0048】
本実施形態のガラスクロスは、前記経糸と前記緯糸とを用い、それ自体公知の織機により製織し、開繊処理を行うことにより得ることができる。前記織機としては、例えば、エアージェット又はウォータージェット等のジェット式織機、シャトル式織機、レピア織機等を挙げることができる。また、前記織機による織り方としては、例えば、平織、朱子織、ななこ織、綾織等を挙げることができる。
【0049】
前記開繊処理としては、例えば、水流圧力による開繊、液体を媒体とした高周波の振動による開繊、面圧を有する流体の圧力による開繊、ロールによる加圧での開繊等を挙げることができる。これらの開繊処理の中では、水流圧力による開繊、又は液体を媒体とした高周波の振動による開繊を使用することが、経糸又は緯糸のそれぞれにおいて、開繊処理後の糸幅のバラツキが低減されるので好ましい。また、前記開繊処理は、複数の処理方法を併用することにより、該開繊処理に起因する目曲がり等のガラスクロス外観上の欠陥の発生を抑制することができる。
【0050】
本実施形態のプリプレグは、前述した本実施形態のガラスクロスを含む。
【0051】
本実施形態のプリプレグは、前述したガラスクロスに、それ自体公知の方法により、樹脂を含浸させ、半硬化させることにより得ることができる。
【0052】
本実施形態のプリプレグにおいて、前述したガラスクロスに含浸される樹脂は、特に限定されない。このような樹脂として、熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、変性ポリイミド樹脂等を挙げることができる。また、熱可塑性樹脂としては、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリブチレンテレフタート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、フッ素樹脂等を挙げることができる。
【0053】
本実施形態のガラス繊維強化樹脂成形品は、前述した本実施形態のガラスクロスを含む。
【0054】
本実施形態のガラス繊維強化樹脂成形品は、例えば、前述した本実施形態のプリプレグを硬化させることで得ることができる。また、本実施形態のガラス繊維強化樹脂成形品は、前述した本実施形態のガラスクロス、前述した樹脂、及び、その他の添加剤を用いて、シートワインディング成形、インフュージョン成形、低圧RIM成形等のそれ自体公知の方法で得ることができる。
【0055】
本実施形態のガラス繊維強化樹脂成形品の用途としては、プリント配線基板、電子機器の筐体、燃料電池のセパレーター等を挙げることができる。
【0056】
次に、本発明の実施例及び比較例を示す。
【実施例】
【0057】
〔実施例1〕
本実施例では、まず、Eガラス繊維組成のガラスフィラメントを紡糸して経糸と緯糸とを得た。前記経糸と前記緯糸とは、それぞれフィラメント径3.6μmのガラスフィラメントが38本集束されてなり、0.99tex(g/km)の質量を備えていた。
【0058】
次に、エアージェット式織機を用い製織し、前記経糸の織密度を105本/25mmとし、前記緯糸の織密度を110本/25mmとして、平織のガラスクロスを得た。
【0059】
前記ガラスクロスに、脱油処理、表面処理及び開繊処理を施して、本実施例のガラスクロスを得た。
【0060】
ここで、脱油処理としては、ガラスクロスを雰囲気温度が350℃〜400℃の加熱炉内に60時間配置し、該ガラスクロスに付着している紡糸用集束剤と製織用集束剤とを加熱分解する処理を採用した。
【0061】
また、表面処理としては、ガラスクロスにシランカップリング剤を塗布し、130℃の加熱炉内に連続的に通しながら硬化させる処理を採用した。
【0062】
また、開繊処理としては、ガラスクロスの経糸に50Nの張力をかけ、水流圧力を1.0MPaに設定した水流圧力による開繊処理を採用した。
【0063】
なお、開繊処理以外の工程でガラスクロスの経糸にかかる張力は、70〜120Nである。また、開繊処理においては、張力検出器により検出された張力の値を、ガラスクロスを搬送するガイドローラにフィードバックし、該ガイドローラの位置を変化させることにより張力を調整した。
【0064】
次に、本実施例で得られたガラスクロスを、メチルエチルケトンで希釈したエポキシ樹脂(DIC株式会社製、商品名:EPICLON1121N−80N)中に浸漬して、該ガラスクロスに樹脂を含浸させ、幅13μmのスリット間を通過させて余剰の樹脂を除去した後、乾燥機にて、150℃の温度下に1分間保持して、前記エポキシ樹脂を含浸させたガラスクロスを半硬化させて評価用プリプレグシートサンプルを得た。
【0065】
次に、前記評価用プリプレグシートサンプルのピンホールの発生数(ピンホール数)を評価した。ピンホール数は、前記評価用プリプレグシートサンプルの表面の200mm×600mmの領域を目視で確認して、ピンホール数が0〜2個の場合を「◎」(良)、3〜5個の場合を「○」(可)、6個以上の場合を「×」(不可)とした。前記ピンホールは、ガラスクロス中の空隙部に樹脂が充填されていない部分として観察される。結果を表1に示す。
【0066】
次に、前記評価用プリプレグシートサンプルの外観を評価した。前記評価用プリプレグシートサンプルの外観は、該評価用プリプレグシートサンプルを200mm×200mmにカットしたものを定盤の上に載せ、プリプレグの変形(反りや波打ち)を目視による確認で観察し、変形が無い場合を「〇」(可)、変形が有る場合を「×」(不可)とした。結果を表1に示す。
【0067】
次に、本実施例で得られたガラスクロスの製造効率を評価した。ガラスクロスの製造効率は、本実施例のガラスクロスを24時間製造した場合における、(実際の織機運転時間)/(実際の織機運転時間+経糸の糸切れに起因して織機が運転停止した時間)の値が0.8以上である場合を工業的製造に適するとして「〇」(可)、0.8未満である場合を工業的製造に適さないとして「×」(不可)とした。結果を表1に示す。なお、前記評価用プリプレグシートサンプル10枚においてピンホール数を評価すると、ピンホール数の平均値は0.3個であった。
【0068】
また、前述した方法で、本実施例のガラスクロスの質量を測定した。結果を表1に示す。
【0069】
〔実施例2〕
本実施例では、開繊処理として、ガラスクロスの経糸に60Nの張力をかけ、水流圧力を1.0MPaに設定した水流圧力による開繊処理を採用した以外は、実施例1と全く同一にしてガラスクロスを得た。
【0070】
次に、本実施例で得られたガラスクロスについて、該ガラスクロスを含むプリプレグのピンホール数及び外観、ガラスクロスの製造効率を実施例1と全く同一にして評価し、ガラスクロスの質量を実施例1と全く同一にして測定した。結果を表1に示す。なお、前記評価用プリプレグシートサンプル10枚おいてピンホール数を評価すると、ピンホール数の平均値は0.5個であった。
【0071】
〔実施例3〕
本実施例では、開繊処理として、ガラスクロスの経糸に70Nの張力をかけ、水流圧力を0.7MPaに設定した水流圧力による開繊処理を採用した以外は、実施例1と全く同一にしてガラスクロスを得た。
【0072】
次に、本実施例で得られたガラスクロスについて、該ガラスクロスを含むプリプレグのピンホール数及び外観、ガラスクロスの製造効率を実施例1と全く同一にして評価し、ガラスクロスの質量を実施例1と全く同一にして測定した。結果を表1に示す。
【0073】
〔実施例4〕
本実施例では、経糸と緯糸として、それぞれフィラメント径3.6μmのガラスフィラメントが41本集束されてなる、1.07tex(g/km)の質量を備えるガラス糸を用い、緯糸の織密度を100本/25mmとした以外は、実施例1と全く同一にしてガラスクロスを得た。
【0074】
次に、本実施例で得られたガラスクロスについて、該ガラスクロスを含むプリプレグのピンホール数及び外観、ガラスクロスの製造効率を実施例1と全く同一にして評価し、ガラスクロスの質量を実施例1と全く同一にして測定した。結果を表1に示す。
【0075】
〔実施例5〕
本実施例では、開繊処理として、ガラスクロスの経糸に65Nの張力をかけ、水流圧力を0.9MPaに設定した水流圧力による開繊処理を採用した以外は、実施例1と全く同一にしてガラスクロスを得た。
【0076】
次に、本実施例で得られたガラスクロスについて、該ガラスクロスを含むプリプレグのピンホール数及び外観、ガラスクロスの製造効率を実施例1と全く同一にして評価し、ガラスクロスの質量を実施例1と全く同一にして測定した。結果を表1に示す。なお、前記評価用プリプレグシートサンプル10枚においてピンホール数を観察すると、ピンホール数の平均値は1.0個であった。
【0077】
〔比較例1〕
本比較例では、緯糸の織密度を100本/25mmとした以外は、実施例3と全く同一にしてガラスクロスを得た。
【0078】
次に、本比較例で得られたガラスクロスについて、該ガラスクロスを含むプリプレグのピンホール数及び外観、ガラスクロスの製造効率を実施例1と全く同一にして評価し、ガラスクロスの質量を実施例1と全く同一にして測定した。結果を表1に示す。
【0079】
〔比較例2〕
本比較例では、緯糸の織密度を123本/25mmとした以外は、実施例3と全く同一にしてガラスクロスを得た。
【0080】
次に、本比較例で得られたガラスクロスについて、該ガラスクロスを含むプリプレグのピンホール数及び外観、ガラスクロスの製造効率を実施例1と全く同一にして評価し、ガラスクロスの質量を実施例1と全く同一にして測定した。結果を表1に示す。
【0081】
〔比較例3〕
本比較例では、経糸と緯糸として、それぞれフィラメント径3.6μmのガラスフィラメントが34本集束されてなる、0.89tex(g/km)の質量を備えるガラス糸を用いた以外は、実施例3と全く同一にしてガラスクロスを得た。
【0082】
次に、本比較例で得られたガラスクロスについて、該ガラスクロスを含むプリプレグのピンホール数及び外観、ガラスクロスの製造効率を実施例1と全く同一にして評価し、ガラスクロスの質量を実施例1と全く同一にして測定した。結果を表1に示す。
【0083】
〔比較例4〕
本比較例では、経糸と緯糸として、それぞれフィラメント径3.6μmのガラスフィラメントが41本集束されてなる、1.07tex(g/km)の質量を備えるガラス糸を用いた以外は、実施例3と全く同一にしてガラスクロスを得た。
【0084】
次に、本比較例で得られたガラスクロスについて、該ガラスクロスを含むプリプレグのピンホール数及び外観、ガラスクロスの製造効率を実施例1と全く同一にして評価し、ガラスクロスの質量を実施例1と全く同一にして測定した。結果を表1に示す。
【0085】
【表1】
【0086】
表1から、本発明に係る実施例1〜5のガラスクロスによれば、ガラスクロスの質量が9.1g/m
2未満となりガラスクロスを軽量化することができるとともに、効率的に製造することができることが明らかである。さらに、本発明に係る実施例1〜5のガラスクロスを含むプリプレグにおいても、ピンホールの発生を抑制することができるとともに、優れた外観を維持することができることが明らかである。
【0087】
一方、比較例1のガラスクロスは、C×F
1/2/D
1/2の値が52.2と低く、プリプレグの外観を維持することができないことが明らかである。また、比較例2のガラスクロスは、C×F
1/2/D
1/2の値が52.8と低く、ガラスクロスを効率的に製造することができないことが明らかである。また、比較例3のガラスクロスは、C×F
1/2/D
1/2の値が48.4と低く、ピンホールの発生を抑制することができないことが明らかである。また、比較例4のガラスクロスは、C×F
1/2/D
1/2の値が57.6と高く、ガラスクロスの質量が9.1g/m
2以上となり、ガラスクロスを軽量化することができないことが明らかである。
ガラスクロスを軽量化することができ、効率的に製造することができ、該ガラスクロスを含むプリプレグのピンホールの発生を抑制することができ、優れた外観を維持することができるガラスクロスを提供する。
本発明のガラスクロスは、3.0〜4.0μmの直径を備えるガラスフィラメントが30〜44本集束された経糸と緯糸とから構成され、該経糸と該緯糸との織密度が100〜125本/25mmであり、6.5〜11.0μmの厚さを備え、ガラス糸被覆率Cが85.5〜99.5%であり、前記ガラス糸被覆率Cと、前記経糸と前記緯糸とを構成するガラスフィラメント本数の平均値Fと、前記経糸及び緯糸の織密度の平均値Dとが、下記式(1)を満たす。