特許第6536767号(P6536767)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6536767ポリエステル製造用重縮合触媒とそれを用いるポリエステルの製造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6536767
(24)【登録日】2019年6月14日
(45)【発行日】2019年7月3日
(54)【発明の名称】ポリエステル製造用重縮合触媒とそれを用いるポリエステルの製造
(51)【国際特許分類】
   C08G 63/87 20060101AFI20190625BHJP
   C08K 9/02 20060101ALI20190625BHJP
   C08L 67/00 20060101ALI20190625BHJP
   C08G 63/85 20060101ALN20190625BHJP
【FI】
   C08G63/87
   C08K9/02
   C08L67/00
   !C08G63/85
【請求項の数】13
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2019-514829(P2019-514829)
(86)(22)【出願日】2018年12月11日
(86)【国際出願番号】JP2018045525
【審査請求日】2019年3月18日
(31)【優先権主張番号】特願2017-246688(P2017-246688)
(32)【優先日】2017年12月22日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000174541
【氏名又は名称】堺化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079120
【弁理士】
【氏名又は名称】牧野 逸郎
(72)【発明者】
【氏名】曽我 友平
(72)【発明者】
【氏名】家門 彰弘
【審査官】 長岡 真
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/021206(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/041271(WO,A1)
【文献】 特開2008−63384(JP,A)
【文献】 特開2005−162925(JP,A)
【文献】 特開2002−308973(JP,A)
【文献】 特開2008−115243(JP,A)
【文献】 特公昭49−35075(JP,B1)
【文献】 特開昭63−243126(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 63/87
C08L 67/00
C08K 9/02
CAplus(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体とグリコールとのエステル化反応又はエステル交換反応によるポリエステル製造用触媒であって、水不溶性乃至水難溶性のリン酸塩100重量部に対して、TiO換算で0.1〜100重量部のチタン酸からなる被覆層を表面に有するリン酸塩の粒子からなる重縮合触媒。
【請求項2】
前記リン酸塩がオルトリン酸塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、リン酸塩ガラス、亜リン酸塩又は次亜リン酸塩である請求項1に記載の重縮合触媒。
【請求項3】
前記リン酸塩のアニオンの対イオンがアルカリ土類金属、アルミニウム、チタン、ジルコニウム及び亜鉛よりなる群から選ばれる少なくとも一種のカチオンである請求項1に記載の重縮合触媒。
【請求項4】
前記アルカリ土類金属がカルシウム又はマグネシウムである請求項3に記載の重縮合触媒。
【請求項5】
前記リン酸塩が第二リン酸カルシウム、第三リン酸カルシウム、ピロリン酸カルシウム、ピロリン酸二水素カルシウム、ピロリン酸マグネシウム又はメタリン酸マグネシウムである請求項1に記載の重縮合触媒。
【請求項6】
前記リン酸塩の粒子がリン酸塩100重量部に対して、TiO換算で1〜50重量部のチタン酸からなる被覆層を表面に有するものである請求項1に記載の重縮合触媒。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の前記重縮合触媒を含有するポリエステル。
【請求項8】
前記重縮合触媒を含有する請求項7に記載のポリエステルであって、前記重縮合触媒の含有量が得られるポリエステルに対して重量基準でチタン原子換算で1〜40ppmの範囲であるポリエステル。
【請求項9】
ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体とグリコールとを請求項1から6のいずれかに記載の前記重縮合触媒の存在下にエステル化反応又はエステル交換反応にて重縮合させるポリエステルの製造方法。
【請求項10】
芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体とアルキレングリコールとのエステル化反応又はエステル交換反応によって、芳香族ジカルボン酸ビス(ヒドロキシルアルキル)エステルを含むオリゴマーを製造し、次いで、請求項1から6のいずれかに記載の前記重縮合触媒の存在下に上記オリゴマーを溶融重縮合させるポリエステルの製造方法。
【請求項11】
ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体とグリコールとを請求項1から6のいずれかに記載の前記重縮合触媒の存在下にエステル化反応又はエステル交換反応にて重縮合させるポリエステルの製造方法において、前記重縮合触媒を得られるポリエステルの重量に対してチタン原子換算で1〜40ppmの範囲で存在させるポリエステルの製造方法。
【請求項12】
芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体とアルキレングリコールとのエステル化反応又はエステル交換反応によって、芳香族ジカルボン酸ビス(ヒドロキシルアルキル)エステルを含むオリゴマーを製造し、次いで、請求項1から6のいずれかに記載の前記重縮合触媒の存在下に上記オリゴマーを溶融重縮合させるポリエステルの製造方法において、前記重縮合触媒を得られるポリエステルの重量に対してチタン原子換算で1〜40ppmの範囲で存在させるポリエステルの製造方法。
【請求項13】
水不溶性乃至水難溶性のリン酸塩の粒子の水性スラリーを5〜100℃の温度に保持しつつ、これに上記リン酸塩100重量部に対してTiO換算にて0.1〜100重量部のチタン化合物を加え、得られた混合物にアルカリを加えて、上記スラリーをpH3〜12で加水分解して、上記リン酸塩の粒子の表面にチタン酸からなる被覆層を形成し、上記被覆層を有するリン酸塩の粒子を乾燥し、解砕するポリエステル製造用重縮合触媒の製造方法。




【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル製造用重縮合触媒とそれを用いるポリエステルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等に代表されるポリエステルは、機械的特性と化学的特性にすぐれており、それぞれの特性に応じて、例えば、衣料用や産業資材用の繊維、包装用や磁気テープ用等のフィルムやシート、中空成形品であるボトル、電気、電子部品のケーシング、その他の種々の成形品や部品等の広範な分野において用いられている。
【0003】
代表的なポリエステルである芳香族ジカルボン酸成分とアルキレングリコール成分を主たる構成成分とするポリエステル、例えば、ポリエチレンテレフタレートは、通常、テレフタル酸とエチレングリコールとのエステル化反応や、テレフタル酸ジメチルとエチレングリコールとのエステル交換によってビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレート(BHET)とこれを含むオリゴマーを製造し、これを重縮合触媒の存在下に真空中、高温下に溶融重縮合させることによって製造されている。
【0004】
従来、このようなポリエステル製造用重縮合触媒としては、三酸化アンチモンが広く用いられている。三酸化アンチモンは、安価ですぐれた触媒活性を有する触媒であるが、重縮合時に金属アンチモンが析出して、得られるポリエステルが黒ずんだり、また、得られるポリエステルに異物が混入するという問題があるほか(特許文献1参照)、本来、毒性を有するという問題があるので、近年においては、アンチモンを含まない触媒の開発が望まれている。
【0005】
そこで、例えば、すぐれた触媒活性を有し、すぐれた色調と熱安定性を有するポリエステルを与える触媒として、ゲルマニウム化合物からなる触媒が知られているが(特許文献2参照)、この触媒は非常に高価であるのみならず、重合中に反応系から外へ留出しやすいので、反応系の触媒濃度が経時的に変化し、重合の制御が困難になるという問題を有している。
【0006】
他方、グリコールチタネートやチタンアルコキシド等のチタン化合物も、ジメチルテレフタレートとエチレングリコールとのエステル交換によるポリエステル製造用重縮合触媒として用いることができることが既に知られているが(例えば、特許文献3及び4参照)、得られるポリエステルが溶融成形時に熱劣化して、着色しやすいという問題がある。
【0007】
そこで、近年、チタンを含む重縮合触媒を用いて、高品質のポリエステルを高生産性にて製造する新たな方法が種々、提案されている。例えば、ハロゲン化チタンやチタンアルコキシドを加水分解してチタン水酸化物を得て、これを加熱、脱水、乾燥し、かくして得られる固体状のチタン化合物を重縮合触媒として用いることが提案されている(例えば、特許文献5及び6参照)。
【0008】
しかし、上記チタン化合物を含め、これまで知られているチタンを含む重縮合触媒は、なかには、金属の単位重量当たりに高い重合活性を有するものもあるが、多くの場合、重合活性は高いが、得られるポリエステルは、依然として、溶融成形時に熱劣化して、着色しやすい傾向がある。
【0009】
そこで、最近、チタン酸からなる被覆層をハイドロタルサイトのような固体塩基の粒子の表面に形成させてなるポリエステル製造用重縮合触媒が提案されている。この重縮合触媒によれば、ポリエステルの製造時、生成するポリエステルの分解が抑制されて、金属の単位重量当たり、高い重合活性にて高分子量のポリエステルを与え、しかも、このポリエステルは、溶融成形時、熱劣化による着色が殆どないとされている(特許文献7参照)。
【0010】
しかし、上述したチタン酸からなる被覆層を表面に有するハイドロタルサイトを含む固体塩基粒子からなる重縮合触媒を用いるポリエステルの製造においては、チタンの高い活性を抑制し、ポリエステルの色調や耐熱性を向上させるために、リン酸やリン酸エステル、亜リン酸等のリン系安定剤の存在下に重縮合を行うことが望ましいとされており、リン系安定剤が存在しない場合には、ポリエステルの耐熱性が損われたり、着色の強いポリエステルが得られるおそれがある等の問題が生じる。
【0011】
また、ポリエステルの用途によっては、リン系安定剤を含まないことが望まれる場合があり、そこで、リン系安定剤の添加なしに、色調にすぐれたポリエステルを得るための重縮合触媒が強く求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平09−291141号公報
【特許文献2】特開平10−212119号公報
【特許文献3】特公昭46−3395号公報
【特許文献4】特開昭49−57092号公報
【特許文献5】特開2001−064377号公報
【特許文献6】特開2001−114885号公報
【特許文献7】特開2006−188567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明者らは、従来のポリエステル製造用重縮合触媒における上述した問題を解決するために鋭意研究した結果、チタン酸からなる被覆層を水不溶性乃至水難溶性のリン酸塩の粒子の表面に形成させ、これをポリエステル製造用重縮合触媒として用いることによって、ポリエステルの製造時、生成するポリエステルの分解が抑制されて、金属の単位重量当たり、高い重合活性にて高分子量のポリエステルを得ることができ、しかも、重縮合に際して、リン酸、リン酸エステル、亜リン酸等のリン系安定剤の不存在下においても、熱劣化による着色が殆どないポリエステルを得ることができることを見出して、本発明に至ったものである。
【0014】
従って、本発明は、アンチモンを含まず、すぐれた触媒活性を有し、また、リン系安定剤の不存在下においても、すぐれた色調を有するポリエステルを与える新規なポリエステル製造用重縮合触媒と、その製造方法と、そのような重縮合触媒を用いるポリエステルの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明によれば、ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体とグリコールとのエステル化反応又はエステル交換反応によるポリエステル製造用触媒であって、水不溶性乃至水難溶性のリン酸塩100重量部に対して、TiO換算で0.1〜100重量部のチタン酸からなる被覆層を表面に有するリン酸塩の粒子からなる重縮合触媒が提供される。
【0016】
本発明によれば、ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体とグリコールとを上記重縮合触媒の存在下にエステル化反応又はエステル交換反応にて重縮合させるポリエステルの製造方法が提供される。
【0017】
特に、本発明によれば、好ましい態様として、芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体とアルキレングリコールとのエステル化反応又はエステル交換反応によって、芳香族ジカルボン酸ビス(ヒドロキシルアルキル)エステルを含むオリゴマーを製造し、次いで、上記重縮合触媒の存在下にこのオリゴマーを溶融重縮合させるポリエステルの製造方法が提供される。
【0018】
更に、本発明によれば、上記リン酸塩の粒子の水性スラリーを5〜100℃の温度に保持しつつ、これにリン酸塩100重量部に対してTiO換算にて0.1〜100重量部のチタン化合物を加え、得られた混合物にアルカリを加えて、上記スラリーをpH3〜12で加水分解して、リン酸塩の粒子の表面にチタン酸からなる被覆層を形成し、このような被覆層を有するリン酸塩の粒子を乾燥し、解砕するポリエステル製造用重縮合触媒の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0019】
ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体とグリコールとのエステル化反応又はエステル交換反応によるポリエステル製造において、本発明によるポリエステル製造用重縮合触媒を用いることによって、生成するポリエステルの分解なしに、高い重合活性にて、また、リン系安定剤の添加なしに、アンチモン触媒と同等又はそれ以上にすぐれた色調を有する高分子量ポリエステルを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明によるポリエステル製造用重縮合触媒は、ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体とグリコールとのエステル化反応又はエステル交換反応によるポリエステル製造用触媒であって、水不溶性乃至水難溶性のリン酸塩100重量部に対して、TiO換算で0.1〜100重量部のチタン酸からなる被覆層を表面に有するリン酸塩の粒子からなるものである。
【0021】
本発明において、上記リン酸塩は、水不溶性乃至水難溶性であって、好ましくは、25℃の水への溶解度、即ち、25℃の水100gへの最大の溶解量が2.00g以下であるものである。また、本発明において、上記リン酸塩は、オルトリン酸塩のみならず、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、リン酸塩ガラス、亜リン酸塩及び次亜リン酸塩をも含む。
【0022】
本発明において、上記リン酸塩のアニオンの対イオンは、アルカリ土類金属、アルミニウム、チタン、ジルコニウム及び亜鉛よりなる群より選ばれる少なくとも一種のイオンを挙げることができる。上記アルカリ土類金属としては、特に、カルシウム又はマグネシウムが好ましい。
【0023】
従って、本発明において、好ましいリン酸塩として、例えば、第二リン酸マグネシウム、第三リン酸マグネシウム、第一リン酸カルシウム、第二リン酸カルシウム、第三リン酸カルシウム、第二リン酸バリウム、第三リン酸バリウム、第二リン酸アルミニウム、第三リン酸アルミニウム、リン酸チタン、リン酸ジルコニウム、リン酸水素亜鉛、リン酸亜鉛、亜リン酸マグネシウム、次亜リン酸マグネシウム、亜リン酸カルシウム、次亜リン酸カルシウム、リン酸バリウム、亜リン酸アルミニウム、亜リン酸亜鉛、ピロリン酸マグネシウム、ピロリン酸カルシウム、酸性ピロリン酸カルシウム、ピロリン酸バリウム、ピロリン酸チタン、ピロリン酸ジルコニウム、ピロリン酸亜鉛、メタリン酸マグネシウム、メタリン酸カルシウム、メタリン酸バリウム、メタリン酸アルミニウム、メタリン酸亜鉛等を挙げることができる。
【0024】
なかでも、本発明によれば、リン酸塩は、好ましくは、ピロリン酸カルシウム、ピロリン酸二水素カルシウム、第三リン酸カルシウム、第二リン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウム、第三リン酸マグネシウム又はメタリン酸マグネシウムである。
【0025】
本発明において、チタン酸とは、一般式
TiO・nH
(式中、nは0<n≦2を満たす数である。)
で表される含水酸化チタンであって、このようなチタン酸は、例えば、後述するように、ある種のチタン化合物をアルカリ加水分解することによって得ることができる。
【0026】
本発明においては、上記チタン酸は、nが0.3〜1.5の範囲にあるものが好ましく、特に、0.5〜1の範囲にあるものが好ましい。
【0027】
本発明によるポリエステル製造用重縮合触媒は、上記リン酸塩100重量部に対して、TiO換算で0.1〜100重量部のチタン酸からなる被覆層を表面に有するリン酸塩の粒子からなるものである。
【0028】
リン酸塩100重量部に対して、チタン酸からなる被覆層の割合がTiO換算で0.1重量部よりも少ないときは、チタン酸に対するリン酸塩の量が多すぎるため、重合活性が低下して、反応時間が延び、得られたポリエステルは着色が生じやすい。
【0029】
しかし、リン酸塩100重量部に対して、チタン酸からなる被覆層の割合がTiO換算で100重量部よりも多いときは、リン酸塩に対するチタン酸の量が多すぎるため、ポリエステルの製造に際してポリエステルの分解が起こりやすく、また、得られたポリエステルは着色が生じやすい。
【0030】
特に、本発明においては、得られるポリエステルが特に色調にすぐれることから、リン酸塩100重量部に対して、チタン酸からなる被覆層の割合がTiO換算で1〜50重量部の範囲であることが好ましく、10〜50重量部の範囲であることがより好ましい。
【0031】
本発明による重縮合触媒は、前述した水不溶性乃至水難溶性のリン酸塩の粒子の水性スラリーを5〜100℃、好ましくは、25〜40℃ の温度に保持しつつ、これに上記リン酸塩100重量部に対してTiO換算にて0.1〜100重量部、好ましくは、1〜50重量部、より好ましくは、10〜50重量部のチタン化合物を加え、得られた混合物にアルカリを加えて、上記スラリーをpH3〜12、好ましくは、pH6〜8で加水分解して、上記リン酸塩の粒子の表面にチタン酸からなる被覆層を形成し、このような被覆層を有するリン酸塩の粒子を乾燥し、解砕することによって得ることができる。上記乾燥温度は、好ましくは、60〜180℃ の範囲であり、特に好ましくは、100〜130℃の範囲である。
【0032】
本発明による重縮合触媒は、別の方法によっても得ることができる。即ち、前記リン酸塩の粒子の水性スラリーを5〜100℃ 、好ましくは、25〜40℃ に保持しつつ、これに上記リン酸塩100重量部に対してTiO換算にて0.1〜100重量部、好ましくは、1〜50重量部、より好ましくは、10〜50重量部のチタン化合物とアルカリとをほぼ当量比にて加えて、必要に応じて、更にアルカリを加えて、pH3〜12、好ましくは、6〜8で加水分解して、上記リン酸塩の粒子の表面にチタン酸からなる被覆層を形成し、60〜180℃の温度で乾燥し、解砕することによって得ることができる。
【0033】
本発明による重縮合触媒の製造において、上記アルカリ加水分解によってチタン酸被覆を形成し得るチタン化合物としては、例えば、四塩化チタン等のようなチタンハロゲン化物、シュウ酸チタニルアンモニウム塩等のようなチタン酸塩、テトライソプロポキシド等のようなチタンアルコキシド等を挙げることができるが、しかし、これら例示に限定されるものではない。また、上記加水分解に用いる上記アルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物や、アンモニアを例示することができるが、アルカリもまた、上記例示に限定されるものではない。
【0034】
本発明によるポリエステルの製造方法は、ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体とグリコールを上記重縮合触媒の存在下にエステル化反応又はエステル交換反応にて重縮合させるものである。
【0035】
本発明において、ジカルボン酸としては、琥珀酸、グルタル酸、アジピン酸、ドデカンジカルボン酸等によって例示される脂肪族ジカルボン酸や、そのエステル形成性誘導体、例えば、ジアルキルエステルや、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等によって例示される芳香族ジカルボン酸や、そのエステル形成性誘導体、例えば、ジアルキルエステルを挙げることができる。
【0036】
また、本発明において、グリコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ブチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等を例示することができる。
【0037】
上述したなかでは、例えば、ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸が好ましく用いられ、また、グリコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等のアルキレングリコールが好ましく用いられる。
【0038】
従って、本発明において、ポリエステルの好ましい具体例として、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリプロピレンナフタレート、ポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)等を挙げることができる。
【0039】
本発明において、用いることができるジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体や、グリコール又はそのエステル形成性誘導体は、上記例示に限定されるものではなく、また、得られるポリエステルも、上記例示に限定されるものではない。しかし、上述したなかでは、ジカルボン酸としては、芳香族ジカルボン酸が好ましく、ポリエステルとしては、芳香族ジカルボン酸としてテレフタル酸を用い、グリコールとしてエチレングリコールを用いるポリエチレンテレフタレートが好ましい。
【0040】
上記ポリエチレンテレフタレートは、従来、通常、以下の方法によって製造されている。即ち、第1は、テレフタル酸とエチレングリコールとの直接エステル化反応によって、ビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレート(BHET)を含む低分子量のオリゴマーを得、更に、このオリゴマーを重縮合触媒の存在下に高真空、高温下に溶融重縮合させて、所要の分子量を有するポリエステルを得るものである。
【0041】
第2は、ジメチルテレフタレートに代表されるテレフタル酸ジアルキルエステルとエチレングリコールとのエステル交換反応によって、同様に、前記ビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレート(BHET)を含む低分子量のオリゴマーを得、更に、このオリゴマーを重縮合触媒の存在下に高真空、高温下に溶融重縮合させて、所要の分子量を有するポリエステルを得るものである。
【0042】
より詳しくは、上記低分子量のオリゴマーを重縮合反応槽に移送し、通常、240〜280℃の範囲のポリエチレンテレフタレートの融点よりも高い温度、例えば、280〜290℃程度の温度で減圧下に加熱し、未反応のエチレングリコールと反応によって生成したエチレングリコールを反応系外に留去しつつ、同時に、溶融反応物の粘度をモニタリングしながら、上記低分子量のオリゴマーを溶融重縮合させてポリエステルを得る。
【0043】
この溶融重縮合反応は、必要に応じて、複数の重縮合反応槽を用いて、それぞれの重縮合反応槽において、反応温度と圧力を最適に変更させながら行ってもよい。反応混合物の粘度が所要値に達すれば、減圧を止め、例えば、窒素ガスにて重縮合反応槽内を常圧に戻して、得られたポリエステルを重縮合反応槽から、例えば、ストランド状に吐出させ、急水冷し、切断して、ペレットとする。本発明によれば、このようにして、通常、温度30℃における固有粘度(IV)が0.5〜0.9dL/gのポリエステルを得ることができる。
【0044】
ボトル用途のポリエステルには、繊維やフィルム用途のポリエステルよりも高分子量のものが要求される。このようなより高分子量のポリエステルは、既に、知られているように、通常、上記溶融重縮合物としてのポリエステルを固相重縮合することによって得ることができる。
【0045】
このように、本発明によるポリエステルの製造方法は、上述した従来のポリエステルの製造方法において、重縮合触媒として、前述したように、表面にチタン酸被覆層を有せしめた水不溶性乃至水難溶性のリン酸塩粒子を用いるものである。
【0046】
即ち、本発明によるポリエステルの好ましい製造方法においては、ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体とグリコールとのエステル化反応又はエステル交換反応によって、ジカルボン酸ジエステルを含む前記低分子量のオリゴマーを製造する第1の工程と、次いで、この低分子量のオリゴマーを溶融重縮合させて溶融重縮合物としてのポリエステルを得る第2の工程を含むポリエステルの製造方法において、少なくとも上記第2の工程を前述した表面にチタン酸被覆層を有せしめた水不溶性乃至水難溶性のリン酸塩粒子の存在下に行うものである。但し、上記第1の工程を上記重縮合触媒の存在下に行い、引き続き、その重縮合触媒の存在下に上記第2の工程を行ってもよい。
【0047】
ポリエチレンテレフタレートの製造の場合であれば、少なくとも前記ビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレート(BHET)を含む低分子量のオリゴマーを溶融重縮合させる第2の工程を本発明による重縮合触媒の存在下に行って、所要の分子量を有するポリエステルを溶融重縮合物として得る。但し、上記第1の工程を上記重縮合触媒の存在下に行い、引き続き、その重縮合触媒の存在下に上記第2の工程を行ってもよい。
【0048】
更に、本発明の方法は、上述したポリエステルの製造方法において、上記溶融重縮合物としてのポリエステルを固相重縮合させて、固相重縮合物としてのポリエステルを得る工程を含むことができる。
【0049】
本発明の方法によれば、通常、本発明による重縮合触媒の存在下に前記オリゴマーを溶融重縮合させて、溶融重縮合物としてのポリエステルを得る。従って、本発明において、上記溶融重縮合物としてのポリエステルを更に固相重縮合させる場合、上記溶融重縮合物としてのポリエステルは既に本発明による重縮合触媒を含んでいるので、その固相重縮合に際しては、新たに重縮合触媒を用いる必要はない。しかし、場合によっては、固相重縮合に際して、新たに本発明による重縮合触媒を溶融重縮合ポリエステルに加えて、固相重縮合させてもよい。例えば、溶融重縮合によって得られたポリエステルを本発明による重縮合触媒と溶融混合し、これを固相重縮合に供すればよい。
【0050】
ポリエステルの固相重縮合は、より詳しくは、溶融重縮合によって得られたポリエステルを真空下又は不活性ガス又は炭酸ガスの流通下に温度100〜200℃で乾燥し、次いで、温度150〜200℃で結晶化させた後、ポリエステルの融点よりも低い温度、代表的には、200〜230℃程度の温度にポリエステルを加熱して固相重縮合させる。本発明によれば、このようにして、通常、温度30℃における固有粘度(IV)が0.7〜1.2dL/gのポリエステルを固相重縮合物として得ることができる。
【0051】
本発明においては、本発明による重縮合触媒をそのまま、反応系に加えてもよいが、本発明によれば、これらを原料として用いるグリコールに分散させて、反応系に加えることが好ましい。
【0052】
特に、本発明による重縮合触媒は、グリコール、特に、エチレングリコールに容易に分散させることができるので、本発明による重縮合触媒を予め、エチレングリコールに分散させてスラリーとし、一方、前記オリゴマーを重縮合反応槽に仕込み、加熱し、溶融させ、これに上記スラリーを加えて、前記オリゴマーを溶融重縮合させることが好ましい。
【0053】
本発明による重縮合触媒は、重量基準で、重縮合によって得られるポリエステルに対して、チタン原子換算で、通常、1〜40ppmの範囲で用いられる。よりよい色調のポリエステルを得る観点からは、本発明による重縮合触媒は、重量基準で、重縮合によって得られるポリエステルに対して、チタン原子換算で、より好ましくは、2〜20ppmの範囲で用いられ、最も好ましくは、2〜10ppmの範囲で用いられる。重縮合によって得られるポリエステルに対して、本発明による重縮合触媒を用いる割合がチタン原子換算で1ppmよりも少ないときは、触媒の使用量によっては、触媒活性が十分でなく、目的とする高分子量のポリエステルを得ることができないおそれがある。他方、40ppmよりも多いときは、触媒の使用量によっては、得られるポリエステルが熱安定性に劣るおそれがある。
【0054】
本発明による重縮合触媒はいずれも、溶融重合のみならず、固相重合や溶液重合においても、触媒活性を有しており、いずれの場合にも、ポリエステルの製造に用いることができる。
【0055】
本発明による重縮合触媒は、成分として、アンチモンを含まないので、得られるポリエステルに黒ずみを与えたり、得られるポリエステル中に異物として混入したりすることがなく、しかも、アンチモンを成分として含む触媒と同等又はそれ以上の触媒活性を有し、しかも、すぐれた色調を有するポリエステルを得ることができる。そのうえ、本発明による重縮合触媒は、毒性がなく、安全である。
【0056】
しかし、本発明のポリエステルの製造において、本発明による重縮合触媒を用いる利点を損なわない範囲において、従来より知られている重縮合触媒、例えば、アンチモン、ゲルマニウム、チタン、スズ、アルミニウム等の化合物からなる重縮合触媒を併用してもよい。更に、必要に応じて、得られるポリエステルの色調改善のためにアルカリ金属化合物を併用してもよく、また、同様に、得られるポリエステルの更なる色調改善と共に熱安定性の改善のためにリン系安定剤を併用してもよい。
【0057】
本発明において、上記リン系安定剤としては、例えば、リン酸、リン酸塩、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリ−n−ブチルホスフェート等のリン酸エステル類、亜リン酸、亜リン酸塩、トリフェニルホスファイト等の亜リン酸エステル類、ポリリン酸等を挙げることができる。このようなリン系安定剤は、ポリエステル製造の任意の時点で反応系に導入することができる。これらのリン系安定剤は、得られるポリエステルの重量に対して、通常、リン原子として1〜100ppm、好ましくは、3〜20ppmの範囲で用いられる。
【0058】
但し、本発明において、重縮合触媒におけるチタン酸被覆をその表面に形成するために用いるリン酸塩粒子は、それ自体を本発明による重縮合触媒と併用しても、得られるポリエステルの色調の改善のためにも、熱安定性の改善のための安定剤としての効果ももたない。
【0059】
本発明によれば、ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体とグリコールとのエステル化反応又はエステル交換反応によるポリエステルの製造において、用いる重縮合触媒が、例えば、リン成分を含むピロリン酸カルシウムやリン酸マグネシウムのような担体としてのリン酸塩粒子と、その表面に形成されたチタン酸被覆とからなり、上記リン酸塩粒子のリン成分がチタン酸の酸触媒作用を適度に抑制する結果、すぐれた色調を有する高分子量ポリエステルを与えるものとみられる。
【0060】
更に、本発明による重縮合触媒を用いて得られたポリエステルは、得られたポリエステルの重量に対して、チタン原子換算で、1〜40ppmの範囲で、好ましくは、2〜20ppmの範囲で、最も好ましくは、2〜10ppmの範囲で、チタン酸被覆層を表面に有するリン酸塩の粒子を含む。
【0061】
それ故に、本発明による重縮合触媒を用いて得られたポリエステルは、三酸化アンチモンを重縮合触媒として用いて得られる、上記三酸化アンチモンを含むポリエステルに比較して、昇温時の結晶化温度がより高い特徴を有し、従って、本発明による重縮合触媒を用いて得られたポリエステルは、結晶化速度が遅いので、ボトルや繊維をはじめとするポリエステルの成形時に、樹脂としての透明性をより長い期間にわたって維持することができる。
【実施例】
【0062】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
【0063】
以下の実施例及び比較例において、ppmは重量基準による。得られたポリエステルの固有粘度は(株)柴山科学器械製作所製の自動固有粘度測定装置SS−600−L1によって測定し、得られたポリエステルの色調は日本電色工業(株)製の同時測光方式分光式色差計SQ−2000を用いて測定した。
【0064】
また、得られた固相重縮合ポリエステルの昇温時の結晶化温度は、高感度示差走査熱量計((株)リガク製 Thermo plus EVO II DSC8230 SmartLoader)を用いて測定した。即ち、ポリエステルを測定用パンにセットし、窒素雰囲気下、昇温速度10℃/分で270℃まで昇温した。その温度で10分間保持した後、10℃/分の降温速度で25℃まで降温させた。そして、昇温時の発熱ピークのピークトップの温度を結晶化温度とした。
【0065】
本発明においては、得られたポリエステルの色調を評価するために、国際照明委員会(CIE)が1974年に定めたL*a*b* 表色系を採用した。ここに、上記L*a*b* 表色系において、L* 値は明度を表し、a* 値とb* 値は色度、即ち、色調と彩度を表す。L* 値は、値が大きい程、明るいことを示し、値が小さい程、暗いことを示す。白色のL* 値は100であり、黒色のL* 値は0である。a* 値が負の値であるときは緑色を示し、正の値であるときは赤色を示す。b* 値が負の値であるときは青色を示し、正の値であるときは黄色を示す。
【0066】
実施例1
(重縮合触媒Aの調製)
四塩化チタン水溶液( TiO換算で50.0g/L)0.002Lと水酸化ナトリウム水溶液(NaOH換算で87.2g/L)0.002Lを調製した。市販のピロリン酸カルシウムを水スラリー(100g/L)1Lとし、これを5L容量の反応器に仕込んだ後、上記ピロリン酸カルシウムの水スラリーにそのpHが7.0になるように上記四塩化チタン水溶液と水酸化ナトリウム水溶液とを同時に0.003時間かけて滴下した。
【0067】
滴下終了後、1時間熟成して、ピロリン酸カルシウム粒子の表面にチタン酸からなる被覆層を形成した。このようにして得られた表面にチタン酸からなる被覆層を有するピロリン酸カルシウム粒子の水スラリーを濾過し、水洗、乾燥して、固形物を得、これを解砕して、本発明による重縮合触媒Aを得た。この重縮合触媒におけるチタン酸被覆の割合はピロリン酸カルシウム100重量部に対してTiO換算で0.1重量部であった。
【0068】
(ポリエステルa−1の製造)
市販のテレフタル酸433gとエチレングリコール191gを重縮合反応槽に仕込み、窒素ガス雰囲気下で攪拌してスラリーとし、また、重縮合触媒Aを予め、エチレングリコールに分散させてスラリーとした。上記重縮合触媒を含むスラリーを上記重縮合触媒が上記重縮合反応槽で生成するポリエステルに対してチタン原子換算で6.5ppmとなるように添加した。反応槽の温度は260℃に保ち、圧力は窒素ガスにより2.5kgf/cm2から徐々に常圧まで降下させながら、3.5時間かけてエステル化反応を行った。
【0069】
エステル化反応終了後、1時間かけて反応槽の温度を260℃から280℃まで昇温し、反応槽の圧力を常圧から1mmHgまで減圧した。その後、温度と圧力を維持しながら溶融重縮合反応を行った。攪拌機のトルクが所定の値になった時点で溶融重縮合反応を終了し、反応槽内を窒素ガスで常圧に戻し、得られたポリエステルを反応槽の底部の抜出し口からストランド状に吐出させ、冷却し、切断して、ポリエステルのペレットを得た。このようにして得られた溶融重縮合ポリエステルa−1の固有粘度と色調を表1に示す。
【0070】
(ポリエステルa−2の製造)
ポリエステルa−1のペレット20gを固相重縮合反応管に仕込み、窒素ガス流通下で反応管内の温度を160℃に保ち、4時間、乾燥を行った。更に昇温して、反応管の温度を190℃に保ち、1時間、結晶化を行った。
【0071】
その後、昇温して、反応管の温度を200℃に保ち、18時間、固相重縮合反応を行った。重縮合反応終了後、冷却し、ポリエステルのペレットを得た。このようにして得られた固相重縮合ポリエステルa−2の固有粘度と色調を表1に示す。
【0072】
実施例2
(重縮合触媒Bの調製)
四塩化チタン水溶液(TiO換算で50.0g/L)0.02Lと水酸化ナトリウム水溶液(NaOH換算で87.2g/L)0.02Lを調製した。市販のピロリン酸カルシウムを水スラリー(100g/L)1Lとし、これを5L容量の反応器に仕込んだ後、上記ピロリン酸カルシウムの水スラリーにそのpHが7.0になるように上記四塩化チタン水溶液と水酸化ナトリウム水溶液とを同時に0.03時間かけて滴下した。
【0073】
滴下終了後、1時間熟成して、ピロリン酸カルシウム粒子の表面にチタン酸からなる被覆層を形成した。このようにして得られた表面にチタン酸からなる被覆層を有するピロリン酸カルシウム粒子の水スラリーを濾過し、水洗、乾燥して、固形物を得、これを解砕して、本発明による重縮合触媒Bを得た。この重縮合触媒におけるチタン酸被覆の割合はピロリン酸カルシウム100重量部に対してTiO換算で1重量部であった。
【0074】
(ポリエステルb−1の製造)
上記重縮合触媒Bを用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリエステルを得た。このようにして得られた溶融重縮合ポリエステルb−1の固有粘度と色調を表1に示す。
【0075】
(ポリエステルb−2の製造)
ポリエステルb−1を用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリエステルを得た。このようにして得られた固相重縮合ポリエステルb−2の固有粘度と色調と結晶化温度を表1に示す。
【0076】
実施例3
(重縮合触媒Cの調製)
四塩化チタン水溶液(TiO換算で50.0g/L)0.2Lと水酸化ナトリウム水溶液(NaOH換算で87.2g/L)0.2Lを調製した。市販のピロリン酸カルシウムを水スラリー(100g/L)1Lとし、これを5L容量の反応器に仕込んだ後、上記ピロリン酸カルシウムの水スラリーにそのpHが7.0になるように上記四塩化チタン水溶液と水酸化ナトリウム水溶液とを同時に0.3時間かけて滴下した。
【0077】
滴下終了後、1時間熟成して、ピロリン酸カルシウム粒子の表面にチタン酸からなる被覆層を形成した。このようにして得られた表面にチタン酸からなる被覆層を有するピロリン酸カルシウム粒子の水スラリーを濾過し、水洗、乾燥して、固形物を得、これを解砕して、本発明による重縮合触媒Cを得た。この重縮合触媒におけるチタン酸被覆の割合はピロリン酸カルシウム100重量部に対してTiO換算で10重量部であった。
【0078】
(ポリエステルc−1の製造)
上記重縮合触媒Cを用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリエステルを得た。このようにして得られた溶融重縮合ポリエステルc−1の固有粘度と色調を表1に示す。
【0079】
(ポリエステルc−2の製造)
ポリエステルc−1を用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリエステルを得た。このようにして得られた固相重縮合ポリエステルc−2の固有粘度と色調を表1に示す。
【0080】
実施例4
(重縮合触媒Dの調製)
四塩化チタン水溶液(TiO換算で50.0g/L)0.4Lと水酸化ナトリウム水溶液(NaOH換算で87.2g/L)0.4Lを調製した。市販のピロリン酸カルシウムを水スラリー(100g/L)1Lとし、これを5L容量の反応器に仕込んだ後、このピロリン酸カルシウムの水スラリーにそのpHが7.0になるように上記四塩化チタン水溶液と水酸化ナトリウム水溶液とを同時に0.51時間かけて滴下した。
【0081】
滴下終了後、1時間熟成して、ピロリン酸カルシウム粒子の表面にチタン酸からなる被覆層を形成した。このようにして得られた表面にチタン酸からなる被覆層を有するピロリン酸カルシウム粒子の水スラリーを濾過し、水洗、乾燥して、固形物を得、これを解砕して、本発明による重縮合触媒Dを得た。この重縮合触媒におけるチタン酸被覆の割合は、ピロリン酸カルシウム100重量部に対してTiO換算で20重量部であった。
【0082】
(ポリエステルd−1の製造)
上記重縮合触媒Dを用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリエステルを得た。このようにして得られた溶融重縮合ポリエステルd−1の固有粘度と色調を表1に示す。
【0083】
(ポリエステルd−2の製造)
ポリエステルd−1を用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリエステルを得た。このようにして得られた固相重縮合ポリエステルd−2の固有粘度と色調と結晶化温度を表1に示す。
【0084】
実施例5
(重縮合触媒Eの調製)
四塩化チタン水溶液(TiO換算で50.0g/L)1Lと水酸化ナトリウム水溶液(NaOH換算で87.2g/L)1Lを調製した。市販のピロリン酸カルシウムを水スラリー(100g/L)1Lとし、これを5L容量の反応器に仕込んだ後、上記ピロリン酸カルシウムの水スラリーにそのpHが7.0になるように上記四塩化チタン水溶液と水酸化ナトリウム水溶液とを同時に1.28時間かけて滴下した。
【0085】
滴下終了後、1時間熟成して、ピロリン酸カルシウム粒子の表面にチタン酸からなる被覆層を形成した。このようにして得られた表面にチタン酸からなる被覆層を有するピロリン酸カルシウム粒子の水スラリーを濾過し、水洗、乾燥して、固形物を得、これを解砕して、本発明による重縮合触媒Eを得た。この重縮合触媒におけるチタン酸被覆の割合は、ピロリン酸カルシウム100重量部に対してTiO換算で50重量部であった。
【0086】
(ポリエステルe−1の製造)
上記重縮合触媒Eを用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリエステルを得た。このようにして得られた溶融重縮合ポリエステルe−1の固有粘度と色調を表1に示す。
【0087】
(ポリエステルe−2の製造)
ポリエステルe−1を用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリエステルを得た。このようにして得られた固相重縮合ポリエステルe−2の固有粘度と色調と結晶化温度を表1に示す。
【0088】
実施例6
(重縮合触媒Fの調製)
四塩化チタン水溶液(TiO換算で50.0g/L)2Lと水酸化ナトリウム水溶液(NaOH換算で87.2g/L)2Lを調製した。市販のピロリン酸カルシウムを水スラリー(100g/L)1Lとし、これを10L容量の反応器に仕込んだ後、このピロリン酸カルシウムの水スラリーにそのpHが7.0になるように上記四塩化チタン水溶液と水酸化ナトリウム水溶液とを同時に2.56時間かけて滴下した。
【0089】
滴下終了後、1時間熟成して、ピロリン酸カルシウム粒子の表面にチタン酸からなる被覆層を形成した。このようにして得られた表面にチタン酸からなる被覆層を有するピロリン酸カルシウム粒子の水スラリーを濾過し、水洗、乾燥して、固形物を得、これを解砕して、本発明による重縮合触媒Fを得た。この重縮合触媒におけるチタン酸被覆の割合は、ピロリン酸カルシウム100重量部に対してTiO換算で100重量部であった。
【0090】
(ポリエステルf−1の製造)
上記重縮合触媒Fを用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリエステルを得た。このようにして得られた溶融重縮合ポリエステルf−1の固有粘度と色調を表1に示す。
【0091】
(ポリエステルf−2の製造)
ポリエステルf−1を用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリエステルを得た。このようにして得られた固相重縮合ポリエステルf−2の固有粘度と色調を表1に示す。
【0092】
実施例7
(ポリエステルg−1の製造)
市販のテレフタル酸433gとエチレングリコール191gを重縮合反応槽に仕込み、窒素ガス雰囲気下で攪拌してスラリーとし、また、重縮合触媒Eを予め、エチレングリコールに分散させてスラリーとした。上記重縮合触媒を含むスラリーを上記重縮合触媒が上記重縮合反応槽で生成するポリエステルに対してチタン原子換算で2ppmとなるように添加した。反応槽の温度は260℃に保ち、圧力は窒素ガスにより2.5kgf/cm2から徐々に常圧まで降下させながら、3.5時間かけてエステル化反応を行った。
【0093】
エステル化反応終了後、1時間かけて反応槽の温度を260℃から280℃まで昇温し、反応槽の圧力を常圧から1mmHgまで減圧した。その後、温度と圧力を維持しながら重縮合反応を行った。攪拌機のトルクが所定の値になった時点で重縮合反応を終了し、反応槽内を窒素ガスで常圧に戻し、得られたポリエステルを反応槽の底部の抜出し口からストランド状に吐出させ、冷却し、切断して、ポリエステルのペレットを得た。このようにして得られた溶融重縮合ポリエステルg−1の固有粘度と色調を表1に示す。
【0094】
(ポリエステルg−2の製造)
ポリエステルg−1を用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリエステルを得た。このようにして得られた固相重縮合ポリエステルg−2の固有粘度と色調と結晶化温度を表1に示す。
【0095】
実施例8
(ポリエステルh−1の製造)
市販のテレフタル酸433gとエチレングリコール191gを重縮合反応槽に仕込み、窒素ガス雰囲気下で攪拌してスラリーとし、また、重縮合触媒Eを予め、エチレングリコールに分散させてスラリーとした。上記重縮合触媒を含むスラリーを上記重縮合触媒が上記重縮合反応槽で生成するポリエステルに対してチタン原子換算で10ppmとなるように添加した。反応槽の温度は260℃に保ち、圧力は窒素ガスにより2.5kgf/cm2から徐々に常圧まで降下させながら、3.5時間かけてエステル化反応を行った。
【0096】
エステル化反応終了後、1時間かけて反応槽の温度を260℃ から280℃まで昇温し、反応槽の圧力を常圧から1mmHgまで減圧した。その後、温度と圧力を維持しながら溶融重縮合反応を行った。攪拌機のトルクが所定の値になった時点で溶融重縮合反応を終了し、反応槽内を窒素ガスで常圧に戻し、得られたポリエステルを反応槽の底部の抜出し口からストランド状に吐出させ、冷却し、切断して、ポリエステルのペレットを得た。このようにして得られた溶融重縮合ポリエステルh−1の固有粘度と色調を表1に示す。
【0097】
(ポリエステルh−2の製造)
ポリエステルh−1を用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリエステルを得た。このようにして得られた固相重縮合ポリエステルh−2の固有粘度と色調を表1に示す。
【0098】
実施例9
(ポリエステルi−1の製造)
市販のテレフタル酸433gとエチレングリコール191gを重縮合反応槽に仕込み、窒素ガス雰囲気下で攪拌してスラリーとし、また、重縮合触媒Eを予め、エチレングリコールに分散させてスラリーとした。上記重縮合触媒を含むスラリーを上記重縮合触媒が上記重縮合反応槽で生成するポリエステルに対してチタン原子換算で20ppmとなるように添加した。反応槽の温度は260℃に保ち、圧力は窒素ガスにより2.5kgf/cm2から徐々に常圧まで降下させながら、3.5時間かけてエステル化反応を行った。
【0099】
エステル化反応終了後、1時間かけて反応槽の温度を260℃から280℃まで昇温し、反応槽の圧力を常圧から1mmHgまで減圧した。その後、温度と圧力を維持しながら溶融重縮合反応を行った。攪拌機のトルクが所定の値になった時点で溶融重縮合反応を終了し、反応槽内を窒素ガスで常圧に戻し、得られたポリエステルを反応槽の底部の抜出し口からストランド状に吐出させ、冷却し、切断して、ポリエステルのペレットを得た。このようにして得られた溶融重縮合ポリエステルi−1の固有粘度と色調を表1に示す。
【0100】
(ポリエステルi−2の製造)
ポリエステルi−1を用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリエステルを得た。このようにして得られた固相重縮合ポリエステルi−2の固有粘度と色調と結晶化温度を表1に示す。
【0101】
実施例10
(ポリエステルj−1の製造)
市販のテレフタル酸433gとエチレングリコール191gを重縮合反応槽に仕込み、窒素ガス雰囲気下で攪拌してスラリーとし、また、重縮合触媒Eを予め、エチレングリコールに分散させてスラリーとした。上記重縮合触媒を含むスラリーを上記重縮合触媒が上記重縮合反応槽で生成するポリエステルに対してチタン原子換算で6.5ppmとなるように添加した。反応槽の温度は260℃に保ち、圧力は窒素ガスにより2.5kgf/cm2から徐々に常圧まで降下させながら、3.5時間かけてエステル化反応を行った。
【0102】
市販の85%リン酸をエチレングリコールで希釈してリン酸のエチレングリコール溶液を調製した。エステル化反応終了後、上記リン酸のエチレングリコール溶液を生成するポリエステルに対してリン原子として5ppm添加した。
【0103】
その5分後から、1時間かけて反応槽の温度を260℃から280℃まで昇温し、反応槽の圧力を常圧から1mmHgまで減圧した。その後、温度と圧力を維持しながら溶融重縮合反応を行った。攪拌機のトルクが所定の値になった時点で溶融重縮合反応を終了し、反応槽内を窒素ガスで常圧に戻し、得られたポリエステルを反応槽の底部の抜出し口からストランド状に吐出させ、冷却し、切断して、ポリエステルのペレットを得た。このようにして得られた溶融重縮合ポリエステルj−1の固有粘度と色調を表1に示す。
【0104】
(ポリエステルj−2の製造)
ポリエステルj−1を用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリエステルを得た。このようにして得られた固相重縮合ポリエステルj−2の固有粘度と色調を表1に示す。
【0105】
実施例11
(ポリエステルk−1の製造)
市販のテレフタル酸433gとエチレングリコール191gを重縮合反応槽に仕込み、窒素ガス雰囲気下で攪拌してスラリーとし、また、重縮合触媒Eを予め、エチレングリコールに分散させてスラリーとした。上記重縮合触媒を含むスラリーを上記重縮合触媒が上記重縮合反応槽で生成するポリエステルに対してチタン原子換算で6.5ppmとなるように添加した。反応槽の温度は260℃に保ち、圧力は窒素ガスにより2.5kgf/cm2から徐々に常圧まで降下させながら、3.5時間かけてエステル化反応を行った。
【0106】
市販のリン酸トリメチルをエチレングリコールで希釈したリン酸トリメチルのエチレングリコール溶液を調製した。エステル化反応終了後、上記リン酸トリメチルのエチレングリコール溶液を生成するポリエステルに対してリン原子として5ppm添加した。
【0107】
その5分後から、1時間かけて反応槽の温度を260℃から280℃まで昇温し、反応槽の圧力を常圧から1mmHgまで減圧した。その後、温度と圧力を維持しながら溶融重縮合反応を行った。攪拌機のトルクが所定の値になった時点で溶融重縮合反応を終了し、反応槽内を窒素ガスで常圧に戻し、得られたポリエステルを反応槽の底部の抜出し口からストランド状に吐出させ、冷却し、切断して、ポリエステルのペレットを得た。このようにして得られた溶融ポリエステルk−1の固有粘度と色調を表1に示す。
【0108】
(ポリエステルk−2の製造)
ポリエステルk−1を用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリエステルを得た。このようにして得られた固相重縮合ポリエステルk−2の固有粘度と色調を表1に示す。
【0109】
実施例12
(重縮合触媒Gの調製)
四塩化チタン水溶液(TiO換算で50.0g/L)1Lと水酸化ナトリウム水溶液(NaOH換算で87.2g/L)1Lを調製した。市販のピロリン酸二水素カルシウムを水スラリー(100g/L)1Lとし、これを5L容量の反応器に仕込んだ後、このピロリン酸二水素カルシウムの水スラリーにそのpHが7.7になるように上記四塩化チタン水溶液と水酸化ナトリウム水溶液とを同時に1.28時間かけて滴下した。
【0110】
滴下終了後、1時間熟成して、ピロリン酸二水素カルシウム粒子の表面にチタン酸からなる被覆層を形成した。このようにして得られた表面にチタン酸からなる被覆層を有するピロリン酸二水素カルシウム粒子の水スラリーを濾過し、水洗、乾燥して、固形物を得、これを解砕して、本発明による重縮合触媒Gを得た。この重縮合触媒におけるチタン酸被覆の割合は、ピロリン酸二水素カルシウム100重量部に対してTiO2換算で50重量部であった。
【0111】
(ポリエステルl−1の製造)
上記重縮合触媒Gを用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリエステルを得た。このようにして得られた溶融重縮合ポリエステルl−1の固有粘度と色調を表1に示す。
【0112】
(ポリエステルl−2の製造)
ポリエステルl−1を用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリエステルを得た。このようにして得られた固相重縮合ポリエステルl−2の固有粘度と色調と結晶化温度を表1に示す。
【0113】
実施例13
(重縮合触媒Hの調製)
四塩化チタン水溶液(TiO換算で50.0g/L)1Lと水酸化ナトリウム水溶液(NaOH換算で87.2g/L)1Lを調製した。市販の第三リン酸カルシウムを水スラリー(100g/L)1Lとし、これを5L容量の反応器に仕込んだ後、この第三リン酸カルシウムの水スラリーにそのpHが7.0になるように上記四塩化チタン水溶液と水酸化ナトリウム水溶液とを同時に1.28時間かけて滴下した。
【0114】
滴下終了後、1時間熟成して、第三リン酸カルシウム粒子の表面にチタン酸からなる被覆層を形成した。このようにして得られた表面にチタン酸からなる被覆層を有する第三リン酸カルシウム粒子の水スラリーを濾過し、水洗、乾燥して、固形物を得、これを解砕して、本発明による重縮合触媒Hを得た。この重縮合触媒におけるチタン酸被覆の割合は第三リン酸カルシウム100重量部に対してTiO換算で50重量部であった。
【0115】
(ポリエステルm−1の製造)
上記重縮合触媒Hを用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリエステルを得た。このようにして得られた溶融重縮合ポリエステルm−1の固有粘度と色調を表2に示す。
【0116】
(ポリエステルm−2の製造)
ポリエステルm−1を用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリエステルを得た。このようにして得られた固相重縮合ポリエステルm−2の固有粘度と色調と結晶化温度を表2に示す。
【0117】
実施例14
(重縮合触媒Iの調製)
四塩化チタン水溶液(TiO換算で50.0g/L)1Lと水酸化ナトリウム水溶液(NaOH換算で87.2g/L)1Lを調製した。市販の第二リン酸カルシウムを水スラリー(100g/L)1Lとし、5L容量の反応器に仕込んだ後、この第二リン酸カルシウムの水スラリーにそのpHが7.0になるように、上記四塩化チタン水溶液と水酸化ナトリウム水溶液とを同時に1.28時間かけて滴下した。
【0118】
滴下終了後、1時間熟成して、第二リン酸カルシウム粒子の表面にチタン酸からなる被覆層を形成した。このようにして得られた表面にチタン酸からなる被覆層を有する第二リン酸カルシウム粒子の水スラリーを濾過し、水洗、乾燥して、固形物を得、これを解砕して、本発明による重縮合触媒Iを得た。この重縮合触媒におけるチタン酸被覆の割合は、第二リン酸カルシウム100重量部に対してTiO換算で50重量部であった。
【0119】
(ポリエステルn−1の製造)
上記重縮合触媒Iを用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリエステルを得た。このようにして得られた溶融重縮合ポリエステルn−1の固有粘度と色調を表2に示す。
【0120】
(ポリエステルn−2の製造)
ポリエステルn−1を用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリエステルを得た。このようにして得られた固相重縮合ポリエステルn−2の固有粘度と色調と結晶化温度を表2に示す。
【0121】
実施例15
(重縮合触媒Jの調製)
四塩化チタン水溶液(TiO換算で50.0g/L)1Lと水酸化ナトリウム水溶液(NaOH換算で87.2g/L)1Lを調製した。市販のピロリン酸マグネシウムを水スラリー(100g/L)1Lとし、5L容量の反応器に仕込んだ後、このピロリン酸マグネシウムの水スラリーにそのpHが7.0になるように、上記四塩化チタン水溶液と水酸化ナトリウム水溶液とを同時に1.28時間かけて滴下した。
【0122】
滴下終了後、1時間熟成して、ピロリン酸マグネシウム粒子の表面にチタン酸からなる被覆層を形成した。このようにして得られた表面にチタン酸からなる被覆層を有するピロリン酸マグネシウム粒子の水スラリーを濾過し、水洗、乾燥して、固形物を得、これを解砕して、本発明による重縮合触媒Jを得た。この重縮合触媒におけるチタン酸被覆の割合は、ピロリン酸マグネシウム100重量部に対してTiO換算で50重量部であった。
【0123】
(ポリエステルo−1の製造)
上記重縮合触媒Jを用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリエステルを得た。このようにして得られた溶融重縮合ポリエステルo−1の固有粘度と色調を表2に示す。
【0124】
(ポリエステルo−2の製造)
ポリエステルo−1を用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリエステルを得た。このようにして得られた固相重縮合ポリエステルo−2の固有粘度と色調と結晶化温度を表2に示す。
【0125】
実施例16
(重縮合触媒Kの調製)
四塩化チタン水溶液(TiO換算で50.0g/L)0.4Lと水酸化ナトリウム水溶液(NaOH換算で87.2g/L)0.4Lを調製した。市販の第三リン酸マグネシウムを水スラリー(100g/L)1Lとし、これを5L容量の反応器に仕込んだ後、この第三リン酸マグネシウムの水スラリーにそのpHが7.0になるように上記四塩化チタン水溶液と水酸化ナトリウム水溶液とを同時に0.51時間かけて滴下した。
【0126】
滴下終了後、1時間熟成して、第三リン酸マグネシウム粒子の表面にチタン酸からなる被覆層を形成した。このようにして得られた表面にチタン酸からなる被覆層を有する第三リン酸マグネシウム粒子の水スラリーを濾過し、水洗、乾燥して、固形物を得、これを解砕して、本発明による重縮合触媒Kを得た。この重縮合触媒におけるチタン酸被覆の割合は第三リン酸マグネシウム100重量部に対してTiO換算で20重量部であった。
【0127】
(ポリエステルp−1の製造)
上記重縮合触媒Kを用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリエステルを得た。このようにして得られた溶融重縮合ポリエステルp−1の固有粘度と色調を表2に示す。
【0128】
(ポリエステルp−2の製造)
ポリエステルp−1を用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリエステルを得た。このようにして得られた固相重縮合ポリエステルp−2の固有粘度と色調と結晶化温度を表2に示す。
【0129】
実施例17
(重縮合触媒Lの調製)
四塩化チタン水溶液(TiO換算で50.0g/L)1Lと水酸化ナトリウム水溶液(NaOH換算で87.2g/L)1Lを調製した。市販の第三リン酸マグネシウムを水スラリー(100g/L)1Lとし、これを5L容量の反応器に仕込んだ後、この第三リン酸マグネシウムの水スラリーにそのpHが7.0になるように上記四塩化チタン水溶液と水酸化ナトリウム水溶液とを同時に1.28時間かけて滴下した。
【0130】
滴下終了後、1時間熟成して、第三リン酸マグネシウム粒子の表面にチタン酸からなる被覆層を形成した。このようにして得られた表面にチタン酸からなる被覆層を有する第三リン酸マグネシウム粒子の水スラリーを濾過し、水洗、乾燥して、固形物を得、これを解砕して、本発明による重縮合触媒Lを得た。この重縮合触媒におけるチタン酸被覆の割合は第三リン酸マグネシウム100重量部に対してTiO換算で50重量部であった。
【0131】
(ポリエステルq−1の製造)
上記重縮合触媒Lを用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリエステルを得た。このようにして得られた溶融重縮合ポリエステルq−1の固有粘度と色調を表2に示す。
【0132】
(ポリエステルq−2の製造)
ポリエステルq−1を用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリエステルを得た。このようにして得られた固相重縮合ポリエステルq−2の固有粘度と色調と結晶化温度を表2に示す。
【0133】
実施例18
(ポリエステルr−1の製造)
上記重縮合触媒Lを用いた以外は、実施例7と同様にして、ポリエステルを得た。このようにして得られた溶融重縮合ポリエステルr−1の固有粘度と色調を表2に示す。
【0134】
(ポリエステルr−2の製造)
ポリエステルr−1を用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリエステルを得た。このようにして得られた固相重縮合ポリエステルr−2の固有粘度および色調を表2に示す。
【0135】
実施例19
(ポリエステルs−1の製造)
上記重縮合触媒Lを用いた以外は、実施例8と同様にして、ポリエステルを得た。このようにして得られた溶融重縮合ポリエステルs−1の固有粘度と色調を表2に示す。
【0136】
(ポリエステルs−2の製造)
ポリエステルs−1を用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリエステルを得た。このようにして得られた固相重縮合ポリエステルs−2の固有粘度と色調を表2に示す。
【0137】
実施例20
(重縮合触媒Mの調製)
四塩化チタン水溶液(TiO換算で50.0g/L)1Lと水酸化ナトリウム水溶液(NaOH換算で87.2g/L)1Lを調製した。市販のメタリン酸マグネシウムを水スラリー(100g/L)1Lとし、これを5L容量の反応器に仕込んだ後、このメタリン酸マグネシウムの水スラリーにそのpHが7.0になるように上記四塩化チタン水溶液と水酸化ナトリウム水溶液とを同時に1.28時間かけて滴下した。
【0138】
滴下終了後、1時間熟成して、メタリン酸マグネシウム粒子の表面にチタン酸からなる被覆層を形成した。このようにして得られた表面にチタン酸からなる被覆層を有するメタリン酸マグネシウム粒子の水スラリーを濾過し、水洗、乾燥して、固形物を得、これを解砕して、本発明による重縮合触媒Mを得た。この重縮合触媒におけるチタン酸被覆の割合はメタリン酸マグネシウム100重量部に対してTiO換算で50重量部であった。
【0139】
(ポリエステルt−1の製造)
上記重縮合触媒Mを用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリエステルを得た。このようにして得られた溶融重縮合ポリエステルt−1の固有粘度と色調を表2に示す。
【0140】
(ポリエステルt−2の製造)
ポリエステルt−1を用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリエステルを得た。このようにして得られた固相重縮合ポリエステルt−2の固有粘度と色調と結晶化温度を表2に示す。
【0141】
比較例1
(重縮合触媒Nの調製)
四塩化チタン水溶液(TiO換算で50.0g/L)1Lと水酸化ナトリウム水溶液(NaOH換算で87.2g/L)1Lを調製した。市販のハイドロタルサイトを水スラリー(100g/L)1Lとし、5L容量の反応器に仕込んだ後、このハイドロタルサイトの水スラリーにそのpHが7.0になるように上記四塩化チタン水溶液と水酸化ナトリウム水溶液とを同時に1.28時間かけて滴下した。
【0142】
滴下終了後、1時間熟成して、ハイドロタルサイト粒子の表面にチタン酸からなる被覆層を形成した。このようにして得られた表面にチタン酸からなる被覆層を有するハイドロタルサイト粒子の水スラリーを濾過し、水洗、乾燥して、固形物を得、これを解砕して、比較例としての重縮合触媒Nを得た。この重縮合触媒におけるチタン酸被覆の割合はハイドロタルサイト100重量部に対してTiO換算で50重量部であった。
【0143】
(ポリエステルu−1の製造)
上記重縮合触媒Nを用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリエステルを得た。このようにして得られた溶融重縮合ポリエステルu−1の固有粘度と色調を表2に示す。
【0144】
(ポリエステルu−2の製造)
ポリエステルu−1を用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリエステルを得た。このようにして得られた固相重縮合ポリエステルu−2の固有粘度と色調を表2に示す。
【0145】
比較例2
(ポリエステルv−1の製造)
上記重縮合触媒Nを用いた以外は、実施例10と同様にして、ポリエステルを得た。このようにして得られた溶融重縮合ポリエステルv−1の固有粘度と色調を表2に示す。
【0146】
(ポリエステルv−2の製造)
ポリエステルv−1を用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリエステルを得た。このようにして得られた固相重縮合ポリエステルv−2の固有粘度と色調を表2に示す。
【0147】
比較例3
(ポリエステルw−1の製造)
市販のテレフタル酸433gとエチレングリコール191gを重縮合反応槽に仕込み、窒素ガス雰囲気下で攪拌してスラリーとし、また、重縮合触媒Nを予め、エチレングリコールに分散させてスラリーとした。上記重縮合触媒を含むスラリーを上記重縮合触媒が上記重縮合反応槽で生成するポリエステルに対してチタン原子換算で6.5ppmとなるように添加した。
【0148】
市販のピロリン酸カルシウムをエチレングリコールに分散させてスラリーとした。エステル化反応終了後、上記ピロリン酸カルシウムのスラリーを生成するポリエステルに対してリン原子として5ppm添加した。
【0149】
その5分後から、1時間かけて反応槽の温度を260℃から280℃まで昇温し、反応槽の圧力を常圧から1mmHgまで減圧した。その後、温度と圧力を維持しながら溶融重縮合反応を行った。攪拌機のトルクが所定の値になった時点で溶融重縮合反応を終了し、反応槽内を窒素ガスで常圧に戻し、得られたポリエステルを反応槽の底部の抜出し口からストランド状に吐出させ、冷却し、切断して、ポリエステルのペレットを得た。このようにして得られた溶融重縮合ポリエステルw−1の固有粘度と色調を表2に示す。
【0150】
(ポリエステルw−2の製造)
ポリエステルw−1を用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリエステルを得た。このようにして得られた固相重縮合ポリエステルw−2の固有粘度と色調を表2に示す。
【0151】
比較例4
(ポリエステルx−1の製造)
三酸化二アンチモンをエチレングリコール中に加熱溶解させたグリコール溶液を調製した。生成するポリエステルに対してアンチモン原子として217ppmとなるように上記溶液を添加した以外は、実施例1と同様にしてポリエステルを得た。このようにして得られた溶融重縮合ポリエステルx−1の固有粘度と色調を表2に示す。
【0152】
(ポリエステルx−2の製造)
ポリエステルx−1を用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリエステルを得た。このようにして得られた固相重縮合ポリエステルx−2の固有粘度と色調と結晶化温度を表2に示す。
【0153】
表1及び表2において、リン酸塩aはピロリン酸カルシウム(不溶)、bはピロリン酸二水素カルシウム(1.80g)、cは第三リン酸カルシウム(0.0025g)、dは第二リン酸カルシウム(0.02g)、eはピロリン酸マグネシウム(不溶)、fは第三リン酸マグネシウム(0.02g)、gはメタリン酸マグネシウム(不溶)、hはハイドロタルサイトを示す。上記において、リン酸塩が水に不溶性であるときは、括弧内に「不溶」と記載し、水に難溶性であるときは、括弧内に25℃の水に対する溶解度を記載した。
【0154】
【表1】
【0155】
【表2】
【0156】
表1及び表2に示す結果から明らかなように、本発明に従って、チタン酸からなる被覆層を表面に有する水不溶性乃至水難溶性のリン酸塩の粒子を重縮合触媒として用いた実施例1〜9及び12〜20においては、重縮合反応時にリン系安定剤を重縮合反応系に添加しなくても、L*a*b* 表色系におけるb* 値が低く、黄色への着色が少ない溶融重縮合ポリエステル樹脂を得ることができる。また、本発明に従って、チタン酸からなる被覆層を表面に有するリン酸塩の粒子を重縮合触媒として用い、重縮合反応時にリン系安定剤を重縮合反応系に添加した実施例10及び11においては、更にb* 値が低くなり、黄色への着色がより少ない溶融重縮合ポリエステル樹脂を得ることができる。
【0157】
これに対して、チタン酸からなる被覆層を表面に有するハイドロタルサイトの粒子を重縮合触媒として用い、重縮合反応時にリン系安定剤を重縮合反応系に添加しない比較例1においては、実施例1〜20に比べて、b* 値が高く、黄色への着色が強められている。
【0158】
また、比較例2に示すように、チタン酸からなる被覆層を表面に有するハイドロタルサイトの粒子を重縮合触媒として用いる場合に、実施例1〜9及び12〜20と同等の色調のポリエステルを得るには、リン系安定剤を重縮合系に添加する必要がある。
【0159】
比較例3は、チタン酸からなる被覆層を表面に有するハイドロタルサイトの粒子を重縮合触媒として用いて、重縮合反応時に本発明による重縮合触媒の担体であるピロリン酸カルシウムを重縮合反応系に添加して得たポリエステルである。得られたポリエステルのb* 値から明らかなように、ピロリン酸カルシウム自体は、ポリエステルの色調を改善するための安定剤としての効果をもたない。即ち、本発明によれば、ピロリン酸カルシウムのようなリン酸塩の粒子にチタン酸を被覆することによって、触媒粒子の内部からチタン酸の酸触媒作用を適度に抑制する結果、すぐれた色調を有するポリエステルを得ることができるとみられる。
【0160】
比較例4は、従来の代表的な重縮合触媒である三酸化アンチモンを用いた場合である。一般に、三酸化アンチモンを重縮合触媒として用いて得られたポリエステル樹脂は、b* 値が低く、黄色への着色が少なく、すぐれた色調を有することが知られている。
【0161】
ここに、本発明に従って、チタン酸からなる被覆層を表面に有するリン酸塩の粒子を重縮合触媒として用いる場合には、実施例1〜9及び12〜20において得られたポリエステルは、そのb* 値から明らかなように、重縮合反応時にリン系安定剤を重縮合反応系に添加しなくても、黄色への着色は、三酸化アンチモンを重縮合触媒として得られたポリエステルと同等若しくはそれ以下であって、黄色への着色が少なく、また、L* 値も、三酸化アンチモンを重縮合触媒として得られたポリエステルよりも大きく、明度にすぐれており、かくして、色調にすぐれた溶融重縮合ポリエステル樹脂を得ることができる。
【0162】
更に、本発明に従って得られる本発明による重縮合触媒を含むポリエステルは、固相重縮合ポリエステルについて示すように、三酸化アンチモンを含むポリエステルよりも昇温時の結晶化温度が高い。一般に、結晶化温度が高いポリエステルは結晶化速度が遅い。かくして、本発明に従って得られるポリエステルは、三酸化アンチモンを含むポリエステルに比較して、周囲環境において透明性をより長期間にわたって維持することができる。
【要約】
本発明によれば、ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体とグリコールとのエステル化反応又はエステル交換反応によるポリエステル製造用触媒であって、リン酸塩100重量部に対して、TiO換算で0.1〜100重量部のチタン酸からなる被覆層を表面に有する水不溶性乃至水難溶性のリン酸塩の粒子からなる重縮合触媒が提供される。