【実施例】
【0062】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
【0063】
以下の実施例及び比較例において、ppmは重量基準による。得られたポリエステルの固有粘度は(株)柴山科学器械製作所製の自動固有粘度測定装置SS−600−L1によって測定し、得られたポリエステルの色調は日本電色工業(株)製の同時測光方式分光式色差計SQ−2000を用いて測定した。
【0064】
また、得られた固相重縮合ポリエステルの昇温時の結晶化温度は、高感度示差走査熱量計((株)リガク製 Thermo plus EVO II DSC8230 SmartLoader)を用いて測定した。即ち、ポリエステルを測定用パンにセットし、窒素雰囲気下、昇温速度10℃/分で270℃まで昇温した。その温度で10分間保持した後、10℃/分の降温速度で25℃まで降温させた。そして、昇温時の発熱ピークのピークトップの温度を結晶化温度とした。
【0065】
本発明においては、得られたポリエステルの色調を評価するために、国際照明委員会(CIE)が1974年に定めたL*a*b* 表色系を採用した。ここに、上記L*a*b* 表色系において、L* 値は明度を表し、a* 値とb* 値は色度、即ち、色調と彩度を表す。L* 値は、値が大きい程、明るいことを示し、値が小さい程、暗いことを示す。白色のL* 値は100であり、黒色のL* 値は0である。a* 値が負の値であるときは緑色を示し、正の値であるときは赤色を示す。b* 値が負の値であるときは青色を示し、正の値であるときは黄色を示す。
【0066】
実施例1
(重縮合触媒Aの調製)
四塩化チタン水溶液( TiO
2換算で50.0g/L)0.002Lと水酸化ナトリウム水溶液(NaOH換算で87.2g/L)0.002Lを調製した。市販のピロリン酸カルシウムを水スラリー(100g/L)1Lとし、これを5L容量の反応器に仕込んだ後、上記ピロリン酸カルシウムの水スラリーにそのpHが7.0になるように上記四塩化チタン水溶液と水酸化ナトリウム水溶液とを同時に0.003時間かけて滴下した。
【0067】
滴下終了後、1時間熟成して、ピロリン酸カルシウム粒子の表面にチタン酸からなる被覆層を形成した。このようにして得られた表面にチタン酸からなる被覆層を有するピロリン酸カルシウム粒子の水スラリーを濾過し、水洗、乾燥して、固形物を得、これを解砕して、本発明による重縮合触媒Aを得た。この重縮合触媒におけるチタン酸被覆の割合はピロリン酸カルシウム100重量部に対してTiO
2換算で0.1重量部であった。
【0068】
(ポリエステルa−1の製造)
市販のテレフタル酸433gとエチレングリコール191gを重縮合反応槽に仕込み、窒素ガス雰囲気下で攪拌してスラリーとし、また、重縮合触媒Aを予め、エチレングリコールに分散させてスラリーとした。上記重縮合触媒を含むスラリーを上記重縮合触媒が上記重縮合反応槽で生成するポリエステルに対してチタン原子換算で6.5ppmとなるように添加した。反応槽の温度は260℃に保ち、圧力は窒素ガスにより2.5kgf/cm
2から徐々に常圧まで降下させながら、3.5時間かけてエステル化反応を行った。
【0069】
エステル化反応終了後、1時間かけて反応槽の温度を260℃から280℃まで昇温し、反応槽の圧力を常圧から1mmHgまで減圧した。その後、温度と圧力を維持しながら溶融重縮合反応を行った。攪拌機のトルクが所定の値になった時点で溶融重縮合反応を終了し、反応槽内を窒素ガスで常圧に戻し、得られたポリエステルを反応槽の底部の抜出し口からストランド状に吐出させ、冷却し、切断して、ポリエステルのペレットを得た。このようにして得られた溶融重縮合ポリエステルa−1の固有粘度と色調を表1に示す。
【0070】
(ポリエステルa−2の製造)
ポリエステルa−1のペレット20gを固相重縮合反応管に仕込み、窒素ガス流通下で反応管内の温度を160℃に保ち、4時間、乾燥を行った。更に昇温して、反応管の温度を190℃に保ち、1時間、結晶化を行った。
【0071】
その後、昇温して、反応管の温度を200℃に保ち、18時間、固相重縮合反応を行った。重縮合反応終了後、冷却し、ポリエステルのペレットを得た。このようにして得られた固相重縮合ポリエステルa−2の固有粘度と色調を表1に示す。
【0072】
実施例2
(重縮合触媒Bの調製)
四塩化チタン水溶液(TiO
2換算で50.0g/L)0.02Lと水酸化ナトリウム水溶液(NaOH換算で87.2g/L)0.02Lを調製した。市販のピロリン酸カルシウムを水スラリー(100g/L)1Lとし、これを5L容量の反応器に仕込んだ後、上記ピロリン酸カルシウムの水スラリーにそのpHが7.0になるように上記四塩化チタン水溶液と水酸化ナトリウム水溶液とを同時に0.03時間かけて滴下した。
【0073】
滴下終了後、1時間熟成して、ピロリン酸カルシウム粒子の表面にチタン酸からなる被覆層を形成した。このようにして得られた表面にチタン酸からなる被覆層を有するピロリン酸カルシウム粒子の水スラリーを濾過し、水洗、乾燥して、固形物を得、これを解砕して、本発明による重縮合触媒Bを得た。この重縮合触媒におけるチタン酸被覆の割合はピロリン酸カルシウム100重量部に対してTiO
2換算で1重量部であった。
【0074】
(ポリエステルb−1の製造)
上記重縮合触媒Bを用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリエステルを得た。このようにして得られた溶融重縮合ポリエステルb−1の固有粘度と色調を表1に示す。
【0075】
(ポリエステルb−2の製造)
ポリエステルb−1を用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリエステルを得た。このようにして得られた固相重縮合ポリエステルb−2の固有粘度と色調と結晶化温度を表1に示す。
【0076】
実施例3
(重縮合触媒Cの調製)
四塩化チタン水溶液(TiO
2換算で50.0g/L)0.2Lと水酸化ナトリウム水溶液(NaOH換算で87.2g/L)0.2Lを調製した。市販のピロリン酸カルシウムを水スラリー(100g/L)1Lとし、これを5L容量の反応器に仕込んだ後、上記ピロリン酸カルシウムの水スラリーにそのpHが7.0になるように上記四塩化チタン水溶液と水酸化ナトリウム水溶液とを同時に0.3時間かけて滴下した。
【0077】
滴下終了後、1時間熟成して、ピロリン酸カルシウム粒子の表面にチタン酸からなる被覆層を形成した。このようにして得られた表面にチタン酸からなる被覆層を有するピロリン酸カルシウム粒子の水スラリーを濾過し、水洗、乾燥して、固形物を得、これを解砕して、本発明による重縮合触媒Cを得た。この重縮合触媒におけるチタン酸被覆の割合はピロリン酸カルシウム100重量部に対してTiO
2換算で10重量部であった。
【0078】
(ポリエステルc−1の製造)
上記重縮合触媒Cを用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリエステルを得た。このようにして得られた溶融重縮合ポリエステルc−1の固有粘度と色調を表1に示す。
【0079】
(ポリエステルc−2の製造)
ポリエステルc−1を用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリエステルを得た。このようにして得られた固相重縮合ポリエステルc−2の固有粘度と色調を表1に示す。
【0080】
実施例4
(重縮合触媒Dの調製)
四塩化チタン水溶液(TiO
2換算で50.0g/L)0.4Lと水酸化ナトリウム水溶液(NaOH換算で87.2g/L)0.4Lを調製した。市販のピロリン酸カルシウムを水スラリー(100g/L)1Lとし、これを5L容量の反応器に仕込んだ後、このピロリン酸カルシウムの水スラリーにそのpHが7.0になるように上記四塩化チタン水溶液と水酸化ナトリウム水溶液とを同時に0.51時間かけて滴下した。
【0081】
滴下終了後、1時間熟成して、ピロリン酸カルシウム粒子の表面にチタン酸からなる被覆層を形成した。このようにして得られた表面にチタン酸からなる被覆層を有するピロリン酸カルシウム粒子の水スラリーを濾過し、水洗、乾燥して、固形物を得、これを解砕して、本発明による重縮合触媒Dを得た。この重縮合触媒におけるチタン酸被覆の割合は、ピロリン酸カルシウム100重量部に対してTiO
2換算で20重量部であった。
【0082】
(ポリエステルd−1の製造)
上記重縮合触媒Dを用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリエステルを得た。このようにして得られた溶融重縮合ポリエステルd−1の固有粘度と色調を表1に示す。
【0083】
(ポリエステルd−2の製造)
ポリエステルd−1を用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリエステルを得た。このようにして得られた固相重縮合ポリエステルd−2の固有粘度と色調と結晶化温度を表1に示す。
【0084】
実施例5
(重縮合触媒Eの調製)
四塩化チタン水溶液(TiO
2換算で50.0g/L)1Lと水酸化ナトリウム水溶液(NaOH換算で87.2g/L)1Lを調製した。市販のピロリン酸カルシウムを水スラリー(100g/L)1Lとし、これを5L容量の反応器に仕込んだ後、上記ピロリン酸カルシウムの水スラリーにそのpHが7.0になるように上記四塩化チタン水溶液と水酸化ナトリウム水溶液とを同時に1.28時間かけて滴下した。
【0085】
滴下終了後、1時間熟成して、ピロリン酸カルシウム粒子の表面にチタン酸からなる被覆層を形成した。このようにして得られた表面にチタン酸からなる被覆層を有するピロリン酸カルシウム粒子の水スラリーを濾過し、水洗、乾燥して、固形物を得、これを解砕して、本発明による重縮合触媒Eを得た。この重縮合触媒におけるチタン酸被覆の割合は、ピロリン酸カルシウム100重量部に対してTiO
2換算で50重量部であった。
【0086】
(ポリエステルe−1の製造)
上記重縮合触媒Eを用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリエステルを得た。このようにして得られた溶融重縮合ポリエステルe−1の固有粘度と色調を表1に示す。
【0087】
(ポリエステルe−2の製造)
ポリエステルe−1を用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリエステルを得た。このようにして得られた固相重縮合ポリエステルe−2の固有粘度と色調と結晶化温度を表1に示す。
【0088】
実施例6
(重縮合触媒Fの調製)
四塩化チタン水溶液(TiO
2換算で50.0g/L)2Lと水酸化ナトリウム水溶液(NaOH換算で87.2g/L)2Lを調製した。市販のピロリン酸カルシウムを水スラリー(100g/L)1Lとし、これを10L容量の反応器に仕込んだ後、このピロリン酸カルシウムの水スラリーにそのpHが7.0になるように上記四塩化チタン水溶液と水酸化ナトリウム水溶液とを同時に2.56時間かけて滴下した。
【0089】
滴下終了後、1時間熟成して、ピロリン酸カルシウム粒子の表面にチタン酸からなる被覆層を形成した。このようにして得られた表面にチタン酸からなる被覆層を有するピロリン酸カルシウム粒子の水スラリーを濾過し、水洗、乾燥して、固形物を得、これを解砕して、本発明による重縮合触媒Fを得た。この重縮合触媒におけるチタン酸被覆の割合は、ピロリン酸カルシウム100重量部に対してTiO
2換算で100重量部であった。
【0090】
(ポリエステルf−1の製造)
上記重縮合触媒Fを用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリエステルを得た。このようにして得られた溶融重縮合ポリエステルf−1の固有粘度と色調を表1に示す。
【0091】
(ポリエステルf−2の製造)
ポリエステルf−1を用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリエステルを得た。このようにして得られた固相重縮合ポリエステルf−2の固有粘度と色調を表1に示す。
【0092】
実施例7
(ポリエステルg−1の製造)
市販のテレフタル酸433gとエチレングリコール191gを重縮合反応槽に仕込み、窒素ガス雰囲気下で攪拌してスラリーとし、また、重縮合触媒Eを予め、エチレングリコールに分散させてスラリーとした。上記重縮合触媒を含むスラリーを上記重縮合触媒が上記重縮合反応槽で生成するポリエステルに対してチタン原子換算で2ppmとなるように添加した。反応槽の温度は260℃に保ち、圧力は窒素ガスにより2.5kgf/cm
2から徐々に常圧まで降下させながら、3.5時間かけてエステル化反応を行った。
【0093】
エステル化反応終了後、1時間かけて反応槽の温度を260℃から280℃まで昇温し、反応槽の圧力を常圧から1mmHgまで減圧した。その後、温度と圧力を維持しながら重縮合反応を行った。攪拌機のトルクが所定の値になった時点で重縮合反応を終了し、反応槽内を窒素ガスで常圧に戻し、得られたポリエステルを反応槽の底部の抜出し口からストランド状に吐出させ、冷却し、切断して、ポリエステルのペレットを得た。このようにして得られた溶融重縮合ポリエステルg−1の固有粘度と色調を表1に示す。
【0094】
(ポリエステルg−2の製造)
ポリエステルg−1を用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリエステルを得た。このようにして得られた固相重縮合ポリエステルg−2の固有粘度と色調と結晶化温度を表1に示す。
【0095】
実施例8
(ポリエステルh−1の製造)
市販のテレフタル酸433gとエチレングリコール191gを重縮合反応槽に仕込み、窒素ガス雰囲気下で攪拌してスラリーとし、また、重縮合触媒Eを予め、エチレングリコールに分散させてスラリーとした。上記重縮合触媒を含むスラリーを上記重縮合触媒が上記重縮合反応槽で生成するポリエステルに対してチタン原子換算で10ppmとなるように添加した。反応槽の温度は260℃に保ち、圧力は窒素ガスにより2.5kgf/cm
2から徐々に常圧まで降下させながら、3.5時間かけてエステル化反応を行った。
【0096】
エステル化反応終了後、1時間かけて反応槽の温度を260℃ から280℃まで昇温し、反応槽の圧力を常圧から1mmHgまで減圧した。その後、温度と圧力を維持しながら溶融重縮合反応を行った。攪拌機のトルクが所定の値になった時点で溶融重縮合反応を終了し、反応槽内を窒素ガスで常圧に戻し、得られたポリエステルを反応槽の底部の抜出し口からストランド状に吐出させ、冷却し、切断して、ポリエステルのペレットを得た。このようにして得られた溶融重縮合ポリエステルh−1の固有粘度と色調を表1に示す。
【0097】
(ポリエステルh−2の製造)
ポリエステルh−1を用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリエステルを得た。このようにして得られた固相重縮合ポリエステルh−2の固有粘度と色調を表1に示す。
【0098】
実施例9
(ポリエステルi−1の製造)
市販のテレフタル酸433gとエチレングリコール191gを重縮合反応槽に仕込み、窒素ガス雰囲気下で攪拌してスラリーとし、また、重縮合触媒Eを予め、エチレングリコールに分散させてスラリーとした。上記重縮合触媒を含むスラリーを上記重縮合触媒が上記重縮合反応槽で生成するポリエステルに対してチタン原子換算で20ppmとなるように添加した。反応槽の温度は260℃に保ち、圧力は窒素ガスにより2.5kgf/cm
2から徐々に常圧まで降下させながら、3.5時間かけてエステル化反応を行った。
【0099】
エステル化反応終了後、1時間かけて反応槽の温度を260℃から280℃まで昇温し、反応槽の圧力を常圧から1mmHgまで減圧した。その後、温度と圧力を維持しながら溶融重縮合反応を行った。攪拌機のトルクが所定の値になった時点で溶融重縮合反応を終了し、反応槽内を窒素ガスで常圧に戻し、得られたポリエステルを反応槽の底部の抜出し口からストランド状に吐出させ、冷却し、切断して、ポリエステルのペレットを得た。このようにして得られた溶融重縮合ポリエステルi−1の固有粘度と色調を表1に示す。
【0100】
(ポリエステルi−2の製造)
ポリエステルi−1を用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリエステルを得た。このようにして得られた固相重縮合ポリエステルi−2の固有粘度と色調と結晶化温度を表1に示す。
【0101】
実施例10
(ポリエステルj−1の製造)
市販のテレフタル酸433gとエチレングリコール191gを重縮合反応槽に仕込み、窒素ガス雰囲気下で攪拌してスラリーとし、また、重縮合触媒Eを予め、エチレングリコールに分散させてスラリーとした。上記重縮合触媒を含むスラリーを上記重縮合触媒が上記重縮合反応槽で生成するポリエステルに対してチタン原子換算で6.5ppmとなるように添加した。反応槽の温度は260℃に保ち、圧力は窒素ガスにより2.5kgf/cm
2から徐々に常圧まで降下させながら、3.5時間かけてエステル化反応を行った。
【0102】
市販の85%リン酸をエチレングリコールで希釈してリン酸のエチレングリコール溶液を調製した。エステル化反応終了後、上記リン酸のエチレングリコール溶液を生成するポリエステルに対してリン原子として5ppm添加した。
【0103】
その5分後から、1時間かけて反応槽の温度を260℃から280℃まで昇温し、反応槽の圧力を常圧から1mmHgまで減圧した。その後、温度と圧力を維持しながら溶融重縮合反応を行った。攪拌機のトルクが所定の値になった時点で溶融重縮合反応を終了し、反応槽内を窒素ガスで常圧に戻し、得られたポリエステルを反応槽の底部の抜出し口からストランド状に吐出させ、冷却し、切断して、ポリエステルのペレットを得た。このようにして得られた溶融重縮合ポリエステルj−1の固有粘度と色調を表1に示す。
【0104】
(ポリエステルj−2の製造)
ポリエステルj−1を用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリエステルを得た。このようにして得られた固相重縮合ポリエステルj−2の固有粘度と色調を表1に示す。
【0105】
実施例11
(ポリエステルk−1の製造)
市販のテレフタル酸433gとエチレングリコール191gを重縮合反応槽に仕込み、窒素ガス雰囲気下で攪拌してスラリーとし、また、重縮合触媒Eを予め、エチレングリコールに分散させてスラリーとした。上記重縮合触媒を含むスラリーを上記重縮合触媒が上記重縮合反応槽で生成するポリエステルに対してチタン原子換算で6.5ppmとなるように添加した。反応槽の温度は260℃に保ち、圧力は窒素ガスにより2.5kgf/cm
2から徐々に常圧まで降下させながら、3.5時間かけてエステル化反応を行った。
【0106】
市販のリン酸トリメチルをエチレングリコールで希釈したリン酸トリメチルのエチレングリコール溶液を調製した。エステル化反応終了後、上記リン酸トリメチルのエチレングリコール溶液を生成するポリエステルに対してリン原子として5ppm添加した。
【0107】
その5分後から、1時間かけて反応槽の温度を260℃から280℃まで昇温し、反応槽の圧力を常圧から1mmHgまで減圧した。その後、温度と圧力を維持しながら溶融重縮合反応を行った。攪拌機のトルクが所定の値になった時点で溶融重縮合反応を終了し、反応槽内を窒素ガスで常圧に戻し、得られたポリエステルを反応槽の底部の抜出し口からストランド状に吐出させ、冷却し、切断して、ポリエステルのペレットを得た。このようにして得られた溶融ポリエステルk−1の固有粘度と色調を表1に示す。
【0108】
(ポリエステルk−2の製造)
ポリエステルk−1を用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリエステルを得た。このようにして得られた固相重縮合ポリエステルk−2の固有粘度と色調を表1に示す。
【0109】
実施例12
(重縮合触媒Gの調製)
四塩化チタン水溶液(TiO
2換算で50.0g/L)1Lと水酸化ナトリウム水溶液(NaOH換算で87.2g/L)1Lを調製した。市販のピロリン酸二水素カルシウムを水スラリー(100g/L)1Lとし、これを5L容量の反応器に仕込んだ後、このピロリン酸二水素カルシウムの水スラリーにそのpHが7.7になるように上記四塩化チタン水溶液と水酸化ナトリウム水溶液とを同時に1.28時間かけて滴下した。
【0110】
滴下終了後、1時間熟成して、ピロリン酸二水素カルシウム粒子の表面にチタン酸からなる被覆層を形成した。このようにして得られた表面にチタン酸からなる被覆層を有するピロリン酸二水素カルシウム粒子の水スラリーを濾過し、水洗、乾燥して、固形物を得、これを解砕して、本発明による重縮合触媒Gを得た。この重縮合触媒におけるチタン酸被覆の割合は、ピロリン酸二水素カルシウム100重量部に対してTiO2換算で50重量部であった。
【0111】
(ポリエステルl−1の製造)
上記重縮合触媒Gを用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリエステルを得た。このようにして得られた溶融重縮合ポリエステルl−1の固有粘度と色調を表1に示す。
【0112】
(ポリエステルl−2の製造)
ポリエステルl−1を用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリエステルを得た。このようにして得られた固相重縮合ポリエステルl−2の固有粘度と色調と結晶化温度を表1に示す。
【0113】
実施例13
(重縮合触媒Hの調製)
四塩化チタン水溶液(TiO
2換算で50.0g/L)1Lと水酸化ナトリウム水溶液(NaOH換算で87.2g/L)1Lを調製した。市販の第三リン酸カルシウムを水スラリー(100g/L)1Lとし、これを5L容量の反応器に仕込んだ後、この第三リン酸カルシウムの水スラリーにそのpHが7.0になるように上記四塩化チタン水溶液と水酸化ナトリウム水溶液とを同時に1.28時間かけて滴下した。
【0114】
滴下終了後、1時間熟成して、第三リン酸カルシウム粒子の表面にチタン酸からなる被覆層を形成した。このようにして得られた表面にチタン酸からなる被覆層を有する第三リン酸カルシウム粒子の水スラリーを濾過し、水洗、乾燥して、固形物を得、これを解砕して、本発明による重縮合触媒Hを得た。この重縮合触媒におけるチタン酸被覆の割合は第三リン酸カルシウム100重量部に対してTiO
2換算で50重量部であった。
【0115】
(ポリエステルm−1の製造)
上記重縮合触媒Hを用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリエステルを得た。このようにして得られた溶融重縮合ポリエステルm−1の固有粘度と色調を表2に示す。
【0116】
(ポリエステルm−2の製造)
ポリエステルm−1を用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリエステルを得た。このようにして得られた固相重縮合ポリエステルm−2の固有粘度と色調と結晶化温度を表2に示す。
【0117】
実施例14
(重縮合触媒Iの調製)
四塩化チタン水溶液(TiO
2換算で50.0g/L)1Lと水酸化ナトリウム水溶液(NaOH換算で87.2g/L)1Lを調製した。市販の第二リン酸カルシウムを水スラリー(100g/L)1Lとし、5L容量の反応器に仕込んだ後、この第二リン酸カルシウムの水スラリーにそのpHが7.0になるように、上記四塩化チタン水溶液と水酸化ナトリウム水溶液とを同時に1.28時間かけて滴下した。
【0118】
滴下終了後、1時間熟成して、第二リン酸カルシウム粒子の表面にチタン酸からなる被覆層を形成した。このようにして得られた表面にチタン酸からなる被覆層を有する第二リン酸カルシウム粒子の水スラリーを濾過し、水洗、乾燥して、固形物を得、これを解砕して、本発明による重縮合触媒Iを得た。この重縮合触媒におけるチタン酸被覆の割合は、第二リン酸カルシウム100重量部に対してTiO
2換算で50重量部であった。
【0119】
(ポリエステルn−1の製造)
上記重縮合触媒Iを用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリエステルを得た。このようにして得られた溶融重縮合ポリエステルn−1の固有粘度と色調を表2に示す。
【0120】
(ポリエステルn−2の製造)
ポリエステルn−1を用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリエステルを得た。このようにして得られた固相重縮合ポリエステルn−2の固有粘度と色調と結晶化温度を表2に示す。
【0121】
実施例15
(重縮合触媒Jの調製)
四塩化チタン水溶液(TiO
2換算で50.0g/L)1Lと水酸化ナトリウム水溶液(NaOH換算で87.2g/L)1Lを調製した。市販のピロリン酸マグネシウムを水スラリー(100g/L)1Lとし、5L容量の反応器に仕込んだ後、このピロリン酸マグネシウムの水スラリーにそのpHが7.0になるように、上記四塩化チタン水溶液と水酸化ナトリウム水溶液とを同時に1.28時間かけて滴下した。
【0122】
滴下終了後、1時間熟成して、ピロリン酸マグネシウム粒子の表面にチタン酸からなる被覆層を形成した。このようにして得られた表面にチタン酸からなる被覆層を有するピロリン酸マグネシウム粒子の水スラリーを濾過し、水洗、乾燥して、固形物を得、これを解砕して、本発明による重縮合触媒Jを得た。この重縮合触媒におけるチタン酸被覆の割合は、ピロリン酸マグネシウム100重量部に対してTiO
2換算で50重量部であった。
【0123】
(ポリエステルo−1の製造)
上記重縮合触媒Jを用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリエステルを得た。このようにして得られた溶融重縮合ポリエステルo−1の固有粘度と色調を表2に示す。
【0124】
(ポリエステルo−2の製造)
ポリエステルo−1を用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリエステルを得た。このようにして得られた固相重縮合ポリエステルo−2の固有粘度と色調と結晶化温度を表2に示す。
【0125】
実施例16
(重縮合触媒Kの調製)
四塩化チタン水溶液(TiO
2換算で50.0g/L)0.4Lと水酸化ナトリウム水溶液(NaOH換算で87.2g/L)0.4Lを調製した。市販の第三リン酸マグネシウムを水スラリー(100g/L)1Lとし、これを5L容量の反応器に仕込んだ後、この第三リン酸マグネシウムの水スラリーにそのpHが7.0になるように上記四塩化チタン水溶液と水酸化ナトリウム水溶液とを同時に0.51時間かけて滴下した。
【0126】
滴下終了後、1時間熟成して、第三リン酸マグネシウム粒子の表面にチタン酸からなる被覆層を形成した。このようにして得られた表面にチタン酸からなる被覆層を有する第三リン酸マグネシウム粒子の水スラリーを濾過し、水洗、乾燥して、固形物を得、これを解砕して、本発明による重縮合触媒Kを得た。この重縮合触媒におけるチタン酸被覆の割合は第三リン酸マグネシウム100重量部に対してTiO
2換算で20重量部であった。
【0127】
(ポリエステルp−1の製造)
上記重縮合触媒Kを用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリエステルを得た。このようにして得られた溶融重縮合ポリエステルp−1の固有粘度と色調を表2に示す。
【0128】
(ポリエステルp−2の製造)
ポリエステルp−1を用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリエステルを得た。このようにして得られた固相重縮合ポリエステルp−2の固有粘度と色調と結晶化温度を表2に示す。
【0129】
実施例17
(重縮合触媒Lの調製)
四塩化チタン水溶液(TiO
2換算で50.0g/L)1Lと水酸化ナトリウム水溶液(NaOH換算で87.2g/L)1Lを調製した。市販の第三リン酸マグネシウムを水スラリー(100g/L)1Lとし、これを5L容量の反応器に仕込んだ後、この第三リン酸マグネシウムの水スラリーにそのpHが7.0になるように上記四塩化チタン水溶液と水酸化ナトリウム水溶液とを同時に1.28時間かけて滴下した。
【0130】
滴下終了後、1時間熟成して、第三リン酸マグネシウム粒子の表面にチタン酸からなる被覆層を形成した。このようにして得られた表面にチタン酸からなる被覆層を有する第三リン酸マグネシウム粒子の水スラリーを濾過し、水洗、乾燥して、固形物を得、これを解砕して、本発明による重縮合触媒Lを得た。この重縮合触媒におけるチタン酸被覆の割合は第三リン酸マグネシウム100重量部に対してTiO
2換算で50重量部であった。
【0131】
(ポリエステルq−1の製造)
上記重縮合触媒Lを用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリエステルを得た。このようにして得られた溶融重縮合ポリエステルq−1の固有粘度と色調を表2に示す。
【0132】
(ポリエステルq−2の製造)
ポリエステルq−1を用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリエステルを得た。このようにして得られた固相重縮合ポリエステルq−2の固有粘度と色調と結晶化温度を表2に示す。
【0133】
実施例18
(ポリエステルr−1の製造)
上記重縮合触媒Lを用いた以外は、実施例7と同様にして、ポリエステルを得た。このようにして得られた溶融重縮合ポリエステルr−1の固有粘度と色調を表2に示す。
【0134】
(ポリエステルr−2の製造)
ポリエステルr−1を用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリエステルを得た。このようにして得られた固相重縮合ポリエステルr−2の固有粘度および色調を表2に示す。
【0135】
実施例19
(ポリエステルs−1の製造)
上記重縮合触媒Lを用いた以外は、実施例8と同様にして、ポリエステルを得た。このようにして得られた溶融重縮合ポリエステルs−1の固有粘度と色調を表2に示す。
【0136】
(ポリエステルs−2の製造)
ポリエステルs−1を用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリエステルを得た。このようにして得られた固相重縮合ポリエステルs−2の固有粘度と色調を表2に示す。
【0137】
実施例20
(重縮合触媒Mの調製)
四塩化チタン水溶液(TiO
2換算で50.0g/L)1Lと水酸化ナトリウム水溶液(NaOH換算で87.2g/L)1Lを調製した。市販のメタリン酸マグネシウムを水スラリー(100g/L)1Lとし、これを5L容量の反応器に仕込んだ後、このメタリン酸マグネシウムの水スラリーにそのpHが7.0になるように上記四塩化チタン水溶液と水酸化ナトリウム水溶液とを同時に1.28時間かけて滴下した。
【0138】
滴下終了後、1時間熟成して、メタリン酸マグネシウム粒子の表面にチタン酸からなる被覆層を形成した。このようにして得られた表面にチタン酸からなる被覆層を有するメタリン酸マグネシウム粒子の水スラリーを濾過し、水洗、乾燥して、固形物を得、これを解砕して、本発明による重縮合触媒Mを得た。この重縮合触媒におけるチタン酸被覆の割合はメタリン酸マグネシウム100重量部に対してTiO
2換算で50重量部であった。
【0139】
(ポリエステルt−1の製造)
上記重縮合触媒Mを用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリエステルを得た。このようにして得られた溶融重縮合ポリエステルt−1の固有粘度と色調を表2に示す。
【0140】
(ポリエステルt−2の製造)
ポリエステルt−1を用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリエステルを得た。このようにして得られた固相重縮合ポリエステルt−2の固有粘度と色調と結晶化温度を表2に示す。
【0141】
比較例1
(重縮合触媒Nの調製)
四塩化チタン水溶液(TiO
2換算で50.0g/L)1Lと水酸化ナトリウム水溶液(NaOH換算で87.2g/L)1Lを調製した。市販のハイドロタルサイトを水スラリー(100g/L)1Lとし、5L容量の反応器に仕込んだ後、このハイドロタルサイトの水スラリーにそのpHが7.0になるように上記四塩化チタン水溶液と水酸化ナトリウム水溶液とを同時に1.28時間かけて滴下した。
【0142】
滴下終了後、1時間熟成して、ハイドロタルサイト粒子の表面にチタン酸からなる被覆層を形成した。このようにして得られた表面にチタン酸からなる被覆層を有するハイドロタルサイト粒子の水スラリーを濾過し、水洗、乾燥して、固形物を得、これを解砕して、比較例としての重縮合触媒Nを得た。この重縮合触媒におけるチタン酸被覆の割合はハイドロタルサイト100重量部に対してTiO
2換算で50重量部であった。
【0143】
(ポリエステルu−1の製造)
上記重縮合触媒Nを用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリエステルを得た。このようにして得られた溶融重縮合ポリエステルu−1の固有粘度と色調を表2に示す。
【0144】
(ポリエステルu−2の製造)
ポリエステルu−1を用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリエステルを得た。このようにして得られた固相重縮合ポリエステルu−2の固有粘度と色調を表2に示す。
【0145】
比較例2
(ポリエステルv−1の製造)
上記重縮合触媒Nを用いた以外は、実施例10と同様にして、ポリエステルを得た。このようにして得られた溶融重縮合ポリエステルv−1の固有粘度と色調を表2に示す。
【0146】
(ポリエステルv−2の製造)
ポリエステルv−1を用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリエステルを得た。このようにして得られた固相重縮合ポリエステルv−2の固有粘度と色調を表2に示す。
【0147】
比較例3
(ポリエステルw−1の製造)
市販のテレフタル酸433gとエチレングリコール191gを重縮合反応槽に仕込み、窒素ガス雰囲気下で攪拌してスラリーとし、また、重縮合触媒Nを予め、エチレングリコールに分散させてスラリーとした。上記重縮合触媒を含むスラリーを上記重縮合触媒が上記重縮合反応槽で生成するポリエステルに対してチタン原子換算で6.5ppmとなるように添加した。
【0148】
市販のピロリン酸カルシウムをエチレングリコールに分散させてスラリーとした。エステル化反応終了後、上記ピロリン酸カルシウムのスラリーを生成するポリエステルに対してリン原子として5ppm添加した。
【0149】
その5分後から、1時間かけて反応槽の温度を260℃から280℃まで昇温し、反応槽の圧力を常圧から1mmHgまで減圧した。その後、温度と圧力を維持しながら溶融重縮合反応を行った。攪拌機のトルクが所定の値になった時点で溶融重縮合反応を終了し、反応槽内を窒素ガスで常圧に戻し、得られたポリエステルを反応槽の底部の抜出し口からストランド状に吐出させ、冷却し、切断して、ポリエステルのペレットを得た。このようにして得られた溶融重縮合ポリエステルw−1の固有粘度と色調を表2に示す。
【0150】
(ポリエステルw−2の製造)
ポリエステルw−1を用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリエステルを得た。このようにして得られた固相重縮合ポリエステルw−2の固有粘度と色調を表2に示す。
【0151】
比較例4
(ポリエステルx−1の製造)
三酸化二アンチモンをエチレングリコール中に加熱溶解させたグリコール溶液を調製した。生成するポリエステルに対してアンチモン原子として217ppmとなるように上記溶液を添加した以外は、実施例1と同様にしてポリエステルを得た。このようにして得られた溶融重縮合ポリエステルx−1の固有粘度と色調を表2に示す。
【0152】
(ポリエステルx−2の製造)
ポリエステルx−1を用いた以外は、実施例1と同様にして、ポリエステルを得た。このようにして得られた固相重縮合ポリエステルx−2の固有粘度と色調と結晶化温度を表2に示す。
【0153】
表1及び表2において、リン酸塩aはピロリン酸カルシウム(不溶)、bはピロリン酸二水素カルシウム(1.80g)、cは第三リン酸カルシウム(0.0025g)、dは第二リン酸カルシウム(0.02g)、eはピロリン酸マグネシウム(不溶)、fは第三リン酸マグネシウム(0.02g)、gはメタリン酸マグネシウム(不溶)、hはハイドロタルサイトを示す。上記において、リン酸塩が水に不溶性であるときは、括弧内に「不溶」と記載し、水に難溶性であるときは、括弧内に25℃の水に対する溶解度を記載した。
【0154】
【表1】
【0155】
【表2】
【0156】
表1及び表2に示す結果から明らかなように、本発明に従って、チタン酸からなる被覆層を表面に有する水不溶性乃至水難溶性のリン酸塩の粒子を重縮合触媒として用いた実施例1〜9及び12〜20においては、重縮合反応時にリン系安定剤を重縮合反応系に添加しなくても、L*a*b* 表色系におけるb* 値が低く、黄色への着色が少ない溶融重縮合ポリエステル樹脂を得ることができる。また、本発明に従って、チタン酸からなる被覆層を表面に有するリン酸塩の粒子を重縮合触媒として用い、重縮合反応時にリン系安定剤を重縮合反応系に添加した実施例10及び11においては、更にb* 値が低くなり、黄色への着色がより少ない溶融重縮合ポリエステル樹脂を得ることができる。
【0157】
これに対して、チタン酸からなる被覆層を表面に有するハイドロタルサイトの粒子を重縮合触媒として用い、重縮合反応時にリン系安定剤を重縮合反応系に添加しない比較例1においては、実施例1〜20に比べて、b* 値が高く、黄色への着色が強められている。
【0158】
また、比較例2に示すように、チタン酸からなる被覆層を表面に有するハイドロタルサイトの粒子を重縮合触媒として用いる場合に、実施例1〜9及び12〜20と同等の色調のポリエステルを得るには、リン系安定剤を重縮合系に添加する必要がある。
【0159】
比較例3は、チタン酸からなる被覆層を表面に有するハイドロタルサイトの粒子を重縮合触媒として用いて、重縮合反応時に本発明による重縮合触媒の担体であるピロリン酸カルシウムを重縮合反応系に添加して得たポリエステルである。得られたポリエステルのb* 値から明らかなように、ピロリン酸カルシウム自体は、ポリエステルの色調を改善するための安定剤としての効果をもたない。即ち、本発明によれば、ピロリン酸カルシウムのようなリン酸塩の粒子にチタン酸を被覆することによって、触媒粒子の内部からチタン酸の酸触媒作用を適度に抑制する結果、すぐれた色調を有するポリエステルを得ることができるとみられる。
【0160】
比較例4は、従来の代表的な重縮合触媒である三酸化アンチモンを用いた場合である。一般に、三酸化アンチモンを重縮合触媒として用いて得られたポリエステル樹脂は、b* 値が低く、黄色への着色が少なく、すぐれた色調を有することが知られている。
【0161】
ここに、本発明に従って、チタン酸からなる被覆層を表面に有するリン酸塩の粒子を重縮合触媒として用いる場合には、実施例1〜9及び12〜20において得られたポリエステルは、そのb* 値から明らかなように、重縮合反応時にリン系安定剤を重縮合反応系に添加しなくても、黄色への着色は、三酸化アンチモンを重縮合触媒として得られたポリエステルと同等若しくはそれ以下であって、黄色への着色が少なく、また、L* 値も、三酸化アンチモンを重縮合触媒として得られたポリエステルよりも大きく、明度にすぐれており、かくして、色調にすぐれた溶融重縮合ポリエステル樹脂を得ることができる。
【0162】
更に、本発明に従って得られる本発明による重縮合触媒を含むポリエステルは、固相重縮合ポリエステルについて示すように、三酸化アンチモンを含むポリエステルよりも昇温時の結晶化温度が高い。一般に、結晶化温度が高いポリエステルは結晶化速度が遅い。かくして、本発明に従って得られるポリエステルは、三酸化アンチモンを含むポリエステルに比較して、周囲環境において透明性をより長期間にわたって維持することができる。