特許第6536911号(P6536911)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6536911CD44遺伝子のバリアントエクソンのスキッピングを誘導し、正常型CD44mRNAの発現を増加させる核酸医薬
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6536911
(24)【登録日】2019年6月14日
(45)【発行日】2019年7月3日
(54)【発明の名称】CD44遺伝子のバリアントエクソンのスキッピングを誘導し、正常型CD44mRNAの発現を増加させる核酸医薬
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/7088 20060101AFI20190625BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20190625BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20190625BHJP
   A61K 31/7125 20060101ALI20190625BHJP
   A61K 31/712 20060101ALI20190625BHJP
   C12N 15/113 20100101ALI20190625BHJP
   C12N 5/095 20100101ALN20190625BHJP
【FI】
   A61K31/7088ZNA
   A61K48/00
   A61P35/00
   A61K31/7125
   A61K31/712
   C12N15/113 140
   !C12N5/095
【請求項の数】8
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2016-521060(P2016-521060)
(86)(22)【出願日】2015年5月13日
(86)【国際出願番号】JP2015063810
(87)【国際公開番号】WO2015178277
(87)【国際公開日】20151126
【審査請求日】2018年2月9日
(31)【優先権主張番号】特願2014-103674(P2014-103674)
(32)【優先日】2014年5月19日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】598041795
【氏名又は名称】神戸天然物化学株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507307374
【氏名又は名称】学校法人神戸学院
(74)【代理人】
【識別番号】100098121
【弁理士】
【氏名又は名称】間山 世津子
(74)【代理人】
【識別番号】100107870
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 健一
(72)【発明者】
【氏名】松尾 雅文
(72)【発明者】
【氏名】松田 誠司
【審査官】 六笠 紀子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−054250(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/100190(WO,A1)
【文献】 国際公開第2008/029619(WO,A1)
【文献】 国際公開第2006/059507(WO,A1)
【文献】 Cancer Cell,2011年,19(3),p.387-400
【文献】 日本薬学会年会要旨集,2015年 3月,135th,p.ROMBUNNO.28PB-am115
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/33−33/44
WPI
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
CD44遺伝子のバリアントエクソンのスキッピングを誘導し、正常型CD44mRNAの発現を増加させることができる20〜23の塩基長のアンチセンスオリゴヌクレオチド、その医薬的に許容できる塩又は溶媒和物を含む、がん治療薬であって、
前記アンチセンスオリゴヌクレオチドの塩基配列は、CD44遺伝子のバリアントエクソン8、9又は10の塩基配列の一部に相補的な塩基配列であり、かつ配列番号7、13、15又は16の塩基配列の全部を含む前記がん治療薬。
【請求項2】
がん細胞の抗がん剤及び/又は放射線感受性を増強する請求項1記載のがん治療薬。
【請求項3】
アンチセンスオリゴヌクレオチドが少なくとも1つの修飾ヌクレオチドを含む請求項1又は2に記載のがん治療薬。
【請求項4】
修飾ヌクレオチドを構成するD-リボフラノースが2'-O,4'-C-アルキレン化されている請求項3記載のがん治療薬。
【請求項5】
CD44遺伝子のバリアントエクソンのスキッピングを誘導し、正常型CD44mRNAの発現を増加させることができる、20〜23の塩基長のオリゴヌクレオチド、その医薬的に許容できる塩又は溶媒和物であって、
前記オリゴヌクレオチドの塩基配列は、CD44遺伝子のバリアントエクソン8、9又は10の塩基配列の一部に相補的な塩基配列であり、かつ配列番号1〜19のいずれかの塩基配列の全部を含む前記オリゴヌクレオチド、その医薬的に許容できる塩又は溶媒和物。
【請求項6】
少なくとも1つの修飾ヌクレオチドを含む請求項5記載のオリゴヌクレオチド、その医薬的に許容できる塩又は溶媒和物。
【請求項7】
修飾ヌクレオチドを構成するD-リボフラノースが2'-O,4'-C-アルキレン化されている請求項6記載のオリゴヌクレオチド、その医薬的に許容できる塩又は溶媒和物。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれかに記載のオリゴヌクレオチド、その医薬的に許容できる塩又は溶媒和物を含み、CD44遺伝子のバリアント8、9及び10からなる群より選択される少なくとも1つのバリアントエクソンのスキッピングを誘導するための薬剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CD44遺伝子のバリアントエクソンのスキッピングを誘導し、正常型CD44mRNAの発現を増加させる核酸医薬に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、がん治療・研究においてがん幹細胞が注目されつつあり、このがん幹細胞は治療抵抗性や再発、転移を引き起こす原因とも言われている。
【0003】
がん幹細胞にて細胞膜に発現し、ヒアルロン酸をリガンドとする接着分子CD44はがん幹細胞マーカーであり、がん幹細胞としての特性に関与している。
【0004】
CD44遺伝子は20個のエクソンを含み、選択的スプライシングにより様々なバリアントアイソフォームを産生する(図1)。CD44バリアントmRNAから産生されるCD44バリアントアイソフォーム(特に、バリアント8,9,10を含んだCD44v8-10)が細胞膜においてシスチンのトランスポーターであるxCTに結合し、シスチンの取り込みを促進して、細胞内グルタチオン(抗酸化物質)濃度をあげることにより、抗がん剤や放射線の酸化ストレスへの抵抗性を高めていると考えられている(図2)。このバリアントエクソンの挿入は、ゲノム配列の異常により生じるのではなく、がん幹細胞に特異な何らかのスプライシング制御因子の異常により生じている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Cancer Cell 19, 387-400, March 15, 2011
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、がん幹細胞のCD44遺伝子のmRNA中へのバリアントエクソンの挿入を阻害することにより、がん幹細胞の特性を消失させ、抗がん剤や放射線感受性の細胞とすることで、がんを治療することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意努力した結果、遺伝子異常によりCD44遺伝子にバリアントエクソンが挿入され、異常型CD44を産生することにより幹細胞化しているがん幹細胞において、異常型CD44をコードするCD44v mRNAの産生を、バリアントエクソンのエクソンスキッピングにより、正常型CD44mRNAの産生へと導くことに成功し、本発明を完成するに至った。エクソン配列に相補的なアンチセンスオリゴヌクレオチド(AO)は、その配列に結合しmRNA前駆体に核タンパクが結合するのを阻害する。そのことにより、スプライシング制御様式を阻害し、任意のエクソンをスキッピング誘導する。CD44遺伝子のバリアントmRNAは、がん幹細胞に特異なスプライシング制御因子の異常により生じている。そのスプライシング制御様式をAOにより阻害する事により、エクソンのスキッピングを誘導するものである。そして正常型CD44の産生を促す。
【0008】
本発明の要旨は、以下の通りである。
(1)CD44遺伝子のバリアントエクソンのスキッピングを誘導し、正常型CD44mRNAの発現を増加させることができるアンチセンスオリゴヌクレオチド、その医薬的に許容できる塩、溶媒和物又はプロドラッグを含む、がん治療薬。
(2)がん細胞の抗がん剤及び/又は放射線感受性を増強する(1)記載のがん治療薬。
(3)スキッピングの対象となるバリアントエクソンが、バリアント8、9及び10からなる群より選択される少なくとも1つである(1)又は(2)記載のがん治療薬。
(4)アンチセンスオリゴヌクレオチドが、CD44遺伝子のバリアントエクソン8、9又は10の塩基配列の一部又は全部に相補的な塩基配列を有するオリゴヌクレオチドである(3)記載のがん治療薬。
(5)CD44遺伝子のバリアントエクソン8、9又は10の塩基配列の一部又は全部に相補的な塩基配列を有するオリゴヌクレオチドが、配列番号1〜19のいずれかの塩基配列の全部又は一部を有し、20〜23の塩基長のオリゴヌクレオチドである(4)記載のがん治療薬。
(6)アンチセンスオリゴヌクレオチドが少なくとも1つの修飾ヌクレオチドを含む(1)〜(5)のいずれかに記載のがん治療薬。
(7)修飾ヌクレオチドを構成するD-リボフラノースが2'-O,4'-C-アルキレン化されている(6)記載のがん治療薬。
(8)配列番号1〜19のいずれかの塩基配列の全部又は一部を有する、20〜23の塩基長のオリゴヌクレオチド、その医薬的に許容できる塩、溶媒和物又はプロドラッグ。
(9)少なくとも1つの修飾ヌクレオチドを含む(8)記載のオリゴヌクレオチド、その医薬的に許容できる塩、溶媒和物又はプロドラッグ。
(10)修飾ヌクレオチドを構成するD-リボフラノースが2'-O,4'-C-アルキレン化されている(9)記載のオリゴヌクレオチド、その医薬的に許容できる塩、溶媒和物又はプロドラッグ。
(11)CD44遺伝子のバリアントエクソンを標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドである(8)〜(10)のいずれかに記載のオリゴヌクレオチド、その医薬的に許容できる塩、溶媒和物又はプロドラッグ。
(12)(8)〜(11)のいずれかに記載のオリゴヌクレオチド、その医薬的に許容できる塩、溶媒和物又はプロドラッグを含み、CD44遺伝子のバリアント8、9及び10からなる群より選択される少なくとも1つのバリアントエクソンのスキッピングを誘導するための薬剤。
(13)CD44遺伝子のバリアントエクソンのスキッピングを誘導し、正常型CD44mRNAの発現を増加させることができるアンチセンスオリゴヌクレオチド、その医薬的に許容できる塩、溶媒和物又はプロドラッグを医薬的に有効な量で被験者に投与することを含む、がんの治療方法。
(14)がんの治療のための、CD44遺伝子のバリアントエクソンのスキッピングを誘導し、正常型CD44mRNAの発現を増加させることができるアンチセンスオリゴヌクレオチド、その医薬的に許容できる塩、溶媒和物又はプロドラッグの使用。
(15)がんを治療する方法に使用するための、CD44遺伝子のバリアントエクソンのスキッピングを誘導し、正常型CD44mRNAの発現を増加させることができるアンチセンスオリゴヌクレオチド、その医薬的に許容できる塩、溶媒和物又はプロドラッグ。
【発明の効果】
【0009】
がん幹細胞へのAOの添加により、エクソンスキッピングが誘導され、CD44v mRNAを産生していたがん幹細胞にて、CD44v mRNAが減少し、正常型のCD44mRNAの産生が増加する。正常型CD44タンパクの産生により、抗がん剤や放射線治療への感受性が回復し、がんの完治が期待される。
本明細書は、本願の優先権の基礎である日本国特許出願、特願2014‐103674の明細書および/または図面に記載される内容を包含する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】CD44遺伝子が20個のエクソンを含み、選択的スプライシングにより、CD44バリアントmRNA(CD44v8-10)が産生されることを示す模式図。
図2】がん幹細胞のCD44バリアント耐性メカニズムの模式図。CD44バリアントmRNA(CD44v8-10)から産生されるCD44バリアントアイソフォーム(CD44v8-10)が細胞膜においてシスチンのトランスポーターであるxCTに結合し、シスチンの取り込みを促進して、細胞内グルタチオン(抗酸化物質)濃度をあげることにより、抗がん剤や放射線の酸化ストレスへの抵抗性を高めている。
図3】後述の実施例で合成したCD44v8 mRNAに相補的なAO(AO-#1〜#4、AO-#12〜#14)の配列場所を示す。AO-#1〜#4の塩基配列をそれぞれ配列番号1〜4に示す。CD44v8 mRNAの塩基配列を配列番号20に示す。
図4】後述の実施例で合成したCD44v9 mRNAに相補的なAO(AO-#5〜#10、AO-#15)の配列場所を示す。AO-#5〜#10の塩基配列をそれぞれ配列番号5〜10に示す。CD44v9 mRNAの塩基配列を配列番号21に示す。
図5】後述の実施例で合成したCD44v10 mRNAに相補的なAO(AO-#11、AO-#16〜#19)の配列場所を示す。AO-#11の塩基配列を配列番号11に示す。CD44v10 mRNAの塩基配列を配列番号22に示す。
図6】ENA(登録商標)(2'-O,4'-C-Ethylene-bridged Nucleic Acids)の構造を示す。
図7】KATOIII細胞におけるCD44v8 mRNAの配列に相補的なAO(AO-#1〜#4、AO-#12〜#14)によるエクソンスキッピング誘導効果を示す。
図8】KATOIII細胞におけるCD44v9 mRNAの配列に相補的なAO(AO-#5〜#10、AO-#15)によるエクソンスキッピング誘導効果を示す。
図9】KATOIII細胞におけるCD44v10 mRNAの配列に相補的なAO(AO-#11、AO-#16〜#19)によるエクソンスキッピング誘導効果を示す。
図10】最もエクソンスキッピング誘導効果が高かったAO-#7 (10nM、25nM、50nM、100nM)の結果を示す。
図11】最もエクソンスキッピング誘導効果が高かったAO-#7 (10nM、25nM、50nM、100nM)の結果をグラフ化処理したものを示す。
図12】HT-29細胞におけるCD44v9 mRNAの配列に相補的なAO(AO-#7)によるエクソンスキッピング誘導効果を示す。
図13】CD44v mRNAのエクソンスキッピング誘導効果が最も高かったAO-#7によるCDDP(シスプラチン)治療抵抗性改善によるがん細胞(KATOIII細胞)増殖抑制効果を示す。
図14】CD44v mRNAのエクソンスキッピング誘導効果が最も高かったAO-#7と、CD44v9 mRNAのスキッピングにほとんど影響がなかったAO-#12によるがん細胞(KATOIII細胞)増殖抑制効果の比較を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態についてより詳細に説明する。
【0012】
本発明は、CD44遺伝子のバリアントエクソンのスキッピングを誘導し、正常型CD44mRNAの発現を増加させることができるアンチセンスオリゴヌクレオチド、その医薬的に許容できる塩、溶媒和物又はプロドラッグを含む、がん治療薬を提供する。
【0013】
本発明のがん治療薬が対象とするがんは、CD44遺伝子のバリアントエクソンを発現するものであるとよく、胃がん、大腸がん、乳がん、肺がん、膀胱がん、甲状腺がん、頭頸部扁平上皮がんなどを例示することができるが、このうち、CD44v8、v9及びv10の少なくとも1つのバリアントエクソンを発現しているがんが好ましく、このようながんとして、胃がん、大腸がん、乳がん、肺がん、頭頸部扁平上皮がんなどを例示することができる。
【0014】
本発明のがん治療薬は、がん細胞の抗がん剤及び/又は放射線感受性を増強することができるので、がんの化学療法や放射線療法と併用して、患者に投与されるとよい。
【0015】
本発明の治療薬がスキッピングの対象とするバリアントエクソンは、バリアント8、9及び10からなる群より選択される少なくとも1つであるとよい。
【0016】
本発明のがん治療薬において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、CD44遺伝子のバリアントエクソンを標的とするものであるとよく、例えば、CD44遺伝子のバリアント8〜10のヌクレオチド配列中の連続する20〜23個のヌクレオチドからなる配列に相補的なヌクレオチド配列を含むものであるとよく、すなわち、アンチセンスオリゴヌクレオチドが、CD44遺伝子のバリアントエクソン8、9又は10の塩基配列の一部又は全部に相補的な塩基配列を有するオリゴヌクレオチドであるとよい。CD44遺伝子のバリアントエクソン8、9及び10のmRNAの塩基配列をそれぞれ配列番号20〜22に示す。
【0017】
CD44遺伝子のバリアントエクソン8、9又は10の塩基配列の一部又は全部に相補的な塩基配列を有するオリゴヌクレオチドとしては、配列番号1〜19のいずれかの塩基配列の全部又は一部を有するものを例示することができ、オリゴヌクレオチドの塩基長は、18〜25が適当であり、18〜23が好ましく、20〜23がより好ましい。
【0018】
アンチセンスオリゴヌクレオチドを構成するヌクレオチドは、天然型DNA、天然型RNA、これらの修飾体のいずれであってもよいが、少なくとも1つが修飾ヌクレオチドであることが好ましい。
【0019】
修飾ヌクレオチドとしては、糖が修飾されたもの(例えば、D−リボフラノースが2'-O-アルキル化されたもの、D−リボフラノースが2'-O, 4'-C-アルキレン化されたもの)、リン酸ジエステル結合が修飾(例えば、チオエート化)されたもの、塩基が修飾されたもの、それらを組み合わせたものなどを例示することができる。アンチセンスオリゴヌクレオチドを構成する少なくとも1個のD−リボフラノースが2'-O-アルキル化されたものや2'-O, 4'-C-アルキレン化されたものは、RNAに対する結合力が高いこと、ヌクレアーゼに対する耐性が高いことから、天然型のヌクレオチド(すなわち、オリゴDNA、オリゴRNA)より高い治療効果が期待できる。また、オリゴヌクレオチドを構成する少なくとも1個のリン酸ジエステル結合がチオエート化されたものも、ヌクレアーゼに対する耐性が高いことから、天然型のヌクレオチド(すなわち、オリゴDNA、オリゴRNA)より高い治療効果が期待できる。上記のような修飾された糖と修飾されたリン酸の両者を含むオリゴヌクレオチドは、ヌクレアーゼに対する耐性がより高いことから、さらに高い治療効果が期待できる。
【0020】
アンチセンスオリゴヌクレオチドについて、糖の修飾の例としては、D−リボフラノースの2'-O-アルキル化(例えば、2'-O-メチル化、2'-O-アミノエチル化、2'-O-プロピル化、2'-O-アリル化、2'-O-メトキシエチル化、2'-O-ブチル化、2'-O-ペンチル化、2'-O-プロパルギル化など)、D−リボフラノースの2'-O,4'-C-アルキレン化(例えば、2'-O,4'-C-エチレン化、2'-O,4'-C-メチレン化、2'-O,4'-C-プロピレン化、2'-O,4'-C-テトラメチレン化、2'-O,4'-C-ペンタメチレン化など)、3'-デオキシ-3'-アミノ-2'-デオキシ-D-リボフラノース、3'-デオキシ-3'-アミノ-2'-デオキシ-2'-フルオロ-D-リボフラノースなどを挙げることができる。
【0021】
アンチセンスオリゴヌクレオチドについて、リン酸ジエステル結合の修飾の例としては、ホスホロチオエート結合、メチルホスホネート結合、メチルチオホスホネート結合、ホスホロジチオエート結合、ホスホロアミデート結合などを挙げることができる。
【0022】
塩基の修飾の例としては、シトシンの5-メチル化、5-フルオロ化、5-ブロモ化、5-ヨード化、N4-メチル化、チミジンの5-デメチル化(ウラシル)、5-フルオロ化、5-ブロモ化、5-ヨード化、アデニンのN6-メチル化、8-ブロモ化、グアニンのN2-メチル化、8-ブロモ化などを挙げることができる。
【0023】
本明細書において、「医薬的に許容される塩」とは、アンチセンスオリゴヌクレオチドの塩をいい、そのような塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩のようなアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩のようなアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、鉄塩、亜鉛塩、銅塩、ニッケル塩、コバルト塩などの金属塩;アンモニウム塩のような無機塩、t−オクチルアミン塩、ジベンジルアミン塩、モルホリン塩、グルコサミン塩、フェニルグリシンアルキルエステル塩、エチレンジアミン塩、N−メチルグルカミン塩、グアニジン塩、ジエチルアミン塩、トリエチルアミン塩、ジシクロヘキシルアミン塩、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン塩、クロロプロカイン塩、プロカイン塩、ジエタノールアミン塩、N−ベンジル−フェネチルアミン塩、ピペラジン塩、テトラメチルアンモニウム塩、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩のような有機塩などのアミン塩;弗化水素酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、沃化水素酸塩のようなハロゲン原子化水素酸塩、硝酸塩、過塩素酸塩、硫酸塩、燐酸塩などの無機酸塩;メタンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩のような低級アルカンルスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩のようなアリールスルホン酸塩、酢酸塩、りんご酸塩、フマール酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、蓚酸塩、マレイン酸塩などの有機酸塩;グリシン塩、リジン塩、アルギニン塩、オルニチン塩、グルタミン酸塩、アスパラギン酸塩のようなアミノ酸塩などを挙げることができる。これらの塩は、公知の方法で製造することができる。
【0024】
また、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、溶媒和物(例えば、水和物)としても存在することがあり、そのような溶媒和物であってもよい。
【0025】
さらに、アンチセンスオリゴヌクレオチドは、プロドラッグの形態で投与されてもよく、プロドラッグとしては、アミド、エステル、カルバミン酸塩、炭酸塩、ウレイド、リン酸塩などを挙げることができる。これらのプロドラッグは、公知の方法で製造することができる。
【0026】
アンチセンスオリゴヌクレオチドは、市販の合成機(例えば、パーキンエルマー社のホスホロアミダイド法によるモデル392)などを用いて、文献(Nucleic Acids Research, 12, 4539 (1984))に記載の方法に準じて合成することができる。その際に用いられるホスホロアミダイト試薬は、天然型のヌクレオシド及び2'-O-メチルヌクレオシド(すなわち、2'-O-メチルグアノシン、2'-O-メチルアデノシン、2'-O-メチルシトシン、2'-O-メチルウリジン)については、市販の試薬を用いることができる。アルキル基の炭素数が2〜6個の2'-O-アルキルグアノシン、アデノシン、シトシンおよびウリジンについては、以下の通りである。
【0027】
2'-O-アミノエチルグアノシン、アデノシン、シトシン、ウリジンは、文献(Blommers et al. Biochemistry (1998), 37, 17714-17725.)に従って合成できる。
【0028】
2'-O-プロピルグアノシン、アデノシン、シトシン、ウリジンは、文献(Lesnik,E.A. et al. Biochemistry (1993), 32, 7832-7838.)に従って合成できる。
【0029】
2'-O-アリルグアノシン、アデノシン、シトシン、ウリジンは、市販の試薬を用いることができる。
【0030】
2'-O-メトキシエチルグアノシン、アデノシン、シトシン、ウリジンは、特許(US6261840)または、文献(Martin, P. Helv. Chim. Acta. (1995) 78, 486-504.に従って合成できる。
【0031】
2'-O-ブチルグアノシン、アデノシン、シトシン、ウリジンは、文献(Lesnik,E.A. et al. Biochemistry (1993), 32, 7832-7838.)に従って合成できる。
【0032】
2'-O-ペンチルグアノシン、アデノシン、シトシン、ウリジンは、文献(Lesnik,E.A. et al. Biochemistry (1993), 32, 7832-7838.)に従って合成できる。
【0033】
2'-O-プロパルギルグアノシン、アデノシン、シトシン、ウリジンは、市販の試薬を用いることができる。
【0034】
2'-O, 4'-C-メチレングアノシン、アデノシン、5-メチルシトシンおよびチミジンについては、WO99/14226に記載の方法に従って、アルキレン基の炭素数が2〜5個の2'-O, 4'-C-アルキレングアノシン、アデノシン、5-メチルシトシンおよびチミジンについては、WO00/47599に記載の方法に従って製造することができる。
【0035】
ホスホロアミダイト試薬をカップリング後、硫黄、テトラエチルチウラムジスルフィド(TETD、アプライドバイオシステム社)、Beaucage試薬(Glen Research社)、または、キサンタンヒドリドなどの試薬を反応させることにより、ホスホロチオエート結合を有するアンチセンスオリゴヌクレオチドを合成することができる(Tetrahedron Letters, 32, 3005 (1991), J. Am. Chem. Soc. 112, 1253 (1990), PCT/WO98/54198)。
【0036】
合成機で用いるコントロールド ポア グラス(CPG)としては、2'-O-メチルヌクレオシドの結合したものは、市販のものを利用することができる。また、2'-O, 4'-C-メチレングアノシン、アデノシン、5-メチルシトシンおよびチミジンについては、WO99/14226に記載の方法に従って、アルキレン基の炭素数が2〜5個の2'-O, 4'-C-アルキレングアノシン、アデノシン、5-メチルシトシンおよびチミジンについては、WO00/47599に記載の方法に従って製造したヌクレオシドを文献(Oligonucleotide Synthesis, Edited by M.J.Gait, Oxford University Press, 1984)に従って、CPGに結合することができる。修飾されたCPG(特開平7−87982の実施例12bに記載)を用いることにより、3'末端に2-ヒドロキシエチルリン酸基が結合したオリゴヌクレオチドを合成できる。また、3'-amino-Modifier C3 CPG, 3'-amino-Modifier C7 CPG, Glyceryl CPG, (Glen Research), 3'-specer C3 SynBase CPG 1000, 3'-specer C9 SynBase CPG 1000(link technologies)を使えば、3'末端にヒドロキシアルキルリン酸基、または、アミノアルキルリン酸基が結合したオリゴヌクレオチドを合成できる。
【0037】
アンチセンスオリゴヌクレオチド、その医薬的に許容される塩、溶媒和物又はプロドラッグをがん治療に使用する場合には、それ自体あるいは適宜の医薬的に許容される賦形剤、希釈剤などと混合し、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤若しくはシロップ剤などにより経口的に、あるいは、注射剤、坐剤、貼付剤若しくは外用剤などにより非経口的に投与することができる。
【0038】
これらの製剤は、賦形剤(例えば、乳糖、白糖、葡萄糖、マンニトール、ソルビトールのような糖誘導体;トウモロコシデンプン、バイレショデンプン、α澱粉、デキストリンのような澱粉誘導体;結晶セルロースのようなセルロース誘導体;アラビアゴム;デキストラン;プルランのような有機系賦形剤;軽質無水珪酸、合成珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、メタ珪酸アルミン酸マグネシウムのような珪酸塩誘導体;燐酸水素カルシウムにような燐酸塩;炭酸カルシウムのような炭酸塩;硫酸カルシウムのような硫酸塩などの無機系賦形剤など)、滑沢剤(例えば、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウムのようなステアリン酸金属塩;タルク;コロイドシリカ;ビーズワックス、ゲイ蝋のようなワックス類;硼酸;アジピン酸;硫酸ナトリウムのような硫酸塩;グリコール;フマル酸;安息香酸ナトリウム;DLロイシン;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウムのようなラウリル硫酸塩:無水珪酸、珪酸水和物のような珪酸類;上記澱粉誘導体など)、結合剤(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、マクロゴール、前記賦形剤と同様の化合物など)、崩壊剤(例えば、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、内部架橋カルボキシメチルセルロースナトリウムのようなセルロース誘導体;カルボキシメチルスターチ、カルボキシメチルスターチナトリウム、架橋ポリビニルピロリドンのような化学修飾されたデンプン・セルロース類など)、乳化剤(例えば、ベントナイト、ビーガムのようなコロイド性粘土;水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムのような金属水酸化物;ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸カルシウムのような陰イオン界面活性剤;塩化ベンザルコニウムのような陽イオン界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルのような非イオン界面活性剤など)、安定剤(メチルパラベン、プロピルパラベンのようなパラオキシ安息香酸エステル類;クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコールのようなアルコール類;塩化ベンザルコニウム;フェノール、クレゾールのようなフェノール類;チメロサール;デヒドロ酢酸;ソルビン酸など)、矯味矯臭剤(例えば、通常使用される甘味料、酸味料、香料など)、希釈剤などの添加剤を用いて周知の方法で製造される。
【0039】
本発明の治療薬は、好ましくは、0.05〜5μmoles/ml、より好ましくは、0.1〜1μmoles/mlのアンチセンスオリゴヌクレオチド、その医薬的に許容される塩、溶媒和物又はプロドラッグ、0.02〜10%w/vの炭水化物又は多価アルコール及び0.01〜0.4%w/vの薬理学上許容される界面活性剤を含有する。
【0040】
上記炭水化物としては、単糖類及び/又は2糖類が特に好ましい。これら炭水化物及び多価アルコールの例としては、グルコース、ガラクトース、マンノース、ラクトース、マルトース、マンニトール及びソルビトールが挙げられる。これらは、単独で用いても、併用してもよい。
【0041】
また、界面活性剤の好ましい例としては、ポリオキシエチレンソルビタンモノ〜トリ−エステル、アルキルフェニルポリオキシエチレン、ナトリウムタウロコラート、ナトリウムコラート、及び多価アルコールエステルが挙げられる。このうち特に好ましいのは、ポリオキシエチレンソルビタンモノ〜トリ−エステルであり、ここにおいてエステルとして特に好ましいのは、オレエート、ラウレート、ステアレート及びパルミテートである。これらは単独で用いても、併用してもよい。
【0042】
また、本発明の治療薬は、更に好ましくは、0.03〜0.09Mの薬理学上許容される中性塩、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム及び/又は塩化カルシウムを含有する。
【0043】
また、本発明の治療薬は、更に好ましくは、0.002〜0.05Mの薬理学上許容される緩衝剤を含有することができる。好ましい緩衝剤の例としては、クエン酸ナトリウム、ナトリウムグリシネート、リン酸ナトリウム、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンが挙げられる。これらの緩衝剤は、単独で用いても、併用してもよい。
【0044】
さらに、上記の治療薬は、溶液状態で供給してもよい。しかし、ある期間保存する必要がある場合等のために、アンチセンスオリゴヌクレオチドを安定化して治療効果の低下を防止する目的で通常は凍結乾燥しておくことが好ましく、その場合は用時に溶解液(注射用蒸留水など)で再構成(reconstruction)して、即ち投与される液体状態にして用いればよい。従って、本発明の治療薬は、各成分が所定の濃度範囲になるよう溶解液で再構成して使用するための、凍結乾燥された状態のものも包含する。凍結乾燥物の溶解性を促進する目的で、アルブミン、グリシン等のアミノ酸を更に含有させておいてもよい。
【0045】
アンチセンスオリゴヌクレオチド、その医薬的に許容される塩、溶媒和物又はプロドラッグをヒトに投与する場合には、例えば、成人1日あたり約0.1〜100mg/kg(体重)、好ましくは1〜50mg/kg(体重)の投与量で、1回または数回に分けて経口投与または静注するとよいが、その投与量や投与回数は、疾患の種類、症状、年齢、投与方法などにより適宜変更しうる。
【0046】
がん患者へのアンチセンスオリゴヌクレオチド、その医薬的に許容される塩、溶媒和物又はプロドラッグの投与は、例えば、以下のようにして行うことができる。すなわち、アンチセンスオリゴヌクレオチド、その医薬的に許容される塩、溶媒和物又はプロドラッグを当業者に周知の方法で製造し、これを常法により滅菌処理し、例えば1200μg/mlの注射用溶液を調製する。この溶液を、患者静脈内にアンチセンスオリゴヌクレオチドの投与量が体重1kg当たり例えば20mgとなるように、例えば輸液の形で点滴投与する。投与は、例えば2週間の間隔で4回繰り返し、その後も、診察による測定、X線写真、CTやMRIによる撮像、超音波測定、内視鏡や腹腔鏡による確認、腫瘍マーカーによる評価、細胞診や組織診などにより腫瘍縮小効果の確認をしながら、適宜この治療を繰り返す。
【0047】
本発明は、また、配列番号1〜19のいずれかの塩基配列の全部又は一部を有する、20〜23の塩基長のオリゴヌクレオチド、その医薬的に許容できる塩、溶媒和物又はプロドラッグを提供する。
【0048】
本発明のオリゴヌクレオチドは、少なくとも1つの修飾ヌクレオチドを含むとよい。修飾ヌクレオチドについては前述した通りである。修飾ヌクレオチドを構成するD-リボフラノースは2'-O,4'-C-アルキレン化(例えば、2'-O,4'-C-エチレン化、2'-O,4'-C-メチレン化、2'-O,4'-C-プロピレン化、2'-O,4'-C-テトラメチレン化、2'-O,4'-C-ペンタメチレン化など)されているとよい。
【0049】
本発明のオリゴヌクレオチドは、CD44遺伝子のバリアントエクソンを標的とするアンチセンスオリゴヌクレオチドであるとよい。
【0050】
本発明のオリゴヌクレオチドは、前述のアンチセンスオリゴヌクレオチドについて説明した製造方法で製造することができる。また、本発明のオリゴヌクレオチドの医薬的に許容できる塩、溶媒和物及びプロドラッグは、前述のアンチセンスオリゴヌクレオチドについて説明した通りである。
【0051】
本発明のオリゴヌクレオチドは、CD44遺伝子のバリアント8、9及び10からなる群より選択される少なくとも1つのバリアントエクソンのスキッピングを誘導することができる。従って、本発明は、前記のオリゴヌクレオチド、その医薬的に許容できる塩、溶媒和物又はプロドラッグを含み、CD44遺伝子のバリアント8、9及び10からなる群より選択される少なくとも1つのバリアントエクソンのスキッピングを誘導するための薬剤も提供する。本発明のスキッピング誘導剤は、医薬として、また、実験に用いる試薬として、使用することができる。
【実施例】
【0052】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〕アンチセンスオリゴヌクレオチド(AO)の合成
表1に示すアンチセンスオリゴヌクレオチド(AO)を合成した。CD44バリアントmRNAに相補的なAOの配列場所を図3〜5に示す。AOの配列中のC(シトシン)およびT(チミン)に修飾核酸のENA(登録商標)(2'-O,4'-C-Ethylene-bridged Nucleic Acids)(図6)を導入し、親和性と安定性を向上させた。
【0053】
【表1】
【0054】
HO-ACTATGACTGGAGTCCATAT-OHの合成(AO-#1)の合成
核酸自動合成機(日本テクノサービス社製DNA/RNA合成装置 NTS H-8)を用い、1μmolスケールで行った。各合成サイクルにおける溶媒、試薬、ホスホロアミダイトの濃度は天然オリゴヌクレオチド合成の場合と同じであり、試薬、2'-O-メチルヌクレオシドのホスホロアミダイト(アデノシン体product No. 10-3100-10、グアノシン体product No. 10-3121-10、シチジン体product No. 10-3110-10、ウリジン体product No. 10-3130-10)はグレンリサーチ社製のものを用いた。溶媒は和光純薬工業のものを用いた。非天然型のホスホロアミダイトは特開2000-297097の実施例22(5'-O-ジメトキシトリチル-2'-O,4'-C-エチレン-4-N-ベンゾイル-5-メチルシチジン-3'-O-(2-シアノエチル N,N-ジイソプロピル)ホスホロアミダイト)、実施例9(5'-O-ジメトキシトリチル-2'-O,4'-C-エチレン-5-メチルウリジン-3'-O-(2-シアノエチル N,N-ジイソプロピル)ホスホロアミダイト)の化合物を用いた。固相担体としてコントロールポアグラス(CPG)(BIOSEARCH社製product No. BG5-3400-B)を用い、表記の化合物を合成した。但し、アミダイトの縮合に要する時間は、15分とした。
【0055】
目的配列を有する保護されたオリゴヌクレオチド類縁体を濃アンモニア水で処理することによってオリゴマーを支持体から切り出すとともに、リン原子上の保護基シアノエチル基と核酸塩基上の保護基を外した。溶媒を減圧留去し、残った残渣を逆相HPLC(島津製作所製LC-8A、カラム(資生堂社製CAPCELLPAK ODS type MG(20×250 mm))、A溶液:0.1M酢酸トリエチルアミン水溶液(TEAA), pH 7.0、B溶液:アセトニトリル、B%:5%→40%(30 min, linear gradient);40°C;19 mL/min;260 nm)にて精製した。酢酸を終濃度10%になるよう加えて一晩静置し、DMTr基を除去した。溶媒留去後、水1.0 mLに溶解し、NAP-10 columns(GEヘルスケア社製、product No. 17-0854-01)で精製し、凍結乾燥後目的化合物を得た。
【0056】
本化合物は負イオンMALDI-TOFMSにより、同定した(計算値:6891.8、測定値:6895.51)。
【0057】
本化合物の塩基配列は、CD44 cDNA (Gene Bank accession No.NC_018922.2のヌクレオチド番号35228064-35228083に相補的な配列である。
【0058】
HO-TTGCAGTAGGCTGAAGCGTT-OH(AO-#2)の合成
実施例1の化合物と同様に目的配列を有する実施例2の化合物を合成した。脱保護後、逆相HPLC(島津製作所製LC-8A、カラム(資生堂社製CAPCELLPAK ODS type MG(20×250 mm))、A溶液:0.1M酢酸トリエチルアミン水溶液(TEAA), pH 7.0、B溶液:アセトニトリル、B%:5%→40%(30 min, linear gradient);40°C;19 mL/min;260 nm)にて精製した。酢酸を終濃度10%になるよう加えて一晩静置し、DMTr基を除去した。溶媒留去後、水1.0 mLに溶解し、NAP-10 columns(GEヘルスケア社製、product No. 17-0854-01)で精製し、凍結乾燥後目的化合物を得た。
【0059】
本化合物は負イオンMALDI-TOFMSにより、同定した(計算値:6937.8、測定値:6936.09)。
【0060】
本化合物の塩基配列は、CD44 cDNA (Gene Bank accession No.NC_018922.2のヌクレオチド番号35228086-35228105に相補的な配列である。
【0061】
HO-CAAACCTGTGTTTGGATTTG-OH(AO-#3)の合成
実施例1の化合物と同様に目的配列を有する実施例3の化合物を合成した。脱保護後、逆相HPLC(島津製作所製LC-8A、カラム(資生堂社製CAPCELLPAK ODS type MG(20×250 mm))、A溶液:0.1M酢酸トリエチルアミン水溶液(TEAA), pH 7.0、B溶液:アセトニトリル、B%:5%→40%(30 min, linear gradient);40°C;19 mL/min;260 nm)にて精製した。酢酸を終濃度10%になるよう加えて一晩静置し、DMTr基を除去した。溶媒留去後、水1.0 mLに溶解し、NAP-10 columns(GEヘルスケア社製、product No. 17-0854-01)で精製し、凍結乾燥後目的化合物を得た。
【0062】
本化合物は負イオンMALDI-TOFMSにより、同定した(計算値:6911.7、測定値:6910.09)。
【0063】
本化合物の塩基配列は、CD44 cDNA (Gene Bank accession No.NC_018922.2のヌクレオチド番号35228103-35228122に相補的な配列である。
【0064】
HO-AAGAGGTCCTGTCCTGTCCA-OH(AO-#4)の合成
実施例1の化合物と同様に目的配列を有する実施例4の化合物を合成した。脱保護後、逆相HPLC(島津製作所製LC-8A、カラム(資生堂社製CAPCELLPAK ODS type MG(20×250 mm))、A溶液:0.1M酢酸トリエチルアミン水溶液(TEAA), pH 7.0、B溶液:アセトニトリル、B%:5%→40%(30 min, linear gradient);40°C;19 mL/min;260 nm)にて精製した。酢酸を終濃度10%になるよう加えて一晩静置し、DMTr基を除去した。溶媒留去後、水1.0 mLに溶解し、NAP-10 columns(GEヘルスケア社製、product No. 17-0854-01)で精製し、凍結乾燥後目的化合物を得た。
【0065】
本化合物は負イオンMALDI-TOFMSにより、同定した(計算値:6908.9、測定値:6907.10)。
【0066】
本化合物の塩基配列は、CD44 cDNA (Gene Bank accession No.NC_018922.2のヌクレオチド番号35228133-35228152に相補的な配列である。
【0067】
HO-GCTCTGAGAATTACTCTGCT-OH(AO-#5)の合成
実施例1の化合物と同様に目的配列を有する実施例5の化合物を合成した。脱保護後、逆相HPLC(島津製作所製LC-8A、カラム(資生堂社製CAPCELLPAK ODS type MG(20×250 mm))、A溶液:0.1M酢酸トリエチルアミン水溶液(TEAA), pH 7.0、B溶液:アセトニトリル、B%:5%→40%(30 min, linear gradient);40°C;19 mL/min;260 nm)にて精製した。酢酸を終濃度10%になるよう加えて一晩静置し、DMTr基を除去した。溶媒留去後、水1.0 mLに溶解し、NAP-10 columns(GEヘルスケア社製、product No. 17-0854-01)で精製し、凍結乾燥後目的化合物を得た。
【0068】
本化合物は負イオンMALDI-TOFMSにより、同定した(計算値:6896.8、測定値:6899.98)。
【0069】
本化合物の塩基配列は、CD44 cDNA (Gene Bank accession No.NC_018922.2のヌクレオチド番号35229924-35229943に相補的な配列である。
【0070】
HO-CTTCATGTGATGTAGAGAAG-OH(AO-#6)の合成
実施例1の化合物と同様に目的配列を有する実施例6の化合物を合成した。脱保護後、逆相HPLC(島津製作所製LC-8A、カラム(資生堂社製CAPCELLPAK ODS type MG(20×250 mm))、A溶液:0.1M酢酸トリエチルアミン水溶液(TEAA), pH 7.0、B溶液:アセトニトリル、B%:5%→40%(30 min, linear gradient);40°C;19 mL/min;260 nm)にて精製した。酢酸を終濃度10%になるよう加えて一晩静置し、DMTr基を除去した。溶媒留去後、水1.0 mLに溶解し、NAP-10 columns(GEヘルスケア社製、product No. 17-0854-01)で精製し、凍結乾燥後目的化合物を得た。
【0071】
本化合物は負イオンMALDI-TOFMSにより、同定した(計算値:6919.7、測定値:6920.35)。
【0072】
本化合物の塩基配列は、CD44 cDNA (Gene Bank accession No.NC_018922.2のヌクレオチド番号35229943-35229962に相補的な配列である。
【0073】
HO-TCTTCCAAGCCTTCATGTGA-OH(AO-#7)の合成
実施例1の化合物と同様に目的配列を有する実施例7の化合物を合成した。脱保護後、逆相HPLC(島津製作所製LC-8A、カラム(資生堂社製CAPCELLPAK ODS type MG(20×250 mm))、A溶液:0.1M酢酸トリエチルアミン水溶液(TEAA), pH 7.0、B溶液:アセトニトリル、B%:5%→40%(30 min, linear gradient);40°C;19 mL/min;260 nm)にて精製した。酢酸を終濃度10%になるよう加えて一晩静置し、DMTr基を除去した。溶媒留去後、水1.0 mLに溶解し、NAP-10 columns(GEヘルスケア社製、product No. 17-0854-01)で精製し、凍結乾燥後目的化合物を得た。
【0074】
本化合物は負イオンMALDI-TOFMSにより、同定した(計算値:6882.9、測定値:6883.40)。
【0075】
本化合物の塩基配列は、CD44 cDNA (Gene Bank accession No.NC_018922.2のヌクレオチド番号35229953-35229972に相補的な配列である。
【0076】
HO-GATGGTCTTTATCTTCTTCC-OH(AO-#8)の合成
実施例1の化合物と同様に目的配列を有する実施例8の化合物を合成した。脱保護後、逆相HPLC(島津製作所製LC-8A、カラム(資生堂社製CAPCELLPAK ODS type MG(20×250 mm))、A溶液:0.1M酢酸トリエチルアミン水溶液(TEAA), pH 7.0、B溶液:アセトニトリル、B%:5%→40%(30 min, linear gradient);40°C;19 mL/min;260 nm)にて精製した。酢酸を終濃度10%になるよう加えて一晩静置し、DMTr基を除去した。溶媒留去後、水1.0 mLに溶解し、NAP-10 columns(GEヘルスケア社製、product No. 17-0854-01)で精製し、凍結乾燥後目的化合物を得た。本化合物は負イオンMALDI-TOFMSにより、同定した(計算値:6889.7、測定値:6888.40)。
【0077】
本化合物の塩基配列は、CD44 cDNA (Gene Bank accession No.NC_018922.2のヌクレオチド番号35229967-35229986に相補的な配列である。
【0078】
HO-GTAGAAGTTGTTGGATGGTC-OH(AO-#9)の合成
実施例1の化合物と同様に目的配列を有する実施例9の化合物を合成した。脱保護後、逆相HPLC(島津製作所製LC-8A、カラム(資生堂社製CAPCELLPAK ODS type MG(20×250 mm))、A溶液:0.1M酢酸トリエチルアミン水溶液(TEAA), pH 7.0、B溶液:アセトニトリル、B%:5%→40%(30 min, linear gradient);40°C;19 mL/min;260 nm)にて精製した。酢酸を終濃度10%になるよう加えて一晩静置し、DMTr基を除去した。溶媒留去後、水1.0 mLに溶解し、NAP-10 columns(GEヘルスケア社製、product No. 17-0854-01)で精製し、凍結乾燥後目的化合物を得た。
【0079】
本化合物は負イオンMALDI-TOFMSにより、同定した(計算値:6952.7、測定値:6953.62)。
【0080】
本化合物の塩基配列は、CD44 cDNA (Gene Bank accession No.NC_018922.2のヌクレオチド番号35229980-35229999に相補的な配列である。
【0081】
HO-TGCTTGATGTCAGAGTAGAA-OH(AO-#10)の合成
実施例1の化合物と同様に目的配列を有する実施例10の化合物を合成した。脱保護後、逆相HPLC(島津製作所製LC-8A、カラム(資生堂社製CAPCELLPAK ODS type MG(20×250 mm))、A溶液:0.1M酢酸トリエチルアミン水溶液(TEAA), pH 7.0、B溶液:アセトニトリル、B%:5%→40%(30 min, linear gradient);40°C;19 mL/min;260 nm)にて精製した。酢酸を終濃度10%になるよう加えて一晩静置し、DMTr基を除去した。溶媒留去後、水1.0 mLに溶解し、NAP-10 columns(GEヘルスケア社製、product No. 17-0854-01)で精製し、凍結乾燥後目的化合物を得た。
【0082】
本化合物は負イオンMALDI-TOFMSにより、同定した(計算値:6919.7、測定値:6922.82)。
【0083】
本化合物の塩基配列は、CD44 cDNA (Gene Bank accession No.NC_018922.2のヌクレオチド番号35229994-35230013に相補的な配列である。
【0084】
HO-GAAGGTCCTGCTTTCCTTCG-OH(AO-#11)の合成
実施例1の化合物と同様に目的配列を有する実施例11の化合物を合成した。脱保護後、逆相HPLC(島津製作所製LC-8A、カラム(資生堂社製CAPCELLPAK ODS type MG(20×250 mm))、A溶液:0.1M酢酸トリエチルアミン水溶液(TEAA), pH 7.0、B溶液:アセトニトリル、B%:5%→40%(30 min, linear gradient);40°C;19 mL/min;260 nm)にて精製した。酢酸を終濃度10%になるよう加えて一晩静置し、DMTr基を除去した。溶媒留去後、水1.0 mLに溶解し、NAP-10 columns(GEヘルスケア社製、product No. 17-0854-01)で精製し、凍結乾燥後目的化合物を得た。
【0085】
本化合物は負イオンMALDI-TOFMSにより、同定した(計算値:6914.9、測定値:6916.37)。
【0086】
本化合物の塩基配列は、CD44 cDNA (Gene Bank accession No.NC_018922.2のヌクレオチド番号35231298-35231317に相補的な配列である。
【0087】
HO-CCACCAAACCTGTGTTTGGA-OH(AO-#12)の合成
実施例1の化合物と同様に目的配列を有する実施例12の化合物を合成した。脱保護後、逆相HPLC(島津製作所製LC-8A、カラム(資生堂社製CAPCELLPAK ODS type MG(20×250 mm))、A溶液:0.1M酢酸トリエチルアミン水溶液(TEAA), pH 7.0、B溶液:アセトニトリル、B%:5%→40%(30 min, linear gradient);40°C;19 mL/min;260 nm)にて精製した。酢酸を終濃度10%になるよう加えて一晩静置し、DMTr基を除去した。溶媒留去後、水1.0 mLに溶解し、NAP-10 columns(GEヘルスケア社製、product No. 17-0854-01)で精製し、凍結乾燥後目的化合物を得た。
【0088】
本化合物は負イオンMALDI-TOFMSにより、同定した(計算値:6892.9、測定値:6893.44)。
【0089】
本化合物の塩基配列は、CD44 cDNA (Gene Bank accession No.NC_000011.10のヌクレオチド番号35208148-35208167に相補的な配列である。
【0090】
HO-CTGTCCAAATCTTCCACCAA-OH(AO-#13)の合成
実施例1の化合物と同様に目的配列を有する実施例13の化合物を合成した。脱保護後、逆相HPLC(島津製作所製LC-8A、カラム(資生堂社製CAPCELLPAK ODS type MG(20×250 mm))、A溶液:0.1M酢酸トリエチルアミン水溶液(TEAA), pH 7.0、B溶液:アセトニトリル、B%:5%→40%(30 min, linear gradient);40°C;19 mL/min;260 nm)にて精製した。酢酸を終濃度10%になるよう加えて一晩静置し、DMTr基を除去した。溶媒留去後、水1.0 mLに溶解し、NAP-10 columns(GEヘルスケア社製、product No. 17-0854-01)で精製し、凍結乾燥後目的化合物を得た。
【0091】
本化合物は負イオンMALDI-TOFMSにより、同定した(計算値:6848.99、測定値:6850.18)。
【0092】
本化合物の塩基配列は、CD44 cDNA (Gene Bank accession No.NC_000011.10のヌクレオチド番号35208161-35208180に相補的な配列である。
【0093】

HO-GCGTTGTCATTGAAAGAGGT -OH(AO-#14)の合成
実施例1の化合物と同様に目的配列を有する実施例14の化合物を合成した。脱保護後、逆相HPLC(島津製作所製LC-8A、カラム(資生堂社製CAPCELLPAK ODS type MG(20×250 mm))、A溶液:0.1M酢酸トリエチルアミン水溶液(TEAA), pH 7.0、B溶液:アセトニトリル、B%:5%→40%(30 min, linear gradient);40°C;19 mL/min;260 nm)にて精製した。酢酸を終濃度10%になるよう加えて一晩静置し、DMTr基を除去した。溶媒留去後、水1.0 mLに溶解し、NAP-10 columns(GEヘルスケア社製、product No. 17-0854-01)で精製し、凍結乾燥後目的化合物を得た。
【0094】
本化合物は負イオンMALDI-TOFMSにより、同定した(計算値:6935.72、測定値:6936.96)。
【0095】
本化合物の塩基配列は、CD44 cDNA (Gene Bank accession No.NC_000011.10のヌクレオチド番号35208187-35208206に相補的な配列である。
【0096】
HO-TTCCAAGCCTTCATGTGATG-OH(AO-#15)の合成
実施例1の化合物と同様に目的配列を有する実施例15の化合物を合成した。脱保護後、逆相HPLC(島津製作所製LC-8A、カラム(資生堂社製CAPCELLPAK ODS type MG(20×250 mm))、A溶液:0.1M酢酸トリエチルアミン水溶液(TEAA), pH 7.0、B溶液:アセトニトリル、B%:5%→40%(30 min, linear gradient);40°C;19 mL/min;260 nm)にて精製した。酢酸を終濃度10%になるよう加えて一晩静置し、DMTr基を除去した。溶媒留去後、水1.0 mLに溶解し、NAP-10 columns(GEヘルスケア社製、product No. 17-0854-01)で精製し、凍結乾燥後目的化合物を得た。
【0097】
本化合物は負イオンMALDI-TOFMSにより、同定した(計算値:6896.8、測定値:6896.38)。
【0098】
本化合物の塩基配列は、CD44 cDNA (Gene Bank accession No.NC_000011.10のヌクレオチド番号35209992-35210011に相補的な配列である。
【0099】
HO-GTCTCTTCTTCCACCTGTGA-OH(AO-#16)の合成
実施例1の化合物と同様に目的配列を有する実施例16の化合物を合成した。脱保護後、逆相HPLC(島津製作所製LC-8A、カラム(資生堂社製CAPCELLPAK ODS type MG(20×250 mm))、A溶液:0.1M酢酸トリエチルアミン水溶液(TEAA), pH 7.0、B溶液:アセトニトリル、B%:5%→40%(30 min, linear gradient);40°C;19 mL/min;260 nm)にて精製した。酢酸を終濃度10%になるよう加えて一晩静置し、DMTr基を除去した。溶媒留去後、水1.0 mLに溶解し、NAP-10 columns(GEヘルスケア社製、product No. 17-0854-01)で精製し、凍結乾燥後目的化合物を得た。
【0100】
本化合物は負イオンMALDI-TOFMSにより、同定した(計算値:6887.86、測定値:6889.15)。
【0101】
本化合物の塩基配列は、CD44 cDNA (Gene Bank accession No.NC_000011.10のヌクレオチド番号35211258-35211277に相補的な配列である。
【0102】
HO-TTCCAGTAAAGTAGTTGAGC-OH(AO-#17)の合成
実施例1の化合物と同様に目的配列を有する実施例17の化合物を合成した。脱保護後、逆相HPLC(島津製作所製LC-8A、カラム(資生堂社製CAPCELLPAK ODS type MG(20×250 mm))、A溶液:0.1M酢酸トリエチルアミン水溶液(TEAA), pH 7.0、B溶液:アセトニトリル、B%:5%→40%(30 min, linear gradient);40°C;19 mL/min;260 nm)にて精製した。酢酸を終濃度10%になるよう加えて一晩静置し、DMTr基を除去した。溶媒留去後、水1.0 mLに溶解し、NAP-10 columns(GEヘルスケア社製、product No. 17-0854-01)で精製し、凍結乾燥後目的化合物を得た。
【0103】
本化合物は負イオンMALDI-TOFMSにより、同定した(計算値:6905.76、測定値:6907.01)。
【0104】
本化合物の塩基配列は、CD44 cDNA (Gene Bank accession No.NC_000011.10のヌクレオチド番号35211294-35211313に相補的な配列である。
【0105】
HO-TCCAAAGGACCCAGTCTTAG-OH(AO-#18)の合成
実施例1の化合物と同様に目的配列を有する実施例18の化合物を合成した。脱保護後、逆相HPLC(島津製作所製LC-8A、カラム(資生堂社製CAPCELLPAK ODS type MG(20×250 mm))、A溶液:0.1M酢酸トリエチルアミン水溶液(TEAA), pH 7.0、B溶液:アセトニトリル、B%:5%→40%(30 min, linear gradient);40°C;19 mL/min;260 nm)にて精製した。酢酸を終濃度10%になるよう加えて一晩静置し、DMTr基を除去した。溶媒留去後、水1.0 mLに溶解し、NAP-10 columns(GEヘルスケア社製、product No. 17-0854-01)で精製し、凍結乾燥後目的化合物を得た。
【0106】
本化合物は負イオンMALDI-TOFMSにより、同定した(計算値:6889.94、測定値:6891.13)。
【0107】
本化合物の塩基配列は、CD44 cDNA (Gene Bank accession No.NC_000011.10のヌクレオチド番号35211375-35211394に相補的な配列である。
【0108】
HO-GTTGGAATCTCCAACAGTAA-OH(AO-#19)の合成
実施例1の化合物と同様に目的配列を有する実施例19の化合物を合成した。脱保護後、逆相HPLC(島津製作所製LC-8A、カラム(資生堂社製CAPCELLPAK ODS type MG(20×250 mm))、A溶液:0.1M酢酸トリエチルアミン水溶液(TEAA), pH 7.0、B溶液:アセトニトリル、B%:5%→40%(30 min, linear gradient);40°C;19 mL/min;260 nm)にて精製した。酢酸を終濃度10%になるよう加えて一晩静置し、DMTr基を除去した。溶媒留去後、水1.0 mLに溶解し、NAP-10 columns(GEヘルスケア社製、product No. 17-0854-01)で精製し、凍結乾燥後目的化合物を得た。
【0109】
本化合物は負イオンMALDI-TOFMSにより、同定した(計算値:6888.83、測定値:6890.14)。
【0110】
本化合物の塩基配列は、CD44 cDNA (Gene Bank accession No.NC_000011.10のヌクレオチド番号35211405-35211424に相補的な配列である。
【0111】
〔実施例2〕がん幹細胞におけるアンチセンスオリゴヌクレオチド(AO)のエキソンスキッピング誘導効果の確認
下記の大腸がん及び胃がんのがん幹細胞をATCC(American Type Culture Collection)より購入した。これらがん幹細胞はCD44バリアントエクソンを発現(特にCD44v8-10を高発現)している。
・HT-29細胞(大腸がん)
・KATOIII細胞(胃がん)
12 well plateに播種し、一晩培養したヒト胃がん細胞KATOIIIにAO(50, 100 nM)を添加した。3時間後、FBSを加え、更に24時間培養した。その後、RNAの回収を行い、RT-PCRによりCD44mRNAを解析した。
【0112】
その結果、AO添加により異常エクソンのスキッピングが誘導され正常CD44sの発現が増加している事を確認した(図7、8、9)。すなわち、KATOIII細胞は通常、v8,v9,v10が挿入されたCD44v8-10を主に発現しているが、AOの添加により濃度依存的にCD44v8-10の発現が減少し、CD44sの発現が10%程の発現から80%程にまで回復した。CD44sの発現割合は、PCR産物をAgilent 2100 bioanalyzerにて測定し、得られた測定値をCD44s/(CD44s+CD44v)×100の式を用いて計算した。CD44vにはCD44v8-10、CD44v9-10、CD44v8-9、CD44v8が含まれる。
【0113】
図10は、最も効果が高かったAO-#7 (10nM、25nM、50nM、100nM)でn=3で行った結果をグラフ化処理したものを示す。
【0114】
図11は、図10の結果をグラフ化処理したものを示す。
【0115】
KATOIIIの代わりに、HT-29細胞を用いて、同様の実験を行ったところ、KATOIIIの結果と同様に、異常エクソンのスキッピングが誘導され正常CD44sの発現が増加していることが確認された。AO-#7の結果を図12(HT-29細胞)に示す。
【0116】
RNAの抽出
以下のようにしてRNAの抽出を行った。
1. AOをトランスフェクションした細胞を24時間培養した後、PBSにて1回洗浄して、Lysis/binding buffer (Roche, High Pure RNA Isolation Kit) 300μL、PBS 150μLを細胞に添加した。
2. 室温で1分間放置した後、フェル内の細胞混合液をチューブに回収した。
3. High Pure RNA Isolation Kit (Roche)のプロトコールに従ってRNAを抽出した。
4. 最終的にElution buffer 36μLにてRNAを溶出させた。
【0117】
逆転写反応
以下のようにして逆転写を行った。
1. RNA 500ngにミリQ(滅菌処理済み)を加え、6μLとした。
2. 1の溶液へRandom primers (invitrogen 3μg/μLを20倍希釈したもの) 2μLと2.5mM dNTP mixture (invitrogen) 5μLを加えた。
3. 65℃で5分間加熱した。
4. 25℃で10分間放置した。
5.上記の反応液に、
M-MLV-reverse transcriptase (invitrogen 200U/μL) 1μL、RNase OUT (invitrogen 40U/μL) 1μL、0.1M DTT (M-MLV-reverse transcriptaseに添付) 1μL、5×First stand Buffer (M-MLV-reverse transcriptaseに添付) 4μL
を加えた。
6. 37℃で55分間保温し、その後70℃で15分間加熱した。
7. 反応液は-80℃で保存した。
【0118】
PCR反応
以下のようにしてPCR反応を行った。
1. 下記の成分を混和後、94℃で3分間加熱した。
【0119】
逆転写反応産物 1.0μL
フォワードプライマー(10pmol/μL) 0.5μL
リバースプライマー(10pmol/μL) 0.5μL
dNTP(TAKARA Ex Taqに添付) 0.8μL
バッファー(TAKARA Ex Taqに添付) 1.0μL
Ex Taq 0.05μL
滅菌水 6.15μL
2. 94℃3分の処理後に94℃30秒・60℃30秒・72℃90秒の処理を25サイクル行った。
3. 72℃で3分間加熱した
なお、バリアントエクソンのスキッピングを検出するためのPCR反応に用いたフォワードプライマーとリバースプライマーの塩基配列は下記の通りである。
【0120】
フォワードプライマー(CD44 エクソン5):5'-TCCCAGACGAAGACAGTCCCTGGAT-3'(配列番号23)
リバースプライマー(CD44 エクソン16) :5'-CACTGGGGTGGAATGTGTCTTGGTC-3'(配列番号24)
【0121】
〔実施例3〕
KATOIII細胞を12well plateに1×105 cells/wellで播種し、Lipofectamine2000 reagent (Invitrogen Life Technologies)を用いてAO-#7(50nM)又はMilli-Q(control)を添加した。37℃、5%CO2 インキュベーターにて3時間静置後、20%FBS含有IMDM(Iscove’s Modified Dulbecco’s Medium)培地 500μL/well、CDDP (最終濃度5μg/mL, 日本化薬株式会社、ランダ注 10mg/20mL)を加え、更に培養を続けた。24、48、72、96時間ごとにプレートを室温に平衡化し、調製したCell Titer-Glo Reagent (CellTiter-GloTM Luminesent Cell Viability Assay (Promega))を各ウェルに加え、マルチラベルプレートリーダー (2030 ARVO X3, PerkinElmer)にてルシフェラーゼ発光シグナルを測定した。
結果を図13に示す。図13のグラフは、コントロールの値を100%として、各値を算出してグラフ化した。CDDP(シスプラチン)添加よりも、CDDP+AO-#7の方が細胞増殖を抑制している。
【0122】
〔実施例4〕
KATOIII細胞を12well plateに1×105 cells/wellで播種し、Lipofectamine2000 reagent (Invitrogen Life Technologies)を用いてAO-#7(50nM)又はAO-#12(50nM)又はMilli-Q(control)を添加した。37℃、5%CO2 インキュベーターにて3時間静置後、20%FBS含有IMDM(Iscove’s Modified Dulbecco’s Medium)培地 500μL/wellを加え、更に培養を続けた。24、48、72、96時間ごとにプレートを室温に平衡化し、調製したCell Titer-Glo Reagent (CellTiter-GloTM Luminesent Cell Viability Assay (Promega))を各ウェルに加え、マルチラベルプレートリーダー (2030 ARVO X3, PerkinElmer)にてルシフェラーゼ発光シグナルを測定した。
結果を図14に示す。AO-#7は、CD44vmRNA (CD44v8-10)のスキッピング誘導が最も効果的なAO、AO-#12はCD44vmRNAのスキッピングにほとんど影響がなかったAOである。Milli-Q(水)はコントロール(比較)として使用した。AO-#7とAO-#12の比較により、AOの毒性による影響を確認した。AO-#7のみの添加でKATOIII細胞の増殖を抑制した。
本明細書で引用した全ての刊行物、特許および特許出願をそのまま参考として本明細書にとり入れるものとする。
【産業上の利用可能性】
【0123】
本発明は、がん治療に利用できる。
【配列表フリーテキスト】
【0124】
<配列番号1>
AO-#1の塩基配列を示す。5’-actatgactggagtccatat-3’
<配列番号2>
AO-#2の塩基配列を示す。5’-ttgcagtaggctgaagcgtt-3’
<配列番号3>
AO-#3の塩基配列を示す。5’-caaacctgtgtttggatttg-3’
<配列番号4>
AO-#4の塩基配列を示す。5’-aagaggtcctgtcctgtcca-3’
<配列番号5>
AO-#5の塩基配列を示す。5’-gctctgagaattactctgct-3’
<配列番号6>
AO-#6の塩基配列を示す。5'-cttcatgtgatgtagagaag-3’
<配列番号7>
AO-#7の塩基配列を示す。5'-tcttccaagccttcatgtga-3’
<配列番号8>
AO-#8の塩基配列を示す。5'-gatggtctttatcttcttcc-3'
<配列番号9>
AO-#9の塩基配列を示す。5'-gtagaagttgttggatggtc-3’
<配列番号10>
AO-#10の塩基配列を示す。5’-tgcttgatgtcagagtagaa-3’
<配列番号11>
AO-#11の塩基配列を示す。5'-gaaggtcctgctttccttcg-3'
<配列番号12>
AO-#12の塩基配列を示す。5’-CCACCAAACCTGTGTTTGGA-3’
<配列番号13>
AO-#13の塩基配列を示す。5’-CTGTCCAAATCTTCCACCAA-3’
<配列番号14>
AO-#14の塩基配列を示す。5’-GCGTTGTCATTGAAAGAGGT-3’
<配列番号15>
AO-#15の塩基配列を示す。5'-TTCCAAGCCTTCATGTGATG-3’
<配列番号16>
AO-#16の塩基配列を示す。5'-GTCTCTTCTTCCACCTGTGA-3'
<配列番号17>
AO-#17の塩基配列を示す。5'-TTCCAGTAAAGTAGTTGAGC-3'
<配列番号18>
AO-#18の塩基配列を示す。5'-TCCAAAGGACCCAGTCTTAG-3'
<配列番号19>
AO-#19の塩基配列を示す。5'-GTTGGAATCTCCAACAGTAA-3
<配列番号20>
CD44v8 mRNAの塩基配列を示す。
atatggactccagtcatagtacaacgcttcagcctactgcaaatccaaacacaggtttggtggaagatttggacaggacaggacctctttcaatgacaacgc
<配列番号21>
CD44v9 mRNAの塩基配列を示す。
agcagagtaattctcagagcttctctacatcacatgaaggcttggaagaagataaagaccatccaacaacttctactctgacatcaagca
<配列番号22>
CD44v10 mRNAの塩基配列を示す。
ataggaatgatgtcacaggtggaagaagagacccaaatcattctgaaggctcaactactttactggaaggttatacctctcattacccacacacgaaggaaagcaggaccttcatcccagtgacctcagctaagactgggtcctttggagttactgcagttactgttggagattccaactctaatgtcaatcgttccttatcag
<配列番号23>
バリアントエクソンのスキッピングを検出するためのPCR反応に用いたフォワードプライマーの塩基配列を示す。
5'-TCCCAGACGAAGACAGTCCCTGGAT-3'
<配列番号24>
バリアントエクソンのスキッピングを検出するためのPCR反応に用いたリバースプライマーの塩基配列を示す。
5'-CACTGGGGTGGAATGTGTCTTGGTC-3'
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]