(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
電磁誘導の相互誘導作用に基づき、送電側の送電コイルから受電側の受電コイルに、エアギャップを存し非接触で近接対応しつつ電力を供給する、非接触給電装置において、
該送電コイルおよび該受電コイルは、それぞれ、円形や方形等の環状をなすループコイルよりなると共に、外周外側に消磁コイルが配されており、該消磁コイルはループコイルよりなり、給電に際し、該非接触給電装置から近隣周辺へと外部漏洩放射される磁界に対し、互いに打ち消し合う磁界を生成し、
該送電コイルおよび該受電コイルは、それぞれ、ループ面外側の背面側に平板状の磁心コアそして電磁遮蔽材が配設され、該消磁コイルは、それぞれ、該磁心コアおよび該電磁遮蔽材よりも外周外側の側方向外部位置に配されており、
該消磁コイルは、それぞれ、該送電コイルや該受電コイルとは、流れる電流の向きが逆に設定され、もって誘起形成される磁路の向きが逆となると共に、該消磁コイルに流れる電流は、該送電コイルや該受電コイルに流れる電流に比し、5%以上〜15%以下程度の電流値よりなり、
該磁心コアは、フェライトコアよりなり、該電磁遮蔽材は、非磁性で高電導性の非鉄金属材料よりなり、
かつ該電磁遮蔽材は、該送電コイルや該受電コイルのループ面外側に配設されており、該消磁コイルにて生成された磁界を、該送電コイルと該受電コイル間のエアギャップ内には侵入させない外部磁界遮蔽機能を発揮し、もって給電を滞りなく実施させ、
又、該消磁コイルへの電流値は、該送電コイルと該受電コイルの発生磁束に基づく両者の合成磁束の外部漏洩係数を目安に決められ、5%未満では消磁不能の可能性が存すること、を特徴とする外部消磁式の非接触給電装置。
請求項1において、該消磁コイルは、該送電側および該受電側について、その両方に配されることなく、そのいずれか一方のみに配されること、を特徴とする外部消磁式の非接触給電装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
《課題》
ところで、このような非接触給電装置1については、次の課題が指摘されていた。
給電に際し、外部へと磁束の磁路bが形成される、という指摘があった。そして、送電コイル2の送電側カプラ8と受電コイル3の受電側カプラ9間で、高周波交流にて誘起された大きな密度の高周波磁界H
1(高周波電磁界,交番電磁界)そして強力な電磁波が、非接触給電装置1の送電側カプラ8と受電側カプラ9間から、外部へと漏洩,拡散,放射,伝搬される。
もって近隣周辺に悪影響を及ぼす、との指摘があった。例えば、10m〜100m程度離れたエリアにおいて、電磁波障害,電波妨害,人体機能障害、等を引き起こす虞が生じる。
【0006】
ところで、送電コイル2や受電コイル3の背面側には、磁心コア4,5や電磁遮蔽材6が配設されており、それぞれの背面方向外部については、漏洩,放射される磁界強度が低下し電磁波が削減されるが、側方向外部については、磁界,電磁波が強度低下,削減されることなく、漏洩,放射されやすかった。
すなわち、送電側カプラ8や受電側カプラ9の外周外側方向を中心に、外部へと磁路bが形成され、高周波磁界H
1そして電磁波が、外部へと漏洩,拡散,放射,伝搬する虞があった。
そこで電波法では、このような非接触給電装置1から10m離れた外部のA地点での磁界強度について、許容値が法的に規定されている(規制値45dBuA/m程度)。非接触給電装置1については、このような課題が課せられている状況にある。
【0007】
《磁路bについて》
上述した漏洩形成される磁路bの形成には、磁心コア4,5の磁気分極メカニズムが、寄与している。
すなわち前述したように、送電コイル2と受電コイル3間のエアギャップG内に、磁路aが形成されると、フェライトコア等の磁心コア4,5は、その磁界中で磁化され、磁気的に分極する(図中表示のN極,S極を参照)。
そして、受電側カプラ9の磁心コア5の端部が、例えばN極に分極するのに対し、送電側カプラ8の磁心コア4の端部は、例えばS極に分極する。このような磁気分極により、縦方向に磁気双極子が存在するのと同様な状態となる。磁心コア4,5端部が、N極とS極と異なるので引き合って、磁力が作用する。
もって磁路が形成されるが、送電側カプラ8と受電側カプラ9間から、非接触給電装置1の外部に開放された状態で形成され、外部の遠くまで届くことが可能となる。その磁界H
1が外部へと強力に漏洩,放射される可能性が生じる。
このようにして、送電コイル2と受電コイル3に加え、上述した磁心コア4,5の磁気分極により、磁路bが強力に形成され、例えば10m離れた図中A地点の磁界強度が強まるようになる。
【0008】
《図面について》
なお
図5は、説明用の略図である。すなわち、図面右半分の磁路a,bのみを図示し、左半分は、右半分に準じるので図示を省略。
又、磁心コア4,5のN極,S極の磁気分極表示は、給電時の一瞬の状態による。送電コイル2や受電コイル3に流れる電流は交流なので、対応してN極とS極の磁気分極は、交流の正負に合わせて時間的,周期的に交互に交番反転するが、図示はその一瞬を把握したものである。
【0009】
《本発明について》
本発明の外部消磁式の非接触給電装置は、このような実情に鑑み、上記従来技術の課題を解決すべくなされたものである。
そして本発明は、第1に、外部漏洩拡散される磁界を打ち消すことができ、第2に、しかもこれが簡単容易に実現される、外部消磁式の非接触給電装置を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
《各請求項について》
このような課題を解決する本発明の技術的手段は、特許請求の範囲に記載したように、次のとおりである。
請求項1については、次のとおり。
請求項1の外部消磁式の非接触給電装置は、電磁誘導の相互誘導作用に基づき、送電側の送電コイルから受電側の受電コイルに、エアギャップを存し非接触で近接対応しつつ電力を供給する。
そして、該送電コイルおよび該受電コイルは、それぞれ、円形や方形等の環状をなすループコイルよりなると共に、外周外側の消磁コイルが配されている。該消磁コイルは、ループコイルよりなり、給電に際し、該非接触給電装置から近隣周辺へと外部漏洩放射される磁界に対し、互いに打ち消し合う磁界を生成する。
【0011】
該送電コイルおよび該受電コイルは、それぞれ、ループ面外側の背面側に平板状の磁心コアそして電磁遮蔽材が、配設されている。該消磁コイルは、それぞれ、該磁心コアおよび該電磁遮蔽材よりも外周外側の側方向外部位置に配されている。
該消磁コイルは、それぞれ、該送電コイルや該受電コイルとは、流れる電流の向きが逆に設定され、もって誘起形成される磁路の向きが逆となると共に、該消磁コイルに流れる電流は、該送電コイルや該受電コイルに流れる電流に比し、5%以上〜15%以下程度の電流値よりなる。
該磁心コアは、フェライトコアよりなる。該電磁遮蔽材は、非磁性で高電導性の非鉄金属材料よりなる。
【0012】
かつ該電磁遮蔽材は、該送電コイルや該受電コイルのループ面外側に配設されている。該消磁コイルにて生成された磁界を、該送電コイルと該受電コイル間のエアギャップ内には侵入させない外部磁界遮蔽機能を発揮する。もって給電を滞りなく実施させる。
又、該消磁コイルへの電流値は、該送電コイルと該受電コイルの発生磁束に基づく両者の合成磁束の外部漏洩係数を目安に決められ、5%未満では消磁不能の可能性が存すること、を特徴とする。
請求項2については、次のとおり。
請求項2の外部消磁式の非接触給電装置は、請求項1において、該消磁コイルは、該送電側および該受電側について、その両方に配されることなく、そのいずれか一方のみに配されること、を特徴とする。
【0013】
《作用等について》
本発明は、このような手段よりなるので、次のようになる。
(1)非接触給電装置では、給電に際し、受電コイルが送電コイルにエアギャップを存して近接対応位置する。
(2)そして、送電コイルが通電され、受電コイルとの間に磁路が形成され、電磁誘導の相互誘導作用に基づき、送電側から受電側に電力が供給される。
(3)ところで、この種の非接触給電装置では、エアギャップ内に止まらず外部に向けても磁路が形成され、磁界が外部漏洩放射される虞がある。
(4)そこで、この非接触給電装置では、送電コイルや受電コイルの外周外側に、消磁コイルを配してなる。
(5)消磁コイルに流れる電流は、送電コイルや受電コイルに流れる電流とは向きが逆で、5%〜15%程度に設定される。
すると、外部漏洩放射される磁路と逆向きの磁路が形成され、外部漏洩放射される磁界を打ち消す磁界が生成される。
(6)この非接触給電装置は、このような逆相励磁による消磁界方式を採用したことにより、磁界の外部漏洩放射が解消され、近隣周辺への悪影響は回避される。
(7)そしてこれは、消磁コイルを配したことにより、簡単容易に実現される。
(8)ところで、消磁コイルにて生成された磁界が、送電コイルから受電コイルへの給電に悪影響を及ぼす虞はない。外部からの磁界は、電磁遮蔽材にて遮蔽され、エアギャップ内には侵入できない。
すなわち、消磁コイルによる磁界は、送電コイルと受電コイル間のエアギャップ内には侵入できず、外部だけに存在するようになる。
このように、エアギャップ内には、送電コイルと受電コイル間に誘起生成される磁路そして磁界のみが存在することになり、所期の通り給電が滞りなく実施される。
(9)なお消磁コイルは、送電側および受電側の両方に配することなく、いずれか一方のみに配してもよい。
(10)そこで、本発明に係る外部消磁式の非接触給電装置は、次の効果を発揮する。
【発明の効果】
【0014】
《第1の効果》
第1に、外部漏洩,拡散される磁界を、打ち消すことができる。
本発明の外部消磁式の非接触給電装置は、送電コイルや受電コイルの外周外側に消磁コイルを配する構成を採用したことにより、外部漏洩放射される磁界を打ち消す磁界を生成する。
もって、高周波電磁界そして電磁波の外部漏洩,拡散,放射,伝搬が、大幅に低減されるようになる。電波法の磁界強度の許容値規定も満たされるようになる。
従って、近隣周辺に電磁波障害,電波妨害,人体機能障害等の悪影響を及ぼす虞も、解消される。
又、消磁コイルにて生成された磁界が、送電コイルから受電コイルへの給電に悪影響を及ぼす虞はない。外部からの磁界は、電磁遮蔽材にて遮蔽され、給電が行われるエアギャップ内には侵入できない。もって所期の通り、給電が滞りなく実施される。
【0015】
《第2の効果》
第2に、しかもこれは、簡単容易に実現される。
本発明の外部消磁式の非接触給電装置は、ループコイルよりなる消磁コイルを、送電コイルや受電コイルの外周外側に配するという、簡単な構成を採用したことにより、上述した第1の効果を容易に実現する。
もって、製作コストに優れている。又、既存の非接触給電装置に対し、後付けで消磁コイルを追加することによっても、実施可能である。更に、消磁コイルに付帯して新たな回路部品,装置等を付設することも不要であり、信頼性にも優れている。
このように、この種従来技術に存した課題がすべて解決される等、本発明の発揮する効果は、顕著にして大なるものがある。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態について、詳細に説明する。
《非接触給電装置10について》
まず、本発明の前提として、非接触給電装置(WPT)10について、
図3,
図4を参照して、一般的に説明しておく。
非接触給電装置10は、電磁誘導の相互誘導作用に基づき、送電側回路11の送電コイル2から、負荷12に接続された受電側回路13の受電コイル3に、エアギャップGを存して近接対応位置しつつ、非接触で電力を供給する
【0018】
このような非接触給電装置10について、更に詳述する。まず、1次側の送電側回路11は、給電スタンド14等の給電エリアにおいて、地面,路面,その他の地上15側に定置配置される。
これに対し、2次側の受電側回路13は、電気自動車(EV)や電車等の車輌16,その他の移動体側に搭載される。車載の受電側回路13は、
図4のように、バッテリー17に接続されるのが代表的であるが、
図3のように、その他の負荷12に直接接続される場合もある。
給電に際し、送電側回路11の送電コイル2と受電側回路13の受電コイル3とは、数10mm〜数100mm程度の僅かなエアギャップGを存して、対応位置する。
そして
図4に図示したように、受電コイル3が送電コイル2に対し、上側等から対応位置して停止される停止給電方式が代表的である。停止給電方式の場合、受電コイル3と送電コイル2とは、上下等で対をなす対称構造よりなる。これに対し、受電コイル3が送電コイル2上を低速走行されつつ給電を行う、移動給電方式も可能である。
【0019】
送電側回路11の送電コイル2は、高周波電源(電源インバータ)18に接続されている。高周波電源18は、周波数等交換用インバータ等よりなり、例えば数kHz〜数10kHz〜数100kHz程度の高周波交流を、送電コイル2に向けて通電する。
受電側回路13の受電コイル3からの出力は、
図4ではバッテリー17に供給され、充電されたバッテリー17にて走行用モータMが駆動される。
図4中19は、交流を直流に変換するコンバータ(整流部や平滑部)、20は、直流を交流に変換するインバータ、21は、受電側回路13の出力ラインに設けられたスイッチである。
図3の例では、送電側回路11に、並列共振用のコンデンサ22が設けられ、受電側回路13にも並列共振用のコンデンサ23が設けられている。送電コイル2とコンデンサ22、および受電コイル3とコンデンサ23は、それぞれ共振回路を形成しており、共振によりエアギャップGの磁路に励磁無効電力が供給され、電力供給量の増大が図られている。なお、両共振回路の共振周波数そして高周波電源の電源周波数は、等しく揃えられている。
【0020】
電磁誘導の相互誘導作用については、次のとおり。給電に際しては、送電コイル2での磁束形成により、受電コイル3に誘導起電力を生成させ、もって送電コイル2から受電コイル3に電力を供給することは、公知公用である。
すなわち送電コイル2に、高周波電源18から給電交流,励磁電流を印加,通電することにより、自己誘導起電力が発生して磁界が送電コイル2の周囲に生じ、磁束がコイル面に対して直角方向に形成される。そして形成された磁束が、受電コイル3を貫き錯交することにより、誘導起電力が生成され磁界が誘起される。
このように誘起生成された磁界を利用して、数kW以上〜数10kW〜数100kW程度の電力供給が可能となる。送電コイル2側の磁束の磁気回路と、受電コイル3側の磁束の磁気回路は、相互間にも磁束の磁気回路つまり磁路aが形成されて、電磁結合される。非接触給電装置10では、このような電磁誘導の相互誘導作用に基づき、非接触給電が行われる。
非接触給電装置10について、一般的説明は以上のとおり。
【0021】
《送電コイル2,受電コイル3,その他について》
次に、送電コイル2,受電コイル3,その他について、
図1を参照して更に詳しく説明する。
送電コイル2および受電コイル3は、それぞれ、円形や方形等の環状をなすサーキュラーコイル,スパイラルコイル,その他のループコイルよりなる。
例えば、複数本の絶縁被覆された導線が、同一平面において並列化された平行位置関係を維持しつつ巻回され、もって全体的に平坦で肉厚の薄い扁平フラット状をなし、多くの場合、中央にスペース空間が形成される。
図示例は、円環構造のサーキュラーコイルよりなるが、方形環構造,その他の形状の環構造コイルも可能である。
【0022】
そして、このような送電コイル2および受電コイル3は、それぞれ、そのループ面外側の背面側に、平板状の磁心コア4,5そして電磁遮蔽材6,7が、内から外へ順に配設されている。
内側の磁心コア4,5は、代表的にはフェライトコアを使用され、強磁性体よりなる。もって、コイルインダクタンスを増加させ電磁結合を強化する機能と共に、形成される磁束を誘導,収集,方向付けすべく機能する。そして、送電コイル2や受電コイル3より大きな面積の円板状,環板状,その他の平板状をなし、同心に配置される。
外側の電磁遮蔽材6,7は、非磁性で高電導性の非鉄金属材料よりなり、平板状をなす。例えばアルミ板よりなり、透磁率が低く磁気遮蔽用として機能し、内部誘起される渦電流によって磁場を反射して、磁界放射(電磁界放射),電磁波漏出,磁束漏洩等を、遮蔽する。
なお、送電コイル2,磁心コア4,電磁遮蔽材6等にて、送電側カプラ8が構成されており、電磁遮蔽材6が、その容器のバックプレートを形成するケースも多い。同様に、受電コイル3,磁心コア5,電磁遮蔽材7等にて、受電側カプラ9が構成されており、電磁遮蔽材7が、その容器のバックプレートを形成するケースも多い。
送電コイル2,受電コイル3,その他については、以上のとおり。
【0023】
《本発明の概要》
以下、本発明の外部消磁式の非接触給電装置10について、
図1〜
図3を参照して説明する。まず、本発明の概要については、次のとおり。
本発明の外部消磁式の非接触給電装置10は、上述したように、電磁誘導の相互誘導作用に基づき、送電側の送電コイル2から受電側の受電コイル3に、エアギャップGを存し非接触で近接対応しつつ電力を供給する。
そして、送電コイル2や受電コイル3の外周外側に、消磁コイル24,25が配されている。消磁コイル24,25は、給電に際し、近隣周辺へと外部漏洩放射される磁界H
1に対し、互いに打ち消し合う磁界H
2を生成する。
本発明の概要については、以上のとおり。以下、このような本発明の外部消磁式の非接触給電装置10について、更に詳述する。
【0024】
《消磁コイル24,25について》
本発明で採用された消磁コイル24,25について、説明する。
図1に示したように、消磁コイル24は、送電コイル2,磁心コア4,電磁遮蔽材6等に対し、それらの外周外側,側方向外部位置に、配される。そして、送電側カプラ8容器の側方向外側位置に、間隔を存して付設突設されるか、又は、送電側カプラ8内に内蔵される。
同様に消磁コイル25は、受電コイル3,磁心コア5,電磁遮蔽材7等に対し、それらの外周外側,側方向外部位置に、配される。そして、受電側カプラ9容器の側方向外側位置に、間隔を存して付設突設されるか、又は、受電側カプラ9内に内蔵される。
消磁コイル24,25は、円環構造のサーキュラーコイル,スパイラルコイル,その他のループコイルよりなるが、これらについては、送電コイル2,受電コイル3について、前述した所に準じるので、その説明は省略する。
なお、
図1の(1)図は説明用の略図であり、図面右半分の磁路a,b,cのみを図示し、左半分は、右半分に準じるので図示を省略(前述した
図5と同様)。又、
図1の(2)図,
図2の(1)図において、電流Iは交番電流であり、もって
図1の(1)図,
図2の(1)図,(2)図において、発生する磁界Hも交番磁界である。
【0025】
そして消磁コイル24,25は、消磁機能を発揮する。まず
図2の(1)図は、その消磁原理の説明図である。
・同図において、第1ループ26と第2ループ27は、空間に存在する中心線P廻りの電流ループであり、それぞれループ面積S
1,S
2を有し、それぞれ交流電流I
1,I
2が流れる設定とする。
・すると、中心線Pから距離R離れたA地点に発生する第1ループ26の磁界H
1の強度は、下記数式1で表わされる。第2ループ27の磁界H
2の強度は、下記数式2で表わされる。
・この数式1,2のように、磁界Hは、ループ電流Iとループ面積Sに比例し、距離Rの3乗に逆比例(近傍界近似)する。
・そこで、ループ電流I
1,I
2の流れ方向を、互いに逆方向に設定する。図示では、第1ループ26の電流I
1が右廻りで、第2ループ27の電流I
2が左廻りに設定する。すると、A地点の磁界H
1と磁界H
2とは、互いに相殺し合って、打ち消し合うことになる。
本発明は、このような消磁原理に基づく。
【0028】
《消磁コイル24,25の消磁機能や消磁電流について》
消磁コイル24,25の消磁機能は、上述した消磁原理に基づく。すなわち、
図2の(2)図は、
図1の(1)図の消磁原理を、非接触給電装置10について、消磁コイル24,25の消磁機能として、応用する説明図である。
・まず、送電コイル2と受電コイル3によって、外部に磁路bが形成され(
図5も参照)、非接触給電装置10から例えば10m離れたA地点で、磁界H
1が発生する。
・そこで、送電コイル2の外周外側に間隔を存しつつ、例えば同芯で、より径大な消磁コイル24を置く。又、受電コイル3の外周外側に間隔を存しつつ、例えば同芯で、より径大な消磁コイル25を置く。
・そして、これらの消磁コイル24,25にて、A地点で磁界H
2を生成させる。その際、交流電流Iによる交番磁界H
1に対し、この交番磁界H
2の位相差が180°となるように、消磁コイル24,25に流れる交流電流Iを、逆向きに設定する。
・このように、送電コイル2,受電コイル3と消磁コイル24,25とについて、流れる電流Iの向きを逆に設定することにより、外部漏洩放射される磁路bの向きと、消磁用の磁路cの向きとが、逆になる。そして、A地点の磁界H
1と磁界H
2が、互いに打ち消し合い、その合成磁界レベルが低下する。
このように消磁コイル24,25は、消磁機能を発揮する。消磁コイル24,25は、非接触給電装置10から近隣周辺へと外部漏洩放射される磁界H
1に対し、互いに打ち消し合う磁界H
2を生成する。
【0029】
消磁コイル24,25に流れる消磁電流については、次のとおり。上述したように、送電コイル2と消磁コイル24とは、流れる電流Iの向きが逆に設定され、逆相励磁される。受電コイル3と消磁コイル25についても、同様です。
例えば
図3の回路図では、送電コイル2に流れる電流I
1の方向に対し、消磁コイル24に流れる励磁電流I
2の方向が逆になるように、結線,接続されている。受電コイル3に流れる電流I
3の方向に対し、消磁コイル25に流れる電流I
4の方向が逆になるように、結線,接続されている。
【0030】
このような電流I
2,I
4の電流値については、次のとおり。消磁コイル24,25に流れる電流I
2,I
4は、送電コイル2や受電コイル3に流れる電流I
1,I
3に比し、5%〜15%程度の電流値、代表的には10%前後の電流値でよいことになる。そして、消磁コイル24,25には、この電流I
2,I
4が流れるようなインダクタンス値のものが選ばれる。
そして、消磁コイル24,25への電流I
2,I
4は、具体的には、例えば次のように設定される。まず、消磁コイル24,25を配置しない状態で(配置しても通電しない状態で)、A地点での磁界H
1の強さを計測する。
しかる後、計測された強さを打ち消す磁界H
2生成に必要な電流I
2,I
4の電流値を、算出する。もって消磁コイル24,25について、その電流I
2,I
4が流される。
このようにして得られた多くの実際データ値から、上述した5%〜15%程度、特に10%前後の電流値が得られた次第である。
【0031】
因に、このような消磁コイル24,25に流す電流値は、次によっても理論的に裏付けられる。
すなわち、送電コイル2の発生磁束と受電コイル3の発生磁束とに基づき、空間には両者の合成磁束が放射される。そして、この合成磁束の内、幾分かが外部に漏洩することになる。
その漏洩係数は、通常0.05〜0.15程度、多くの場合0.10前後である(これが結合係数が1とならない原因の一つでもある)。
従って、消磁コイル24,25への消磁電流I
2,I
4は、この漏洩係数を目安に決めればよいことになる。すなわち、送電コイル2,受電コイル3に流れる給電電流I
1,I
3の5%〜15%程度、代表的には10%前後で良いことになる。5%未満では、消磁不能の可能性が存し、消磁には、15%を越える必要がないと共に、15%を越えることは、無駄なロスの電力消費となる次第である。
消磁コイル24,25については、以上のとおり。
【0032】
《作用等》
本発明の外部消磁式の非接触給電装置10は、以上説明したように構成されている。そこで以下のようになる。
(1)非接触給電装置10では、給電に際し、車輌16等に搭載された受電側回路13の受電コイル3が、路面等に定置配置された送電側回路11の送電コイル2に、エアギャップGを存して近接対応位置する(
図4を参照)。
【0033】
(2)そして送電コイル2が、高周波交流を励磁電流として通電され、もって送電コイル2と受電コイル3間のエアギャップGに、磁束の磁路aが形成され、両者が電磁結合される。
非接触給電装置10では、このような電磁誘導の相互誘導作用に基づき、電力が送電側回路11から受電側回路13へと、供給される(
図3,4を参照)。
【0034】
(3)ところで、この種の非接触給電装置10では、エアギャップG内に止まらず外部に向けても、磁路bが形成される可能性がある。
すなわち、送電側カプラ8と受電側カプラ9間において、高周波交流に基づき誘起生成された大きな密度の磁界(電磁界)H
1そして強力な電磁波が、外部へと漏洩,拡散,放射,伝搬される危険がある(
図1の(1)図を参照)。
【0035】
(4)そこで、この非接触給電装置10では、送電コイル2,磁心コア4,電磁遮蔽材6等の送電側カプラ8の外周外側,側方向外部位置に、消磁コイル24を配してなる(
図1の(1)図,(2)図を参照)。
又、受電コイル3,磁心コア5,電磁遮蔽材7等の受電側カプラ9の外周外側,側方向外部位置に、消磁コイル25を配してなる(
図1の(1)図,(2)図を参照)。
【0036】
(5)もって消磁コイル24,25は、外部漏洩放射される磁界H
1に対し、互いに打ち消し合う磁界H
2を生成する。
すなわち、消磁コイル24,25に流れる電流I
2,I
4を、送電コイル2,受電コイル3に流れる電流I
1,I
3と向きが逆で、5%〜15%に設定する(
図1の(2)図,
図3を参照)。
これにより、外部漏洩放射される磁路bとは向きが逆の磁路cが、形成される。そして、外部漏洩放射される磁界(電磁界)H
1を相殺して打ち消す磁界(電磁界)H
2が、生成される(
図1の(1)図,
図2の(2)図を参照)。
【0037】
(6)この非接触給電装置10は、このような逆相励磁による消磁界方式を採用してなる。
もって、大きな密度の磁界H
1そして強力な電磁波が、外部に漏洩,拡散,放射,伝搬される危険は、解消される。近隣周辺に悪影響を及ぼす事態は、回避される。
例えば、10m離れたA地点における磁界強度を、電波法の磁界強度の許容値以下とすることができ、許容値規定を十分に満たせるようになる。
【0038】
(7)そして、これは消磁コイル24,25を、送電コイル2や受電コイル3の外周外側に配したことにより、実現される。簡単な構成により容易に実現される。
【0039】
(8)なお、消磁コイル24,25にて生成された磁界(電磁界)H
2が、送電コイル2と受電コイル3間の給電に悪影響を及ぼす虞はない。
すなわち、送電側カプラ8や受電側カプラ9において、送電コイル2や受電コイル3のループ面外側には、電磁遮蔽材6,7がそれぞれ配設されており、外部からの磁界H
2を遮蔽する。
消磁コイル24,25による磁界H
2は、送電コイル2と受電コイル3間のエアギャップG内には侵入できず、外部だけに存在することになる(
図1の(1)図を参照)。
このように、エアギャップG内には、送電コイル2と受電コイル3によって誘起生成される磁路a、そして磁界のみが存在することになり、所期のとおりの給電が、滞りなく実施される。
【0040】
(9)ところで、以上説明した図示例において、消磁コイル24,25は、送電側カプラ8および受電側カプラ9の両方に配されていた。
しかし、本発明はこれに限定されるものではなく、その両方に配されることなく、そのいずれか一方のみに配されるようにしてもよい。例えば、電波法の磁界強度の許容値規定を満たすようであれば、一方のみに配してもよい。
作用等については、以上のとおり。