(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
移動体の操作に使用される操作グリップであって、所定の軸線を有する軸部と、該軸部に対して遊びを有して装着された把持部と、前記軸部および把持部の間に配置された圧力センサと、該圧力センサのセンシング部に当接して操作力を作用させる作用部と、前記軸部と前記把持部との間の遊びを利用して前記圧力センサおよび前記作用部を相互に離間する方向へ付勢する付勢手段とを備えた操作グリップにおいて、
前記軸部と前記把持部との間の遊びは、該把持部が該軸部の軸線に直交方向に向かって進退可能であるとともに、該軸線を中心に周方向への回動が許容されるものであり、
前記軸部は、前記把持部が進退する方向へ表面を向けた状態で形成される平面部を有し、
前記把持部は、前記軸部の平面部に対向する対向面部を有し、
前記圧力センサは、前記軸部の平面部または前記把持部の対向面部のいずれか一方の表面に該軸部の軸線を中心としてその両側に少なくとも各1個設置され、前記作用部は、他方の表面において該圧力センサのそれぞれに対向する位置に設けられている
ことを特徴とする操作グリップ。
前記圧力センサは、前記軸部の一組の平面部の双方において、該軸部の軸線を中心に対称な位置に少なくとも各1ヶ所に設置されており、前記作用部は、前記圧力センサのそれぞれに対向するように二つの前記対向面部に突設されており、前記把持部が前記回動軸芯構成部を軸として回動するとき、二つの前記対向面部のそれぞれにおいて、軸部の軸線を中心とする対称な位置の片方にのみ前記作用部が当接するものである請求項2に記載の操作グリップ。
前記作用部の先端は、平面領域と傾斜領域とに区分され、平面領域は、把持部が進退方向へ移動するときに圧力センサのセンシング部に当接し、傾斜領域は、把持部が回動するときに圧力センサのセンシング部に当接するものである請求項1ないし3のいずれかに記載の操作グリップ。
前記圧力センサは、前記軸部の平面部に設けられ、前記作用部は、前記圧力センサのそれぞれに対向して配置されている請求項1ないし4のいずれかに記載の操作グリップ。
請求項1ないし5のいずれかに記載の操作グリップを有する移動体であって、左右に装着される少なくとも一対の駆動車輪と、該駆動車輪を独立して駆動するために、該駆動車輪ごとに駆動力を付与する少なくとも一対のアクチュエータと、少なくとも1つの操作部とを備え、前記一対のアクチュエータに対して単一の前記操作グリップが前記操作部に設けられ、該操作グリップに設けられた前記圧力センサが検出する信号からアクチュエータの作動を制御するための制御部が搭載されており、前記制御部は、該操作グリップの複数の圧力センサによる圧力の検出状態から、前記把持部の移動の状態を判断するとともに、前記アクチュエータの出力を算出するものであることを特徴とする移動体。
前記操作グリップの前記圧力センサによって検出される圧力の状態は、前記把持部の進退方向への移動による同一表面上の複数のセンサの全てが受ける圧力の有無、該把持部の回動による同一平面上の複数のセンサのうちの一部が受ける圧力の有無、およびこれらの圧力の大きさであり、前記把持部の回動による圧力の検出により、左右の駆動車輪の間で駆動の状態を異ならせるように前記アクチュエータを制御するものである請求項6に記載の移動体。
さらに、前記車輪を操舵するための操舵用アクチュエータを備え、前記操作グリップの前記圧力センサによって検出される圧力の状態は、前記把持部の進退方向への移動による同一表面上の複数のセンサの全てが受ける圧力の有無、該把持部の回動による同一平面上の複数のセンサのうちの一部が受ける圧力の有無、およびこれらの圧力の大きさであり、前記把持部の回動による圧力の検出により、該操舵用アクチュエータを制御してなる請求項6に記載の移動体。
前記アクチュエータは、パワーアシスト機能を発揮させるものであってモータドライバを有する電動モータであり、前記制御部は、圧力センサによる検出値に基づきアシスト力を算出するとともに、該アシスト力に必要な前記電動モータの電圧値を算出する演算手段を備え、該演算手段によって算出される電圧指令に基づきモータドライバが電動モータの出力を制御してなる請求項6ないし8のいずれかに記載の移動体。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前掲の特許文献1に開示される技術は、一個所に集中させた圧力センサによって移動体を操作するものであり、上記操作部における圧力センサは、把持部分の内側にセンシング部を配置したものであって、オペレータは当該センシング部に対して直接グリップ力を付与させなければならず、そのためにグリップを把持する状態が固定化されることとなるものであった。また、移動方向を変化させる場合には、4つの圧力センサに作用するグリップ力の分布に応じて進行方向を算出する制御システムによるため、オペレータの動作によるグリップ力の変化が当該分布に反映されることとなり、操舵のための操作は個々のオペレータによって異なることが懸念されるものであった。
【0006】
また、前掲の特許文献2に開示される技術は、単一のハンドル軸に対し、4個所のハンドルセンサ(圧力センサ)を備え、当該ハンドル軸の変位の状態によって、歩行補助車の方向を操作するものであった。しかしながら、利用者はハンドル軸に支えられながら歩行補助車を操作するため、ハンドル軸は頻繁に変位し、走行の安定性が確保されるかについて懸念があった。また、歩行補助車にはブレーキ操作部が備えられており、歩行補助車の減速にはブレーキ操作によるため、結果的にハンドル軸の変位に対する中立的な状態(4個のセンサのいずれも作用させない状態)は存在せず、専ら、操作中断(歩行補助車の使用中止)は、ハンドル両端の把持部に設けられた他の圧力センサの検出によって判断せざるを得なかった。
【0007】
ところで、上記に使用される操作グリップは、その構成が詳細に示されておらず、圧力センサに対する操作力の提示の状態が不明確であった。すなわち、特許文献1では、オペレータが把持することにより、その握力によってグリップ力として提示するものであり、操作力は結局のところ、オペレータの握り方に依存することとなる。また、特許文献2では、ハンドル軸の変位の状態によって前後進、旋回の駆動力を得ることができるものとされるが、減速については、ブレーキ操作の検出によるか、または利用者が把持部から手を離した状態を把持部のセンサによって検出するものとされ、4個のハンドルセンサ(圧力センサの一種)による検出は、前後進と旋回との移動方向の区別を検出するためにのみ使用されるものと想定されるものであった。
【0008】
一般的に、移動体にパワーアシスト機能を備える目的には、移動体の重量が非常に大きい場合に駆動力によって補助する目的のほかに、積載する荷物の重量によって移動体全体の重量が変化する場合においても、当該重量の変化に応じてアシスト力を変化させ、操作力を安定させる目的がある。このような目的の場合においても、操作力を検出・測定し、その操作力に応じたアシスト力を付与させるようにしている。しかしながら、操作部に作用する操作力の向きに応じて、検出・測定される値が頻繁に変化することから、各種の条件を総合的に判断してアシスト力を付与させなければならなかった。そのための機構は複雑であり、操作部の構造も複雑なものとなっていた。
【0009】
そこで、本願の出願人は、比較的簡易な構造により操作力を検出・測定し得る操作グリップを開発し、特願2015−229909号の特許出願を行った。この発明によれば、操作グリップによる操作力の検知が進退方向に限定されるものであることから、例えば、四輪の移動体における二輪駆動の場合、操作グリップは、両駆動車輪ごとを操作するものとして、そのためのアクチュエータを個別に操作させるものであった。そのため、進行方向の変更には個別の操作グリップの操作力を調整することにより、左右の進行速度に差を設けることによって操作できるようにしていた。そして、旋回(留まった状態での方向変換)の場合には、一方の駆動車輪を前進させ、他方の駆動車輪を後退させるように操作すればよいものであった。また、パワーアシスト機能は重量の大きい移動体を操作するために用いられるため、パワーアシスト機能を有しない場合の移動体の操作のように、両手で二ヶ所を操作する場合と同様の方法で操作グリップを操作することにより、その操作力に応じて駆動力をアシストするように作動させることができるものであった。ところが、上記構成の操作グリップは、二つの駆動車輪に対し、個別に操作力を付与する必要性から、両手で操作する必要があり、片手での操作は考慮されていなかった。
【0010】
本発明は、上記諸点にかんがみてなされたものであって、その目的とするところは、進退方向および操舵の双方を片手で操作し得る操作グリップを提供し、この操作グリップを用いた移動体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで、操作グリップに係る本発明は、移動体の操作に使用される操作グリップであって、所定の軸線を有する軸部と、該軸部に対して遊びを有して装着された把持部と、前記軸部および把持部の間に配置された圧力センサと、該圧力センサのセンシング部に当接して操作力を作用させる作用部と、前記軸部と前記把持部との間の遊びを利用して前記圧力センサおよび前記作用部を相互に離間する方向へ付勢する付勢手段とを備えた操作グリップにおいて、前記軸部と前記把持部との間の遊びは、該把持部が該軸部の軸線に直交方向に向かって進退可能であるとともに、該軸線を中心に周方向への回動が許容されるものであり、前記軸部は、前記把持部が進退する方向へ表面を向けた状態で形成される平面部を有し、前記把持部は、前記軸部の平面部に対向する対向面部を有し、前記圧力センサは、前記軸部の平面部または前記把持部の対向面部のいずれか一方の表面に該軸部の軸線を中心としてその両側に少なくとも各1個設置され、前記作用部は、他方の表面において該圧力センサのそれぞれに対向する位置に設けられていることを特徴とするものである。
【0012】
上記構成によれば、軸部と把持部には遊びが形成されており、圧力センサと作用部とが離間する方向へ付勢されていることから、把持部に対して外力を作用させない(未操作の)状態においては、圧力センサによる圧力の検出はないが、上記付勢に抗して把持部を移動させることにより(操作時には)、圧力センサが所定圧力を検出して駆動力を操作することができる。操作時における把持部に対する操作力は、把持部の進退方向(軸部の軸線に直交する方向)への移動と、把持部の回動方向(軸部の軸線を中心とする周方向)への変位との二種類であり、いずれも前記付勢手段に抗して姿勢を変更させることにより操作力を付与することができる。圧力センサによる操作力(押圧力)の検出は、操作部が圧力センサのセンシング部に当接し、作用部によって押圧される圧力が検出・測定されることによるものであり、このときの圧力の大きさは、駆動力の大きさに反映させることができることとなる。
【0013】
すなわち、操作時において、把持部に付与される操作力は作用部に集中するため、把持部の他の部位が軸部に接触することがなく、操作力の全てを圧力センサに作用させることができる。また、操作力の付与を解除した場合には、付勢手段により作用部が圧力センサから離間することとなり、駆動力の作動を停止させることができる。なお、圧力センサおよび作用部は、軸部の平面部と把持部の対向面部と間に複数設けられており、これらが同時に操作力を検出する場合は、直進(進退)させるための操作力として検知し、一部の圧力センサにおいてのみ操作力を検出する場合は、操舵(または旋回)の移動のための操作力として検知することができる。また、操作グリップは、パワーアシスト装置を備える移動体におけるアクチュエータを操作する場合のほか、自走可能な走行体の操縦(コントローラ)に使用することもできる。いずれの場合においても、一つの操作グリップにより進退移動および操舵(または旋回)のための操作を可能にするものである。
【0014】
上記構成の操作グリップに係る発明において、前記軸部は、断面形状略矩形の本体部を有し、該本体部には向かい合う二組の外壁面が形成され、一組の外壁面を前記平面部とするものであり、前記軸部に形成される他の一組の外壁面は、該軸部の軸線を中心とする円弧状断面を有する回動軸芯構成部が突設された規制面とするものであり、前記把持部は、断面形状略矩形の中空領域を有し、該中空領域には向かい合う二組の内壁面が形成され、一組の内壁面を前記平面部に対向する二つの前記対向面部とするものであり、前記把持部における他の一組の内壁面は、前記回動軸芯構成部に摺接される摺接面とするものであってもよい。
【0015】
上記構成の場合には、軸部と把持部との間には、把持部が移動可能な程度の遊びを有しており、この両者はともに断面形状略矩形であるから、把持部の中空領域に軸部が挿通された状態となっている。軸部の規制面は、回動軸芯構成部が突設されており、この回動軸芯構成部が把持部の摺接面に摺接された状態となるため、把持部は、回動軸芯構成部を軸とする回動が可能である。また、把持部の対向面部の両側に配置される摺接面(一組)が、ともに軸部の回動軸芯構成部(一組)によって直線的な移動方向が制限されており、その制限された方向へ、摺接面と回動軸芯構成部とを摺動させることにより、把持部の進退方向への移動が許容されることとなる。そして、把持部が進退方向に移動する場合には、軸部の軸線の両側に配置される複数の圧力センサに対し作用部が同時に当接することとなり、把持部が回動する場合には、いずれか一方の圧力センサに対してのみ作動部が当接することなる。これにより、把持部の異なる移動の状態を検出し、それに応じてアクチュエータを作動させることが可能となる。
【0016】
また、上記構成の操作グリップに係る発明において、前記圧力センサは、前記軸部の一組の平面部の双方において、該軸部の軸線を中心に対称な位置に少なくとも各1ヶ所に設置されており、前記作用部は、前記圧力センサのそれぞれに対向するように二つの前記対向面部に突設されており、前記把持部が前記回動軸芯構成部を軸として回動するとき、二つの前記対向面部のそれぞれにおいて、軸部の軸線を中心とする対称な位置の片方にのみ前記作用部が当接するものと構成することができる。
【0017】
上記構成の場合には、軸部の一組の平面部と、把持部の一組の対向面部は、ともに遊びによって形成される間隙を介して相互に対向する二組の相対する表面を形成し、その一方の間隙を小さく(把持部を当該方向へ移動)すれば、他方の間隙は拡大することとなる。従って、把持部をいずれか一方へ移動させることにより、相対する一方の表面の間隙を小さくさせた側においてのみ、当該表面を接近させ、相互に対向する圧力センサと作用部とを当接させることができる。また、把持部を逆向きに移動させる場合は、他方の間隙のみと小さくさせることができ、当該他方において相対する表面を接近させ、圧力センサと作用部とを当接させることができる。この場合において、圧力センサと作用部とは、二組の相対する表面のうちいずれか一方が当接する場合、他方が当接することはないため、一方の当接が前進方向を検知するためのものとすれば、他方の当接が後退方向を検知するためにものとなる。
【0018】
また、把持部は、軸部との間に形成される遊びの範囲で回動可能であり、軸部の回動軸芯構成部に把持部の摺接面を摺接させた状態が維持されながら、当該回動軸芯構成部を軸として回動させることにより、軸部と把持部との間において相対する表面は、相互に傾斜した状態となる。これにより、一組の相対する表面の相対的な関係において、間隙の小さくなる部分と拡大する部分とが生じることとなる。そして、圧力センサは軸部の軸線を中心に両側に配置されていることから、そのうちの一方においては作用部の当接を受け、他方においては離間する状態となる。その結果、一組の相対する表面において、作用部が当接する圧力センサと、当接しない圧力センサが存在し、把持部が回動していることを検知することが可能となる。また、二組の相対する表面を対称に形成することにより、他方の一組の相対する表面においても同時に、異なる圧力センサに対して異なる作用状態とすることができる。この場合においては、二組の相対する表面に分かれて同時に圧力センサが作用部の当接を感知させることができる。
【0019】
さらに、上記構成の操作グリップに係る各発明において、前記作用部の先端は、平面領域と傾斜領域とに区分され、平面領域は、把持部が進退方向へ移動するときに圧力センサのセンシング部に当接し、傾斜領域は、把持部が回動するときに圧力センサのセンシング部に当接するように構成することができる。
【0020】
本発明では、圧力センサと作用部とが、軸部の平面部と把持部の対向面部とに分かれて設置され、その両者で形成される間隙を変化させることによって、圧力センサに対する作用部の圧力が検出可能となる。しかし、把持部を直線移動(進退方向へ移動)させる場合と回転移動(回動方向へ移動)させる場合とでは、圧力センサのセンシング部(センサ面)に対する作用部の表面の角度が変化することとなり、作用部の表面が圧力センサに点接触または線接触する状態となり得る。このような場合には、作用部による押圧力が集中し、検出される圧力が増大するため把持部に与えられる操作力を正確に検出することができなくなることがあり得る。そこで、上記構成によれば、把持部を直線移動(進退方向へ移動)させる場合に作用部が圧力センサに当接する面と、回転移動(回動方向へ移動)させる場合に圧力センサに当接する面とを区別することができ、異なる二種類の移動状態に応じて、それぞれ面接触させることができる。
【0021】
上記構成の操作グリップに係る各発明において、前記圧力センサは、前記軸部の平面部に設けられ、前記作用部は、前記圧力センサのそれぞれに対向して配置される構成とすることができる。
【0022】
上記構成の場合には、圧力センサは軸部に設けられることとなり、把持部の移動状態に関係なく圧力センサおよびその信号線を軸部の内部に固定することができる。また、軸部に圧力センサを設ける場合には、センサ本体を軸部に埋設し、センシング部(圧力を受ける部分)のみを平面部の表面に露出させた状態で設置することが可能となる。これにより、把持部に設けられる作用部の当接を受ける位置が、平面部と同一平面上となるため、把持部との間隙(遊び)を大きく設ける必要がなく、把持部の移動に必要な最小限度の遊びを形成すればよいものとなる。
【0023】
他方、移動体に係る本発明は、前記各構成の操作グリップを有する移動体であって、左右に装着される少なくとも一対の駆動車輪と、該駆動車輪を独立して駆動するために、該駆動車輪ごとに駆動力を付与する少なくとも一対のアクチュエータと、少なくとも1つの操作部とを備え、前記一対のアクチュエータに対して単一の前記操作グリップが前記操作部に設けられ、該操作グリップに設けられた前記圧力センサが検出する信号からアクチュエータの作動を制御するための制御部が搭載されており、前記制御部は、該操作グリップの複数の圧力センサによる圧力の検出状態から、前記把持部の移動の状態を判断するとともに、前記アクチュエータの出力を算出するものであることを特徴とする。
【0024】
上記構成によれば、操作グリップの操作により、把持部の移動状態に応じた複数の圧力センサによる圧力の検出値が制御部に入力され、当該複数の圧力センサの各検出値の有無に基づき、把持部の移動が進退方向か、または回動方向かを判断し、また、検出された値の大きさに基づいて、アクチュエータの出力を制御し、移動体に対する駆動の状態を調整することができる。そして、左右に装着される一対の駆動車輪を同じ方向へ同時に回転させれば前進または後退させることが可能となり、いずれか一方のみを駆動すれば進行方向が変化し、または左右を相対的に逆方向となるように回転駆動させることにより旋回させることが可能となる。また、圧力センサの検出値の大きさに基づいてアクチュエータの出力を変化させることから、車輪に対する駆動力はパワーアシストとして機能させることができる。従って、把持部に対するユーザの操作力に応じて駆動力の作動状態を変化させることから、把持部(操作グリップ)により移動体を移動させようとする際に、把持部(操作グリップ)に作用する外力から、所望の移動状態のための駆動力を補助させることができるのである。なお、少なくとも一対の駆動車輪を備える移動体は、二輪による移動体のほか、四輪(もしくは四輪以上)のうちの二輪を駆動車輪とするもの、さらに四輪全てを駆動車輪とするものなどがある。
【0025】
上記構成では、前記操作グリップの前記圧力センサによって検出される圧力の状態は、前記把持部の進退方向への移動による同一表面上の複数のセンサの全てが受ける圧力の有無、該把持部の回動による同一平面上の複数のセンサのうちの一部が受ける圧力の有無、およびこれらの圧力の大きさであり、前記把持部の回動による圧力の検出により、左右の駆動車輪の間で駆動の状態を異ならせるように前記アクチュエータを制御するものとしている。この場合の操舵および旋回は、左右の駆動車輪の相対的な差違によって可能とするものである。
【0026】
また、左右の駆動車輪の駆動状態を相対的に差違を設けることのほかに、前記車輪を操舵するための操舵用アクチュエータを付加的に備え、前記把持部の回動による圧力の検出により、該操舵用アクチュエータを制御するように構成してもよい。
【0027】
上記構成の場合には、左右の車輪の駆動力の差違によることなく移動体の操舵を可能にするものである。なお、操舵用アクチュエータとは、当該車輪に操舵軸が設けられ、その操舵軸を中心に直接的に駆動力を付与する場合に限らず、移動のための駆動力を操舵に変換する場合などもあり得る。
【0028】
また、上記各構成の移動体に係る発明において、前記アクチュエータは、パワーアシスト機能を発揮させるものであってモータドライバを有する電動モータであり、前記制御部は、圧力センサによる検出値に基づきアシスト力を算出するとともに、該アシスト力に必要な前記電動モータの電圧値を算出する演算手段を備え、該演算手段によって算出される電圧指令に基づきモータドライバが電動モータの出力を制御してなる構成とすることができる。
【0029】
上記構成によれば、左右に設置される電動モータの駆動力を、左右個別に制御することによって、前進または後退および操舵を可能にするものである。この場合、操作部に設置される操作グリップによって検出される圧力センサの情報は、当該圧力センサが検出する把持部の状態に応じて左右のアクチュエータを作動させることから、単一の操作グリップによって進退移動および操舵(または旋回)の各操作を可能にし得るものである。
【発明の効果】
【0030】
操作グリップに係る本発明によれば、基本的な構成として、圧力センサと作用部とは付勢手段によって離間される方向へ付勢されていることから、把持部に対して外力を作用させない場合は、圧力センサが作用部による圧力を検出しないものである。この状態は、操作力が付与されておらず、移動体を移動させるための駆動力が停止される状態(中立的な状態)とすることができる。そのうえで、軸部と把持部との間に圧力センサと作用部を分けて配置することにより、前記付勢に抗して把持部を移動させることにより、圧力センサによる圧力の検出を可能にするものである。また、軸部と把持部とは進退および回動が可能な遊びを有して設けられることから、軸部を例えば移動体の操作部等に固定することにより、把持部による進退方向および回動方向への移動が許容されることとなる。そして、圧力センサおよび作用部は、それぞれ軸部の軸線を中心としてその両側に少なくとも各1個設置されることから、複数の圧力センサによる圧力検知の状況により、把持部が進退移動する場合のみならず回動する状態を判別することができ、単一の操作グリップによって、移動体の進退および操舵の操作情報を得ることが可能となる。これにより、ユーザが片手によって操作する場合であっても、移動体に対する進退方向および操舵の両方を操作することができる。
【0031】
また、把持部を操作することにより、その操作力は作用部に集中することから、この作用部による押圧力の検出によって操作力を検出・測定することができる。従って、この把持部の操作により、パワーアシスト機能を有する移動体にあっては、アシスト力を作用させる際のスイッチとしての機能を果たすことができ、操作力の測定によりアシストすべき駆動の程度を調整することが可能となる。
【0032】
他方、移動体に係る本発明によれば、単一の操作グリップにおける把持部の進退移動および回動の状態を検出することにより、移動体を進退させ、また操舵するように、アクチュエータを作動させることができる。また、パワーアシスト機能を有する移動体にあっては、移動体の進行方向に対して適度な補助力を付与することができ、自走可能な移動体にあっては、当該移動体を単一の操作グリップによって操縦することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、操作グリップに係る実施形態を示す図である。この図に示されるように、本実施形態の操作グリップAの概略は、所定方向に軸線Bを有する軸部1と、この軸部1に対して遊びを有する状態で包囲するように設けられた把持部2とで構成されている。本実施形態の把持部2は、軸線Bの方向に沿って中央から二分割された略対称の把持部構成部材2a,2bで構成され、これらの把持部構成部材2a,2bによって、軸部1を両側から挟んだ状態で一体化することによって、軸部1を内蔵する状態の操作グリップAを構成させている。
【0035】
軸部1は、図示のように、断面形状を略矩形とする長尺な棒状部材で構成された本体部11と、その両端に同一の軸線Bを有する円柱状に形成された連結部12,13とで構成されている。連結部12,13は、操作グリップAを移動体等に装着する際に使用するためのものであり、円柱状としているのは、移動体等に設けられる把手部分が一般的に円筒状であることから、この円筒内部に挿入可能とするためである。従って、当該連結部12,13の形状は、装着すべき対象物に応じて適宜変更可能である。また、連結部12,13は本体部11と同じ軸線Bに沿って一体的に設けられており、両者の中心には、同軸のる芯材14が挿入される構成となっている。芯材14の長さは連結部12,13の両端の長さと同じ程度としており、軸部1の全体に渡って中央に配置させている。この芯材14は、軸部1に剛性を与えるためのものであり、特に、連結部12,13が移動体等の把手部分に固定されるのに対し、本体部11は把持部2による操作の作用を受けるものであるから、両者間に与える曲げ応力に耐えるものとしている。これは、軸部1をプラスチック等の樹脂製材料で構成する場合に、変形に耐え得る強度を保持させるためのものであって、軸部1が独自に高強度を有する場合には、芯材14を設けない構成とすることも可能である。
【0036】
ところで、軸部1の本体部11は、断面形状が略矩形(図は略正方形)であることから、その外壁面15,16,17,18は、それぞれ向かい合って(両側に分かれて)二組が相互に平行な状態で形成されている。これらの外壁面15〜18のうち、一組の外壁面15,16と、他の一組の外壁面17,18は、それぞれ異なる機能を有するものである。すなわち、一方の一組の外壁面15,16は、把持部2(特に把持部構成部材2a,2b)に向かって設置される平面部であり、把持部2(特に把持部構成部材2a,2b)との間で間隙を形成する壁面である。他方の一組の外壁面17,18は、把持部2の移動を規制するために設けられた規制面であり、その表面に断面を円弧状とする回動軸芯構成部10a,10bが突設され、その回動軸芯構成部10a,10bの端縁が把持部2(特に把持部構成部材2a,2b)の内壁面に摺接されて、当該把持部2の可動範囲を制限するものである。
【0037】
他方、把持部2は、上記軸部1の本体部11との間に遊びを形成するために、把持部構成部材2a,2bを一体化した状態において、断面を略矩形とする中空領域が形成される構成としており、この中空領域は、向かい合う二組の内壁面が構成され得るものとなっている。すなわち、二分割された把持部構成部材2a,2bには、断面略コ字状の凹状領域21a,21bが形成され、各凹状領域21a,21bは、中央に位置する壁面22a,22bと、その両側に対向して形成される壁面23a,23b,24a,24bを有している。対向する壁面23a,23b,24a,24bは、把持部構成部材2a,2bを一体化することにより、相互に対称な壁面が連続して、二つの壁面となり、これが相互に向かい合って構成されることから、一組の内壁面を構成する。また、中間位置の壁面24a,24bは、把持部構成部材2a,2bを一体化するときに、相互に向かい合う状態となり一組の内壁面を構成するものである。
【0038】
さらに、把持部構成部材2a,2bを一体化するときには、中間位置の壁面22a,22bを、軸部1の平面部15,16に対向する状態とする(対向面部として機能させる)ことにより、他方の壁面23a,23b,24a,24bが、軸部1の規制面17,18に設けられる回動軸芯構成部10a,10bの摺接を受ける(摺接面として機能する)状態となるものである。
【0039】
一体化された摺接面23a,23b,24a,24bは、回動軸芯構成部10a,10bの摺接を受けるものではあるが、規制面17,18の本体部分(外壁面)との間には間隙を有するものであり、回動軸芯構成部10a,10bの弧状端縁との摺接状態を維持することにより、軸部1を固定する状態において、把持部2を回動させることができるように構成している。また、対向面部22a,22bは、軸部1の平面部15,16に対向しつつ間隙が形成されるものであり、その間隙を拡大・縮小させる方向への移動を可能にしている。このときの移動は、摺接面23a,23b,24a,24bに対して、回動軸芯構成部10a,10bが摺接された状態を維持し得る範囲であり、専ら進退方向への移動が許容されるものである。
【0040】
なお、軸部1の平面部15,16と把持部2の対向面部22a,22bとの間には、軸線方向略中央において、圧力センサ3と作用部4とが対向して配置され、また、軸線方向両端近傍には複数の圧縮コイルバネ5,6が設けられている。本実施形態では、圧力センサ3を軸部1の平面部15,16に配置し、作用部4を把持部2の対向面部22a,22bに配置しており、圧縮コイルバネ5,6は、平面部15,16および対向面部22a,22bの双方に設けた収容穴51,52,61,62に部分的に収容されており、位置が固定された状態において、両者を離間させる方向へ付勢させるように配置されている。
【0041】
また、圧力センサ3は、フィルム状の圧力センサを使用しており、センシング部が、平面状であり、当該平面に対して作用部4が押圧するとき、その有無および大きさを検出できるものである。この種の圧力センサ3が、軸部1の軸線Bを中心に両側に分かれて各1個ずつ設けられている。これは、同時に圧力を受けている状態か、いずれか一方のみが圧力を受けている状態かを分析するためのものである。なお、図中には、片方の平面部16に設置される状態が示されており、他方の平面部15の状態が紙面上に示されていないが、本実施形態では、反対側の平面部15にも対称な状態で設置されている。また、そのセンサに押圧力を作用させる作用部4についても同様である。
【0042】
把持部構成部材2a,2bの外部表面は、断面を略半円形としており、一体化することによって断面が円形となるものである。把持部構成部材2a,2bを一体化したとき、把持部2の中央部分が太鼓状となり、その両端が鍔状となるように、把持部構成部材2a,2bの外形が適宜位置において変更されている。太鼓状の部分はユーザが使用する際に把持するためのものであり把持部2の本体部であり、鍔状の部分は本体部両端のフランジ部とで構成される。なお、フランジ部に貫通孔25を設けることにより、ボルト等の締着具26が挿通可能となり、把持部構成部材2a,2bの双方に跨がって締着可能としている。また、貫通孔25が設けられる位置の接合面は、相互に嵌合する雄部27と雌部28が設けられ、両者を嵌合することにより一体化の際の位置決めを可能としている。
【0043】
上記のような構成であるから、中央に軸部2を配置しつつ把持部構成部材2a,2bを一体化した状態において、
図2に示すように、軸部2の平面部15,16と、把持部2の対向面部22a,22bとの間には、適宜な間隙C1,C2が形成された状態となる。このとき、前述の圧縮コイルバネ5,6が両面15,16,22a,22bの間に介在しており、当該間隙C1,C2を拡大する方向へ付勢している。従って、この圧縮コイルバネ5,6の付勢に抗して把持部2を移動することにより、間隙C1,C2を変化小させることができるものである。
【0044】
ここで、操作グリップAは、軸部2の両端に形成される連結部12,13を利用して、移動体等の操作部に装着される。一般的な操作部としては、円筒形のパイプ状の部材P1,P2であるため、当該パイプ状部材P1,P2の中空内部H1,H2に対して、連結部12,13を圧入することにより両者を圧着させ、操作部に軸部1を一体化させるのである。このとき、両者の圧着により、把持部2の移動(特に回動)によって、軸部1が共回りすることがなく、軸部1の向きを一定に保つことできる。なお、軸部1の回転を防止するために、図示のような止めネジを使用してもよい。
【0045】
また、連結部12,13が操作部のパイプ状部材P1,P2に装着されることにより、当該パイプ状部材P1,P2の先端面S1,S2が、把持部2の両端面(フランジ部の外側端面)S21,S22に摺接し、把持部2の軸線方向への移動を制限させている。なお、パイプ状部材P1,P2の端面S1,S2と、把持部2の両端面S21,S22との摺接は、把持部2が軸線方向への移動のみを制限するものであり、パイプ状部材P1,P2に固定される軸部1に対して、把持部2を相対的に移動させる際には、摺接される面は摺動可能となっている。
【0046】
把持部構成部材2a,2bを一体化してなる把持部2と、軸部1との関係をさらに詳細に説明する。
図3(a)は、操作グリップAの平面図であり、(b)はIIIB−IIIB線における断面図を示している。また、
図4(a)は、
図3(a)中のIVA−IVA線における断面図であり、(b)はIVB−IVB線における断面図である。さらに、
図5(a)は、
図4(a)中のVA−VA線における断面図であり、
図5(b)は、
図4(b)中のVB−VB線における断面図である。
【0047】
これらの図に示されているように、軸部1は、一体化した把持部2の内部(中空領域の内部)に遊嵌された状態となっており、その四方に所定の遊びが形成されている。すなわち、軸部1の平面部15,16は、把持部2の対向面部21a,21bとの間に間隙C1,C2を形成しており、また、軸部1の規制面17,18は、把持部2の摺接面23,24との間に遊びを有し、規制面17,18から突出して形成される回動軸芯構成部10a,10bの先端のみが摺接された状態となっているのである(
図3(a)参照)。
【0048】
また、前述した軸部1の平面部15,16と把持部2の対向面部21a,21bとの間には圧縮コイルバネ5,6が介在しており、両者間の間隙C1,C2をそれぞれ離間させる方向へ付勢させている(
図3(a)および(b)参照)。従って、軸部1の両側の間隙C1,C2に介在させた圧縮コイルバネ5,6の付勢力が双方ともに同程度であれば、把持部2に対して外力を作用しない状態において、両者の間隙C1,C2は同程度に維持されることとなる。本実施形態では、両者の間隙C1,C2を同程度の間隙となるように、同一のバネを同じ長さで使用している。
【0049】
さらに、上記のように形成される間隙C1,C2を利用し、把持部2の対向面部21a,21bから突出する作用部4を設けている。この作用部4は、当該対向面部21a,21bの表面から適宜な突出長を有するものであり、すなわち、把持部2に外力を与えない状態において、操作部4の先端面が軸部1の平面部16,17に到達しない程度に突出させているのである(
図3(a)および(b)参照)。そして、把持部2に対して外力が作用することにより、圧縮コイルバネ5,6の付勢に抗して把持部2が移動するとき、作用部4の先端面が軸部1の平面部15,16に接近・到達することとなるのである。このとき、離間する側は、圧縮コイルバネ5,6の付勢に応じた移動となるが、復元する際の間隙C1,C2を維持させるために付勢力を付与した状態となるものである。
【0050】
また、作用部4は、把持部2の対向面部21a,21bの中央から離れた位置に(軸部1の軸線の両側)に各1個ずつ配置されており、軸部1の平面部15,16(軸部1)において、当該作用部4に対向する位置には同数の圧力センサ3が配置され、把持部2の移動に伴って個々の作用部4がそれぞれ対向する圧力センサ3に当接し得る状態となっている(
図4(a)参照)。
【0051】
なお、圧力センサ3は、フィルム状の圧力センサであり、肉厚が0.1mm程度の薄肉であるが、本体部分が軸部1に埋め込まれ、センシング部(センサ表面)31のみが軸部1の平面部15,16の表面に露出する状態で設けられ、すなわち、センシング部31が、軸部1の平面部15,16から突出することもなく、かつ没するものでもない状態で配置されている(
図4(a)および
図5(a)参照)。圧力センサ3によって検出される信号は、信号線32によって操作グリップAの外方へ送られるが、この信号線32は、軸部1の内部に埋設されており、軸部1の端部において外部との接続を可能としている。外部との接続には、前述の操作部として使用されるパイプ状部材P1(またはP2)の中空内部が利用される。このように、圧力センサ3を軸部1の側に設けることにより、固定的に配置される軸部1と、これを支持するパイプ状部材P1(またはP2)によって信号線を固定化することができる。なお、フィルム状の圧力センサは、フィルム状のピエゾ抵抗式圧力センサを使用することができるほか、静電容量型の圧力センサ、ひずみゲージ、ロードセル、感圧導電性ゴムなどを使用してもよい。また、信号線32は、軸部1の平面11,12に金属薄膜を積層して形成させたものでもよい。
【0052】
他方、圧縮コイルバネ5,6は、軸部1の中心(軸線)の両側に分かれて配置されるとともに(
図4(b)参照)、軸部1の軸線方向に分かれて(軸部両端近傍)に配置されている(
図5(b)参照)。相互に対向する平面部15,16および対向面21a,21bの四隅において4ヶ所に分かれて配置されることにより、前記間隙C1,C2が全体的に保持されるように付勢力を発揮することができる。また、当該4ヶ所には各2個ずつの圧縮コイルバネ4が配置されており(
図5(b)参照)、十分な反発力によって間隙C1,C2の復元を容易にしている。なお、圧力センサ3と作用部4との間隙は僅かな程度(例えば、0.5mm程度)とすることにより、ユーザによる操作時において大きな緩み(ガタ)を感じさせないものとすることができる。また、圧縮コイルバネ5,6の圧縮反発力を緩やかなものとすることにより、ユーザに与える反発力を抑えることができ、間隙C1,C2を復元可能な程度に最小限の大きさであればよいものである。
【0053】
次に、本実施形態の作動態様について説明する。
図6は、把持部2を移動させた状態を示す平面図であり、
図6(a)は進退方向への移動を、
図6(b)は回動方向への移動を、それぞれ示すものである。
【0054】
本実施形態の操作グリップAは、上記のような構成であるから、例えば、移動体の操作部等に軸部1を連結することにより、軸部1は固定された状態となり、把持部2のみを移動させることとなる。このときの把持部2は、軸部1との間に形成される間隙C1,C2を変化させる方向への移動が許容され、基本的には、両間隙C1,C2に対する直線的な進退方向と、回動軸芯構成部10a,10bを軸とする回動方向が許容される。なお、両間隙C1,C2による遊びの範囲において進退方向と回動方向との双方に対する移動は可能であるが、作用部4がセンサ3に当接した状態で移動が制限されることから、実質的には二方向の移動を同時に行うことができないようにしている。これは軸部1と把持部2との遊びの程度を極めて限定的な程度に調整したことによるものである。
【0055】
そこで、まず、把持部2を進退方向へ移動する場合は、
図6(a)に示されるように、例えば、両間隙C1,C2を前後方向とし、その一方に向けて(図中における紙面の上向き)に移動させる場合、一方の間隙C2が縮小し、他方の間隙C1が拡大する。縮小した側の間隙C2では、把持部2の対向面21bに突設される作用部4が、軸部2の平面部16に設置される圧力センサ3のセンシング部31に当接することとなる。圧力センサ3は、その当接を受け、第1に、作用される圧力の有無が検出され、第2に、作用部4から受ける圧力の大きさが検出される。圧力の大きさは、把持部2の操作力の大きさを意味し、直線方向への移動体を移動させようとする意図として判断される。
【0056】
このとき、一方の間隙C2においては、当然のことながら、軸線の両側に配置される二つのセンサ3は、いずれも同様に作用部4によって当接された状態となるものである。また、他方の間隙C1は、拡大する状態となるため、作用部4が圧力センサ3に当接することはない。このように、一方の平面部16の二つの圧力センサ3が同時に作用部4による圧力を検出し得る状態において、把持部2の移動は、移動体に対する前進の操作力と認識させることができる。そして、把持部2を逆向きへ移動する場合には、移動体に対する後進の後退の操作力として認識させることが可能となる。従って、把持部2の進退方向の移動は、移動体に対する進退を操作するための操作力として処理させることができる。
【0057】
なお、上記の操作力を解除する場合(把持部2に対する外力付与を中止する場合)には、一方の間隙C2に介在される圧縮コイルバネ5,6に付勢力によって、作用部4は圧力センサ3から離間され、他方の間隙C1においても同様に圧縮コイルバネ5,6が作用して、両間隙C1,C2は、ともに同じ程度の大きさに戻ることとなる。
【0058】
次に、把持部を回動方向へ移動する場合には、
図6(b)に示すように、回動軸芯構成部10a,10bを軸として、把持部2を時計回り(または反時計回り)に回転させるものである。この回動軸芯構成部10a,10bの断面形状は、軸部1の軸線を中心とする円SCと同じ径の円弧状であり、これに摺接する把持部2の摺接面23,24は、回動軸芯構成部10a,10bの周縁に沿って摺動可能である。そのため、把持部2の回動は、結果的に軸部1の軸線を中心とする回動となるものである。この回動により、把持部2の二つの対向面21a,21bは、軸部1の二つの平面部15,16に対し、いずれも有角状(傾斜した状態)となり、両間隙C1,C2は、いずれも同じ間隙C1,C2において縮小する間隙C1a,C2bと拡大する間隙C1b,C2aが形成されることとなる。
【0059】
このとき、縮小する間隙C1a,C2bの側に配置される作用部4は、それに対向する圧力センサ3に当接し、拡大する間隙C1b,C2aの側に配置される作用部4は圧力センサ3から離間することとなる。この状態は、矩形の断面を有する軸部1の対角位置における二つの圧力センサ3が同時に圧力を検出することとなり、この対角位置における圧力センサ3の検知により回動方向の操作力として認識させることができる。この場合においても圧力センサ3は圧力の大きさを検出することから、その操作力の大きさを検出し得るものである。
【0060】
なお、図は把持部2を時計回りに回動させた状態を示しているが、反時計回りへ回動させる場合は、把持部2の対向面21a,21bの傾斜の方向が逆向きとなるものであり、対称な対角位置の圧力センサ3による作用部4の圧力を検出することとなる。この対角位置の二つの圧力センサ3による検出の組合せにより、操作力が時計回り・反時計回りのいずれであるかを識別することが可能となる。
【0061】
ところで、それぞれの作用部4の先端面は、
図7に示されるように、平面領域41と傾斜領域42とに区分されている。平面領域41とは、把持部2の対向面21a,21bに平行な面で構成された部分を示し、傾斜領域42とは、平面領域41に対して傾斜した面で構成された部分を示すものである(
図7(b)参照)。平面領域41は、把持部2が前述のような進退方向へ移動する際に、圧力センサ3に当接する範囲を確保するためであり、傾斜領域42は、前述のように回動する際の当接面を確保するためである。そこで、作用部4の平面視における形状を円形とする場合、その1/2を占める半円部分において両領域41,42が形成され、いずれの状態においても同じ面積相当分が圧力センサ3のセンシング部31に当接できるようにしている(
図7(a))。
【0062】
なお、傾斜領域42は、平面領域41に対して、把持部2の回動可能な回転角R(
図6(b)参照)と同じ角度Raに相当する部分が切欠かれた状態で傾斜しており、把持部2が所定の範囲で回動し、作用部4が圧力センサ3に到達した状態において、傾斜領域42の表面が圧力センサ3のセンシング部31に適度な面積相当において当接することとなる(
図7(d)参照)。このような当接状態により、把持部2の回動に際して付与される操作力は、圧力センサ3に対して点接触または線接触などによる圧力の集中を回避し、面接触による分布荷重を与えることにより、進退移動の場合(
図7(c))と同程度の圧力による操作力の算出を可能にするものである。
【0063】
また、回動軸芯構成部10a(,10b)と、摺接面23(,24)との摺接状態は、
図8に示すように、円弧状断面の接線方向に摺接面23(,24)が摺接する状態となっており、摺接面23(,24)が当該円弧に対して接線方向であれば、把持部2を進退方向へ移動する場合(
図8(b)参照)であっても、回動方向へ移動する場合(
図8(c)参照)であっても摺接状態は維持される。なお、摺接面23(,24)は、軸部1の規制面17(,18)との間に間隙が形成され、回動軸芯構成部10a(,10b)は、規制面17(,18)から突出することにより摺接面23(,24)に摺接可能となっている。
【0064】
規制面17(,18)と摺接面23(,24)との間に形成された間隙は、把持部2を回動方向へ移動する際に、規制面17(,18)の両端位置が摺接面23(,24)に向かって変位するときの逃げ領域を確保するためである(
図8(c)参照)。そして、この間隙は大きく設ける必要はなく、回動可能な角度の設定に応じて広狭が調整されている。また、回動軸芯構成部10a(,10b)との摺接位置を調整するために、図示のような摺接領域7を形成してもよい。この摺接領域7は、摺接面17(,18)の中央付近を切欠いて構成されてものであり、回動軸芯構成部10a(,10b)の突出長(軸線を中心とする円弧の大きさ)に応じて、摺接可能な領域を確保するものである。従って、摺接状態が維持される限定的な領域に設けられ、すなわち、把持部2が進退方向へ移動する場合(
図8(b))および回動する方向へ移動する場合(
図8(c))のいずれの状態においても回動軸芯構成部10a(,10b)が摺接すべき範囲に設けられるものである。なお、対向する二つの(一組の)摺接面23,24の全体的な間隔が、両側の回動軸芯構成部10a,10bの外径と一致する場合には、前記摺接領域7を形成する必要はないが、摺接のための特殊な加工(例えば表面円滑化仕上げ、強化処理など)が必要な場合は、当該摺接領域7を構成することを前提にしてもよい。
【0065】
操作グリップに係る本発明の実施形態は上記のとおりであるが、上記実施形態は、本発明の一例を示すものであり、本発明が上記実施形態に限定されるものではない。従って、上記実施形態について適宜変更した構成とすることができる。例えば、付勢手段として圧縮コイルバネ5,6を使用しているが、付勢手段としては、これに限定されるものではなく、板バネを介在させる構成であってもよく、また、ゴム等の弾性体を使用してもよい。要するに、外力が作用しない状態において、軸部1と把持部2との間に適宜な間隙C1,C2を形成させることができればよいのである。
【0066】
次に、移動体に係る本発明の実施形態について説明する。
図9は、搬送用プラットフォームにパワーアシスト機能を搭載したものに操作グリップを使用した状態を例示している。この図に示されるように、移動体(プラットフォーム)100の基本的な構造は、移動体の本体を構成するフレームFLと、荷物またはパレット等を積載するためのフォーク状荷台部FOとを有している。フォーク状荷台部FOの先端には、回転自在なキャスタ状車輪103,104が設けられ、この車輪103,104には駆動力が付与されず、転動が自在となっており、また、オフセット軸によってフォーク状荷台部FOに装着され、オフセット軸を中心に水平面での回転(操舵)が自在となっている。フレームFLの下部基端には、駆動車輪105,106が設けられている。フレームFLの基台には、駆動制御ボックス107が設けられ、図示せぬバッテリ、アクチュエータとしての電動モータ、演算手段としてのマイクロコンピュータなどが搭載されている。そして、フレームFLには操作部101,102が設けられ、この操作部101,102の間に操作グリップAの両端を挿入することによって、当該操作部101,102に操作グリップAが設置されている。
【0067】
ここで、キャスタ状車輪103,104および駆動車輪105,106は、それぞれ左右対称に設けられ、それぞれ一対になって設けられている。また、駆動車輪105,106を駆動するための電動モータも左右一対に用意され、個別の電動モータは、個別にモータドライバを有している。なお、操作部101,102に装着される操作グリップAは、前述のような構成であり(
図1参照)、軸部1の向きは、圧力センサ3が設置される二つの平面部15,16を前後方向としている。この操作グリップAの把持部2に対する操作力が前記圧力センサ3によって検出され、その検出値はマイクロコンピュータに送られるものである。演算部としてマイクロコンピュータは、操作グリップAの圧力センサが検出する圧力の状態に応じて操作力を算出し、モータドライバを介して左右の駆動車輪105,106を駆動するための電動モータを制御する構成となっている。操作力に応じた駆動力をアシストすることにより、パワーアシスト機能を発揮させることができるものとなっている。
【0068】
操作グリップAに設けられる圧力センサは、把持部の移動が進退方向か回動方向かを区別して検知できるものである(
図6)。また、同時に押圧力を検出することにより操舵力を計測することが可能である。そこで、圧力センサが進退方向への操作力を検出する場合、左右の電動モータを作動し、双方の駆動車輪105,106を回転させる。このとき、操作力が前方に対するものである場合は、前進させるように駆動車輪105,106を駆動し、後方に対するものである場合は後進させるように駆動するのである。
【0069】
また、圧力センサが回動方向の操作力を検出する場合は、操舵力として処理される。この場合、操舵に必要な駆動車輪105,106を選択して駆動させるのである。操舵の方法には二種類あり、その一つは、いずれか一方の駆動車輪のみを駆動するもので、もう一つは、一方を前進させ、他方を後退させるような駆動力を付与するものである。例えば、右方向へ操舵する場合は、前者の方法では、左側の駆動車輪105のみを駆動するものであり、この場合は、右側の駆動車輪106は駆動されないため、この右側の駆動車輪106を中心に左側の駆動車輪105が円弧状の軌道を描きながら、進行方向を右へ変更することとなる。このとき、キャスタ状車輪103,104は、当該変更される向きに合致するように、転動方向を変えながら従動することとなる。後者の方法では、左側の駆動車輪105を前進させ、右側の駆動車輪を後退させることにより、両者105,106の中間位置を軸として回転することとなる。この場合においてもキャスタ状車輪103,104は、向きを自在に変更して、その回転に応じて従動することとなる。上記の操舵は、圧力センサが回転方向の操作力を検出した際に処理されるものであるが、処理の態様(前記のいずれの方法によるか)を予め想定し、いずれかの方法により操舵される。
【0070】
上記のような駆動状態を制御するための制御システムの概略を説明する。
図10は、制御システムの概略図である。この図に示されているように、操作グリップA(正確には圧力センサ)によって検出された操作力(圧力センサ回路による検出値)は、制御装置としてのマイクロコンピュータ(以下、マイコンと略称する)に送られ、検出の有無とともに、検出値の大きさに応じて、電動モータの電圧値を演算する。このとき、複数の圧力センサによる操作力検出の有無に応じて、直線的な移動(進退)または回転の移動(操舵)のいずれかが判断され、その判断に基づいて左右の電動モータを制御するためのモータドライバのいずれを選択するか、または双方のモータドライバが選択される場合は、これらに対して前進または後退の別が決定される。また、マイコンの演算機能(演算手段)によって、圧力の検出結果から電動モータの出力が算出され、その結果が出力される。出力すべき電圧値(演算結果)の指令は、モータドライバに送られ、所定の電圧値に制御されつつ電動モータ(駆動モータ)を回転させるのである。このモータによる回転駆動力は車輪105,106に伝達され、所定のトルク(回転力)によって車輪105,106を回転させることとなる。なお、駆動モータ(電動モータ)の出力軸(駆動軸)には、エンコーダが設置され、エンコーダで計測された駆動軸の回転状態がマイコンに入力される。マイコンによる演算値に基づく駆動状態と、現実の駆動状態とを比較し、指令値を再演算するためである。
【0071】
圧力センサ回路、マイコン、モータドライバおよび駆動モータは、いずれも搭載されるバッテリの電源が使用される。このバッテリの電圧の情報は、マイコンに送られておりバッテリの残量に応じて、運転可能か充電を要するかが判断され、表示部としてのバッテリランプの点灯状態を制御させている。バッテリランプの点灯状態は、任意に定めた区別に基づいて、色彩の変化または点灯、点滅、消灯などの区別等によって、操作者に覚知させるものである。
【0072】
このように、操作力に応じて、駆動車輪105,106が駆動力を受けて回転することにより、これらの移動体100を移動させる際に、パワーアシスト機能が発揮されるものとなり、大重量の積載物(または搭乗者)が搭載された状態においても、パワーアシスト機能により容易に移動させることが可能となるのである。すなわち、大重量の積載物が搭載された状態の場合には、操作部(把持部)に対して強力に操作力を及ぼすため、その操作力に応じたアシスト力が付与することにより、積載重量に対して小さな操作力で移動させることができる。
【0073】
これは、上述のようなプラットフォームに限定されるものではなく、小型または軽量の移動体においても使用することができる。この場合は、パワーアシスト機能を発揮するというより、操縦するための操作グリップとして使用する場合もあり得る。さらに、二輪駆動による移動体に限らず、四輪駆動の移動体においても使用可能であり、また二輪走行体における操縦用としても使用可能である。
【0074】
例えば、
図11に示すように、二輪走行体200における操縦用として操作グリップAを使用するものがある。この二輪走行体200は、左右の駆動車輪205,206を備え、荷台部208の内部に必要なバッテリ、アクチュエータ、マイクロコンピュータおよびモータドライバ等が搭載されたものであり、荷台部208の上部に積載物等を搭載できるものである。荷台部208は、特開2011−131660号公報や特開2016−078722号公報に開示されるように、移動可能なウエイト(カウンタウエイト)を内蔵し、重量センサや傾斜角センサによる荷台部208の状態を検知するとともに、カウンタウエイトの移動を制御することにより、水平な状態を保持させることができる。なお、走行体とは、自走によって移動可能な移動体を意味するものである。
【0075】
この種の走行体200の場合には、操作グリップAによる操作力を作動スイッチのように使用することができる。すなわち、把持部を前方へ移動させて前進を開始させ、後方へ移動させて後退を開始させるなどである。操舵に関しては、走行中に把持部を回転させることにより、左右の駆動車輪205,206の回転速度に差を設けて操舵し、停止状態における回転操作により、旋回させることも可能となる。圧力センサに対する操作力は、それらの速度を調整するために使用することも可能である。なお、この種の移動体は、自走式の走行体に限定されるものではなく、パワーアシスト機能を有する移動体であってもよい。
【0076】
さらに、上記のような構成の操作グリップAは、移動式台車のようなものでなくてもよく、また、操作のためでなく、トリガーハンドルとして使用することができる。その例示として、
図12に示すような立ち乗り型の平行二輪車300のトリガーハンドルとして使用したものがあり得る。この平行二輪車300は、平行な二輪305,306の間にステップ308を有する基台が設けられ、その中央に駆動制御ボックス307が設置されている。ステップ308は、この制御ボックス307の左右に分かれて片足ずつ載せることができるように構成されたものである。駆動制御ボックス307には、重心位置を検出するセンサ類が設けられ、立ち乗り状態によって重心を移動させることにより、その重心の移動方向へ車輪305,306を駆動させるものである。そこで、操作グリップAは、ステップ308から立設される支柱309の上端部に設けられる。支柱309の上端は、通常の重心移動時に身体を支えるために設けられた(操作のためではない)ハンドル部310,310が設けられており、その中央から操作部301,302を立設し、当該操作部301,302に操作グリップAを設置するのである。このように、始動時におけるトリガーハンドルとして操作グリップAを使用すれば、乗車の後にバランスを整えた状態で平行二輪車300を始動させることができる。なお、二輪305,306を駆動するためのアクチュエータは、基部の下面に設定されており、立ち乗り状態で移動させた重心の位置が検出され、左右の車輪305,306の駆動力を制御して前進、後退および操舵を可能にするものである。
【0077】
また、上記構成の平行二輪車300は、操作グリップAによって操作可能な構成とすることができる。すなわち、重心の移動を検出するための制御機能を、ステップ308を水平に維持させるための制御機能として使用することにより、重心の位置にかかわらず、ステップ308を水平な状態に維持させることができる。そして、操作グリップAの操作は、前後方向および旋回方向への移動のために使用するのである。なお、ステップ308の平行維持には、前述の二輪走行体200と同様に、カウンタウエイトを内蔵し、重心検知によるセンサ類によってステップ308の状態を検知し、カウンタウエイトを移動させることによることができる。
【0078】
このように、操作グリップAによって操作する場合には、片手で平行二輪車300を操作し得ることとなるから、例えば工場内において、一方の手で荷物を抱え、他方の手で平行二輪車300を操作することも可能となる。また、重心検知による走行と、操作グリップAによる走行とを切り替え可能とし、重心移動による走行を選択させてもよい。
【0079】
移動体に係る本発明の実施形態は、上記のような構成であるから、比較的簡易な構成により移動体の操作に使用することができる。そして、その移動体が移動する状態は、ユーザの感覚的な作動状態に合致することから、ユーザによる操作は極めて容易なものである。
【0080】
本発明のそれぞれの実施形態は以上のとおりであるが、これらは一例を示すものであって、本発明がこれらの実施形態に限定される趣旨ではない。そこで、前述の実施形態をさらに変形することも可能である。
【0081】
例えば、操作グリップAに係る上記の実施形態では、圧力センサ3は、軸部1に形成される一組(二つ)の平面部15,16にそれぞれ設けられ、作用部4は、把持部2に形成される一組(二つ)の対向面部21a,21bにそれぞれ設けられた形態(
図3参照)のみを説明したが、一方の平面部15に圧力センサ3を、これに対向する対向面21aに作用部4を設ける構成でもよい。このような構成の場合には、把持部2を進退方向に移動させるとき、前進または後退のうち、いずれか一方についてのみ操作力を検出し、移動体は前進または後退のみについてアシストされるように構成される。また、上記構成の場合において、把持部2を回動方向へ移動する場合には、片方の平面部15に設けた複数の(通常は2個の)圧力センサに対する偏った(いずれか一方のみの)操作力を検知することとなるが、このような操作力の検出であっても移動体を操作することは可能である。
【0082】
また、上記の実施形態では、圧力センサ3および作用部4の設置について、圧力センサ3を軸部1に設け、作用部4を把持部2に設けているが、軸部1に作用部4を、把持部2に圧力センサ3を設置してもよい。この場合、圧力センサ2により検出される信号を送信するための信号線は、軸部1に埋設することができないが、別途外部配線を使用すればよい。さらに、把持部2は、二分割したものを一体化するように構成したが、これは、軸部1を内蔵するために最も一般的な方法であり、製造上の便宜によるものであるが、当初より一体化した形態または多数のパーツによって組み立てる形態としてもよく、把持部2の軸線方向への移動を制限させるために、操作部(パイプ状部材P1,P2)との摺接を可能にしているが、軸部1を内蔵した状態で軸線方向への相互の移動を制限させる構成としてもよい。
【0083】
他方、移動体に係る実施形態においては、一つの操作グリップAを使用しているが、用途に応じて、複数の操作グリップAを使用してもよい。本来的には、単一の操作グリップAにより進退移動および操舵の操作を可能にするものであるが、例えば、左右の駆動車輪を個別に操作すべき要請がある場合は、左右の駆動車輪に対して各一つの操作グリップAによって制御させてもよい。
【0084】
また、操舵に係る構成については、上記のような場合のほか、駆動車輪または従動車輪の操舵軸を駆動させてもよい。この場合は、例えば、駆動車輪の回転駆動力の一部を操舵軸に分離するように構成することができる。駆動力の分離には、例えば差動式によることができる。なお、操舵力は、差動式に限らず、操舵用のモータを別途設ける構成でもよい。