特許第6537079号(P6537079)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6537079
(24)【登録日】2019年6月14日
(45)【発行日】2019年7月3日
(54)【発明の名称】インダクタの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 17/00 20060101AFI20190625BHJP
   H01F 17/02 20060101ALI20190625BHJP
   H01F 41/04 20060101ALI20190625BHJP
【FI】
   H01F17/00 D
   H01F17/02
   H01F41/04 B
【請求項の数】13
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-184157(P2017-184157)
(22)【出願日】2017年9月25日
(65)【公開番号】特開2018-182281(P2018-182281A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2017年9月25日
(31)【優先権主張番号】10-2017-0047310
(32)【優先日】2017年4月12日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ペン、セ ウン
(72)【発明者】
【氏名】ベ、ジョン セオク
(72)【発明者】
【氏名】キム、ソ ヨル
【審査官】 五貫 昭一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/007858(WO,A1)
【文献】 特開2003−37366(JP,A)
【文献】 特開2015−70175(JP,A)
【文献】 特開2004−296497(JP,A)
【文献】 特開2015−41693(JP,A)
【文献】 特開2016−225611(JP,A)
【文献】 特開2005−183952(JP,A)
【文献】 特開2005−191408(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/00
H01F 17/02
H01F 41/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上にコイルパターンを形成する段階と、
前記基板上に前記コイルパターンを覆うように絶縁層を形成する段階と、
前記絶縁層に、前記絶縁層の一面から前記コイルパターンまで延長するように貫通孔を形成する段階と、
前記貫通孔の内部にめっきにより第1導電層を形成する段階と、
前記第1導電層の上部にめっきにより第2導電層を形成して、第1及び第2導電層を含むビアを形成する段階と、
前記基板と、前記コイルパターンならびに前記第1及び第2導電層を含む前記絶縁層とを分離する段階と、
前記分離した複数の絶縁層を積層して本体を形成する段階と、を含み、
前記コイルパターンの一部を前記ビアで接続し、且つ前記ビアで接続されたコイルパターン間の距離を他のコイルパターン間の距離よりも大きくする、インダクタの製造方法。
【請求項2】
前記第1導電層は、前記ビアで接続された部分における前記コイルパターン間の距離に対して0.7〜1.0の割合の厚さを有する、請求項に記載のインダクタの製造方法。
【請求項3】
前記第2導電層の厚さは3.0〜7.0μmである、請求項またはに記載のインダクタの製造方法。
【請求項4】
前記第2導電層は、前記第1導電層よりも硬度が低い金属を含む、請求項からのいずれか一項に記載のインダクタの製造方法。
【請求項5】
前記第1導電層と前記第2導電層は互いに異なる組成を有し、前記第1導電層は、銀(Ag)、銅(Cu)、及びビスマス(Bi)のうち少なくとも一つを含む、請求項からのいずれか一項に記載のインダクタの製造方法。
【請求項6】
前記第1導電層と前記第2導電層は互いに異なる組成を有し、前記第2導電層は、スズ(Sn)、スズ(Sn)−銀(Ag)、スズ(Sn)−銅(Cu)、及びスズ(Sn)−ビスマス(Bi)のうち少なくとも一つを含む、請求項からのいずれか一項に記載のインダクタの製造方法。
【請求項7】
前記絶縁層は、感光性樹脂、エポキシ系、アクリル系、ポリイミド系、フェノール系、及びスルホン系のうち少なくとも一つである、請求項からのいずれか一項に記載のインダクタの製造方法。
【請求項8】
前記絶縁層が前記感光性樹脂からなる場合、前記貫通孔はフォトレジスト法で形成される、請求項に記載のインダクタの製造方法。
【請求項9】
第1絶縁層の内部に配置された第1コイルパターンが露出するように第1絶縁層を貫通する貫通孔を形成し、前記貫通孔の内部にビアを形成する段階を含み、
前記ビアを形成する段階は、
前記露出している第1コイルパターン上に直接形成し、且つ前記貫通孔の内部に第1導電層を形成する段階と、
前記第1導電層の上部に形成し、且つ前記貫通孔の内部に第2導電層を形成する段階と、を含み、
前記第2導電層は、第1導電層よりも硬度が低い物質で形成し、且つ貫通孔の上面を超えて形成し、
インダクタコイルを形成するために、第2コイルパターンが第2絶縁層と接するように内部に前記第2コイルパターンを有する前記第2絶縁層を前記第1絶縁層上に積層する段階を含む、インダクタの製造方法。
【請求項10】
前記第1絶縁層上に前記第2コイルパターンを含む前記第2絶縁層を積層する段階は、前記第2導電層を1%〜20%程度圧着する段階を含む、請求項に記載のインダクタの製造方法。
【請求項11】
前記第2導電層を形成する段階は、前記第2導電層の厚さが3.0〜7.0μmとなるように形成する段階を含む、請求項10に記載のインダクタの製造方法。
【請求項12】
前記第1導電層を形成する段階は、前記第1導電層を、銀(Ag)、銅(Cu)、及びビスマス(Bi)のうち少なくとも一つを用いて電解めっき法により形成し、
前記第2導電層を形成する段階は、前記第2導電層を、スズ(Sn)、スズ(Sn)−銀(Ag)、スズ(Sn)−銅(Cu)、及びスズ(Sn)−ビスマス(Bi)のうち少なくとも一つを用いて電解めっき法により形成する、請求項から11のいずれか一項に記載のインダクタの製造方法。
【請求項13】
前記第2導電層を形成する段階は、前記第2導電層を、前記貫通孔の上面を越えて形成し、前記第2導電層の上面がラウンド形状の扇形を有するように形成する段階を含む、請求項から12のいずれか一項に記載のインダクタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インダクタ及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般の積層インダクタは、導体パターンが形成された複数の絶縁層を積層した構造を有しており、上記導体パターンは、各絶縁層に形成された導電性ビアによって順に接続されて積層方向に沿って重なりながら螺旋構造を有するコイルを成す。また、上記コイルの両端は、積層体の外部面に引き出されて、外部端子と接続された構造を有する。
【0003】
インダクタは、主に回路基板に実装されるSMD型(surface mount device type)である。特に、高周波インダクタの場合は、100MHz以上の高周波で用いられるもので、最近の通信市場で使用量が増えている。高周波インダクタにおいて最も重要な特徴は、チップインダクタの効率を示す品質係数Q(Quality factor)特性を確保することである。この際、Q=wL/Rで表され、Q値とは指定された周波数帯域におけるインダクタンス(L)と抵抗(R)の割合のことである。
【0004】
インダクタは、特定の規格容量(インダクタンス、inductance;L)に合わせて製品を製造するため、同一の容量で高いQ特性を実現する必要がある。同一の容量でQ特性を高めるためには、抵抗(R)を下げることを必要とする。また、抵抗(R)を下げるためには、コイルパターンの厚さを増加させなければならない。コイルパターンはスクリーン印刷(screen printing)方法で製造されるが、スクリーン印刷でコイルパターンの厚さを増加させるには限界がある。また、セラミック層上に厚いコイルパターンを形成する場合、コイルパターンが形成される部分とコイルが形成されていない部分との段差により、複数のシートを積層する際に、クラック(crack)、デラミネーション(delamination)のような問題が発生しかねない。
【0005】
また、コイルパターンを接続するビアは、金属めっきまたは導電性ペースト(metal paste)印刷を介して形成することができる。金属めっきを用いてビアを形成する場合は、金属の硬度が高くなり、積層時の層間絶縁距離が不均一に形成される可能性があり、導電性ペーストを用いてビアを形成する場合は、コイルの抵抗が高くなり、インダクタのQ特性を減少させるおそれがある。
【0006】
これにより、コイルの抵抗を下げるとともに、積層時に均一な絶縁距離を確保することができるインダクタの構造が求められている。
【0007】
下記先行技術文献に記載された特許文献1はビアの製造方法に関するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2001−217550号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
一方、コイルパターンの層間絶縁距離が不均一に形成されると、インダクタのQ特性を確保することが難しくなる。
【0010】
本発明のいくつかの目的の一つは、異種の金属からなる第1及び第2導電層で形成されたビアを含むことにより、コイルの抵抗を下げるとともに、インダクタのQ特性を向上させることができるインダクタを提供することである。
【0011】
また、本発明のいくつかの目的の一つは、第1及び第2導電層のうち第2導電層の厚さを限定することにより、層間コイルを接続した後におけるコイル間の接続信頼性を確保することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明を通じて提供するいくつかの解決手段の一つは、複数のコイルパターンがビアで接続されて形成されたコイルを内部に配置した本体を含み、上記ビアは、第1導電層と、上記第1導電層上に形成される第2導電層と、を含み、上記ビアで接続されたコイルパターン間の距離は、他のコイルパターン間の距離よりも大きいインダクタを提供する。
【0013】
本発明の他の実施形態によると、基板上にコイルパターンを形成する段階と、上記基板上に上記コイルパターンを覆うように絶縁層を形成する段階と、上記絶縁層に、上記絶縁層の一面から上記コイルパターンまで延長するように貫通孔を形成する段階と、上記貫通孔の内部にめっきにより第1導電層を形成する段階と、上記第1導電層の上部にめっきにより第2導電層を形成して、第1及び第2導電層を含むビアを形成する段階と、上記基板と、上記コイルパターン並びに上記第1及び第2導電層を含む上記絶縁層とを分離する段階と、上記分離した複数の絶縁層を積層して本体を形成する段階と、を含み、上記コイルパターンの一部を上記ビアで接続し、且つ上記ビアで接続されたコイルパターン間の距離を他のコイルパターン間の距離よりも大きくするインダクタの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一実施形態によるインダクタは、異種の金属からなる第1及び第2導電層を含むビアでコイルパターンを接続してコイルを形成することで、コイルの抵抗を下げるとともに、インダクタのQ特性を向上させることができる。
【0015】
また、第2導電層に、第1導電層に比べて強度が低い材料を適用することで、熱加圧工程における層間距離の不均一を改善することができ、第2導電層の厚さを調節することで、コイルの層間接続をより一定に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態によるインダクタを示す概略的な斜視図である。
図2図1のI−I'の方向に沿って切断した切断面を概略的に示すもので、本発明の一実施形態によるインダクタを示す概略的な断面図である。
図3図1のII−II'方向に沿って切断した切断面を概略的に示すもので、本発明の一実施形態によるインダクタを示す概略的な側面断面図である。
図4a】本発明の一実施形態によるインダクタの製造方法を説明するための概略的な工程断面図である。
図4b】本発明の一実施形態によるインダクタの製造方法を説明するための概略的な工程断面図である。
図4c】本発明の一実施形態によるインダクタの製造方法を説明するための概略的な工程断面図である。
図4d】本発明の一実施形態によるインダクタの製造方法を説明するための概略的な工程断面図である。
図4e】本発明の一実施形態によるインダクタの製造方法を説明するための概略的な工程断面図である。
図4f】本発明の一実施形態によるインダクタの製造方法を説明するための概略的な工程断面図である。
図5a】本発明の他の実施形態によるインダクタの製造方法を説明するための概略的な工程断面図である。
図5b】本発明の他の実施形態によるインダクタの製造方法を説明するための概略的な工程断面図である。
図5c】本発明の他の実施形態によるインダクタの製造方法を説明するための概略的な工程断面図である。
図5d】本発明の他の実施形態によるインダクタの製造方法を説明するための概略的な工程断面図である。
図5e】本発明の他の実施形態によるインダクタの製造方法を説明するための概略的な工程断面図である。
図5f】本発明の他の実施形態によるインダクタの製造方法を説明するための概略的な工程断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では、添付の図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。しかし、本発明の実施形態は様々な他の形態に変形されることができ、本発明の範囲は以下で説明する実施形態に限定されない。また、本発明の実施形態は、当該技術分野で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及び大きさなどはより明確な説明のために拡大縮小表示(または強調表示や簡略化表示)がされることがあり、図面上の同一の符号で示される要素は同一の要素である。
【0018】
以下、本発明によるインダクタ100について説明する。
【0019】
図1は本発明の一実施形態によるインダクタを示す概略的な斜視図であり、図2は本発明の一実施形態によるインダクタを示す概略的な断面図であり、図3は本発明の一実施形態によるインダクタを示す概略的な側面断面図である。
【0020】
図1から図3を参照すると、本発明の一実施形態によるインダクタ100は、複数のコイルパターンがビア130で接続されて形成されたコイル120を内部に配置した本体110を含み、ビア130は、第1導電層130aと、上記第1導電層130a上に形成される第2導電層130bと、を含み、第2導電層130bは、第1導電層130aに含まれる金属と異なる金属を含む。
【0021】
上記本体110は、図示していないが、第1主面と第2主面、及び上記第1主面と第2主面を接続する側面を含むことができる。上記側面は、絶縁層が積層されている方向と直交する方向の面であることができる。
【0022】
従来のインダクタでは、コイルパターンが形成された複数のセラミック層を積層及び焼成して本体を形成していた。しかし、この場合、コイルパターンが形成された部分とコイルが形成されていない部分との段差により、クラックまたは層間のデラミネーションが発生するという問題があった。
【0023】
本発明の一実施形態によるインダクタ100は、上記本体110が絶縁材料からなることができる。上記本体が絶縁材料で形成されるため、コイルパターンによる段差がなく、クラックなどの不良を防止することができる。また、従来のセラミック材料を用いたインダクタに比べて低い誘電率を有することができるため、寄生容量(capacitance)を減少させるとともに、インダクタのQ特性を確保することができる。
【0024】
上記本体110は、絶縁層を積層して形成することができる。
【0025】
上記絶縁材料は、感光性樹脂、エポキシ系、アクリル系、ポリイミド系、フェノール系、及びスルホン系のうち少なくとも一つであることができる。
【0026】
上記絶縁層111は、積層及び硬化後の境界が殆ど確認できないほど一体化することができる。かかる本体の形状、寸法、及び絶縁層の積層数は、本発明の実施形態に示されたものに限定されない。
【0027】
上記本体110は内部にコイルを含む。
【0028】
上記コイル120は、銀(Ag)または銅(Cu)を含む材料、またはこれらの合金を含むことができるが、これに限定されるものではない。
【0029】
上記コイル120の端部は、上記本体の両側面に引き出されて、外部電極と電気的に接続されることができる。
【0030】
上記コイル120は、複数のコイルパターンがビア130を介して順に接続されて積層方向に沿って重なりながら螺旋構造を有することができる。
【0031】
上記ビア130は、それぞれの絶縁層111の間で互いに離れるように配置することができる。
【0032】
この際、本体110の上部面及び下部面のうち少なくとも一つには、本体110の内部に形成されるコイルを保護するためのカバー層(図示せず)を形成することができる。
【0033】
上記カバー層は、上記絶縁層と同一の材料からなるペーストを一定の厚さで印刷して形成することができる。
【0034】
従来のインダクタでは、導電性ペーストを充填するか、めっきを用いる方法により、コイルパターンを接続するためのビアを形成していた。導電性ペーストは、材料の体積抵抗(volume resistivity)が高いため、かかる導電性ペーストを用いてビアを形成することでインダクタを構成する場合は、インダクタにおいてコイルの抵抗が増加してQ特性が低下する。また、めっきを用いてビアを形成する場合は、金属のみからなるため、硬度が高くなり、コイルパターンの接続時(積層時)の層間絶縁距離が不均一に形成されることがある。
【0035】
図3を参照すると、本発明の一実施形態によるインダクタ100は、上記ビア130が、第1導電層130aと、第1導電層上に形成され、第1導電層とは異なる金属を含む第2導電層130bと、を含むことにより、上記ビアの抵抗を減らすことができ、コイルの抵抗も低くすることができる。これにより、インダクタのQ特性を向上させることができる。
【0036】
また、第2導電層130bに、第1導電層130aに比べて硬度が低い材料を適用することにより、熱加圧工程における層間距離の不均一を改善することができる。
【0037】
なお、第2導電層130bの厚さを調節することにより、コイルの層間接続をより一定に保つことができ、複数の絶縁層を積層する際に、コイルパターン間に均一な絶縁距離を確保することができる。
【0038】
上記第1導電層130aは、銀(Ag)、銅(Cu)、及びビスマス(Bi)のうち少なくとも一つからなることができ、これに限定されないが、銅(Cu)であることができる。
【0039】
上記第2導電層130bは、上記第1導電層130aよりも硬度が低い金属を含むことができ、例えば、スズ(Sn)、スズ(Sn)−銀(Ag)、スズ(Sn)−銅(Cu)、及びスズ(Sn)−ビスマス(Bi)のうち少なくとも一つを含むことができる。
【0040】
上記第2導電層130bは、第1導電層130aに含まれる銅(Cu)よりも硬度が約1/10レベルのスズ(Sn)を含むことにより、熱加圧工程におけるコイルパターンの層間距離の不均一を改善することができる。
【0041】
上記スズ(Sn)−銀(Ag)、スズ(Sn)−銅(Cu)、及びスズ(Sn)−ビスマス(Bi)は、第1導電層130aに含まれる銅(Cu)よりも硬度が約1/10レベルのスズ(Sn)を含む合金形態であることができる。
【0042】
本発明の一実施形態によると、銅(Cu)を含む上記第1導電層130aは、めっき法により形成することができる。
【0043】
また、上記スズ(Sn)、スズ(Sn)−銀(Ag)、スズ(Sn)−銅(Cu)、及びスズ(Sn)−ビスマス(Bi)のうち少なくとも一つを含む上記第2導電層130bは、上記第1導電層130a上にめっきにより形成することができる。
【0044】
コイルパターン間を接続するためのビアを形成するにあたり、スズ(Sn)のみで形成すると、工程が単純となる長所があるが、スズ(Sn)金属の特性上、グレインが大きくなり、表面の粗さも大きくなる。
【0045】
このように、ビアの表面粗さが大きくなる場合、コイルパターン間の接続時に、ボイド(void)が発生して接続面積が小さくなり、その結果、信頼性に問題が生じることがある。
【0046】
本発明の一実施形態によると、ビアの形成時に、第1導電層130aを銅(Cu)で形成した後、上記第1導電層130a上に第2導電層130bをスズ(Sn)で形成することにより、スズ(Sn)を含む第2導電層130bの厚さを減らすことができ、表面粗さを小さくすることができるため、コイルパターン間の接続時に、界面にボイド(void)が発生することを最小限に抑えることができる。
【0047】
また、第1導電層130aに、スズ(Sn)よりも体積抵抗が低い銅(Cu)を適用することにより、Q特性を向上させることができる。
【0048】
上記ビア130の断面は、製造方法に応じて異なり、例えば、扇形、逆台形、台形などであってもよく、これに限定されるものではないが、上面の長さが下面の長さよりも大きい扇形状であることができる。
【0049】
上記本体110の両側面に外部電極115a、115bを配置する。
【0050】
上記外部電極115a、115bは、電気導電性に優れた材料を用いて形成することができ、例えば、銀(Ag)または銅(Cu)のような導電性材料、またはこれらの合金を含んで形成することができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0051】
また、このように形成された外部電極115a、115bの表面に、必要に応じて、ニッケル(Ni)またはスズ(Sn)をめっき処理して、めっき層をさらに形成することができる。
【0052】
図3を参照すると、本発明の一実施形態によるインダクタにおいて、上記ビア130で接続されたコイルパターン間の距離d1は、他のコイルパターン間の距離d2よりも大きい。
【0053】
本発明の一実施形態によると、上記ビア130は、第1導電層130aと、第1導電層上に形成される第2導電層130bと、を含むため、第1導電層130a上に配置された第2導電層130bの厚さにより、上記ビア130で接続されたコイルパターン間の距離d1が、他のコイルパターン間の距離d2よりも大きくなる。
【0054】
コイルパターン間を接続するための上記ビア130の厚さ、すなわち、第1導電層130a及び第2導電層130bの厚さは、コイルパターン間の距離に応じて異なり得る。
【0055】
上記第1導電層130aは、上記コイルパターン間の距離、すなわち、層間絶縁層の厚さに対して0.7〜1.0の割合の厚さを有する。
【0056】
一方、上記第2導電層130bの厚さは、3.0〜7.0μmであってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0057】
上記第2導電層130bは、少なくとも3.0μm以上の厚さを有する場合にコイルパターン間の接続状態が良好な結果を示す。
【0058】
上記第2導電層130bの厚さが3.0μm未満の場合、熱加圧工程において第2導電層130bに含まれるスズ(Sn)の絶対容量が小さく、コイルパターン間の界面を完全に埋めず接続状態が良くなくなる。
【0059】
一方、第2導電層130bの厚さが7.0μmを超えると、スズ(Sn)を含む第2導電層130bの厚さが厚すぎるため、表面粗さが大きくなる。その結果、コイルパターン間の接続時に、ボイド(void)が発生して接続面積が小さくなり、信頼性に問題が生じることがある。
【0060】
上記のように、第1導電層130aの厚さは、層間絶縁層の厚さに対して0.7〜1.0の割合を有し、第1導電層130a上に配置される第2導電層130bの厚さは3.0〜7.0μmを満たすため、上記ビア130で接続されたコイルパターン間の距離d1が、他のコイルパターン間の距離d2よりも大きくなる。
【0061】
本発明の一実施形態によるインダクタは、異種の金属からなる第1及び第2導電層を含むビアでコイルパターンを接続してコイルを形成することにより、コイルの抵抗を下げることができ、インダクタのQ特性を向上させることができる。
【0062】
また、第2導電層に、第1導電層に比べて強度が低い材料を適用することにより、熱加圧工程における層間距離の不均一を改善することができ、第2導電層の厚さを調節することにより、コイルの層間接続をより一定に保つことができる。
【0063】
以下、本発明によるインダクタの製造方法について詳細に説明する。
【0064】
本発明の一実施形態によるインダクタの製造方法は、基板10上にコイルパターン120を形成する段階と、基板10上にコイルパターン120を覆うように絶縁層111を形成する段階と、絶縁層111に貫通孔135を形成する段階と、貫通孔135の内部にめっきにより第1導電層130aを形成する段階と、第1導電層130aの上部にめっきにより第2導電層130bを形成して、第1及び第2導電層130a、130bを含むビア130を形成する段階と、基板と、コイルパターン120並びに第1及び第2導電層130a、130bを含む絶縁層111とを分離する段階と、分離した複数の絶縁層111を順に積層して本体110を形成する段階と、を含み、上記コイルパターンのうち一部を上記ビア130で接続し、且つ上記ビア130で接続されたコイルパターン間の距離を他のコイルパターン間の距離よりも大きくする。
【0065】
上記絶縁層111は、感光性樹脂、エポキシ系、アクリル系、ポリイミド系、フェノール系、及びスルホン系のうち少なくとも一つからなることができる。
【0066】
上記貫通孔は、上記絶縁層が上記感光性樹脂からなる場合、フォトレジスト法で形成することができ、上記絶縁層がエポキシ系、アクリル系、ポリイミド系、フェノール系、及びスルホン系のうち少なくとも一つからなる場合、レーザードリルを用いて形成することができる。
【0067】
上記貫通孔135の断面は、製造方法に応じて異なり、例えば、長方形、逆台形、台形などであってもよく、これに限定されるものではないが、逆台形状であることができる。
【0068】
上記第1導電層130aは、めっき法で形成することができ、導電性金属からなることができる。上記導電性金属は、銀(Ag)、銅(Cu)、及びビスマス(Bi)のうち少なくとも一つであることができ、これに限定されないが、銅(Cu)であることができる。
【0069】
上記第2導電層130bは、上記第1導電層130aよりも硬度が低い金属を含むことができ、例えば、スズ(Sn)、スズ(Sn)−銀(Ag)、スズ(Sn)−銅(Cu)、及びスズ(Sn)−ビスマス(Bi)のうち少なくとも一つを含むことができる。
【0070】
上記スズ(Sn)−銀(Ag)、スズ(Sn)−銅(Cu)、及びスズ(Sn)−ビスマス(Bi)は、第1導電層130aに含まれる銅(Cu)よりも硬度が約1/10レベルのスズ(Sn)を含む合金形態であることができる。
【0071】
上記スズ(Sn)、スズ(Sn)−銀(Ag)、スズ(Sn)−銅(Cu)、及びスズ(Sn)−ビスマス(Bi)のうち少なくとも一つを含む上記第2導電層130bは、上記第1導電層130a上にめっきにより形成することができる。
【0072】
図4aから図4fは、本発明の一実施形態によるインダクタの製造方法、特にビアの形成工程を説明するための概略的な工程断面図である。
【0073】
図4aを参照すると、基板10上にコイルパターン120を形成する。
【0074】
上記基板10は、銅張積層板(copper clad laminate;CCL)であってもよい。上記銅張積層板は、基材の片面または両面に銅箔を塗布したプリント配線板用の積層板であり、上記基材の場合、フェノール樹脂やエポキシ樹脂などであることができる。
【0075】
上記コイルパターン120は、上記銅張積層板に露光及び現像工程を行うことで形成することができる。
【0076】
上記コイルパターン120は、銀(Ag)または銅(Cu)を含む材料、またはこれらの合金を含むことができ、これに限定されるものではないが、銅(Cu)であることができる。
【0077】
図4bを参照すると、上記基板10上に上記コイルパターン120を覆うように絶縁層111を形成し、上記絶縁層111に貫通孔135を形成する。
【0078】
上記絶縁層111は感光性樹脂であってもよい。上記絶縁層が感光性樹脂であれば、上記貫通孔はフォトレジスト(photoresist;PR)工程で形成することができる。
【0079】
上記貫通孔135は、上記絶縁層111を貫通して上記コイルパターン120に接するように形成する。
【0080】
上記貫通孔135の断面は、上記絶縁層がネガ型(negative type)フォトレジストである場合は台形状を有することができ、上記絶縁層がポジ型(positive type)フォトレジストである場合は上面の長さが下面の長さよりも大きい逆台形状を有することができる。
【0081】
図4cを参照すると、上記貫通孔135の内部に第1導電層130aを形成する。
【0082】
上記第1導電層130aは、電気めっき法で形成し、これに限定されないが、銅(Cu)であってもよい。
【0083】
上記第1導電層130aは、上記貫通孔の内部の一部に形成することができる。上記第1導電層130aは、上記コイルパターン120間の距離、すなわち、層間絶縁層111の厚さに対して0.7〜1.0の割合の厚さを有する。
【0084】
図4dを参照すると、上記第1導電層130aの上部に上記貫通孔135の内部を埋めるように第2導電層130bを形成する。
【0085】
上記ビア130は、上記貫通孔135の内部に形成された第1及び第2導電層を含む。
【0086】
上記第2導電層130bは、上記第1導電層130a上にめっきにより形成することができる。
【0087】
上記第2導電層130bは、スズ(Sn)、スズ(Sn)−銀(Ag)、スズ(Sn)−銅(Cu)、及びスズ(Sn)−ビスマス(Bi)のうち少なくとも一つを含むことができる。
【0088】
上記第2導電層130bは、めっき後に、上記絶縁層111の表面を越えて膨らむ形状を有することができる。
【0089】
上記第2導電層130bの凸部は、上記絶縁層の表面から所定の高さを有する。上記第2導電層130bの凸部の高さは、後続する積層及び圧着工程で1〜20%低くなることがあり、内部の密度が増加し得る。
【0090】
上記第2導電層130bの厚さは、3.0〜7.0μmであってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0091】
上記ビア130は、上記導電性ペーストで形成した第2導電層130bを含むことができる。上記第2導電層130bの凸部は、複数の絶縁層を積層及び圧着する際に、層間応力を分散させるバッファ(buffer)の役割を果たすことができる。
【0092】
図4e及び図4fを参照すると、上記基板と、上記コイルパターン120並びに上記第1及び第2導電層130a、130bを含む上記絶縁層111とを分離した後、分離した複数の絶縁層111を積層して本体110を形成する。
【0093】
上記基板は、エッチング方法を用いて除去することができる。
【0094】
上記分離した複数の絶縁層111は、一括積層し、積層した複数の絶縁層を高温圧着して本体110を形成する。
【0095】
上記本体を形成する段階は、高い温度で焼結せず、上記絶縁層と上記第2導電層が硬化できる温度で行うことができる。
【0096】
また、上記本体110は、上記絶縁層111を多層に積み上げて熱加圧して形成するため、層間絶縁距離を均一に形成するとともに、コイルの抵抗を減らすことができる。これにより、インダクタのQ特性を向上させることができる。
【0097】
従来の場合は、コイルパターンの層間接続のために、ビアとして金属焼結体を使用した。上記金属焼結体は、800〜900℃の高温で焼結されるもので、焼結工程において有機物が燃えて無くなるため、上記金属焼結体に有機物を含まない。
【0098】
また、焼結工程前に、層間積層が成された後で圧着工程を行うため、コイルパターンとビアが押されて横方向に広がる現象が発生し、最終的にインダクタの容量が低下し、層間短絡が発生する。
【0099】
一方、インダクタを製造するにあたり、層間接続のためのビアとして硬化型導電性ペーストを用いてビアを形成する場合、焼結型ペーストに比べて電気抵抗が高く、コイルの抵抗を増加させる。そのため、インダクタのQ特性が低下することがある。
【0100】
別の方法として、電気めっき法だけを用いてビアを形成する場合、ビアが金属だけで構成されるため強度が高い。したがって、上記めっきで形成したビアが凸部を有していても、絶縁層の積層及び圧着時に、凸部のない部分に圧力が加重されることがあり、絶縁層の流動性により絶縁層間の距離が不均一になる可能性がある。また、上記めっきで凸部が形成されると、めっき偏差により、一定の大きさの凸部を形成することが難しく、凸部の高さ差により積層時の層間距離が不均一になるおそれがある。
【0101】
一方、本発明によるインダクタ100は、第1及び第2導電層130a、130bを含むビア130を含んでいる。具体的には、上記ビアは、電気めっき法で形成した第1導電層と、めっきにより形成し、第1導電層よりも硬度が低い金属を含む第2導電層と、を含むことにより、コイルの電気抵抗を減らすとともに、インダクタのQ特性を向上させることができる。また、複数の絶縁層を積層する際に、第2導電層により層間の応力を分散させることで層間絶縁距離を均一に形成することができる。
【0102】
上記ビア130は、それぞれの絶縁層111の間で互いに離れるように配置することができる。
【0103】
上記ビア130は、上下に配置したコイルパターン120を並列に接続することにより、コイルを形成することができる。
【0104】
上記コイル120は、上記本体の両側面に端部が引き出されて、上記両側面に形成された外部電極と電気的に接続されることができる。
【0105】
上記本体110は、圧着及び真空プレスなどの工程により、上記本体110の充填率が最大となるように圧着及び硬化することができる。
【0106】
上記バー(bar)で製造された本体の場合、チップ単位で切断することで複数の本体110を製造することができる。これにより、インダクタの製造コストを下げることができ、高い生産性を確保することができる。
【0107】
図5aから図5fは、本発明の他の実施形態によるインダクタの製造方法を説明するための概略的な工程断面図である。
【0108】
図5aから図5fに示された構成要素のうち図4aから図4fに示された構成要素と同一の構成についての説明は省略する。
【0109】
図5aを参照すると、基板20上にコイルパターン220を形成する。
【0110】
図5bを参照すると、上記基板20上に上記コイルパターン220を覆うように絶縁層211を形成し、上記絶縁層211に貫通孔235を形成する。
【0111】
上記絶縁層211は、エポキシ系、アクリル系、ポリイミド系、フェノール系、及びスルホン系のうち少なくとも一つからなることができる。
【0112】
上記絶縁層211は、キャリアフィルム(carrier film)213とともに上記基板20上に形成することができる。
【0113】
上記キャリアフィルム213は、一面に接着性を有し、上記絶縁層211上に接着されて配置することができる。上記キャリアフィルム213は、PET(polyethylene terephthalate)フィルムであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0114】
上記絶縁層211が、エポキシ系、アクリル系、ポリイミド系、フェノール系、及びスルホン系のうち少なくとも一つからなる場合、上記貫通孔は、レーザードリル(laser drilling)を用いて形成することができる。
【0115】
上記貫通孔は、上記キャリアフィルム213及び絶縁層211を貫通して上記コイルパターン220に接するように形成する。
【0116】
図5cを参照すると、上記貫通孔の内部に第1導電層230aを形成する。
【0117】
上記第1導電層230aは、電気めっき法で形成し、その材料としては、銀(Ag)、銅(Cu)、及びビスマス(Bi)のうちいずれかであることができ、特に銅(Cu)であることができる。
【0118】
上記第1導電層230aは、上記貫通孔の内部の一部に形成する。
【0119】
図5dを参照すると、上記第1導電層230aの上部に上記貫通孔の内部を埋めるように導電性金属211をめっきして第2導電層230bを形成する。
【0120】
上記ビア230は、上記貫通孔の内部に形成された第1及び第2導電層を含む。
【0121】
上記第2導電層230bは、めっき後に、上記絶縁層211の表面を越えて膨らむ形状を有することができる。
【0122】
上記第2導電層230bの凸部は、上記絶縁層の表面から所定の高さを有する。上記第2導電層230bの凸部の高さは、後続する積層及び圧着工程において1〜20%低くなることがあり、内部の密度が増加し得る。
【0123】
本発明によるビア230は、上記第2導電層230bを含むことができる。上記第2導電層230bの凸部は、複数の絶縁層を積層及び圧着する際に、層間応力を分散させるバッファ(buffer)の役割を果たすことができる。これにより、絶縁層間の絶縁距離を一定に保つことができる。
【0124】
図5e及び図5fを参照すると、上記基板と、上記コイルパターン並びに上記第1及び第2導電層230a、230bを含む上記絶縁層とを分離し、分離した複数の絶縁層211を積層して本体210を形成する。
【0125】
上記基板は、エッチング方法を用いて除去することができる。
【0126】
上記分離した複数の絶縁層211は、一括積層し、積層した複数の絶縁層を高温圧着して本体210を形成する。
【0127】
その後、図示していないが、上記本体の両側面に外部電極を形成する。
【0128】
上記外部電極は、外部電極用ペーストで上記本体をディッピング(dipping)して形成することができる。
【0129】
上記外部電極用ペーストは、導電性粉末を含み、上記導電性粉末は、銀(Ag)及び銅(Cu)のうち少なくとも一つを含む材料、またはこれらの合金を含むことができるが、これに限定されるものではない。
【0130】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の範囲はこれに限定されず、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から外れない範囲内で多様な修正及び変形が可能であるということは、当技術分野の通常の知識を有するものには明らかである。
【符号の説明】
【0131】
100 インダクタ
110 本体
111 絶縁層
115a、115b 外部電極
120 コイル(コイルパターン)
130 ビア
130a、130b 第1及び第2導電層
図1
図2
図3
図4a
図4b
図4c
図4d
図4e
図4f
図5a
図5b
図5c
図5d
図5e
図5f