【実施例】
【0031】
以下に、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されない。
【0032】
[実施例1]
所定の幅に切断された陽極箔及び陰極箔に外部引き出し電極用のタブ端子を接続した。陽極箔は、弁金属としてアルミニウム箔を用い、弁金属の表面にエッチング処理及び化成処理を施すことによって、誘電体酸化皮膜が形成されたものを用いた。
前記の陽極箔及び、表面に酸化チタンが形成された陰極箔を、ポリアクリロニトリルを主体としたセパレータを介して巻回し、巻回素子を完成した。
続いて、陽極箔の切り口や外部引き出し電極取り付け時に欠損した誘電体酸化皮膜の修復、いわゆる化成処理を行った。アジピン酸アンモニウムを水溶媒に溶解させた0.5〜3wt%の化成液を用いて、誘電体酸化皮膜の化成電圧値に近似した電圧を印加し、化成処理を行った。
【0033】
次に、固体電解コンデンサの陰極層である導電性高分子層の形成を行った。
まず、巻回素子に1.0wt%ポリアニリン/エタノール溶液を含浸し、150℃で30分乾燥させることで第一の導電性高分子層を形成させた。
その後、1.0wt%のPEDOT/PSSを含むポリマー分散体溶液を10kPaの減圧下で15分間浸漬・含浸させ、100℃で60分加熱することによって水分を除去した。この含浸及び乾燥を3回繰り返して、第二の導電性高分子層を形成させた。
さらに、ポリエチレングリコール(三洋化成工業社製のPEG−600、水酸基価から求めた数平均分子量:600)とポリオキシプロピレングリセリルエーテル(三洋化成工業社製のサンニックスGP−400、水酸基価から求めた数平均分子量:400)を40:60の重量比率で混合し、この混合溶液に上記巻回素子を10kPa減圧下で30分含浸させた。
【0034】
上記方法で導電性高分子層が形成されたコンデンサ素子を金属ケースに収納し、金属ケースの開口部をカーリングした。続いて、150℃程度の温度条件にてコンデンサに定格電圧を印加してエージング処理を施し、固体電解コンデンサを完成した。
【0035】
[実施例2]
コンデンサ素子に含浸させる後処理溶液として、PEG−600とGP−400を30:70の重量比率で混合した溶液を使用する以外は、実施例1と同様に固体電解コンデンサを作製した。
【0036】
[実施例3]
コンデンサ素子に含浸させる後処理溶液として、PEG−600とGP−400を70:30の重量比率で混合した溶液を使用する以外は、実施例1と同様に固体電解コンデンサを作製した。
【0037】
[実施例4]
コンデンサ素子に含浸させる後処理溶液として、PEG−600とGP−400と純水を30:20:50の重量比率で混合した溶液を使用する以外は、実施例1と同様に固体電解コンデンサを作製した。
【0038】
[従来例]
コンデンサ素子に含浸させる後処理溶液として、PEG−600の50%水溶液を使用する以外は、実施例1と同様に固体電解コンデンサを作製した。
【0039】
[実施例および従来例の固体電解コンデンサの評価]
実施例および従来例の固体電解コンデンサについて下記の評価方法にて評価を行った。
検討製品:φ8×10L 35WV−150μF
1.温度サイクル試験
試験条件:−55℃/+125℃ 各30minを1サイクルとし、1,000サイクル実施後の静電容量(Cap)、tanδ及び等価直列抵抗(ESR)を測定し、試験前と値からの変化率を計算した。その結果を以下の表1に示す。
2.信頼性試験
試験条件:試験雰囲気:145℃
印加電圧・経過時間:35V印加、2,000時間
145℃、35V印加、2,000時間後の静電容量(Cap)、tanδ、等価直列抵抗(ESR)を測定し、試験前の値から変化率を計算した。その結果を以下の表2に示す。
【0040】
実施例1〜4及び従来例において使用したポリマー溶液
従来例:PEG−600 50%aqの後処理溶液
実施例1:PEG−600 40%、GP−400 60%を混合した後処理溶液
実施例2:PEG−600 30%、GP−400 70%を混合した後処理溶液
実施例3:PEG−600 70%、GP−400 30%を混合した後処理溶液
実施例4:PEG−600 30%、GP−400 20%、純水50%を混合した後処理溶液
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】
上表1および表2の実験結果に示されるとおり、上記の温度サイクル試験および高温度信頼試験における静電容量(Cap)、tanδ、等価直列抵抗(ESR)の変化率は、実施例1〜4の方が、従来例よりも小さく、安定している。また、表2には、高温度信頼性試験において、実施例1〜4の静電容量(Cap)、tanδ、等価直列抵抗(ESR)の変化率が、従来例よりも小さく、高温領域(145℃)においても安定性に優れていることが示されており、特に、GP−400の重量がPEG−600の重量の0.5倍を超える場合(実施例1,2,4)に、より良好な高温度安定性が得られることがわかった。なお、GP−400の重量をPEG−600の重量の5倍以下とすることで耐電圧特性が向上するので、高温度安定性と耐電圧特性とを両立させる観点から、GP−400の重量はPEG−600の重量の0.5〜5倍とすることがより好ましい。また、
化合物の数平均分子量
を400〜4000
とすると、コンデンサ素子への含浸性を向上させることができる。
【0044】
そして、本発明は、上記実施例において
、化合物として、ポリオキシプロピレングリセリルエーテルを用いたが、他に、ポリオキシプロピレン、ポリオキシプロピレントリメチロールプロパンエーテル、ポリオキシプロピレンソルビトールエーテルを用いても同様の効果が得られる。
【0045】
さらに、本発明は、上記実施例において、導電性高分子層形成後、巻回素子を、ポリエチレングリコールとポリオキシプロピレングリセリルエーテルの混合溶液に含浸させたが、誘電体酸化皮膜形成後、巻回素子を、PEDOT/PSSを含むポリマー分散体溶液にポリエチレングリコールとポリオキシプロピレングリセリルエーテルなど
の化合物とを混合させた溶液に含浸させても同様の効果が得られる。
【0047】
なお、上記実施例では、コンデンサ素子を誘電体酸化皮膜が形成された陽極箔と陰極箔とをセパレータを介して巻回して形成したが、誘電体酸化皮膜が形成された陽極箔を積層したコンデンサ素子や、弁作用金属の粉体を焼結後、誘電体酸化皮膜を形成したコンデンサ素子を使用してもよい。