(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ボーリング孔内に冷媒用配管及び断熱材が挿入されると共に伝熱性流体が充填されており、個々の冷媒用配管には供給側と反対側に向かって冷媒が流れる流路と、冷媒が供給側に向かって流れる流路の双方が設けられており、
冷媒が冷媒用配管内を流れる際に周囲から熱を奪って凍結し、ボーリング孔内を充填している伝熱性材料及び周囲土壌を凍結し、
凍結した伝熱性流体の体積膨張により生じた圧力により断熱材が圧縮変形することを特徴とする凍結工法。
垂直方向上方に延在するボーリング孔を削孔し、中空部材の下端を蓋により閉鎖し、当該蓋には冷媒用配管と伝熱性材料排出パイプが貫通しており、伝熱性材料排出パイプに開閉弁を設け、当該開閉弁は、蓋に作用する圧力が、ボーリング孔上方の領域における伝熱性流体の圧力にヘッド差を加えた圧力よりも大きい場合には開放し、それ以下の場合には閉鎖する機能を有しており、
冷媒用配管を流れる冷媒が保有する冷熱により、伝熱性流体がボーリング孔下方の領域から順次上方の領域に向かって凍結し、体積膨張して圧力が生じると、前記蓋に作用する圧力が増加して前記開閉弁が開放し、伝熱性流体が中空部材から排出される請求項2〜5の何れか1項の凍結工法。
【背景技術】
【0002】
凍結工法では、例えば掘削用ケーシングで地盤にボーリング孔を掘削し、その後、掘削用ケーシングを地上側に引き抜いて、当該掘削したボーリング孔に冷媒用配管を挿入し、冷媒用配管内に冷媒を循環させて、当該冷媒が有する冷熱により、所定範囲の土壌を凍結し、地中壁その他の所望の地中固結体を造成している。
ここで、ボーリング内にはシースパイプが挿入されており、土壌に冷熱を伝導するため、シースパイプ内部に伝熱性能を有する流体(例えば水)を充填している。
【0003】
しかし、冷媒用配管で冷媒を循環するに際して、最も冷熱を放出するのは循環初期の冷媒であり、当該冷媒はボーリング孔の冷媒供給側、通常はボーリング孔の上方の領域、を流れる。
そのため、シースパイプに充填されている伝熱性能を有する流体は、ボーリング孔の上方の領域において、冷媒の冷熱が最初に供給される。
そして、シースパイプに充填されている伝熱性能を有する流体が水である場合には、ボーリング孔の上方の領域の水が冷媒の冷熱が投入されて最初に凍結し、下方の領域に向かって水の凍結が進行する。
【0004】
ここで、水が凍結して氷になると体積が膨張する。上述した様に、上方の領域から下方の領域に向かって凍結するため、水が氷となり膨張して体積が増大した際に、ボーリング孔の上方の領域は氷(先に凍結した氷)により閉鎖されているので、体積膨張による圧力はボーリング孔の上方に逃げることはできない。
一方、ボーリング孔の下方には凍結していない水が存在し、体積増大による圧力が作用しても、ボーリング孔下方の水を上方から圧縮することはできない。すなわち、体積増大により生じた圧力をボーリング孔下方の水で吸収することは出来ない。
【0005】
その結果、水が氷となり体積膨張して生じる圧力は冷媒用配管を圧縮する様に作用する。そして冷媒用配管の圧縮強度を超えると、冷媒用配管が氷により圧縮されて変形し、流路断面積が減少する。
冷媒用配管の流路断面積が減少すると、所定流量の冷媒を循環させることが困難となり、所定範囲の土壌を良好に凍結することが困難になる。そして、冷媒用配管が氷の圧力に耐え切れずに破壊されてしまうと、冷媒が循環されなくなり、凍土壁等を造成するべき領域の土壌を凍結することが出来なくなってしまうという問題が存在する。
【0006】
その他の従来技術として、造成凍土に充填材を充填したボーリング孔を形成する技術が提案されている(特許文献1参照)。
しかし、係る従来技術(特許文献1参照)は凍土周辺の地中構造物に対する影響の低減を目的としており、上述した様な冷媒用配管の圧縮変形による各種不都合を解消するための技術ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、伝熱性能を有する流体が凍結して体積膨張しても、冷媒用配管は圧縮されず、冷媒の適正な循環を維持することが出来る凍結工法の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の凍結工法は、ボーリング孔(1)内に冷媒用配管(FP)及び断熱材(I:可撓性或いは柔軟性に富む断熱材:例えば発泡スチレン)が挿入されると共に伝熱性流体(W:例えば水)が充填されており、個々の冷媒用配管(FP)には供給側と反対側(例えば地中側)に向かって冷媒が流れる流路(LS:冷媒供給側流路)と、冷媒が供給側(例えば地上側)に向かって流れる流路(LO:冷媒戻り側流路)の双方が設けられており、
冷媒(例えば二酸化炭素)が冷媒用配管(FP)内を流れる際に周囲から熱(顕熱及び/又は潜熱)を奪って凍結し、ボーリング孔(1)内を充填している伝熱性材料(W:水)及び周囲土壌(G)を凍結し、
凍結した伝熱性流体(W)の体積膨張により生じた圧力により断熱材(I)が圧縮変形することを特徴としている。
【0010】
本発明において、ボーリング孔(1)内に中空部材を挿入し、中空部材の内部空間内に冷媒用配管(FP)及び断熱材(I)を挿入することが好ましい。
ここで、前記中空部材はシースパイプ(2)であるのが好ましく、或いは、前記中空部材が地中に残存したボーリング孔掘削用ケーシングであるのが好ましい。
また本発明の凍結工法において、前記断熱材(I)に被覆された伝熱性材料排出パイプ(WP)が中空部材(例えばシースパイプ2、ボーリング孔掘削用ケーシング)内に挿入されており、
凍結した伝熱性流体(W)の体積膨張により生じた圧力により断熱材(I)が圧縮変形すると共に、中空部材内の冷媒供給側(例えば地上における冷媒供給設備側)から離隔された領域(AD)の伝熱性流体(W)が押圧されて、伝熱性材料排出パイプ(WP)を介して中空部材外に排出されるのが好ましい。
【0011】
また本発明の凍結工法において、垂直方向上方に延在するボーリング(1)孔を削孔し、中空部材(例えばシースパイプ2、ボーリング孔掘削用ケーシング)の下端を蓋(3)により閉鎖し、当該蓋(3)には冷媒用配管(FP)と伝熱性材料排出パイプ(WP)が貫通しており、伝熱性材料排出パイプ(WP)に開閉弁(V)を設け、当該開閉弁(V)は、蓋(3)に作用する圧力が、ボーリング孔(1)上方の領域(ADU)における伝熱性流体(例えば水)の圧力にヘッド差(H=ρgh:ρは中空部材内に充填されている断熱性流体の比重、gは重力加速度、hは開閉弁Vを設けた個所とボーリング孔上方の領域ADUとの高さの差)を加えた圧力よりも大きい場合には開放し、それ以下の場合には閉鎖する機能を有しており、
冷媒用配管(FP)を流れる冷媒が保有する冷熱により、伝熱性流体(W)がボーリング孔(1)下方の領域から順次上方の領域(ADU)に向かって凍結し、体積膨張して圧力が生じると、前記蓋(3)に作用する圧力が増加して前記開閉弁(V)が開放し、伝熱性流体(W)が中空部材から排出されるように構成することも可能である。
【発明の効果】
【0012】
上述の構成を具備する本発明によれば、冷媒用配管(FP)を流れる冷媒(例えば二酸化炭素の液相冷媒)は周囲から熱(顕熱及び/又は潜熱)を奪い、気化して気液二相流となり、冷媒用配管(FP)を上昇して地上側に戻る。その際に、冷媒が保有する冷熱は、伝熱性流体(W)、周辺土壌(G)に伝達され、ボーリング孔(1)周辺の土壌(G)を凍結する。
ここで本発明では、冷媒用配管(FP)と共に断熱材(I)が挿入されているので、冷媒が冷媒用配管(FP)内を流れて、冷媒の保有する冷熱により伝熱性流体(W:例えば水)が凍結して体積膨張により圧力が生じても、当該圧力は断熱材(I)を圧縮変形する様に作用して、冷媒用配管(FP)を圧縮しない。そのため、冷媒用配管(FP)内の流路が変形することは防止され、流路断面積が減少することが防止され、冷媒は適正に循環される状態を維持する。
なお本発明は、個々の冷媒用配管(FP)に、供給側と反対側(例えば地中側)に向かって冷媒が流れる流路(LS:冷媒供給側流路)と、冷媒が供給側(例えば地上側)に向かって流れる流路(LO:冷媒戻り側流路)の双方が設けられている凍結工法が対象となる。
【0013】
ここで、冷媒用配管(FP)を流れる冷媒が最も冷熱を放出するのは、冷媒用配管(FP)の冷媒供給する側(
図1、
図3、
図4における地上側)端部を流れる冷媒であり、伝熱性流体(W:水)は、冷媒供給側(
図1、
図3、
図4の上部)から凍結し、順次、冷媒供給側から離隔した領域(
図1、
図3、
図4の下方)に向かって凍結する。
本発明において、前記断熱材(I)により伝熱性材料排出パイプ(WP)を被覆し、当該伝熱性材料排出パイプ(WP)をボーリング孔(1)内に挿入すれば、伝熱性流体(W)が凍結して体積膨張により圧力が発生しても、当該圧力は冷媒供給側から離隔した領域AD(
図4の下方)に存在する凍結していない伝熱性流体(W)を押圧して、断熱材(I)により被覆された伝熱性材料排出パイプ(WP)を介してボーリング孔(1)外に排出する(矢印OF)様に作用する。すなわち、体積膨張により生じた圧力を、断熱材Iが圧縮変形することに加えて、伝熱性流体(W)が伝熱性材料排出パイプ(WP)を介してボーリング孔(1)外に排出することによって、冷媒用配管(FP)を圧縮せずに逃がすことが出来る。
そのため冷媒用配管(FP)が圧縮されることなく、流路は変形せず、流路断面積が減少することがなく、冷媒の循環が適正に行われる。
【0014】
本発明において、中空部材(例えばシースパイプ2、ボーリング孔掘削用ケーシング)をボーリング孔(1)内に挿入し、中空部材の下端を蓋(3)により閉鎖し、当該蓋(3)には冷媒用配管(FP)と伝熱性材料排出パイプ(WP)が貫通しており、伝熱性材料排出パイプ(WP)に開閉弁(V)を設け、開閉弁(V)は、蓋(3)に作用する圧力が、ボーリング孔(1)上方の領域(ADU)における伝熱性流体(例えば水)の圧力にヘッド差(H=ρgh:ρは中空部材内に充填されている伝熱性流体の比重、gは重力加速度、hは開閉弁Vを設けた個所とボーリング孔(1)上方の領域ADUとの高さの差)を加えた圧力よりも大きい場合には開放し、それ以下の場合には閉鎖する機能を有し、前記蓋(3)に作用する圧力が増加して前記開閉弁(V)が開放し、伝熱性流体(W)が中空部材から排出されるように構成すれば、上方向にボーリング孔(1)を削孔して、上方向の領域を凍結することが可能である。
【0015】
この場合、中空部材内の伝熱性流体(W)は、ボーリング孔(1)下方の領域から凍結し、順次上方の領域(ADU)に向かって凍結する。中空部材下端は蓋(3)により閉鎖されているが、中空部材内の伝熱性流体(W)が凍結して体積膨張することにより、中空部材内の伝熱性流体(W:例えば水)の圧力が増加し、開閉弁(V)に作用する圧力は、上方領域(ADU)における圧力にヘッド差(H=ρgh)を加えた圧力よりも大きくなる。その結果、蓋(3)に設けた開閉弁(V)は開放し、伝熱性流体(W)が伝熱性材料排出パイプ(WP)から下方に流出(排出)する。
断熱材Iが圧縮変形することに加えて、中空部材内の伝熱性流体(W)が伝熱性材料排出パイプ(WP)から流出することにより、ボーリング孔(1)上方の領域(ADU)の伝熱性流体(W)が凍結して体積膨張することにより発生した圧力は逃がされ、冷媒用配管(FP)を圧縮しない。そのため、冷媒の循環は適正に行われる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図示の実施形態では冷媒として二酸化炭素(CO
2)を採用した場合を説明している。しかし、冷媒は二酸化炭素に限定される訳ではなく、土壌を凍結できるだけの冷熱を供給する能力がある冷媒であれば、全て適用することが可能である。
最初に
図1を参照して、本発明の第1実施形態を説明する。
第1実施形態では、垂直方向下方に延在するボーリング孔1を掘削して、その周辺土壌Gを凍結している。
【0018】
図1において、図示しない掘削用ケーシングでボーリング孔1を掘削する。そして掘削したボーリング孔1から掘削用ケーシングを地上側に引き抜いて、当該ボーリング孔1にシースパイプ2を挿入する。シースパイプ2の底部は閉塞しており、シースパイプ2の径はボーリング孔1の径と概略等しく設定されている。
ここで、図示しない掘削用ケーシングを地中に残存した状態でシースパイプ2を挿入し、その後、掘削用ケーシングを地上側に引き抜く場合が存在する。
また、図示の実施形態ではシースパイプ2の底部は閉塞しているが、シースパイプ2の底部が閉塞していない場合が存在する。そして、シースパイプ2の底部が閉塞していない場合には、ボーリング孔1の掘削用ケーシング(図示せず)を地中に残存して、シースパイプ2を使用しない場合、すなわち、シースパイプ2に代えて、地中に残存しているボーリング孔1の掘削用ケーシング(図示せず)を用いる場合が存在する。
【0019】
シースパイプ2は伝熱性に優れた鋼管等を使用するが、可撓性を有する材料製のものを使用しても良い。
可撓性を有する材料でシースパイプ2を構成すれば、掘削用ケーシングでボーリング孔1を掘削した後、シースパイプ2内に伝熱性能を有する流体W(図示の実施形態では水或いは各種水溶液)を充填した際に、伝熱性能を有する流体の重量によりシースパイプ2が半径方向外方に膨張して、ボーリング孔1内壁にシースパイプ2が密着し、冷媒の冷熱が凍結するべき土壌Gに効果的に伝導されるので、好都合である。
【0020】
ボーリング孔1にシースパイプ2を挿入した後、シースパイプ2内に可撓性を有する断熱材Iと冷媒用配管FPを挿入する。ここで冷媒用配管FPには、冷媒供給側流路LS(図示では矢印として表示)と冷媒戻り側流路LO(図示では矢印として表示)が形成されている。
シースパイプ2内には伝熱性能を有する流体W(例えば水)が充填されており、伝熱性能を有する流体Wは、冷媒が有する冷熱をシースパイプ2まで伝導する作用を奏する。
ここで、水は伝熱性が良く、且つ取り扱いが容易で安全なので、伝熱性能を有する流体Wとしてシースパイプ2内に充填するのに好適である。ただし、伝熱性能を有する流体Wは水に限定される訳ではない。
【0021】
断熱材Iとしては、例えば連泡構造を有する発泡スチレンの様な柔軟性(或いは可撓性)に富んだ材料が選択される。ここで、断熱材Iに要求される機能は、断熱性よりも柔軟性(或いは可撓性)であり、柔軟性(或いは可撓性)を優先して断熱材Iが選択される。
また、断熱材Iのシースパイプ2内の位置は、冷媒用配管FPが1本のみの場合には、冷媒用配管FP近傍の位置であれば特に限定はない。一方、複数の冷媒用配管FPがシースパイプ2内に挿入されている場合には、断熱材Iを当該複数の冷媒用配管FPの間の位置に介在させるのが好適である。
【0022】
図1において、地上側の冷媒供給設備(図示せず:例えば冷凍機)より冷媒(液相の二酸化炭素)が供給されると、液相冷媒が冷媒用配管FP内の冷媒供給側流路LSに供給される(矢印AR1)。液相冷媒は比重が大きいので冷媒供給側流路LSを下降する。
冷媒供給側流路LSを下降する冷媒は冷熱を周辺土壌Gに供給しつつ、ボーリング孔1(シースパイプ2)の最下方に到達する。
【0023】
周辺土壌Gから熱(顕熱及び/又は潜熱)を奪った液相冷媒(液相の二酸化炭素)は気相冷媒或いは気液二相の冷媒となり、気相の冷媒は比重が小さいので冷媒用配管FP内の冷媒戻り側流路LOを直ちに上昇し、気液二相の冷媒は気相冷媒が液相冷媒を連行して冷媒戻り側流路LOを直ちに上昇する。
そして、冷媒戻り側流路LO内を上昇する間においても、冷媒はシースパイプ2の周辺の土壌Gから熱(顕熱及び/又は潜熱)を奪って当該周辺土壌Gを凍結する。
【0024】
冷媒供給側流路LS内を下降する冷媒及び冷媒戻り側流路LO内を上昇する冷媒が保有する冷熱は、冷媒用配管FP、水W(伝熱性能を有する流体)、シースパイプ2、凍結するべき土壌Gの順に伝熱され、ボーリング孔1の周辺の土壌G(凍結するべき土壌)を凍結する。ここで、断熱材Iは冷媒用配管FPを包囲していないので、冷媒からの冷熱は断熱材Iに遮断されることなく、水W(伝熱性能を有する流体)、シースパイプ2を介して周辺土壌Gに伝達される。
そして凍結した土壌Gを隣接して所定数だけ造成すれば、止水壁を容易に造壁することが出来る。
冷媒戻り側流路LO内を上昇した冷媒は、その後、地上側の冷媒供給設備に戻される(矢印AR2)。
【0025】
図1ではシースパイプ2内に冷媒用配管FPは2本示されているが、冷媒用配管FPの本数は1本でも3本以上でも良い。この本数に限定される訳ではない。造成する凍結凍土の規模、施工現場の環境条件に応じて、シースパイプ2の形状、大きさと共に、冷媒用配管FPの本数を適宜決定すれば良い。
また、冷媒用配管FPは多重管であっても、
図2で示す様に、複数の流路Lδを有する矩形断面の配管L(所謂「マイクロチャンネル」)であっても良い。ただし冷媒用配管FPとしては、その内部に冷媒供給側流路LSと冷媒戻り側流路LOが形成され、地中側に向かう冷媒の流れ(冷媒供給側流路LS内の冷媒の流れ)と、地上側に戻る冷媒の流れ(冷媒戻り側流路LO内の冷媒の流れ)が存在し、以て、単一の冷媒用配管FP内で相反する2方向の冷媒の流れが存在することが必要である。
【0026】
冷媒用配管FPの構造の一例として
図2に示す構造が適用できる。
図2において、全体が扁平な部材で構成された冷媒用配管L(マイクロチャンネル)は、複数(
図2では10本)の矩形断面の冷媒流路Lδが設けられた構造を有している。明確には図示されていないが、前記複数の冷媒流路Lδは、その一部(例えば5本)の流路Lδが冷媒供給側流路LSを構成し、残りの部分(例えば5本)の流路Lδが冷媒戻り側流路LOを構成している。
ここで、当該冷媒用配管FPは例えばアルミニウム製であり、優れた伝熱性能を有している。
【0027】
図示は省略するが、冷媒用配管FPが多重管(例えば二重管)の場合には、二重管の内管が冷媒供給側流路LSを構成し、内管の半径方向外方の円環状空間(外管)が冷媒戻り側流路LOを構成する。ただし、外管が冷媒供給側流路LSを構成し、内管が冷媒戻り側流路LOを構成することも可能である。
冷媒用配管FPが多重管(例えば二重管)の場合、水W(伝熱性能を有する流体)は当該二重管の半径方向最外殻とシースパイプ2との間の領域に充填される。
なお、冷媒用配管FPをマイクロチャンネルや二重管(多重管)で構成する場合であっても、当該マイクロチャンネル、二重管(多重管)の本数は複数本であっても良い。
【0028】
図示はされていないが、ボーリング孔1の最下方において、冷媒供給側流路LSから出た冷媒を、水Wと混合しない態様で冷媒戻り側流路LOに案内し、且つ、冷媒戻り側流路LO内を上昇させるための機構を設けることが可能であり、当該機構として従来公知の機構を採用することが出来る。
図示の実施形態の冷媒は二酸化炭素(CO
2)であるので、上述した様に、液相冷媒(供給された冷媒)は土壌より熱(顕熱或いは潜熱)を奪って気化する。冷媒戻り側流路LOにおいて、気相冷媒は直ちに上昇し、気液二相の冷媒は気相冷媒が液相冷媒を連行して直ちに上昇する。そのため、冷媒が二酸化炭素であり、且つ、冷媒用配管FPが多重管(例えば二重管)で構成されている場合には、冷媒を下降し或いは上昇させる機構は省略することが出来る。
【0029】
冷媒を地上側の図示しない冷媒供給設備から冷媒用配管FP内に供給すると、ボーリング孔1上方の領域から下方の領域に向かって周辺(土壌Gを含む)が凍結する。そしてシースパイプ2には伝熱性を有する流体Wである水が充填されているので、ボーリング孔1上方の領域の水Wが凍結し、下方の領域に向かって水Wの凍結が進行する。
水Wが凍結して氷になると体積が膨張するが、上述した様に、上方の領域から下方の領域に向かって氷になるので、水Wが氷となり膨張して体積が増大しても、その上方の領域は氷により閉鎖されているので、体積膨張による圧力はボーリング孔1の上方に逃げることはできない。
【0030】
しかし、
図1の実施形態では、冷媒用配管FPの近傍に断熱材Iが挿入されており、断熱材Iは柔軟性或いは可撓性に富む材料(例えば、連泡構造を有する発泡スチレン)で構成されているので、水Wが凍結して氷となり体積膨張をしても、当該体積膨張は断熱材Iが圧縮変形することにより吸収される。
そのため、水Wが氷となり体積膨張して生じる圧力は冷媒用配管FPを圧縮する様には作用せず、当該圧力により冷媒用配管が変形し、流路断面積が減少することが防止され、冷媒の循環は適正に行われる。
【0031】
図1の第1実施形態の変形例として、所謂「限定凍結」の場合を
図3に示す。
図3の限定凍結の場合には、地盤Gの垂直方向(
図1、
図3では上下方向)全領域を凍結する必要はなく、
図3では矢印Lで示す領域のみを凍結すれば足りる。そのため、当該領域(矢印Lで示す領域)にのみ冷媒用配管FPを設置し、冷媒用配管FPの地上側端部(
図3では上端)には、断熱材で被覆された通常のパイプで構成された冷媒供給用配管(矢印OLSで示す)及び冷媒戻り用配管(矢印OLOで示す)を接続している。そして冷媒供給用配管(矢印OLS)及び冷媒戻り用配管(矢印OLO)の他端を地上側の図示しない冷媒供給設備に接続すれば、
図1と同様に冷媒を循環させることが出来る。
図3において、断熱材Iは冷媒用配管FPを配置した領域(矢印Lで示す領域)に配置されており、それよりも上方領域においては断熱材Iは配置されていない。
【0032】
図3の変形例によれば、凍結対象を必要箇所に限定して、地盤凍結を効率的に施工することが出来る。
図3の変形例におけるその他の構成及び作用効果については、
図1、
図2を参照して説明したのと同様である。
【0033】
次に、
図4を参照して、本発明の第2実施形態について、主として
図1、
図3とは相違する点について説明する。
図1〜
図3の実施形態ではシースパイプ2内には冷媒用配管FPと断熱材Iのみが挿入されているが、
図4の第2実施形態では、断熱材I内部に伝熱性流体排出用パイプWPが配置されている。換言すれば、
図4では、断熱材Iで被覆された伝熱性流体排出用パイプWPが設けられている。ここで、
図4の第2実施形態においても、伝熱性流体として水を用いるので、以下、伝熱性流体排出用パイプWPは排水パイプWと表記する。
そして、第2実施形態における冷媒用配管FP(冷媒供給用配管LS及び冷媒戻り用配管印LO)については第1実施形態と同様である。
【0034】
排水パイプWPの下端部は、断熱材Iの下端より下方に突出してシースパイプ2内の最下方の領域ADに開口し、排水パイプWPの上端部は断熱材Iの上端より上方に突出してシースパイプ2外の領域で開口している。
断熱材Iで被覆された排水パイプWPをシースパイプ2内で配置する位置については、第1実施形態と同様に、冷媒用配管FPが1本のみの場合には冷媒用配管FP近傍の位置であり、冷媒用配管FPが複数本挿入されている場合には複数の冷媒用配管FPの間の位置に介在している。
【0035】
図4において、冷媒を地上側の図示しない冷媒供給設備から冷媒用配管FP内に供給すると、冷媒が最も冷熱を放出するのは、最も冷媒供給側の位置であり、
図4では冷媒用パイプFPの最上端の位置である。そしてシースパイプ2内に充填された水Wは、ボーリング孔1上方の領域から凍結し、順次下方の領域に向かって凍結する。
図4において、シースパイプ2内の最下方の領域ADとシースパイプ2外の領域(シースパイプ2上方の地上側領域)との間は、排水パイプWPにより連通している。そのため、ボーリング孔1内部の領域に充填された水Wが上方領域から凍結して氷になり、体積膨張して圧力が発生しても、当該圧力は、シースパイプ2下方の領域ADに存在する凍結していない水Wを、排水パイプWPを介してシースパイプ2の上方に押し上げる作用をする。そして押し上げられた水Wは、排水パイプWPの上端から排出される(矢印OF)。
【0036】
すなわち、シースパイプ2上方の領域の水Wが凍結して体積膨張により圧力が発生しても、その圧力はシースパイプ2下方の水Wを(排水パイプWPを介して)排出する様に作用し、冷媒用配管FPを圧縮する作用は行わない。シースパイプ2下方の水Wを矢印OFで示す様に排出するのに必要な圧力は、冷媒用配管FPを圧縮して変形する圧力に比較して遥かに小さいからである。
換言すれば、ボーリング孔1上方の領域の水Wが凍結して体積膨張して発生した圧力は、シースパイプ2下方の水Wが排水パイプWPを介して排水される(矢印OF)ことにより逃がされるため、冷媒用配管FPは圧縮変形しない。
そして冷媒用配管FPが圧縮されず、流路は変形せず、流路断面積が減少することがなく、冷媒用配管FPが破損することもないので、冷媒の循環は適正に行われる。
【0037】
それに加えて、
図1、
図2の第1実施形態と同様に、
図4の第2実施形態では、冷媒用配管FPの近傍に断熱材Iが挿入されており、断熱材Iは連泡構造を有する発泡スチレンの様な柔軟性或いは可撓性に富む材料で構成されているので、水Wが凍結して氷となり体積膨張をしても、当該体積膨張は断熱材Iが変形することにより吸収される。
排水パイプWPを介して排水する(矢印OF)ことと、断熱材Iが圧縮変形することの相乗効果により、冷媒用配管FPは変形、破損せず、冷媒の循環は適正に行われる。
図4の第2実施形態におけるその他の構成及び作用効果は、
図1〜
図3で示す実施形態と同様である。
【0038】
次に
図5を参照して、本発明の第3実施形態を説明する。
図5で示す第3実施形態は、
図4で示す第2実施形態を上下逆にしたような構成となっている。そして
図5の第3実施形態は、
図4の第2実施形態と同様に断熱材Iで被覆された排水パイプWP(伝熱性材料排出パイプ)を有する場合であって、垂直方向上方に向けてボーリング孔1を掘削し周辺土壌Gを凍結する場合に適用される。
以下、
図5を参照して、主として
図4の第2実施形態とは相違する点について説明する。
【0039】
図5において、ボーリング孔1に垂直方向上方に向けてシースパイプ2を挿入し、シースパイプ2内に冷媒用配管FP及び断熱材Iで被覆された排水パイプWPが配置される。冷媒用配管FP及び断熱材Iで被覆された排水パイプWPの構成及び作用効果は、
図4の第2実施形態と同様である。
シースパイプ2の下端は蓋3により閉鎖されている。シースパイプ2内に充填された水Wが流出することを防止するためである。
【0040】
蓋3には冷媒用配管FPと排水パイプWPがシール性を維持して貫通しており、排水パイプWPには開閉弁Vが介装されている。開閉弁Vは、そこ(開閉弁V)に作用する圧力が、ボーリング孔1上方の領域ADUにおける水の圧力にヘッド差Hを加えた圧力よりも大きい場合には開放するが、それ以下の場合には閉鎖する。
前記「ヘッド差H」は、蓋3とボーリング孔1上方の領域ADUとの高さの差を符号「h」で示すと、 ヘッド差H=ρgh なる式で示される(ρはシースパイプ2内に充填されている水Wの比重、gは重力加速度)。
開閉弁Vの開閉制御に際しては、例えば従来公知の図示しない制御装置を使用して、蓋3に作用する圧力、領域ADUにおける水Wの圧力、前記ヘッド差H(ρgh)の検出、演算を行うことが出来る。
【0041】
明確には図示しないが、冷媒用配管FPの冷媒供給側流路LS内を流れる液相冷媒は、図示しない地上側の冷媒供給設備(
図5では下方に存在)でヘッドが付加されることにより、
図5において上昇する。
そして、図示しない冷媒供給設備側の冷媒戻り側の圧力を冷媒戻り側流路LO内の圧力よりも低圧にすることにより、冷媒用配管FPの冷媒戻り側流路LO内を下降する。
【0042】
冷媒を冷媒供給設備から冷媒用配管FP内に供給したとき、
図5において、最も冷熱を放出するのは冷媒供給側から上昇する冷媒であって蓋3の近傍を流過する冷媒である。そのため、シースパイプ2内の水Wは、蓋3の近傍の領域から順次上方の領域に向かって凍結する。
上述した様に、シースパイプ2の下端は蓋3により閉鎖されている。しかし、シースパイプ2の蓋3近傍の領域の水Wが凍結して体積膨張することにより、シースパイプ2内の水Wの圧力が増加すると、開閉弁Vに作用する圧力は、領域ADUにおける圧力にヘッド差Hによる圧力増加分(ρgh)を付加した圧力よりも高くなる。
そのため、排水パイプWPに介装した開閉弁Vは開放し、水Wが開閉弁Vから下方に流出(排出)する(矢印FO)。
【0043】
開閉弁Vが開放し、シースパイプ2内の水Wが排水パイプWPに介装した開閉弁Vから下方に流出することにより、蓋3近傍の領域の水Wが凍結して体積膨張することにより発生した圧力は逃がされ、冷媒用配管FPを圧縮しない。
それに加えて、水Wが凍結して氷となり体積膨張をしても、当該体積膨張は断熱材Iが圧縮変形することにより吸収されるので、冷媒用配管FPは変形を生じたり、破損したりすることなく、冷媒の循環は適正に行われる。
そのため、
図5の第3実施形態においても、冷媒用配管FPが圧縮されず、流路は変形せず、流路断面積が減少することがなく、冷媒用配管FPが破損することもないので、冷媒の循環は適正に行われる。
【0044】
なお、開放した開閉弁Vから一定量の水Wが排出されシースパイプ2内の圧力が低下すると、開閉弁Vに作用する圧力は、領域ADUにおける圧力にヘッド差Hによる圧力(ρgh)を付加した圧力以下となり、開閉弁Vは閉鎖する。
図5の第3実施形態におけるその他の構成及び作用効果については、
図1〜
図4の実施形態と同様である。
【0045】
図6は、図示の実施形態で好適に使用される分配・集合装置4である。図示しない地上側の冷媒供給設備から、複数(例えば10本)の凍結管(
図1、
図3〜
図5に示すボーリング孔、シースパイプ、冷媒用配管:以下、「連結管」と総称する)に冷媒である液相二酸化炭素を供給し、複数(例えば10本)の凍結管に液相冷媒を分配し、及び/又は、複数(例えば10本)の凍結管から気相或いは気液二相の二酸化炭素を収集するのに適した構造となっている。
図6の分配・集合装置4において、地上側の冷媒供給設備から凍結管に冷媒を供給(分配)する場合は、冷媒供給設備からの冷媒は供給側流出入口4Aから分配・集合装置4に流入し(矢印AR31)、凍結管側流出入口4B(複数設けられる)より凍結管側に分配(供給)される(矢印AR32)。また、凍結管から図示しない冷媒供給設備に冷媒を戻す(集合させる)場合は、凍結管側からの冷媒は凍結管側流出入口4Bから分配・集合装置4に流入し(矢印AR41)、供給側流出入口4Aより冷媒供給設備に戻る(矢印AR42)。
図6において、符号5(点線で表示)は、分配・集合装置4と凍結管を連通する中間配管である。
【0046】
冷媒である液相の二酸化炭素は粘性がほとんどないので、
図6で示す様な分配・集合装置4により、複数(例えば10本)の凍結管の冷媒用配管に均一の流量で液相冷媒を供給することが出来る。これにより、造成される凍土壁の品質を向上することが出来る。
また、
図6の分配・集合装置4を用いれば、従来技術におけるヘッダ(図示せず)を使用する必要がないので、設備全体をコンパクトにして、省スペース化が図れる。
【0047】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではないことを付記する。
例えば、
図5の実施形態において、排水パイプWP及び開閉弁Vを有さず、水が凍結することにより生じる圧力を断熱材Iのみにより吸収させることが可能である。