(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1部材成形工程において、前記植毛部と、前記植毛部に連続する首部と、を一体成形することで、少なくとも前記首部内に前記第1中空部に連通可能な第2中空部を有する前記第1部材を成形する、
請求項6に記載の歯ブラシの製造方法。
【背景技術】
【0002】
一般に、ブラシと呼ばれるものには、歯ブラシ、化粧品用ブラシ、トイレ・風呂清掃用ブラシ、住宅(室内・室外)清掃用ブラシ、工業用ペイント用ブラシ等があり、その使用目的は、主に清掃や塗布である。
【0003】
このようなブラシは、毛(刷毛)が植毛されたヘッド部とハンドル体(柄)で構成されており、毛の素材としては天然物(植物又は動物)と人工物(ナイロン、PBT等)が用いられることが多く、ハンドル体の素材としては天然物(木材、金属、石、セラミック等)と人工物(樹脂、合金等)が用いられることが多い。
【0004】
ハンドル体の製造方法としては、天然物であれば切削や研磨加工等で製造され、人工物であればPET等のポリエステル系樹脂、ポリエチレン(PE)、又はポリスチレン系樹脂を使用した射出成形等の金型成形が一般的である。射出成形等の金型成形が一般的である理由は、汎用型材料(樹脂)を使用でき、金型さえあれば大量に作製が可能で、低コストであることが挙げられる。
【0005】
現在、このような金型成形としては、種々のものが知られており、とりわけ射出成形やブロー成形は汎用の技術の一つとなっている。
ブロー成形は、原料となる樹脂を溶融し、パイプ状(筒状)のパリソンを押し出して形成し、このパリソンを金型で挟み込んで、中に空気を吹き込んで製品を成形する技術で、原料の加熱・溶融、押し出し(成形)、型成形、冷却、取り出し、が瞬時に行われる。ブロー成形が一般の射出成形と大きく異なる点は、中空容器が成形できる点にあり、PETボトル等の各種飲料用容器の製造に多く利用されている。
【0006】
なお、ハンドル体に中空部を形成したものとして特許文献1及び特許文献2に記載されたものが知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、従来、一体成形によって形成された歯ブラシのハンドル体としては、中実のものしか知られていなかった。
確かに特許文献1には、ハンドル体を中空にしたものが記載されているが、これはトイレブラシに関する技術であり、歯ブラシを念頭においた技術ではない。また、特許文献2には、把持部を中空にする技術が記載されているが、ハンドル体をどのようにして成形したのか不明であり、一体成形しているようには思われない。
【0009】
一体成形によって形成された歯ブラシのハンドル体として、中実のものしか知られていなかった理由としては、従来、中実構造のものであっても特に不都合がなく敢えて中空にしようとする理由がなかったことが挙げられる。
また、射出成形によって中空のものを作製する場合、工程が増え、コスト高になるとともに、中空の形状にも制約が生じるのでメリットが少ないことや、ブロー成形が、一般的にPETボトル等のある程度の断面積を有する形状のものに利用される技術だと理解されていたことも挙げられる。
しかしながら、ハンドル体を中実構造にしていると、形状の多様性に欠けるという問題がある。
【0010】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、植毛部の寸法精度を確保しつつ、把持部を含む全体形状に多様性を持たせることのできる、歯ブラシ、歯ブラシの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様における歯ブラシは、インジェクション成形体からなる植毛部を有する第1部材と、一部に前記第1部材の表面形状が転写されたブロー成形体からなる第2部材と、を備え、少なくとも前記第2部材に第1中空部が設けられ、前記第1部材の一部が、前記第2部材の前記第1中空部内に挿入された状態で、前記第1部材と前記第2部材とが連結されていることを特徴とする。
【0012】
本発明の一態様に係る歯ブラシにおいて、前記第2部材に把持部が設けられ、少なくとも前記把持部内に前記第1中空部が設けられている構成としてもよい。
【0013】
本発明の一態様に係る歯ブラシにおいて、前記第1部材は、前記第2部材側の端部にインサート部を有し、前記第2部材は、前記第1部材側の端部に前記インサート部を嵌合する嵌合部を有している構成としてもよい。
【0014】
本発明の一態様に係る歯ブラシにおいて、前記第1部材は、外周面に設けられた凸部と、前記凸部の前記第2部材側に設けられた凹部と、を有し、前記インサート部が前記凸部を含む構成としてもよい。
【0015】
本発明の一態様に係る歯ブラシにおいて、前記第1部材は、前記植毛部と前記インサート部との間に延在する首部を有し、前記首部には、前記第1中空部に連通可能な第2中空部が設けられている構成としてもよい。
【0016】
本発明の一態様に係る歯ブラシにおいて、前記第1部材は、前記植毛部と前記嵌合部との間に延在する首部を有し、前記首部には、前記第1中空部に連通する第2中空部が設けられている構成としてもよい。
【0017】
本発明の一態様における歯ブラシの製造方法は、一端側に植毛部を有する第1部材をインジェクション成形する第1部材成形工程と、前記第1部材の他端側を筒状のパリソンの一端側に挿入するとともに、当該パリソンを金型に挿入し、前記パリソンを加熱して前記パリソン内に流体を吹き込むことで第1中空部を形成して、一部に前記第1部材の表面形状が転写された第2部材を成形する第2部材成形工程と、を有し、前記第2部材成形工程において、前記第2部材の一端側に前記第1部材の前記他端側を連結することを特徴とする。
【0018】
本発明の一態様に係る歯ブラシの製造方法において、前記第2部材成形工程において、前記パリソン内に流体を吹き込むことで第1中空部を有する把持部を成形し、前記第2部材を得る製造方法としてもよい。
【0019】
本発明の一態様に係る歯ブラシの製造方法において、前記第1部材成形工程において、前記第1部材の前記一端側に前記植毛部を形成するのと同時に前記他端側に前記パリソン内に挿入されるインサート部を形成し、前記第2部材成形工程において、前記パリソン内に前記インサート部を挿入した状態で前記第2部材を成形するとともに、前記第2部材の前記一端側に前記インサート部を嵌合する嵌合部を成形する製造方法としてもよい。
【0020】
本発明の一態様に係る歯ブラシの製造方法において、前記第1部材成形工程において、前記植毛部と、前記植毛部に連続する首部と、を一体成形することで、少なくとも前記首部内に前記第1中空部に連通可能な第2中空部を有する前記第1部材を成形する製造方法としてもよい。
【0021】
本発明の一態様に係る歯ブラシの製造方法において、前記第2部材成形工程において、前記把持部と、前記把持部に連続する嵌合部と、を一体成形することで、少なくとも前記首部内に前記第1中空部に連通する前記第2中空部を有する第2部材を成形する製造方法としてもよい。
【0022】
本発明の一態様に係る歯ブラシの製造方法において、前記第2部材成形工程において、前記第1部材の前記一端側をホルダー内に挿入し、前記第1部材の非加工部分を非加熱状態で保持する製造方法としてもよい。
【0023】
本発明の一態様に係る歯ブラシの製造方法において、前記第2部材成形工程において、ダイレクトブロー成形法、インジェクションブロー成形法、延伸ブロー成形法のうちのいずれかを採用する製造方法としてもよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明の歯ブラシ用のハンドル体によれば、植毛部の寸法精度を確保しつつ、把持部を含む全体形状に多様性を持たせることができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[実施形態]
本発明の実施形態にかかる歯ブラシについて、図面を参照して説明する。
図1(a)は、歯ブラシの全体構成を示す側面図である。
図1(b)は、歯ブラシの全体構成を示す断面図である。
図2(a)〜(c)は、中空部の先端の位置を示す図である。
図1(a)に示すように、本実施形態の歯ブラシ1は、ハンドル体2と、ハンドル体2のヘッド部(植毛部)3に植毛された毛束4と、を備えた構成となっている。
【0027】
ハンドル体2は、ヘッド部3、首部5及びインサート部24を有する第1部材21と、把持部6及び嵌合部25を有する第2部材22と、を備えている。第1部材21と第2部材22とは異なる成形方法を用いて形成され、これらが互いに連結されることでハンドル体2を構成している。
【0028】
ハンドル体2は、第1部材21の一部が、第2部材22の第1中空部8内に挿入された状態で、第1部材21と第2部材22とが連結されている。具体的に、第1部材21及び第2部材22は、第1部材21の端部に設けられたインサート部24が、第2部材22の端部に設けられた嵌合部25内に嵌合された状態で、互いに連結されている。
【0029】
ここで、「嵌合された状態」とは、インサート部24と嵌合部25とが、嵌合、係止等によって互いに係り合って特定の方向への移動が規制されている状態を意味する。本実施形態では、主に第1部材21及び第2部材22の配置方向への移動が規制されている。
【0030】
本実施形態において、第1部材21はインジェクション成形体からなり、第2部材22はブロー成形体からなる。
【0031】
本実施形態では、第1部材21の一端側に中実構造のヘッド部3が形成されている。ヘッド部3の一面3aには、図示略の植毛穴が複数形成されており、各植毛穴に用毛の毛束4が植設されている。
【0032】
ヘッド部3の幅は特に限定されず、例えば7〜18mmが好ましく、8〜16mmがより好ましい。上記下限値以上であれば、毛束4を設ける面積を十分に確保することができ、上記上限値以下であれば、口腔内での操作性をより高められる。
【0033】
ヘッド部3の長さは特に限定されず、例えば、10〜30mmが好ましく、12〜28mmがより好ましい。上記下限値以上であれば、毛束4を設ける面積を十分に確保することができ、上記上限値以下であれば、口腔内での操作性をより高めることができる。
【0034】
また、ヘッド部3の厚さh1は、材質等を勘案して決定でき、例えば、2〜6mmが好ましく、2.5〜4mmがより好ましい。上記下限値以上であれば、ヘッド部3の強度をより高められ、上記上限値以下であれば、口腔内での操作性をより高められる。
【0035】
首部5は、ヘッド部3に連続して一体的に成形されたものであり、ヘッド部3とインサート部24との間に延在している。
図1(b)に示すように、首部5内には、第2中空部7が形成されている。第2中空部7は、首部5の延在方向(
図1(b)のX方向)全体に設けられても構わないし、一部に設けられても構わない。但し、第2中空部7は、後述する第2部材22の把持部6に設けられた第1中空部8と連通可能に構成されている。
【0036】
また、第2中空部7の先端7aの位置によって、歯ブラシ1の首部5の弾性(たわみ具合)及び歯ブラシ1のブラッシング時のかたさを調整することができる。
例えば、
図1(b)に示すように、第2中空部7の先端7aが首部5の中央よりも把持部6側に形成されている場合、すなわち第2中空部7の首部5の延在方向の長さが、首部5の延在方向の長さの半分よりも短い場合は、首部5のたわみ具合が従来の歯ブラシよりもやや小さくなり、ブラッシング時のかたさも従来の歯ブラシよりもやや硬くなる。
【0037】
一方で、
図2(b)に示すように、第2中空部7の先端7aが首部5の中央よりもヘッド部3側に形成されている場合、すなわち第2中空部7の首部5の延在方向の長さが、首部5の延在方向の長さの半分よりも長い場合は、首部5のたわみ具合が従来の歯ブラシよりも大きくなり、ブラッシング時のかたさも従来の歯ブラシよりもやわらかくなる。
【0038】
また、
図2(a)に示すように、第2中空部7の先端7aが首部5の中央にあるときは、把持部6側にあるものとヘッド部3側にあるものとの中間の性質を有することになる。
【0039】
さらに、
図2(c)に示すように、ハンドル体2の把持部6及び首部5だけでなく、ヘッド部3にも、首部5の第2中空部7と連結された第3中空部13が設けられていてもよい。
【0040】
首部5の厚さh2は、材質等を勘案して決定でき、例えば、3〜6mmが好ましく、3.5〜4mmがより好ましい。上記下限値以上であれば、首部5の強度を一定以上に保持でき、上記上限値以下であれば、口腔内での操作性をより高められる。
【0041】
第1部材21は、首部5側の他端側に、第2部材22の内部に挿入されるインサート部24を有している。インサート部24は、第1部材21の延在方向に直交する幅が首部5の幅よりも広くなるような形状とされている。インサート部24は、首部5とインサート部24との境界部分に、第2部材22との嵌合状態を維持するために有効な段差部分24aを有していることが望ましい。この段差部分24aは、
図1(b)に示すように、インサート部24の外周面に設けられた凹部24bと、凹部24bの第2部材22側に設けられ且つ径方向外側へ突出する凸部24cと、によって構成されている。インサート部24の外形は、円形や多角形、その他形状であってもよい。
【0042】
インサート部24は、首部5内に形成された第2中空部7に連通する貫通孔24Aを有している。第1部材21側の第2中空部7は、インサート部24の貫通孔24Aを介して、第2部材22側の第1中空部8に連通している。
【0043】
第2部材22は、一端側に把持部6を有し、他端側に嵌合部25を有している。把持部6内及び嵌合部25内には第1中空部8が形成されている。第1中空部8は、第2部材22の延在方向(
図1(b)のX方向)全体に設けられており、第1部材21側の貫通孔24Aを介して第2中空部7と連結するように構成されている。
【0044】
把持部6の形状等については図示したものに限られず、特に限定されない。把持部6の長さについては、ハンドル体2全体の長さが120〜200mmとなるような長さに調整されることが多い。
【0045】
嵌合部25は、第1中空部8内に第1部材21のインサート部24を挿入可能とする形状とされており、インサート部24と同軸を成す構成とされている。嵌合部25は、その先端側が第1部材21側のインサート部24と首部5との間の段差部分に位置しており、インサート部24の外周面を包み込むようにしてインサート部24に係止している。
【0046】
本実施形態では、嵌合部25の形状は、インサート部24の外形に対応した形状であれば、円形や多角形、その他形状であってもよい。
【0047】
また、第2中空部7及び第1中空部8内には、第1中空部8の後端8aに形成された孔8bを介して、適宜の内容物(気体、液体、ゲル、固体、紙等)を挿入可能なように構成されている。
内容物としては、例えば、ハンドル体2を透明又は半透明の樹脂から形成した場合は、ブランドや商品名が記載された紙、取扱い説明書、成分表示用紙、氏名が記載された紙を例示できる。また、カラーの液体・ゲル・ラメを入れることで、色のバリエーションを増やすことも考えられる。
【0048】
また、ハンドル体2が透明又は半透明でなくとも、例えば、歯磨き粉、洗剤、爪楊枝や歯間ブラシを入れて、旅行用ないし携帯用としてセットとすることができる。また、子供用歯ブラシには、球体を入れるなどして、ブラッシング時に音がでるように構成したり、中におもちゃ等を入れたりしても構わない。
【0049】
なお、第2中空部7及び第1中空部8内に物質を入れない場合は、第1中空部8の後端8aの孔8bを閉じた形状としても構わないし、第2中空部7及び第1中空部8内に入れる物質を取り出し可能なものとする場合は、第1中空部8の孔8bに適宜のキャップ等を設けることで、開閉自在な構成にしても構わない。
【0050】
毛束4は、
図1(a)に示すように、複数の用毛を束ねたものであり、ヘッド部3の一面3aから毛束4の先端4aまでの長さ(毛丈)は、毛束4に求める毛腰等を勘案して決定でき、例えば、6〜13mmとされる。全ての毛束4は同じ毛丈であってもよいし、相互に異なってもよい。
【0051】
また、毛束4の太さ(毛束径)は、毛束4に求める毛腰等を勘案して決定でき、例えば、1〜3mmとされる。全ての毛束4は同じ毛束径であってもよいし、相互に異なっていてもよい。
【0052】
毛束4を構成する用毛としては、例えば、毛先に向かって漸次その径が小さくなり、毛先が先鋭化された用毛(テーパー毛)、ヘッド部3の一面3aから毛先に向かいその径がほぼ同一である用毛(ストレート毛)等が挙げられる。ストレート毛としては、毛先がヘッド部3の一面3aに略平行な平面とされたものや、毛先が半球状に丸められたものが挙げられる。
【0053】
用毛の材質は、例えば、6−12ナイロン(6−12NY)、6−10ナイロン(6−10NY)等のポリアミド、PET、PBT、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンナフタレート(PBN)等のポリエステル、PP等のポリオレフィン、ポリオレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー等のエラストマー樹脂等が挙げられる。これらの樹脂材料は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0054】
また、用毛としては、芯部と該芯部の外側に設けられた少なくとも1層以上の鞘部とを有する多重芯構造を有するポリエステル製用毛が挙げられる。
【0055】
用毛の横断面形状は、特に限定されず、真円形、楕円形等の円形、多角形、星形、三つ葉のクローバー形、四つ葉のクローバー形等としてもよい。全ての用毛の断面形状は同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0056】
用毛の太さは、材質等を勘案して決定でき、横断面が円形の場合、例えば、6〜9mil(1mil=1/1000inch=0.025mm)とされる。また、使用感、刷掃感、清掃効果、耐久性等を考慮して、太さの異なる複数本の用毛を任意に組み合わせて用いてもよい。
【0057】
[歯ブラシの製造方法]
次に、本実施形態の歯ブラシ1の製造方法について説明する。
図3(a)〜(c)は、ハンドル体の成形工程を示す図である。
本実施形態の歯ブラシ1の製造方法は、ハンドル体2を成形し、その後にハンドル体2のヘッド部3に毛束4を植毛して製造する。
【0058】
(ハンドル体の成形工程)
先ず、ハンドル体の成形工程について述べる。
図3(a)〜(c)は、ハンドル体の成形工程を示す図である。
本実施形態では、
図1(a)、(b)に示したハンドル体2を構成する第1部材21と、第2部材22と、を互いに異なる成形方法を用いて形成する。
【0059】
先ず、
図3(a)に示すような第1部材21をインジェクション成形法により成形する。
始めに、第1部材21の形状に対応するキャビティを有する一対の一次金型(不図示)を準備しておく。
【0060】
次に、一次金型のキャビティ内に、第1部材21(ハンドル体2)の材料となる樹脂を射出する。その後、樹脂の加熱・溶融、押し出し(成形)、型成形、冷却等を順次実行する。上記樹脂が硬化した後、一次金型から樹脂よりなる第1部材21を取り出す。これにより、一端側に植毛穴を有するヘッド部3と、ヘッド部3に連続する首部5と、首部5のヘッド部3とは反対側に形成されたインサート部24と、を有する第1部材21が形成される(第1部材成形工程)。
【0061】
ここで、首部5に形成する第2中空部7の先端7aの位置は、インジェクション成形時の金型ピンの長短によって調整される。
【0062】
次に、
図3(b)に示すように第1部材21をホルダー14内に挿入し、第1部材21の一部をホルダー14内に収容する。本実施形態では、第1部材21のうち、ヘッド部3とインサート部24とを除いた首部5の一部をホルダー14によって保持する。このホルダー14の内部には、首部5の形状に応じたキャビティ14Aが形成されている。ホルダー14は、第1部材21の非加工部分を非加熱状態で保持するものである。第1部材21のうち、首部5の一部をホルダー14内に収容させておくことにより、後の工程でブロー成形によって第2部材22を成形する際に、首部5(非加工部分)の形状が維持される。
【0063】
次に、第2部材22をブロー成形法により成形する。
始めに、第2部材22の材料となる樹脂を溶融し、押し出すことによって
図3(b)に示すような筒状のパリソン10を形成する。本実施形態では、円筒状のパリソン10を形成したが、これに限らない。
【0064】
次に、パリソン10の一端側10aに、既に成形してある第1部材21のインサート部24を挿入させる。本実施形態では、第1部材21をホルダー14において保持した状態で移動させる。
【0065】
次に、パリソン10の一端側10aに第1部材21のインサート部24を挿入した状態で、パリソン10の略全体を
図3(c)に示すような二次金型12に収容する。二次金型12には、内部に把持部6の形状に応じたキャビティ12Aが形成されている。
【0066】
次に、パリソン10の他端側10bを加熱し、内部に空気を吹き込むことにより、パリソン10の他端側10bを膨らませて二次金型12のキャビティ12A内に押圧する。このようにして第1中空部8を有する把持部6を成形し、第2部材22を得る(第2部材成形工程)。この際、首部5の第2中空部7内にも空気が送り込まれるが、ホルダー14によって首部5の形状は維持される。
また、第2部材22の材料となる樹脂を溶融し、筒状に押し出した状態で、二次金型12を用いてブロー成形してもよい。
【0067】
また、パリソン10の一端側10aを加熱することにより、パリソン10の一端側10aに、インサート部24に係止する嵌合部25を形成する。
このようにして第1部材21と第2部材とを連結させてハンドル体2を形成する。
【0068】
なお、嵌合部25の形成は、把持部6の形成と同時に行うことで工程の効率化を図れるが、別々の工程で形成してもよい。
【0069】
本実施形態では、ハンドル体2の把持部6を形成するにあたり、ダイレクトブロー成形法、インジェクションブロー成形法、延伸ブロー成形法のうちのいずれかを採用する。
【0070】
ハンドル体2を成形した後は、ハンドル体2のヘッド部3に毛束4を植毛する。毛束4の植毛方法としては、毛束4を二つ折りにしその間に挟み込まれた平線を不図示の植毛穴に打ち込むことにより毛束4を植設する平線式植毛、毛束4の下端を植毛部となる溶融樹脂中へ圧入して固定する熱融着法、毛束4の下端を加熱して溶融塊を形成した後に金型中に溶融樹脂を注入して植毛部を成形するインモールド法等が挙げられる。
以上のようにして、本実施形態の歯ブラシ1が成形される。
【0071】
本実施形態では、ハンドル体2のヘッド部3の部分をインジェクション成形することによって植毛穴のピッチなど寸法精度が向上し、加工性向上を期待できる他、平線植毛の安定化を図ることができる。
また、インジェクション成形することでヘッド部3及び首部5の周囲にバリが生じにくく、バリ取り処理を施す必要がない。
【0072】
本実施形態では、ハンドル体2の把持部6と首部5に第1中空部8及び第2中空部7が形成されているので、歯ブラシ1の外観形状に多様性を富ませることができる。つまり、一次金型及び二次金型12のキャビティ形状により、ハンドル体2として複雑なデザインを付与することが可能であり、その形状によってはさらに弾力性(たわみ)のバリエーションを付与することができる。
【0073】
また、本実施形態では、首部5に形成する第2中空部7の先端7aの位置を調整することで、首部5のたわみを所望のものとするように設計するのが好ましい。
【0074】
例えば、第2中空部7及び第1中空部8に適宜の物質(気体、液体、ゲル、固体、紙等)を入れることで、従来とは異なった形状とすることができる。また、本実施形態では、従来、中実とされており、有効に利用されていなかったスペースを有効的に活用することができる。
【0075】
また、本実施形態では、首部5の弾性について、従来よりも設計の幅が広がるという有利な効果を得ることができる。具体的に説明すると、首部5の弾性は、首部5の太さ・長さ、又は材質で制御されていた。
【0076】
これに対し、本実施形態によれば、首部5の第2中空部7の先端7aの位置を調整することで、首部5の弾性を適宜に調整することができる。これにより、成形樹脂として安価なものを選択できるとともに、首部5の弾性を所望のものとして調整することができる。
【0077】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0078】
上記実施形態では、ハンドル体2のうち、ヘッド部3および首部5がインジェクション成形体(第1部分)からなり、把持部6がブロー成形体(第2部分)からなっている。本発明はこれに限られることはなく、首部5が把持部6とともにブロー成形体からなる構成であってもよい。つまり、第2部材22が、把持部6だけでなく首部5を有していてもよい。首部5は、把持部6と嵌合部25との間に延在する。但し、少なくとも高い寸法精度が求められるヘッド部3はインジェクション成形することが好ましい。
【0079】
また、ハンドル体2のうち、ヘッド部3を有する第1部材21と、把持部6を有する第2部材22とで異なる材質を用いることが可能である。例えば、ブロー成形によって得られる第2部材22の材料として、エラストマーなど、射出成形される第1部材21とは異なる材料を用いて形成することができる。これにより、ハンドル体2の弾力性や、握り易さなどを調整できる。
【0080】
また、ハンドル体2を構成する第1部材21と第2部材22との嵌合部分、つまり、インサート部24と嵌合部25との形状を適宜変更することによって、第2部材22に対する第1部材21の姿勢を変化させることが可能となる。
【0081】
また、上記実施形態は、通常の歯ブラシだけでなく、電動歯ブラシ用の替えブラシにも応用することが可能である。