(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の樹脂層からなる化粧シートにおいて、前記樹脂層のうち少なくともトップコート層を、超臨界逆相蒸発法によってベシクルに分散剤を内包させた分散剤内包ベシクルと、無機微粒子とを添加して形成し、
前記分散剤が、少なくとも炭素原子間の不飽和炭素結合を有し、前記無機微粒子が、前記トップコート層の主成分である樹脂組成物100重量部に対して0.1〜30重量部配合されているとともに、
前記化粧シートが、前記トップコート層の下層において結晶性ポリプロピレン樹脂を主成分とする透明樹脂層を具備しており、
前記透明樹脂層は、前記超臨界逆相蒸発法によってベシクルに造核剤を内包させた造核剤内包ベシクルを添加して形成されていることを特徴とする化粧シート。
前記分散剤が、高分子系の界面活性剤、脂肪酸金属塩、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤またはワックスのうち少なくとも1つからなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の化粧シート。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の化粧シートは、複数の樹脂層からなる化粧シートにおいて、トップコート層を、超臨界逆相蒸発法によってベシクルに分散剤を内包させた分散剤内包ベシクルと、無機微粒子とを添加して形成し、さらに、当該分散剤が
少なくとも炭素原子間の不飽和炭素結合を有していることが重要である。
【0024】
無機微粒子は、トップコート層の主成分である樹脂組成物100重量部に対して0.1〜30重量部配合されていることが重要であり、0.1重量部未満の配合量においては耐擦傷性の改善効果が得られず、30重量部より多い配合量においては添加する微粒子に起因する光の散乱によって透明性の悪化や材料のコストアップなどが懸念されるため上記添加量が最適である。
【0025】
無機微粒子としては、アルミナ、シリカ、ベーマイト、酸化鉄、酸化マグネシウム、ダイアモンドなどの微粒子が挙げられる。平均粒径が1〜100μmの無機微粒子を用いることができ、特に、1〜30μm程度の無機微粒子が好ましい。
【0026】
分散剤としては、
少なくとも炭素原子間の不飽和炭素結合を有するものを用いることが重要であり、具体的には、
少なくとも炭素原子間の不飽和炭素結合を有する分散剤としては、脂肪族多価ポリカルボン酸、ポリカルボン酸アルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ソルビタン脂肪酸エステルなどの高分子系の界面活性剤、オレイン酸、リノール酸、γ−リノレン酸、リノレン酸等の脂肪酸とリチウム,ナトリウム,カリウム,マグネシウム,カルシウム,ストロンチウム,バリウム,亜鉛,アルミニウム等が結合した脂肪酸金属塩、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランなどのシランカップリング剤、hydrogen tetrakis[2,2-bis[(allyloxy)methyl]butan-1-olato-O1]bis(ditridecyl phosphito -O'')titanate(2-)、Titanium,bis(isooctadecanoato-kO)bis(2-propanolato)- (9CI)などのチタネートカップリング剤、ポリオレフィンを熱分解したものやそれをさらに酸化したなどのワックスが挙げられる。
【0027】
ここで、超臨界逆相蒸発法とは、超臨界状態または超臨界点以上の温度もしくは圧力条件下の二酸化炭素にベシクルの外膜を構成する物質を均一に溶解させた混合物中に、封入物質としての分散剤を含む水相を加えて、一層の膜で封入物質としての分散剤を包含したカプセル状のベシクルを形成する方法である。なお、超臨界状態の二酸化炭素とは、臨界温度(30.98℃)および臨界圧力(7.3773±0.0030MPa)以上の超臨界状態にある二酸化炭素を意味し、臨界点以上の温度もしくは圧力条件下の二酸化炭素とは、臨界温度だけ、あるいは臨界圧力だけが臨界条件を超えた条件下の二酸化炭素を意味するものである。この方法により、直径50〜800nmの単層ラメラベシクルを得ることができる。ベシクルとは、球殻状に閉じた膜構造を有する小胞の内部に液相を含むものの総称であり、特に、外膜がリン脂質のような生体脂質を含む物質から構成されるベシクルをリポソームと称する。
【0028】
本発明においては、分散剤を超臨界逆相蒸発法を用いてベシクル化することによって、分散剤を極めて分散性に優れたナノサイズのカプセルとし、当該ベシクルがトップコート層の主成分である樹脂組成物に対して均一に分散する作用によって無機微粒子が二次凝集することを防止して、樹脂組成物中に無機微粒子を均一に分散させている。なお、樹脂組成物内においては、当該ベシクルのカプセル膜の一部が崩壊して分散剤が露出し、樹脂組成物と分散剤とが接触した状態とされている。
【0029】
リン脂質としては、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、カルジオピン、黄卵レシチン、水添黄卵レシチン、大豆レシチン、水添大豆レシチン等のグリセロリン脂質、スフィンゴミエリン、セラミドホスホリルエタノールアミン、セラミドホスホリルグリセロール等のスフィンゴリン脂質が挙げられ、ベシクルの外膜にこれらの物質を含むものがリポソームである。
【0030】
また、リポソームの外膜には、少なくとも上述のリン脂質のような生体脂質が含まれていればよいので、生体脂質と下記のようなその他の物質との混合物から外膜を形成するようにしてもよい。
【0031】
ベシクルの膜を形成するその他の物質としては、ノニオン系界面活性剤や、これとコレステロール類もしくはトリアシルグリセロールの混合物などを利用することが好ましい。このうちノニオン系界面活性剤としては、ポリグリセリンエーテル、ジアルキルグリセリン、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンコポリマー、ポリブタジエン−ポリオキシエチレン共重合体、ポリブタジエン−ポリ2−ビニルピリジン、ポリスチレン−ポリアクリル酸共重合体、ポリエチレンオキシド−ポリエチルエチレン共重合体、ポリオキシエチレン−ポリカプロラクタム共重合体等の1種または2種以上を使用することができる。また、コレステロール類としては、コレステロール、α−コレスタノール、β−コレスタノール、コレスタン、デスモステロール(5,24−コレスタジエン−3β−オール)、コール酸ナトリウムまたはコレカルシフェロール等を挙げることができる。例えば、水溶性ではない内包物を水溶性の分散剤で包んだベシクルとすることにより、水溶性の溶媒などに水溶性ではない内包物を均一に分散させることができる。
【0032】
本発明においては、リン脂質からなる外膜を具備するベシクルとすることが重要であり、リン脂質からなる外膜を備えるベシクルとすることにより、トップコート層の主成分である樹脂組成物との相溶性を向上させて分散剤の樹脂組成物への分散性をさらに良好なものとすることができ、その結果、無機微粒子の粒子間に当該分散剤が均一に進入して、当該無機微粒子の分散性をも良好なものとすることができる。
【0033】
トップコート層の主成分である樹脂組成物としては、光硬化型樹脂または光硬化型樹脂と熱硬化型樹脂との混合物を用いることが好ましい。より具体的には、ポリウレタン系、アクリルシリコン系、フッ素系、エポキシ系、ビニル系、ポリエステル系、メラミン系、アミノアルキッド系、尿素系などから適宜選択して用いることができる。なお、樹脂材料の形態は、水性、エマルジョン、溶剤系など特に限定されるものではない。
【0034】
特に、光硬化型樹脂としては、ポリエステルアクリレート系、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、アクリルアクリレート系などから適宜選択して用いることができるが、特に、耐候・光性が良好なウレタンアクリレート系およびアクリルアクリレート系のものを用いることが好ましい。光硬化型樹脂の硬化方法としては、紫外線や電子線などの活性エネルギー線で硬化することが作業性の観点から好ましい。トップコート層の主成分としての樹脂組成物として、光硬化型樹脂を用いることにより、分散剤の
少なくとも炭素原子間の不飽和炭素結合と当該光硬化型樹脂とが強固に結合するので、トップコート層の表面においても、無機微粒子をしっかりと固定して脱落を防ぐことができる。これによって、耐擦傷性効果を持続させることができるとともに、脱落した無機微粒子によってトップコート層の表面にアブレシブ摩耗が生じることをも防止することができる。
【0035】
また、熱硬化型樹脂としては、2液硬化型のウレタン系のものを用いることが好ましい。ウレタン系の熱硬化型樹脂は、作業性、価格、樹脂自体の凝集力などの観点から好適である。ウレタン系樹脂としては、アクリルポリオールとイソシアネートとを反応させて得られるウレタン系のものを用いてもよい。イソシアネートには、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジシソシアネート(XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、メタジイソシアネート(MDI)、リジンジイソシアメート(LDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘチルヘキサンジイソシアネート(HTDI)、メチルシクロヘキサノンジイソシアネート(HXDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)などから適宜選択することができるが、耐候性を考慮すると、直鎖状の分子構造を有するヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)を用いることが好ましい。
【0036】
また、光硬化型樹脂と熱硬化型樹脂との混合物としては、光硬化型樹脂としてのウレタンアクリレート系樹脂と、熱硬化型樹脂としてのイソシアネートを用いた2液硬化型のウレタン系樹脂とを混合することが好ましい。このように、光硬化型樹脂と熱硬化型樹脂との混合物とすることにより、光硬化型樹脂のみの場合よりも、柔軟性が得られるため耐後加工性に優れた化粧シートとすることができる。
【0037】
また、本発明の化粧シートは、トップコート層の下層に結晶性ポリプロピレン樹脂を主成分とする透明樹脂層を具備しており、当該透明樹脂層にはナノ化処理を施した造核剤が添加されていることが重要である。より具体的には、当該造核剤は、上記の超臨界逆相蒸発法によりナノ化処理されており、ナノサイズの造核剤が膜で包まれたベシクルとされて結晶性ポリプロピレン樹脂に添加されることが好ましい。
【0038】
オレフィン系樹脂としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテンなどの他に、αオレフィン(例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−ゼテン、1−ウンデセン、1−ドデセン、トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、3−メチル−1−プテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、9−メチル−1−デセン、11−メチル−1−ドデセン、12−エチル−1−テトラデセンなど)を単独重合あるいは2種類以上を共重合させたものや、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体、エチレン・メチルメタクリレート共重合体、エチレン・エチルメタクリレート共重合体、エチレン・ブチルメタクリレート共重合体、エチレン・メチルアクリレート共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合体、エチレン・ブチルアクリレート共重合体などのようにエチレンまたはαオレフィンとそれ以外のモノマーとを共重合させたものが挙げられる。また、化粧シートの表面強度の向上を図る場合には、高結晶性のポリプロピレンを用いることが好ましい。
【0039】
造核剤としては、例えば、リン酸エステル金属塩、安息香酸金属塩、ピメリン酸金属塩、ロジン金属塩、ベンジリデンソルビトール、キトクリドン、シアニンブルーおよびタルク等が挙げられる。特に、本発明においては、ナノ化処理の効果を最大限に得るべく、非溶融型で良好な透明性が期待できるリン酸エステル金属塩、安息香酸金属塩、ピメリン酸金属塩、ロジン金属塩を用いることが好ましいが、ナノ化処理によって材料自体の透明化が可能な場合には、有色のキトクリドン、シアニンブルー、タルクなども用いることができる。また、非溶融型の造核剤に対して、溶融型のベンジリデンソルビトールを適宜混合して用いるようにしてもよい。
【0040】
以下に、本発明の超臨界逆相蒸発法によりベシクル化された分散剤と無機微粒子とを添加したトップコート層を備えた化粧シートの具体例を図を用いて詳細に説明する。
【0041】
図1は本発明の化粧シート1の第1実施形態を示し、複数の樹脂層からなる化粧シート1であって、当該化粧シート1が貼り合わせられる木質ボード類、無機質ボード類または金属板などの基材Bに面する側から、原反層2、絵柄模様層3およびトップコート層5を設けた構成とされている。なお、原反層2と基材Bとの間および/または絵柄模様層3とトップコート層5との間の接着性に問題があれば、原反層2と基材Bとの間および/または絵柄模様層3とトップコート層5との間にプライマー層6を適宜設けてもかまわない。
【0042】
原反層2としては、薄葉紙、チタン紙、樹脂含浸紙等の紙、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、アクリル等の合成樹脂、あるいはこれら合成樹脂の発泡体、エチレン−プロピレン共重合ゴム、エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合ゴム、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合ゴム、ポリウレタン等のゴム、有機もしくは無機系の不織布、合成紙、アルミニウム、鉄、金、銀等の金属箔等から任意に選定可能である。
【0043】
絵柄模様層3としては、バインダーとしての硝化綿、セルロース、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、ポリウレタン、アクリル、ポリエステル系等の単独もしくは各変性物の中から適宜選定して用いることができる。これらは水性、溶剤系、エマルジョンタイプのいずれでもよく、また1液タイプでも硬化剤を使用した2液タイプでもよい。さらに紫外線や電子線等の照射によりインキを硬化させる方法を用いてもよい。中でも最も一般的な方法は、ウレタン系のインキを用いるもので、イソシアネートによって硬化させる方法である。これらのバインダー以外には、通常のインキに含まれている顔料、染料等の着色剤、体質顔料、溶剤、各種添加剤などが添加されている。汎用性の高い顔料としては、縮合アゾ、不溶性アゾ、キナクリドン、イソインドリン、アンスラキノン、イミダゾロン、コバルト、フタロシアニン、カーボン、酸化チタン、酸化鉄、雲母等のパール顔料等が挙げられる。また、インキの塗布とは別に各種金属の蒸着やスパッタリングで意匠を施すことも可能である。
【0044】
トップコート層5としては、上記の主成分としての樹脂組成物に対して、超臨界逆相蒸発法によりベシクル化された分散剤と無機微粒子とが添加されている。この時、分散剤には、
少なくとも炭素原子間の不飽和炭素結合を有する分散剤を用いることが重要であり、主成分としての樹脂組成物には、光硬化型樹脂または光硬化型樹脂と熱硬化型樹脂との混合物を用いることが重要である。これにより、分散剤の
少なくとも炭素原子間の不飽和炭素結合と光硬化型樹脂とが反応して、トップコート層5の表面に無機微粒子を固定化した構造を形成するので、飛躍的にトップコート層5の表面の耐擦傷性を向上させることができる。また、無機微粒子は、主成分の樹脂組成物100重量部に対して、0.1〜30重量部添加されていることが好ましい。この他にも、耐候性を向上させるために、紫外線吸収材および光安定材を添加したり、各種機能を付与するために抗菌剤、防カビ剤等の機能性添加材を添加することもできる。
【0045】
プライマー層6としては、基本的には絵柄模様層3と同じ材料を用いることができるが、化粧シート1の裏面に施されるためにウエブ状で巻取りを行うことを考慮すると、ブロッキングを避けて且つ接着剤との密着を高めるために、シリカ、アルミナ、マグネシア、酸化チタン、硫酸バリウム等の無機充填剤を添加させてもよい。
【0046】
第1実施形態の化粧シート1においては、原反層2は印刷作業性、コストなどを考慮して20μm〜150μmとすることが望ましく、化粧シート1の総厚は25μm〜200μmの範囲内とすることが好適である。
【0047】
図2は本発明の化粧シート1の第2実施形態を示し、第1実施形態の化粧シート1に対してさらに透明樹脂層4を具備した態様について説明する。なお、積層方法および透明樹脂層4の層数は、所望の化粧シート1の性能などに応じて適宜選択することができる。本実施形態の化粧シート1は、当該化粧シート1が貼り合わせられる木質ボード類、無機質ボード類または金属板などの基材Bに面する側から、原反層2、絵柄模様層3、接着層7(感熱接着層、アンカーコート層、ドライラミ接着材層)、透明樹脂層4、トップコート層5と積層された構成とされている。また、意匠性を向上させるために透明樹脂層4のトップコート層5側の面にエンボス模様4aを適宜設けてもよい。
【0048】
第2実施形態における原反層2、絵柄模様層3、トップコート層5およびプライマー層6は、第1実施形態と同様の構成のものを用いることができる。
【0049】
透明樹脂層4としては、ポリオレフィン系樹脂に対して超臨界逆相蒸発法によりベシクル化した造核剤が添加されているものを用いることが好適である。オレフィン系樹脂としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテンなどの他に、αオレフィン(例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、9−メチル−1−デセン、11−メチル−1−ドデセン、12−エチル−1−テトラデセンなどを)を単独重合あるいは2種類以上共重合させたものや、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体、エチレン・メチルメタクリレート共重合体、エチレン・エチルメタクリレート共重合体、エチレン・ブチルメタクリレート共重合体、エチレン・メチルアクリレート共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合体、エチレン・ブチルアクリレート共重合体などのように、エチレンまたはαオレフィンとそれ以外のモノマーとを共重合させたものが挙げられる。また、化粧シート1の表面強度の向上を図る場合には、高結晶性のポリプロピレンを用いることが好ましい。
【0050】
なお、透明樹脂層4には、必要に応じて熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、ブロッキング防止剤、触媒捕捉剤、着色剤、光散乱剤および艶調整剤等を各種添加剤を添加することもできる。熱安定剤としては、フェノール系、硫黄系、リン系、ヒドラジン系等、紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系、ベンゾエート系、ベンゾフェノン系、トリアジン系等、光安定剤としては、ヒンダードアミン系等を、任意の組み合わせで添加するのが一般的である。
【0051】
接着層7としては、特に限定されるものではないが、アクリル系、ポリエステル系、ポリウレタン系、エポキシ系などから適宜選択して用いることができる。塗工方法は接着材の粘度になどに応じて適宜選択することができるが、一般的には、グラビアコートが用いられ、絵柄模様層3の上面に対してグラビアコートによって塗布された後、透明樹脂層4とラミネートするようにされている。なお、接着層7は、透明樹脂層4と絵柄模様層3との接着強度が十分に得られる場合には、省略することができる。
【0052】
また、化粧シート1に隠蔽性を付与したい場合には、原反層2を着色シートとすることで隠蔽性を付与したり、原反層2は透明シートのままで、別途、不透明な隠蔽層8を設けて隠蔽性を付与することができる。
【0053】
隠蔽層8としては、基本的には絵柄模様層3と同じ材料から構成することができるが、隠蔽性を保たせることを目的としているので、顔料としては不透明な顔料、酸化チタン、酸化鉄等を使用することが好ましい。また隠蔽性を上げるために金、銀、銅、アルミ等の金属を添加することも可能である。一般的にはフレーク状のアルミを添加させることが多い。
【0054】
本発明の化粧シート1を形成するに当たり、積層方法は特に限定するものではなく、熱圧を応用した方法、押し出しラミネート方法およびドライラミネート方法などの一般的に用いられる方法から適宜選択して形成することができる。エンボス模様4aを形成する場合には、一旦、前記積層方法によってラミネートした後に熱圧によってエンボス模様4aを入れる方法または冷却ロールに凹凸模様を設けて押し出しラミネートと同時にエンボス模様4aを形成することができる。
【0055】
第2実施形態の化粧シート1においては、原反層2は印刷作業性、コストなどを考慮して20μm〜150μm、接着層7は1μm〜20μm、透明樹脂層4は20μm〜200μm、トップコート層5は3μm〜20μmとすることが望ましく、化粧シート1の総厚は45μm〜250μmの範囲内とすることが好適である。接着層7が1μm以下の場合、積層体として求められる密着性を得ることができず、10μm以上であると不燃性を悪化させる可能性が高い。
【0056】
以上のように、本発明の化粧シート1においては、トップコート層5
を、超臨界逆相蒸発法に
よってベシクルに分散剤を内包させた分散剤内包ベシクルと無機微粒子とを添加
して形成することにより、当該無機微粒子を凝集させることなく均一に分散させることが可能となり、化粧シート1に要求される透明性を保持し、さらに優れた耐擦傷性を備えた化粧シート1を提供することを可能とする。
【0057】
また、当該分散剤を
少なくとも炭素原子間の不飽和炭素結合を有する分散剤とすることにより、無機微粒子をトップコート層5の表面に固定化させることができるので、極めて耐擦傷性に優れた化粧シート1を提供することができる。
【0058】
<超臨界逆相蒸発法によりベシクル化した分散剤の調製>
以下に、超臨界逆相蒸発法によりベシクル化した分散剤の詳しい調製方法を説明する。まず、メタノール100重量部、分散剤としてのオレイン酸ナトリウム70重量部、ベシクルの外膜を構成する物質としてのホスファチジルコリン5重量部を60℃に保たれた高圧ステンレス容器に入れて密閉し、圧力が20MPaになるように当該容器内に二酸化炭素を注入して超臨界状態とする。その後、当該容器内を激しく攪拌するとともに、イオン交換水100重量部を注入する。温度と圧力を超臨界状態に保ちながらさらに15分間攪拌混合後、二酸化炭素を容器から排出して大気圧に戻すことで分散剤を内包したリン脂質からなる外膜を具備するリポソームが得られる。なお、ベシクルの外膜を分散剤などの物質とする場合には、ホスファチジルコリンに替えて上述の分散剤を用いることにより得られる。
【0059】
<透明樹脂層4を形成する樹脂組成物の調製>
以下に、超臨界逆相蒸発法によりベシクル化した造核剤を添加した透明樹脂層4の樹脂組成物の詳しい調製方法を説明する。まず、超臨界逆相蒸発法を用いた造核剤のベシクル化処理方法は、メタノール100重量部、造核剤としてのリン酸エステル金属塩系造核剤(アデカスタブNA−11、ADEKA社製)82重量部、ベシクルの外膜を構成する物質としてのホスファチジルコリン5重量部を60℃に保たれた高圧ステンレス容器に入れて密閉し、圧力が20MPaとなるように二酸化炭素を注入して超臨界状態とした後、激しく攪拌混合しながらイオン交換水を100重量部注入する。容器内の温度および圧力を超臨界状態に保持した状態で15分間攪拌後、二酸化炭素を排出して大気圧に戻すことによってベシクル化された造核剤を得る。実際に透明樹脂層4としての透明樹脂シートを形成する際には、ペンタッド分率が97.8%、MFR(メルトフローレート)が15g/10min(230℃)、分子量分布MWD(Mw/Mn)が2.3の高結晶化ホモポリプロピレン樹脂に、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(イルガノックス1010:BASF社製)を500PPMと、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チヌビン328:BASF社製)を2000PPMと、ヒンダードアミン系光安定剤(キマソーブ944:BASF社製)を2000PPMと、前記の超臨界逆相蒸発法によってナノ化処理された造核剤を1000PPMとを添加した樹脂を溶融押出機を用いて押し出し、透明樹脂層4として使用する厚さ100μmの高結晶性ポリプロピレン製の透明樹脂シートを得る。
【0060】
以下に、本発明の化粧シート1の具体的な実施例について説明する。
【0061】
<実施例1>
実施例1においては、前記造核剤リポソームを添加した透明樹脂層4(透明樹脂シート4)の表面に対して、前記分散剤リポソーム0.5重量部および無機微粒子5重量部を光硬化型樹脂に添加したトップコート層5を形成した化粧シート1とした。
【0062】
具体的には、上述の透明樹脂層4を形成する樹脂組成物を、押し出し機を用いて溶融押し出して、厚さ80μmの透明な高結晶性ポリプロピレンシートとしての透明樹脂シート4を製膜し、得られた透明樹脂シート4の両面にコロナ処理を施し、透明樹脂シート4表面の濡れを40dyn/cm以上とした。他方、隠蔽性のある70μmのポリエチレンシート(原反層2)の一方の面に、2液型ウレタンインキ(V180;東洋インキ製造(株)製)に、そのインキのバインダー樹脂分に対してヒンダードアミン系光安定化剤(キマソーブ944;BASF社製)を0.5重量%添加したインキを用いてグラビア印刷方式にて絵柄印刷を施して絵柄模様層3を設け、また、前記原反層2の他方の面にプライマー層6を設けた。しかる後、前記原反層2の一方の面側に、接着剤層7としてのドライラミネート用接着剤(タケラックA540;三井化学工業(株)製;塗布量2g/m
2 )を介して透明樹脂シート4をドライラミネート法にて貼り合わせた。そして、透明樹脂シート4の表面にエンボス模様4aを施した後、光硬化型ウレタンアクリレート(ユニディック17−824−9;DICグラフィックス社製)100重量部に対して、前述の分散剤リポソーム0.5重量部、粒径10μmのシリカ微粒子(サンスフェアNP−30;AGCエスアイテック(株)製)5重量部を配合してなるインキを塗布厚15g/m
2 にて塗布してトップコート層5を形成し、総厚167μmの
図2に示す本発明の化粧シートを得た。
【0063】
<実施例2>
実施例2においては、前記造核剤リポソームを添加した透明樹脂層4(透明樹脂シート4)の表面に対して、前記分散剤リポソーム0.5重量部および無機微粒子5重量部を光硬化型樹脂および熱硬化型樹脂の混合樹脂に添加したトップコート層5を形成した化粧シート1とした。
【0064】
具体的には、実施例1において、光硬化型ウレタンアクリレート(ユニディック17−824−9;DICグラフィックス社製)を60重量部、2液硬化型ウレタントップコート(W184;DICグラフィックス社製)を40重量部、前記分散剤リポソーム0.5重量部、粒径10μmのシリカ微粒子(サンスフェアNP−30;AGCエスアイテック(株)製)5重量部を配合してなるインキを用いてトップコート層5を形成し、
図2に示す本発明の化粧シート1を得た。
【0065】
<実施例3>
実施例3においては、前記造核剤リポソームを添加しない透明樹脂層4(透明樹脂シート4)の表面に対して、前記分散剤リポソーム0.5重量部および無機微粒子5重量部を光硬化型樹脂に添加したトップコート層5を形成した化粧シート1とした。
【0066】
具体的には、実施例1において、ペンタッド分率が97.8%、MFR(メルトフローレート)が15g/10min(230℃)、分子量分布MWD(Mw/Mn)が2.3の高結晶化ホモポリプロピレン樹脂に、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(イルガノックス1010:BASF社製)を500ppmと、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チヌビン328:BASF社製)を2000ppmと、ヒンダードアミン系光安定剤(キマソーブ944:BASF社製)を2000ppmとを添加した樹脂を用いて透明樹脂層4を形成し、
図2に示す本発明の化粧シート1を得た。
【0067】
<比較例1>
比較例1においては、前記造核剤リポソームを添加した透明樹脂層4(透明樹脂シート4)の表面に対して、ベシクル化しない分散剤0.5重量部および無機微粒子5重量部を光硬化型樹脂に添加したトップコート層5を形成した化粧シート1とした。
【0068】
具体的には、実施例1において、原反層2の一方の面側に、接着剤層7としてのドライラミネート用接着剤(タケラックA540;三井化学工業(株)製;塗布量2g/m
2 )を介して透明樹脂シート4をドライラミネート法にて貼り合わせ、透明樹脂シート4の表面にエンボス模様4aを施した後、光硬化型ウレタンアクリレート(ユニディック17−824−9;DICグラフィックス社製)100重量部に対して、ベシクル化しない分散剤としてのオレイン酸ナトリウム0.5重量部、粒径10μmのシリカ微粒子(サンスフェアNP−30;AGCエスアイテック(株)製)5重量部を配合してなるインキを塗布厚15g/m
2 にて塗布してトップコート層5を形成して
図2に示す本発明の化粧シート1を得た。
【0069】
<比較例2>
比較例2においては、前記造核剤リポソームを添加した透明樹脂層4(透明樹脂シート4)の表面に対して、
炭素原子間の不飽和炭素結合を有さない分散剤リポソーム0.5重量部および無機微粒子5重量部を光硬化型樹脂に添加したトップコート層5を形成した化粧シート1とした。
【0070】
具体的には、実施例1において、透明樹脂シート4の表面にエンボス模様4aを施した後、光硬化型ウレタンアクリレート(ユニディック17−824−9;DICグラフィックス社製)100重量部に対して、12−ヒドロステアリン酸マグネシウム(MS−6;日東化成工業(株)製)を超臨界逆送蒸発法によってベシクル化した分散剤リポソーム0.5重量部、粒径10μmのシリカ微粒子(サンスフェアNP−30;AGCエスアイテック(株)製)5重量部を配合してなるインキを塗布厚15g/m
2 にて塗布してトップコート層5を形成し、総厚167μmの
図2に示す本発明の化粧シートを得た。
【0071】
<比較例3>
比較例3においては、前記造核剤リポソームを添加した透明樹脂層4(透明樹脂シート4)の表面に対して、前記分散剤リポソーム0.005重量部および無機微粒子0.05重量部を光硬化型樹脂に添加したトップコート層5を形成した化粧シート1とした。
【0072】
具体的には、実施例1において、透明樹脂シート4の表面にエンボス模様4aを施した後、光硬化型ウレタンアクリレート(ユニディック17−824−9;DICグラフィックス社製)100重量部に対して、前記分散剤リポソーム0.005重量部、粒径10μmのシリカ微粒子(サンスフェアNP−30;AGCエスアイテック(株)製)0.05重量部を配合してなるインキを塗布厚15g/m
2 にて塗布してトップコート層5を形成し、総厚167μmの
図2に示す本発明の化粧シートを得た。
【0073】
<比較例4>
比較例4においては、前記造核剤リポソームを添加した透明樹脂層4(透明樹脂シート4)の表面に対して、前記分散剤リポソーム4重量部および無機微粒子40重量部を光硬化型樹脂に添加したトップコート層5を形成した化粧シート1とした。
【0074】
具体的には、実施例1において、透明樹脂シート4の表面にエンボス模様4aを施した後、光硬化型ウレタンアクリレート(ユニディック17−824−9;DICグラフィックス社製)100重量部に対して、前記分散剤リポソーム4重量部、粒径10μmのシリカ微粒子(サンスフェアNP−30;AGCエスアイテック(株)製)40重量部を配合してなるインキを塗布厚15g/m
2 にて塗布してトップコート層5を形成し、総厚167μmの
図2に示す本発明の化粧シートを得た。
【0075】
上記実施例1〜3および上記比較例1〜4で得られた各々化粧シートを、ウレタン系の接着剤を用いて木質基材に貼り合わせた後、目視にて表面の透明性、ホフマンスクラッチ試験およびスチールウールラビング試験にて表面硬度、V溝曲げ加工試験にてV溝曲げ加工適性を判定し、それぞれ評価を行った。得られた評価結果を表1に示す。
【0076】
表1の評価結果における記号の説明は下記の通りである。
◎:非常に良好な透明性、耐擦傷性または耐後加工性を有する
○:良好な透明性、耐擦傷性または耐後加工性を有する
×:透明性、耐擦傷性または耐後加工性に劣る
【0078】
実施例1〜3の化粧シート1においては、表1に示すように、透明性が良好であるとともに、スチールウール試験およびホフマンスクラッチ試験においても良好な結果が得られた。これは、トップコート層5に添加した分散剤に対して、本発明の超臨界逆相蒸発法を用いてベシクル化処理を施しているため当該分散剤がトップコート層5の樹脂組成物中において高い分散性を実現し、その結果、前記シリカ微粒子をも均一に分散させることができるために良好な透明性を備えることを可能としているとともに、当該分散剤が
少なくとも炭素原子間の不飽和炭素結合を有しているためにトップコート層5の表面に前記シリカ微粒子を固定化して硬度が上がり、耐擦傷性の向上につながったと考えられる。特に、実施例2においては、耐擦傷性が非常に良好であり、これは、光硬化型樹脂と熱硬化型樹脂との混合樹脂を用いることで、トップコート層5の表面硬度が向上したためであると考えられる。
【0079】
一方で、比較例1および比較例4で得られた化粧シート1は、実施例1〜3の化粧シート1と比較して、透明性が劣るという結果が得られた。この理由としては、比較例1においては、分散剤に対して本発明のベシクル化処理を施していないために十分な分散性が得られなかったためであり、比較例4においては、トップコート層5に添加されたシリカ微粒子の添加量が多すぎるために2次凝集が生じ、分散性が低くなってしまったためであると考えられる。
【0080】
また、比較例2および3の化粧シート1は、スチールウール試験およびホフマンスクラッチ試験において、実施例1〜3の化粧シート1と比較して表面硬度(耐擦傷性)に劣るという結果が得られた。この理由としては、比較例2においては、
炭素原子間の不飽和炭素結合を有さない分散剤を使用していことでトップコート層5の表面にシリカ微粒子を固定化できなかったためであり、比較例3においては、トップコート層5に含まれるシリカ微粒子の量が少なすぎることで表面硬度が十分に向上せずに耐擦傷性に劣ったと考えられる。
【0081】
また、実施例1〜3および比較例1〜4で得られた化粧シート1は、全てのサンプルにおいて、V溝曲げ加工適性が良好であるという結果が得られた。
【0082】
以上の評価結果から、実施例1〜3に示す本発明の化粧シート1は、化粧シートに要求される透明性を備え、極めて耐擦傷性と耐後加工性とに優れた化粧シートであることが明らかとなった。
【0083】
本発明の化粧シート
および化粧シートの製造方法は、上記の実施形態および実施例に限定されるものではなく、発明の特徴を損なわない範囲において、種々の変更が可能である。