(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記プレキャスト床版部材と前記プレキャスト壁高欄部材とを結合するヒンジ結合部材が、前記プレキャスト壁高欄部材が前記展開位置にある時に前記充填材充填溝の内部に配置されることを特徴とする請求項1に記載のプレキャスト橋梁部材。
前記ヒンジ結合部材が、前記プレキャスト床版部材に一体に設けられる第1ヒンジ部材と、前記プレキャスト壁高欄部材に一体に設けられる第2ヒンジ部材と、前記第1及び第2ヒンジ部材に設けられた孔に挿入される軸部材とを備え、前記第1及び第2ヒンジ部材の一方の前記孔が長孔であることを特徴とする請求項2に記載のプレキャスト橋梁部材。
前記プレキャスト床版部材は、前記充填材充填溝の内部に延在し、前記プレキャスト壁高欄部材の前記展開位置側への移動を規制する規制部材を一体に備えることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載のプレキャスト橋梁部材。
前記規制部材が、前記プレキャスト床版部材に一体に設けられた棒状部材と、前記棒状部材の先端に変位自在に取り付けられ、前記プレキャスト壁高欄部材に当接して前記プレキャスト壁高欄部材の位置を調整する位置調整部材とを有することを特徴とする請求項4に記載のプレキャスト橋梁部材。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の技術は全て、床版架設後にプレキャスト高欄部材を床版上に搬入し、それぞれの結合方法で高欄部材を床版に連結する必要があり、搬送・搬入作業が煩雑である。また、高欄部材を床版に接合する際に、位置決めが難しいことや、高欄の外方や床版の下方等での作業が必要になること、即ち作業足場が必要になること等から、高欄部材の接合作業も煩雑である。
【0005】
本発明はこのような背景に鑑み、搬送・搬入作業が容易であり、かつプレキャスト壁高欄の床版に対する接合作業が容易なプレキャスト橋梁部材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような課題を解決するために、本発明は、プレキャスト橋梁部材(10)であって、プレキャスト床版部材(11)と、前記プレキャスト床版部材の橋幅方向の端部に接合されるプレキャスト壁高欄部材(12)とを備え、前記プレキャスト壁高欄部材が、前記プレキャスト床版部材の上方で当該プレキャスト床版部材に沿って延在する折畳み位置と、鉛直方向に沿って延在し、前記プレキャスト床版部材の側端部に対峙する展開位置とをとり得るように前記プレキャスト床版部材にヒンジ結合されている構成とする。
【0007】
この構成によれば、プレキャスト壁高欄部材がプレキャスト床版部材にヒンジ結合されているため、プレキャスト床版部材とプレキャスト壁高欄部材とを一括して搬送することや搬入(架設)することが可能である。また、プレキャスト壁高欄部材が折畳み位置をとり得るため、複数のプレキャスト橋梁部材を重ねて搬送車両に積載することが可能であり、搬送、搬入作業が容易である。更に、プレキャスト壁高欄部材が展開位置をとり得るため、プレキャスト壁高欄部材のプレキャスト床版部材に対する位置決めが容易であり、接合作業が容易になる。
【0008】
また、本発明は、上記の構成において、前記プレキャスト壁高欄部材(12)は、壁高欄(2)と床版(1)の端部(1b)とを一体に形成してなり、前記プレキャスト壁高欄部材が前記展開位置にある時に、前記プレキャスト床版部材(11)と前記プレキャスト壁高欄部材との間に上方に開口する充填材充填溝(42)が形成され、前記充填材充填溝(42)の底面を形成する底壁(22、32)が前記プレキャスト床版部材(11)及び前記プレキャスト壁高欄部材の少なくとも一方に一体に形成された構成とすることができる。
【0009】
この構成によれば、底壁が充填材充填溝の底面を形成し、充填材充填溝が上方に開口するため、充填用の型枠を別途設ける必要がなく、充填作業も容易である。また、床版上で充填材充填溝内の配筋作業や充填材充填溝への充填作業を行うことができる。従って、プレキャスト壁高欄部材の接合作業がより容易である。
【0010】
また、本発明は、上記の構成において、前記プレキャスト壁高欄部材(12)は、壁高欄(2)の下部を切り欠いた形状をなし、前記プレキャスト壁高欄部材が前記展開位置にある時に、前記プレキャスト床版部材(11)と前記プレキャスト壁高欄部材との間に橋幅方向の内方に開口する充填材充填溝(72)が形成され、前記充填材充填溝(72)の底面を形成する底壁(62)が前記プレキャスト床版部材(11)及び前記プレキャスト壁高欄部材の少なくとも一方に一体に形成された構成とすることができる。
【0011】
この構成によれば、底壁が充填材充填溝の底面を形成し、充填材充填溝が橋幅方向の内方に開口するため、充填用の内側型枠は必要になるが外側型枠は別途設ける必要がない。また、床版上で型枠組立作業や充填材充填溝内の配筋作業、充填材充填溝への充填作業を行うことができる。従って、プレキャスト壁高欄部材の接合作業がより容易である。更に、プレキャスト壁高欄部材が折畳み位置にある時のプレキャスト橋梁部材の高さ寸法を小さくすることができる。
【0012】
また、本発明は、上記の構成において、前記プレキャスト床版部材(11)と前記プレキャスト壁高欄部材(12)とを結合するヒンジ結合部材(13)が、前記プレキャスト壁高欄部材が前記展開位置にある時に前記充填材充填溝(42、72)の内部に配置される構成とするとよい。
【0013】
この構成によれば、プレキャスト床版部材とプレキャスト壁高欄部材とがヒンジ結合された状態のまま充填材を充填材充填溝に充填することができる。従って、ヒンジ結合部材を撤去する作業や、ヒンジ結合部でプレキャスト壁高欄部材を固定する作業を行う必要がなく、接合作業が容易である。
【0014】
また、本発明は、上記の構成において、前記ヒンジ結合部材(13)が、前記プレキャスト床版部材(11)に一体に設けられる第1ヒンジ部材(25)と、前記プレキャスト壁高欄部材(12)に一体に設けられる第2ヒンジ部材(35)と、前記第1及び第2ヒンジ部材に設けられた孔に挿入される軸部材(37)とを備え、前記第1及び第2ヒンジ部材の一方の前記孔が長孔である構成とするとよい。
【0015】
この構成によれば、展開位置にあるプレキャスト壁高欄部材の位置を調整することができる。従って、プレキャスト橋梁部材の据付時に据付誤差が生じても、プレキャスト壁高欄部材の位置で据付誤差を吸収することができる。
【0016】
また、本発明は、上記の構成において、前記プレキャスト床版部材(11)は、前記充填材充填溝(42、72)の内部に延在し、前記プレキャスト壁高欄部材(12)の前記展開位置側への移動を規制する規制部材(27)を一体に備える構成とするとよい。
【0017】
この構成によれば、プレキャスト壁高欄部材を展開する時にプレキャスト壁高欄部材がプレキャスト床版部材に衝突して破損することを防止できる。
【0018】
また、本発明は、上記の構成において、前記規制部材(27)が、前記プレキャスト床版部材(11)に一体に設けられた棒状部材(27a)と、前記棒状部材の先端に変位自在に取り付けられ、前記プレキャスト壁高欄部材(12)に当接して前記プレキャスト壁高欄部材の位置を調整する位置調整部材(27b)とを有する構成とするとよい。
【0019】
この構成によれば、位置調整部材の位置を変更することでプレキャスト壁高欄部材の位置を容易に調整することができる。
【0020】
また、本発明は、上記の構成において、前記プレキャスト床版部材(11)及び前記プレキャスト壁高欄部材(12)のそれぞれが前記充填材充填溝(42、72)の内部に配置される連結鉄筋(26、36)を一体に備える構成とするとよい。
【0021】
この構成によれば、プレキャスト壁高欄部材を展開位置に配置した後に橋幅方向の鉄筋をプレキャスト床版部材及びプレキャスト壁高欄部材に接続する必要がないため、接合用の配筋作業が容易である。
【発明の効果】
【0022】
このように本発明によれば、搬送・搬入作業が容易であり、かつプレキャスト壁高欄の床版に対する接合作業が容易なプレキャスト橋梁部材を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係るプレキャスト橋梁部材の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図面では、コンクリート内に設けられる部材の一部を、あたかもコンクリートを透視して示すように実線で示している。
【0025】
≪第1実施形態≫
まず
図1〜
図6を参照して第1実施形態について説明する。
図1に示すように、プレキャスト橋梁部材(以下、PCa橋梁部材10と記す。)は、橋軸に直交する水平方向(以下、橋幅方向という)に長い形状を呈しており、橋脚間に架け渡される図示しない複数本(本実施形態では4本)の主桁上に橋軸方向に並べて据え付けられて桁橋の床版1及び壁高欄2(
図4参照)を構成する。PCa橋梁部材10は、鉄筋コンクリート(RC)製であってもプレストレストコンクリート(PC)製であってもよく、予め工場で製造されて現場に搬送される。また、PCa橋梁部材10や主桁、横桁等により上部構造が構成される桁橋は、主桁がI形桁で構成される鈑桁橋(複合橋)や、主桁が鋼製の箱桁で構成される箱桁橋(複合橋)であってよく、主桁がPC桁で構成されるPC橋(コンクリート橋)であってもよい。桁橋は、道路橋や鉄道橋、水道橋、歩道橋等として利用される。PCa橋梁部材10は、桁橋の新設時に用いられてよく、桁橋の架け替え時に用いられてもよい。
【0026】
PCa橋梁部材10は、橋幅方向に長い矩形板状のプレキャスト床版部材(以下、PCa床版部材11と記す)と、PCa床版部材11の橋幅方向の端部にヒンジ結合された一対のプレキャスト壁高欄部材(以下、PCa高欄部材12と記す)とを備えている。
図1は、PCa高欄部材12がPCa床版部材11の上方でPCa床版部材11に沿って橋幅方向に延在する折畳み位置にある状態(以下、折畳み状態という)を示している。折畳み状態は、工場で製作されたPCa橋梁部材10が現場に搬送される時にとられる。また、現場に搬送されたPCa橋梁部材10が搬送車両52(
図6)から直接又はヤードに仮置きされた後に主桁上に搬入(架設)される時に折畳み状態であってもよい。
【0027】
PCa床版部材11は、床版1(
図4参照)の橋幅方向の両端部を除いた中央部の大部分1aをなす幅を有している。PCa床版部材11の橋軸方向長さは、公道を車両で運搬可能なように3.2m以下とされ、本実施形態では3.0mとされている。PCa床版部材11の上面は平坦面とされ、PCa橋梁部材10の下面には、主桁に対応する位置に4つの増厚部12aが形成されている。
【0028】
PCa高欄部材12は、床版1の橋幅方向の一方の端部1b(
図4参照)と、床版1の橋幅方向の端縁に立設される壁高欄2(
図4参照)の全部とが一体に形成された形状とされている。折畳み状態において、PCa高欄部材12は、ヒンジ結合部材13と、PCa床版部材11の上に配置された架台14とにより支持され、自重によりPCa床版部材11に対して固定された状態となる。PCa高欄部材12の橋軸方向長さは、PCa床版部材11と同等とされている。
【0029】
PCa床版部材11及びPCa高欄部材12の詳細構造並びにこれらのヒンジ結合部材13の構造について、
図2を参照して説明する。
図2は
図1の要部(右部)拡大図であり、
図2中の想像線は、実線で示すPCa高欄部材12が展開され、鉛直に延在してPCa床版部材11の側端部の端面に対峙する展開位置にある状態(以下、展開状態という)を示している。
【0030】
PCa床版部材11は、床版1の厚さの全体を構成する板状の床版主部21と、床版主部21の橋幅方向の端面の下部から橋幅方向の外方に向けて突出する内側床版下壁22とを有している。内側床版下壁22の先端にはバックアップ材45が貼付されている。床版主部21には、鋼板からなる第1ヒンジ部材25が端面から橋幅方向の外方に向けて突出するように一体に設けられている。第1ヒンジ部材25は、鉛直方向に延在しており、床版主部21から突出する部分には、橋幅方向に長い長孔(図示せず)が第1ヒンジ部材25を貫通するように形成されている。第1ヒンジ部材25は、PCa床版部材11の橋軸方向に離間する2箇所に設けられる。また、床版主部21には、連結鉄筋26が端面から橋幅方向の外方に向けて突出するように一体に設けられている。連結鉄筋26は、橋軸方向に所定の間隔をおいて配置された複数のループ筋により構成されている。
【0031】
図3に示されるように、床版主部21には、PCa高欄部材12の展開位置側への移動を規制するための規制部材27が端面から橋幅方向の外方に向けて突出するように一体に設けられている。規制部材27は、少なくとも先端部には雄ねじが形成された鋼棒からなる棒状部材27aと、棒状部材27aの先端に螺合し、PCa高欄部材12に当接することでPCa高欄部材12の橋幅方向の内方への移動を規制する長ナット27bとにより構成されている。長ナット27bは、棒状部材27a回りに回転することで棒状部材27aの軸方向に変位し、PCa高欄部材12の位置を調整する位置調整部材としても機能する。規制部材27は、PCa床版部材11の橋軸方向に離間する2箇所に設けられる。
【0032】
図2に示されるように、床版主部21の上面における端縁から橋幅方向の内方に離間した位置には、インサートナット28が埋め込まれている。
【0033】
PCa高欄部材12は、床版1の厚さの全体を構成するブロック状の床版端部31と、床版端部31の橋幅方向の内面の下部(展開状態を基準とする。以下、特に断らない限り同様とする。)から橋幅方向の内方に向けて突出する外側床版下壁32と、床版端部31の上面における橋幅方向の外部から上方に向けて突出する高欄部33とを有している。高欄部33は、下側ほど壁厚が大きくなるテーパ形状を呈しており、下部には橋幅方向の内方に突出する地覆部34が一体形成されている。
【0034】
床版端部31には、鋼板からなる一対の第2ヒンジ部材35が内面から橋幅方向の内方に向けて突出するように一体に設けられている。第2ヒンジ部材35は、鉛直方向に延在しており、第1ヒンジ部材25の厚さに概ね等しい間隔を空けて対峙するように配置される。第2ヒンジ部材35の床版端部31から突出する部分のそれぞれには、円形断面の貫通孔(図示せず)が同軸上に形成されている。一対の第2ヒンジ部材35は、第1ヒンジ部材25に対応してPCa高欄部材12の2箇所に設けられる。また、床版端部31には、連結鉄筋36が内面から橋幅方向の内方に向けて突出するように一体に設けられている。連結鉄筋36は、橋軸方向に所定の間隔をおいて配置された複数のループ筋として構成されている。
【0035】
第1ヒンジ部材25が一対の第2ヒンジ部材35の間に配置された状態で、第1ヒンジ部材25の長孔及び第2ヒンジ部材35の貫通孔に軸部材としてボルト37が挿入され、このボルト37にナット(図示せず)が螺合されることでボルト37の抜け止めがなされる。このように、第1ヒンジ部材25、第2ヒンジ部材35及びボルト37によりヒンジ結合部材13が構成され、ヒンジ結合部材13によりPCa高欄部材12は、折畳み位置と展開位置とをとり得るようにPCa床版部材11にヒンジ結合される。ボルト37及びナットが緩んでいる状態では、PCa高欄部材12はボルト37を中心とする回転移動及び長孔に沿った水平移動が可能である。一方、ボルト37及びナットが締結された状態では、PCa高欄部材12の回転移動及び水平移動は阻止される。
【0036】
高欄部33の内面の上部及び床版端部31の上面には、インサートナット38、39が埋め込まれている。PCa高欄部材12は、高欄部33のインサートナット38に吊り金具41が取り付けられ、吊り金具41を介してクレーンで吊り上げられること等により展開位置に展開(回転移動)される。PCa高欄部材12の展開は、PCa橋梁部材10が主桁上に架設される前に仮置きヤードで行われてもよく、PCa橋梁部材10が主桁上に架設された後に行われてもよい。PCa高欄部材12は比較的軽量であるため、PCa橋梁部材10が主桁上に架設された後にPCa高欄部材12が展開される場合、PCa橋梁部材10を架設するためのクレーンとは別に用意した小型のクレーンを桁橋上に配置し、このクレーンを用いてPCa高欄部材12を展開するとよい。或いは、ジャッキや専用の押し上げ装置、チェーンブロック等を用いてPCa高欄部材12を展開してもよい。
【0037】
図3は、PCa高欄部材12を展開した状態を示している。この展開状態では、PCa床版部材11とPCa高欄部材12との間に上方に開口する有底の充填材充填溝42が形成される。充填材充填溝42の底面は、PCa床版部材11に突出形成された内側床版下壁22とPCa高欄部材12に突出形成された外側床版下壁32とにより形成される。つまり、内側床版下壁22及び外側床版下壁32が充填材充填溝42の底壁となっている。外側床版下壁32と内側床版下壁22との隙間はバックアップ材45により閉じられる。また、展開状態では、PCa床版部材11及びPCa高欄部材12に設けられた連結鉄筋26、36が充填材充填溝42の内部に配置される。更に、ヒンジ結合部材13(
図4参照)及び規制部材27も充填材充填溝42の内部に配置される。
【0038】
PCa高欄部材12の回転移動は、ボルト37及びナットが締結された状態ではヒンジ結合部材13により阻止されるが、PCa高欄部材12を展開するためにボルト37及びナットが緩んだ状態ではヒンジ結合部材13により阻止されない。そのため、PCa高欄部材12の展開作業時に外側床版下壁32が内側床版下壁22に衝突して一方又は両方が破損する虞がある。本実施形態では、PCa床版部材11に規制部材27が一体に設けられているため、外側床版下壁32が内側床版下壁22に衝突しない位置で規制部材27がPCa高欄部材12に当接してその回転移動を規制するように、長ナット27bを回転させて規制部材27の長さを調整しておく。
【0039】
左右のPCa高欄部材12の展開作業後、PCa高欄部材12の位置調整が行われる。橋幅方向に長い長孔が第1ヒンジ部材25に形成されているため、PCa高欄部材12は橋幅方向に水平移動が可能である。PCa高欄部材12の位置は、特に左右の高欄部33に一体形成された地覆部34間の有効幅が設計寸法を下回らないように調整される。また、PCa高欄部材12の展開作業をPCa橋梁部材10の架設後に行う場合には、先に架設されたPCa橋梁部材10の高欄部33との通りが合うように調整される。
【0040】
水平方向の位置調整と併せて、PCa高欄部材12の傾き調整及び橋幅方向の外方へのずれ防止が行われる。これらの作業は、図示されるように、例えば床版主部21、高欄部33及び床版端部31に埋設されたインサートナット28、38、39に冶具43を取り付け、レバーブロック(登録商標)44等を用いて冶具間距離を固定することで行われる。PCa高欄部材12の位置固定後、充填材充填溝42の内部(ループ状の連結鉄筋26、36の内部等)に橋軸方向鉄筋46が配置される。
【0041】
その後、
図4に示されるように、充填材充填溝42に充填材47が充填される。それぞれ鋼製のヒンジ結合部材13及び規制部材27(
図3)は充填材47に埋め殺しにされる。充填材47には、コンクリートやモルタル等のセメント系充填材を用いるとよい。これにより、PCa高欄部材12がPCa床版部材11に接合(一体化)される。充填材47の硬化後、レバーブロック44や冶具43は取り外され、次に据え付けられるPCa橋梁部材10の接合作業で使用される。
【0042】
なお、PCa橋梁部材10は、先に据え付けられたPCa橋梁部材10に対しても公知の手法を用いて連結される。床版1の連結部にはコンクリートを打設することが多く、この場合には連結用コンクリートと同時にコンクリートを充填材47として充填材充填溝42に打設することで、コンクリート打設回数が削減される。
【0043】
一方、高欄部33は次のようにして連結される。即ち、
図5に示されるように、互いに隣接する高欄部33の橋軸方向端面に予めせん断キー48を形成しておく。また、一方又は両方の高欄部33の橋軸方向端面に、バックアップ材49を橋幅方向の内面及び外面に沿って予め貼付しておく。PCa橋梁部材10が主桁上に据え付けられ、PCa高欄部材12が展開されてPCa床版部材11に接合された状態では、橋軸方向に隣接する高欄部33は所定の隙間を空けて対峙した状態となっており、隙間の内外の両端はバックアップ材49により閉じられる。この状態で、せん断キー48を含む隙間の全体にモルタル等の充填材50を充填する。これにより、高欄部33、33同士が連結される。
【0044】
以上のようにして複数のPCa橋梁部材10を主桁上に順次据え付け、先に据え付けたPCa橋梁部材10に連結してゆくことで、桁橋の床版1及び壁高欄2が構築される。
【0045】
このように構成されたPCa橋梁部材10は、
図1に示されるように、PCa床版部材11とPCa高欄部材12とを備え、PCa高欄部材12が折畳み位置と開位置とをとり得るようにPCa床版部材11にヒンジ結合されていることにより、PCa床版部材11とPCa高欄部材12とを一括して搬送することや搬入(架設)することが可能である。また、PCa高欄部材12が折畳み位置をとり得るため、
図6に示されるように、複数のPCa橋梁部材10を、I形鋼等の枕木51を介して上下に複数段に重ねてトレーラ等の搬送車両52に積載することが可能であり、搬送、搬入作業が容易である。更に、PCa高欄部材12が展開位置をとり得るため、PCa高欄部材12のPCa床版部材11に対する位置決めが容易であり、接合作業が容易になる。
【0046】
本実施形態では、
図3に示されるように、PCa高欄部材12が壁高欄2と床版1の端部1bとを一体に形成してなり、PCa高欄部材12が展開位置にある時に、PCa床版部材11とPCa高欄部材12との間に上方に開口する充填材充填溝42が形成され、充填材充填溝42の底面を形成する内側床版下壁22及び外側床版下壁32の少なくとも一方がPCa床版部材11又はPCa高欄部材12に一体に形成されることにより、充填用の型枠を別途設ける必要がなく、充填材47の充填作業も容易である。また、床版1上で充填材充填溝42内の配筋作業や充填材充填溝42への充填材47の充填作業を行うことができる。これにより、PCa高欄部材12の接合作業がより容易になる。
【0047】
また、
図4に示されるように、ヒンジ結合部材13が充填材充填溝42の内部に配置されることにより、PCa床版部材11とPCa高欄部材12とがヒンジ結合された状態のまま充填材47を充填材充填溝42に充填することができる。つまり、ヒンジ結合部材13を撤去する作業や、ヒンジ結合部でPCa高欄部材12を固定する作業を行う必要がなく、接合作業が容易である。
【0048】
また本実施形態では、ヒンジ結合部材13が、PCa床版部材11に設けられた第1ヒンジ部材25と、PCa高欄部材12に設けられた第2ヒンジ部材35と、両ヒンジ部材25、35に設けられた孔に挿入されるボルト37とを備え、両ヒンジ部材25、35の一方の孔が長孔であることにより、展開位置にあるPCa高欄部材12の位置を調整することができる。従って、PCa橋梁部材10の据付時に据付誤差が生じても、PCa高欄部材12の位置で据付誤差を吸収することが可能である。
【0049】
また、
図3に示されるように、PCa床版部材11が、充填材充填溝42の内部に延在してPCa高欄部材12の展開位置側への移動を規制する規制部材27を一体に備えることにより、PCa高欄部材12を展開する時にPCa高欄部材12がPCa床版部材11に衝突して破損することが防止される。
【0050】
更に、規制部材27が、PCa床版部材11に一体に設けられた棒状部材27aと、棒状部材27aの先端に変位自在に取り付けられ、PCa高欄部材12に当接してPCa高欄部材12の位置を調整する長ナット27bとを有することにより、長ナット27bの位置を変更することでPCa高欄部材12の位置を容易に調整できる。
【0051】
加えて、PCa床版部材11及びPCa高欄部材12が、充填材充填溝42の内部に配置される連結鉄筋26、36を一体に備えることにより、PCa高欄部材12を展開位置に配置した後に橋幅方向の鉄筋をPCa床版部材11及びPCa高欄部材12に接続する必要がないため、接合用の配筋作業が容易である。
【0052】
≪第2実施形態≫
次に、
図7〜
図10を参照して第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と形態又は機能が同一又は同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0053】
本実施形態のPCa橋梁部材10では、PCa床版部材11が、床版1の全幅と同じ幅を有し、床版1の橋幅方向の全体を構成している。一方、PCa高欄部材12は、床版1の橋幅方向の端縁に立設される壁高欄2の下部の内側を切り欠いた形状をなしている。
【0054】
PCa床版部材11には、第1ヒンジ部材25が端部の上面から上方に向けて突出するように一体に設けられている。第1ヒンジ部材25は、橋幅方向に延在しており、PCa床版部材11から突出する部分には、上下方向に長い長孔(図示せず)が貫通形成されている。また、PCa床版部材11には、連結鉄筋26及び規制部材27が端部の上面から上方に向けて突出するように一体に設けられている。また、PCa床版部材11の上面における橋幅方向の端縁にバックアップ材45が貼付されている。
【0055】
PCa高欄部材12は、壁高欄2の上部において壁厚の全体を構成する高欄主部61と、高欄主部61の下面から下方に向けて突出し、下側ほど薄くなるテーパ形状を呈して壁高欄2の橋幅方向の外側部分を構成する高欄外壁62とを有している。PCa高欄部材12には、一対の第2ヒンジ部材35が高欄外壁62のテーパ面から概ね下方に向けて突出するように一体に設けられている。また、PCa高欄部材12には、連結鉄筋36が高欄外壁62のテーパ面から概ね下方に向けて突出するように一体に設けられている。
【0056】
PCa高欄部材12は、第1ヒンジ部材25、第2ヒンジ部材35及びボルト37により構成されるヒンジ結合部材13により、PCa床版部材11の上方でPCa床版部材11に沿って橋幅方向に延在する実線で示す折畳み位置と、鉛直に延在してPCa床版部材11の側端部の上面に対峙する想像線で示す展開位置とをとり得るようにPCa床版部材11にヒンジ結合されている。
【0057】
図8は、PCa高欄部材12を展開した状態を示している。この展開状態では、PCa床版部材11とPCa高欄部材12との間に橋幅方向の内方に開口する有底の充填材充填溝72が形成される。充填材充填溝72の底面は、PCa高欄部材12に突出形成された高欄外壁62により形成される。つまり、高欄外壁62が充填材充填溝72の底壁となっている。高欄外壁62とPCa床版部材11との隙間はバックアップ材45により閉じられる。
【0058】
本実施形態では、上下方向に長い長孔が第1ヒンジ部材25(
図7)に形成されているため、PCa高欄部材12は上下方向に移動が可能である。そのため、左右のPCa高欄部材12の展開後に行われるPCa高欄部材12の位置調整では、PCa高欄部材12の位置は、先に架設されたPCa橋梁部材10のPCa高欄部材12との高さが通るように調整される。また、上下方向の位置調整と併せてPCa高欄部材12の傾き調整が行われる。この作業は、図示されるように、例えばPCa床版部材11及びPCa高欄部材12に埋設されたインサートナット28、38に冶具43を取り付け、冶具間距離を固定することで行われる。PCa高欄部材12の位置固定後、充填材充填溝72の内部(ループ状の連結鉄筋26、36の内部等)に橋軸方向鉄筋46が配置される。
【0059】
また、図示されるように、PCa床版部材11及びPCa高欄部材12の内部に上下方向に延在するシース74、75を設けておき、展開状態で直線状に配置された両シース74、75内にPC鋼棒76を挿入して充填材47(
図10)の硬化後にプレストレスを導入してもよい。この場合、雌ねじが形成された埋め込みアンカープレート77をPCa床版部材11側のシース74の下端に接続するようにPCa床版部材11の下面に埋め込んでおき、PCa高欄部材12の上面から差し込んだPC鋼棒76の下端に形成された雄ねじをねじ込むことで埋め込みアンカープレート77に固定する。このような構成とすることで、足場を必要とするPCa床版部材11の下方での作業が発生しない。また、埋め込みアンカープレート77には、エポキシ紛体塗装キャップ78を被せてその内部にワックス等の填充材を充填することで、防錆処理を施し、メンテナンス負担を低減するとよい。一方、高欄主部61の上面には、PC鋼棒76の上端を定着する埋め込みアンカープレート79が外部に露出しないように凹部61aを形成して凹部61aの底に埋め込みアンカープレート79を配置するとよい。
【0060】
図9に示されるように、両シース74、75は、内側型枠73の組立前に連結用シース80により連結される。充填用の内側型枠73の組立後、充填材充填溝42に充填材47が充填される。
図10に示されるように、充填材47の硬化後、脱型し、図示しない緊張ジャッキを用いてPCa高欄部材12の上面でPC鋼棒76を緊張して埋め込みアンカープレート79に定着させる。その後、シース74、75、80内にグラウトを注入し、凹部61aに充填材81を充填すると共に防水皮膜82を形成して防水処理を施す。これにより、PCa高欄部材12がPCa床版部材11に接合(一体化)される。なお、PC鋼棒76の使用は任意であり、充填材充填溝72に充填される充填材47のみによりPCa高欄部材12がPCa床版部材11に接合されてもよい。
【0061】
このように本実施形態のPCa橋梁部材10では、
図9に示されるように、PCa高欄部材12が壁高欄2の下部を切り欠いた形状をなし、PCa高欄部材12が展開位置にある時に、PCa床版部材11とPCa高欄部材12との間に橋幅方向の内方に開口する充填材充填溝72が形成され、充填材充填溝72の底面を形成する高欄外壁62がPCa床版部材11及びPCa高欄部材12の少なくとも一方に一体に形成される。これにより、充填用の外側型枠を別途設ける必要がない。また、床版1上で型枠組立作業や充填材充填溝42内の配筋作業や充填材充填溝42への充填材47の充填作業を行うことができる。そのため、PCa高欄部材12の接合作業がより容易になる。
【0062】
以上で具体的実施形態についての説明を終えるが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲であれば適宜変更可能である。例えば、上記実施形態では、PCa床版部材11が床版1の概ね全幅を構成しているが、PCa床版部材11が橋幅方向に分割され、橋幅方向の端部に設けられるPCa床版部材11とこれにヒンジ結合される1つのPCa高欄部材12とによりPCa橋梁部材10が構成されてもよい。他方、上記実施形態に示した本発明に係るPCa橋梁部材10の各構成要素は、必ずしも全てが必須ではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて適宜取捨選択することが可能である。