(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の構成及び作用効果について、技術的思想を交えて説明する。但し、作用効果については推定を含んでおり、その正否は、本発明を制限するものではない。また、以下の実施形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0010】
本発明者は、酸素センサとしての寿命が電解液に含まれているキレート剤のモル濃度(mol/L)に比例することを見出した。
そのため、本発明者は、電解液にキレート剤が含まれている酸素センサとしての寿命を、応答速度が速いまま向上させるためには、前記キレート剤のモル濃度を高めることが重要であることを見出し、本発明を完成するに至った。
なお、本発明でいう「キレート剤」とは、金属イオンと配位結合をするカルボキシル基やアミノ基などの官能基を複数持つ分子のことであり、金属イオンと錯体を形成して、金属イオンを不活性化させるものである。
また、本発明でいう「モル濃度(mol/L)」とは、25℃の溶液1L(リットル)中に溶けている溶質のモル数のことをいう。
【0011】
以下、本発明の好適な一実施形態(以下、「本実施形態」と記載する)として、電気化学式酸素センサのうち、ガルバニ電池式酸素センサを用いて具体的に説明する。
ガルバニ電池式酸素センサは、電気化学式酸素センサのうち正極と負極の間に抵抗を接続したものである。具体的には、ガルバニ電池式酸素センサは、正極上の電気化学的な酸素の還元によって生じた電流が前記抵抗において電圧に変換され、当該電圧に変換される電流と酸素濃度とは比例関係を有するので、前記電圧を測定することによって未知の気体中の酸素濃度を検出することができる。
【0012】
図1は、本実施形態であるガルバニ電池式酸素センサの断面構造を示す概念図である。
図1において、1は第1ホルダー蓋(中蓋)、2はO−リング、3は隔膜へのゴミ、チリの付着あるいは、水膜付着を防止するための保護膜、4Aは隔膜、4Bは触媒電極、5は正極集電体、6は正極リード線、7は電解液、8は負極、9はホルダー、10は第2ホルダー蓋(外蓋)、11は電解液供給用の穿孔、12はリード線用の穿孔、13は正極集電体保持部、14は補正抵抗、15は温度補償用サーミスタである。触媒電極4Bと正極集電体5とで正極45を構成する。また、第1ホルダー蓋1と第2ホルダー蓋10とでホルダー蓋101を構成する。
【0013】
本実施形態に係るガルバニ電池式酸素センサは、
図1に示すような実施形態を一例とするものであって、ホルダー9と、ホルダー9内に収容された正極45、負極8及び電解液7を備える。
【0014】
ホルダー9は、その内部に正極45、負極8及び電解液7を収容するように構成されている。ホルダー9の材質は、後述する電解液7による腐食等の問題が無ければ特に限定されないが、ABS樹脂が好適に用いられる。
正極45は、ホルダー9内に収容されている。正極45の材質は、正極上の電気化学的な酸素の還元によって電流が生じれば特に限定されないが、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)あるいはチタン(Ti)など酸化還元に活性な触媒が好適に用いられる。
【0015】
電解液7は、ホルダー9内に収容されている。電解液7にはキレート剤が含まれている。また前記キレート剤のモル濃度は1.4mol/L以上である。
このように、電解液7には、モル濃度が1.4mol/L以上であるキレート剤が含まれているため、応答速度が速く、かつ、酸素センサとしての寿命も向上させることができる。
すなわち、電解液7には、キレート剤が含まれているため、キレート効果により応答速度が速くなる。更に、電解液7に含まれるキレート剤のモル濃度が1.4mol/L以上であるため、酸素センサとしての寿命が向上する。
【0016】
なお、前記モル濃度を1.4mol/L以上にすることが可能なキレート剤は、クエン酸又はクエン酸塩のいずれか1種以上であることが好ましい。これらクエン酸やクエン酸塩は、水(25℃)に対する溶解度(右括弧部)が高いため(クエン酸(73g/100ml)、クエン酸三ナトリウム(71g/100ml)及びクエン酸三カリウム(167g/100ml))、モル濃度を高くすることができる。
前記キレート剤はクエン酸三カリウムを少なくとも含むことがより好ましい。
上述したように、クエン酸三カリウムは水に対する溶解度が極めて高いため、モル濃度を更に高くすることができる。
【0017】
前記モル濃度の上限値は、キレート剤の種類によって異なり、それらのキレート剤の25℃での溶液(水)1L(リットル)中に溶けることができる溶質の最大モル数である。なお、前記キレート剤がクエン酸とクエン酸三カリウムの混合溶液である場合は、前記上限値は、3.0mol/Lであり、より好ましくは2.3mol/Lである。
【0018】
一方、本発明でいう「キレート剤」には含まれない酢酸、ホウ酸、リン酸、アンモニア、炭酸及びこれらの塩などは、錯化力が弱いため、これのみで電解液7を構成すると応答速度が速くならないため好ましくない。
【0019】
また、本発明でいう「前記電解液にはキレート剤が含まれ」とは、本発明の要旨(応答速度が速く、かつ、酸素センサとしての寿命も向上する電気化学式酸素センサの提供、以下同じ。)を逸脱しない限りにおいて、「前記キレート剤のモル濃度が1.4mol/L以上」であればよく、前記キレート剤の種類は限定されない。また、本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、電解液7中には、前記キレート剤に加え、前記キレート剤以外の他の成分(錯化力が弱い酢酸、ホウ酸、リン酸、アンモニア、炭酸及びこれらの塩なども含む)が含まれてもよい。
【0020】
前記キレート剤がクエン酸又はクエン酸塩のいずれか1種以上である場合の前記電解液の25℃におけるpH(以下、同じ)は、2.09以上7.40以下であることが好ましい
前記pHの範囲の電解液は、クエン酸とクエン酸三カリウムを混合し、これらの組成比を調整することで得ることができる。また、クエン酸とクエン酸三カリウムの混合溶液に、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)などを加えて調整してもよい。また、クエン酸三カリウム(pH7.8〜8.6)に、酸(例えば、酢酸、リン酸、炭酸)を加えて調整してもよい。
前記電解液を前記pHの範囲にすることで、前記電解液がpH緩衝剤として機能するため(クエン酸(pKa1=3.09、pKa2=4.75、pKa3=6.40))、電解液中に含まれるキレート剤が金属と錯体を形成したことに伴うpHの変化を低く抑えることができる。従って、酸素センサとしての出力電圧を安定化させることができる。
前記pHは、より好ましくは、2.59以上6.90以下である。
【0021】
前記キレート剤がクエン酸である場合の前記電解液の25℃におけるpHは、5.40以上7.40以下であることが好ましい。
これらのpHの範囲の電解液は、クエン酸とクエン酸三カリウムを混合し、これらの組成比を調整することで得ることができる。また、クエン酸又は/及びクエン酸三カリウムに、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)などを加えて調整してもよい。また、クエン酸三カリウム(pH7.8〜8.6)に、酸(例えば、酢酸、リン酸、炭酸)を加えて調整してもよい。
前記電解液を前記pHの範囲にすることで、前記電解液がpH緩衝剤として機能するため(クエン酸(pKa3=6.40))、電解液中に含まれるキレート剤が金属と錯体を形成したことに伴うpHの変化を低く抑えることができる。従って、酸素センサとしての出力電圧を安定化することができる。また、電解液が酸性に近づくため、酸性環境下での出力電圧の安定性に強い酸素センサを得ることができる。
前記pHはより好ましくは、5.90以上6.90以下である。
【0022】
前記キレート剤がクエン酸である場合の前記電解液の25℃におけるpHは、3.75以上5.75以下であることが好ましい。
これらのpHの範囲の電解液は、クエン酸とクエン酸三カリウムを混合し、これらの組成比を調整することで得ることができる。また、クエン酸とクエン酸三カリウムの混合溶液に、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、酸(例えば、酢酸、リン酸、炭酸)などを加えて調整してもよい。
前記電解液を前記pHの範囲にすることで、前記電解液がpH緩衝剤として機能するため(クエン酸(pKa2=4.75))、電解液中に含まれるキレート剤が金属と錯体を形成したことに伴うpHの変化を低く抑えることができる。従って、酸素センサとしての出力電圧を安定化することができる。また、電解液が酸性に近づくため、酸性環境下での出力電圧の安定性に強い酸素センサを得ることができる。
前記pHは、より好ましくは、4.25以上5.25以下である。
【0023】
前記キレート剤がクエン酸である場合の前記電解液の25℃におけるpHは、2.09以上4.09以下であることが好ましい。
これらのpHの範囲の電解液は、クエン酸とクエン酸三カリウムを混合し、これらの組成比を調整することで得ることができる。また、クエン酸とクエン酸三カリウムの混合溶液に、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、酸(例えば、酢酸、リン酸、炭酸)などで調整してもよい。
前記電解液を前記pHの範囲にすることで、前記電解液がpH緩衝剤として機能するため(クエン酸(pKa1=3.09))、電解液中に含まれるキレート剤が金属と錯体を形成したことに伴うpHの変化を低く抑えることができる。従って、酸素センサとしての出力電圧を安定化することができる。また、電解液が更に酸性に近づくため、酸性環境下での出力電圧の安定性に強い酸素センサを得ることができる。
前記pHは好ましくは、2.59以上3.59以下である。
【0024】
負極8は、前記ホルダー9内に収容されている。
負極8の材質は、本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、特に限定されない。前記負極8は、Cu、Fe、Ag、Ti、Al、Mg、Zn、Ni、Sn及びそれらの合金(以下、負極金属という)を用いることができる。
また、負極8の材質は、本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、前記負極金属以外の金属やその他不純物が含まれていてもよい。前記負極金属以外の金属やその他不純物としては、In、Au、Bi、Na、S、Se及びCaが挙げられる。
【0025】
前記負極8は、Sn合金であることが好ましい。
Sn合金は酸素センサにおける電気化学的な酸素の還元反応時において、水素の発生を抑制することができる。
また、前記Sn合金は、Sn−Sb合金であることがより好ましい。
Sn−Sb合金は、他のSn合金と比べて、Snの金属組織が緻密化し、α−Sn(別名:スズベスト)への変態(相転移)を抑えることができるため、低温(例えば、0℃)でのセンサ駆動が可能になると考えられるため、当該低温でもセンサの出力安定性の低下を抑制することができると考えられる。
【0026】
前記負極8(好ましくはSn合金、より好ましくはSn−Sb合金)は、実質的に鉛を含まないことが好ましい。
ここでいう「実質的に鉛を含まない」とは、負極8中に含まれるPbの含有量が1000ppm未満であることをいう。このような負極8を用いることで、EU(欧州連合)での特定有害物質の使用規制に関する指令[いわゆるRoHS指令(Restriction of the Use of Certain Hazardous Substances in Electrical and Electronic Equipment)]にも対応可能な電気化学式酸素センサを得ることができる。
【0027】
前記Sn−Sb合金中のSbの含有量は、本発明の要旨を逸脱しない限りにおいて、特に限定されない。
本発明において、Sn−Sb合金中のSbの含有量は、測定する負極8の任意の箇所に対して、EDX分析(ビーム径:1mm)を行い、そこで測定される金属元素全体に対するSbの質量%である。
【0028】
本実施形態に係るガルバニ電池式酸素センサは、より具体的には、
図1に示すように、ホルダー9と、前記ホルダー9内に収容された正極45、負極8及び電解液7と、前記正極45上に設けられた隔膜4Aと、前記隔膜4A上に設けられた保護膜3と、前記保護膜3を固定する第1ホルダー蓋(中蓋)1と、前記ホルダー9と前記中蓋1との間に配置されるO−リング2と、前記中蓋1を固定する第2ホルダー蓋(外蓋)10と、前記正極45及び負極8に直列に連結された補正抵抗14及び温度補償用サーミスタ15と、を備える。また、前記外蓋10と前記中蓋1とで構成されるホルダー蓋101には、前記保護膜3に通ずる酸素供給経路(空間)となる貫通孔16が設けられる。
【0029】
ホルダー9は、上部に開口を有し、該開口の外周に、ネジ山及びネジ溝からなり、外蓋10を螺合するためのネジ部が設けられている。
【0030】
正極45は、酸素を電気化学的に還元する触媒電極4Bと、その電解液7側に配置された正極集電体5とから構成される。触媒電極4Bとしては、通常、金(Au)、銀(Ag)、あるいは白金(Pt)等が使用され、正極集電体5としては、通常、チタン(Ti)が使用されるが、いずれの材質もこれらに限定されるものではない。
【0031】
前記正極集電体5の下側には、これを保持する正極集電体保持部13が設けられている。
この正極集電体保持部13には、正極45に電解液を供給するための穿孔11及び正極リード線6を通すための穿孔12が設けられている。
正極集電体保持部13の材質は特に限定されるものではないが、通常、ABS樹脂が使用される。
【0032】
本実施形態における隔膜4Aは、触媒電極4Bに到達する酸素が多くなりすぎないように、酸素の侵入を制御するために配置される。隔膜4Aとしては、酸素を選択的に透過させると共に、酸素ガスの透過量を制限できるものが好ましい。隔膜4Aの材質や厚さは特に限定されるものではないが、通常、四フッ化エチレン樹脂,四フッ化エチレン六フッ化プロピレンコポリマー等のフッ素樹脂、ポリエチレン等のポリオレフィン等が使用される。隔膜4Aは、多孔膜、無孔膜、更には、キャピラリー式と呼ばれる毛細管が形成された孔も含むものとする。
【0033】
本実施形態における保護膜3は、隔膜4A上に設けられる多孔性樹脂膜であり、該隔膜4Aへのゴミ、チリの付着あるいは、水膜付着を防止する機能を有する。保護膜3の材質は特に限定されるものではないが、通常、四フッ化エチレン樹脂等のフッ素樹脂が使用される。
【0034】
本実施形態における中蓋1は、保護膜3及び正極45の押圧端板として機能するものであり、ホルダー9と外蓋10とのネジ締めによって、O−リング2を介してホルダー9に押し付けられることで、気密性及び液密性を保持した状態で保護膜3及び正極45を前記ホルダー9に固定できるようになっている。中蓋1の材質は特に限定されるものではないが、通常、ABS樹脂、ポリプロピレン、ポリカーボネート、フッ素樹脂等が使用される。
【0035】
本実施形態におけるO−リング2は、ホルダー9と中蓋1との間に配置され、ホルダー9と外蓋10とのネジ締めによって押圧されて変形することで、気密性及び液密性を保持できるようになっている。O−リング2の材質は特に限定されるものではないが、通常、ニトリルゴム、シリコーンゴム、エチレンプロピレンゴム、フッ素樹脂等が使用される。
【0036】
本実施形態における外蓋10は、O−リング2及び中蓋1と共に、ホルダー9の開口を密閉するように構成されており、ホルダー9の開口の外周部に形成されたネジ部と螺合するように、内周部にネジ部が形成されている。外蓋1の材質は特に限定されるものではないが、通常、ABS樹脂、ポリプロピレン、ポリカーボネート、フッ素樹脂等が使用される。
【0037】
なお、本発明は上述した実施形態に限られるものではなく、その技術的思想の範囲内で種々の変更が可能である。
例えば、
図1における記号1〜15は、これに限定されることなく、酸素センサとしての機能及び前述した酸素供給経路を備えていれば、各種設計変更が可能である。
また、本実施形態では、ガルバニ電池式酸素センサを用いて説明したが、本発明は、定電位式酸素センサにも適用することができる。
定電位式酸素センサは、正極と負極との間に一定電圧を印加するセンサであり、印加電圧は各電極の電気化学特性や検知するガス種に応じて設定される。定電位式酸素センサでは正極と負極の間に適当な一定電圧を印加すると、その間に流れる電流と酸素ガス濃度とは比例関係を有するので、電流を電圧に変換すれば、ガルバニ電池式酸素センサと同様に、電圧を測定することによって未知の気体の酸素ガス濃度を検出することができる。
【0038】
なお、本発明はガルバニ電池式溶存酸素センサにも適用できる。
図2は、本発明の好適な他の一実施形態であるガルバニ電池式溶存酸素センサの断面構造を示す概念図である。
本発明に係るガルバニ電池式溶存酸素センサ(
図2)は、隔膜21、正極22、電解液23、負極24、リード線25、補正抵抗26及び温度補償用サーミスタ27を備える。隔膜21は、例えば、四フッ化エチレン六フッ化プロピレンコポリマー膜からなる。正極22は例えば、炭素繊維電極に金を担持させた電極であり、金は酸素の電気化学的な還元に有効な触媒として働く。電解液23は、例えば、酢酸と酢酸カリウムと酢酸鉛の混合水溶液からなる。負極24は、例えば、鉛電極であり、リード線25は、例えば、チタン製である。温度補償用サーミスタ27は、ガルバニ電池式溶存酸素センサの外壁に取り付けられている。
上述した本発明をガルバニ電池式溶存酸素センサに適用することで、同様に、応答速度が速く、かつ、酸素センサとしての寿命も向上するガルバニ電池式溶存酸素センサを得ることができる。
【実施例】
【0039】
次に、本発明を実施例に基づいて更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1〜3)
図1に示すガルバニ電池式酸素センサを作製した。なお、
図1において、中蓋1はABS樹脂製、保護膜3は多孔性の四フッ化エチレン樹脂製シート、隔膜4Aは四フッ化エチレン六フッ化プロピレンコポリマー膜、触媒電極4Bは金(Au)、正極集電体5はチタン製、正極リード線6はチタン製、正極集電体5と正極リード線6は溶接して一体化されている。
【0040】
また、負極8はSn−5.0Sb合金(左数字はSn合金中のSbの質量%、電解液7は、クエン酸−クエン酸三カリウム水溶液を用い、表1に示すモル濃度に各々調整し、ホルダー本体9はABS樹脂製、外蓋10はABS樹脂製であり、ホルダー本体9および外蓋10には、それぞれネジが切られている。
【0041】
中蓋1、O−リング2、四フッ化エチレン樹脂製シート(保護膜)3、四フッ化エチレン六フッ化プロピレンコポリマー膜の隔膜4A、触媒電極4B、正極集電体5は、ホルダー本体9と外蓋10とのネジ締めによって押圧され良好な接触状態が保持される。中蓋1は押圧端板として機能し、また、O−リング2によって気密、液密性が確保されている。
11は正極および隔膜への電解液供給用の穿孔、12は正極集電体のチタンリード線部分を通すための穿孔である。
【0042】
(比較例1)
キレート剤としてEDTA(Etylene Diamine Tetraacetic Acid)・四ナトリウム水溶液(水に対する溶解度が25℃において60g/100ml)を用い、水に対する溶解度が飽和濃度に近いモル濃度(1.2mol/L)で、その他は実施例1と同様の
図1に示す1年寿命のガルバニ電池式酸素センサを作製した。
【0043】
[特性比較]
前記作製した複数のガルバニ電池式酸素センサに関し、作製後2ヶ月後の「90%応答速度」を評価した。90%応答速度は、大気中(酸素濃度21%)で各センサの出力が安定した状態にしてから、当該出力が安定したセンサに対して、濃度が100%酸素を通気し、当該濃度100%の酸素を通気することにより生じ得る出力(飽和出力)を100%として出力が90%変化するまでに要する時間を測定した。本評価試験においては、通気30分後の出力を飽和出力とした。上記評価試験により得られた結果を表1に示した。表1において、○は、90%応答速度が15秒未満であることを意味し、△は応答速度が15秒以上60秒未満を意味し、×は、応答速度が60秒以上であることを意味する。
【0044】
また、前記作製した複数のガルバニ電池式酸素センサを、360日間、同環境下、常温(25℃)で放置し、酸素センサの出力電圧が安定しているかどうかを評価した。なお、ここでいう出力電圧が安定するとは、
図3に示すように、横軸を測定時間、縦軸を出力電圧として、測定時間における出力電圧の傾向をプロットした場合に、
図3に示すような直線を描く場合をいう。
【0045】
更に、温度40℃中、100%酸素ガスを通気して加速的寿命試験をおこなった。40℃では室温時の約2倍、100%酸素ガス通気で大気中での約5倍の電気化学反応が進行するため大気中、室温放置時の約10倍のスピードで寿命判断が可能である。加速的寿命試験は、比較例1の寿命を1.0として、実施例はその何倍になるかで評価した。
表1にその結果を示す。
【0046】
【表1】
【0047】
表1からわかるように、実施例1から3のガルバニ電池式酸素センサにおいては、応答速度が速く、出力電圧も安定しており、更に、寿命において、実施例3は比較例1よりも1.6倍、実施例1,2に至っては比較例1よりも約3.0倍の寿命向上が確認された。