特許第6537498号(P6537498)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6537498
(24)【登録日】2019年6月14日
(45)【発行日】2019年7月3日
(54)【発明の名称】撮像造影用組成物及びキット
(51)【国際特許分類】
   A61K 49/04 20060101AFI20190625BHJP
   A61K 51/00 20060101ALI20190625BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20190625BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20190625BHJP
【FI】
   A61K49/04 210
   A61K51/00 200
   A61K51/00 100
   A61K45/00
   A61P35/00
【請求項の数】8
【全頁数】45
(21)【出願番号】特願2016-514435(P2016-514435)
(86)(22)【出願日】2014年5月23日
(65)【公表番号】特表2016-519154(P2016-519154A)
(43)【公表日】2016年6月30日
(86)【国際出願番号】EP2014060673
(87)【国際公開番号】WO2014187962
(87)【国際公開日】20141127
【審査請求日】2017年4月21日
(31)【優先権主張番号】1350637-3
(32)【優先日】2013年5月24日
(33)【優先権主張国】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】515322286
【氏名又は名称】ダンマークス テクニスケ ウニバーシテート
(73)【特許権者】
【識別番号】515322459
【氏名又は名称】ナノウイ ラディオセラピー アーペーエス
【氏名又は名称原語表記】NANOVI RADIOTHERAPY APS
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100157901
【弁理士】
【氏名又は名称】白井 達哲
(72)【発明者】
【氏名】アンドレーシェン トーマス ラース
(72)【発明者】
【氏名】ヨルク ラスムス イルミン
(72)【発明者】
【氏名】アルブライクツェン モーテン
【審査官】 深草 亜子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−518164(JP,A)
【文献】 特表2006−523507(JP,A)
【文献】 特表2009−515669(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0036946(US,A1)
【文献】 SWAROTH R LAHOTI,PELAGIA RESEARCH LIBRARY DER PHARMACIA SINICA,2011年 2月 1日,V2,P235-250
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K49/00−49/22
A61K51/00−51/12
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CA/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
局所投与用の撮像造影用組成物であって、前記撮像造影用組成物が造影特性を示し、前記撮像造影用組成物の投与量の少なくとも60%が、前記撮像造影用組成物を人体又は動物体に投与した時の注入点より10cm以内の場所に、24時間超残り、
前記撮像造影用組成物は、投与前に液体であり、投与後にゲルへ転換する能力を有し、前記人体又は動物体に投与した後に、粘度が1,000センチポアズ(cP)を超えて増加し、
前記撮像造影用組成物は、スクロース酢酸イソブチル(SAIB)のヨウ素化誘導体を含むか、又は、スクロース酢酸イソブチル(SAIB)中にドープされたスクロース酢酸イソブチル(SAIB)のヨウ素化誘導体を含むX線造影用組成物である、撮像造影用組成物。
【請求項2】
前記X線造影用組成物が、20℃で、10,000 センチポアズ(cP)未満の粘度を有する、請求項記載の撮像造影用組成物。
【請求項3】
前記X線造影用組成物は、35〜40℃の範囲の温度、 水和、 1μ〜500mの範囲のイオン濃度、6〜8の範囲のpH、および、開始剤との接触の少なくともいずれか1つに応答してゲルを形成する、請求項1または2に記載の撮像造影用組成物。
【請求項4】
前記X線造影用組成物が、放射性化合物、常磁性化合物、蛍光化合物、若しくは強磁性体化合物、又はこれらの混合物も含むか、及び/または、前記X線造影用組成物が、少なくとも1つの医薬物質も含む、請求項のいずれか1つに記載の撮像造影用組成物。
【請求項5】
前記X線造影用組成物が、エタノールとスクロース酢酸イソブチル(SAIB)の混合物中で可溶化されたスクロース酢酸イソブチル(SAIB)のヨウ素化誘導体を含む、請求項のいずれか1つに撮像造影用組成物。
【請求項6】
前記X線造影用組成物が、スクロース酢酸イソブチル(SAIB)のヨウ素化誘導体を含み、かつ医薬物質を含有するか、または、医薬物質を含有する粒子を含有する、請求項のいずれか1つに撮像造影用組成物。
【請求項7】
織マーカーとして、または、薬剤の制御放出組成物として放射線治療に使用される、請求項のいずれか1つに記載の撮像造影用組成物。
【請求項8】
シリンジと、
前記シリンジの開口端部に適用され、体内への注射、または、外科的医療行為に使用する針と、
請求項のいずれか1つに記載の撮像造影用組成物と、
を備える、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線治療誘導用に改良された撮像造影用組成物及びキットに関する。
【背景技術】
【0002】
毎年、全世界で1200万超の人々ががんと診断され、750万人以上の人々ががんで亡くなっている。この数は、人口の増加と西洋式の生活様式により、増加すると見込まれる。放射線治療は、現代のがん治療において重要であり、50%超のがん患者は、放射線治療を少なくとも一度受けている。現代のがん治療は、高い放射線量を、患者の標的部位に正確に照射するために、先進的で高精度な治療計画、治療用設備、及び画像化技術(例えば、コンピュータ断層撮影法(CT)、陽電子放出断層撮影法(PET)、磁気共鳴映像法(MRI)など)が用いられている。
【0003】
外部ビーム放射線治療において最も困難なことの1つは、腫瘍及びその周辺組織の両方が、各治療間と、たいてい5〜7週間続く放射線治療の全期間の両方の放射線治療の間に、予測不可能に著しく移動することである。この移動は、大規模(例えば、数秒以内に数センチ)である可能性があり、呼吸、膀胱や腸の充満、放屁した結腸、腫瘍の収縮、及び患者の姿勢の変化などの様々な要因により引き起こされる可能性がある。この影響を最小化する方法の1つは、腫瘍内又は腫瘍近傍にマーカーを埋め込むことであり、頻繁な撮像や治療への適用が可能となる。現在までのところ、マーカーは、長くて太い針を用いて、合併症の重大なリスクのある複雑な手順によって、挿入されており、このことにより、放射線治療におけるマーカーの実用的な有用性が制限されている。
【0004】
理想的に、組織マーカーは、腫瘍の移動を追跡することを可能にし、いくつかの画像診断法において可視であり、延長期間中(例えば、最低でも4週間)においても可視であり、毒性が無く、挿入が容易である必要がある。
【0005】
放射線治療分野において、様々な改善の試みが成されてきた。欧州特許第1006935号では、物質の制御放出組成物について述べられ、国際公開第9403155号では、架橋剤と結合した主鎖から調製されたヒドロゲルの組成について述べられている。ヒドロゲルは、治療薬剤や、病気の診断及び治療用のX線造影剤などの診断ラベルに含まれている可能性がある。米国特許出願第20120065614号では、生体撮像用のハイブリッドシステムが開示されている。金は、ヒドロゲル又はポリマー又は類似物を含む基質内へ結合する。米国特許出願第20100297007号では、ほぼ両凹型の、水性の内殻及び両親媒性ポリマーを含む親水性の外殻を含むナノ粒子が開示されている。
【0006】
更に、米国特許出願第2009110644号では、磁性金属酸化物で被覆された金属キレート剤であるポリマーから成るナノ粒子で、少なくとも1つの活性薬剤がポリマーと共有結合しているナノ粒子が開示されている。米国特許出願第20100290995号及び同第2005036946号において、ヨウ素化された部分のあるポリラクトンなどの合成及び天然の生分解性ポリマーの末端基を修飾することにより、X線不透過性の生分解性組成物が開示されており、またスウェーデン特許403255号において、ヒドロキシル基及び/又はカルボキシル基及び/又はアミノ基、更にはX線造影剤を与えるヨード置換された芳香族基を含む、ポリマーを含む造影剤が開示されている。更に、国際公開第9519184号においては、カルシウムイオンなどの多価イオンと接触させて、ポリ(カルボキシレート−フェノキシ)ホスファゼン、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メタクリル酸)、及びメタクリル酸共重合体(オイドラギット)などの合成高分子電解質をイオンチャネル型にゲル化することによって形成された空気封入用微粒子が開示されている。
【0007】
固体マーカーや、上記文書に記載された方法を用いる現行の臨床診療には、いくつかの欠点がある。固体マーカーの留置は、重症合併症を引き起こす可能性のある固体マーカーの大規模留置となるため、観血性であり、これが放射線治療における有用性を制限している。ゲルを形成する低粘度溶液を、固体粒子及び/又は有機X線造影剤(若しくは他の画像診断法)と組み合わせることにより、注射用ゲルは、ゲルの形成した溶液及び使用した造影剤に関する複数のパラメータにより修正可能となるため、微調整した特性を用いて処方することが可能である。固体粒子は、系全体の造影剤へ寄与すること以外では、医薬物質を運び、制御された方法により医薬物質の放出を制御することも可能である。
【0008】
本発明の目的の1つは、非経口での投与が容易なゲル形成性低粘度システムを含む新規処方物を提供することであり、本発明は、X線画像診断法などの1つ又は複数の画像診断法により優れた視覚化を提供する。
【発明の概要】
【0009】
局所投与用の撮像造影用組成物であって撮像造影用組成物が造影特性を示し、この撮像造影用組成物の投与量の少なくとも60%が、撮像造影用組成物を人体又は動物体に投与した時の注入点より10cm以内の場所に、24時間以上残る。
【発明の詳細な説明】
【0010】
処方物は、好ましくは非経口投与に適用される形態で、好ましくは薬学的に許容可能成分で構成されるべきである。それ自体は比較的低粘度である処方物は、人体又は動物体への注射を意図したものであり、処方物の粘性が高くなった後、ゲルを形成する系の存在によって、例えば、ゾル−ゲル転移(液体からゲル状)を経る、又は非晶質ガラス基質を形成する。人体又は動物体への注射後の処方物の粘度が、少なくとも50%、例えば少なくとも80%、例えば少なくとも100%、又は少なくとも150%、又は少なくとも200%、又は少なくとも300%、又は少なくとも500%、又は少なくとも750%、又は少なくとも1000%、又は少なくとも10,000%増加することが望ましく、あるいは処方物が原則的に固体になる(非粘性)ことが望ましい。
処方物は、体内への注射、又は生検に限定されるわけではないが、生検などの外科的医療行為で使用される細い針を用いた注射に適用されることが望ましい。ヒドロゲル又はゲルを形成する処方物の注射前の粘度は、処方物を患者に非経口投与することが可能である等の、適切な粘度にすることが可能である。
【0011】
代表的な処方物としては、これに限定されないが、例えば、20℃において、0.01〜2Pa・s(10〜2,000cP)、0.02〜1Pa・s(20〜1,000cP)、0.15〜0.35Pa・s(150〜350cP)、0.4〜0.6Pa・s(400〜600cP)、0.6〜1.2Pa・s(600〜1,200cP)など、又は1〜2Pa・s(1,000〜2,000cP)など、又は0.01〜0.6Pa・s(10〜600cP)など、又は0.02〜0.35Pa・s(20〜50cP)などの2Pa・s(2,000cP)未満などの、10Pa・s(10,000センチポアズ(cP))未満の(投与/注射の前の)粘度を有するものが挙げられる。
【0012】
他の処方物においては、これに限定されないが、例えば、5℃において、0.01〜2Pa・s(10〜2,000cP)、0.02〜1Pa・s(20〜1,000cP)など、0.15〜0.35Pa・s(150〜350cP)など、0.4〜0.6Pa・s(400〜600cP)など、0.6〜1.2Pa・s(600〜1,200cP)など、又は1〜2Pa・s(1,000〜2,000cP)など、又は0.01〜0.6Pa・s(10〜600cP)、又は0.02〜0.35Pa・s(20〜350cP)などの2Pa・s(2,000cP)未満などの、10Pa・s(10,000センチポアズ(cP))以下の(投与/注射の前の)粘度を有するものが挙げられる。
【0013】
本明細書で言及する際、(動的)粘度は、特定の温度で、ASTM D7483に記載される方法に従い、測定される。
【0014】
ヒドロゲル、ゲル、又は非晶質ガラス基質が、共有結合形成を通じて、又はイオン相互作用若しくは疎水性相互作用により、形成されてもよい。物理的(非共有)架橋は、錯体形成、水和、水素結合、脱溶媒和、ファン・デル・ワールス相互作用、イオン結合、それらの組み合わせなどの結果生じることが可能であり、原位置で混合されるまで物理的に分けられている2つの前駆体を混合することによって、又は温度、pH、イオン強度、それらの組み合わせなど、生理環境における一般的な条件の結果として、物理的架橋を開始することが可能である。化学的(共有)架橋は、フリーラジカル重合、縮合重合、アニオン又はカチオン重合、逐次重合、求電子・求核反応、それらの組み合わせなどの多くのメカニズムにより達成することが可能である。本発明で使用することが可能なヒドロゲル及び/若しくはゲルを形成する、並びに/又は非晶質ガラス基質系の例を図1図6に示す。
【0015】
組成物を形成するヒドロゲル、ゲル、又は非晶質ガラス基質が、処方物がゾル状態、あるいは例えばヒドロゲル組成物への拡散によってゲル状態への遷移中などゲルの形成前又は形成中のヨウ素化ポリマー又は糖類、ナノ粒子若しくはサブミクロン粒子などの有機X線造影剤に含まれていてもよい。これらのX線造影剤又は粒子は、化学的架橋なしにゲル集合体中に捕捉されてもよく、あるいは骨格、あるいはヒドロゲル、ゲル、又は非晶質ガラス基質の架橋剤と非共有結合若しくは共有結合により結合してもよい。有機X線造影剤は、そのゲルや粒子中の一成分でもよく、あるいは粒子が、X線、MRI、PET、SPECT、蛍光又は超音波による撮像用の造影剤であり、及び/又は医薬品を含有している他の成分でもよい。医薬品は、放射線増感剤、化学療法薬、あるいはホルモンでよく、これらに限定されるものではない。ガドリニウムなどのMRI造影剤は、ゲル形成系中の成分であってもよい。更に、医薬品は、共有結合又は非共有結合によって、ヒドロゲル、ゲル、若しくは非晶質ガラス基質中に取り込まれていてもよい。
【0016】
注射後、通常、処方物は、例えばX線撮像中に造影剤を供給し、マーカーとして機能することが可能な正確に規定されたX線造影剤の集合体を与え、このことが、例えば放射線治療又は外科的医療行為の間に、腫瘍の移動を追跡することを可能にしている。
【0017】
米国特許出願第2001/0142936号では、正確な場所に移植されていることを確かめるために任意の撮像による手術部位に等角充填を使用するためのX線不透過性物質を用いて/用いることなしにマイクロメートル領域(10μm〜500μm)内で共有結合しているヒドロゲル粒子が開示されている。本発明は、ゲル形成用の注射可能な液体と結合しているナノサイズ粒子と組み合わせが可能な有機X線造影剤を開発しているため、多くの有利な特徴がある。ナノサイズ粒子は、マイクロメートルサイズの粒子にとって問題となるブラウン運動の影響により、遅い沈殿速度/沈殿しない現象を示す。その上、粒子とゲル形成溶液を2つの成分に分けることにより、処方物の全体的な特性を制御するのに有利であるゲル内において、粒子の拡散、放出等を制御することが可能となる。米国特許出願第2011/0142936号は、医原性(「医学的に作製された」)空間内に注射することにより、ゲルの膨張が正常組織と腫瘍組織との間の距離を増加させる可能性があるという発明に基づくものである。本発明の目的は、標的組織(通常はがん)の形と位置に対する影響を最小限にして、組織に浸潤させることである。更に、本発明の意図は、大きさと位置に対する影響を最小限にして、組織に浸潤させることであり、そのため本発明において、膨張はデメリットとなる。このことは、米国特許出願第2001/0142936号とは対照的である。
【0018】
本発明の文脈において、「マーカー」あるいは「組織マーカー」は、検出可能な物質又は組成物であり、一旦、哺乳動物の体の特定の位置あるいは組織に投与あるいは移植されると、数日間又は数週間、移動しない、あるいはほぼ同じ位置に留まる物質又は組成物である。例えば、組織マーカーは、X線造影剤、放射性化合物、常磁性化合物、蛍光剤、又は他の検知可能な物質のうち、1つ又はそれ以上を含んでいてもよい。
【0019】
本発明の文脈において、「ゲル」とは、検知可能な物質(造影剤)が、分散する及び/又は溶解する担体マトリックスとして定義される。「ゲル」という用語には、ヒト又は動物へ注射することで、化学的及び/又は物理的刺激により、粘度が増加するようなヒドロゲル、ゲル、若しくは非晶質ガラス基質などの系が含まれる。
【0020】
「画像形成可能な組織マーカー」又は「画像形成可能なマーカー」は、哺乳動物の体内へ投与又は移植された場合、外部の画像診断による組織マーカーの検出を可能にする形及び/又は十分な量の検知可能な物質を含んでいる。外部の画像診断法の例としては、X線画像診断法、CT画像診断法、MRI、PET画像診断法、単一光子放射断層撮影(SPECT)画像診断法、核シンチグラフィ画像診断法、超音波検査画像診断法、超音波画像診断法、近赤外画像診断法及び/又は蛍光画像診断法などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。様々な画像技術の商標名及びタイプの例として、例えばExacTrac(登録商標)(BrainLAB)、Cone Beam(例えばVairan)、OBI(例えばOn−Board Imager(登録商標) Varian)がある。
【0021】
[造影剤]
造影剤は、ヨウ素化化合物等のX線不透過性物質などの有機X線造影剤を用いて得ることが可能で、ガドリニウムなどのMRI剤のキレート、及び/又は銅64などのPET画像診断剤のキレートと結合してもよく、更に固体の無機粒子と結合してもよい。キレート剤は、DOTA、EDTA、又はDTPAであってもよく、非共有結合にてゲル形成成分中に取り込まれたり、あるいは共有結合にてゲル形成成分に凝集したりする可能性がある。結合した造影剤は、望ましくは、少なくともCT画像診断法により可視であるべきである。望ましい造影剤は、ポリマー、又はグルコース若しくはスクロース、あるいは他のオリゴ糖の誘導体などの糖類分子などのヨウ素化化合物である。固体粒子は、例えばX線照射をブロックするあるいは弱めることが可能な化合物などの1つ又はそれ以上のX線造影剤を含んでいてもよく、又はこれらから構成されていてもよい。そのような化合物としては、周期表に定義されている、遷移金属、希土類金属、アルカリ金属、アルカリ土類金属、他の金属などがある。金属又はアルカリ金属は、酸化されていなくても、あるいは既に酸化状態にあってもよい。これらの酸化状態としては、一価の陽イオン、二価の陽イオン、三価の陽イオン、四価の陽イオン、五価の陽イオン、六価の陽イオン、及び七価の陽イオンなどがある。
【0022】
一実施形態において、1つ又はそれ以上のX線造影剤が、ヨウ素(I)、金(Au)、ビスマス(Bi)、ガドリニウム(Gd)、鉄(Fe)、バリウム(Ba)、カルシウム(Ca)、及びマグネシウム(Mg)より選択される。特定の実施形態において、検知可能な化合物には、金(Au)、及びビスマス(Bi)の群から選択された1つ又はそれ以上の化合物が含まれる。この1つ又はそれ以上のX線造影剤は、通常、金属の形態、合金の形態、酸化物の形態、又は塩の形態で存在している。
【0023】
処方物には、X線画像診断法に有用な造影剤を提供するヨウ素化化合物以外にも、X線画像診断法あるいはX線画像診断法以外の他の画像診断法により可視である固体粒子も含まれていてよいことを理解すべきである。一実施形態において、更に固体粒子は、MR及び/又はPET画像診断法によって、又は他の画像診断法により可視である。
【0024】
特定の一実施形態において、ゲル形成組成物は、MRI、PET画像診断法、SPECT画像診断法、核シンチグラフィ画像診断法、超音波検査画像診断法、超音波画像診断法、近赤外画像診断法及び/又は蛍光画像診断法などの1つ又はそれ以上の画像診断法に用いる放射性化合物、あるいは常磁性化合物を更に含んでいてもよい。
【0025】
いくつかの興味深い実施形態において、前述の請求項のいずれか1つに従う処方物は、放射性粒子、常磁性粒子、又は強磁性粒子のうちの1つ又はそれ以上を含む固体粒子を含有している。
【0026】
更に、個別粒子は、異なる画像診断法において可視である2つ又はそれ以上のタイプの化合物を含んでもよい。
【0027】
前述の放射性化合物には、銅(61Cu、64Cu、及び67Cu)、インジウム(111In)、テクネチウム(99mTc)、レニウム(186Re、188Re)、ガリウム(67Ga、68Ga)、ストロンチウム(89Sr)、サマリウム(153Sm)、イッテルビウム(189Yb)、タリウム(201Tl)、アスタチン(211At)、ルテチウム(177Lu)、アクチニウム(225Ac)、イットリウム(90Y)、アンチモン(119Sb)、スズ(117Sn、113Sn)、ジスプロシウム(159Dy)、コバルト(56Co)、鉄(59Fe)、ルテニウム(97Ru、103Ru)、パラジウム(103Pd)、カドミウム(115Cd)、テルル(118Te、123Te)、バリウム(131Ba、140Ba)、ガドリニウム(149Gd、151Gd)、テルビウム(160Tb)、金(198Au、199Au)、ランタン(140La)、ジルコニウム(89Zr)、及びラジウム(223Ra、224Ra)の同位体が含まれてもよく、前述の放射性核種金属の同位体が、既存のいずれかの金属の酸化状態に生じてもよい。これらの酸化状態としては、一価の陽イオン、二価の陽イオン、三価の陽イオン、四価の陽イオン、五価の陽イオン、六価の陽イオン、及び七価の陽イオンなどがある。
【0028】
前述の常磁性化合物又は強磁性化合物も、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、マンガン(Mn)、テクネチウム(Tc)、レニウム(Re)、鉄(Fe)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、コバルト(Co)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)、及び水銀(Hg)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジウム(Pr)、ネオジム(Nd)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)などのランタニド、及びアクチニウム(Ac)、トリウム(Th)、プロトアクチニウム(Pa)、ウラン(U)、ネプツニウム(Np)、プルトニウム(Pu)、アメリシウム(Am)、キュリウム(Cm)、バークリウム(Bk)、カリフォルニウム(Cf)、アインスタイニウム(Es)、フェルミウム(Fm)、メンデレビウム(Md)、ノーベリウム(No)、及びローレンシウム(Lr)などのアクチノイドの群から選択することが可能で、前述の常磁性化合物又は強磁性化合物は既存のいずれかの金属の酸化状態に生じてもよい。これらの酸化状態としては、一価の陽イオン、二価の陽イオン、三価の陽イオン、四価の陽イオン、五価の陽イオン、六価の陽イオン、及び七価の陽イオンなどが挙げられる。
【0029】
前述の1つ又はそれ以上の放射性化合物、常磁性化合物、及び強磁性化合物は、ゲル形成成分若しくはナノサイズ粒子と共有結合してもよく、あるいはナノサイズ粒子のゲル形成成分と非共有結合的な関係にあってもよい。
【0030】
一実施形態において、ゲル形成成分若しくはナノサイズ粒子には、近赤外蛍光画像診断用の1つ又はそれ以上のフルオロフォア化合物が更に含まれている。前述の化合物には、蛍光タンパク質、ペプチド、又は蛍光染料分子が含まれていてもよい。一般的な蛍光染料の部類とは、ローダミン、ロードル、及びフルオレセイン、及びそれらの誘導体などのキサンテン、ビマン、クマリン、及びウンベリフェロンやアミノメチルクマリンなどのそれらの誘導体、ダンシル、スクアリン染料、ベンゾフフラン、蛍光シアニン、カルバゾール、ジシアノメチレンピラン、ポリメチン、オキサベンゾアントラン、キサンテン、ピリリウム、カルボスチル、ぺリレン、アクリドン、キナクリドン、ルブレン、アントラセン、コロネン、フェナントレン、ピレン、ブタジエン、スチルベン、ランタニド金属キレート錯体、希土類金属キレート錯体、及びそれらの染料の誘導体などの芳香族アミンなどが挙げられる。代表的なフルオレセイン染料は、5−カルボキシフルオレセイン、フルオレセイン−5−イソチオシアネート、及び6−カルボキシフルオレセインなどであり、他のフルオレセイン染料の例は、米国特許第6,008,379号、同第5,750,409号、同第5,066,580号、及び同第4,439,356号などに見られる。この種類には、例えば、テトラメチルローダミン−6−イソチオシアネート、5−カルボキシテトラメチルローダミン、5−カルボキシ・ロードル誘導体、テトラメチルローダミン、テトラエチルローダミン、ジフェニルジメチルローダミン、ジフェニルジエチルローダミン、ジナフチルローダミン、ローダミン101スルホン酸クロリド(商品名TEXAS REDで売られているもの)、及び他のローダミン染料などの、ローダミン染料が含まれていてもよい。この種類には、例えばCy3、Cy3B、Cy3.5、Cy5、Cy5.5、Cyなどのシアニン染料が代わりに含まれていてもよい。あるいは、この種類には、IRDye800CW、IRDye680LT、Qdot800ナノ結晶、Qdot705ナノ結晶、又はポルフィラジン化合物が含まれてもよい。
【0031】
他の実施形態において、ナノサイズ粒子は更に、超音波検査画像診断用の脂質、ポリマー、若しくは無機物をベースとする粒子中に封入されている1つ又はそれ以上のガスが含まれているか、あるいはこの1つ又はそれ以上のガスで構成されている。前述のガスには、空気、六フッ化硫黄又は十フッ化二硫黄などのハロゲン化スルフリル、パーフルオロカーボンなどのフルオロカーボン、パーフルオロアセトンなどのフッ素化(例えばパーフルオロ化)ケトン、及びパーフルオロジエチルエーテルなどのフッ素化(例えばパーフルオロ化)エーテルが含まれていてもよい。代表的なパーフルオロカーボンで例えば7つまでの炭素原子を含有することが可能なものとしては、パーフルオロメタン、パーフルオロエタン、パーフルオロプロパン、パーフルオロブタン(例えば、パーフルオロ−n−ブタン、随意にパーフルオロ−イソ−ブタンなどの他の異性体との混合物)、パーフルオロペンタン、パーフルオロヘキサン、及びパーフルオロヘプタンなどのパーフルオロアルカン、パーフルオロプロペン、パーフルオロブテン(例えば、パーフルオロブタ−2−エン)、及びパーフルオロブタジエンなどのパーフルオロアルケン、パーフルオロブタ−2−インなどのパーフルオロアルキン、パーフルオロシクロブタン、パーフルオロメチルシクロブタン、パーフルオロジメチルシクロブタン、パーフルオロトリメチルシクロブタン、パーフルオロシクロペンタン、パーフルオロメチルシクロペンタン、パーフルオロジメチルシクロペンタン、パーフルオロシクロヘキサン、パーフルオロメチルシクロヘキサン、パーフルオロシクロヘプタンなどのパーフルオロシクロアルカン、及び前述のガスのいずれかと窒素、二酸化炭素、酸素などのガスとの混合物が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0032】
他の実施形態において、造影剤は、小型の有機ヨード含有化合物を用いて作製される。前述の小型の有機ヨード含有化合物には、ジアトリゾエート(例えば、商品名「Gastrografen(商標)」で市販されているもの)などの市販の入手可能なヨウ素化造影剤、イオキサグラート(例えば、商品名「Hexabrix(商標)」で市販されているもの)などのイオン性ダイマー、イオヘキソ―ル(例えば、商品名「Omnipaque(商標)」で市販されているもの)、イオパミドール(例えば、商品名「Isovue(商標)」で市販されているもの)、イオメプロール(例えば、商品名「lomeron(商標)」で市販されているもの)などの非イオン性モノマー、及び(商品名「Visipaque(商標)」で市販されているもの)などの非イオン性ダイマー・イオジキサノールなどが含まれる。小型の有機ヨード含有化合物の他の例としては、国際公開第2009/071605号、欧州特許第1186305号、同第686046号、同第108638号、同第0049745号、同第0023992号、国際公開第2003080554号、同第2000026179号、同第1997000240号、同第9208691号、米国特許第3804892号、同第4239747号、同第3763226号、同第3763227号、及び同第3678152号で開示されているものなどがあるが、これらに限定されるものではない。他の興味深い実施例において、前述の有機ヨード含有化合物に、スクロース酢酸イソブチル(SAIB)のヨウ素化誘導体が含まれている。例えば物質の制御放出用の組成物がSAIBを含む組成物を開示している欧州特許第1006935号において開示されているものとは対照的に、本発明の特定の実施形態では、SAIBゲル中に取り込まれている安定造影剤を供給することを目的としている。スクロース酢酸イソブチル(SAIB)のヨウ素化誘導体などの例が、図7に示されているが、これらに限定されるものではない。そのような化合物は、少なくともCT画像診断法によって可視である注入可能なゲルを作製するために、単独で、あるいは固体粒子と組み合わせて使用してもよい。発明の特定の一実施形態において、水和感知ゲル形成成分は、イソブチレート及びアセテートでアシル化されたスクロース(付着物)で構成される疎水性成分であるスクロース酢酸イソブチル(SAIB)である。本発明の好ましい付着物は、モノサッカライド、ジサッカライド、又はトリサッカライドである。特に好ましいジサッカライド付着物はスクロースであるが、付着物を含有するアルコールは、約2から約20のヒドロキシル基を有する多価アルコールに由来してもよく、1〜20の多価アルコール分子をエステル化することで作製されてもよい。アルコール部分として適したものは、1つ又はそれ以上の水素原子を、単官能基のC1〜C20のアルコール、二官能基のC1〜C20のアルコール、三官能基のアルコール、ヒドロキシル基含有カルボン酸、ヒドロキシル基含有アミノ酸、リン酸塩含有アルコール、四官能基のアルコール、糖アルコール、単糖類、二糖類、糖酸、及びポリエーテル・ポリオールから、取り除くことにより誘導されたものである。より具体的には、アルコール部分には、ドデカノール、ヘキサンジオールのうちの1つ又はそれ以上が含まれてもよく、より詳細には、1,6−ヘキサンジオール、グリセロール、グリコール酸、乳酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸、セリン、ATP、ペンタエリスリトール、マンニトール、ソルビトール、グルコース、ガラクトース、フルクトース、マルトース、ラクトース、グルクロン酸、1〜約10のグリセロール単位を含有するポリグリセロール・エーテル、1〜約20のエチレングリコール単位を含有するポリエチレングリコールが含まれていてもよい。更に、3〜約6の単糖を含有するオリゴ糖が、本発明において付着物として用いられていてもよい。一般的に、本発明の付着物のエステルは、1つ又はそれ以上のアルコールを反応させることにより、特に、得られるエステルのアルコール部分を形成する1つ又はそれ以上のポリオールと、得られるエステルの酸部分を形成する1つ又はそれ以上のカルボン酸、ラクトン、ラクタム、炭酸塩、又はカルボン酸の無水物を反応させることにより、作製することが可能である。エステル化反応は、いくつかの例においては、強酸又は強塩基のエステル化触媒の添加を用いることが可能ではあるものの、単純に加熱によって実施することが可能である。その代わり、2−エチルヘキサン酸スズ、又はN−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド(EDC)、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、O−(7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート(HATU)などの活性化試薬などのエステル化触媒を用いることが可能である。
【0033】
本発明のアシルオキシ置換基を形成するアシル基は、カルボン酸から誘導された部分であってもよい。より詳細には、本発明の組成物のアシル基は、RCO−であってもよく、Rは、鎖内に1つ又はそれ以上の官能基が存在する直鎖炭化水素若しくは分枝炭化水素であってもよい、炭素原子数が2〜10の選択的なオキシ置換型アルキルである。カルボン酸及び/又は異なる鎖長のポリオールを用いること、及びオキシ置換基を有するカルボン酸を用いることにより、得られるエステルの親水度及び溶解度の制御が可能となる。そのような物質は、体内での溶解に十分な抵抗性があり、本発明の前述の造影剤を封入可能な固定性の疎水性ゲルを形成することが可能である。ゲルは、造影剤と結合した医薬品を更に含んでいてもよい。
【0034】
[固体粒子の被覆]
固体粒子は、様々な他の成分を更に含んでいてもよい。有用な固体粒子とは、リポソーム、ポリマーソーム、デンドリマー、水溶性の架橋性ポリマー、及びそのような固体粒子を含むミセル、並びに、被覆されていない若しくは被覆された金属粒子、被覆されていない若しくは被覆された固体金属塩などである。本明細書で用いられている、「被覆された」固体粒子には、シェル、固体コア材周辺の表面被覆などがある。シェル又は表面被覆は、共有結合、非共有結合、又は共有結合と非共有結合の両方により、コア材と結合することが可能である。代表的なシェル若しくは表面被覆を本明細書に記載する。一実施形態において、固体粒子は、コア表面粒子に非共有結合又は共有結合により結合したポリマー表面被覆を含んでいる。ポリマーは、ホモポリマー、共重合体、ブロック共重合体、又はグラフト共重合体、又は合成又は天然のデンドリマー型共重合体であってもよく、これらに限定されるものではない。一般的に、ポリマー被覆には、例えば5,000ダルトンといった通常2,000〜70,000ダルトンの分子量のポリエチレングリコール(PEG)、通常2,000〜1,000,000ダルトンの分子量のデキストラン、及び/又は通常2,000〜1,000,000ダルトンの分子量のヒアルロン酸が含まれる。ポリマーは、ポリマー構造全体が負に帯電し、効率的な被覆を可能にする正に帯電したナノサイズ粒子表面との静電相互作用を可能にする方法により、通常、ブロック共重合体として結合している。特定の実施形態において、固体粒子には、例えば、約1,000、2,000、3,000、5,000、及び10,000ダルトンの平均分子量をそれぞれ有するPEG処方である、共役なPEG1000、PEG2000、PEG3000、PEG5000、又はPEG10000などがあるが、これらに限定されるものではない。更なる実施形態において、固体粒子には、例えば、約1,000、2,000、3,000、5,000、及び10,000ダルトンの平均分子量をそれぞれ有するPNIPAM処方である、共役なPNIPAM1000、PNIPAM2000、PNIPAM3000、PNIPAM5000、又はPNIPAM10000などがあるが、これらに限定されるものではない。一実施形態において、固体粒子とは、シェル、又は脂質単分子層及び/若しくは1つ又はそれ以上の脂質二分子層などの脂質層、及び無機粒子を含む粒子コアを含む表面被覆などである。本発明の目的用の表面被覆脂質とは、例えば、脂肪酸、中性脂肪、リン脂質、糖脂質、セラミド、スフィンゴ脂質、脂肪族アルコール、及びステロイドなどである。これらに限定されるものではないが、固体粒子の具体例には、PEG被覆又はペグ化(PEGylated)された国際公開第2007/129791号、及びKim et al(2007)「Invest.Radiol」(2007,42,797−806)に記載された金のナノロッドを用いて合成された金のナノサイズ粒子、Rabin(2006)「Nat.Mater」(2006,5,188−122)に記載されたポリマー被覆されたビスマス硫化物のナノサイズ粒子、Haba et al(2007)「Langmuir」(2007,23,5243−5246)、及びKojima et al(2010)「Bioconjugate Chem」(2010,21,1559−1564)に記載されたリン酸カルシウムリポソーム・コアシェルナノ組成物、CT画像診断用に封入された金のナノサイズ粒子を伴うPAMAMのデンドリマー、及び当該技術分野において既知であるX線造影剤を含む他の固体粒子がある。本発明の特定の実施形態において、ナノサイズ粒子のシェルには、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DSPC)「A」、コレステロール「B」、1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−[メトキシ(ポリエチレングリコール)−2000](DSPE−PEG−2000)「C」、及び1,2−ジステアロイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン−N−[メトキシ(ポリエチレングリコール)−2000]−TATE(DSPE−PEG−2000−RGD)「D」が含まれ、そのモル比A:B:C:Dに関して、Aは45〜65、Bは35〜45、Cは5〜13、Dは0〜3で選択され、A+B+C+D=100となる。
【0035】
望ましい化学的及び/又は物理的特性をコロイド粒子に導入するために、固体粒子の被覆を利用することが可能である。とりわけ、疎水性/親水性、粒子荷電、流体力学直径、並びに特に高い/低い塩濃度、有機溶媒、還元環境、及び熱などの様々な環境中における安定性などの特性は、的確な表面被覆材を選択することにより制御が可能である。表面被覆により固体粒子に与えられるこれらの特性は、ここに記載されるX線造影剤の組成物の全体の挙動を調整するために、制御すべき重要な因子である。
【0036】
本発明に係る、取り込まれたナノサイズ粒子を含むゲル形成用組成物内にあるものを含めた造影剤の量は、取り込まれたナノサイズ粒子を含み、ナノサイズ粒子を含む水を除いた、ゲル形成系の総重量に対する造影剤の重量パーセントにより定量化してもよく、ナノサイズ粒子のシェルの重量に対する造影剤の重量パーセントを定義することにより定量化してもよく、又は調製されたナノサイズ粒子内の造影剤のサイズを定量化することにより定量化してもよい。後者は、低温透過電子顕微鏡、あるいは動的光散乱などの当該技術分野における従来の方法により測定が可能である。
【0037】
[形とサイズ]
本発明に係るナノサイズ粒子は、疑似球状、球状、又は棒状などの非球状であってもよい。好適なナノ粒子とは、最大50μmのサイズ、好ましくは最大5μmのサイズを有する粒子である。
【0038】
好ましくは、本発明に係るナノサイズ粒子とは、2〜10nm、10〜100nm、10〜80nm、10〜50nm、10〜20nm、10〜15nm、15〜20nm、20〜50nm、50〜80nm、80〜110nm、110〜140nm、140〜170nm、170〜200nm、200〜220nm、220〜250nm、250〜280nm、280〜310nm、310〜340nm、340〜370nm、370〜400nm、400〜420nm、420〜450nm、450〜480nm、480〜500nm、又は500〜1000nmなどの1〜1000nmの範囲のサイズの粒子である。本発明に係るサイズとは、数平均直径、長さ、又は幅を含めた、直径、長さ、又は幅に関して測定されたものでよい。好ましい実施形態において、本発明の組成物中のナノサイズ粒子は、10〜100nm、10〜80nm、10〜50nm、10nm〜30nm、10〜20nm、30nm〜40nm、40nm〜50nm、50nm〜60nm、60nm〜70nm、70nm〜80nm、90nm〜100nm、100nm〜110nm、110nm〜120nm、120nm〜130nm、130nm〜140nm、又は140nm〜150nmなどの10nm〜150nmの範囲の数平均直径を有している。
【0039】
ナノサイズ粒子の形とサイズを制御することは、ナノスケールのコロイド懸濁液の安定性と、生体内における粒子の最終形態に重大な影響を与える可能性がある。好ましい実施形態において、本発明の組成物中のナノサイズ粒子は、10nm〜100nmの範囲の数平均直径を有している。そのようなナノサイズ粒子では、ブラウン運動の影響により、遅い沈殿速度/沈殿しない現象を示す。他の好ましい実施形態において、本発明の組成物中のナノサイズ粒子は、10nm未満の数平均直径を有している。そのような粒子は、ヒドロゲルの分解後に、例えば腎臓ろ過により取り除かれ、その後尿中へ排出されることが可能で、このことにより長期的な組織への滞留を防ぎ更に/又は毒性の危険性を低下させることが可能である。
【0040】
[有機ゲル形成系]
好適なゲル形成成分には、エステル化された単糖類などの誘導体化された単糖類、エステル化されたポリオール、ポリマー、脂質、ペプチド、タンパク質、低分子量のゲル化剤、及び非水溶性の高粘度液体キャリア物質などの誘導体化されたポリオール、並びにこれらの組み合わせなどの有機成分により構成されるものなどがあるが、これらに限定されるものではない。
【0041】
単糖類及びポリオールのゲル形成系は、イソブチレート及びアセテートでアシル化されたスクロース(付着物)で構成される疎水性成分であるスクロース酢酸イソブチル(SAIB)であってもよい。本発明の好ましい付着物は、モノサッカライド、ジサッカライド、又はトリサッカライドである。特に好ましいジサッカライド付着物はスクロースであるが、付着物を含有するアルコールは、約2〜約20のヒドロキシル基を有する多価アルコールに由来してもよく、1〜20の多価アルコール分子をエステル化することで形成されてもよい。好適なアルコール部分は、1つ又はそれ以上の水素原子を、単官能基のC1〜C20のアルコール、二官能基のC1〜C20のアルコール、三官能基のアルコール、ヒドロキシル基含有するカルボン酸、ヒドロキシル基含有するアミノ酸、リン酸塩含有アルコール、四官能基のアルコール、糖アルコール、単糖類、二糖類、糖酸、及びポリエーテル・ポリオールから、取り除くことにより誘導されたものを含む。より具体的には、アルコール部分は、ドデカノール、ヘキサンジオールのうちの1つ又はそれ以上を含んでいてもよく、より詳細には、1,6−ヘキサンジオール、グリセロール、グリコール酸、乳酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸、セリン、ATP、ペンタエリスリトール、マンニトール、ソルビトール、グルコース、ガラクトース、フルクトース、マルトース、ラクトース、グルクロン酸、1〜約10のグリセロール単位を含有するポリグリセロール・エーテル、1〜約20のエチレングリコール単位を含有するポリエチレングリコールを含んでいてもよい。更に、3〜約6の単糖を含有するオリゴ糖が、本発明において付着物として用いられていてもよい。一般的に、本発明の付着物のエステルは、1つ又はそれ以上のアルコールを反応させることにより、特に、得られるエステルのアルコール部分を形成する1つ以上のポリオールと、得られるエステルの酸部分を形成する1つ又はそれ以上のカルボン酸、ラクトン、ラクタム、炭酸塩、又はカルボン酸の無水物を反応させることにより、作製することが可能である。そのような系は、溶媒誘起相分離に起因する水和によって生分解性の無定形炭水化物ガラス母材を形成することで知られている。
【0042】
ポリマーは、ホモポリマー、共重合体、ブロック共重合体、又はグラフト共重合体、あるいは合成若しくは天然のデンドリマー型共重合体であってもよい。好適なモノマーの具体例としては、以下が含まれていてもよい:ラクチド、グリコリド、N−ビニルピロリドン、ビニルピリジン、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、メタクリル酸ヒドロキシエチル、ヒドロキシエチルアクリレート、メタクリル酸ヒドロキシメチル、ヒドロキシメチルアクリレート、メタクリル酸、及び酸性基を有するアクリル酸、並びにこれらの酸の塩、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸など、及びメタクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、メタクリル酸N,N−ジエチルアミノエチル、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、これらの誘導体の塩などの塩基性基を有する誘導体。他のモノマーとしては、エチルアクリレート、メチルメタクリレート、メタクリル酸グリシジルなどのアクリレート誘導体及びメタアクリレート誘導体、N−n−ブチルメタクリルアミドなどのN−置換アルキルメタクリルアミド誘導体、塩化ビニル、アクリロニトリル、スチレン、酢酸ビニル、ε−カプロラクトンなどのラクトン、ε−カプロラクタムなどのラクタムを含んでいてもよい。他の好適なモノマーの例としては、酸化プロピレン、酸化エチレンなどのアルキレンオキシドなどがあるが、これらの具体例に限定されるものではない。
【0043】
一方、上記モノマーと結び付く(あるいは結合する)高分子ブロックの具体例は、メチルセルロース、デキストラン、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリビニルアルコール、ポリN−ビニルピロリドン、ポリビニルピリジン、ポリアクリルアミド、ポリメタアクリルアミド、ポリN−メチルアクリルアミド、ポリヒドロキシメチルアクリレート、ポリアクリル酸、ポリメタアクリル酸、ポリビニルスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、及びこれら酸の塩、ポリN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、ポリN,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、ポリN,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、及びこれらの塩、ポリ乳酸−グリコール酸共重合体、ポリカプロラクトン、及びこれらの組み合わせなどが含まれてもよいが、これらに限定されるものではない。
【0044】
脂質は、コレステロールなどのステロール、コレスタノール、8〜22の炭素原子を有する飽和又は不飽和のアシル基を有する脂肪酸、及びα−トコフェロールなどの抗酸化剤のうち、1つ又はそれ以上を含む任意のリン脂質であってもよい。リン脂質の例としては、例えば、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、カルジオリピン、スフィンゴミエリン、セラミドホスホリルエタノールアミン、セラミドホスホリルグリセロール、セラミドホスホリルグリセロールリン酸塩、1,2−ジミリストイル−1,2−デオキシホスファチジルコリン、プラズマロゲン、ホスファチジン酸などがあり、それらを単独で使用してもよく、あるいは2つ又はそれ以上を組み合わせて使用してもよい。これらのリン脂質の脂肪酸の残基は、特に限定されるものではなく、例えば12〜20の炭素原子を有する飽和又は不飽和の脂肪酸残基などがある。具体例としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、及びリノール酸などの脂肪酸より誘導されたアシル基などがある。更に、卵黄レシチンや大豆レシチンなどの天然物より誘導されたリン脂質も、使用してよい。更に、好適なリン脂質には、例えば、ジグリセリド、トリグリセリド、1,2−ビス(オレオイル)−3−(トリメチルアンモニオ)プロパン(DOTAP)、1−N,N−ジメチルアミノジオレオイルプロパン(DODAP)、1−オレオイル−2−ヒドロキシ−3−N,N−ジメチルアミノ−プロパン、1,2−ジアシル−3−N,N−ジメチルアミノプロパン、1,2−ジデカノイル−1−N,N−ジメチルアミノ−プロパン、3−β−[n−[(N’,N’−ジメチルアミノ)エタン]−カルバモイル]コレステロール(DC−Chol)、1,2−ジミリスチロキシプロピル−3−ジメチルヒドロキシエチルアンモニウム臭化物(DMRIE)、1,2−ジオレオイルオキシプロピル−3−ジメチルヒドロキシエチルアンモニウム臭化物(DORI)などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0045】
「ペプチド」又は「ポリペプチド」とは、化学結合(例えば、アミド結合)により互いに結合した2つ以上の一連のα−アミノ酸残基を指す。「ペプチド」という用語は、文脈によって、個別のペプチド、又は同じ配列又は異なる配列を有するペプチドの集合を指す可能性があり、どちらも自然発生的なα−アミノ酸残基のみ、自然発生しないα−アミノ酸残基のみ、又はその両方を含有する可能性がある。ペプチドが、例えば、両親媒性ペプチド、及びβ−シート型又はα−へリックス型の結合配列のペプチドといった、自己組織化特性を示してもよい。ペプチドには、D−アミノ酸、L−アミノ酸、又はその組み合わせが含まれてもよい。自己組織化ペプチド中に存在してもよい天然に存在する好適な疎水性アミノ酸残基には、Ala、Val、Ile、Met、Phe、Tyr、Trp、Ser、Thr、及びGlyがある。親水性アミノ酸残基は、塩基性アミノ酸(例えば、Lys、Arg、His、Orm)、酸性アミノ酸(例えば、Glu、Asp)、又は水素結合を形成するアミノ酸(例えば、Asn、Gln)であってもよい。L−アミノ酸の分解により、宿主組織により再利用可能なアミノ酸が生成される。L型−アミノ酸残基は、体内において自然発生し、この化合物群から形成されるペプチドを、他の多くの生体適合性のある物質から識別する。L型−アミノ酸は、RGD接着配列などの生物活性のある配列を含有する。自己組織化ペプチド内のアミノ酸残基は、自然発生したアミノ酸残基、又は自然発生しないアミノ酸残基であってもよい。自然発生するアミノ酸には、標準遺伝コードによりコードされたアミノ酸残基、標準アミノ酸(例えば、ピロリジン又はセレノシステイン)の修飾、及び非標準アミノ酸(例えば、L型ではなくD型のアミノ酸)の修飾により形成することが可能なアミノ酸が含まれていてもよい。自然発生しないアミノ酸は、自然界では見つからないが、ペプチド鎖中に組み込まれていてもよい。自然発生しないアミノ酸には、例えば、D−アロイソロイシン(2R,3S)−2−アミノ−3−メチルペンタン酸、L−シクロペンチルグリシン(S)−2−アミノ−2−シクロペンチル酢酸などがある。本開示に従って使用される自己組織化ペプチドは、例えば、本明細書に記載される1つ又はそれ以上の目的にとって有用な範囲まで自己組織化する能力を保持する限りにおいては、長さは変化してもよい。わずか2つのα−アミノ酸残基を有するペプチドでも、約50もの残基を有するペプチドでも、どちらも適用可能である。実施形態において、α−アミノ酸類似物も使用可能である。特に、D型のα−アミノ酸残基は、使用可能である。利用可能なペプチドは、分枝していてもよい。自己組織化ペプチド中の1つ又はそれ以上のアミノ酸残基は、アシル基、炭水化物群、リン酸基、ファルネシル基、イソファルネシル基、脂肪酸群、又は接合用のリンカーなどの化学物質の添加により、官能化されてもよい。この官能基は、ペプチド間の結合、あるいはペプチドとヒドロゲル又はヒドロゲル前駆体との間の結合をもたらす可能性がある。例えば、両親媒性ペプチドの疎水部分は、アセチレン基で官能化されてもよい。あるいは、所与のペプチドの片側あるいは両側の末端が修飾されていてもよい。例えば、カルボキシル末端残基のカルボキシル基及び/又はアミノ末端残基のアミノ基はそれぞれ保護されていても、保護されていなくてもよい。自己組織化ペプチドの例としては、Nagaiらの「J.Controlled Release」(2006,115,18−25)、Schneiderらの「PLoS ONE,2008,1,1−8」、及びHartgerinkらの「PNAS,2002,99,5133−5138」で開示されているものなどが挙げられる。
【0046】
タンパク質は、特に限定されているわけではなく、例えば20〜200kDaなど、5〜500kDaの範囲の分子量を有していてもよい。タンパク質は、例えば、酵母、哺乳類、細菌類の発現系などの利用可能な生物学的発現系内に発現される、天然物由来のタンパク質、又は人工タンパク質であってもよい。タンパク質は、好ましくは、これらに限定されるものではないが、α−へリックス多重コイルなどの応答領域、又はロイシンジッパー領域を有し、外部刺激又は内部刺激により、例えばpH、温度、及びイオン強度などの変化に構造的に応答するヒドロゲル形成することとなる。そのようなタンパク質の例として、Bantaらの「Annu.Rev.Biomed.Eng」(2010,12,167−86)により開示されているものなどが挙げられる。
【0047】
低分子量のゲル化剤には、ヒドロゲルを形成することが可能な両親媒性構造を有する、例えば250〜1,000ダルトンなど100〜4,000ダルトンの分子量の分子などが挙げられる。具体例としては、国際公開第2008/102127(A2)号、「Chem.Rev」(2004,104、1201−1217)、及び「Eur.J.Org.Chem」(2005,3615−3631)に記載されるような低分子量のゲル化剤の例が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0048】
非水溶性の高粘度液体キャリア物質としては、スクロース酢酸イソブチルや、プロピレングリコール、グリセリル、ジエチルアミノエチル及びグリコールなどのステアリン酸エステルや、ステアリン酸アミドや、N,N’−エチレンジステアリン酸アミド、ステアリン酸アミドMEA及びDEA、エチレンビスステアロアミド、ココアミンオキシドなどの他の長鎖脂肪酸アミドや、セチルアルコール、ステアリル・アルコールなどの長鎖脂肪アルコールや、ミリスチン酸ミリスチル、ベヘニルエルケート、リン酸グリセリル、酢酸ジステアリン酸スクロース(クロデスタA−IO)などの長鎖エステルなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0049】
本発明のゲルは、生分解性、及びpH、温度、イオン濃度、酵素活性、電界、あるいは水和に依存するゾル−ゲル相転移性を有している。
【0050】
溶媒の組成物(分散媒)は、特に限定すべきではないが、例としては、リン酸緩衝液、クエン酸塩緩衝液、及びリン酸緩衝生理食塩水などの緩衝液、生理食塩水、細胞培養用の培地、及びエタノール、乳酸エチル、プロピレン・カーボネート、グリコフロール、N−メチルピロリドン、2−ピロリドン、プロピレングリコール、アセトン、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、ベンジルアルコール、トリアセチン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、カプロラクタム、デシルメチルスルホキシド、オレイン酸、1−ドデシルアザシクロヘプタン−2−オンなどの生体適合性有機溶媒などが挙げられる。処方物は、これらの溶媒(分散媒)中に安定的に分散することが可能であるが、更に溶媒を、糖類(水溶液)、例えば、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、イノシトール、リボース、及びキシロースなどの単糖類、ラクトース、スクロース、セロビオース、トレハロース、及びマルトースなどの二糖類、ラフィノース、及びメレジトースなどの三糖類、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、又はγ−シクロデキストリンなどの多糖類、エリトリトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、マルチトールなどの糖アルコール、又はグリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、エチレングリコールモノアルキルエーテル、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル、及び1,3−ブチレングリコールなどの多価アルコール(水溶液)と共に加えてもよい。更に、添加物は、アミロリド、プロカインアンインアミド、アセチル−β−メチルコリン、スペルミン、スペルミジン、リゾチーム、フィブロイン、アルブミン、コラーゲン、トランスフォーミング増殖因子−β(TGF−β)、骨形成タンパク質(BMPs)、繊維芽細胞増殖因子(bFGF)、デキサメタゾン、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、フィブロネクチン、フィブリノーゲン、トロンビン、タンパク質、デクスラゾキサン、ロイコボリン、リシノール酸、リン脂質、小腸粘膜化組織、ビタミンE、脂肪酸のポリグリセロールエステル、ラブラフィル、ラブラフィルM1944CS、クエン酸、グルタミン酸、ヒドロキシプロピル、イソプロピルミリステート、オイドラギット、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン(tego betain)、ジミリストイルホスファチジルコリン、スクレログルカンなどの生体利用可能な物質、クレモフォールEL、エタノール、ジメチルスルホキシドなどの有機溶媒、メチルパラベンなどの防腐剤、デンプンやその誘導体などの糖類、スクロースマンニトール、グルコースマンニトールなどの糖衣ポリオール、アラニン、アルギニン、グリシンなどのアミノ酸、トレハロース−PEG、スクロース−PEG、スクロース−デキストランなどのポリマー含有ポリオール、ソルビトール−グリシン、スクロース−グリシンなどの糖衣アミノ酸、Tween20 Tween80、Triton X−100、ラウリル硫酸ナトリウム(SDS)、Brijなどの様々な分子量のポロキサマーなどの界面活性剤、トレハロース−ZnSO、マルトース−ZnSOなどの糖衣イオン、及びケイ酸塩、NaCI、KCI、NaBr、NaI、LiCI、n−BuNBr、n−PrNBr、EtNBr、Mg(OH)、Ca(OH)、ZnCO、Ca(PO、ZnCl、(CZn、ZnCO、CdCl、HgCl、CaCl、(CaNO、BaCl、MgCl、PbCl、AICl、FeCl、FeCl、NiCl、AgCl、AuCl、CuCl、テトラデシル硫酸ナトリウム、ドデシルトリメチル−アンモニウムブロミド、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド、テトラデシルトリメチル−アンモニウムブロミドなどの生体許容性の塩からなる群から選択してもよいが、これらに限定されるものではない。
【0051】
本発明の一実施形態において、添加物の含有量は、ゲル形成成分の総重量を基に、1×10−6〜30重量%、好ましくは1×10−3〜10重量%である。
【0052】
好ましい医療注射用ゲル形成系は、以下の特徴の1つ又はそれ以上、好ましくは以下の特徴すべてを有してもよい。
(1)注射可能なように、投与前、系はゾル状態であるべきである。ゾル状態は、小さいニードルヘッドにより、患者の苦痛を和らげ、挿入手順を簡潔化することを可能にするために、十分低粘度、通常は20℃において10Pa・s(10,000cP)未満、好ましくは2Pa・s(2,000cP)未満、(又は、その代わりに5℃で10Pa・s(10,000cP)未満、好ましくは2Pa・s(2,000cP)未満)であるべきである。
(2)化学的架橋、物理的結合、又は水和のいずれかによるゲル化が、注入後に開始する、又は完了すること。
(3)ゲルは生分解可能である、あるいは制御期間内に徐々に溶解可能であるべきであり、生成物は通常の経路で、除去/分泌されるべきである。
(4)ポリマー自体及び分解可能な生成物は、生体適合的であるべきである。同様に、架橋剤や開始剤などの添加物を添加するならば、それらも生体適合的であるべきである。
(5)ゲルは、細胞/組織接着特性を潜在的に有してもよい。
(6)ゲルが、例えば炎症などの免疫応答などの副作用を生じさせるべきでない。
【0053】
好ましくはゲル形成系が、例えば、哺乳類、特にヒトに注入される際に、重篤な、長期間にわたる、又は強められた、処方物に対する生物学的応答を刺激しないことなど、生体適合的であるべきことを理解すべきである。ゲル付着物の代謝を容易にするために、分解性結合は、とりわけ、基礎的な構成単位となる、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリ(ラクチド−グリコリド共重合体)、ポリホスファジン、ポリホスフェート、ポリカーボネート、ポリアミノ酸、ポリ無水物、及びポリオルトエステルの使用によって、含まれていてもよい。更に、類似の加水分解性部分を、カーボネート、エステル、ウレタン、オルトエステル、アミド、イミド、イミドキシ、ヒドラジド、チオカルバノヒドラジド、及びリン酸塩などのポリマーとして含有する小分子架橋剤は、構成単位として使用されてもよい。更に、ポリグリコリドジアクリレート、ポリオルトエステルジアクリレート、及びアクリレート置換ポリホスファジン、アクリレート置換ポリアミノ酸、又はアクリレート置換ポリリン酸塩ポリマーは、分解可能な構成単位として使用可能である。メタクリレート部分、又はアクリルアミド部分は、上記例でのアクリレート部分の代わりに、使用可能である。同様に、加水分解性部分、及び2つ又はそれ以上のアクリレート、メタアクリレート、又はアクリルアミドを含有する小分子を用いてもよい。そのような分解可能なポリマー及び小分子構成単位は、当該技術分野で既知の方法にて、アクリレート、メタアクリレート、アクリルアミド、又は類似部分を用いて、機能化されてもよい。
【0054】
注射可能なように、投与前、系はゾル状態であるべきである。ゾル状態は、小さいニードルヘッドにより患者の苦痛を和らげ、挿入手順を簡潔化することを可能にするために、十分低粘度であるべきである。化学的架橋、又は物理的結合のいずれかによるゲル化が、注入後に開始する、あるいは完了する。
【0055】
ゲル形成系の好ましい特性としては、以下の1つ又はそれ以上が挙げられる。
【0056】
ゲル形成系がヒドロゲルを形成可能である。ヒドロゲルが、数多くの親水基、又は親水性ドメインを有する架橋ポリマー網目で構成されている。これらの網目は、水に対して高い親和性を有するが、ポリマー鎖間に形成される化学的結合、又は物理的結合のために、溶解することは妨げられている。水がこれらの網目に浸透し、膨張を起こして、ヒドロゲルに形を与える。完全に膨張したヒドロゲルは、軟性結持力やゴム状稠度、水又は体液の低い界面張力などの生体組織に共通のいくつかの物理的特性を有する。完全に膨張したヒドロゲル、あるいは水和したヒドロゲルの弾性が、埋め込んだ後の周辺組織の刺激を最小化することが可能である。ヒドロゲル表面と体液との間の低い界面張力は、タンパク質吸着及び細胞粘着を最小化し、これにより免疫の副作用のリスクを低減する。ヒドロゲルの調製に使用される多くのポリマー(例えば、ポリアクリル酸(PAA)、PHEMA、PEG、及びPVA)は、薬物耐性時間を延ばし、組織透過性を高める粘膜付着性及び生体付着性を有する。この付着特性は、ヒドロゲルポリマーの官能基と粘液糖タンパク質の間の分子間鎖によるもので、組織特異的な結合を強めるのに役立つ。
【0057】
本発明のゲル形成系は、生体内投与前、流動性の溶液であることが好ましい。図7で説明されるようなヨウ素化SAIB誘導体、又は他のヨウ素化ポリマーのような有機X線造影剤、及び無機固体粒子は、例えば、注入前に単純な混合によりゲル形成系に添加することが可能である。一度注入されると、ゲル形成系は、生理学的な条件において、すぐにゲル状になる。このように、注入可能な集合体は、最小限の外科的医療行為で、人体中へ注入することが可能である。原位置でのゲル化の後、集合体は、画像診断や画像誘導放射線治療用の参照マーカーとなることが可能である。
【0058】
外部への塗布、あるいは組織の微小環境への応答による注入で、この転移を起こすために、数多くの活性剤、又は数多くの条件を使用することが可能である。この例としては、pH、温度、イオン強度、酵素活性、電界、及び水和(図1)に応答したゲル化などがある。本発明との関連では、ゲル化は、単独での注入を可能にするために、組織内での機械的安定性を調整することが可能であることと関連する。
【0059】
[温度変化に応答するゲル形成系]
1つの実施形態において、ゲル形成系は、10〜65℃の範囲、好ましくは35〜40℃の範囲の温度への応答により、ゲルを形成する。
【0060】
好ましい感熱性材料では、ゾル−ゲル逆転移を示す可能性がある。この「逆転移」という用語は、冷却ではなく加熱によってゲル化が生じるということを意味する。代表的な生分解性、又は生体吸収性の感熱ゲル化性ポリマーを、図2に示す。材料源によって、感熱ゲル化性ヒドロゲルは、天然(あるいは半自然)ポリマー系、及び合成ポリマー系に分類が可能である。天然系のポリマーには、セルロース、キトサン、キシログルカン、ゼラチンなどや、その誘導体がある。合成ポリマーに分類されるポリマーには、数種類のポリエーテル、ポリエーテルや生分解性ポリエステルのブロック共重合体、合成ポリペプチド、及び他のポリマー(図2)などが挙げられる。
【0061】
そのようなゲル形成系の他の例として、以下で記述されたものがある。i)「Eur.J.Pharm.Biopharm」(2004,57,53−63)、ii)「Chem.Soc.Rev」(2008,37,1437−1481)、iii)「Adv.Drug Deliv.Rev」(2010,62,83−99)、iv)「Macromol.Biosci」(2010,10,563−579)、v)「J.Controlled Release」(2005,103,609−624)、vi)「Expert Opin.Ther.Patents」(2007,17,965−977)、vii)「Appl.Microbiol.Biotechnol」(2011,427−443)、viii)「Science」(1998,281,389−392)、ix)「Eur.J.Pharm.Biopharm」(2008,68,34−45)、x)「Biomacromolecules」(2002,4,865−868)、xi)「Colloids and Surfaces B: Biointerfaces」(2011,82,196−202)、xii)「Biomacromolecules」(2010,11,1082−1088)、xiii)「Adv.Eng.Mater」(2008,10,515−527)、xiv)「Eur.J.Pharm.Biopharm」(2004,58,409−426)、xv)「Adv.Drug Deliv.Rev」(2002,54,37−51)、xvi)「Biomater」(2004,25,3005−3012)、xvii)「J.Biomed.Mater.Res」(2000,50,171−177)、xviii)xix)国際公開第2007/064252号,xx)国際公開第2009/150651号,xxi)国際公開第2007/064152号,xxii)国際公開第99/07416号,xxiii)Park K.,Shalaby W.S.W.,Park H.の「Biodegradable hydrogels for drug delivery」(Basel:Technomic Publishing Co.,Inc.,1993.ISBN1−56676−004−6,Print)、xxiv)「Biomedical polymers and polymers therapeutics」(Ed.Chiellini E.,Sunamoto J.,Migliaresi C.,Ottenbrite R.M.,Cohn D.,New York,Kluwer Academic Publishers,2002,ISBN0−30646472−1,Print)、及び本明細書で参照されるものであるが、これらに限定されるものではない。
【0062】
興味深い一実施形態において、感熱性ポリマーは、ポリ(エチレングリコール)−b−ポリ(プロピレングリコール)−b−ポリ(エチレングリコール)(PEG−PPG−PEG、Pluronic(登録商標)、又はポロキサマー)、又はそれらの誘導体である。PEG/PPGの組成、分子量、及び濃度を制御することで、可逆的なゲル化を、生理学的温度かつ生理学的pHにて、起こすことが可能である。
【0063】
他の興味深い実施形態において、感熱性ポリマーはキトサンである。キトサンは、ポリオール塩(例えば、β−グリセロリン酸、GP)の添加により、感熱性で、pH依存性の、ゲル形成系となることが可能である。これらの処方物は中性のpHを有し、室温あるいは室温より低い温度で液体であり、体温でモノリスゲルを形成する。キトサンの脱アセチル化度が減少するにつれて、室温でのゾルの安定性、及びゲル化時間は増加する(「Int.J.Pharm」2000,203,89−98)。これらのキトサンベースの系におけるゲル化は、荷電中和、イオン結合及び水素結合、及び主要な推進力である疎水性相互作用因子の組み合わせにより生じる。更に、そのような系は、生体化合物と高い相溶性があり、生体内で生物学的に活性な成長因子及び細胞を注入するのに使用することが可能である(「Biomater」2000,21,2155−2161)。
【0064】
とても興味深い一実施形態において、感熱性ポリマーは、ポリ(カプロラクトン−b−エチレングリコール−b−カプロラクトン)(PCL−PEG−PCL)、ポリ(エチレングリコール−b−カプロラクトン−エチレングリコール)(PEG−PCL−PEG)、又はポリ(エチレングリコール−b−カプロラクトン)(PEG−PCL)である。このブロック共重合体のグループは、室温で自由流動性溶液、及び体温で高い生分解可能な性能を持つゲルに、調整することが可能である。そのようなポリマーは、生体適合性が高く、経皮投与において25g/kg体重の最大耐量とかなり低い毒性を示し(「J.Pharm.Sci」2009,98,4684−4694)、生体内で4週間超安定であった(「Tissue Eng」2006,12,2863−2873)。
【0065】
他の興味深い実施形態においては、感熱性ポリマーは、ポリ(エチレングリコール−b−[DL−乳酸−グリコール酸共重合体]−b−エチレングリコール)(PEG−PLGA−PEG)トリブロック共重合体である。PEG−PLGA−PEG(33重量%)は、室温において自由流動性ゾルであり、体温においてゲルとなる。このゲルは、高い機械的強度を示し、ゲルの強度は1ヵ月以上継続する(「J.Biomed.Mater.Res」2000,50,171−177)。他の例としては、可逆で温度高速応答性のゾル−ゲルのヒドロゲルであるポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)−g−メチルセルロース共重合体などがある。メチルセルロース含有量を調整することで、ゲル化温度、ゲル化時間、及び機械的強度を制御することが可能である(「Biomater」2004,25,3005−3012)。
【0066】
[イオン強度の変化に応答するゲル形成系]
他の実施形態において、ゲル形成系は、1μm〜500mmの範囲、好ましくは1〜50mm又は50〜200mmの範囲のイオン強度の変化への応答により、ゲルを形成する。
【0067】
そのようなゲル形成系の非限定例としては、図3に例示されているものや、以下に記述されているものがある。i)「Int.J.Pharm」(1989,57,163−168)、ii)「J.Controlled Release」(1997,44,201−208)、iii)「J.Am.Chem.Soc」(2001,123,9463−9464)、iv)「J.Controlled Release」(2003,86,253−265)、v)「Biomater」(2001,22,511−521)、xi)Park K.,Shalaby W.S.W.,Park H.「Biodegradable hydrogels for drug delivery」(Basel:Technomic Publishing Co.,Inc.,1993.ISBN1−56676−004−6,Print)、xii)「Biomedical polymers and polymers therapeutics」(Ed.Chiellini E.,Sunamoto J.,Migliaresi C.,Ottenbrite R.M.,Cohn D.,New York,Kluwer Academic Publishers,2002,ISBN0−30646472−1,Print)及びこれらに引用されている文献である。
【0068】
そのようなゲル形成系の興味深い一例は、アルギン酸塩のものである。アルギン酸は、1−4グリコシド結合したL−グルロン酸(G)と、そのC−5エピマ−D−マンヌロン酸(M)の非分枝鎖二元共重合体である。2つのモノマーの比率と配分は、アルギン酸塩の物理化学的特性の大部分を決定する。
【0069】
一実施形態において、ゲル形成系は、アルギン酸塩の水溶液を基にしている。アルギン酸塩は、線状多糖類のグループで、水溶液中において、多価陽イオンの添加後、ゲルを形成することが可能である。ほとんどの応用場面における、アルギン酸塩の固定化剤としての利用は、室温での作製、及び配置が可能な熱安定性の強力なゲルを形成する能力によるものである。ほとんどの応用場面において、興味を持たれるのは、アルギン酸塩のカルシウムイオンを用いたゲル形成である。しかしながら、アルギン酸塩は、ほとんどのジカチオン、及び多価のカチオンによりゲルを形成する。Ba2+やSr2+などのイオンが、Ca2+より強力なアルギン酸塩ゲルを形成する一方で、一価の陽イオンやMg2+イオンはゲル化を誘導しない。ゲル強度は、グルロン酸含有量に依存し、G−ブロック中のG−ユニットの平均数にも依存する。アルギン酸塩のゲル化は、二価陽イオンが、G−ブロックとG−ブロックの間の鎖間結合に加わる時に起き、ゲル形態の3次元網目構造(図1)を生じる。固定化マトリックスとしてのアルギン酸塩ゲルは、リン酸塩、乳酸塩、及びクエン酸塩などのキレート化合物や、NaあるいはMg2+などのゲル化防止剤の存在に対して、高感度である。これを避けるために、ゲル粒子を、数ミリモルのカルシウムの自由イオンを含有する媒質中に保存してもよく、またNa/Ca2+比を、高Gアルギン酸塩では25:1未満に、低Gアルギン酸塩では3:1未満に保つことでも避けることが可能である。代わりに、Ca2+と、アルギン酸塩により高い親和性のある他の二価陽イオンとを入れ替えることも可能である。ゲルの機械的強度と、カチオンとの親和性との間に、相関関係が見つかっている。ゲル強度は以下の順に減少することが判明している:PB2+>Cu2+=Ba2+>Sr2+>Cd2+>Ca2+>Zn2+>Co2+>Ni2+。しかしながら、生細胞の固定化を含む応用において、毒性が、ほとんどのイオンの使用において、制限因子となり、Sr2+、Ba2+及びCa2+だけが、これらの目的において無毒であると考えられている。アルギン酸塩ゲルは、有機溶媒において、安定であることが分かってきている。
【0070】
ゲル化誘導因子が、注入前に加えられることから、シリンジの目詰まりを防止するために、物理的ゲル化速度が遅い必要がある。これを食い止めるために、カルシウムイオンを、粉末がアルギン酸ナトリウム水溶液に加えられた後、例えばCaSO粉末からゆっくりと放出することが可能である(「J.Biomater.Sci.,Polym」Ed.,1998,9,475−487)。他の興味深い実施例において、ダブルシリンジを用いた、ゲル化誘導因子とアルギン酸塩水溶液の同時注入により、関心のある組織内での高速のゲル化が起き、その結果、シリンジの目詰まりを防止できた。他の興味深い実施形態は、microbe Sphingomonas elodeaにより作製された高分子量の多糖類(500kDa)であるゲランガム(Gelrite(登録商標)、図3)である。ゲランガムは、結合した4つの単糖類で構成されており、ラムノース1分子、グルクロン酸1分子、及びグルコース2分子を含んでいる。それは、正に帯電したイオン(例えばカチオン)を加えた時に、ゲルを形成する。このように、ゲルの特性は、カリウム、マグネシウム、カルシウム及び/又はナトリウム塩の濃度を操作することで、制御可能である。
【0071】
他の興味深い実施形態において、イオン強度応答型ゲル形成系は、イオン強度依存的にβ−シート構造への自己組織化をすることで知られるH−(FEFEFKFK)−OH(FEK16)などのペプチドである(「J.Am.Chem.Soc」2001,123,9463−9464)。FEK16は、純水中で高い溶解性が見られるが、NaCl、KCl、及びCaClのmm単位の濃度の存在下において、濃度10mg/mL超で自己組織化されたヒドロゲルを形成する。
【0072】
[pHの変化に応答するゲル形成系]
更に別の実施形態においては、ゲル形成系は、pHの変化に応答するゲルの形成を受ける。ゲル形成系は、例えばpHの範囲が6〜8で、35〜40℃の温度といった、pHと温度の変化の組み合わせに応答するゲルの形成を任意に受ける。
【0073】
これらに限定されるものではないが、そのようなゲル形成系の例が、図4に例示され、以下に記載されているものが挙げられる。i)「Macromol.Biosci」(2010,10,563−579)、ii)「J.Controlled Release」(2001,73,205−211)、iii)「Topics in tissue engineering − Smart Polymers」(Vol.3,2007,Chapter 6、iv)「Adv.Drug Delivery Rev」(2010,62,83−99、v)「J.Controlled Release」(2003,86,253−265)、vi)「Biodegradable hydrogels for drug delivery」(Basel:Technomic Publishing Co.,Inc.,1993.ISBN1−56676−004−6,Print)、vii)「Biomedical polymers and polymers therapeutics」(Ed.Chiellini E.,Sunamoto J.,Migliaresi C.,Ottenbrite R.M.,Cohn D.,New York,Kluwer Academic Publishers,2002,ISBN0−30646472−1,Print)、及びこれらに引用されている文献である。
【0074】
処方物のpH(注入前)は、好ましくはpH=2〜10の範囲であり、随意に4〜6、6〜8、及び8〜9の範囲から選択される。
【0075】
pH応答性ヒドロゲルの特性は、イオン性部分のpKa、ポリマー骨格の疎水部分、それらの量と分配に、大きく依存する。イオン性基が、非イオン化されて中性になり、高分子網目構造内での静電反発力が消えると、疎水性相互作用が支配的となる。疎水性部分を更に導入すると、非荷電状態内で、より小型の構造をとらせ、相転移を容易にすることが可能である。これらのポリマーの疎水性は、親水的なイオン性モノマーと、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、メチルメタクリレート、及び無水マレイン酸などのpH応答性部分の付いた、あるいは付いていないより疎水的なモノマーとの共重合により、制御が可能である。
【0076】
pH変化に応答性のあるゲル形成系の例としては、低pHにおけるキトサン溶液のpH応答特性を用いた系である。一度体内に注入されると、これらのポリマー溶液は異なる環境pH条件にさらされ、ゲルを形成する。一例として、0.33Mのクエン酸中で、3%(w/v)のキトサン、及び3%(w/v)のGMOで構成される粘膜付着性のpH応答型キトサン/グリセリルモノオレート(C/GMO)の原位置のゲル系がある。キトサンは、中性又はアルカリ性のpHにおいて、通常は不溶である。しかしながら、希酸(pH≦5.0)中では、キトサン鎖(RNH3)上の遊離アミノ基のプロトン化により、可溶性となる。酸性媒質中でのキトサンの溶解性も、その分子量に依存する。キトサンの酸性溶液は、アルカリ性のpH、あるいは生体のpHにさらされると、この荷電を失い、粘性ゲルを形成する。キトサン、GMOとも、薬物送達システムに応用されている粘膜付着特性を有する。キトサン骨格上の正電荷により、粘液あるいは負に帯電した粘膜表面との強い静電相互作用を生じる可能性がある。
【0077】
[酵素活性に応答するゲル形成系]
更に別の実施形態においては、ゲル形成系は、酵素活性に応答するゲルの形成を受ける。
【0078】
これらに限定されるものではないが、そのようなゲル形成系の例が、図5に例示され、以下に記載されているものを含む。i)「Tissue Eng」(2006,12,1151−1168、ii)「Biomater」(2001,22,453−462)、iii)「Biomater」(2002,23,2703−2710)、iv)「Colloids Surf.,B」(2010,79,142−148)、v)「Biomacromolecules」(2011,12,82−87)、vi)「Macromolecules」(1997,30,5255−5264)、vii)「Biodegradable hydrogels for drug delivery」(Basel:Technomic Publishing Co.,Inc.,1993.ISBN1−56676−004−6,Print)、viii)「Biomedical polymers and polymers therapeutics」(Ed.Chiellini E.,Sunamoto J.,Migliaresi C.,Ottenbrite R.M.,Cohn D.,New York,Kluwer Academic Publishers,2002,ISBN0−30646472−1,Print)、及びこれらに引用されている文献である。
【0079】
酵素あるいはその発生源は特に限定されない。ゲル形成系の注入の間あるいは注入後に先立って、それを添加することは可能であり、こうしてゲル形成を誘導するトリガー分子として機能する。それは、内部刺激又は外部刺激への暴露により酵素を放出する例えばリポソームなどでカプセル化してもよい。更に、酵素は、注入箇所の病態生理学条件によって、天然の組織成分、又はアップレギュレートされた酵素として、注入された組織内に存在してもよい。
【0080】
一実施形態において、酵素誘導型のゲル形成系は、20kDa〜30kDaの範囲の分子量を持つリンタンパク質のグループであるカゼインを基にしたものである。そのような系は、生理学的温度及びpHにおける天然の組織酵素である微生物由来トランスグルタミナーゼ(MT Gase)の添加によって、ヒドロゲルに変化することが可能である(「Colloids Surf」B,2010,79,142−148)。
【0081】
酵素的活性化に基づくゲル形成系の他の興味深い例は、リシルオキシダーゼ又は血漿アミンオキシダーゼのどちらかの活性化によるリジンリッチペプチドのシッフ塩基の形成に基づくものである(「Biomacromolecules」2011,12,82−87)。リシルオキシダーゼ又は血漿アミンオキシダーゼのいずれかによるリジンのε−アミノ基の酸化によりアルデヒドが生成し、リジンのε−アミノ基の追加の添加により、容易にシッフ塩基を形成し、ヒドロゲルを生成する。
【0082】
[開始剤に応答するゲル形成系]
更に他の実施形態において、ゲル形成系では、例えば化学的共有結合によるゲル形成系の架橋によってゲルを形成する分子又はX線照射などの開始剤との接触に応答して、ゲルを形成する。
【0083】
これらに限定されるものではないが、そのようなゲル形成系の例が、以下に記載されている。i)米国特許第5410016号、ii)「J.Controlled Release」(2005,102,619−627)、iii)「Macromol.Res」(2011,19,294−299)、iv)「Polym.Bull」(2009,62−699−711)、v)「J.Biomater.Sci.,Polym.Ed」(2004,15,895−904)及びこれらに引用されている文献である。
【0084】
一実施形態において、ゲル形成系は、光開始剤でのフリーラジカル発生により架橋され、可視波長又は長波長紫外放射が最も望ましい。好ましい重合可能範囲は、アクリレート、ジアクリレート、オリゴアクリレート、メタクリレート、ジメタクリレート、オリゴメタクリレート、又は他の生物学的に許容できる重合可能なグループである。せいぜい分単位、最も望ましくは秒単位の短期間内に、細胞毒性の無い、マクロマのフリーラジカル重合により開始させるために使用することが可能な前述の系用の有用な光開始剤。可視光での開始剤としての好ましい染料は、エチルエオシン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、他のアセトフェノン誘導体、及びカンファキノンである。すべての場合において、架橋は、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、又は、例えば、エチルエオシンとトリエタノールアミンの組み合わせなどの光によって活性化されたフリーラジカル重合開始剤によって、マクロマ間で開始される。
【0085】
他の実施形態において、ゲル形成系は、これらに限定されるものではないが、ヘテロ型あるいはホモ型の二官能性架橋剤、例えばジチオスレイトール、グルタルアルデヒド、ジフェニルメタンビスマレイミド、スベリン酸ジスクシンイミジル、ビス(スルホスクシンイミジル)スベラート、アジピン酸ジメチルなどにより架橋される。そのようなゲル形成系の例としては、開始剤DTTの添加によりヒドロゲルを形成すると報告されている多官能アクリレートPEGベースポリマーがある(「J.Controlled Release」2005,102,619−627)。ゲルの特性は、ポリマーのサイズや添加する開始剤の量を制御することで微調整が可能であり、ゲルは、生理学的温度及びpHの条件で形成することが可能である。そのような系の更なる例は、ヒドラジド部分でヒアルロン酸(HA)誘導体を、アルデヒドで他のHA誘導体を、化学的に架橋してヒドロゲルを生成し、こうして加水分解性ヒドラゾン結合をゆっくり形成する(「Eur.J.Pharm.Biopharm」2008,68,57−66)。この方法は、開始剤、架橋剤、又は光源などの架橋用の他の装置を使用することなく原位置での架橋が可能になるという利点がある。
【0086】
[水和に応答するゲル形成系]
更に別の実施形態においては、ゲル形成系は、水和に応答するゲルの形成を受ける。そのようなゲル形成系の例としては、i)国際公開第2006/075123号、ii)「Adv.Drug Delivery Rev」(2001,47,229−250)、iii)米国特許出願第2007/0092560号及び本明細書で参照されるから選択されるものがあるが、これらに限定されるものではない。中性ジアシル脂質及び/又はトコフェロール及び/又は生体適合性のある酸素を含有した低粘度有機溶媒中に可溶なリン脂質で構成される処方物は、例えば、これらに限定されるものではないが、血管外液、細胞外液、間質液、又は血漿などの水溶液との接触などの水和により、液晶相構造を形成してもよい。他の系としては、非水系に溶解性のあるスクロース酢酸イソブチル(SAIB)などの高粘度液体キャリア物質などが挙げられる。そのようなシステムは、本発明に記載される固体粒子と混合させ、その後非経口注射させることが可能であり、そのため、X線画像診断法を含む1つ又は複数の画像診断法により可視化できる注入可能な造影剤として機能する。
【0087】
[架橋グループを用いたゲル形成系]
更に別の実施形態において、上記のゲル形成系のいずれも、これらに限定させるものではないが、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、メタアクリルアミド、ビニルエーテル、スチリル、エポキシド、マレイン酸誘導体、ジエン、置換されたジエン、チオール、アルコール、アミン、ヒドロキシアミン、カルボン酸、カルボン酸無水物、カルボン酸ハロゲン化物、アルデヒド、ケトン、イソシアネート、スクシンイミド、カルボン酸ヒドラジド、グリシジルエーテル、シロキサン、アルコキシシラン、アルキン、アジド、2’−ピリジルジチオール、フェニルグリオキサール、ヨード、マレイミド、イミドエステル、ジブロモプロピオン酸塩、及びブロモ酢酸などのハロゲン化酢酸などの、1つ又はそれ以上の架橋可能なグループを導入することにより、更に機能化される。
【0088】
[キレートグループを用いたゲル形成系]
他の実施形態において、ゲル形成系は、キレートイオンとして知られるキレート試薬で構成される。現在知られている、又は後に発見される、イオンのキレート試薬は、本発明の品目に用いられる可能性がある。金属イオン(例えば、Gd3+あるいはCu2+)キレート剤の例としては、拡張ポルフィリンとポルフィリン様誘導体、DOTA、DTPA、AngioMARKTM(DTPAキレートで官能化された骨格)、DTPA−BMA(DTPAの天然のビス−メチルアミド誘導体)、及びHP−D03A(DOTA様大環状化合物で、1つのキレートアームがヒドロキシルプロピル基と置換されたもの)などがあるが、これらに限定されるものではない。他のキレートとしては、DPDP(TeslaScan(商標))や、デフェロキサミン(例えば、Fe3+やZr4+)などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0089】
[処方物の他の成分]
処方物には、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン及び/又はγ−シクロデキストリン、及び他の誘導体などの、他の成分などが更に含まれてもよい。そのような成分は、ゲル形成系、及びナノサイズ粒子とホスト−ゲスト錯体を形成してもよく、こうして、ゲルの形成を助け、粒子の結合プロファイルを変化させることが可能である(「Adv.Drug Delivery Rev」2008,60,1000−1017)。他の大変興味深い実施形態において、ゲル形成系は、PEG−PHB−PEGトリブロック共重合体、α−シクロデキストリン、及びPEG被覆された固体ナノサイズ粒子を基としている。そのような処方物において、α−シクロデキストランは、PEG−PHB−PEGトリブロック共重合体のPEGブロックと、PHB中間ブロックとの間で疎水相互作用により結合するPEG被覆された固体ナノサイズ粒子の両方と包接錯体を形成することが可能であり、粒子の結合プロファイルを変化させるα−シクロデキストリン相互作用により、強化された固体ナノサイズ粒子の保持により、強力なヒドロゲルを形成する。
【0090】
処方物は、X線画像診断以外の画像診断法において可視である化合物又はポリマーを更に含んでいてもよい。
【0091】
一実施形態において、処方物は、例えば、ポリビニルピロリドン−ヨウ素(PVP−I)などのヨウ素含有ポリマー、又は以下から選択されたものを更に含む。i)「Polym.Chem」(2010,1,1467−1474),ii)米国特許第3852341号、iii)米国特許第4406878号、iv)米国特許第5198136号、v)「Biomedical polymers and polymers therapeutics」(Ed.Chiellini E.,Sunamoto J.,Migliaresi C.,Ottenbrite R.M.,Cohn D.,New York,Kluwer Academic Publishers,2002,ISBN0−30646472−1,Print)、及びこれらに引用されている文献である。そのようなポリマーは、ゲル化の前にゲル形成成分に添加でき、生体内で造影剤として機能できる。そのようなポリマーは、更に、又はその代わりに、1つ又はそれ以上のゲル形成成分と共有結合する、あるいは本発明の粒子に付着してもよい。
【0092】
特定の一実施形態において、処方物は、SAIB/6,6’−(2,4,6−トリヨードフェノキシ)アセトキシ−イソ酪酸−スクロース(8)/エタノールで構成される。前述の組み合わせにより、X線画像診断法を含む1つ又は複数の画像診断法により、良好な視覚化を与えるために使用可能な非常に高いヨウ素含有量を有する注入可能な安定的な処方物の形成が可能となる。高いヨウ素含有量(高HU造影剤)は、例えばX線透視法などのより感度の低い画像診断技術においてとりわけ重要である。SAIB/6,6’−(2,4,6−トリヨードフェノキシ)アセトキシ−イソ酪酸−スクロース(8)/エタノールと、集合体へ加えられた6,6’−(2,4,6−トリヨードフェノキシ)アセトキシ−イソ酪酸−スクロース(8)で構成される前述の処方物のヨウ素濃度は、ヨウ素などのX線造影剤を与える原子/分子の重量を、原料組成物の全重量で割り、100を掛けたもので定義される重量パーセント(wt%)を変化させることにより、微調整が可能である。6,6’−(2,4,6−トリヨードフェノキシ)アセトキシ−イソ酪酸−スクロース(8)の元素組成比は、C,34.96;H,3.61;I,42.62;O,18.81であり、これに基づき、様々な処方物中の全ヨウ素含有量(wt%)を計算することが可能である。SAIB/6,6’−(2,4,6−トリヨードフェノキシ)アセトキシ−イソ酪酸−スクロース(8)/エタノール(75:5:20)における注入前/後のヨウ素濃度w%は、2.13w%/2.67w%(注入後、処方物からのエタノールの拡散により、ヨウ素のw%が増加する)、SAIB/6,6’−(2,4,6−トリヨードフェノキシ)アセトキシ−イソ酪酸−スクロース(8)/エタノール(70:10:20)におけるにおける注入前/後のヨウ素濃度w%は、4.26w%/5.33w%、SAIB/6,6’−(2,4,6−トリヨードフェノキシ)アセトキシ−イソ酪酸−スクロース(8)/エタノール(60:20:20)における注入前/後のヨウ素濃度w%は、8.52w%/10.66w%、SAIB/6,6’−(2,4,6−トリヨードフェノキシ)アセトキシ−イソ酪酸−スクロース(8)/エタノール(55:25:20)における注入前/後のヨウ素濃度w%は、10.65w%/13.32w%、SAIB/6,6’−(2,4,6−トリヨードフェノキシ)アセトキシ−イソ酪酸−スクロース(8)/エタノール(45:35:20)における注入前/後のヨウ素濃度w%は、14.92w%/18.65w%、SAIB/6,6’−(2,4,6−トリヨードフェノキシ)アセトキシ−イソ酪酸−スクロース(8)/エタノール(30:50:20)における注入前/後のヨウ素濃度w%は、21.30w%/26.64w%となる。
【0093】
処方物のヨウ素濃度の増加により、ハンスフィールドユニット(HU)単位で観察された造影剤と、直接相関関係を持つことが可能である。以下の造影(HU)は、以下の処方物に対して、すべて200mAs,2mmol(col 40×0.6mm)の条件で、異なるエネルギー、80kV、100kV、120kV及び140kVを用いて、観察されたものである。a)SAIB/6,6’−(2,4,6−トリヨードフェノキシ)アセトキシ−イソ酪酸−スクロース(8)/エタノール(70:10:20)(注入前/後のヨウ素濃度は、4.26w%/5.33w%)2500HU(80kV)、1800HU(100kV)、1500HU(120kV)、及び1300HU(140kV)、b)SAIB/6,6’−(2,4,6−トリヨードフェノキシ)アセトキシ−イソ酪酸−スクロース(8)/エタノール(55:25:20)(注入前/後のヨウ素濃度は、10.65w%/13.32w%)5000HU(80kV)、4500HU(100kV)、3500HU(120kV)、及び3000HU(140kV)、c)SAIB/6,6’−(2,4,6−トリヨードフェノキシ)アセトキシ−イソ酪酸−スクロース(8)/エタノール(30:50:20)(注入前/後のヨウ素濃度は、21.30w%/26.64w%)10500HU(80kV)、8800HU(100kV)、6200HU(120kV)、及び5900HU(140kV)。
【0094】
ゲル形成処方物は、プロドラッグ(要するに「ドラッグ」、哺乳動物の生体内作用を調整可能な化学物質とおおむね解釈されている)を更に含む医薬品を含んでいてもよい。医薬活性薬剤の例としては、小型薬剤、プラスミドDNA(例えば、遺伝子治療用)、mRNA、siRNA、糖質、ペプチド、及びタンパク質などがある。医薬品の具体例としては、a)ドキソルビシン、マイトマイシン、パクリタキセル、ナイトロジェンマスタード、エトポシド、カンプトテシン、5−フルオロウラシルなどの化学療法薬、b)ゲムシタビン及びドラニダゾールなどの放射線増感剤、光線力学的療法用のポルフィリン(例えば、ビスダイン)、又は、中性子捕捉療法用の10Bクラスター若しくは157Gd、c)アポトーシス、細胞周期、又は重大なシグナル伝達カスケードを調整するペプチド又はタンパク質、d)メチルプレドニゾロン・ヘミスクシナート、β−メタゾンなどの抗炎症薬、e)ジクロフェナク、プリジノールなどの抗不安筋弛緩剤、f)リドカイン、ブピバカイン、ジブカイン、テトラカイン、プロカインなどの局所麻酔薬、g)オピオイド、非ステロイド系抗炎症剤(NSAIDs)などの鎮痛剤、h)ペンタミジン、アザライドなどの抗菌剤、i)クロルプロマジン、ペルフェナジンなどの抗精神病薬、j)ブジピン、プロジピン、メタスルホン酸ベンズトロピン、トリヘキシフェニジル、L−DOPA、ドーパミンなどの抗パーキンソン薬、k)キナクリン、クロロキン、アモジアキン、クロログアニド、プリマキン、メフロキン、キニーネなどの抗原虫薬、l)ジフェンヒドラミン、プロメタジンなどの抗ヒスタミン薬、m)セロトニン、イミプラミン、アミトリプチリン、ドキセピン、デシプラミンなどの抗うつ薬、n)エピネフリンなどの抗アナフィラキシー薬、o)アトロピン、ジシクロミン、メチキセン、プロパンテリン、フィゾスチグミンなどの抗コリン薬、p)キニジン、プロプラノロール、チモロール、ピンドロールなどの抗不整脈薬、q)プロスタグランジン、トロンボキサン、プロスタサイクリンなどのプロスタノイドなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの薬剤は、単剤として、あるいは2つ又はそれ以上の活性状態にある、あるいはプロドラッグの前述の薬剤の組み合わせとして処方することが可能である。
【0095】
他の抗がん剤の例としては、イリノテカン塩酸塩などのカンプトテシン誘導体、ノギテカン塩酸塩、エキサテカン、RFS−2000、ラルトテカン、BNP−1350、Bay−3833441、PNU−166148、IDEC−132、BN−80915、DB−38、DB−81、DB−90、DB−91、CKD−620、T−0128、ST−1480、ST−1481、DRF−1042、及びDE−310、ドセタキセル水和物などのタキサン誘導体、IND−5109、BMS−184476、BMs−188797、T−3782、TAX−1011、SB−RA−31012、SBT−1514、及びDj−927、イホスファミド、塩酸ニムスチン、カルボクオン、シクロホスファミド、ダカルバジン、チオテパ、ブスルファン、メルファラン、ラニムスチン、エストラムスチンリン酸ナトリウム、6−メルカプトプリンリボシド、エノシタビン、ゲムシタビン塩酸塩、カルモフール、シラタビン、シラタビンオクホスファート、テガフール、ドキシフルリジン、ヒドロキシカルバミド、フルオロウラシル、メトトレキサート、メルカプトプリン、リン酸フルダラビン、アクチノマイシンD、塩酸アクラルビシン、イダルビシン塩酸塩、塩酸エピルビシン、塩酸ダウノルビシン、塩酸ピラルビシン、塩酸ブレオマイシン、ジノスタチンスチマラマー、ネオカルジノスタチン、マイトマイシンC、硫酸ブレオマイシン、硫酸ペプロマイシン、酒石酸ビノレルビン、硫酸ビンクリスチン、硫酸ビンデシン、ビンブラスチン硫酸塩、アムルビシン塩酸塩、ゲフィチニブ、エキセメスタン、カペシタビン、TNP−470、TAk−165、KW−2401、KW−2170、KW−2871、KT−5555、KT−8391、TZT−1027、S−3304、CS−682、YM−511、YM−598、TAT−59、TAs−101、TAs−102、TA−106、FK−228、FK−317、E7070、E7389、KRN−700、KRN−5500、J−10788、HMN−214、SM−11355、ZD−0473などが挙げられる。
【0096】
放射線増感剤の他の例には、マグネシウム5,10,15,20−テトラキス(4−スルホフェニル)−ポルフィン十二水和物、PYROAタンパク質(エメリセラ・ニデュランス)、フォトスキャンIII、ロメフロキサシン、シアメマジン、チアプロフェン酸などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0097】
薬剤は、望まれる効果を達成するために十分な量で、組成物中に含まれる。組成物中に取り込まれる薬剤、又は生理活性薬剤の量は、望まれる放出プロファイル、生体での効果に必要な薬剤濃度、及び薬剤放出の望ましい期間に依存する。生理活性物質は、通常、組成物の全重量に対して重量で約0.5%から約20%の範囲、より一般的には重量で約1%から約15%の間の範囲で、組成物内に存在している。他の好ましい範囲は、重量で約2%から約10%である。成長因子などの高活性の薬剤では、好ましい範囲は重量で1%未満、及び0.0001%未満である。
【0098】
[処方物の粘性]
注入前の処方物の粘度は、20℃において、好ましくは10Pa・s(10,000cP)未満、特に好ましくは2Pa・s(2,000cP)未満である。その代わり、注入前の処方物の粘度は、5℃において、通常は2Pa・s(2,000cP)未満である。
【0099】
処方物の有機ゲル形成系は、注入後、あるいは人体内での条件を模倣した条件下において、37℃で、2Pa・s〜50,000Pa・s(2,000〜50,000,000cP)の範囲の粘度を有するゲルを形成するものが好ましい。更に詳細に、ヒドロゲルの粘度は、例えば約2Pa・s(2,000cP)、約5Pa・s(5,000cP)、約10Pa・s(10,000cP)、約20Pa・s(20,000cP)、約30Pa・s(30,000cP)、約50Pa・s(50,000cP)、約75Pa・s(75,000cP)、約100Pa・s(100,000cP)、約125Pa・s(125,000cP)、約150Pa・s(150,000cP)、約200Pa・s(200,000cP)、約330Pa・s(330,000cP)、約800Pa・s(800,000cP)、約1,000Pa・s(1,000,000cP)、約2,000Pa・s(2,000,000cP)、約5,000Pa・s(5,000,000cP)、約10,000Pa・s(10,000,000cP)、約20,000Pa・s(20,000,000cP)、約30,000Pa・s(30,000,000cP)、約40,000Pa・s(40,000,000cP)、約50,000Pa・s(50,000,000cP)、あるいはこれらの範囲の値であってもよい。注入後(例えば、望ましい場所に存在する時)のヒドロゲルの粘度は、好ましくは、20Pa・s(20,000cP)超、例えば20Pa・sから1,000Pa・s(20,000cPから1,000,000cP)の範囲内である。特に、注入後の処方物は、好ましくは原則的に固体である。
【0100】
[処方物の使用]
本発明は、上記処方物を、哺乳動物の体のコンピュータ断層撮影法(CT)などの特異的組織マーカーとして、X線画像診断法で使用することも可能にする。
【0101】
興味深い一実施形態において、処方物は、人体又は動物体の所定の部位に非経口で投与され、所定の部位を含めた人体又は動物体の少なくとも1部位でのX線画像診断が記録される。
【0102】
[処方物を含むキット]
本発明には、シリンジと、前述のシリンジの開口端部に適用され、体内の注射若しくはこれに限定されるものではないが生検などの外科的医療行為に使用する針と、本明細書で上記に既定の組成物と、を備えるキットを更に含む。一実施形態において、処方物は、内部又は前述のシリンジ内に保持される。
【0103】
ゲル形成システムは、凍結乾燥粉末、懸濁液、あるいは溶液として供されてもよい。異なる成分は、1つ又はそれ以上の個別のバイアル中に供される、又はその内部又は前述のシリンジ中で事前混合されてもよい。代表的な異なる成分とは、ゲル形成系、固体粒子、処方物、及び1つ又はそれ以上の開始剤などであるが、これらに限定されるものではない。
【0104】
シリンジは、これらに限定されるものではないが、単回バレルシリンジ、多連バレルシリンジ(例えば、MEDMIX SYSTEM AG)、又はダブルチャンバーシリンジ(例えば、Debiotech S.A.)などから構成されてもよい。多連バレルシリンジ、ダブルチャンバーシリンジなどは、例えば、1つの成分はゲル形成系と造影剤の混合物、他の成分は開始剤又は例えばゲル形成系がアルギン酸塩を基にしたものである場合Ca2+となる塩懸濁液である、2成分処方物で有用である。
【0105】
いくつかの実施形態において、シリンジの針は、無針生検に適したものであってもよい。そのような実施形態におけるシリンジと針の例は、これらに限定されるものではないが、米国特許第7,871,383号、米国特許出願公開第20040162505号、及びそこで引用されている文献に記載されている。そのようなシリンジ及び針は、組織生検が、画像診断と併用されて、発明の処方物を使用して実施される医療行為において、有利に使用可能である。キットは、少なくとも6ヵ月の品質保持期間を持ち、例えば、室温(一般的に18〜25℃)、又は例えば2〜10℃、例えば約5℃などの低温で保存される場合、少なくとも12ヵ月の品質保持期間を持つことが好ましい。品質保持期間は、例えば、キットを25℃、80%RH、気圧1atmで保存可能で、粘度が初期粘度の±5%以内に維持される期間として決定することが可能である。
【0106】
[動物体又は人体のX線画像を記録する方法]
本発明は、動物体又は人体のX線画像を記録する方法も提供し、この方法は、
(a)X線画像診断により検出可能なヨウ素化化合物などの有機X線造影剤を含む注射の前に、均質液体である有機ゲル形成系を含む処方物を準備するステップと、
(b)処方物を被験体に投与するステップと、
(c)コンピュータ断層撮影(CT)画像又は2次元X線画像などのX線ベースの画像を記録するステップと、含む。
一実施形態において、本方法は、統合放射線治療、及び個体中の標的組織のX線画像診断用の方法であり、ステップ(c)における画像により、標的組織が鮮明となり、
(d)体外照射放射線療法の対象を、標的組織に向けさせるためのc)で得られた標的組織の鮮明度を使用するステップを更に含む。
標的組織とは、通常、望ましくない増殖細胞を含むものである。一実施形態において、望ましくなく増殖する細胞とは、悪性細胞などの腫瘍細胞であり、個体はがんに罹患しているか、あるいはがんのリスクがある。特定の実施形態において、望ましくない細胞の増殖は、肺がん、前立腺がん、頸がん、あるいは卵巣がんと関連する。他の条件の形態、あるいは望ましくない細胞の増殖と関連する病気としては、子宮外(異所性)妊娠、視神経に近接する箇所の良性腫瘍などの脳内の良性腫瘍、例えば視床下部などホルモンを過剰分泌する小腺、神経圧迫と関連する骨と軟骨、移植の前に破壊される可能性のある血球、急性扁桃腺炎又は咽頭炎、閉塞型睡眠時無呼吸、鼻気道の閉塞、いびき、あるいはへんとう周囲膿瘍などの大きな扁桃腺と関連する条件、あるいは過形成性眼疾患又は眼内血管新生性疾患などがある。
【0107】
ゲル形成系が、開始剤の添加によりゲル化するものである実施形態では、投与ステップ(a)又は(b)には、開始剤との混合を更に含んでいてもよい。
【0108】
本発明での処方物は、静脈投与、筋肉内投与、髄腔内投与、皮下投与、静脈内投与、心腔内投与、骨内投与、皮内投与、嚢内投与、くも膜下腔内投与、大脳内投与、経皮投与、経粘膜投与、吸入投与、硬膜外投与、舌下投与、硝子体内投与、経鼻投与、直腸内投与、膣内投与、又は腹腔内投与など、非経口で投与することが可能である。非経口投与は、例えば、点滴又は注射により、投与されてもよい。通常、処方物は、標的組織などの所定箇所、又は所定箇所の近傍に、随意に標的組織の生検と併用して、投与される。
【0109】
ステップ(c)で哺乳動物又は個人に投与される処方物の量は、調査の性質や画像化される場所の大きさを考慮した上で、当業者が決定してもよい。通常、少なくとも100μLの処方物が投与される。様々な特定の実施形態において、この方法での投与量は、200μLから10mLの間、200μLから2mLの間などといった、100μLから20mLの間のなどである。
【0110】
ステップ(c)において、X線画像診断では、所定の箇所を含む哺乳類の体の少なくとも一部が、通常記録される。特定の実施形態において、ステップ(c)及びステップ(d)は、同時に実施されてもよく、放射線治療の画像記録と実施は一体化され、連続的にあるいは同時に実施されてもよい。
【0111】
[組織シーラントとしての処方物の使用]
本発明は、本明細書において上記で定義されるような処方物に、例えば本発明の生検の画像診断治療の併用で作製される針管などの組織シーラントとしての使用法も提供する。
【0112】
組織シーラントは、止血剤、例えば凝固因子、凝固抑制因子、血小板活性化因子、血管収縮剤、及び例えばエピネフリン、アドレノクロム、コラーゲン、トロンビン、フィブリン、フィブリノーゲン、酸化セルロース、及びキトサンなどの線溶阻害物質から選択された物質である止血剤の有効量を含んでいる。
【0113】
[発明の特定の実施形態]
上述のように、本発明は、局所投与用のX線造影用組成物の一実施形態で、X線造影用組成物が造影特性を示し、前述のX線造影用組成物の投与量の少なくとも60%が、X線造影用組成物を人体又は動物体に投与した時の注入点より10cm以内の場所に、24時間超残るものである。これらに限定されるものではないが、経皮注入、スコープ(気管支鏡、胃鏡、又は体内をナビゲートするのに使用される他のフレキシブルワイヤーシステム)の使用、開放創へのスプレーあるいは付着させるもの、頭蓋内注入、内部空気や流体が満たされた器官若しくは空洞(例えば、嚢、胃)、あるいは、人工的に若しくは医学的に作製された内部空洞などの他の組織への付着など、様々な可能な注入形態や注入経路が存在する。
【0114】
更に、これらに限定されるものではないが、様々な投与形態があり、高速注入(「ボーラス投与」)では注入している間に針を引き戻す、所定箇所への低速注入(例えば5秒以内、60秒以内、120秒以内、5分以内、10分以内、又は20分以内)では、パルス型に注入し、針を前方へ押す、及び決められた期間一定の圧力を与えるポンプなどの形態がある。更に、これらに限定されるものではないが、横側に複数のより小さい物体を形成する1つ又はそれ以上の穴の付いた針、フレキシブルな複数のチャンバーシステムなどが使用可能である様々なデバイスなどがある。一実施形態において、本発明はゲル化特性を有し、投与前は液体であり、投与後はゲルへ転換する能力を有している。特定の一実施形態において、本発明はゲル化特性を有し、投与前は均質な液体であり、投与後はゲルへ転換する能力を有している。更に、本発明の一実施形態は、人体又は動物の被験体への注入によりゲル化する均質溶液のX線造影剤組成物の一部である、非コロイド系X線造影剤である。更に他の特定の実施形態では、X線造影剤組成物は、人体又は動物体への投与前は液体であり、人体又は動物体への投与後、粘度が、例えば1超、2超、あるいは5Pa・s以上(1,000超、2,000超、あるいは5,000センチポアズ(cP)超)、など、0.1Pa・s(100センチポアズ(cP))超増加する。本発明の他の特定の実施形態によると、X線造影剤の組成物は、人体又は動物体への投与前は液体であり、人体又は動物体への投与後、粘度が10Pa・s(10,000センチポアズ(cP))超増加する。本発明の他の特定の実施形態では、20℃で10Pa・s(10,000センチポアズ(cP))以下の粘度である。
【0115】
更に、本発明の1つの観点から、X線造影剤組成物は、X線造影剤組成物の一部であるX線造影剤を含み、前述のX線造影剤は有機物である。特定の一実施形態によると、有機物は、造影用「薬剤」で、X線造影剤組成物は、アルギン酸塩とキトサンを含んでいる。他の特定の実施形態において、X線造影剤には、天然高分子、合成高分子、オリゴマー、脂質、単糖類、二糖類、多糖類、ペプチド、あるいはそれらの組み合わせが1つ又はそれ以上含まれ、前述のように、これらは造影用「薬剤」であってもよい。更に本発明の他の特定の実施形態では、X線造影剤には、ヨウ素化ポリマー、オリゴマー、脂質、単糖類、二糖類、多糖類、ペプチド、又は誘導体、あるいはそれらの組み合わせの1つ又はそれ以上が含まれる。更に、X線造影剤の一実施形態は、クロロ酢酸などの無機酸又は塩である。
【0116】
本発明は、一実施形態において、様々な目的の粒子を含んでいてもよい。1つ目の目的は、追加的な造影効果であり、2つ目の目的は薬効を高めることであり、3つ目の目的は、例えば薬物又は他の物質のキャリアとしてである。本発明の特定の一実施形態によると、X線造影剤組成物は、金(Au)を含むナノ粒子を含んでいる。更に別の実施形態において、X線造影剤組成物は、2〜500nmまでのサイズのナノ粒子など、1〜1000nmの範囲のサイズの粒子も含み、特定の一実施形態において、ナノサイズ粒子には、好ましいX線減衰素子として金(Au)が含まれる。更に別の実施形態においては、X線造影剤組成物は、MRI、PET、超音波、蛍光、高周波、可視光の造影剤であってもよいナノサイズ粒子を含む。更に、特定の一実施形態において、ナノ粒子は、MRI若しくはPETの造影剤、又は上記画像診断法の組み合わせである。
【0117】
本発明は、一実施形態において、SH−PNIPAM(MW3500)で被覆された固体粒子を含んでいてもよい。被覆剤としてPNIPAMを選択することにより、様々な興味深い特性を、粒子に導入することが可能である。PNIPAMは、例えばPEGと比べてより疎水的であるが、依然として水溶性であり、有機溶媒へ前抽出せずに、水溶液中での効果的な直接的な粒子被覆が可能である。更に、PNIPAMを被覆剤とすることで、粒子凝集などを誘導することなく、凍結乾燥により粉末状にすることが可能なナノ混合物となり、これは例えばPEGなどの他のポリマーでは不可能なことである。固体粒子を粉末状にすることは、安定性の増加、容易な貯蔵、及び処方工程の容易さの点といった複数の観点から有用である。更に、PNIPAMを固体粒子上の唯一のポリマーとして使用することで、PNIPAMポリマーにより導入された粒子の疎水性の増加によって、粒子が凝集せずに長期間、エタノールなどの有機溶媒中に浮遊することが可能となる。PNIPAMを、処方物中に存在する唯一のポリマーとして、固体粒子と接着させることにより、例えばスクロース酢酸イソブチル(SAIB)といったゲル形成溶液との疎水相互作用が増加し、粒子保持性の非常に高い注入可能な系となる。より親水的な被覆材を粒子に選択することには、処方物の望まれる特性によって有利にも不利にもなるゲル集合体から、固体粒子を切り離すことが含まれる。
【0118】
前述のように、本発明は、ゲル化特性を有していてもよく、ゲル化が、これらに限定されるものではないが、温度、水和、酵素的活性化、イオン濃度、及び/又はpHなどの様々な因子により開始されてもよい。一実施形態において、X線造影剤組成物は、35〜40℃の範囲の温度に応答してゲルを形成する。他の実施形態において、X線造影剤組成物は、水和に応答してゲルを形成する。更に他の実施形態において、X線造影剤組成物は、1mM〜200mMの範囲など、1μM〜500mMの範囲のイオン濃度に応答して、ゲルを形成する。一実施形態において、イオンはカルシウムイオンなどの二価イオンである。一実施形態において、X線造影剤組成物は、6〜8の範囲のpHに応答してゲルを形成する。更に他の実施形態において、X線造影剤組成物は、開始剤と接触してゲルを形成し、この開始剤とは、以下に限定されるものではないが、イオン、あるいは他の分子を架橋する化学的活性物質などの異なる多くのものであってもよい。
【0119】
一実施形態において、本実験のX線造影剤組成物には、放射性化合物、常磁性化合物、蛍光化合物、あるいは強磁性体化合物、あるいはそれらの混合物が含まれてもよい。
【0120】
前述のように、X線造影剤組成物は、これに限定されるものではないが、医薬品などの物質のキャリアとして作用してもよい。この物質は、組成物中あるいはナノ粒子中に存在していてもよく、又はナノ粒子を被覆/ナノ粒子と結合していてもよい。この物質は、添加物であってもよい。物質の例としては、これらに限定されるものではないが、化学療法に適した物質、ゲムシタビン、シスプラチン、ドキソルビシン、ドラニダゾール、ホルモン、又は抗体であってもよい。一実施形態として、X線組成物が、1つ以上の医薬物質を含んでいる。特定の一実施形態において、X線造影剤組成物は、2〜500nmの大きさの範囲のナノ粒子などの、1〜1000nmの大きさの範囲の粒子を含み、粒子は少なくとも1つ以上の医薬物質を含有しているもの。
【0121】
一実施形態において、ポリマーは、ゲルと生物学的環境との間の安定剤として作用するために使用されてもよく、そのため、X線造影剤組成物には、界面活性分子、両親媒性分子、乳化剤などの、人体又は動物体内におけるゲル安定性を増加させる分子も含まれていてよい。そのため、一実施形態において、X線造影剤組成物は、ポリ(エチレングリコール−b−カプロラクトン)(PEG−PCL)、スクロース酢酸イソブチル(SAIB)、ポリ(D,L−乳酸)(PLA)、あるいはポリ(乳酸−グリコール酸共重合体)(PGLA)、あるいはそれらの組み合わせを含んでいる。本発明の一実施形態において、ポリ(D,L−乳酸)(PLA)を、スクロース酢酸イソブチル(SAIB)ゲルに加えて、例えば薬物粒子などの、前述のカプセル化された内容物のバースト放出を低減させている。更に、一実施形態においては、スクロース酢酸イソブチル(SAIB)、あるいはそれらの誘導体を含むX線造影剤組成物であり、本発明の1つの特定の実施例においては、スクロース酢酸イソブチル(SAIB)のヨウ素化誘導体を含むX線造影剤組成物である。更に、本発明の他の特定の実施形態において、X線造影剤組成物には、スクロース酢酸イソブチル(SAIB)中にドープされたスクロース酢酸イソブチル(SAIB)のヨウ素化誘導体が含まれる。これは安定性が評価されており、SAIB中にドープすることの可能な、ヨードSAIB/SAIBの量は、少なくとも50w/w%である。
【0122】
ヨードSAIBは、高いX線コントラストを与える。SAIBがエタノールに高溶解性であり濃厚な油である一方、ヨードSAIB化合物は、エタノールに難溶性であり、白色の固体である。しかしながら、エタノールとSAIBの混合物は、ヨードSAIBを非常によく可溶させることが可能である。このことは、SAIBが、ヨードSAIBの溶解性を高めていることを意味し、これは興味深い特性であり、SAIBにより、高いコントラストのX線マーカーとして機能することが可能な、生分解可能な無定形炭水化物ガラス母材を、(20ゲージよりも細い針で)投与後に、形成する注入可能な溶液がもたらされる。マウスへの注入において、ヨードSAIB/SAIBは、高いコントラストを提供し、望ましい安定特性を有している。更に、ゲルは均質である。本発明の一実施形態において、X線造影剤組成物には、エタノールとスクロース酢酸イソブチル(SAIB)の混合物中で可溶化されたスクロース酢酸イソブチル(SAIB)のヨウ素化誘導体が含まれる。
【0123】
組成物を含有し、更に保持もする1つの方法として、シリンジ内で保持してもよい。このことは、可能な品質保持期間が少なくとも6か月であることを意味している。本発明の一実施形態は、シリンジと、このシリンジの開口端部に適用され、体内への注射若しくはこれに限定されるものではないが生検などの外科的医療行為に使用する針と、本発明による組成物と、を備える、キットである。
【0124】
本発明の一実施形態において、X線造影剤組成物には、スクロース酢酸イソブチル(SAIB)のヨウ素化誘導体が含まれ、医薬物質が含まれて含有されている。他の実施形態において、X線造影剤組成物には、スクロース酢酸イソブチル(SAIB)のヨウ素化誘導体が含まれ、医薬物質を含有する粒子が含有されている。更に他の実施形態において、X線造影剤組成物には、エタノールとスクロース酢酸イソブチル(SAIB)の混合物中に可溶化されたスクロース酢酸イソブチル(SAIB)のヨウ素化誘導体が含まれ、医薬物質が含有されている。更に、本発明の1つ特定の実施形態において、X線造影剤組成物には、エタノールとスクロース酢酸イソブチル(SAIB)の混合物中に可溶化されたスクロース酢酸イソブチル(SAIB)のヨウ素化誘導体が含まれ、医薬物質を含有する粒子が含有されている。
【0125】
本発明の使用目的としては、これらに限定されるものではないが、放射線療法、又は画像誘導放射線療法があり、他の使用法としては、これに限定されるものではないが、画像診断、診断、治療及び/又は放射線療法の品質評価で使用する2次元X線スキャンなどが想定される。本発明は、組織マーカーとして、及び/又は薬剤の制御放出組成物に使用してもよい。
【0126】
一実施形態において、本発明におけるX線造影剤組成物は、投与量が0.01〜5.0mLの投与に使用され、特定の一実施形態において、X線造影剤組成物は、投与量が0.1〜1.0mLの投与に使用される。本発明の一実施形態において、組織シーラントと使用されていてもよい。
【0127】
本発明でのX線造影剤組成物の一実施形態において、X線造影剤組成物は、哺乳動物体の所定の部位に非経口で投与され、所定の部位を含めた哺乳動物体の少なくとも1部位でのX線画像診断が記録される。更に、本発明の一実施形態は、哺乳動物体のX線画像を記録する方法であって、
a.ゲル形成系における有機X線造影剤を含むX線造影剤組成物を与えるステップと、
b.哺乳動物の所定の箇所に、X線造影剤組成物を投与するステップと、
c.所定の箇所を含めて少なくとも体の1箇所のX線ベースの画像を記録するステップと、を含む。
【0128】
他の実施形態において、本発明は、哺乳動物の標的組織の統合放射線療及びX線撮像の方法であって、
a.ゲル形成系における有機X線造影剤を含むX線造影剤組成物を与えるステップと、
b.哺乳動物の所定の標的組織に、X線造影剤組成物を投与するステップと、
c.標的組織を含む体の少なくとも一部分のX線ベースの画像を記録し、その結果、標的組織の鮮明度(鮮明画像)を与えるステップと、
d.体外照射放射線療法の対象を、標的組織に向けさせるためのc)で得られた標的組織の鮮明度を使用するステップと、を含む。
ステップ(c)及び(d)は、同時に実施される可能性があり、実施してもよい。
【0129】
他の実施形態において、本発明は、哺乳動物の標的組織に、医薬品を局所投与させる方法を含み、
a.ゲル形成系における有機X線造影剤を含むX線造影剤組成物を与えるステップと、
b.哺乳動物の所定の標的組織に、X線造影剤組成物を投与するステップと、
c.標的組織を含む体の少なくとも一部分のX線ベースの画像を記録し、その結果、標的組織の解像度を与えるステップと、
d.哺乳動物の所定の標的組織に医薬品を送達させるための医薬品を更に含ませるために、b)中のX線造影剤組成物を使用するステップと、を含む。
【0130】
ステップ(c)及び(d)は、同時に実施される可能性があり、実施してもよい。
本発明の特定の一実施形態において、標的組織には不必要に増殖する細胞が含まれ、他の特定の実施形態において、標的組織には腫瘍細胞が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0131】
図1】熱応答型、イオン応答型、pH応答型、酵素応答型、開始剤応答型、及び水和応答型のゲル形成系を含むゲル形成の様々なメカニズムを示す。
図2】ゾル−ゲル逆転移を示す様々な熱応答型ゲル形成システムを示す。
図3】高い塩濃度でゲルを形成する様々なイオン応答型ゲル形成システムを示す。
図4】特定のpH間隔で、ヒドロゲルを形成する様々なpH応答型ゲル形成システムを示す。
図5】特定の酵素の存在下で、ヒドロゲルを形成する様々な酵素応答型ゲル形成システムを示す。
図6】水和応答型ゲル形成システムとしてのスクロース酢酸イソブチル(SAIB)の使用を示す。エタノールなどの有機溶媒に溶解したSAIBは、細い針を通す注入に適した低粘性を有している。水和により、エタノールは集合体から拡散し、その結果、造影剤のカプセル化に適した高粘性の疎水性ゲルが生じる。
図7】X線減衰用に使用可能な様々なヨードSAIB誘導体を示す。
図8】2−(2,4,6−トリヨードフェノキシ)酢酸(3)の合成用の合成スキームを示す。
図9】6,6−(2,4,6−トリヨードフェノキシ)アセトキシ−イソ酪酸−スクロース(8)の合成用の合成スキームを示す。
図10】10w%、25w%、あるいは50w%のヨウ素化ゲルのCT造影(8)((w%は、原子/分子(この場合は、ヨウ素)の重量を、原料の総重量で割り算し、100を掛けたもの))を示し、MQ−HOを含有する陰性対称を、医療用CTスキャナにより、すべて200mAs、2mm(col 40×0.6mm)の条件での、異なるエネルギー、80kV、100kV、120kV及び140KVを用いて、視覚化した。
図11】AuNP合成と特徴化を示す。A)シーディングアプローチを用いたPNIPAM被覆AuNPsの合成用の合成スキーム、B)UV−VisによるAuNPの特性評価、C)DLSによるAuNPの特性評価、D)ゼータ電位によるAuNPの特性評価。
図12】PNIPAM被覆AuNPsの強化された安定性を示す。A)凍結乾燥、及びエタノール無水物(1.0〜5.0mg Au/mLの範囲のAuNP濃度)中で再懸濁化(保管)前/後 のPNIPAM被覆AuNPsのUV−Vis、B)凍結乾燥、及びエタノール無水物(1.0〜5.0mg Au/mLの範囲のAuNP濃度)中での再懸濁化(保管)前/後のPNIPAM被覆AuNPsのDLS。
図13】SAIB/エタノール/PLA(75:20:5)+3.0w% PNIPAM3500被覆されたAuNPs、又はPEG3000被覆されたAuNPsで構成されるゲルからの、PNIPAM3500被覆されたAuNPs、及びPEG5000被覆されたAuNPsの累積の放出を示す。
図14】生体外における処方物B(SAIB/8/エタノール(55:25:20))(250μL)の超音波診断画像を示す。ゲルは、ガラスビーカーの水中の底に存在する。
図15】健康体のNMRIマウスへ皮下注射によって投与された処方物B(SAIB/8/エタノール(55:25:20))(200μL)のMicroCT画像を示す。A)24時間、p.i.形式で記録されたCT画像、B)48時間、p.i.形式で記録されたCT画像。
図16】A)免疫応答性のマウスに皮下注射されたSAIB/8/エタノール(65:15:20)のMicroCT画像、B)免疫応答性のマウスに皮下注射されたSAIB/8/エタノール(50:30:20)のMicroCT画像、C)皮下部分に存在するSAIB/8/エタノール(50:30:20)を生体外でp.i.形式により14週間視覚化したもの、及びD)免疫応答性のマウスへの注入後14週間で、除去されたSAIB/8/エタノール(50:30:20)で構成されるゲルの注入物。
図17】A)マウスに皮下注射されたSAIB/8/エタノール(50:30:20)の、一連のMicroCT画像。ヨウ素化ゲルのゲル化の動態を監視するために短期間記録されたMicroCTスキャン、B)免疫応答性のマウスの皮下に移植されたSAIB/8/エタノール(50:30:20)(50μL)のゲル化の動態、C)SAIB/8/エタノール(65:15:20)、又はSAIB/8/エタノール(50:30:20)から構成されるヨウ素化ゲルの、皮下移植(50μL)後14週間の分解プロファイル。
図18】前肢の間に肥満細胞腫のあるコンパニオン・ドッグ(アメリカン・スタッフォードシャー・テリア、9歳、34kg)の腫瘍内に投与した処方物B(SAIB/8/エタノール(55:25:20))のCT画像を示す。
【実施例】
【0132】
実施例1 − 生体外における、ヨードSAIBゲル形成及びCT造影
【0133】
[材料]
化学物質は、特に明記しない限り、Sigma−Aldrich Inc.(Brondby、Denmark)より購入した。2−(2,4,6−トリヨードフェノキシ)酢酸(3)、及び6,6’−(2,4,6−トリヨードフェノキシ)アセトキシ−イソ酪酸−スクロース(8)を、図7及び図8で示すように、2ステップ、又は4ステップで合成した。
【0134】
[合成]
2−(2,4,6−トリヨードフェノキシ)酢酸(3)。2,4,6−トリヨードフェノール(1)(10.00g,21.2mmol)を、窒素雰囲気下で、乾燥DMF(75mL)中に溶解させた。この溶液に、ブロモ酢酸tert−ブチル(4.20mL,28.46mmol)、及びKCO(8.79g,63.6mmol)を添加し、室温で一晩撹拌した。減圧で溶媒を除去し、残った黄色のオイルは、EtOAc(150mL)中に再溶解させ、MQ−HO(3×150mL)で洗浄した。有機層を、MgSOで乾燥させ、ろ過し、減圧で濃縮し、淡黄色のオイルであるtert−ブチル2−(2,4,6−トリヨードフェノキシ)アセテート(2)を得て、このオイルは更に精製されることなく、次のステップで使用された。2をCHCl(60mL)中で溶解させ、トリフルオロ酢酸(30mL)を添加した。この混合物を、室温で1時間撹拌し、その後、減圧で溶媒を取り除き、白色の固体を得た。粗生成物を、エタノールから再結晶化し、純度の高い白色の針状の結晶(9.58g,85%(2ステップ))として、2−(2,4,6−トリヨードフェノキシ)酢酸(3)を得た。HーNMR(300MHz,MeOD):δ 6.58(s,2H)、2.95(s,2H)。MALDI−TOF MS(DHB+Na):化学式:CNaO、計算された質量:552.83、観察された質量:553.08(M+Na)。
【0135】
6,6’−TBDPS−スクロース(5)。スクロース(4)(3.00g,8.76mmol)を、窒素雰囲気下で、乾燥ピリジン(54.0mL)中に溶解した。この溶液に、tert−ブチルジフェニルクロロシラン(TBDPS−Cl)(2.51mL,9.64mmol)、及びDMAP(107.5mg,0.88mmol)の触媒量を加え、混合物を70℃で3時間加温した。室温で冷却した後、TBDPS−Cl(2.51mL,9.64mmol)を添加し、混合物を室温で一晩撹拌した。減圧で溶媒を取り除き、粗生成物を、ステップワイズグラジエントを用いたフラッシュクロマトグラフィにより、溶離液として、i)EtOAc、ii)EtOAc/アセトン/水(100:100:1)、iii)EtOAc/アセトン/水(10:10:1)から開始して精製し、6,6’−TBDPS−スクロース(5)を白色固体(4.66g,65%)として得た。R=0.40(EtOAc/アセトン/水(100:100:1))。MALDI−TOF MS(DHB+Na):化学式:C4457NaO11Si、計算された質量:841.08、観察された質量:841.81(M+Na)。
【0136】
6,6’−TBDPS−イソ酪酸−スクロース(6)6,6’−TBDPS−スクロース(5)(3.00g,3.66mmol)を、窒素雰囲気下で、乾燥ピリジン(45.0mL)中に溶解した。この溶液に、イソ酪酸無水物(15.00mL、90.4mmol)を加え、混合物を室温で一晩撹拌した。追加のイソ酪酸無水物(5.0mL、15.06mmol)と4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)(50mg,0.41mmol)の触媒量を加え、混合物を70℃で6時間加温した。溶液を減圧下で除去し、粗生成物を、ヘキサン:EtOAc(5:1)を溶離液として、フラッシュ・クロマトグラフィで精製し、透明な粘性オイル(4.54g,定量)の6,6’−TBDPS−イソ酪酸−スクロース(6)を得た。Rf=0.48(ヘキサン:EtOAc(5:1))。MALDI−TOF MS(DHB+Na):化学式:C6894NaO17Si、計算された質量:1262.62、観察された質量:1262.22(M+Na)。
【0137】
6,6’−OH−イソ酪酸−スクロース(7)6,6’−TBDPS−イソ酪酸−スクロース(6)(217.2g,0.175mmol)を、THF(940mL)中に溶解させ、室温で撹拌した。氷酢酸(42.1g,0.701mol)をフラスコに加え、その後、テトラブチルアンモニウム・フルオリド三水和物(TBAF−3HO)(221.1g,0.701mom)を、THF(692mL)に加える。溶液を室温で15時間撹拌し、その後、ヘプタン(2085mL)、及びリン酸緩衝液(MQ−HO(6544mL)中に、0.5M、2111mL)(HKPO(177.2g)とHKPO(343.3g))、pH7.0)が加えられた。有機層が集められ、更に、リン酸緩衝液(0.5M、2111mL)で、2回洗浄した。粗生成物は、ヘキサン:EtOAc(7:3)からヘキサン:EtOAc(6:4)までのグラジエントを溶離液として用いて、フラッシュクロマトグラフィにより精製され、透明な粘性オイル(106.1g、79%)の6,6’−OH−イソ酪酸−スクロース(7)を得た。R=0.21(ヘキサン::EtOAc(3:1))。H−NMR(300MHz,DMSO−d6):δ5.75(d,J=6.1Hz,1H),5.50(d,J=3.6Hz,1H),5.40(d,J=7.7Hz,1H),5.31(t,J=7.4Hz,1H),5.18(t,J=9.8Hz,1H),4.87(t,J=5.5Hz,1H),4.70(dd,J=10.4,3.7Hz,1H),4.29(d,J=11.9Hz,1H),4.11(dd,J=12.0,5.5Hz,1H),3.69〜3.44(m,4H),2.64〜2.49(m,6H),1.13〜0.96(m,36H)。MALDI−TOF MS(DHB+Na):化学式:C3658NaO17、計算された質量:785.83、観察された質量:785.82(M+Na)。
【0138】
6,6’−(2,4,6−トリヨードフェノキシ)アセトキシ−イソ酪酸−スクロース(8)6,6’−OH−イソ酪酸−スクロース(7)(800mg,1.05mmol)を、窒素雰囲気下で、乾燥DMF(100mL)中に溶解させた。この溶液に、乾燥DMF(10.0mL)内で事前混合された2−(2,4,6−トリヨードフェノキシ)酢酸(3)(1.67g,3.15mmol)、EDC・HCL(622mg,3.15mmol)、及びDMAP(769mg,6.29mmol)を加え、一晩撹拌して反応させた。減圧で溶媒を除去し、残った黄色のオイルは、CHCl(40mL)中に再溶解させ、MQ−HO(3×40mL)で洗浄した。有機層を、MgSOで乾燥させ、ろ過し、減圧で減容し、淡黄色のオイルを得た。最終精製は、ヘキサン:EtOAc(5:1)を溶離液として、フラッシュクロマトグラフィを用いて実施され、白色の泡沫状固体(1.56g,83%)として6,6’−(2,4,6−トリヨードフェノキシ)アセトキシ−イソ酪酸−スクロース(8)を得た。R=0.31(ヘキサン:EtOAc(5:1))。H−NMR(300MHz,MeOD):δ8.05(s,2H),8.04(s,2H),5.68(d,J=3.7Hz,1H),5.56(d,J=7.3Hz,1H),5.54−5.48(m,1H),5.43(t,J=7.2Hz,1H),5.37(t,J=9.8Hz,1H),5.03(dd,J=10.2,3.7Hz,1H),4.70〜4.06(m,12H),2.73〜2.45(m,6H),1.36〜1.04(m,36H)。MALDI−TOF MS(DHB+Na):化学式:C5264NaO21、計算された質量:1809.47、観察された質量:1809.59(M+Na)。
【0139】
[ゲルの調製]
以下の表で示されるように、徐々に増量していった6,6’−(2,4,6−トリヨードフェノキシ)アセトキ−イソ酪酸−スクロースの加わった、3つのスクロース酢酸イソブチル(SAIB)をベースとした処方物(それぞれ600mg)を調製した。
【0140】
【表1】
【0141】
SAIB溶液(90w/w%、エタノール中)を減量し、8及び無水エタノールと混合した(上表を参照)。この混合物を、60分間(30s−1)、ボールミル・ホモジナイザで均質化し、5000rpmの速度で20秒間遠心分離し、処方物から気泡を取り除いた。すべての処方物は、8の濃度の関数として増加する粘度で、25gの皮下注射用針を通して注射可能な粘度の、均質で透明な溶液であった。
【0142】
処方物A〜Cからのヨウ素化ゲル(500μL)は、MQ−HO(5.0mL)を含有するプラスチックバイアルに37℃で注入することにより、調製した。水溶液は3度置換され、ゲルは、医療用CTスキャナでの、CT視覚化及びHU造影測定の前に、37℃で12日間保存された。
【0143】
[生体外でのヨウ素化されたゲルのCT造影]
この3つは、10wt%、25wt%、又は50wt%のヨウ素化ゲル8を形成し、MQ−HOを含有する陰性対称を、医療用CTスキャナにより、すべて200mAs、2mm(col40×0.6mm)の条件での、異なるエネルギー、80kV、100kV、120kV、及び140kVを用いて、視覚化した。エネルギーの関数としてプロットされたハンスフィールドユニット(HU)単位で得られた造影を図10で示し、以下の表にリスト化する。1.300から10.5000HUの範囲の素晴らしい造影が観察され、これは8の重量パーセントw%と適用したエネルギーに依存している。
【0144】
【表2】
【0145】
上記から理解可能なように、本発明の特定の一実施形態から、X線造影剤組成物は、人体又は動物体への投与前は液体であり、注入前のヨウ素濃度が、例えば2〜30w%、3〜25w%、4〜25w%など、1.5w%超のヨウ素濃度を有するものである。
【0146】
例2 − PNIPAM被覆AuNPの合成及び特性
[材料]
化学物質は、特に明記しない限り、Sigma−Aldrich Inc.(Brondby、Denmark)より購入した。HAuCl×3HOは、Wako Chemicals GmbH(Neuss、Germany)より購入し、SH−PNIPAM(MW3500,PDI=1.24)は、Polymer Source(Dorval,Canada)より購入した。
【0147】
[AuNP合成、PNIPAM被覆、及び粒子特性評価]
すべてのガラス器具は、使用前に王水で洗浄した。クエン酸三ナトリウム(10mL,38.8mm)を、HAuCl*3HO(100mL,1.0mm)の還流液中に激しく撹拌しながら素早く注入した。直後に淡黄色からワインレッドへの色の変化が観察され、溶液を室温で冷却した後、還流を15分間継続した。得られたAuNPシーズ(20mL)を、HAuCl*3HO(2500mL,0.296mm)の沸騰液に激しく撹拌しながら加えた。その後、クエン酸三ナトリウム(11.2mL,38.8mm)を加え、混合物を30分間還流し、ワインレッドから紫色に、明らかに色が変化した。追加のクエン酸三ナトリウム(100mL,38.8mm)を安定剤として加え、混合物を更に1時間加温した。AuNP溶液を室温で冷却し、エタノール(5.0mL)中に溶解させたSH−PNIPAM3500(40mg,11.4μmol)(6分子pr/nm AuNP表面積)を加えた。反応混合物を、一晩室温で撹拌した(図11a)。PNIPAM被覆AuNPsを、MQ−HOで広範に洗浄し、遠心分離(4500rpm,45分/サイクル)により、約2.3mL(理論的に65mg AuNP/mL)まで濃縮した。クエン酸塩で安定化されたAuNPシーズ、及び精製された濃縮PNIPAM被覆AuNPは、UV−Vis(図11b)、DLS(図11c)ですべて特性評価され、ゼータ電位(図11d)が測定された。濃縮PNIPAM被覆AuNPsの[金]濃度は、内部標準として0.5pptのIrでスパイクされた5%塩酸内のAu3+標準液(1000mg/mL)を用いて、ICP−MSにより決定した。濃縮PNIPAM被覆AuNPsを、王水中に溶解し、理論的に666ppt Au3+になるまで5%塩酸で希釈した。PNIPAM被覆AuNPsの濃度は、64mg Au/mLと決定した。PNIPAM被覆AuNPsは、次に使用されるまで、5℃で保存された。
【0148】
[PNIPAM被覆AuNPsの凍結乾燥と、有機溶媒中での安定性]
PNIPAM被覆AuNPs(上記の合成を参照)を、MQ−HOで、1.0mgAu/mL、2.5mgAu/mL、又は5.0mgAu/mLに希釈し、液体窒素で2分間、急速凍結させた。サンプルを一晩(p<600×10−2Pa(6.0×10−2mbar))凍結乾燥し、黒色の光沢のある粉末が得られた。凍結乾燥させたPNIPAM被覆AuNPsを、エタノール(0.50mL)中に再溶解し、2、3秒間ボルテックスした。粒子は、数秒以内に、完全に再分散され、黒色溶液が得られた。粒子の形態は、UV−Vis(図12a)、及びDLS(図12b)で評価した。PNIPAM被覆AuNPsにおいて、凝集又は不安定な性質は、凍結乾燥中、エタノール溶解中のいずれにおいても、観察されなかった。凍結乾燥した粉末は、その後、容易に保存でき、容易に減量可能であった。
【0149】
例3 − 粒子の疎水性に基づく、SAIBゲル中の粒子保持の制御
化学物質は、特に明記しない限り、Sigma−Aldrich Inc.(Brondby、Denmark)より購入した。HAuCl×3HOは、Wako Chemicals GmbH(Neuss,Germany)より購入し、SH−PNIPAM(MW3500,PDI=1.24)は、Polymer Source(Dorval,Canada)より購入し、MeO−PEG5000−SHは、Rapp Polymere GmbH(Tuebingen,Germany)より購入した。
【0150】
[AuNP合成、PEG5000被覆、及び粒子特性評価]
ペグ化(PEGylated)されたAuNPs(PEG5000)を、SH−PEG5000を粒子含有ポリマーとして使用して、実施例2のPNIPAM被覆AuNPで示すように、調製した。ペグ化(PEGylated)された粒子は、UV−Vis(λ=539nm)、及びDLS(59.7±0.9nm)により特性評価され、濃度は、ICP−MS(82.6mg Au/mL)により決定された。
【0151】
[体外でのSAIB/エタノール/PLAゲルからのAuNPの放出]
SAIB/8/エタノール(75:20:5)+3.0w% PNIPAM3500、又はPEG5000被覆AuNPで構成される処方物を、以下の表で示すように調製した。
【0152】
【表3】
【0153】
ゲル成分を混合し、ボール・ホモジナイザ(45分、30s−1)で均質化し、澄んだ均質溶液を得た。AuNPs(PNIPAM3500又はPEG5000)を、エタノール無水物中に移し、ゲル溶液と混合し、ボルテックスした。生体外での放出の調査を、処方物(それぞれ3×200μL)を、37℃でMQ−HO(PNIPAM−AuNP用10.0mL)あるいはPBS含有(PEG−AuNP用)ガラスバイアルへ注入することで実施した。小分量(1.0mL)を時間の関数として(経時的に)除去し、水溶液と置換した。放出されたAuNPsの量を、UV−Vis吸収と、対応するAuNPs粒子に基づく標準曲線との相関から、計測した(図13)。ゲルマトリックスとの疎水性相互作用が強められたため、より多くの疎水性のPNIPAM被覆AuNPが、SAIB−非晶質ガラス基質中にカプセル化された状態で残った一方で、カプセル化された親水性のペグ化された(PEGylated)粒子のバースト放出(20%)が、最初の2、3時間観察された。
【0154】
実施例4 − 生体外における、PNIPAM被覆AuNPでのヨードSAIBゲル形成
[材料]
化学物質は、特に明記しない限り、Sigma−Aldrich Inc.(Brondby、Denmark)より購入した。HAuCl×3HOは、Wako Chemicals GmbH(Neuss、Germany)より購入し、SH−PNIPAM(MW3500,PDI=1.24)は、Polymer Source(Dorval,Canada)より購入した。6,6’−(2,4,6−トリヨードフェノキシ)アセトキ−イソ酪酸−スクロース(8)は、例1に記載されているように、合成された。
AuNP合成、PNIPAM被覆、及び粒子特性評価
PNIPAM被覆AuNPsを、実施例2に記載されているように、調製した。
【0155】
[ゲルの調製]
SAIB/8/エタノール(55:25:20)+3.0w% PNIPAM−AuNPで構成される処方物は、以下の表に示されるように、調製された。
【0156】
【表4】
【0157】
SAIB溶液(90w/w%、エタノール中)を減量し、8と混合した(上表を参照)。この混合物を、60分間(30s−1)、ボールミル・ホモジナイザで均質化し、5000rpmの速度で20秒間遠心分離し、処方物から気泡を取り除いた。PNIPAM被覆AuNPs(141μL、64mg AuNP/mL)を、MQ−HO(1659μL)で希釈し、凍結乾燥して、光沢のある粉末を得た。凍結乾燥したPNIPAM被覆AuNPsを、エタノール無水物(52.8μL)中に再分散し、他のゲル成分と混合させた。
【0158】
[生体外での、MQ−HO中でのAuNPの放出]
3.0w%PNIPAM被覆AuNPs(処方物F)の入ったヨウ素化ゲル(200μL)を、MQ−HO(10.0mL)の入ったガラスバイアル中に37℃で注入することで、調製した。小分量(1.0mL)を時間の関数として(経時的に)除去し、フレッシュなMQ−HOと置換した。放出されたAuNPsの量を、UV−Vis吸収と、PNIPAM被覆AuNPsに基づく標準曲線との相関から、計測した。実験を通して、PNIPAM被覆AuNPsの放出は、観察されなかった。処方物Fは、25gの皮下注射針を通して注入可能な均質な黒ずんだ色の溶液であった。
【0159】
実施例5 − 生体外での超音波検査を用いた、ヨードSAIBゲルの視覚化
[材料]
化学物質は、特に明記しない限り、Sigma−Aldrich Inc.(Brondby、Denmark)より購入した。6,6’−(2,4,6−トリヨードフェノキシ)アセトキシ−イソ酪酸−スクロース(8)は、例1に記載されているように、合成された。
【0160】
[ゲルの調製]
SAIB/8/エタノール(55:25:20)(350mg)で構成される処方物は、実施例1(処方物B)で記述されるように、調製された。ヨードSAIBゲル(250μL)は、ガラスビーカー中のMQ−HO(500mL)内に注入され、超音波検査による視覚化の前に、ゲルは5日間置かれた。ヨードSAIBゲルの超音波画像診断は、以下の設定で、超音波スキャナ(BK Medical,Herleve,Denmark)を用いて実施された。Res/Hz 2/21Hz,B Gain83%、ダイナミックレンジ80dB、ノイズ除去10、ノイズ・カットオフ32。ヨードSAIBゲルは、図14に示される超音波診断法を用いて、はっきりと確認できた。
【0161】
実施例6 − 生体内に注入可能なCT造影剤ヨードSAIBゲル − 免疫応答性マウスでの視覚化調査
[材料]
化学物質は、特に明記しない限り、Sigma−Aldrich Inc.(Brondby、Denmark)より購入した。6,6’−(2,4,6−トリヨードフェノキシ)アセトキシ−イソ酪酸−スクロース(8)は、例1に記載されているように、合成された。健康体の雌のNMRI(Naval Medical Research Institute)のマウスを、Taconic(Borup,Denmark)より購入した。
【0162】
[ゲルの調製]
SAIB/8/エタノール(55:25:20)(900mg)で構成される処方物は、例1(処方物B)で記述されるように調製された。
【0163】
[動物の設定]
処方物B(SAIB/8/エタノール(55:25:20))を健康体の雌のNMRIマウス(n=3)に、麻酔下において皮下注射(各200μL)で投与した。
【0164】
[注入可能なヨードSAIBゲルのMicroCT画像診断]
ヨウ素化ゲルは、時間をかけて、コンピュータ断層撮影(CT)により、視覚化された。画像は、MicroCAT(登録商標)II system(Siemens Medical solutions,Malvern,USA)を使用して、得られた。図15A図15B(24時間、及び48時間、p.i.形式で記録されたCT画像)で示されるような、処方物B(SAIB/8/エタノール(55:25:20))を用いて、優れたCT造影が得られた。
【0165】
実施例7 − 生体内に注入可能なCT造影剤としてのヨードSAIBゲル − 免疫応答性マウスでの長期安定性と視覚化の調査
[材料]
化学物質は、特に明記しない限り、Sigma−Aldrich Inc.(Brondby、Denmark)より購入した。6,6’−(2,4,6−トリヨードフェノキシ)アセトキシ−イソ酪酸−スクロース(8)は、例1に記載されているように、合成された。健康体の雌のNMRI(Naval Medical Research Institute)のマウスを、Taconic(Borup,Denmark)より購入した。
【0166】
[ゲルの調製]
実施例1に記載されるように、a)SAIB/8/エタノール(65:15:20)(750mg)及び b)SAIB/8/エタノール(50:30:20)(750mg)で構成される処方物を調製した。
【0167】
[動物の設定]
a)SAIB/8/エタノール(65:15:20)、及びb)SAIB/8/エタノール(50:30:20)の両処方物を、健康体の雌のNMRIマウス(n=2×8マウス)に、麻酔下において皮下注射(各50μL)で投与した。
【0168】
注入可能なヨードSAIBゲルのMicroCT画像診断、及び注入後の視覚化
ヨウ素化ゲルは、時間をかけて、コンピュータ断層撮影(CT)により、視覚化された。画像は、MicroCaT(登録商標)II system(Siemens Medical solutions,Malvern,USA)を使用して、得られた。図16A図Bで示されるように、a)SAIB/8/エタノール(65:15:20)、及びb)SAIB/8/エタノール(50:30:20)の両処方物を使用して、優れたCT造影が得られた。得られたCT造影は、処方物中のヨードSAIB(8)の処方量に対応することが判明した。注入後14週間で、動物は殺処分され、ゲルは皮下部分より除去された(図16C図16D)。ヨウ素化ゲルは、ゲルが破砕されることなく、容易に除去、移動することが可能な、定義の明確なゲルであった。更に、ヨウ素化ゲルはメスを用いて変形できるほど柔らかであった。
【0169】
[注入可能なヨードSAIBゲルのゲル化の動態]
SAIB/8/エタノール(50:30:20)で構成されるヨウ素化ゲルのゲル化の動態を、注入後の最初の2、3時間、複数のmicro−CTスキャンによりモニタした(図17A)。これらの画像に基づき、時間の関数としてのヨウ素化ゲルの全量を、図17Bで示されるように計算した。ヨウ素化ゲルのゲル化は、ゲル集合体からのエタノールの流出によって起き、この流出は、p.i.形式において、最初に2時間以内に起き、ヨウ素化ゲルの粘度の急速な増加と、ゲルの収縮によるCT造影の約35%の増加をもたらす。
【0170】
[14週を超える注入可能なヨードSAIBゲルの分解プロファイル]
a)SAIB/8/エタノール(65:15:20)及びb)SAIB/8/エタノール(50:30:20)で構成されるヨウ素化ゲルの分解プロファイルを、14週間以上、microCTスキャンでモニタした。これらの画像に基づき、時間の関数としてのヨウ素化ゲルの全量を、図17Cで示されるように計算した。2つの処方物間での分解プロファイルの違いは観察されず、両処方物において、定常状態の分解プロファイルが観察された。95%の信頼区間で、−0.09176μL/日の体積損失が、最初のエタノールの流出段階後、両方の処方物で観察された。
【0171】
実施例8 − 生体内に注入可能なCT造影剤としてのヨードSAIBゲル − 自然発生がんのある犬での視覚化調査
[材料]
化学物質は、特に明記しない限り、Sigma−Aldrich Inc.(Brondby、Denmark)より購入した。6,6’−(2,4,6−トリヨードフェノキシ)アセトキシ−イソ酪酸−スクロース(8)は、例1に記載されているように、合成された。
【0172】
[ゲルの調製]
SAIB/8/エタノール(55:25:20)(350mg)で構成される処方物は、実施例1(処方物B)で記述されるように調製された。
【0173】
[動物の設定]
処方物B(SAIB/8/エタノール(55:25:20))を、前肢の間に肥満細胞腫のあるコンパニオン・ドッグ(アメリカン・スタッフォードシャー・テリア、9歳、34kg)に投与した。ヨードSAIBゲルを、25gの針を用いて、腫瘍内投与(500μL)した。
【0174】
[犬の体内での注入可能なヨードSAIBゲルのCT画像診断]
ヨードSAIBゲルは、コンピュータ断層撮影(CT)により視覚化された。画像は、シングルスライスのシーメンスCTスキャナ(Siemens Medical solutions,Malvern,USA)を使用して、得られた。図18(24時間、p.i.形式で記録されたCT画像)で示されるように、処方物B(SAIB/8/エタノール(55:25:20))を用いて、優れたCT造影が得られた。
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