(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6537561
(24)【登録日】2019年6月14日
(45)【発行日】2019年7月3日
(54)【発明の名称】母乳搾乳器
(51)【国際特許分類】
A61M 1/06 20060101AFI20190625BHJP
【FI】
A61M1/06
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-121878(P2017-121878)
(22)【出願日】2017年6月22日
(65)【公開番号】特開2019-5027(P2019-5027A)
(43)【公開日】2019年1月17日
【審査請求日】2018年10月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】508337156
【氏名又は名称】柳瀬ワイチ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090239
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 始
(74)【代理人】
【識別番号】100100859
【弁理士】
【氏名又は名称】有賀 昌也
(72)【発明者】
【氏名】森藤 靖男
【審査官】
近藤 利充
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭56−61931(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0167605(US,A1)
【文献】
特開2010−167052(JP,A)
【文献】
特開平1−190364(JP,A)
【文献】
特開平10−248907(JP,A)
【文献】
実開昭51−76198(JP,U)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0306944(US,A1)
【文献】
米国意匠特許発明第810925(US,S)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳頭部分を覆うとともにその周辺の乳房に密着させることができるカップ体と、カップ体に連通する母乳貯留部を備えた母乳搾乳器であって、
母乳貯留部の内部から外部へ空気が流出するのを許容し、外部から内部へ空気が流入するのを阻止し、かつ押圧すると開いて母乳貯留部に外部から空気が流入し、押圧を解除すると閉じるチェック弁を母乳貯留部に設け、
カップ体と母乳貯留部及びチェック弁を、軟質プラスチックで一体成形したことを特徴とする母乳搾乳器。
【請求項2】
母乳貯留部に縦に延びる2本の薄肉帯を対向する位置に形成したことを特徴とする請求項1に記載
の母乳搾乳器。
【請求項3】
母乳貯留部の外周部の中間位置にリング状の凸条を一体成形したことを特徴とする請求項1に記載
の母乳搾乳器。
【請求項4】
前記チェック弁として、内部の中空部が母乳貯留部に連通する押ボタンを母乳貯留部に凸設し、押ボタンの外周部にスリットを形成し、押ボタンを押圧するとスリットが開き、開いたスリットから押ボタンの内部を通って空気が母乳貯留部に流入するように構成したことを特徴とする請求項1に記載の母乳搾乳器。
【請求項5】
前記母乳貯留部の底部にフランジ部を設けたことを特徴とする請求項1に記載の母乳搾乳器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は母乳搾乳器に関する。
【背景技術】
【0002】
母乳搾乳器の一形式として、特開2004−73469号には、乳頭部分を覆うとともに、その周辺に密着させることができる軟質プラスチック製のカップ体と、カップ体の下端部に取り付けたキャップを備え、キャップを哺乳瓶の開口にネジ付けてカップ体と哺乳瓶を連結する母乳搾乳器が開示されている。
この母乳搾乳器によれば、乳頭を覆うように乳房に密着させたカップ体を手で揉んで母乳を絞り出し、哺乳瓶に貯えることができる。
【0003】
また、特開2010−167052号には、両端を開口に形成し、一端開口にキャップを一体に設けた外筒と、両端を開口に形成し、一端開口をラッパ状に形成した内筒と、チェック弁を備え、外筒の他端開口から内筒を気密に、かつ進退可能に嵌入し、キャップを哺乳瓶の開口にネジ付けて外筒を哺乳瓶に連結するとともに、哺乳瓶の開口にチェック弁をキャップで挟着した母乳搾乳器が開示されている。
この母乳搾乳器によれば、内筒のラッパ状の開口を、乳頭を覆うように乳房に密着させたまま、内筒に対して外筒を後退させると、内筒と外筒で区画される空間の容積が拡大し、チェック弁で哺乳瓶から外部への空気の流出が阻止されているので、内筒の内部が負圧になる。そして、負圧で乳頭から母乳が吸引される。吸引された母乳は外筒の底部に溜まり、外筒を前進させるとチェック弁を通って哺乳瓶に貯えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−73469号公報
【特許文献2】特開2010−167052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した軟質プラスチック製のカップ体を乳房に密着させ、カップ体を手で揉んで母乳を絞り出す母乳搾乳器は、母乳の搾乳効率が低く、所要量の母乳を搾乳するのに時間を要する。
また、内筒と外筒で区画される空間の容積を拡大して生じる負圧で母乳を搾乳する母乳搾乳器は、カップ体を手で揉む母乳搾乳器に比べて搾乳効率が高い。しかし、内筒と、キャップを設けた外筒とチェック弁の3部品、これに加えて哺乳瓶や外筒に内筒を気密に嵌入するためのパッキン等を必要とするなど、部品点数が多く、構造が複雑で、製造コストが高い。
本発明はかかる点に鑑み、負圧で効率的に母乳を搾乳でき、かつ構造がシンプルで製造コストも低い母乳搾乳器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、
乳頭部分を覆うとともにその周辺の乳房に密着させることができるカップ体と、カップ体に連通する母乳貯留部を備えた母乳搾乳器であって、
母乳貯留部の内部から外部へ空気が流出するのを許容し、外部から内部へ空気が流入するのを阻止し、かつ押圧すると開いて母乳貯留部に外部から空気が流入し、押圧を解除すると閉じるチェック弁を母乳貯留部に設け、
カップ体と母乳貯留部及びチェック弁を、軟質プラスチックで一体成形したことを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の母乳搾乳器において、
母乳貯留部に縦に延びる少なくとも2本の薄肉帯を対向する位置に形成したことを特徴とする。
【0008】
そして、好ましくは、母乳貯留部の外周部の中間位置に、リング状の凸条を一体成形する。
また、好ましくは、前記チェック弁として、内部の中空部が母乳貯留部に連通する押ボタンを母乳貯留部に凸設し、押ボタンの外周部にスリットを形成し、押ボタンを押圧するとスリットが開き、開いたスリットから押ボタンの内部を通って空気が母乳貯留部に流入するように構成する。
さらにまた、好ましくは母乳貯留部の底部にフランジ部を設ける。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、カップ体を乳房に密着させ、軟質プラスチック製の母乳貯留部12を手で握って窄めると、母乳貯留部内の空気は圧縮されチェック弁を通して外部に流出する。母乳貯留部を握っている手を緩めると、窄まっていた母乳貯留部が軟質プラスチックの弾力で復元して、母乳貯留部の容積が拡大するので、哺乳貯留部に負圧が発生する。この負圧で乳頭から母乳が吸引され、カップ体を通って母乳貯留部に貯えられる。
かかる一連の動作を繰り返して所要量の母乳を母乳貯留部に貯えることができる。
母乳貯留部が復元した後にチェック弁を押圧して開くと、母乳貯留部に空気が外部から流入するので、負圧が減少し、負圧で乳房に密着していたカップ体を乳房から外すことができる。
しかして、本発明によれば、母乳貯留部に発生する負圧で母乳を吸引するので、効率的に母乳を搾乳できる。
カップ体と母乳貯留部とチェック弁を軟質プラスチックで一体成形したので、構造が極めてシンプルになり、低コストで製造でき、また洗浄作業も容易となる。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、母乳貯留部の外周部に縦に延びる薄肉帯を形成したので、母乳貯留部における薄肉帯の部分はその他の部分に比べ強度が低くなる。強度の低い薄肉帯を対向配置したので、母乳貯留部を手で掴み、薄肉帯より厚手の部分を両側から握り潰すと、薄肉帯が撓んで母乳貯留部が窄む。このように母乳貯留部に強度の低い薄肉帯を設けたので、軽く母乳貯留部を握り潰すことができ、使い勝手が良い。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1実施例に係る母乳搾乳器を示す斜視図である。
【
図2】本発明の第1実施例に係る母乳搾乳器を示す正面図である。
【
図3】本発明の第1実施例に係る母乳搾乳器を示す側面図である。
【
図6】
図2の6−6線から切断した部分拡大断面図である。
【実施例】
【0012】
以下に本発明を説明する。
図1〜
図5には本発明の一実施例に係る母乳搾乳器10が示されている。当該母乳搾乳器10は、乳頭部分を覆うとともに、その周辺の乳房に密着させることができるカップ体11と、カップ体11に連通する樽型の母乳貯留部12を備えている。母乳貯留部12の上部に形成された首部12aには押しボタン式チェック弁が凸設されている。これらカップ体11と母乳貯留部12及び押ボタン式チェック弁13はシリコンゴムのような軟質プラスチックで一体成形されている。
【0013】
図6及び
図7に拡大して図示するように、押ボタン式チェック弁13は、内部が中空で母乳貯留部12に連通している。押ボタン式チェック弁13の外周部は円弧状に薄肉部13aが形成され、その薄肉部13aに左右一対のスリット13bが形成されることにより、内部から外部に向けての空気が一方通行のチェック弁の役目を果たしている。
また押ボタン式チェック弁13を指で押圧すると、スリット13bが開き、開いたスリット13bから押ボタン式チェック弁13の内部を通って空気が外部から母乳貯留部12に流入する。押ボタン式チェック弁13の押圧を解除するとスリット13bが閉じて外部から母乳貯留部12への空気の流入が停止する。
【0014】
母乳貯留部12の外周部の中間位置には母乳貯留部12を補強するためリング状の凸条12bが一体成形されている。母乳貯留部は、凸条12bの部位が最大外径となり、凸条12bから上下方向に窄んだ形状に形成されている。
図4、
図5及び
図8に示すように、母乳貯留部12には2本の薄肉帯12cが対向する位置に形成され、母乳貯留部の他の部分12eの厚みt2は薄肉帯12cの厚みt1より大きく形成されている。薄肉帯12cは母乳貯留部12の首部12aから底部12dにかけて縦に延びている。
また、母乳貯留部12の底部12dは厚底に形成さるとともに、拡開したフランジ部12fを設けている。
【0015】
本実施例にかかる母乳搾乳器10の構造は以上の通りであって、以下にその使用方法を説明する。
カップ体11を乳房に密着させ、軟質プラスチック製の母乳貯留部12を手で握って窄めると、母乳貯留部12内の空気は圧縮され押ボタン式チェック弁13を通して外部に流出する。母乳貯留部12を握っている手を緩めると、窄まっていた母乳貯留部12が軟質プラスチックの弾力で樽型に復元して、母乳貯留部12の容積が拡大するので、哺乳貯留部12に負圧が発生する。この負圧で乳頭から母乳が吸引され、カップ体11を通って母乳貯留部12に貯えられる。
かかる一連の動作を繰り返して所要量の母乳を母乳貯留部12に貯えることができる。
母乳貯留部12が復元した後に押ボタン式チェック弁13を押圧して開くと、母乳貯留部12に空気が外部から流入するので、負圧が減少し、負圧で乳房に密着していたカップ体11を乳房から外すことができる。
【0016】
本実施例によれば、母乳貯留部12に発生する負圧で母乳を吸引するので、効率的に母乳を搾乳で
きる。カップ体11と母乳貯留部12と押ボタン式チェック弁13を軟質プラスチックで一体成形したので、構造が極めてシンプルになり、低コストで製造でき、また洗浄作業も容易となる。
【0017】
母乳貯留部12の外周部にリング状の凸条12bを形成したので、母乳貯留部12の復元力が大きくなる。また、母乳貯留部12に他の部分より強度の低い薄肉帯12cを形成したので、母乳貯留部12を手で掴み、薄肉帯12cより厚手の部分12eを両側から握り潰すと、薄肉帯12cが撓んで母乳貯留部12が窄む。強度の低い薄肉帯12cを設けたので、軽く母乳貯留部12を握り潰すことができるので、使い勝手が良い。
母乳貯留部12の底部12dを厚底に形成するとともに、フランジ部12fを設けたので、母乳の溜まった母乳搾乳器10をテーブル等に置いたとき、安定して立てることができ、倒れ難いので、取り扱いが容易になる。
【符号の説明】
【0018】
10…母乳搾乳器
11…カップ体
12…母乳貯留部
12b…リング状の凸条
12c…薄肉帯
12d…底部
12f…フランジ部
13…押ボタン式チェック弁
13b…スリット