(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6537578
(24)【登録日】2019年6月14日
(45)【発行日】2019年7月3日
(54)【発明の名称】熱伝導性オイル組成物、放熱剤及び電子機器
(51)【国際特許分類】
C09K 5/10 20060101AFI20190625BHJP
H01L 23/36 20060101ALI20190625BHJP
H01L 23/373 20060101ALI20190625BHJP
C08L 91/00 20060101ALI20190625BHJP
C08L 71/02 20060101ALI20190625BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20190625BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20190625BHJP
C09K 5/14 20060101ALI20190625BHJP
【FI】
C09K5/10 E
H01L23/36 D
H01L23/36 M
C08L91/00
C08L71/02
C08K3/22
H05K7/20 F
C09K5/14 E
【請求項の数】9
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2017-218938(P2017-218938)
(22)【出願日】2017年11月14日
(65)【公開番号】特開2019-89924(P2019-89924A)
(43)【公開日】2019年6月13日
【審査請求日】2018年5月31日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000111199
【氏名又は名称】ニホンハンダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091579
【弁理士】
【氏名又は名称】久保田 芳譽
(72)【発明者】
【氏名】滝澤 克則
【審査官】
仁科 努
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−188638(JP,A)
【文献】
特開2014−122307(JP,A)
【文献】
特開2002−201483(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/007804(WO,A1)
【文献】
特開2014−167117(JP,A)
【文献】
特開2003−027080(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 5/10
H01L 23/36
H01L 23/373
H05K 7/20
C09K 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)耐熱性有機オイル、(B)非イオン性界面活性剤および(C)熱伝導性アルミナ微粒子からなる熱伝導性オイル組成物であって、(A)耐熱性有機オイルの含有量が20〜57容量%であり、(C)熱伝導性アルミナ微粒子の含有量が80〜43容量%((A)耐熱性有機オイルと(C)熱伝導性アルミナ微粒子の合計量100容量%)であり、(B)非イオン性界面活性剤の含有量が(C)熱伝導性アルミナ微粒子の含有量の0.02重量%以上、0.2重量%未満であり、(B)非イオン性界面活性剤は、(B-1)HLB値が1.8以上、18以下であるポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコールであり、(C)熱伝導性アルミナ微粒子は平均粒径が0.1μm〜50μmであり、25℃における粘度が50Pa・s以上、450Pa・s未満であり、[150℃における粘度]/[25℃における粘度]が0.31〜20であることを特徴とする、熱伝導性オイル組成物。
【請求項2】
(A)耐熱性有機オイル、(B)非イオン性界面活性剤および(C)熱伝導性アルミナ微粒子からなる熱伝導性オイル組成物であって、(A)耐熱性有機オイルの含有量が20〜57容量%であり、(C)熱伝導性アルミナ微粒子の含有量が80〜43容量%((A)耐熱性有機オイルと(C)熱伝導性アルミナ微粒子の合計量100容量%)であり、(B)非イオン性界面活性剤の含有量が(C)熱伝導性アルミナ微粒子の含有量の0.02重量%以上、0.2重量%未満であり、(B)非イオン性界面活性剤は、(B-1)HLB値が1.8以上、18以下であるポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコールであり、(C)熱伝導性アルミナ微粒子は平均粒径が0.1μm〜50μmであり、25℃における粘度が50Pa・s以上、450Pa・s未満であり、[150℃における粘度]/[25℃における粘度]が0.31〜20であることを特徴とする、放熱剤。
【請求項3】
電子部品・電子装置の発熱部材と冷却部材間の隙間、あるいは、高温部材と放熱部材間の隙間に、(A)耐熱性有機オイル、(B)非イオン性界面活性剤および(C)熱伝導性アルミナ微粒子からなる熱伝導性オイル組成物であって、(A)耐熱性有機オイルの含有量が20〜57容量%であり、(C)熱伝導性アルミナ微粒子の含有量が80〜43容量%((A)耐熱性有機オイルと(C)熱伝導性アルミナ微粒子の合計量100容量%)であり、(B)非イオン性界面活性剤の含有量が(C)熱伝導性アルミナ微粒子の含有量の0.02重量%以上、0.2重量%未満であり、(B)非イオン性界面活性剤は、(B-1)HLB値が1.8以上、18以下であるポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコールであり、(C)熱伝導性アルミナ微粒子は平均粒径が0.1μm〜50μmであり、25℃における粘度が50Pa・s以上、450Pa・s未満であり、[150℃における粘度]/[25℃における粘度]が0.31〜20である放熱剤が挟持されていることを特徴とする、電子機器。
【請求項4】
(A)耐熱性有機オイル、(B)非イオン性界面活性剤および(C)熱伝導性アルミナ微粒子からなる熱伝導性オイル組成物であって、(A)耐熱性有機オイルの含有量が20〜57容量%であり、(C)熱伝導性アルミナ微粒子の含有量が80〜43容量%((A)耐熱性有機オイルと(C)熱伝導性アルミナ微粒子の合計量100容量%)であり、(B)非イオン性界面活性剤の含有量が(C)熱伝導性アルミナ微粒子の含有量の0.02重量%以上、0.2重量%未満であり、(B)非イオン性界面活性剤は、(B-2)HLB値が9.5より大きく、19以下であり、ポリオキシエチレン単位と疎水性基を含む非イオン性界面活性剤であり、(C)熱伝導性アルミナ微粒子は平均粒径が0.1μm〜50μmであり、25℃における粘度が50Pa・s以上、450Pa・s未満であり、[150℃における粘度]/[25℃における粘度]が0.31〜20であることを特徴とする、熱伝導性オイル組成物。
【請求項5】
前記ポリオキシエチレン単位と疎水性基を含む非イオン性界面活性剤(B-2)がポリオキシエチレンモノアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンビスフェノールAエーテル、ポリオキシエチレンビスフェノールFエーテル、ポリオキシエチレンアルキルジエーテル、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンクミルフェニルエーテル、ポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテル、またはポリオキシエチレンベンジルエーテルであることを特徴とする、請求項4に記載の熱伝導性オイル組成物。
【請求項6】
(A)耐熱性有機オイル、(B)非イオン性界面活性剤および(C)熱伝導性アルミナ微粒子からなる熱伝導性オイル組成物であって、(A)耐熱性有機オイルの含有量が20〜57容量%であり、(C)熱伝導性アルミナ微粒子の含有量が80〜43容量%((A)耐熱性有機オイルと(C)熱伝導性アルミナ微粒子の合計量100容量%)であり、(B)非イオン性界面活性剤の含有量が(C)熱伝導性アルミナ微粒子の含有量の0.02重量%以上、0.2重量%未満であり、(B)非イオン性界面活性剤は、(B-2)HLB値が9.5より大きく、19以下であり、ポリオキシエチレン単位と疎水性基を含む非イオン性界面活性剤であり、(C)熱伝導性アルミナ微粒子は平均粒径が0.1μm〜50μmであり、25℃における粘度が50Pa・s以上、450Pa・s未満であり、[150℃における粘度]/[25℃における粘度]が0.31〜20であることを特徴とする、放熱剤。
【請求項7】
前記ポリオキシエチレン単位と疎水性基を含む非イオン性界面活性剤(B-2)がポリオキシエチレンモノアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンビスフェノールAエーテル、ポリオキシエチレンビスフェノールFエーテル、ポリオキシエチレンアルキルジエーテル、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンクミルフェニルエーテル、ポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテル、またはポリオキシエチレンベンジルエーテルであることを特徴とする、請求項6に記載の放熱剤。
【請求項8】
電子部品・電子装置の発熱部材と冷却部材間の隙間、あるいは、高温部材と放熱部材間の隙間に、(A)耐熱性有機オイル、(B)非イオン性界面活性剤および(C)熱伝導性アルミナ微粒子からなる熱伝導性オイル組成物であって、(A)耐熱性有機オイルの含有量が20〜57容量%であり、(C)熱伝導性アルミナ微粒子の含有量が80〜43容量%((A)耐熱性有機オイルと(C)熱伝導性アルミナ微粒子の合計量100容量%)であり、(B)非イオン性界面活性剤の含有量が(C)熱伝導性アルミナ微粒子の含有量の0.02重量%以上、0.2重量%未満であり、(B)非イオン性界面活性剤は、(B-2)HLB値が9.5より大きく、19以下であり、ポリオキシエチレン単位と疎水性基を含む非イオン性界面活性剤であり、(C)熱伝導性アルミナ微粒子は平均粒径が0.1μm〜50μmであり、25℃における粘度が50Pa・s以上、450Pa・s未満であり、[150℃における粘度]/[25℃における粘度]が0.31〜20である放熱剤が挟持されていることを特徴とする、電子機器。
【請求項9】
前記ポリオキシエチレン単位と疎水性基を含む非イオン性界面活性剤(B-2)がポリオキシエチレンモノアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンビスフェノールAエーテル、ポリオキシエチレンビスフェノールFエーテル、ポリオキシエチレンアルキルジエーテル、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンクミルフェニルエーテル、ポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテル、またはポリオキシエチレンベンジルエーテルであることを特徴とする、請求項8に記載の電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導性と耐垂れ落ち性が優れた熱伝導性オイル組成物、熱伝導性と耐垂れ落ち性が優れた放熱剤及び該放熱剤を含む電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
耐熱性オイルと熱伝導性微粒子とを主成分とする非硬化性の熱伝導性オイル組成物は、コンデンサ、抵抗、ダイオード、メモリ、演算素子(CPU)等の電子部品・チップから発生する熱、あるいは、これらの電子部品・チップを有する半導体パッケージから発生する熱、回路基板等の電子装置から発生する熱を放熱部材に効率よく伝える媒体、いわゆる、放熱剤として使用されている。
【0003】
特許文献1(特開2002−201483公報)には、無機粉末、および、鉱油または合成油を含有する基油を含む高熱伝導グリース組成物において、前記無機粉末は平均粒径が異なる2種類の無機粉末を混合したものであり、前記基油は前記無機粉末の重量に対して0.2〜2.0wt%の界面活性剤を含み、前記基油を10〜30容量%、前記無機粉末を70〜90容量%含むことを特徴とする高熱伝導グリース組成物が提案されており、高熱伝導率と良好なディスペンス性が両立していることを目的とし、効果としている。
前記界面活性剤は、室温においても良好なディスペンス性を得るために、HLBが9以下である非イオン系界面活性剤が好ましいとしている。
【0004】
しかしながら、電子部品・電子装置の発熱部材と冷却部材間の隙間、あるいは、高温部材と放熱部材間の隙間に挟持され、挟持部は鉛直方向または略鉛直方向に保持された状態で長期間低温と高温の冷熱サイクルに曝されるような用法に無意識であり、前記高熱伝導グリース組成物は耐垂れ落ち性に優れているとは言えないという問題がある。
【0005】
特許文献2(特許第4899137号公報)には、(A)耐熱性有機オイル、(B)熱伝導性微粒子及び(C)炭素原子数12以上の高級脂肪酸の多価金属塩からなる熱伝導性オイル組成物、特には、成分(A)の含有量が20〜50容量%であり、成分(B)の含有量が80〜50容量%(合計量100容量%)であり、成分(C)の含有量が成分(B)の含有量の0.05〜5.0重量%である前記熱伝導性オイル組成物が開示されている。
【0006】
しかし、多量の熱伝導性微粒子を含有する場合でも粘性がさほど大きくなく、塗布作業性、注入性等の作業性が優れ、優れた熱伝導性と耐熱性を有することを目的とし、効果としており、電子部品・電子装置の発熱部材と冷却部材間の隙間、あるいは、高温部材と放熱部材間の隙間に挟持され、挟持部は鉛直方向または略鉛直方向に保持された状態で長期間低温と高温の冷熱サイクルに曝されるような用法に無意識であり、前記熱伝導性オイル組成物は耐垂れ落ち性に優れているとは言えないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−201483号公報
【特許文献2】特許第4899137号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、上記問題点のない熱伝導性オイル組成物、放熱剤を開発すべく鋭意研究して、電子部品・電子装置の発熱部材と冷却部材間の隙間、あるいは、高温部材と放熱部材間の隙間に挟持され、挟持部は鉛直方向または略鉛直方向に保持された状態で長期間低温と高温の冷熱サイクルに曝されても、実質的に垂れ落ちしない熱伝導性オイル組成物、放熱剤を発明することができた。
本発明の課題は、電子部品・電子装置の発熱部材と冷却部材間の隙間、あるいは、高温部材と放熱部材間の隙間に挟持され、挟持部は鉛直方向または略鉛直方向に保持された状態で長期間低温と高温の冷熱サイクルに曝されても、実質的に垂れ落ちしない熱伝導性オイル組成物、放熱剤を提供することにある。そうした放熱剤を含む電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的達成手段は、
「請求項1記載の、
(A)耐熱性有機オイル、(B)非イオン性界面活性剤および(C)熱伝導性アルミナ微粒子からなる熱伝導性オイル組成物であって、(A)耐熱性有機オイルの含有量が20〜57容量%であり、(C)熱伝導性アルミナ微粒子の含有量が80〜43容量%(
(A)耐熱性有機オイルと(C)熱伝導性アルミナ微粒子の合計量100容量%)であり、(B)非イオン性界面活性剤の含有量が(C)熱伝導性アルミナ微粒子の含有量の0.02重量%以上、0.2重量%未満であり、(B)非イオン性界面活性剤は、(B-1)HLB値が1.8以上、18以下であるポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコー
ルであり、(C)熱伝導性アルミナ微粒子は平均粒径が0.1μm〜50μmであ
り、25℃における粘度が50Pa・s以上、450Pa・s未満であ
り、前記熱伝導性オイル組成物の[150℃における粘度]/[25℃における粘度]が、0.31〜20であることを特徴とする、熱伝導性オイル組成物。」からなる。
【0010】
この目的達成手段は、
「請求項
2記載の、
(A)耐熱性有機オイル、(B)非イオン性界面活性剤および(C)熱伝導性アルミナ微粒子からなる熱伝導性オイル組成物であって、(A)耐熱性有機オイルの含有量が20〜57容量%であり、(C)熱伝導性アルミナ微粒子の含有量が80〜43容量%(
(A)耐熱性有機オイルと(C)熱伝導性アルミナ微粒子の合計量100容量%)であり、(B)非イオン性界面活性剤の含有量が(C)熱伝導性アルミナ微粒子の含有量の0.02重量%以上、0.2重量%未満であり、(B)非イオン性界面活性剤は、(B-1)HLB値が1.8以上、18以下であるポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコー
ルであり、(C)熱伝導性アルミナ微粒子は平均粒径が0.1μm〜50μmであ
り、25℃における粘度が50Pa・s以上、450Pa・s未満であ
り、前記熱伝導性オイル組成物の[150℃における粘度]/[25℃における粘度]が0.31〜20であることを特徴とする、放熱剤。」からなる。
【0011】
この目的達成手段は、
「請求項
3記載の、
電子部品・電子装置の発熱部材と冷却部材間の隙間、あるいは、高温部材と放熱部材間の隙間に、(A)耐熱性有機オイル、(B)非イオン性界面活性剤および(C)熱伝導性アルミナ微粒子からなる熱伝導性オイル組成物であって、(A)耐熱性有機オイルの含有量が20〜57容量%であり、(C)熱伝導性アルミナ微粒子の含有量が80〜43容量%(
(A)耐熱性有機オイルと(C)熱伝導性アルミナ微粒子の合計量100容量%)であり、(B)非イオン性界面活性剤の含有量が(C)熱伝導性アルミナ微粒子の含有量の0.02重量%以上、0.2重量%未満であり、(B)非イオン性界面活性剤は、(B-1)HLB値が1.8以上、18以下であるポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコー
ルであり、(C)熱伝導性アルミナ微粒子は平均粒径が0.1μm〜50μmであり、25℃における粘度が50Pa・s以上、450Pa・s未満であ
り、前記熱伝導性オイル組成物の[150℃における粘度]/[25℃における粘度]が0.31〜20である放熱剤が挟持されていることを特徴とする、電子機器。
請求項4記載の、
(A)耐熱性有機オイル、(B)非イオン性界面活性剤および(C)熱伝導性アルミナ微粒子からなる熱伝導性オイル組成物であって、(A)耐熱性有機オイルの含有量が20〜57容量%であり、(C)熱伝導性アルミナ微粒子の含有量が80〜43容量%((A)耐熱性有機オイルと(C)熱伝導性アルミナ微粒子の合計量100容量%)であり、(B)非イオン性界面活性剤の含有量が(C)熱伝導性アルミナ微粒子の含有量の0.02重量%以上、0.2重量%未満であり、(B)非イオン性界面活性剤は、(B-2)HLB値が9.5より大きく、19以下であり、ポリオキシエチレン単位と疎水性基を含む非イオン性界面活性剤であり、(C)熱伝導性アルミナ微粒子は平均粒径が0.1μm〜50μmであり、25℃における粘度が50Pa・s以上、450Pa・s未満であり、[150℃における粘度]/[25℃における粘度]が0.31〜20であることを特徴とする、熱伝導性オイル組成物。
請求項5記載の、
前記ポリオキシエチレン単位と疎水性基を含む非イオン性界面活性剤(B-2)がポリオキシエチレンモノアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンビスフェノールAエーテル、ポリオキシエチレンビスフェノールFエーテル、ポリオキシエチレンアルキルジエーテル、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンクミルフェニルエーテル、ポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテル、またはポリオキシエチレンベンジルエーテルであることを特徴とする、請求項4に記載の熱伝導性オイル組成物。
請求項6記載の、
(A)耐熱性有機オイル、(B)非イオン性界面活性剤および(C)熱伝導性アルミナ微粒子からなる熱伝導性オイル組成物であって、(A)耐熱性有機オイルの含有量が20〜57容量%であり、(C)熱伝導性アルミナ微粒子の含有量が80〜43容量%((A)耐熱性有機オイルと(C)熱伝導性アルミナ微粒子の合計量100容量%)であり、(B)非イオン性界面活性剤の含有量が(C)熱伝導性アルミナ微粒子の含有量の0.02重量%以上、0.2重量%未満であり、(B)非イオン性界面活性剤は、(B-2)HLB値が9.5より大きく、19以下であり、ポリオキシエチレン単位と疎水性基を含む非イオン性界面活性剤であり、(C)熱伝導性アルミナ微粒子は平均粒径が0.1μm〜50μmであり、25℃における粘度が50Pa・s以上、450Pa・s未満であり、[150℃における粘度]/[25℃における粘度]が、0.31〜20であることを特徴とする、放熱剤。
請求項7記載の、
前記ポリオキシエチレン単位と疎水性基を含む非イオン性界面活性剤(B-2)がポリオキシエチレンモノアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンビスフェノールAエーテル、ポリオキシエチレンビスフェノールFエーテル、ポリオキシエチレンアルキルジエーテル、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンクミルフェニルエーテル、ポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテル、またはポリオキシエチレンベンジルエーテルであることを特徴とする、請求項6に記載の放熱剤。
請求項8記載の、
電子部品・電子装置の発熱部材と冷却部材間の隙間、あるいは、高温部材と放熱部材間の隙間に、(A)耐熱性有機オイル、(B)非イオン性界面活性剤および(C)熱伝導性アルミナ微粒子からなる熱伝導性オイル組成物であって、(A)耐熱性有機オイルの含有量が20〜57容量%であり、(C)熱伝導性アルミナ微粒子の含有量が80〜43容量%((A)耐熱性有機オイルと(C)熱伝導性アルミナ微粒子の合計量100容量%)であり、(B)非イオン性界面活性剤の含有量が(C)熱伝導性アルミナ微粒子の含有量の0.02重量%以上、0.2重量%未満であり、(B)非イオン性界面活性剤は、(B-2)HLB値が9.5より大きく、19以下であり、ポリオキシエチレン単位と疎水性基を含む非イオン性界面活性剤であり、(C)熱伝導性アルミナ微粒子は平均粒径が0.1μm〜50μmであり、25℃における粘度が50Pa・s以上、450Pa・s未満であり、[150℃における粘度]/[25℃における粘度]が0.31〜20である放熱剤が挟持されていることを特徴とする、電子機器。
請求項9記載の、
前記ポリオキシエチレン単位と疎水性基を含む非イオン性界面活性剤(B-2)がポリオキシエチレンモノアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンビスフェノールAエーテル、ポリオキシエチレンビスフェノールFエーテル、ポリオキシエチレンアルキルジエーテル、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンクミルフェニルエーテル、ポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテル、またはポリオキシエチレンベンジルエーテルであることを特徴とする、請求項8に記載の電子機器。」からなる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の熱伝導性オイル組成物は、熱伝導性が優れ、電子部品・電子装置の発熱部材と冷却部材との隙間、あるいは、高温部材と放熱部材との隙間に挟持され、挟持部は鉛直方向または略鉛直方向に保持された状態で長期間低温と高温の冷熱サイクルに曝されても、該熱伝導性オイル組成物が実質的に垂れ落ちしないという効果がある。
【0013】
本発明の放熱剤は、熱伝導性が優れ、電子部品・電子装置の発熱部材と冷却部材との隙間、あるいは、高温部材と放熱部材との隙間に挟持され、挟持部は鉛直方向または略鉛直方向に保持された状態で長期間低温と高温の冷熱サイクルに曝されても、該放熱剤が実質的に垂れ落ちしないという効果がある。
【0014】
本発明の電子機器は、電子部品・電子装置の発熱部材と冷却部材との隙間、あるいは、高温部材と放熱部材との隙間に放熱剤が挟持され、挟持部は鉛直方向または略鉛直方向に保持された状態で長期間低温と高温の冷熱サイクルに曝されても、該放熱剤が実質的に垂れ落ちしないので、長期間、優れた電子機器性能を発揮することができ、信頼性に優れるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の熱伝導性オイル組成物は、(A)耐熱性有機オイル、(B)非イオン性界面活性剤および(C)熱伝導性
アルミナ微粒子からなる熱伝導性オイル組成物であって、(A)耐熱性有機オイルの含有量が20〜57容量%であり、(C)熱伝導性
アルミナ微粒子の含有量が80〜43容量%(合計量100容量%)であり、(B)非イオン性界面活性剤の含有量が(C)熱伝導性
アルミナ微粒子の含有量の0.02重量%以上、0.2重量%未満であり、(B)非イオン性界面活性剤は、(B-1)HLB値が1.8以上、18以下であるポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコール、または、(B-2)HLB値が9.5より大きく、19以下であり、ポリオキシエチレン単位と疎水性基を含む非イオン性界面活性剤であ
り、(C)熱伝導性アルミナ微粒子は平均粒径が0.1μm〜50μmであることを特徴とし、25℃における粘度が50Pa・s以上、450Pa・s未満である。
【0016】
(A)耐熱性有機オイルは、(C)熱伝導性
アルミナ微粒子の分散媒であり、微粒子状の成分(C)を粘稠なペースト状にする作用がある。
【0017】
(A)耐熱性有機オイルは、芳香族炭化水素オイル、フェニルエーテル系オイル、芳香族カルボン酸エステル系オイル、ポリα-オレフィンが例示され、特に、フェニルエーテル系オイル、芳香族カルボン酸エステル系オイル又はポリα-オレフィンであることが望ましい。熱伝導性オイル組成物は、熱源に長時間接して使用されるので、有機オイルは耐熱性を必要とする。耐熱性有機オイルが芳香族炭化水素基を有する場合は、芳香族炭化水素基、特にはフェニル基を通常全有機基の5モル%以上を有し、望ましくは10モル%以上有し、より望ましくは40モル%以上有する。
【0018】
フェニルエーテル系オイルには、フェニルエーテルオイルと、フェニル基にアルキル基が結合したアルキルフェニルエーテルオイルとがある。具体的にはジフェニルエーテル、テトラフェニルエーテル、ペンタフェニルエーテル、アルキルジフェニルエーテル、モノアルキルトリフェニルエーテル、モノアルキルテトラフェニルエーテル、ジアルキルテトラフェニルエーテルが例示される。前記アルキル基としてメチル基、エチル基、ブチル基、へキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基が例示される。
【0019】
フェニルエーテル系オイルは、常温で液状であるものが望ましく、その動粘度は25〜40℃において通常15〜450mm
2/sである。
【0020】
芳香族カルボン酸エステル系オイルには、芳香族カルボン酸のアルコールエステル、芳香族カルボン酸のアラルキルアルコールエステル、芳香族カルボン酸のフェノールエステル、芳香族カルボン酸のアルキルフェノールエステルなどがある。そのための芳香族カルボン酸として安息香酸、アルキルベンゼンカルボン酸、テレフタール酸、トリメリット酸、ナフテン酸などがある。前記アルキル基としてメチル基、エチル基、ブチル基、へキシル基、オクチル基が例示される。アルキルエステルのためのアルコールとして、エチルアルコール、ブチルアルコール、シクロヘキサノール、オクチルアルコールが例示される。アラルキルエステルのためのアラルキルアルコールとしてベンジルアルコールが例示される。アルキルフェニルエステルのためのアルキルフェノールとしてp-メチルフェノール、p-オクチルフェノールが例示される。
芳香族カルボン酸エステル系オイルは、常温で液状であるものが望ましく、その動粘度は25〜40℃において通常15〜450mm
2/sである。
【0021】
ポリα-オレフィンは、α-オレフィンを重合させることにより得られる、炭素−炭素二重結合がα位にあるオイルであり、アルキル基を分枝構造として有しても良い。
ポリα-オレフィンは常温で液状であるものが望ましく、その動粘度は25〜40℃において通常15〜450mm
2/sである。
【0022】
上記耐熱性有機オイルは、2種類以上併用してもよい。
【0023】
熱伝導性オイル組成物における(A)耐熱性有機オイルの含有量が多すぎると、熱伝導性オイル組成物の熱伝導性が低下し、少なすぎると熱伝導性オイル組成物を粘稠なペースト状にすることができないので、(A)耐熱性有機オイルは、熱伝導性オイル組成物の20〜57容量%であり、28〜55容量%であることが望ましく、29〜53容量%がより望ましい。
【0024】
(C)熱伝導性
アルミナ微粒子は、本発明の熱伝導性オイル組成物に熱伝導性ないし放熱性を付与する作用がある。
一般に熱伝導性微粒子
の代表例は、熱伝導性が優れた無機系微粒子や金属系微粒子である。無機系微粒子として、微粒子状のアルミナ、酸化亜鉛、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、シリカ、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化鉄、カーボンブラック、黒鉛、ダイヤモンドが例示される。金属系微粒子として、微粒子状の白金、金、銀、銅、パラジウム、インジウム、アルミニウム、ニッケル、スズ、鉛、亜鉛、ビスマス、鉄、コバルト、及び、これら各金属の合金が例示される。高熱伝導性
ないし放熱性の点でアルミナ、酸化亜鉛、窒化ケイ素、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、炭化ケイ素が好ましい
が、特にアルミナ微粒子が好ましい。
【0025】
(C)熱伝導性
アルミナ微粒子の形状は特に限定されず、球状、楕円球状、角柱状、多面体状、フレーク状、針状、無定形が例示される。その粒径は、肉眼で単一粒子が見えにくい程度であれば特に制限されないが、適度な熱伝導性を有するためには平均粒径が0.1μm〜50μmの範囲内であることが望ましく、0.2μm〜30μmの範囲であることがより望ましい。高い熱伝導率を得るため、2種類以上の異なる平均粒径を有する熱伝導性
アルミナ微粒子を併用しても良い。
なお、平均粒径は、好ましくはメジアン径D50であり、メジアン径D50は、レーザ回折式粒度分布測定装置(例えば、堀場製作所製「LA−300」)により、熱伝導性微粒子の粒度分布を体積基準で測定し、得られた体積基準粒度分布曲線において積算値が50%となるときの粒径値である。
【0026】
(C)熱伝導性微粒子は、多すぎると熱伝導性オイル組成物を粘稠なペースト状にすることができず、少なすぎると熱伝導性オイル組成物の熱伝導性が低下するので、熱伝導性オイル組成物の80〜43容量%((A)耐熱性有機オイルとの合計量は100容量%である)であり、72〜45容量%であることが望ましく、71〜47容量%がより望ましい。
【0027】
(B)非イオン性界面活性剤は、(B-1)HLB値が1.8以上、18以下であるポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコール、および、(B-2)HLB値が9.5より大きく、19以下であり、ポリオキシエチレン単位と疎水性基を含む非イオン性界面活性剤から選択される。
【0028】
(B-1)ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコールは、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの共重合体であり、ポリオキシエチレン単位とポリオキシプロピレン単位とからなり、分子鎖両末端は水酸基である。常温で通常液状であるが、固形状もあり得る。
水酸基とポリオキシエチレン単位が親水性であり、ポリオキシプロピレン単位が疎水性であることにより界面活性を有する。
HLB値が1.8以上、18以下であれば、ポリオキシエチレン単位とポリオキシプロピレン単位のモル比および単位数は特に限定されない。
なお、HLB値の下限は、非イオン性界面活性剤の入手容易性の点で1.8以上である。
【0029】
(B-1)ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコールとして、
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(5E.O.)(30P.O.)(HLB値1.9)、
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(10E.O.)(30P.O.)(HLB値4.9)、
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(25E.O.)(35P.O.)(HLB値8.1)、
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(48E.O.)(35P.O.)(HLB値10.1)、
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(200E.O.)(70P.O.)、
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(300E.O.)(55P.O.)(HLB値15.5)が例示される。ここで、E.O.はオキシエチレン単位を意味し、P.O.はオキシプロピレン単位を意味する。
【0030】
これらのHLB値は、耐垂れ落ち性の点で、9.5より大きく、18以下である。HLB値の下限は、耐垂れ落ち性の点で9.5より大きく、9.6以上が好ましい。HLB値の上限は、非イオン性界面活性剤の入手容易性の点で18以下であり、17以下が好ましい。
【0031】
(B-2)ポリオキシエチレン単位と疎水性基を含む非イオン性界面活性剤は、さらに水酸基を含むことが好ましい。該水酸基はポリオキシエチレン単位の末端に位置することが好ましい。
ここでの疎水性基として、炭素原子数が5〜22のアルキル基、アルキレン基、オキシアルキル基、オキシアルキレン基、アルキルフェニル基、オキシ(アルキルフェニル)基、アラルキル基、オキシアラルキル基が例示されるが、ポリオキシプロピレン単位のみであることはない。
【0032】
成分(B-2)であるポリオキシエチレン単位と疎水性基を含む非イオン性界面活性剤、および、水酸基とポリオキシエチレン単位と疎水性基を含む非イオン性界面活性剤として、ポリオキシエチレンモノアルキルエーテル,ポリオキシエチレンモノアルキルフェニルエーテル,ポリオキシエチレンモノアルキルナフチルエーテル,ポリオキシエチレン化ヒマシ油,ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油,ポリオキシエチレンアルキルアミド,ポリオキシエチレンモノ脂肪酸エステル,ポリオキシエチレンジ脂肪酸エステル,ポリオキシエチレンプロピレングリコール脂肪酸エステル,ポリオキシエチレンソルビタンモノ脂肪酸エステル,ポリオキシエチレンソルビタントリ脂肪酸エステル,ポリオキシエチレンビスフェノールAエーテル、ポリオキシエチレンビスフェノールFエーテル、ポリオキシ
エチレン多環フェニルエーテル、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルジエーテル、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレンクミルフェニルエーテル,ポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテル,ポリオキシエチレンベンジルエーテルが例示される。
【0033】
成分(B-2)は、これらのうちでHLB値が9.5より大きく、19以下であるものである。
HLB値の下限は、耐垂れ落ち性の点で9.5より大きく、9.6以上が好ましい。HLB値の上限は、非イオン性界面活性剤の入手容易性の点で19以下であり、18以下が好ましい。
【0034】
(B)非イオン性界面活性剤の含有量は、(C)熱伝導性
アルミナ微粒子の含有量の0.02重量%以上、0.2重量%未満であり、好ましくは(C)熱伝導性
アルミナ微粒子の含有量の0.05重量%以上、0.19重量%以下である。
0.02重量%未満であると、熱伝導性オイル組成物の耐垂れ落ち性に効果がなく、0.2重量%以上であると、混合物が非常に高粘度となり、固くて不均一な団子状となりかねないからである。
例えば、0.21重量%の場合、非常に粘度が高く(450Pa・s以上)なりかねず、0.3重量%の場合は、不均一な団子状となりかねない。
【0035】
本発明の熱伝導性オイル組成物は、常温において粘稠なペースト状であり、「熱伝導性の粘稠ペースト状組成物」と称することもができる。
粘稠なペースト状は、クリーム状およびオイルコンパウンド状を含むものである。
通常多くの場合、チキソトロピックであり、剪断応力を受け続けると粘度が次第に低下して流動性になり、静止すると粘度が次第に上昇し元の状態になる。
本発明の熱伝導性オイル組成物の熱伝導率は、実施例で規定する測定条件で測定時に、0.5W/m・K以上であることが望ましく、0.9W/m・K以上であることがより望ましい。
【0036】
本発明の熱伝導性オイル組成物は、本発明の目的に反せず、効果を損なわないかぎり、顔料、着色剤、チクソ剤、耐熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、溶剤などを含有してもよい。
【0037】
チクソ剤は、本発明の熱伝導性オイル組成物から基油がブリードアウトすることを低減するための成分である。このようなチクソ剤としてはソルビトール系チクソ剤及びアマイド系チクソ剤が例示される。
【0038】
ソルビトール系チクソ剤としては、ベンジリデンソルビトール類が望ましく、ビス(p−メチルベンジリデン)ソルビトール、ビス(p−エチルベンジリデン)ソルビトール、ジベンジリデンソルビトール、トリベンジリデンソルビトール、炭素原子数3以上のアルキル置換ジベンジリデンソルビトールが例示される。
【0039】
アマイド系チクソ剤としては、ラウリン酸アマイド、ステアリン酸アマイドなどの飽和脂肪酸モノアマイド、オレイン酸アマイドなどの不飽和脂肪酸モノアマイド、N−ラウリルラウリン酸アマイド、N−ステアリルステアリン酸アマイドなどの置換アマイド、メチロールステアリン酸アマイドなどのメチロールアマイド、メチレンビスステアリン酸アマイド、エチレンビスラウリン酸アマイド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アマイドなどの飽和脂肪酸ビスアマイド、メチレンビスオレイン酸アマイドなどの不飽和脂肪酸ビスアマイド、m−キシリレンビスステアリン酸アマイドなどの芳香族ビスアマイド、脂肪酸アマイドのエチレンオキシド付加体、脂肪酸エステルアマイド、脂肪酸エタノールアマイド、N−ブチル−N’−ステアリル尿素などの置換尿素等が例示される。2種類以上のチクソ剤を併用しても良い。
【0040】
ソルビトール系チクソ剤又はアマイド系チクソ剤の配合量は、本発明の熱伝導性オイル組成物から基油である耐熱性有機オイルが経時的にブリードアウトすることを低減するのに十分な量であり、(A)耐熱性有機オイル100重量部当たり0.01〜10重量部であることが望ましく、0.1〜5.0重量部であることがより望ましい。
【0041】
ソルビトール系チクソ剤又はアマイド系チクソ剤が常温で固体の場合は、予め耐熱性有機オイルの全量又は一部の量とともに混合し、その融点以上の温度で溶解してから添加することが望ましい。
【0042】
本発明の熱伝導性オイル組成物は耐熱性及び耐酸化性に優れているが、更に耐熱性、耐酸化性を高めるため、耐熱安定剤、酸化防止剤等を含有してもよい。耐熱安定剤や酸化防止剤の種類は特に限定されず、芳香族カルボン酸金属塩、アルキルフェノレート、マレイン酸、マレイン酸のモノエステル金属塩、アルキルメルカプタン、メルカプト酸、メルカプト酸のエステル金属塩、無機酸金属塩、金属水酸化物、2,6−ジターシャルブチル−4−メチルフェノール、n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジターシャルブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−ターシャルブチルフェノール)等のヒンダードフェノール系、アミン系が例示される。
【0043】
これらの耐熱安定剤、酸化防止剤の配合量は、(A)耐熱性有機オイル100重量部当たり0.01〜20重量部であることが望ましく、0.05〜10重量部であることがより望ましく、0.10〜7.5重量部であることがさらに望ましい。
【0044】
本発明の熱伝導性オイル組成物は、ミキサー中で、(A)耐熱性有機オイル(B)非イオン性界面活性剤、および、(C)熱伝導性
アルミナ微粒子の各所定量を均一になるまで混合することにより容易に製造することができる。大気雰囲気下で常温混合、加熱混合のいずれでもよく、減圧下で混合しても良い。その際、(B)非イオン性界面活性剤が固体、または、ワックス状である場合は、加熱時の温度は40℃〜100℃であることが好ましい。
なお、(A)成分、(B)成分、(C)成分は、市販品や購入品をそのまま用いても良いが、(A)成分は予め熱処理等をしても良く、(C)成分は予め、粉砕、分級、脱気、脱水、熱処理等をしても良い。
【0045】
(A)耐熱性有機オイル、(B)非イオン性界面活性剤、および、(C)熱伝導性
アルミナ微粒子の各所定量の全量をミキサーに投入して混合してもよいが、(B)非イオン性界面活性剤と(C)熱伝導性
アルミナ微粒子を混合し、ついでその混合物と(A)耐熱性有機オイルと混合しても良い。また、(B)非イオン性界面活性剤を有機溶剤に溶解し、その溶液と(C)熱伝導性
アルミナ微粒子とを混合してから有機溶剤を除去し、(A)耐熱性有機オイルと混合しても良い。また、(B)非イオン性界面活性剤を有機溶剤に溶解して(C)熱伝導性
アルミナ微粒子と混合し、その混合物と(A)耐熱性有機オイルとを混合してから有機溶剤を除去しても良い。また、(A)耐熱性有機オイルと(B)非イオン性界面活性剤を常温下もしくは加熱して混合し、その混合物と(C)熱伝導性
アルミナ微粒子とを混合しても良い。
いずれの場合も、混合後に脱泡することが好ましい。
混合後に3本ロールにかけて均一性を向上させてもよい。
【0046】
混合・撹拌に用いるミキサーは、(A)成分、(B)成分および(C)成分を均一に混合・撹拌できるものであれば特に限定されないが、撹拌槽と、一軸あるいは多軸の撹拌羽根を備えたものが好ましい。撹拌羽根の数は特に限定されないが、高い混練作用を得るためには二つ以上が好ましい。
混合物の均一性の点で、とりわけ、プラネタリーミキサーおよび遊星撹拌装置が好ましい。
プラネタリーミキサーは、互いに自転と公転を行う2軸の撹拌羽根を使用して、撹拌槽中の混練物を撹拌、混練する構造を有しており、撹拌槽中に撹拌羽根の到達しないデッドスペースが少ない。撹拌羽根の回転数と回転速度は、適宜選択すればよい。
遊星撹拌装置は、材料を入れた容器を高速で公転させながら、同時に公転軌道上で自転させることにより、材料の均一な撹拌を行うものである。
【0047】
本発明の熱伝導性オイル組成物は、常温において粘稠なペースト状である。その粘度(25℃)は、実施例で規定する測定条件で測定時に、好ましくは、50Pa・s〜450Pa・sであり、より好ましくは、100Pa・s〜350Pa・sである。
【0048】
本発明の熱伝導性オイル組成物の粘度は温度依存性があり、[150℃における粘度]/[25℃における粘度]が0.31〜20であり、好ましくは0.32〜10である。[150℃における粘度]/[25℃における粘度]が0.31を下回ると、耐垂れ落ち性が不良となる。
【0049】
本発明の熱伝導性オイル組成物は、電気絶縁性
である。体積抵抗率が1×10
10Ω・cm以上であることが望ましい。
【0050】
本発明の熱伝導性オイル組成物は、プラスチック製容器、金属缶、ガラス瓶、チューブ、カートリッジなどに入れて保管することが望ましい。保存安定性を向上する目的で冷蔵保管をしても良く、保管温度として−5℃以下が例示される。
【0051】
本発明の熱伝導性オイル組成物は、発熱部材・発熱機器や高温部材・高温機器の放熱用に好適である。特には、電子部品・電子装置の発熱部材と冷却部材との隙間もしくは間隙、あるいは、高温部材(例えば、半導体パッケージ、回路基板)と放熱部材(例えば、放熱フィン)との隙間もしくは間隙に挟持された形、あるいは介在する形で使用される。これら発熱部材と冷却部材や、高温部材と放熱部材は、摺動部のように相互に繰り返しずれ動くものではない。
本発明の熱伝導性オイル組成物を上記部材や隙間もしくは間隙に適用する方法は特に制限されず、注入、ディスペンス塗布、印刷塗布、スプレー塗布、ローラー塗布、はけ塗りが例示される。
【0052】
本発明の放熱剤は、(A)耐熱性有機オイル、(B)非イオン性界面活性剤および(C)熱伝導性
アルミナ微粒子からなる熱伝導性オイル組成物であって、(A)耐熱性有機オイルの含有量が20〜57容量%であり、(C)熱伝導性
アルミナ微粒子の含有量が80〜43容量%(合計量100容量%)であり、(B)非イオン性界面活性剤の含有量が(C)熱伝導性
アルミナ微粒子の含有量の0.02重量%以上、0.2重量%未満であり、(B)非イオン性界面活性剤は、(B-1)HLB値が1.8以上、18以下であるポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコール、または、(B-2)HLB値が9.5より大きく、19以下であり、ポリオキシエチレン単位と疎水性基を含む非イオン性界面活性剤であることを特徴とする。
各成分、その配合比、含有量及び添加剤は、熱伝導性オイル組成物について既に説明したとおりである。放熱剤の性状、特性、製造方法、保管方法、使用方法、使用箇所などについては、熱伝導性オイル組成物のそれらと同様である。
【0053】
本発明の電子機器は、電子部品・電子装置の発熱部材と冷却部材との隙間もしくは間隙、あるいは、高温部材と放熱部材との隙間もしくは間隙に、(A)耐熱性有機オイル、(B)非イオン性界面活性剤および(C)熱伝導性
アルミナ微粒子からなる熱伝導性オイル組成物であって、(A)耐熱性有機オイルの含有量が20〜57容量%であり、(C)熱伝導性
アルミナ微粒子の含有量が80〜43容量%(合計量100容量%)であり、(B)非イオン性界面活性剤の含有量が(C)熱伝導性
アルミナ微粒子の含有量の0.02重量%以上、0.2重量%未満であり、(B)非イオン性界面活性剤は、(B-1)HLB値が1.8以上、18以下であるポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレングリコール、または、(B-2)HLB値が9.5より大きく、19以下であり、ポリオキシエチレン単位と疎水性基を含む非イオン性界面活性剤である、放熱剤が挟持され、あるいは介在していることを特徴とする。該ポリオキシエチレン単位と疎水性基を含む非イオン性界面活性剤(B-2)はさらに水酸基を含むことが好ましい。
【0054】
電子部品・電子装置の発熱部材と冷却部材との隙間もしくは間隙、あるいは、高温部材と放熱部材との隙間もしくは間隙に挟持される熱伝導性オイル組成物、放熱剤の厚さは、50μmより小さいとその押圧の僅かなズレにより熱された電子部品と放熱部材との間に隙間が生じてしまう恐れがあり、500μmより大きいとその厚みのため熱抵抗が大きくなり放熱効果が悪くなることから、50〜500μmの範囲であることが好ましく、100〜200μmとすることがより好ましい。
【0055】
電子部品としてコンデンサ、抵抗、ダイオード、メモリ、演算素子(CPU)、液晶テレビやプラズマテレビのドライバーIC、MPUチップセット、半導体パワーモジュール、産業機器・ロボットなどの制御モジュール、スイッチング電源、自動車用電装品、オーディオアンプが例示される。
電子機器として、液晶テレビ、プラズマテレビ、有機ELテレビ、プロジェクター、パソコン、ゲーム機、DVD、ハードディスク、冷蔵庫、エアコン、IHヒーター、ヒートポンプ、ハイブリッドカー、スーパーコンピュータ、電車、航空宇宙機器、ロボット、その他の電流・電圧制御機器、及びこれらの構成部品が例示される。
【実施例】
【0056】
実施例と比較例で用いた成分は下記のとおりである。
(A)耐熱性有機オイル
【表1】
注:モレスコハイルーブは商標である。
【0057】
(B)非イオン性界面活性剤
【表2】
注:ニューポール、EMALEX、NIKKOL、DECAGLYN、エマルゲン、エヌジェボン、イオネットは商標である。
【0058】
(C)熱伝導性微粒子
【表3】
注:D50(メジアン径)は、レーザ回折式粒度分布測定装置(例えば、堀場製作所製「LA−300」)により、アルミナ粒子または酸化亜鉛粒子の粒度分布を体積基準で測定し、得られた体積基準粒度分布曲線において積算値が50%となるときの粒径値である。
アドマファインとLPZINCは商標である。
【0059】
実施例と比較例中の熱伝導性オイル組成物および放熱剤の特性は、下記の試験方法により測定した。測定温度は、特に断らない限り、25℃である。「部」とあるのは「重量部」である。加熱下混合時の温度はおおよそ40℃〜100℃の範囲内の温度である。加熱下混合時間は、混合物が均一なれば限定されないが、例えば10分〜60分である。
【0060】
[組成物の粘度の測定]
粘度計:東機産業株式会社製のE型粘度計(コーンプレート型)、TV−20
ロータ:3°×R9.7を装着
ロータの回転数:3rpm
【0061】
[粘度-温度依存性]
粘度計:東機産業株式会社製のB型粘度計(単一円筒型)、RB−80U
ロータ:少量用STロータを装着。
ロータの回転数:0.5rpm
25℃と150℃で粘度を測定し、[150℃での粘度/25℃での粘度]を算出して粘度-温度依存性とした。
【0062】
[垂れ落ち試験]
垂れ落ち性は、平坦な50mm平方のアルミニウム板と平坦な50mm平方のガラス板の間(間隙0.1mm)に所定量の熱伝導性オイル組成物(放熱剤)を充填した試験片を作製して、これを鉛直に立てた状態で−40℃/30分〜+150℃/30分を1サイクルとする冷熱衝撃試験機に設置し、100サイクル後に試験片を取り出して、該間隙に残存している熱伝導性オイル組成物(放熱剤)の重量を測定し、重量減少率を算出した。
【0063】
[熱伝導率]
10mm×10mm角、厚さ0.8mmのシリコンウエファー間に厚さが40μm又は80μmになるよう熱伝導性オイル組成物を挟みこんで試験体とした。各試験体について熱抵抗(単位;℃/W)を測定し、各厚さ(単位;m)と熱抵抗の関係をグラフにプロットして直線を引き、その傾きを熱伝導率(単位;W/mK)として算出した。
【0064】
[実施例1]
成分(A)として(a-1)株式会社MORESCO製のモレスコハイルーブLB−100(アルキルジフェニルエーテル、液体)15.85部、成分(B)として(b-1)三洋化成工業株式会社製ニューポールPE−61(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(5E.O.)(30P.O.)、液体、HLB1.9)0.15部、成分(C)として(c-1)株式会社アドマテックス製アドマファインアルミナ(真球状、D50:5.5μmのアルミナ粉)と(c-2)株式会社アドマテックス製アドマファインAO−502(真球状、D50:0.7μmのアルミナ粉)の75部対25部の混合物84.00部を市販のプラネタリーミキサー(以下、「プラネタリーミキサー」と記載する)に投入して、均一になるまで混合した。生成した粘稠なペースト状熱伝導性オイル組成物(以下、「粘稠なペースト状組成物」と記載する)を脱泡して、25℃における粘度と150℃における粘度を測定し、垂れ落ち試験を行なった。測定結果と試験結果を表4に示した。
【0065】
[実施例2]
実施例1において、(b-1)ニューポールPE−61(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(5E.O.)(30P.O.)、液体、HLB1.9)の代わりに、(b-2)三洋化成工業株式会社製ニューポールPE−62(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(10E.O.)(30P.O.)、液体、HLB4.9)を使用した以外は同一条件で粘稠なペースト状組成物を調製して、25℃における粘度と150℃における粘度を測定し、垂れ落ち試験を行なった。測定結果と試験結果を表4に示した。
【0066】
[実施例3]
実施例1において、(b-1)ニューポールPE−61(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(5E.O.)(30P.O.)、液体、HLB1.9)の代わりに、(b-3)三洋化成工業株式会社製ニューポールPE−64(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(25E.O.)(30P.O.)、液体、HLB8.1)を使用した以外は同一条件で粘稠なペースト状組成物を調製して、25℃における粘度と150℃における粘度を測定し、垂れ落ち試験を行なった。測定結果と試験結果を表4に示した。
【0067】
[実施例4]
実施例1において、(b-1)ニューポールPE−61(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(5E.O.)(30P.O.)、液体、HLB1.9)の代わりに、(b-3)三洋化成工業株式会社製ニューポールPE−64(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(25E.O.)(30P.O.)、液体、HLB8.1)と(b-4)三洋化成工業株式会社製ニューポールPE−75(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(48E.O.)(35P.O.)、液体、HLB10.1)の22部対78部の混合物(液体、HLB9.7)を使用した以外は同一条件で粘稠なペースト状組成物を調製して、25℃における粘度と150℃における粘度を測定し、垂れ落ち試験を行なった。測定結果と試験結果を表4に示した。
【0068】
[実施例5]
実施例1において、(b-1)ニューポールPE−61(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(5E.O.)(30P.O.)、液体、HLB1.9)の代わりに、(b-4)三洋化成工業株式会社製ニューポールPE−75(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(48E.O.)(35P.O.)、液体、HLB10.1)を使用した以外は同一条件で粘稠なペースト状組成物を調製して、25℃における粘度と150℃における粘度を測定し、垂れ落ち試験を行なった。測定結果と試験結果を表5に示した。
【0069】
[実施例6]
成分(A)として(a-1)株式会社MORESCO製のモレスコハイルーブLB−100(アルキルジフェニルエーテル、液体)15.95部、成分(B)として(b-4)三洋化成工業株式会社製ニューポールPE−108(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(300E.O.)(55P.O.)、固体、HLB15.5)0.05部、成分(C)として(c-1)株式会社アドマテックス製アドマファインアルミナ(真球状、D50:5.5μmのアルミナ粉)と(c-2)株式会社アドマテックス製アドマファインAO−502(真球状、D50:0.7μmのアルミナ粉)の75部対25部の混合物84.00部をプラネタリーミキサーに投入して、加熱下均一になるまで混合した。生成した粘稠なペースト状組成物を脱泡して、25℃における粘度と150℃における粘度を測定し、垂れ落ち試験を行なった。測定結果と試験結果を表5に示した。
【0070】
[実施例7]
実施例6において、(a-1)モレスコハイルーブLB−100(アルキルジフェニルエーテル)15.95部の代わりに15.85部を使用し、(b-4)ニューポールPE−108(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(300E.O.)(55P.O.)、固体、HLB15.5)0.05部の代わりに、0.15部を使用した以外は同一条件で粘稠なペースト状組成物を調製して、25℃における粘度と150℃における粘度を測定し、垂れ落ち試験を行なった。測定結果と試験結果を表5に示した。
【0071】
[実施例8]
実施例1において、(b-1)ニューポールPE−61(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(5E.O.)(30P.O.)、液体、HLB1.9)の代わりに、(b-8)三洋化成工業株式会社製ニューポールBPE−100(ポリオキシエチレンビスフェノールAエーテル、液体、HLB13.2)を使用した以外は同一条件で粘稠なペースト状組成物を調製して、25℃における粘度と150℃における粘度を測定し、垂れ落ち試験を行なった。測定結果と試験結果を表5に示した。
【0072】
[実施例9]
実施例1において、(b-1)ニューポールPE−61(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(5E.O.)(30P.O.)、液体、HLB1.9)の代わりに、
(b-10)花王株式会社製エマルゲン10
5(ポリオキシエチレンラウリルエーテル(3.8E.O.)(液体、HLB9.7)を使用した以外は同一条件で粘稠なペースト状組成物を調製して、25℃における粘度と150℃における粘度を測定し、垂れ落ち試験を行なった。測定結果と試験結果を表6に示した。
【0073】
[実施例10]
実施例7において、(b-4)ニューポールPE−108(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(300E.O.)(55P.O.)、固体、HLB15.5)の代わりに、(b-11)日本エマルジョン株式会社製EMALEX−750(ポリオキシエチレンラウリルエーテル(50E.O.)(ワックス状、HLB18.4)を使用した以外は同一条件で粘稠なペースト状組成物を調製して、25℃における粘度と150℃における粘度を測定し、垂れ落ち試験を行なった。測定結果と試験結果を表6に示した。
【0074】
[実施例11]
実施例7において、(b-4)ニューポールPE−108(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(300E.O.)(55P.O.)、固体、HLB15.5)の代わりに、(b-12)新日本理化株式会社製エヌジェボンECS−600(ポリオキシエチレンセチルステアリルジエーテル(60E.O.)、固体、HLB16.8)を使用した以外は同一条件で粘稠なペースト状組成物を調製して、25℃における粘度と150℃における粘度を測定し、垂れ落ち試験を行なった。測定結果と試験結果を表6に示した。
【0075】
[実施例12]
実施例1において、(b-1)ニューポールPE−61(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(5E.O.)(30P.O.)、液体、HLB1.9)の代わりに、(b-13)三洋化成工業株式会社製イオネットT−20C(ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(20E.O.)、液体、HLB16.7)を使用した以外は同一条件で粘稠なペースト状組成物を調製して、25℃における粘度と150℃における粘度を測定し、垂れ落ち試験を行なった。測定結果と試験結果を表6に示した。
【0076】
[実施例13]
実施例1において、(a-1)モレスコハイルーブLB−100(アルキルジフェニルエーテル、液体)の代わりに,(a-2)出光興産株式会社製PA05010(ポリα−オレフィン、液体)を使用し,(b-1)ニューポールPE−61(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(5E.O.)(30P.O.)、液体、HLB1.9)の代わりに、(b-8)三洋化成工業株式会社製ニューポールBPE−100(ポリオキシエチレンビスフェノールAエーテル、液体、HLB13.2)を使用した以外は同一条件で粘稠なペースト状組成物を調製して、25℃における粘度と150℃における粘度を測定し、垂れ落ち試験を行なった。測定結果と試験結果を表7に示した。
【0077】
[実施例14]
成分(A)として(a-1)株式会社MORESCO製のモレスコハイルーブLB−100(アルキルジフェニルエーテル、液体)17.85部、成分(B)として(b-5)三洋化成工業株式会社製ニューポールPE−108(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(300E.O.)(55P.O.)、固体、HLB15.5)0.15部、成分(C)として(c-2)株式会社アドマテックス製アドマファインAO-502(真球状、D50:0.7μmのアルミナ粉)82.00部をプラネタリーミキサーに投入して、加熱下均一になるまで混合した。生成した粘稠なペースト状組成物を脱泡して、25℃における粘度と150℃における粘度を測定し、垂れ落ち試験を行なった。測定結果と試験結果を表7に示した。
【0078】
[参考例]
成分(A)として(a-1)株式会社MORESCO製のモレスコハイルーブLB−100(アルキルジフェニルエーテル、液体)11.69部、成分(B)として(b-5)三洋化成工業株式会社製ニューポールPE−108(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(300E.O.)(55P.O.)、固体、HLB15.5)0.11部、成分(C)として(c-3)堺化学工業株式会社製LPZINC−5(多面体状、D50:5μmの酸化亜鉛粉)と(c-4)堺化学工業株式会社製酸化亜鉛粉(JIS 1種)(多面体状、D50:0.7μmの酸化亜鉛粉)の75部対25部の混合物88.20部をプラネタリーミキサーに投入して、加熱下均一になるまで混合した。生成した粘稠なペースト状組成物を脱泡して、25℃における粘度と150℃における粘度を測定し、垂れ落ち試験を行なった。測定結果と試験結果を表7に示した。
【0079】
[実施例16]
成分(A)として(a-1)株式会社MORESCO製のモレスコハイルーブLB−100(アルキルジフェニルエーテル、液体)9.80部とオレイン酸亜鉛(固体)0.10部をプラネタリーミキサーに投入し、加熱下混合してオレイン酸亜鉛をモレスコハイルーブLB−100に溶解した。次いで、成分(B)として(b-5)三洋化成工業株式会社製ニューポールPE−108(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(300E.O.)(55P.O.)、固体、HLB15.5)0.10部、成分(C)として(c-1)株式会社アドマテックス製アドマファインアルミナ(真球状、D50:5.5μmのアルミナ粉)と(c-2)株式会社アドマテックス製アドマファインAO−502(真球状、D50:0.7μmのアルミナ粉)の75部対25部の混合物90.00部を前記プラネタリーミキサーに投入して、加熱下均一になるまで混合した。生成した粘稠なペースト状組成物を脱泡して、25℃における粘度と150℃における粘度を測定し、垂れ落ち試験を行なった。測定結果と試験結果を表7に示した。
【0080】
[比較例1]
成分(A)として(a-1)株式会社MORESCO製のモレスコハイルーブLB−100(アルキルジフェニルエーテル、液体)16.00部、成分(C)として(c-1)株式会社アドマテックス製アドマファインアルミナ(真球状、D50:5.5μmのアルミナ粉)と(c-2)株式会社アドマテックス製アドマファインAO−502(真球状、D50:0.7μmのアルミナ粉)の75部対25部の混合物84.00部をプラネタリーミキサーに投入して、均一になるまで混合した。生成した粘稠なペースト状組成物を脱泡して、25℃における粘度と150℃における粘度を測定し、垂れ落ち試験を行なった。測定結果と試験結果を表8に示した。
【0081】
[比較例2]
成分(A)として(a-1)株式会社MORESCO製のモレスコハイルーブLB−100(アルキルジフェニルエーテル、液体)15.99部、成分(B)として(b-5)三洋化成工業株式会社製ニューポールPE−108(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(300E.O.)(55P.O.)、固体、HLB15.5)0.01部、成分(C)として(c-1)株式会社アドマテックス製アドマファインアルミナ(真球状、D50:5.5μmのアルミナ粉)と(c-2)株式会社アドマテックス製アドマファインAO−502(真球状、D50:0.7μmのアルミナ粉)の75部対25部の混合物84.00部をプラネタリーミキサーに投入して、均一になるまで混合した。生成した粘稠なペースト状組成物を脱泡して、25℃における粘度と150℃における粘度を測定し、垂れ落ち試験を行なった。測定結果と試験結果を表8に示した。
【0082】
[比較例3]
成分(A)として(a-1)株式会社MORESCO製のモレスコハイルーブLB−100(アルキルジフェニルエーテル、液体)15.60部、成分(B)として(b-5)三洋化成工業株式会社製ニューポールPE−108(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(300E.O.)(55P.O.)、固体、HLB15.5)0.40部、成分(C)として(c-1)株式会社アドマテックス製アドマファインアルミナ(真球状、D50:5.5μmのアルミナ粉)と(c-2)株式会社アドマテックス製アドマファインAO−502(真球状、D50:0.7μmのアルミナ粉)の75部対25部の混合物84.00部をプラネタリーミキサーに投入して、均一になるまで混合しようとしたが、混合物が固くて不均一な団子状のため、熱伝導率の測定と粘度測定と垂れ落ち試験が不可能であった。実験結果を表8に示した。
【0083】
[比較例4]
成分(A)として(a-1)株式会社MORESCO製のモレスコハイルーブLB−100(アルキルジフェニルエーテル、液体)24.85部、成分(B)として(b-5)三洋化成工業株式会社製ニューポールPE−108(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(300E.O.)(55P.O.)、固体、HLB15.5)0.15部、成分(C)として(c-1)株式会社アドマテックス製アドマファインアルミナ(真球状、D50:5.5μmのアルミナ粉)と(c-2)株式会社アドマテックス製アドマファインAO−502(真球状、D50:0.7μmのアルミナ粉)の75部対25部の混合物75.00部をプラネタリーミキサーに投入して、加熱下均一になるまで混合した。生成した粘稠なペースト状組成物を脱泡して、25℃における粘度と150℃における粘度を測定し、垂れ落ち試験を行なった。測定結果と試験結果を表8に示した。
【0084】
[比較例5]
成分(A)として(a-1)株式会社MORESCO製のモレスコハイルーブLB−100(アルキルジフェニルエーテル、液体)4.90部、成分(B)として(b-5)三洋化成工業株式会社製ニューポールPE−108(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(300E.O.)(55P.O.)、固体、HLB15.5)0.10部、成分(C)として(c-1)株式会社アドマテックス製アドマファインアルミナ(真球状、D50:5.5μmのアルミナ粉)と(c-2)株式会社アドマテックス製アドマファインAO−502(真球状、D50:0.7μmのアルミナ粉)の75部対25部の混合物95.00部をプラネタリーミキサーに投入して、加熱下均一になるまで混合しようとしたが、混合物が固くて不均一な団子状のため、熱伝導率の測定と粘度測定と垂れ落ち試験が不可能であった。実験結果を表9に示した。
【0085】
[比較例6]
成分(A)として(a-1)株式会社MORESCO製のモレスコハイルーブLB−100(アルキルジフェニルエーテル、液体)15.85部、成分(B)として(b-5)日本エマルジョン株式会社製のEMALEX DEG−di−O(ジオレイン酸ポリエチレングリコール系 PEG−2(2E.O)、液体、HLB2.0)0.15部、成分(C)として(c-1)株式会社アドマテックス製アドマファインアルミナ(真球状、D50:5.5μmのアルミナ粉)と(c-2)株式会社アドマテックス製アドマファインAO−502(真球状、D50:0.7μmのアルミナ粉)の75部対25部の混合物84.00部をプラネタリーミキサーに投入して、均一になるまで混合した。生成した粘稠なペースト状組成物を脱泡して、25℃における粘度と150℃における粘度を測定し、垂れ落ち試験を行なった。測定結果と試験結果を表9に示した。
【0086】
[比較例7]
成分(A)として(a-1)株式会社MORESCO製のモレスコハイルーブLB−100(アルキルジフェニルエーテル、液体)15.85部、成分(B)として(b-7)日光ケミカルズ株式会社製のNIKKOL DECAGLYN 2−SV(デカグリセリルジステアレート、固体、HLB9.5)0.15部、成分(C)として(c-1)株式会社アドマテックス製アドマファインアルミナ(真球状、D50:5.5μmのアルミナ粉)と(c-2)株式会社アドマテックス製アドマファインAO−502(真球状、D50:0.7μmのアルミナ粉)の75部対25部の混合物84.00部をプラネタリーミキサーに投入して、加熱下均一になるまで混合した。生成した粘稠なペースト状組成物を脱泡して、25℃における粘度と150℃における粘度を測定し、垂れ落ち試験を行なった。測定結果と試験結果を表9に示した。
【0087】
[比較例8]
成分(A)として(a-1)株式会社MORESCO製のモレスコハイルーブLB−100(アルキルジフェニルエーテル、液体)15.85部、成分(B)として(b-9)花王株式会社製のエマルゲン103(ポリオキシエチレンラウリルエーテル(2.9E.O.)、液体、HLB8.1)0.15部、成分(C)として(c-1)株式会社アドマテックス製アドマファインアルミナ(真球状、D50:5.5μmのアルミナ粉)と(c-2)株式会社アドマテックス製アドマファインAO−502(真球状、D50:0.7μmのアルミナ粉)の75部対25部の混合物84.00部をプラネタリーミキサーに投入して、均一になるまで混合した。生成した粘稠なペースト状組成物を脱泡して、25℃における粘度と150℃における粘度を測定し、垂れ落ち試験を行なった。測定結果と試験結果を表9に示した。
【0088】
[比較例9]
成分(A)として(a-2)出光興産株式会社製PA05010(ポリα−オレフィン、液体)16.00部、成分(C)として(c-1)株式会社アドマテックス製アドマファインアルミナ(真球状、D50:5.5μmのアルミナ粉)と(c-2)株式会社アドマテックス製アドマファインAO−502(真球状、D50:0.7μmのアルミナ粉)の75部対25部の混合物84.00部をプラネタリーミキサーに投入して、均一になるまで混合した。生成した粘稠なペースト状組成物を脱泡して、25℃における粘度と150℃における粘度を測定し、垂れ落ち試験を行なった。測定結果と試験結果を表10に示した。
【0089】
[比較例10]
成分(A)として(a-1)株式会社MORESCO製のモレスコハイルーブLB−100(アルキルジフェニルエーテル、液体)9.80部とオレイン酸亜鉛(固体)0.20部をプラネタリーミキサーに投入し、加熱下混合してオレイン酸亜鉛をモレスコハイルーブLB−100に溶解した。次いで、成分(C)として(c-1)株式会社アドマテックス製アドマファインアルミナ(真球状、D50:5.5μmのアルミナ粉)と(c-2)株式会社アドマテックス製アドマファインAO−502(真球状、D50:0.7μmのアルミナ粉)の75部対25部の混合物90.00部を前記プラネタリーミキサーに投入して、均一になるまで混合した。生成した粘稠なペースト状組成物を脱泡して、25℃における粘度と150℃における粘度を測定し、垂れ落ち試験を行なった。測定結果と試験結果を表10に示した。
【0090】
【表4】
【0091】
【表5】
【0092】
【表6】
【0093】
【表7】
【0094】
【表8】
注:比較例3は、混合物が固くて不均一な団子状のため、熱伝導率の測定と粘度測定と垂れ落ち試験が不可能であった。
【0095】
【表9】
注:比較例5は、組成物が固くて不均一な団子状のため、熱伝導率測定と粘度測定と垂れ落ち試験が不可能であった。
【0096】
【表10】
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明の熱伝導性オイル組成物は、優れた熱伝導性と耐垂れ落ち性を有するので、熱せられたコンデンサ、抵抗、ダイオード、メモリ、演算素子(CPU)等の電子部品、これらの電子部品・チップを有する半導体パッケージ、回路基板等の電子装置の熱を放熱部材に効率よく伝える媒体、いわゆる、放熱剤として有用である。本発明の放熱剤は、熱せられたコンデンサ、抵抗、ダイオード、メモリ、演算素子(CPU)等の電子部品、これらの電子部品・チップを有する半導体パッケージ、回路基板等の電子装置の熱を放熱部材に効率よく伝えるための媒体として有用である。
【0098】
本発明の電子機器は、電子部品・電子装置の発熱部材と冷却部材との間隙、あるいは、高温部材と放熱部材との間隙に放熱剤が挟持され、あるいは介在し、挟持部は鉛直方向または略鉛直方向に保持された状態で長期間低温と高温の冷熱サイクルに曝されても、該放熱剤が実質的に垂れ落ちしないので、長期間優れた電子機器性能を発揮することができ、信頼性に優れた電子機器として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【
図1】本発明の電子機器の1実施例の断面図である。なお、回路基板1の回路は図示していない。
【符号の説明】
【0100】
1 回路基板
2 ハンダ
3 発熱性電子部品
4 熱伝導性オイル組成物または放熱剤
5 放熱部材
A 電子機器