(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記少なくとも1つの帯域消去フィルタ構造(116、216)における前記少なくとも1つの平面導電性要素(118、218)、および、前記放射構造における前記少なくとも1つの平面放射要素(114)は、いずれも同じ面または2つの略平行な面に配置されており、
前記少なくとも1つの平面導電性要素(118、218)は、前記少なくとも1つの平面放射要素(114)にそれぞれ隣接する、または面するようになっている、
請求項1から3のいずれか一項に記載のアンテナシステム(100、200)。
前記少なくとも1つの帯域消去フィルタ構造(116、216)における前記少なくとも1つの平面導電性要素(118、218)は、前記放射構造の前記少なくとも1つの平面放射要素(114)の幅を覆うように形成され、および/または、
前記少なくとも1つの帯域消去フィルタ構造(116、216)における前記少なくとも1つの平面導電性要素(118、218)は、前記放射構造の前記少なくとも1つの平面放射要素(114)と同じ幅を有するような寸法である、
請求項1から4のいずれか一項に記載のアンテナシステム(100、200)。
前記少なくとも1つの帯域消去フィルタ構造(116、216)の前記少なくとも1つの平面導電性要素(118、218)と前記放射構造の前記少なくとも1つの平面放射要素(114)とは、いずれも誘電基板の2つの反対面に設けられ、または、
前記少なくとも1つの帯域消去フィルタ構造(116、216)の前記少なくとも1つの平面導電性要素(118、218)と前記放射構造の前記少なくとも1つの平面放射要素(114)とは、いずれも誘電基板の前記同じ面に設けられている、
請求項1から5のいずれか一項に記載のアンテナシステム(100、200)。
前記少なくとも1つのスリーブ構造(516)における前記少なくとも2つの平面導電性要素(518−1、518−2)、および、前記少なくとも1つの放射構造(512−1、512−2)における前記少なくとも1つの平面放射要素(514)は、いずれも同じ面に配置されており、
前記少なくとも2つの平面導電性要素(518−1、518−2)は、前記少なくとも1つの平面放射要素(514)にそれぞれ隣接するようになっている、
請求項8または9に記載のアンテナシステム(500)。
前記少なくとも1つのスリーブ構造(516)における前記少なくとも2つの平面導電性要素(518−1、518−2)の各々は、前記少なくとも1つの放射構造の前記少なくとも1つの平面放射要素(514)に対して等距離に配置されている、
請求項8から10のいずれか一項に記載のアンテナシステム(500)。
前記少なくとも1つのスリーブ構造(516)における前記少なくとも2つの平面導電性要素(518−1、518−2)の各々と、前記少なくとも1つの放射構造における前記少なくとも1つの平面放射要素(514)との間に、少なくとも2つのスリットが設けられ、
前記少なくとも2つのスリットの各々は、前記少なくとも1つの放射構造(512−1、512−2)における前記少なくとも1つの平面放射要素(514)の先端から、前記少なくとも2つの平面導電性要素(518−1、518−2)のうちの対応する1つの平面導電性要素と前記少なくとも1つの平面放射要素(514)との間の電気接続部まで、横方向に延びている、
請求項8から11のいずれか一項に記載のアンテナシステム(500)。
【背景技術】
【0002】
本発明の文脈において、アンテナシステムは、第1アンテナ素子と第2アンテナ素子とを備えるアンテナ構成として理解すべきである。
【0003】
一般に、アンテナシステムは、1つのシステムで複数のアンテナ素子をグループ化することにより様々な構造上の利点をもたらすため、技術において広く検討されている。特に、アンテナシステムを単一の構造モジュールとして組み立てることにより、機械部品および電気部品を複数のアンテナ素子間で共有することができる。
【0004】
したがって、アンテナシステムにおいて、複数のアンテナ素子を同じハウジング内に配置し、そうすることによって同じハウジング、同じベースを共有し、同じPCB回路を共有し、かつ外部からアンテナシステム内の複数のアンテナ素子へ電気信号を送信し、複数のアンテナ素子から電気信号を受信するための同じ電気接続部を共有する。
【0005】
しかしながら、複数のアンテナ素子をアンテナシステムに配置することは、特に複数のアンテナ素子が互いに近接場に配置されるときに欠点を有する。この場合、複数のアンテナ素子は、特にそれぞれの放射パターンに関する相互干渉による影響を受ける。
【0006】
WO98/26471A1において、アンテナシステムに周波数選択面を適用して、2つのアンテナ素子間の相互干渉による影響を低下させることが提案されている。より詳細には、提案されたアンテナシステムは第1アンテナ素子と第2アンテナ素子とを備える。第1アンテナ素子は第1周波数範囲で伝送可能であり、第2アンテナ素子は第2周波数範囲、すなわち重ならない周波数範囲で伝送可能である。
【0007】
干渉による影響を低下させるために、アンテナシステムは、第1周波数範囲の無線周波数エネルギーを導通し、第2周波数範囲の無線周波数エネルギーを反射する周波数選択面をさらに備える。好ましくは、周波数選択面は、周波数選択面に作用する無線周波数信号に対して疑似帯域通過フィルタ特性または疑似帯域阻止フィルタ特性を示す反復金属化パターン構造を含む。
【0008】
さらに、米国特許第6,917,340(B2)号も、2つのアンテナ素子を備えるアンテナシステムに関する。結合およびしたがって干渉による影響を低下させるために、2つのアンテナ素子のうちの一方をセグメントに細分し、このセグメントは他方のアンテナ素子の波長の8分の3に相当する電気的長さを有する。
【0009】
さらに、一方のアンテナ素子のセグメントは電気リアクタンス回路を介して電気的に相互接続され、この電気リアクタンス回路は、他方のアンテナ素子の周波数範囲の十分に高いインピーダンスと、一方のアンテナ素子の周波数範囲の十分に低いインピーダンスとを有する。
【0010】
上記の手法は2つのアンテナ素子の放射パターンへの干渉を低減させることはできても、2つのアンテナ素子を備えるアンテナシステムの設計は、追加の部品の組込み、すなわち電気リアクタンス回路を組み込んだものの製造および配置を考慮すると、より複雑になる。
【0011】
特に、電気リアクタンス回路の設計およびそれぞれのアンテナ素子への配置は複雑であり、追加の開発ステップが必要である。さらに、電気リアクタンス回路の部品によってだけでなく、例えばアンテナ素子へのはんだ付け電気接続部によっても、容認できない変動が周波数特性に生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
これに関し、本発明の目的は、上記の欠点を克服して、例えば追加の組立てステップを回避する、改良されたアンテナシステムを提案することである。さらに、本発明の別の目的は、内部に含まれる複数のアンテナ素子の放射パターン間の干渉が低減したアンテナシステムを提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
第1の態様によれば、アンテナシステムは、第1アンテナ素子の近くに配置されている1つまたは複数の帯域消去フィルタ構造(band-stop filter structure)を備える。各フィルタ構造の一端部または両端部は、第1アンテナ素子に接続されている。フィルタ構造は、第1アンテナ素子が適合する第2周波数帯域の周波数の電流を減衰させる。したがって、アンテナシステムの第1アンテナ素子により、第2アンテナ素子が適合する第2周波数帯域の周波数で干渉による影響を低減させることができる。したがって、第2アンテナの放射パターンに対する第1アンテナ素子の干渉を低減させることもできる。実施形態によれば、第1周波数帯域に適合する第1アンテナ素子と、第1周波数帯域とは異なる第2周波数帯域に適合する第2アンテナ素子とを備えるアンテナシステムが提案される。第1アンテナ素子は、少なくとも1つの平面放射要素を含み、かつ第1周波数帯域の周波数で放射するように構成されている放射構造を備える。第1アンテナ素子は、少なくとも1つの平面導電性要素を含み、かつ第2周波数帯域の周波数の電流を減衰させるように構成されている少なくとも1つの帯域消去フィルタ構造をさらに備える。
【0014】
少なくとも1つの平面導電性要素は、蛇行パターン状に配置され、一端部で少なくとも1つの平面放射要素に電気的に接続される。さらに、少なくとも1つの平面導電性要素は、少なくとも1つの平面放射要素の方向に略平行な方向に延び、少なくとも1つの平面導電性要素は、第2周波数帯域の周波数の波長の約4分の1に相当する電気的長さを有する。
【0015】
別の実施形態によれば、第1周波数帯域に適合する第1アンテナ素子と、第1周波数帯域とは異なる第2周波数帯域に適合する第2アンテナ素子とを備えるアンテナシステムが提案される。第1アンテナ素子は、少なくとも1つの平面放射要素を含み、かつ第1周波数帯域の周波数で放射するように構成されている放射構造を備える。第1アンテナ素子は、少なくとも1つの平面導電性要素を含み、かつ第2周波数帯域の周波数で電流を減衰させるように構成されている少なくとも1つの帯域消去フィルタ構造をさらに備える。
【0016】
少なくとも1つの平面導電性要素は、蛇行パターン状に配置され、両端部で少なくとも1つの平面放射要素に電気的に接続されて、少なくとも1つの平面放射要素と共に並列回路を形成するようになっている。さらに、少なくとも1つの平面導電性要素は、少なくとも1つの平面放射要素の方向に略平行な方向に延び、少なくとも1つの平面導電性要素は、少なくとも1つの平面放射要素の電気的長さを第2周波数帯域の周波数の波長の2分の1だけ超える電気的長さを有する。
【0017】
アンテナシステムの実施形態によれば、第2アンテナ素子は第1アンテナ素子の近接場内に配置される。
【0018】
アンテナシステムの別の実施形態によれば、少なくとも1つの帯域消去フィルタ構造における少なくとも1つの平面導電性要素と、放射構造の少なくとも1つの平面放射要素とは、いずれも同じ面または2つの略平行な面に配置されて、少なくとも1つの平面導電性要素は少なくとも1つの平面放射要素にそれぞれ隣接するまたは面するようになっている。
【0019】
アンテナシステムのさらなる実施形態によれば、少なくとも1つの帯域消去フィルタ構造における少なくとも1つの平面導電性要素は、放射構造の少なくとも1つの平面放射要素の幅を覆うように形成されている。
【0020】
アンテナシステムのさらに別の実施形態によれば、少なくとも1つの帯域消去フィルタ構造における少なくとも1つの平面導電性要素は、放射構造の少なくとも1つの平面放射要素と同じ幅を有するような寸法である。
【0021】
アンテナシステムのさらなる実施形態によれば、少なくとも1つの帯域消去フィルタ構造における少なくとも1つの平面導電性要素と、放射構造の少なくとも1つの平面放射要素とは、いずれも誘電基板の2つの反対面に設けられている。
【0022】
アンテナシステムの別の実施形態によれば、少なくとも1つの帯域消去フィルタ構造における少なくとも1つの平面導電性要素と、放射構造の少なくとも1つの平面放射要素とは、いずれも誘電基板の同じ面に設けられている。
【0023】
アンテナシステムのさらなる実施形態によれば、第1アンテナ素子の放射構造は、第2周波数帯域の周波数の波長の8分の3よりも小さいかまたは等しい電気的長さを各々有する複数の平面放射要素を備え、第1アンテナ素子は、蛇行パターン状に配置され、かつ複数の平面放射要素のうちの異なる1つに電気的に接続されている少なくとも1つの平面導電性要素を各々含む複数の帯域消去フィルタ構造を備える。
【0024】
さらなる実施形態によれば、第1周波数帯域に適合する第1アンテナ素子と、第1周波数帯域とは異なる第2周波数帯域に適合する第2アンテナ素子とを備えるアンテナシステムが提案される。第1アンテナ素子は、少なくとも1つの平面放射要素を含み、かつ第1周波数帯域の周波数で放射するように構成されている少なくとも1つの放射構造を備える。第1アンテナ素子は、少なくとも2つの平面導電性要素を含み、かつ第2周波数帯域の周波数の電流を減衰させるように構成されている少なくとも1つのスリーブ構造をさらに備える。
【0025】
少なくとも2つの平面導電性要素は、一端部で少なくとも1つの平面放射要素に電気的に接続されている。さらに、少なくとも2つの平面導電性要素は、少なくとも1つの平面放射要素の方向に略平行な方向に延び、少なくとも2つの平面導電性要素は、第2周波数帯域の周波数の波長の約4分の1に相当する電気的長さを有する。
【0026】
アンテナシステムの実施形態によれば、第2アンテナ素子は第1アンテナ素子の近接場内に配置されている。
【0027】
アンテナシステムの別の実施形態によれば、少なくとも1つのスリーブ構造における少なくとも2つの平面導電性要素と、少なくとも1つの放射構造における少なくとも1つの平面放射要素とは、いずれも同じ面に配置されて、少なくとも2つの平面導電性要素は少なくとも1つの平面放射要素にそれぞれ隣接するようになっている。
【0028】
アンテナシステムのさらなる実施形態によれば、少なくとも1つのスリーブ構造における少なくとも2つの平面導電性要素の各々は、少なくとも1つの放射構造における少なくとも1つの平面放射要素に対して等距離に配置されている。
【0029】
アンテナシステムのさらに別の実施形態によれば、少なくとも1つのスリーブ構造における少なくとも2つの平面導電性要素の各々と少なくとも1つの放射構造における少なくとも1つの平面放射要素との間に少なくとも2つのスリットが設けられ、少なくとも2つのスリットの各々は、少なくとも1つの放射構造における少なくとも1つの平面放射要素の先端から、少なくとも2つの平面導電性要素のうちの対応する1つの平面導電性要素と少なくとも1つの平面放射要素との間の電気接続部まで、横方向に延びている。
【0030】
アンテナシステムのさらなる実施形態によれば、第1平面アンテナ素子は、第1周波数帯域の異なる周波数で放射するように各々構成されている、複数の相互接続された放射構造と、第2周波数帯域の同じ周波数の電流を減衰させるように各々構成されている複数のスリーブ構造とを備え、複数のスリーブ構造の各々は、複数の放射構造のうちの異なる放射構造における少なくとも1つの平面放射要素に電気的に接続されている少なくとも2つの平面導電性要素を備える。
【0031】
アンテナシステムの別の実施形態によれば、第1平面アンテナ素子はマルチバンド平面逆Fアンテナ素子である。
【0032】
アンテナシステムのさらなる実施形態によれば、第2アンテナ素子は角を切り取った矩形のパッチアンテナ素子である。
【0033】
さらに、車両屋根で使用するためのアンテナモジュールであって、前の実施形態のうちの1つによるアンテナシステムを備え、車両屋根は、第1の平面アンテナ素子および第2アンテナ素子に対するグランドプレーンを提供するアンテナモジュールが提案される。
【0034】
本発明のいくつかの実施形態を示すために、添付図面が明細書に組み込まれ、明細書の一部を形成する。これらの図面は明細書と共に、本発明の原理を説明する役割を果たす。
【0035】
図面は、本発明を形成し使用することのできる方法の好ましい例および代替例を示すためのものにすぎず、本発明を図示し記載した実施形態のみに限定するものと解釈すべきではない。
【0036】
さらに、実施形態のいくつかの態様は、本発明による解決法を個々に、または異なる組合せで形成することができる。添付図面に示す本発明の様々な実施形態についての以下のより詳細な説明から、さらなる特徴および利点が明らかになろう。図中、同一の参照符号は同一の要素を示す。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下で、
図1Aおよび
図1Bを参照すると、本発明の第1の実施形態によるアンテナシステム100および模擬放射パターンの例示的な概略図が示される。特に、
図1Bの模擬放射パターンは、アンテナシステム100のアンテナ素子間の干渉を低減させるという有利な効果を示す。
【0039】
アンテナシステム100は、互いに対して近接場内に配置されている第1アンテナ素子110と第2アンテナ素子120とを備える。したがって、第2アンテナ素子120の放射パターンは第1アンテナ素子110からの干渉の影響を受け、第1アンテナ素子110の放射パターンは第2アンテナ素子120からの干渉の影響を受ける。
【0040】
本発明の文脈において、近接場という用語は、第1アンテナ素子110および第2アンテナ素子120の各々の周りの領域として理解すべきであり、ここでは放射パターンが第1アンテナ素子110および第2アンテナ素子120のそれぞれの他方からの干渉の影響により支配される。例えば、第1アンテナ素子110および第2アンテナ素子120が、放出(emit)するようになっている波長λの2分の1よりも短い場合、近接場は、半径rを有し、r<λである領域として定義される。
【0041】
第1アンテナ素子110は、第1周波数帯域の電磁波を送受信するように適合される。言い換えると、第1アンテナ素子110は第1周波数帯域に適合する。例示の目的で、第1アンテナ素子110は単極アンテナとして示される。しかしながら、第1アンテナ素子110はこれに関して限定されない。さらに、第1アンテナ素子110は、例えば、ダイポールアンテナ、平面逆F(PIFA)アンテナ、またはマルチバンドアンテナであってよい。
【0042】
第2アンテナ素子120は、第2周波数帯域の電磁波を送受信するように適合される。言い換えると、第2アンテナ素子120は第2周波数帯域に適合する。例示の目的で、第2アンテナ素子120も平面アンテナ素子として、すなわち角を切り取ったパッチアンテナとして示される。しかしながら、第2アンテナ素子120もこれに関して限定されない。
【0043】
特に、第1アンテナ素子110が適合する第1周波数帯域と、第2アンテナ素子120が適合する第2周波数帯域とは互いに異なり、すなわち第1周波数帯域は第2周波数帯域よりも低い。言い換えると、第1周波数帯域は、第2周波数帯域の周波数よりも低い周波数を有する。
【0044】
これは、第1周波数帯域の周波数と第2周波数帯域の周波数とが互いに重ならない場合を含む。さらに、一方または両方のアンテナ素子110、120がマルチバンドアンテナである場合、第1周波数帯域は、第2周波数帯域に重なることなく、第2周波数帯域を含んでもよい。
【0045】
第1アンテナ素子110は、第1周波数帯域の周波数で放射するように構成されている少なくとも1つの放射構造112を備える。例示の目的で、第1アンテナ素子110は単一の放射構造112を備えて示される。しかしながら、第1アンテナ素子110はこれに関して限定されない。さらに、第1アンテナ素子110がマルチバンドアンテナである場合、第1アンテナ素子110は、第1周波数帯域の異なる周波数で各々放射する複数の放射構造を備える。
【0046】
さらに、第1アンテナ素子110では、少なくとも1つの放射構造112が少なくとも1つの平面放射要素114を備える。言い換えると、少なくとも1つの放射構造112は、少なくとも1つまたは複数の平面放射要素114のセグメントから形成される。例示の目的で、単一の放射構造112が5つの平面放射要素114を備えて示される。しかしながら、放射構造112はこれに関して限定されない。
【0047】
アンテナシステム100の例示的な構成において、単一の放射構造112の5つの平面放射要素114は、2つの平行面に交互に配置されて、第1放射要素114、第3の放射要素114、および第5の放射要素114が2つの平行面のうちの一方の面に設けられ、第2の放射要素114および第4の放射要素114が2つの平行面のうちの他方に設けられるようになっている。
【0048】
この単一の放射構造112は、放射構造112を折り曲げて異なる平面放射要素114を形成することによって製造することができる。あるいは、放射構造112は、誘電基板の反対面に連続した平面放射要素114を印刷/エッチングすることによって実現することができる。後者の場合、連続した平面放射要素114を、誘電基板の反対面間の(例えば反対面を介した)貫通接続によって電気的に接続することができる。
【0049】
これらの例は、放射構造112の実現についての代替案を詳述し、少なくとも1つまたは複数の平面放射要素114を備える放射構造112は、それ自体平面ではなく2つの平行面に配置される。
【0050】
第1アンテナ素子110は、第1アンテナ素子110内で第2周波数帯域の周波数の電流を減衰させるように構成されている少なくとも1つの帯域消去フィルタ構造116をさらに備える。言い換えると、少なくとも1つの帯域消去フィルタ構造116は、少なくとも1つの放射構造114内で第2周波数帯域の周波数を有する電流が流れることを阻止する。
【0051】
このために、少なくとも1つの帯域消去フィルタ構造116は少なくとも1つの平面導電性要素118を備える。この平面導電性要素118は、一端部で(アンテナシステム100の場合)または両端部で(以下で説明するアンテナシステム200、300の場合)少なくとも1つの放射構造112における少なくとも1つの平面放射要素114に電気的に接続される。
【0052】
例示の目的で、少なくとも1つの帯域消去フィルタ構造116の各々は1つの平面導電性要素118を備えて示される。しかしながら、少なくとも1つの帯域消去フィルタ構造116はこれに関して限定されない。
【0053】
さらに、少なくとも1つの帯域消去フィルタ構造の各々が、例えば2つの平面導電性要素を備える場合、これらの2つの平面導電性要素の各々は、一端部で、少なくとも1つの平面放射要素114のうちの同じものの異なる部分に電気的に接続される。
【0054】
さらに、少なくとも1つの帯域消去フィルタ構造116における少なくとも1つの平面導電性要素118は、蛇行パターン状に配置されている。本発明の文脈において、少なくとも1つの平面導電性要素118は、横方向における反対側を向く導電性セグメントの連続したループを有すれば、蛇行パターン状に配置されるものとされる。
【0055】
これに関し、少なくとも1つの平面導電性要素118の蛇行パターンにより、平面導電性要素118が延びる領域の寸法(すなわち長さおよび幅)と比べて過大な電気的長さが可能になる。例示として、アンテナシステム100の少なくとも1つの平面導電性要素118は、横方向における反対側(opposite traverse directions)を向く導電性セグメントの連続した3つのループを含む。
【0056】
より詳細には、アンテナシステム100においては、少なくとも1つの平面導電性要素118が、一端部で放射構造112の少なくとも1つの平面放射要素114に電気的に接続されている。アンテナシステム100において、少なくとも1つの平面導電性要素118は、所定の電気的長さを有する。すなわち少なくとも1つの平面導電性要素118は、第2周波数帯域の周波数の波長の4分の1(λ/4)に相当する電気的長さを有する。
【0057】
さらに、少なくとも1つの帯域消去フィルタ構造116における少なくとも1つの平面導電性要素118は、少なくとも1つの放射構造112における少なくとも1つの平面放射要素114の方向に略平行な方向に延びている。言い換えると、少なくとも1つの平面導電性要素118は、少なくとも1つの平面放射要素114と同じ方向に延びている。
【0058】
これにより、少なくとも1つの平面導電性要素118と少なくとも1つの放射要素114とは、いずれも同じ大きさおよび指向性の電流を内部に誘導する、第2アンテナ素子120の同じ放射パターンに晒される。
【0059】
アンテナシステム100の例示的な構成において、少なくとも1つの帯域消去フィルタ構造116における少なくとも1つの平面導電性要素118と、少なくとも1つの放射構造112における少なくとも1つの平面放射要素114とは、いずれも2つの平行面で互いに面して配置されている。有利には、少なくとも1つの平面導電性要素118および少なくとも1つの平面放射要素114のこの配置は、これらの間の結合を強める。
【0060】
特に、少なくとも1つの平面導電性要素118と少なくとも1つの平面放射要素114との結合により、少なくとも1つの平面導電性要素118を備える少なくとも1つの帯域消去フィルタ構造116のフィルタリング効果を強化する。
【0061】
アンテナシステム100の別の例示的な構成において、少なくとも1つの帯域消去フィルタ構造116における少なくとも1つの平面導電性要素118は、少なくとも1つの放射構造112における少なくとも1つの平面放射要素114の幅を覆うように形成されている。これにより、少なくとも1つの平面導電性要素118と少なくとも1つの平面放射要素114との重なりが大きくなるため、これらの結合がさらに強化される。
【0062】
アンテナシステム100のさらに例示的な構成において、少なくとも1つの帯域消去フィルタ構造116における少なくとも1つの平面導電性要素118と少なくとも1つの放射構造112における少なくとも1つの平面放射要素114とは、いずれも誘電基板の2つの反対面に設けられる。誘電基板の適切に低い比誘電率ε
γにより、これらの結合がさらに強化される。
【0063】
アンテナシステム100のさらに別の例示的な構成において、第1アンテナ素子110の少なくとも1つの放射構造112は、複数の電気的に相互接続された平面放射要素114を備える。電気的に相互接続された平面放射要素114の各々は、第2周波数帯域の周波数の波長の8分の3よりも小さいかまたは等しい電気的長さを有する。
【0064】
アンテナシステム100のこの例示的な構成に関し、第1アンテナ素子110は複数の帯域消去フィルタ構造116を備える。複数の帯域消去フィルタ構造116の各々は、蛇行パターン状の少なくとも1つの平面導電性要素118を備える。さらに、少なくとも1つの平面導電性要素118の各々は、複数の平面放射要素114の異なる1つに電気的に接続されている。
【0065】
図1Aに示す例において、第1アンテナ素子100の1つの放射構造112は、電気的に相互接続された5つの平面放射要素114と、2つの帯域消去フィルタ構造116とを備える。2つの帯域消去フィルタ構造116は、1つの平面導電性要素118を各々備える。2つの帯域消去フィルタ構造116の各々の1つの平面導電性要素118は、電気的に相互接続された5つの平面放射要素114のうちの1つおきに電気的に接続されている。
【0066】
要するに、少なくとも1つの平面導電性要素118およびこの平面導電性要素118が電気的に接続されている少なくとも1つの平面放射要素114のこの構成により、少なくとも1つの帯域消去フィルタ構造116は第2周波数帯域の周波数の誘導電流のための帯域消去フィルタとして作用するため、第2周波数帯域の周波数の電流を減衰させる。
【0067】
より詳細には、少なくとも1つの平面導電性要素118に誘導される電流は、少なくとも1つの平面導電性要素の電気的に接続されていない端部で反射するため、少なくとも1つの平面放射要素114に誘導される電流と比べて、第2周波数帯域の周波数の波長の4分の1の2倍(2・λ/4=λ/2)の電気的長さに晒される。第2周波数帯域の周波数の波長の2分の1(λ/2)の位相ずれにより、両電流が破壊的に干渉する(すなわち互いに打ち消し合う)。
【0068】
言い換えると、少なくとも1つの平面導電性要素118の構造、寸法、および配置が、第2周波数帯域の周波数の電流を減衰させる帯域消去フィルタ構造116を提供する。したがって、第2アンテナ素子120が第1アンテナ素子110に電流を誘導しても、帯域消去フィルタ構造116の少なくとも1つの平面導電性要素118は第2周波数帯域の周波数の誘導電流を阻止する。
【0069】
したがって、第1アンテナ素子110は、第2周波数帯域の周波数、すなわち第2アンテナ素子120が適合する周波数で干渉による影響を低減させるように構成される。第1アンテナ素子110は第2アンテナ素子120に対して透過的(transparent)であるとされる。したがって、第1アンテナ素子110が第2アンテナ素子120の近接場内に配置されていても、第2アンテナ素子120の放射パターンは、第1アンテナ素子110から受ける干渉が少ない。
【0070】
第2アンテナ素子120の放射パターンへの干渉を低減させるという同じ効果を、
図1Bに示すシミュレーション結果から理解することもできる。ここでは、第2アンテナ素子120の放射パターンが略同心で、周縁部の変形は、x軸に関するもの、すなわち第1アンテナ素子110がシミュレーションのために配置される方向に関するもののみである。
【0071】
次に
図2Aおよび
図2Bを参照すると、第1の実施形態の第1アンテナ素子110の断面図および2ポート散乱パラメータ(またはsパラメータ)シミュレーションの結果が示される。シミュレーションについて、第1アンテナ素子110の左セクションおよび右セクションは、2ポートsパラメータシミュレーションとのポートである。
【0072】
シミュレーション結果からわかるように、順方向利得係数S12および逆方向利得係数S21は2.3014GHzの周波数で高い減衰を示す。この周波数は、少なくとも1つの帯域消去フィルタ構造の各々がそれに合わせて構成される第2周波数範囲の周波数に相当する。反射係数S11、S22は逆挙動を示す。
【0073】
次に
図3Aおよび
図3Bを参照すると、本発明の第2の実施形態によるアンテナシステム200の断面図、および第3の実施形態によるアンテナシステム300の断面図が示される。アンテナシステム200、300の各々は、第1アンテナ素子210、310と、それぞれの断面図で省略されている第2アンテナ素子120とを備える。アンテナシステム200、300は
図1のアンテナシステム100に基づいており、対応する部品は対応する参照符号および用語で示される。簡潔にするために、対応する部品の説明は省略されている。
【0074】
図3Aおよび
図3Bのアンテナシステム200、300は、第1アンテナ素子210、310の放射構造112が備える平面放射要素114の数がそれぞれ2つおよび4つであり、第1アンテナ素子210、310の帯域消去フィルタ構造216の数がそれぞれ1つおよび2つである点で、アンテナシステム100とは異なる。
【0075】
より重要な違いは、アンテナシステム200、300が少なくとも1つの平面導電性要素218を含む少なくとも1つの帯域消去フィルタ構造216を備え、この平面導電性要素218が以下でより詳細に説明するように別の形状および構造を有する点である。
【0076】
アンテナシステム200、300の各々は、第1アンテナ素子210、310と第2アンテナ素子120(図示せず)とを備える。第1アンテナ素子210、310は第1周波数帯域に適合し、第2アンテナ素子120は第1周波数帯域とは異なる第2周波数帯域に適合し、すなわち第1周波数帯域は第2周波数帯域よりも低い。言い換えると、第1周波数帯域は、第2周波数帯域の周波数よりも低い周波数を有する。
【0077】
第1アンテナ素子210、310の各々は、少なくとも1つの放射構造112と少なくとも1つの帯域消去フィルタ構造216とを備える。少なくとも1つの放射構造112をより詳細に説明するために、上記の説明を参照する。
【0078】
さらに、少なくとも1つの帯域消去フィルタ構造216の以下の説明は、第2の実施形態のアンテナシステム200の第1アンテナ素子210が備える帯域消去フィルタ構造216、および第3の実施形態のアンテナシステム300の第1アンテナ素子310が備える帯域消去フィルタ構造216に等しく当てはまる。これに関し、以下の説明は抽象的になされ、両実施形態に等しく当てはまる。
【0079】
少なくとも1つの帯域消去フィルタ構造216は、第1アンテナ素子210内で第2周波数帯域の周波数の電流を減衰させるように構成される。言い換えると、少なくとも1つの帯域消去フィルタ構造216は、第2周波数帯域の周波数を有する電流が少なくとも1つの放射構造114内を流れることを阻止する。
【0080】
このために、少なくとも1つの帯域消去フィルタ構造216は少なくとも1つの平面導電性要素218を備え、この平面導電性要素218は両端部で少なくとも1つの放射構造112における少なくとも1つの平面放射要素114に電気的に接続されて、平面放射要素114と共に並列回路を形成するようになっている。
【0081】
例示の目的で、少なくとも1つの帯域消去フィルタ構造216の各々は1つの平面導電性要素218を備えて示される。しかしながら、少なくとも1つの帯域消去フィルタ構造216はこれに関して限定されない。
【0082】
さらに、少なくとも1つの帯域消去フィルタ構造の各々が、例えば2つの平面導電性要素を備える場合、これらの2つの平面導電性要素の各々は両端部で少なくとも1つの平面放射要素114の同じ部分に電気的に接続されて、2つの平面導電性要素が平面放射要素114と共に並列回路を形成するようになっている。
【0083】
さらに、少なくとも1つの帯域消去フィルタ構造216における少なくとも1つの平面導電性要素218は、蛇行パターン状に配置されている。これに関し、少なくとも1つの平面導電性要素218の蛇行パターンにより、平面導電性要素218が延びる領域の寸法(すなわち長さおよび幅)と比べて過大な電気的長さが可能になる。例示として、アンテナシステム100の少なくとも1つの平面導電性要素218は、横方向における反対側を向く導電性セグメントの連続した3つのループを含む。
【0084】
より詳細には、アンテナシステム200、300においては、少なくとも1つの平面導電性要素218が、両端部で放射構造112の少なくとも1つの平面放射要素114に電気的に接続されて、平面放射要素114と共に並列回路を形成する。このアンテナシステム200、300において、少なくとも1つの平面導電性要素218は、少なくとも1つの平面放射要素114の電気的長さを超える電気的長さを有する。この平面導電性要素218は、平面放射要素114に、第2周波数帯域の周波数の波長の2分の1(λ/2)だけ並列に接続されている。
【0085】
さらに、少なくとも1つの帯域消去フィルタ構造216の少なくとも1つの平面導電性要素218は、少なくとも1つの放射構造112の少なくとも1つの平面放射要素114の方向に略平行な方向に延びている。言い換えると、導電性要素218は、少なくとも1つの平面放射要素114と同じ方向に延びている。
【0086】
これにより、少なくとも1つの平面導電性要素218と少なくとも1つの放射要素114とは、いずれも同じ大きさおよび指向性の電流を内部に誘導する、第2アンテナ素子120の同じ放射パターンに晒される。
【0087】
アンテナシステム200、300の例示的な構成において、少なくとも1つの帯域消去フィルタ構造216の少なくとも1つの平面導電性要素218と少なくとも1つの放射構造112の少なくとも1つの平面放射要素114とは、いずれも2つの平行面で互いに面して配置される。有利には、少なくとも1つの平面導電性要素218および少なくとも1つの平面放射要素114のこの配置は、これらの間の結合を強める。
【0088】
特に、少なくとも1つの平面導電性要素218と少なくとも1つの平面放射要素114との結合により、少なくとも1つの平面導電性要素218を備える少なくとも1つの帯域消去フィルタ構造216のフィルタリング効果を強化する。
【0089】
アンテナシステム200、300の別の例示的な構成において、少なくとも1つの帯域消去フィルタ構造216の少なくとも1つの平面導電性要素218は、少なくとも1つの放射構造112における少なくとも1つの平面放射要素114の幅を覆うように形成されている。これにより、少なくとも1つの平面導電性要素218と少なくとも1つの平面放射要素114との重なりが大きくなるため、これらの結合がさらに強化される。
【0090】
要するに、少なくとも1つの平面導電性要素218およびこの平面導電性要素218が並列に接続されている少なくとも1つの平面放射要素114のこの構成により、少なくとも1つの帯域消去フィルタ構造216は第2周波数帯域の周波数の誘導電流のための帯域消去フィルタとして作用するため、第2周波数帯域の周波数の電流を減衰させる。
【0091】
より詳細には、少なくとも1つの平面導電性要素218に誘導される電流は、少なくとも1つの平面放射要素114に誘導される電流と比べて、第2周波数帯域の周波数の波長の2分の1(λ/2)という過大な電気的長さに晒される。第2周波数帯域の周波数の波長の2分の1(λ/2)の位相ずれにより、両電流が破壊的に干渉する(すなわち互いに打ち消し合う)。
【0092】
言い換えると、少なくとも1つの平面導電性要素218の構造、寸法、および配置が、第2周波数帯域の周波数の電流を減衰させる帯域消去フィルタ構造216を提供する。したがって、第2アンテナ素子120が第1アンテナ素子210または310に電流を誘導しても、帯域消去フィルタ構造216の少なくとも1つの平面導電性要素218は第2周波数帯域の周波数の誘導電流を阻止する。
【0093】
したがって、この場合も、第1アンテナ素子210、310は、第2周波数帯域の周波数、すなわち第2アンテナ素子120が適合する周波数で干渉による影響を低減させるように構成される。したがって、第1アンテナ素子210または310が第2アンテナ素子120の近接場内に配置されていても、第2アンテナ素子120の放射パターンは、第1アンテナ素子210、310のいずれか一方から受ける干渉が少ない。
【0094】
次に
図4Aおよび
図4Bを参照すると、第2の実施形態の第1アンテナ素子210(第3の実施形態の第1アンテナ素子310にも等しく当てはまる)の断面図および2ポート散乱パラメータ(またはsパラメータ)シミュレーションの結果が示される。シミュレーションについて、第1アンテナ素子210の左セクションおよび右セクションは、2ポートsパラメータシミュレーションへのポートである。
【0095】
シミュレーション結果からわかるように、順方向利得係数S12および逆方向利得係数S21は約2.3GHzの周波数で高い減衰を示し、この周波数は、少なくとも1つの帯域消去フィルタ構造の各々がそれに合わせて構成される第2周波数範囲の周波数に相当する。反射係数S11、S22は逆挙動を示す。
【0096】
次に
図5Aおよび
図5Bを参照すると、第4の実施形態のアンテナシステムの断面図および2ポート散乱パラメータ(またはsパラメータ)シミュレーションの結果が示される。シミュレーションについて、第1アンテナ素子410の左セクションおよび右セクションは、2ポートsパラメータシミュレーションへのポートである。
【0097】
第4の実施形態は、前の実施形態に関して前述したものと同じ設計原理を適用する。簡潔にするために、断面図が示される第1アンテナ素子410と、第2アンテナ素子とを備える一致したアンテナシステムの説明は省略されている。
【0098】
特に本実施形態について、少なくとも1つの帯域消去フィルタ構造216における少なくとも1つの平面導電性要素218と、放射構造412の少なくとも1つの平面放射要素414とは、いずれも同じ面に配置される。そして、少なくとも1つの平面導電性要素218は、この平面導電性要素218が電気的に並列に接続されている少なくとも1つの平面放射要素414に隣接するようになっている。
【0099】
第1アンテナ素子410のこの複雑でない構造においても、少なくとも1つの平面導電性要素218と、この平面導電性要素218が並列に接続されている少なくとも1つの平面放射要素414との構成により、少なくとも1つの帯域消去フィルタ構造216は第2周波数帯域の周波数の誘導電流のための帯域消去フィルタとして作用するため、第2周波数帯域の周波数の電流を減衰させる。
【0100】
これもシミュレーション結果からわかり、ここでは順方向利得係数S12が約2.3GHzの周波数で高い減衰を示し、この周波数は、少なくとも1つの帯域消去フィルタ構造の各々がそれに合わせて構成される第2周波数範囲の周波数に相当する。反射係数S11は逆挙動を示す。
【0101】
次に
図6Aおよび
図6Bを参照すると、本発明の第5の実施形態によるアンテナシステム500の例示的な概略図およびアンテナシステム500が備える第1アンテナ素子の正面図が示される。
【0102】
アンテナシステム500は、互いに対して近接場内に配置されている第1アンテナ素子510と第2アンテナ素子120とを備える。したがって、第2アンテナ素子120の放射パターンは第1アンテナ素子510からの干渉による影響を受け、第1アンテナ素子510の放射パターンは第2アンテナ素子120からの干渉による影響を受ける。
【0103】
本発明の文脈において、近接場という用語は、第1アンテナ素子510および第2アンテナ素子120の各々の周りの領域として理解すべきであり、ここでは放射パターンが第1アンテナ素子510および第2アンテナ素子120のそれぞれの他方からの干渉による影響により支配される。例えば、第1アンテナ素子510および第2アンテナ素子120が、放出するようになっている波長λの2分の1よりも短い場合、近接場は、半径rを有し、r<λである領域として定義される。
【0104】
第1アンテナ素子510は、第1周波数帯域の電磁波を送受信するように適合される。言い換えると、第1アンテナ素子510は第1周波数帯域に適合する。例示の目的で、第1アンテナ素子510はマルチバンド平面逆F(PIFA)アンテナとして示される。しかしながら、第1アンテナ素子510はこれに関して限定されない。さらに、第1アンテナ素子510は「P2E」で示される給電点を備える。
【0105】
第2アンテナ素子120は、第2周波数帯域の電磁波を送受信するように適合される。言い換えると、第2アンテナ素子120は第2周波数帯域に適合する。例示の目的で、第2アンテナ素子120は平面アンテナ素子として、すなわち角を切り取ったパッチアンテナとして示される。しかしながら、第2アンテナ素子120もこれに関して限定されない。さらに、第2アンテナ素子120は「P1E」で示される給電点を備える。
【0106】
特に、第1アンテナ素子510が適合する第1周波数帯域と、第2アンテナ素子120が適合する第2周波数帯域とは互いに異なり、すなわち第1周波数帯域は第2周波数帯域よりも低い。言い換えると、第1周波数帯域は、第2周波数帯域の周波数よりも低い周波数を有する。
【0107】
第1アンテナ素子510は、第1周波数帯域の周波数を放射するように構成されている少なくとも1つの放射構造512−1、512−2を備える。例示の目的で、第1アンテナ素子510は、相互接続された3つの放射構造512−1、512−2を備えて示される。特に、図示した第1アンテナ素子510は、
●第1アンテナ素子510のグランドプレーン(ground plane)に沿って延びるブランチ(a)およびグランドプレーンから離れる側を向く別のブランチ(b)を含む第1のアンテナ構造512−1と、
●グランドプレーンから離れて延びるブランチ(c)、およびグランドプレーン側を向く半円を形成するブランチ(d)、(e)を含む第2のアンテナ構造512−2と、
●ブランチ(a)、(b)、(c)、(d)、(e)を有する上記の2つのアンテナ構造512−1、512−2を含む第3のアンテナ構造とを備える。
【0108】
第1アンテナ素子510の図示した3つのアンテナ構造512−1、512−2の各々は、第1周波数帯域の異なる周波数で放射するように構成されている。しかしながら、第1アンテナ素子510はこれに関して限定されない。
【0109】
さらに、第1アンテナ素子510において、少なくとも1つの放射構造512−1、512−2は少なくとも1つの平面放射要素514を備える。例示の目的で、マルチバンド放射構造512−1、512−2は1つの平面放射要素514を備えて示される。しかしながら、放射構造512−1、512−2はこれに関して限定されない。
【0110】
第1アンテナ素子510は、少なくとも1つのスリーブ構造516をさらに備える。スリーブ構造516は、第1アンテナ素子510内で第2周波数帯域の周波数の電流を減衰させるように構成されている。言い換えると、少なくとも1つのスリーブ構造516は、少なくとも1つのスリーブ構造516がそれに合わせて構成される第2周波数帯域の周波数を有する電流が少なくとも1つの放射構造514内で流れることを阻止する。一般的な意味で、スリーブ構造516は帯域消去フィルタの1つの形であるオープン/ショート送信共振器とみなすことができる。
【0111】
このために、少なくとも1つのスリーブ構造516は、一端部で少なくとも1つの放射構造512−1、512−2の少なくとも1つの平面放射要素514に電気的に接続されている少なくとも2つの平面導電性要素518−1、518−2を備える。
【0112】
例示の目的で、少なくとも1つのスリーブ構造516は、2つの平面導電性要素518−1、518−2を備えて示される。しかしながら、少なくとも1つの帯域消去フィルタ構造516はこれに関して限定されない。さらに、少なくとも1つのスリーブ構造は、少なくとも1つの放射構造の前後および左右に配置されている4つのスリーブ構造を有してもよい。
【0113】
さらに、少なくとも1つのスリーブ構造516における少なくとも2つの平面導電性要素518−1、518−2の各々は、第2周波数帯域の周波数の波長の約4分の1(λ/4)に相当する電気的長さを有する。言い換えると、少なくとも2つの平面導電性要素518−1、518−2の各々は、第2周波数帯域の周波数の波長の4分の1(λ/4)から、例えば0〜5%外れた個々の電気的長さを有する。
【0114】
少なくとも2つの平面導電性要素518−1、518−2を少なくとも1つの平面放射要素514の両側に隣接して配置することにより、高度に結合された(highly-coupled)共振挙動が得られるため、これらの平面導電性要素518−1、518−2の電気的長さを個々に構成することが有利であると判明している。高度に結合された共振挙動は、少なくとも1つのスリーブ構造516を離調(mistune)させることができる。
【0115】
さらに、少なくとも1つのスリーブ構造516における少なくとも2つの平面導電性要素518−1、518−2は、少なくとも1つの放射構造512−1、512−2の少なくとも1つの平面放射要素514の方向に略平行な方向に延びている。言い換えると、少なくとも2つの平面導電性要素518−1、518−2は、少なくとも1つの平面放射要素514と同じ方向に延びている。
【0116】
例示の目的で、少なくとも1つの平面放射要素514は、逆L字形を有して、したがって2つの方向、すなわちグランドプレーンに対して水平方向および横方向に延びて示される。少なくとも2つの平面導電性要素518−1、518−2も2つの方向に延び、すなわち両方向は、少なくとも1つの平面放射要素514が延びている水平方向および横方向のそれぞれに略平行である。
【0117】
アンテナシステム500の例示的な構成において、少なくとも1つのスリーブ構造516における少なくとも2つの平面導電性要素518−1、518−2と、少なくとも1つの放射構造512−1、512−2における少なくとも1つの平面放射要素514とは、いずれも同じ面に配置される。例示の目的で、少なくとも1つの平面放射要素514および少なくとも2つの平面導電性要素518−1、518−2は、誘電基板の同じ面に(例えば印刷/エッチングにより)設けられるものとして示される。
【0118】
アンテナシステム500のさらに例示的な構成において、少なくとも1つの平面放射要素514と少なくとも2つの平面導電性要素518−1、518−2とは、互いに略平行な方向に延びるだけでなく、少なくとも1つのスリーブ構造516における少なくとも2つの平面導電性要素518−1、518−2の各々は、少なくとも1つの放射構造512−1、512−2の少なくとも1つの平面放射要素514に対して等距離に配置される。
【0119】
この等距離の配置により、少なくとも1つの平面放射要素514と少なくとも2つの平面導電性要素518−1、518−2との両方は、少なくとも1つのスリーブ構造516における少なくとも2つの平面導電性要素518−1、518−2の内側および少なくとも1つの放射構造512−1、512−2の少なくとも1つの放射要素514の外側に対向縁部を有する。したがって、少なくとも1つの平面放射要素514および少なくとも2つの平面導電性要素518−1、518−2の両方に流れる電流が互いに打ち消し合う。
【0120】
アンテナシステム500の別の例示的な構成において、少なくとも1つのスリーブ構造516における少なくとも2つの平面導電性要素518−1、518−2の各々と、少なくとも1つの放射構造512−1、512−2における少なくとも1つの平面放射要素514との間に、それぞれのスリットが形成される。言い換えると、少なくとも2つのスリットは、少なくとも2つの平面導電性要素518−1、518−2の各々と少なくとも1つの平面放射要素514とにより取り囲まれる(または囲まれる)領域によってそれぞれ画成される。
【0121】
これらの少なくとも2つのスリットの各々は、少なくとも1つの放射構造512−1、512−2の少なくとも1つの平面放射要素514の先端から、少なくとも2つの平面導電性要素518−1、518−2のうちの対応する1つの平面導電性要素と少なくとも1つの平面放射要素514との電気接続部まで横方向に延びている。したがって、先端では、少なくとも2つの平面導電性要素518−1、518−2の各々と少なくとも1つの放射要素514とは、互いに同一平面上にある。
【0122】
要するに、少なくとも2つの平面導電性要素518−1、518−2と、これらの平面導電性要素518−1、518−2が電気的に接続されている少なくとも1つの平面放射要素514とを有するこの構成により、少なくとも1つのスリーブ構造516は第2周波数帯域の周波数の電流が流れることを阻止するため、非近接場において第2周波数帯域の放射電力を減衰させる。
【0123】
特に、少なくとも1つのスリーブ構造516における少なくとも2つの平面導電性要素518−1、518−2は、端部が短絡した送電線として作用する。ガウスの法則を適用することにより、少なくとも2つの平面導電性要素518−1、518−2の内側を流れる電流は、少なくとも1つの平面放射要素514の外側を流れる別の電流と反対でなければならない。
【0124】
内側および外側という用語は、少なくとも2つの平面導電性要素518−1、518−2と少なくとも1つの平面放射要素514とのそれぞれの対向縁部を指す。したがって、少なくとも1つの平面放射要素514の外側を流れる電流は、短絡した送電線に遭遇する。
【0125】
少なくとも1つのスリーブ構造516における少なくとも2つの平面導電性要素518−1、518−2は、第2周波数帯域の周波数の波長の約4分の1(λ/4)に相当する電気的長さを有するため、少なくとも1つの平面放射要素514の外側を流れる電流が遭遇する周波数のインピーダンスは無限である。
【0126】
したがって、少なくとも2つの平面導電性要素518−1、518−2と、これらの平面導電性要素518−1、518−2が電気的に接続されている少なくとも1つの平面放射要素514とを有するこの構成により、少なくとも1つのスリーブ構造516は第2周波数帯域の周波数の電流が流れることを阻止する。
【0127】
次に
図7Aおよび
図7Bを参照すると、本発明の第6の実施形態によるアンテナシステム600の例示的な概略図、およびアンテナシステム600が備える第1アンテナ素子の正面図が示される。アンテナシステム600は
図6Aおよび
図6Bのアンテナシステム500に基づいており、対応する部品は対応する参照符号および用語で示される。簡潔にするために、対応する部品の説明は省略されている。
【0128】
図7Aおよび
図7Bのアンテナシステム600は、第1アンテナ素子610が相互接続された3つの放射構造612−1、612−2を備える。これらの放射構造612−1、612−2の各々が少なくとも1つのスリーブ構造616−1、616−2を含む点でアンテナシステム500とは異なる。
【0129】
さらに、少なくとも1つのスリーブ構造616−1、616−2の各々は、第2周波数帯域の同じ周波数を減衰させるように構成される。スリーブ構造616−1は、2つの平面導電性要素618−1、618−2を備える。スリーブ構造616−2は、2つの平面導電性要素618−3、618−4を備える。加えて、少なくとも1つのスリーブ構造616−1、616−2の各々は、3つの放射構造612−1、612−2のうちの異なる放射構造の1つの平面放射要素614に電気的に接続されている。
【0130】
要するに、少なくとも2つの平面導電性要素618−1、618−2、少なくとも2つの平面導電性要素618−3、618−4、およびこれらの平面導電性要素618−1、618−2、618−3、618−4が電気的に接続されている少なくとも1つの平面放射要素614とを有するこの構成により、少なくとも1つのスリーブ構造は第2周波数帯域の周波数の電流が流れることを阻止するため、非近接場において第2周波数帯域の放射電力を減衰させる。
【0131】
この有利な効果が
図7C、
図7D、および
図7Eに関して示され、これらの図は、本発明の第6の実施形態によるアンテナシステム600の、第2アンテナ素子への干渉による影響のシミュレーション結果、第1アンテナ素子によるフィルタリング効果、および第1アンテナ素子と第2アンテナ素子とのデカップリング効果を示す。
【0132】
特に、アンテナシステム600についての結果が2ポート散乱パラメータ(またはsパラメータ)シミュレーションの形で提供される。2ポートは、第2アンテナ素子120の給電線(
図7Aおよび
図7BにP1Eで示す)と第1アンテナ素子610の給電線(P2Eで示す)のそれぞれに接続される。
【0133】
シミュレーション結果からわかるように、反射係数S11は干渉による影響の低減を示し、ここでは、減衰は、少なくとも1つのスリーブ構造の各々がそれに合わせて構成される第2周波数範囲の周波数に相当する。第1アンテナによるフィルタリング効果を示す反射係数S22および逆方向利得係数S21は、約2.3GHzの周波数におけるデカップリング効果を示す。反射係数S11、S22は逆挙動を示す。
【0134】
最後に、様々な実施形態の前述したアンテナシステムの各々が、車両屋根で使用されるアンテナモジュールに備えられてもよい。このために、アンテナモジュールは、アンテナシステムに加えて、アンテナシステムを外部の影響から保護するハウジングと、アンテナシステムを上に配置するためのベースと、アンテナ整合回路と、外部からアンテナシステムの第1アンテナ素子および第2アンテナ素子へ電気信号を送信し、第1アンテナ素子および第2アンテナ素子から電気信号を受信するための電気接続部とを備える。さらに、車両屋根は、アンテナシステムの第1の平面アンテナ素子および第2アンテナ素子に対するグランドプレーンを提供する。