特許第6537672号(P6537672)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6537672プッシャのための係止デバイスを含む計時器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6537672
(24)【登録日】2019年6月14日
(45)【発行日】2019年7月3日
(54)【発明の名称】プッシャのための係止デバイスを含む計時器
(51)【国際特許分類】
   G04B 3/04 20060101AFI20190625BHJP
   G04B 43/00 20060101ALI20190625BHJP
【FI】
   G04B3/04 G
   G04B43/00 Z
【請求項の数】12
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-96929(P2018-96929)
(22)【出願日】2018年5月21日
(65)【公開番号】特開2018-197748(P2018-197748A)
(43)【公開日】2018年12月13日
【審査請求日】2018年5月21日
(31)【優先権主張番号】17172883.5
(32)【優先日】2017年5月24日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】507276380
【氏名又は名称】オメガ・エス アー
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・レッチェル
(72)【発明者】
【氏名】グレゴリー・キスリング
【審査官】 深田 高義
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−292139(JP,A)
【文献】 特開2010−127682(JP,A)
【文献】 スイス国特許発明第700535(CH,A5)
【文献】 スイス国特許発明第504044(CH,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B 3/04
G04B 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース(1)、前記ケースのケース中板(2)内に組み付けたプッシャ(4)、及び前記プッシャを係止するように構成した係止デバイスを含む計時器であって、前記プッシャは、ユーザにより前記プッシャの作動軸内で並進移動を受けることができるように構成し、前記係止デバイスは、封鎖手段(8)及び制御手段(10)を含み、前記制御手段(10)は、前記プッシャの並進移動を封鎖する係止位置と、前記プッシャの並進移動が自由である非係止位置との間で前記封鎖手段の変位を制御するように構成し、前記制御手段は、前記作動軸に平行な全体平面内に延在し、前記全体平面内に第1の位置と第2の位置との間を移動可能に配置し、前記第1の位置及び前記第2の位置は、前記制御手段によって駆動する前記封鎖手段の前記係止位置及び前記非係止位置にそれぞれ対応する、計時器において、前記封鎖手段(8)は、前記作動軸に沿って並進移動するように移動可能に配置し、前記制御手段によって、前記封鎖手段が前記プッシャに対する軸方向当接部を形成する前記係止位置と、前記係止位置から後退する前記係止位置との間を前記作動軸に沿って変位する機能を有し、前記制御手段は、前記目的で、前記封鎖手段を前記作動軸内で駆動する手段を含むことを特徴とする、計時器。
【請求項2】
前記駆動手段(13)は、前記封鎖手段を径方向に位置決めするカム(13a、13b)を含み、前記カムは、前記封鎖手段が含む従動手段(14a)と協働することを特徴とする、請求項1に記載の計時器。
【請求項3】
前記駆動手段は、弾性戻り手段(15)を含み、前記弾性戻り手段(15)は、前記従動手段と前記カム(13a)との接触を維持しようとすることを特徴とする、請求項2に記載の計時器。
【請求項4】
前記カムは、溝(13b)を呈し、前記従動手段は、前記溝に挿入するピン(14a)であることを特徴とする、請求項2又は3に記載の計時器。
【請求項5】
前記カムは、リブによって形成し、前記従動手段は、スロットであることを特徴とする、請求項2又は3に記載の計時器。
【請求項6】
前記ケースは、ベゼル(11)を含むか又は支持する、請求項1から5のいずれか一項に記載の計時器において、前記制御手段(10)は、リングによって形成し、前記リングは、前記ケース中板(2)と前記ベゼル(11)との間に組み付け、前記作動軸に実質的に直交する軸周りに回転可能に組み付けるようにすることを特徴とする、計時器。
【請求項7】
前記ケースは、ベゼル(11)を含むか又は支持する、請求項1から6のいずれか一項に記載の計時器において、前記制御手段(10)は、回転可能に配置した前記ベゼル(11)によって形成することを特徴とする、計時器。
【請求項8】
前記封鎖手段(8)は、前記プッシャ(4)を囲む円筒形スリーブ(8a)であり、前記プッシャの前記作動軸内で、前記係止位置と非係止位置との間で変位する機能を有することを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の計時器。
【請求項9】
前記封鎖手段(8)は、摺動子(8b)であり、前記摺動子(8b)は、前記プッシャの前記作動軸において、前記係止位置と非係止位置との間に摺動可能に配置することを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の計時器。
【請求項10】
前記プッシャ(4)は、頭部(5)を含み、前記封鎖手段(8)は、前記頭部又は支承部から短い距離で、前記封鎖手段(8)に対し前記プッシャを係止するように配置するように構成することを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の計時器。
【請求項11】
前記係止デバイスは、前記封鎖手段(8)の位置の認識を容易にする視覚手段を含むことを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の計時器。
【請求項12】
前記係止デバイスは、位置決め手段を含み、前記位置決め手段は、前記第1の位置及び前記第2の位置の一方又はもう一方に前記制御手段(10)を維持するように構成することを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の計時器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時計製造の分野に関する。本発明は、より詳細には、計時機のユーザによって作動することができるプッシャ、特にプッシュボタンのための係止デバイスを含む計時器に関する。
【背景技術】
【0002】
プッシュボタンの機能を停止状態にすることを可能にする係止デバイスを含む計時器の製造は、公知である。こうしたデバイスの目的は、プッシュボタンが偶発的に作動しないようにすること、又はダイバーズウォッチの場合、プッシュボタンが外圧の影響下で作動しないようにすることである。
【0003】
多数の特許出願が、そのような係止デバイスを記載しており、公知である。例えば、特許文献1は、螺入プッシャを提案しており、このプッシャは、プッシャと同軸であるねじ付きリングによって固定することができる。ねじ付きリングは、プッシャのペンダント上に螺入され、プッシャ頭部の下で、プッシャが作動しないように支持をもたらすことができる。特許文献2は、このデバイスの一変形形態を記載している。
【0004】
特許文献3は、回転リングを用いて封鎖することができる時計プッシャを提案しており、回転リングは、プッシャと同軸であり、回転リングの回転により、プッシャ頭部の下で支持をもたらす機能を有するスリーブを軸方向に変位させる。
【0005】
しかし、これらの係止デバイスは、複数の欠点を呈する。プッシャは、同軸制御リングによって囲まれており、この制御リングは、ユーザが回転できなければならず、したがって、時計ケースのケース中板の外周面を越えて十分に径方向に延在させなければならないため、このプッシャは、突出させなければならない一方で、行程が短くもあり、プッシャの作動をより困難にし、あまり正確ではなくなる。通常の長さを呈するようにプッシャの行程を細長くするには、プッシャのロッドは、細長くしなければならず、このため、プッシャの頭部がケース中板から比較的離れており、時計の美観を不利に変化させる。実際、制御リングは、制御リングを容易に操作するために、ケース中板を越える一定の高さ、及び通常、プッシャの頭部の直径を超える一定の直径を呈さなければならない。したがって、そのような係止デバイスを備えるプッシュボタンは、堅い外観を有する。更に、回転移動を並進移動に変換するために用いるねじ山は、変換が偶発的に逆転することがないよう、十分に小さなものでなければならない。言い換えれば、あらゆる摩擦は、意図しないねじの緩みに耐えるのに十分なだけのものでなければならない。したがって、デバイスを係止状態と非係止状態との間で切り替えるためには、制御リングの回転数が多いことに由来する、長い操作期間が必要である。したがって、クロノグラフを備える時計が一般にそうであるように、複数のプッシャを含む時計の場合、この係止動作をプッシャのそれぞれに対し連続的に実施しなければならないため、係止動作に特に時間がかかるという結果になりうる。
【0006】
上述の問題に対し部分的に解決策を提供するプッシャ係止デバイスも公知である。したがって、特許文献4は、プッシャの作動軸に直交するように垂直に移動する構造によって、プッシャの作動を封鎖することを提案している。この構造は、プッシャのための上側当接部を画定し、上側当接部は、係止デバイスの制御手段として働く回転ベゼルの位置に応じて、プッシャ頭部の裏側に配置される。この構造は、そしてしたがって当接部は、この回転ベゼルの下側面によって直接作動できるようにするために、回転ベゼルの下に配置される。この実施形態は、プッシャがその静止位置にある(プッシャが作動していない)ときにプッシャ頭部の後部を時計ケースに挿入しなければならないということにより、第1の欠点を有する。第2の欠点は、プッシャが、プッシャ頭部の上側部にのみ作用する小型の当接部によって係止されることに由来する。第3の欠点は、係止デバイス、特に、ケース中板内で垂直に移動する骨組みが煩雑なものであることから生じ、ケース中板が、この目的のため、凹部を呈さなければならない。更に、骨組みの垂直移動は、該ケース内部でこの移動を可能とするために、比較的背の高いケースを必要とする。
【0007】
特許文献5の図7図8及び図11からも公知であるのは、プッシャのための係止デバイスであり、この係止デバイスでは、管及びこの管を通るピストンがプッシャ頭部と一体化しており、管は、この頭部に固定され、ピストンは、管内で、2つの垂直位置の間、即ち、プッシャの作動軸に直交する軸内で2つの位置の間を移動可能に配置されている。回転ベゼルは、その下側面に溝を有し、ピストンの一方の末端部は、この溝内に収容されている。この溝は、管内でピストンが2つの末端位置の間を作動することを可能にするように変化する深さを有する一部分(45)を有し、これら2つの末端位置はそれぞれ、プッシャの係止位置及び非係止位置を画定する。組立が困難な小型構成要素部品を有するこの実施形態は、複雑である。管及びピストンがプッシャと一体化しているため、比較的大きな径方向凹部をベゼル及びケース中板の上部内に設け、作動軸内で変位する間、ピストン及びピストンの管がプッシャと共に径方向に変位し、非係止位置に至る必要がある。したがって、このシステムは煩雑である。これは、プッシャを係止するためにピストンが垂直移動を表し、それゆえにケースがプッシャの上で比較的高い高さを必要とするということによって、一層悪化する。更に、ピストンを有するプッシャをケースに組み込むことは困難である。実際、回転ベゼル及び固定ベゼルは、係止デバイスを備えるプッシャの導入後に、ピストンを意図するとおりの垂直向きで必ず維持するよう注意しながら組み付けなければならない。具体的には、プッシャ自体は、2つの上述のベゼルの前又は同時に組み付けなければならず、その後、プッシャの交換は、ベゼルを前もって分解しなければ不可能になる。結論として、従来技術のこの実施形態は、複数の欠点を呈していることがわかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】CH678138
【特許文献2】US9105413
【特許文献3】CH707595
【特許文献4】US2010/014233
【特許文献5】EP1582945
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、少なくとも1つのプッシャに対し係止デバイスを備える計時器を提案することによって、従来技術の様々な欠点に対処することであり、この係止デバイスは、従来技術に比べて煩雑ではなく、目立たず、使用が容易である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的をふまえ、本発明は、ケース、ケースのケース中板内に組み付けたプッシャ、及びプッシャを係止するように構成した係止デバイスを含む計時器に関し、このプッシャは、ユーザによってプッシャの作動軸内で並進移動を受けることができるように配置する。係止デバイスは、封鎖手段及び制御手段を含み、制御手段は、プッシャの並進移動を封鎖する係止位置と、プッシャの並進移動が自由である非係止位置との間で封鎖手段の変位を制御するように構成する。制御手段は、作動軸に平行な全体平面内に延在し、この全体平面内で、制御手段によって駆動する封鎖手段の係止位置及び非係止位置にそれぞれ対応する第1の位置と第2の位置との間を移動可能に配置する。本発明によれば、封鎖手段は、作動軸に沿って並進移動するように移動可能に配置し、制御手段によって、封鎖手段がプッシャの軸方向当接部を形成する係止位置と、係止位置から後退する非係止位置との間をこの作動軸に沿って変位する機能を有する。制御手段は、この目的で、封鎖手段を作動軸内で駆動する手段を含む。
【0011】
有利な一実施形態によれば、計時器は、ベゼルを含み、制御手段は、ケース中板とベゼルとの間に組み付けた中間リングによって形成し、このリングは、作動軸に実質的に直交して軸周りに回転可能に組み付ける。
【0012】
別の有利な実施形態によれば、計時器は、制御手段を形成する回転ベゼルを含む。
【0013】
好ましい実施形態によれば、封鎖手段は、円筒形スリーブであり、この円筒形スリーブは、プッシャを囲み、プッシャの作動軸内で移動可能に配置する。
【0014】
1つの特定の実施形態によれば、封鎖手段は、摺動子であり、この摺動子は、プッシャの作動軸内で移動可能に配置する。
【0015】
別の有利な実施形態によれば、プッシャは、頭部を含み、頭部又は支承部から短い距離で、封鎖手段に対しプッシャを係止するように配置するように構成する。
【0016】
別の有利な実施形態によれば、制御手段は、封鎖手段を径方向に位置決めするカムを有し、このカムは、封鎖手段が含む従動手段と協働する。
【0017】
有利な変形形態によれば、計時器は、従動手段とカムとの接触を維持しようとする弾性戻り手段を含む。
【0018】
別の有利な変形形態によれば、カムは、溝によって形成し、従動手段は、この溝に挿入するピンである。
【0019】
1つの特定の変形形態によれば、カムは、制御手段の下に突出するリブ/レールによって形成し、従動手段は、封鎖手段内に機械加工したスロットである。
【0020】
別の有利な変形形態によれば、係止デバイスは、封鎖手段の位置の認識を容易にする視覚手段を含む。
【0021】
別の有利な変形形態によれば、係止デバイスは、位置決め手段を含み、位置決め手段は、制御手段を第1の位置及び第2の位置内で固定することを目的とし、したがって、第1の位置及び第2の位置は、2つの安定位置を画定する。
【0022】
1つの特定の変形形態によれば、制御手段の第1の位置及び第2の位置のそれぞれは、例えば弾性要素上に組み付けたボールによって形成した圧力点によって保証される。
【0023】
本発明の他の詳細は、添付の図面を参照しながら以下の説明を精査すれば明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】係止デバイスが係止位置にある、本発明による計時器の第1の実施形態の横断面図である。
図2】係止デバイスが係止位置にある、本発明による計時器の第1の実施形態の線A−Aに従った断面図である。
図3】係止デバイスが非係止位置にある、図1及び図2と同様の断面図である。
図4】係止デバイスが非係止位置にある、図1及び図2と同様の断面図である。
図5】本発明による計時器の第2の実施形態の断面図であり、係止位置にある係止デバイスを示す。
図6】本発明による計時器の第2の実施形態の断面図であり、非係止位置にある係止デバイスを示す。
図7】本発明による計時器の第2の実施形態の断面図であり、係止位置にある係止デバイスを示す。
図8】本発明による計時器の第2の実施形態の断面図であり、中間位置にある係止デバイスを示す。
図9】本発明による計時器の第2の実施形態の断面図であり、非係止位置にある係止デバイスを示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1から図4を参照しながら、本発明の第1の実施形態を以下で説明する。図面は、計時器の部分断面図を表し、ケース1の中板2に配置したプッシュボタン及びその係止デバイスを示す。プッシュボタンは、具体的には、クロノグラフ機構のための制御手段を形成する。このプッシュボタンは、ケース中板2が含むねじ立て部に螺入するペンダント3、及び、ユーザによって作動することができるようにするため、計時器の外部に部分的に延在するプッシャ4から構成される。プッシャ4は、頭部5及びロッド6を含み、頭部5及びロッド6は、ペンダント3が含む開口において作動軸20で摺動するように構成され、作動軸20は、ケースの全体平面に対し平行にケース中板を通過する。第1のばね7は、(全ての図で示すように)ケース中板2に対してプッシャ4を遠位位置に維持しようとする。
【0026】
計時器は、係止デバイスを含み、係止デバイスは、作動軸20内で並進移動するように移動可能な封鎖手段8を備える。図1から図4に示す第1の実施形態では、封鎖手段8は、プッシャ4を囲む円筒形スリーブ8aによって形成し、このスリーブは、内側肩部を有し、内側肩部は、少なくとも係止デバイスが係止位置にあるときにプッシャ頭部5のための当接部12を画定する。
【0027】
係止デバイスは、制御手段10も含み、制御手段10は、ケース中板2に対して、ケース1の全体平面に直交する軸周りに回転可能に、したがって作動軸20に直交する軸周りに回転可能に、組み付ける。一般的に、制御手段は、作動軸に対し実質的に平行であるケースの全体平面内に延在し、この全体平面内で、係止デバイスの係止位置及び非係止位置にそれぞれ対応する第1の位置と第2の位置との間を移動可能に配置する。好ましくは、制御手段10は、ユーザが容易に作動することができるように、少なくとも部分的にケースの外部に延在する。図1から図4に示す第1の実施形態では、制御手段は、ケース1が含むケース中板2とベゼル11との間に組み付けた回転リング10である。
【0028】
次に、係止機構の動作を詳細に説明する。封鎖手段8は、図1及び図2に表す係止位置と図3及び図4に表す非係止位置との間で変位する機能を有する。係止位置では、封鎖手段8の当接部12が、プッシャ4の頭部5の真下に位置し、プッシャ4が並進移動するのを実質的に封鎖し、その際、プッシャ4が作動しないようにしてこのプッシャに関連する機能を実施させないようにする。非係止位置では、封鎖手段は、作動軸内で並進移動されており、プッシャ4を並進移動状態に解放し、動作させるようにする。
【0029】
封鎖手段を係止位置と非係止位置との間で変位することは、制御手段10によって制御し、制御手段10は、封鎖手段8に動的に結合している。この動的な結合を行うために、制御手段10は、封鎖手段8が含む従動手段と協働する駆動手段を含む。第1の実施形態では、駆動手段は、カム13a及び戻り手段15によって形成する一方で、従動手段は、ピン14aによって形成し、ピン14aは、カム13aと接触し、カム従動子の役割をする。弾性手段15(具体的には螺旋ばね)は、制御手段の2つの作動方向でピン14aをカム13aと接触した状態で維持することを可能にする。ここで表す変形形態では、カム13aは、回転リング10の内側凹部の側方面によって画定し、回転リング10の外形は、2つの角度位置の間で一定の径方向の変形を呈し、2つの角度位置はそれぞれ、係止位置及び非係止位置に対応する第1の位置及び第2の位置を画定する。
【0030】
係止位置及び非係止位置が安定した位置であることを保証するために、係止デバイスは、好ましくは、制御手段を上述の第1の位置及び第2の位置で固定するように構成した位置決め手段を含む。特に、制御手段は、制御手段を前記第1の位置及び前記第2の位置に維持することを保証するのに十分であり得る低い摩擦で、枢動可能に組み付けることができる。図示する位置決め手段は、主に、カム13aの、勾配が実質的にゼロの勾配部によって、カム13aの2つの末端部13cに形成し、2つの末端部13cはそれぞれ、前記第1の位置及び前記第2の位置を画定する。カムの勾配部は、円形基準系内でゼロ勾配部が円形経路に対応するように考慮する。
【0031】
この位置決めは、一方で回転リング10内に形成した内側舌部16によって、もう一方でケース中板2によって画定した支承面によって、第1の位置及び第2の位置に対応する2つの末端径方向位置でピン14aを径方向に保持することによっても実現又は強化することができる。中央区域内のカムの傾斜部により、制御手段の小さな角度変位に応じて、封鎖手段の比較的急速な変位が生じる一方で、カムの末端部13cの実質的ゼロ勾配部は、従動要素からのトルクを制御手段に向けて伝達しないようにする。したがって、約30度の回転リングの回転により、封鎖手段を係止位置と非係止位置との間で両方向に変位させることが可能になる。
【0032】
制御手段位置決め手段が、圧力点を含むという提案も可能であり、この圧力点は、前記第1の位置及び前記第2の位置、すなわち係止位置又は非係止位置のいずれかに到達する直前に通過しなければならない点である。このことにより、制御手段の2つの機能位置を更に確実化できる。圧力点の通過は、更に、ユーザに、触知できる係止又は非係止の表示をもたらす。
【0033】
図5から図9は、第1の実施形態に示した解決策に対する代替解決策を含む第2の実施形態を示す。これらの変形形態は、互いに別個であるため、一緒に組み合わせることができる。本発明を2つの図示する実施形態に制限するものではなく、異なる代替形態の組合せ及びそれらの等価物も含むことは、明らかである。
【0034】
第2の実施形態の第1の変形形態では、封鎖手段は、ケース中板が含む径方向摺動部9内で、プッシャの作動軸方向で摺動するように構成した摺動子8bである。摺動部9は、蟻継ぎ形状又はあらゆる他の適切な外形を呈することができる。
【0035】
第2の変形形態では、制御手段10は、ケースが含むか又は支持する回転ベゼル11によって直接形成する。
【0036】
別の変形形態によれば、カムは、溝13bによって形成し、溝13bは、ピン14aを少なくとも部分的に収容し、このピンの直径幅を実質的に有する。この構成は、デスモドロミック制御に対応し、このデスモドロミック制御のため、封鎖手段の駆動手段の弾性戻り手段を省き、係止デバイスの寸法を制限することができる。だがそれでもなお、構成要素部品間のあらゆる遊動を吸収し、封鎖手段のあらゆる小さな寄生並進移動をなくすため、このケース内に小型の弾性戻り手段を保持することが、都合がよい場合がある。
【0037】
図示する2つの実施形態に対する一代替様式では、カムは、突出リブであっても差し支えなく、従動手段は、封鎖手段内に機械加工した、リブを受けるスロットであってもよく、リブをスロット内で摺動させることにより、係止手段を径方向に変位させる。
【0038】
係止デバイスは、封鎖手段の位置の認識を容易にする視覚手段を含むこともできる。この視覚手段は、典型的には、マークであり、制御手段上、又は封鎖手段上に直接位置することができる。図示の実施形態では、封鎖手段は、非係止位置では隠れている一方で、係止位置では見える。係止手段の可視性は、明るい色によって強化でき、この場合、係止位置を知ることを可能にする視覚手段である。
【0039】
図4及び図9では、制御手段10がそれぞれ、複数の溝13b、複数のカム13aを含み、複数のプッシャを同時に係止することが容易に実現されることにも気付くであろう。
【0040】
したがって、提案した異なる解決策より、単一の移動による係止のために用いる、より容易でより迅速な、1つ又は複数のプッシャのための係止デバイスを製造することが可能である。封鎖手段がケース中板内に完全に後退できることにより、係止デバイスを目立たなくする。更に、従来のプッシャの作動は、係止デバイスが非係止位置に置かれている場合、係止デバイスの存在により、簡便さが損なわれることはない。最後に、ベゼルの高さで制御手段を配置し直すことにより、本発明による係止デバイスの配置では、事実上、プッシャの寸法を全く増大させないことが可能になり、これにより、時計ケースに対し従来の外観の保持を可能にし、外見は、そのような係止デバイスを伴わない、対応するケースと視覚的に同一であるように見える。
【符号の説明】
【0041】
1 ケース
2 ケース中板
3 ペンダント
4 プッシャ
5 頭部
6 ロッド
7 ばね
8 封鎖手段
8a 円筒形スリーブ
8b 摺動子
9 摺動部
10 制御手段
11 ベゼル
12 当接部
13 駆動手段
13a カム
13b 溝
13c 末端部
14a 従動手段
14a ピン
15 弾性戻り手段
16 内側舌部
20 作動軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9