【実施例】
【0035】
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明は、この実施例に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することができる。
【0036】
<粘性流体の原料および製造>
図4〜
図9に示す配合の原料から、実施例1〜18の粘性流体および比較例1〜8の粘性流体を製造した。以下に、各原料の詳細を示す。
【0037】
図4〜
図9に示す各「粘着付与剤」は、
図10に示す配合(重量比)の原料を以下の方法に従って反応させることで得られる。
【0038】
まず、1リットル容量のセパラブルフラスコにポリイソシアネートを図に示す量入れて、窒素を流しながらポリオールを攪拌しながら図に示す量添加する。内容物が均一になったことを確認後、1時間かけて80〜90℃になるように、ゆっくりと昇温する。目的の温度に昇温してから2時間後にイソシアネート基含有率をJIS Z1603−1:2007に基づく方法(ポリウレタン原料芳香族イソシアネート試験方法)に準拠して測定する。そして、粘着付与剤Aでは、イソシアネート基含有率が、5.3〜5.6%の範囲内になっていることを確認する。粘着付与剤Bでは、イソシアネート基含有率が、7.4〜7.7%の範囲内になっていることを確認する。粘着付与剤Cでは、イソシアネート基含有率が、2.3〜2.6%の範囲内になっていることを確認する。粘着付与剤Dでは、イソシアネート基含有率が、6.2〜6.6%の範囲内になっていることを確認する。この際、イソシアネート基含有率が、各粘着付与剤に応じた範囲内になっていない場合には、反応時間を延長する。
【0039】
イソシアネート基含有率が、各粘着付与剤に応じた範囲内になっていることを確認後、モノオールを図に示す量、ゆっくりと滴下し、2時間反応を行わせる。2時間経過後に、再度、上記方法に従ってイソシアネート基含有率を測定し、イソシアネート基含有率が0.5%以下になっていることを確認する。そして、イソシアネート基含有率が0.5%以下になっていることを条件として、図に示す各「粘着付与剤」が得られる。
【0040】
なお、上述のようにして得られた「粘着付与剤A」の理論分子量は1973であり、「粘着付与剤B」の理論分子量は1459であり、「粘着付与剤C」の理論分子量は3849であり、「粘着付与剤D」の理論分子量は1670である。
【0041】
また、
図4〜
図9に示す各「プレポリマー」は、
図11に示す配合(重量比)の原料を以下の方法に従って反応させることで得られる。
【0042】
まず、1リットル容量のセパラブルフラスコにポリイソシアネートを図に示す量入れて、窒素を流しながらポリオールを攪拌しながら図に示す量添加する。内容物が均一になったことを確認後、触媒(ジブチルチンジラウレート(DBTDL)0.3g)を添加する。そして、1時間かけて80〜90℃になるように、ゆっくりと昇温する。目的の温度に昇温してから2時間後にイソシアネート基含有率をJIS Z1603−1:2007に基づく方法(ポリウレタン原料芳香族イソシアネート試験方法)に準拠して測定する。そして、プレポリマーAでは、イソシアネート基含有率が、2.0〜2.3%の範囲内になっていることを確認する。プレポリマーB、およびEでは、イソシアネート基含有率が、1.0〜1.3%の範囲内になっていることを確認する。プレポリマーCでは、イソシアネート基含有率が、0.7〜1.0%の範囲内になっていることを確認する。プレポリマーDでは、イソシアネート基含有率が、0.5〜0.8%の範囲内になっていることを確認する。そして、イソシアネート基含有率が、各プレポリマーに応じた範囲内になっていない場合には、反応時間を延長する。
【0043】
イソシアネート基含有率が、各プレポリマーに応じた範囲内になっていることを確認後、ビニルエーテル、アクリレート、アリルエーテルの少なくとも1つを図に示す量、ゆっくりと滴下し、2時間反応を行わせる。2時間経過後に、再度、上記方法に従ってイソシアネート基含有率を測定し、イソシアネート基含有率が0.5%以下になっていることを確認する。そして、イソシアネート基含有率が0.5%以下になっていることを条件として、図に示す各「プレポリマー」が得られる。
【0044】
なお、上述のようにして得られた「プレポリマーA」の理論分子量は3981であり、「プレポリマーB」の理論分子量は7467であり、「プレポリマーC」の理論分子量は10650であり、「プレポリマーD」の理論分子量は17016であり、「プレポリマーE」の理論分子量は7396である。
【0045】
・ポリオールa;ポリプロピレングリコール(PPG)、商品名:アクトコールD400、三井化学(株)製
・ポリオールb;ポリプロピレングリコール(PPG)、商品名:サンニックスPP−200、三洋化成(株)製
・ポリオールc;ポリプロピレングリコール(PPG)、商品名:アクトコールD3000、三井化学(株)製
・ポリオールd;2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、商品名:BEPD、Perstorp製
・モノオール;2−エチルヘキシルグリコール、商品名:EHG、日本乳化剤(株)製
・ポリイソシアネートa;MDI、商品名:フォームライトMI、BASF INOACポリウレタン(株)製
・ポリイソシアネートb;TDI、商品名:ルプラネートT−80、BASF製
・ビニルエーテル;ヒドロキシブチルビニルエーテル、日本カーバイド(株)製
・アクリレート;ヒドロキシエチルアクリレート、大阪有機化学工業(株)製
・アリルエーテル;ヒドロキシエチルアリルエーテル、日本乳化剤(株)製
【0046】
上述のようにして得られた各「粘着付与剤」と各「プレポリマー」と後述するチオールとロジン系、若しくは、テルペン系粘着付与剤とを
図4〜9に示す配合比となるように計量し、80℃に加温した後に、混合撹拌する。なお、チオールの配合比は、上記プレポリマーに対するモル比であり、粘着付与剤の配合比は、上記プレポリマーに対する重量部である。これにより、実施例1〜18の粘性流体および比較例1〜8の粘性流体が得られる。
【0047】
・チオールA;官能基数3、重量分子量399、トリメチロールプロパントリス、商品名:TMMP、SC有機化学(株)製
・チオールB;官能基数4、重量分子量489、ペンタエリスリトールテトラキス、商品名:PEMP、SC有機化学(株)製
・チオールC;官能基数2、ブタンジオールビスチオプロピオネート、商品名:BDTP、淀化学(株)製
・チオールD;官能基数6、ジペンタエリスリトールヘキサキス、商品名:DPMP、SC有機化学(株)製
・ロジン系粘着付与剤;ロジンエステル、商品名:スーパーエステルA100、荒川化学工業(株)製
・テルペン系粘着付与剤;テルペンフェノール樹脂、商品名:YSポリスターT100、ヤスハラケミカル(株)製
【0048】
なお、各ウレタンプレポリマーと反応が行われるチオール基の平均官能基数を、
図4〜
図9の「平均官能基数(チオール基)」の欄に示す。また、粘着付与剤の全配合比を、
図4〜
図9の「粘着付与剤合計」の欄に示し、その粘着付与剤の全配合比に対するウレタン系粘着付与剤の比率を、
図4〜
図9の「ウレタン系粘着付与剤比率」の欄に示す。
【0049】
<粘着組成物の製造>
上述のように製造された実施例1〜18の粘性流体、および、比較例1〜8の粘性流体を用いて、粘着組成物を製造した。詳しくは、離型フィルムに、実施例1〜18の粘性流体、若しくは、比較例1〜8の粘性流体を、70μmの厚さとなるように、塗布する。この際、コンマコーター、ダイコーター、グラビアコーター等の塗布装置を用いることが好ましい。特に、塗布時の粘性流体の温度調整により、粘性流体の粘度を調整することが可能であることから、ダイコーターを用いることが好ましい。そして、離型フィルムに塗布された粘性流体に、空気の存在下において、800mJ/cm
2(365nm積算光量)のUVが照射され、各粘性流体が硬化する。これにより、離形フィルム上に粘着組成物が製造される。
【0050】
<粘着組成物の物性評価>
上述のように製造された実施例1〜18の粘着組成物、および、比較例1〜8の粘着組成物に対して、以下の方法によって物性評価を行なった。
【0051】
まず、JIS
Z 0237に基づく方法(90°剥離試験方法)に準拠して、粘着組成物のポリプロピレン製の板に対する剥離強度(N/25mm)を測定した。その測定結果を、
図4〜
図9の「90°剥離強度(対PP板)」の欄に示しておく。
【0052】
また、上述した方法に準拠して、耐熱保持力(mm)を測定した。その測定結果を、
図4〜
図9の「耐熱保持力(対SUS板)」の欄に示しておく。
【0053】
さらに、上述した方法に準拠して、フォーム密着性(N/25mm)を測定した。その測定結果を、
図4〜
図9の「フォーム密着性」の欄に示しておく。
【0054】
以上の評価結果から、粘着組成物の粘着付与剤として、ウレタン系の粘着付与剤を採用することで、粘着力の高い粘着組成物を製造できることが解る。具体的には、実施例1〜18の全ての粘着組成物には、粘着付与剤として、ウレタン系粘着付与剤が採用されている。そして、実施例1〜18の粘着組成物では、剥離強度(対PP板),耐熱保持力(対SUS板),フォーム密着性に関して、全て、良好な測定結果となっている。つまり、ウレタン系粘着付与剤が配合されている粘着組成物は、ポリプロピレン製の板、SUS板、および、ウレタンフォームに対して、非常に高い密着性を有していることが解る。特にウレタンフォームに対して、多孔質表面であることから接触面積が小さく、柔らかくたわみ、低い押圧力で圧着しても密着性を有していることが解る。
【0055】
一方、比較例5の粘着組成物には、粘着付与剤として、ウレタン系粘着付与剤が採用されておらず、ロジン系粘着付与剤のみが採用されている。そして、比較例5の粘着組成物では、耐熱保持力(対SUS板),フォーム密着性に関して、適切でない測定結果となっている。つまり、ウレタン系粘着付与剤以外の粘着付与剤が配合されている粘着組成物は、SUS板、ウレタンフォームに対して、密着性が悪いことが解る。このことから、粘着組成物の粘着付与剤として、ウレタン系粘着付与剤を採用することで、ウレタンフォームおよび、被着体との密着性の向上に有効であり、粘着力の高い粘着組成物を製造できることが解る。
【0056】
ただし、粘着組成物の粘着付与剤として、ウレタン系粘着付与剤を採用した場合であっても、配合比が少なすぎると、ウレタンフォームに対する密着性が低下する。具体的には、比較例1の粘着組成物では、ウレタンプレポリマーの100重量部に対するウレタン系粘着付与剤の配合比は、15重量部であり、フォーム密着性に関して、適切でない測定結果となっている。また、粘着組成物の粘着付与剤として、ウレタン系粘着付与剤を採用した場合であっても、配合比が多すぎると、SUS板に対する密着性が低下する。具体的には、比較例2の粘着組成物では、ウレタンプレポリマーの100重量部に対するウレタン系粘着付与剤の配合比は、47.5重量部であり、耐熱保持力(対SUS板)に関して、適切でない測定結果となっている。このため、ウレタン系粘着付与剤を採用する場合において、ウレタンプレポリマーの100重量部に対するウレタン系粘着付与剤の配合比は、20〜45重量部であることが好ましい。
【0057】
また、粘着組成物の粘着付与剤として、ウレタン系粘着付与剤を採用した場合であっても、ウレタン系粘着付与剤の分子量が大きすぎると、ポリプロピレン製の板に対する密着性が低下する。具体的には、比較例7の粘着組成物では、ウレタン系粘着付与剤の分子量が3849であり、剥離強度(対PP板)に関して、適切でない測定結果となっている。このため、ウレタン系粘着付与剤を採用する場合において、ウレタン系粘着付与剤の分子量は、誤差を考慮して、3000以下であることが好ましい。
【0058】
さらに言えば、ウレタン系粘着付与剤を採用する場合に、粘着付与剤の原料のポリイソシアネートとして、MDIを採用することで、粘着組成物の粘着力を高くすることが可能となる。具体的には、例えば、実施例13の粘着組成物では、ウレタン系粘着付与剤の原料のポリイソシアネートとして、MDIが採用され、実施例18の粘着組成物では、ウレタン系粘着付与剤の原料のポリイソシアネートとして、TDIが採用されている。そして、実施例13の粘着組成物の剥離強度(対PP板),フォーム密着性に関する測定結果は、実施例18の粘着組成物の剥離強度(対PP板),フォーム密着性に関する測定結果より、良好な測定結果となっている。このため、ウレタン系粘着付与剤の原料のポリイソシアネートとして、MDIを採用することが好ましい。
【0059】
また、粘着組成物の粘着付与剤として、ウレタン系粘着付与剤だけでなく、ロジン系粘着付与剤若しくは、テルペン系粘着付与剤を採用することで、粘着組成物の粘着力が高くなる。具体的には、実施例4〜14、および、実施例16〜18の粘着組成物には、粘着付与剤として、ウレタン系粘着付与剤だけでなく、ロジン系粘着付与剤若しくは、テルペン系粘着付与剤が採用されている。一方、実施例1〜3、および、実施例15の粘着組成物には、粘着付与剤として、ウレタン系粘着付与剤だけが採用されている。そして、実施例4〜14、および、実施例16〜18の粘着組成物の剥離強度(対PP板),耐熱保持力(対SUS板),フォーム密着性に関する測定結果は、実施例1〜3、および、実施例15の粘着組成物の剥離強度(対PP板),耐熱保持力(対SUS板),フォーム密着性に関する測定結果より、概ね良好な測定結果となっている。このことから、粘着組成物の粘着付与剤として、ウレタン系粘着付与剤だけでなく、ロジン系粘着付与剤若しくは、テルペン系粘着付与剤を採用することで、粘着組成物の粘着力が高くなることが解る。
【0060】
ただし、粘着組成物の粘着付与剤として、ウレタン系粘着付与剤だけでなく、ウレタン系粘着付与剤以外の粘着付与剤を採用する場合に、粘着付与剤の全量に対するウレタン系粘着付与剤の量の比率、つまり、ウレタン系粘着付与剤比率が低すぎると、SUS板に対する密着性が低下する。具体的には、比較例6の粘着組成物では、ウレタン系粘着付与剤比率は0.22であり、耐熱保持力(対SUS板)に関して、適切でない測定結果となっている。このため、粘着付与剤として、ウレタン系粘着付与剤だけでなく、ウレタン系粘着付与剤以外の粘着付与剤を採用する場合において、ウレタン系粘着付与剤比率は、誤差を考慮して、0.3〜1であることが好ましい。
【0061】
また、粘着組成物の原料として配合されるチオールの平均官能基数は、低すぎても、高すぎても、粘着組成物の粘着力が低下する。具体的には、比較例3の粘着組成物では、チオールの平均官能基数は2.9であり、耐熱保持力(対SUS板)に関して、適切でない測定結果となっている。また、比較例4の粘着組成物では、チオールの平均官能基数は4.2であり、フォーム密着性に関して、適切でない測定結果となっている。このため、誤差を考慮して、チオールの平均官能基数は、3.0〜4.0であることが好ましい。
【0062】
また、粘着組成物の原料として配合されるウレタンプレポリマーの分子量は、大きすぎると、粘着組成物の粘着力が低下する。具体的には、比較例8の粘着組成物では、ウレタンプレポリマーの分子量は17016であり、剥離強度(対PP板)、耐熱保持力(対SUS板)に関して、適切でない測定結果となっている。一方、実施例1〜実施例18の粘着組成物では、ウレタンプレポリマーの分子量は3981〜10650であり、剥離強度(対PP板)、耐熱保持力(対SUS板)、ウレタン密着性に関して、良好な測定結果となっている。このため、ウレタンプレポリマーの分子量は、誤差を考慮して、2000〜15000以下であることが好ましい。