(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2溝部は、前記ポート部の軸方向に見たときに扇形状または半円状に形成され、その円弧部分が前記ポート部の外周面から開放している、請求項10又は11に記載のオイルシールキャップ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述のオイルシールキャップのうち底板部と円筒部とを有するオイルシールキャップは、その円筒部を貫通孔の内周面に密着させることにより、潤滑油の漏れ及び貫通孔からの抜けを防止している。当該キャップは、金属製の剛性部材を内蔵することにより、その剛性(弾性)によって円筒部を貫通孔の内周面に密着させて潤滑油の漏れ及び貫通孔からの抜けを防止することができる。当該キャップは、簡易的な形状であるため、金属製の剛性部材を内蔵する状態に容易に作製可能であり、径方向に変形し易い形状であるため、剛性部材の剛性を利用して好適に貫通孔に取り付けられる。
【0007】
一方、上述のオイルシールキャップのうち油孔が貫通するように形成された本体部と油孔を塞ぐ栓部材とを有するオイルシールキャップでは、本体部が貫通孔に嵌め込まれる。この本体部は、栓部材を着脱可能とするために厚さを確保する必要があるため、径方向に変形し難い形状となっている。そのため、このオイルシールキャップは、本体部が剛性部材から作製されたとしても、その剛性を利用して好適に貫通孔に取り付け易いとは言い難い構造となっている。
【0008】
そのため、特許文献1にも開示されるように、後者のオイルシールキャップでは、本体部をシール部材及び抜け止め部材を介してキャリアの貫通孔に嵌め込むことにより潤滑油の漏れ及び貫通孔からの抜けを防止する必要性が生じ得る。また、これに伴い、キャリアの貫通孔には、上述のシール部材及び抜け止め部材を保持するための加工を行う必要性が生じ得る。しかしながら、このような加工に手間がかかるという問題がある。
【0009】
本発明は、上記実情を考慮してなされたものであって、加工に手間をかけることなく閉鎖対象部分に取り付けることができ、且つ油の交換作業等の通し作業を効率良く行うことができるオイルシールキャップ及びそれを備える偏心揺動型歯車装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、第1孔が貫通するように形成された本体部と、前記第1孔の貫通方向に見て前記本体部の外周部の内側で前記本体部に設けられ、前記第1孔の貫通方向と同方向に延びる第2孔が貫通するように形成されたポート部と、前記ポート部に着脱可能に設けられ、前記第2孔を塞ぐ栓部材と、を備え、前記第2孔は、前記第1孔を通して、前記本体部に対し前記ポート部が設けられた側とは反対側に向けて開放しており、前記本体部及び前記ポート部のうちの少なくとも一方の表面に、当該表面に対して突出する又はへこむ係止部が設けられている、オイルシールキャップ、である。
【0011】
本発明に係るオイルシールキャップによれば、ポート部に栓部材が着脱可能に設けられることで、栓部材の設置のために本体部の形状が制約されない。そのため、本体部として、閉鎖対象部分に取付可能な簡易的な形状であり且つ閉鎖対象部分に特殊な加工を要求しない部材を採用できる。これにより、このオイルシールキャップは、加工に手間をかけることなく閉鎖対象部分に取り付けられ得る。
また、本体部を取り外すことなく栓部材だけを取り外して、油を第1孔及び第2孔の内側に通すことができる。しかも、本体部又はポート部の係止部を工具で係止することにより、本体部の移動を防止することができるので、栓部材の着脱作業を容易に行うことができる。
これにより、本発明に係るオイルシールキャップによれば、加工に手間をかけることなく閉鎖対象部分に取り付けることができ、且つ油の通し作業を効率良く行うことができる。
【0012】
前記本体部は、前記第1孔の貫通方向に見たときの形状が円形状に形成され、前記ポート部の前記第2孔の内周面に雌ねじ部が形成され、前記栓部材の外周面に雄ねじ部が形成されていてもよい。
具体的には、このような構成において、本体部又はポート部の係止部を工具で係止することにより、栓部材を第2孔に対して回転させる際に本体部が一緒に回転することを防止することができるので、栓部材の着脱作業を容易に行うことができる。
【0013】
また、前記栓部材には、当該栓部材を回転させるための工具を係止可能な操作用溝が形成されていてもよい。
この構成によれば、操作用溝を利用して栓部材を回転させることができる。これにより、工具によって栓部材を容易に回転させることができる。
【0014】
また、前記本体部は、前記第1孔が形成された底板部と、前記底板部の外周部から突出した周壁部と、を有していてもよい。
より具体的には、前記底板部は、前記第1孔の貫通方向に見たときの形状が円形状に形成され、前記周壁部は、円筒状に形成されていてもよい。
この構成では、本体部が円形の閉鎖対象部分に取り付けられる場合に、本体部が簡易的で且つ径方向に変形し易い形状をとるため、金属等の剛性部材を利用することにより本体部を円形の閉鎖対象部分に容易に取り付けることができ、これによって、円形の閉鎖対象部分に、加工に手間をかけることなくオイルシールキャップを取り付けることができる。
【0015】
また、前記本体部は、前記周壁部に設けられ且つ前記底板部の中央側とは反対側に向けて突出するつば部をさらに有していてもよい。
この構成によれば、つば部が閉鎖対象部分の適所又はその周辺の部分に当接されることにより、オイルシールキャップの軸方向の移動を抑制できる。これにより、栓部材の着脱作業の作業効率を向上できる。
【0016】
また、前記ポート部は、前記底板部のうちの前記周壁部が突出する側の面に設けられていてもよい。
この構成によれば、オイルシールキャップの寸法を抑制できる。
【0017】
また、前記ポート部は、前記底板部のうちの前記周壁部が突出する側の面とは反対側の面に設けられていてもよい。
この構成によれば、ポート部の先端において栓部材を工具で操作し、工具からポート部を介して本体部に軸方向に沿う力が作用した場合に、当該力が本体部の周壁部を径方向の外側に向けて変形させる。これにより、本体部が円形の閉鎖対象部分に取り付けられる場合に、周壁部が閉鎖対象部分の内周面に押し付けられるので、オイルシールキャップの移動を抑制できる。これにより、栓部材の着脱作業の作業効率を向上できる。
【0018】
また、前記ポート部は、前記第2孔の貫通方向に見たときの形状が多角形状に形成され、前記係止部は、多角形状の前記ポート部の外周面に形成される角部分によって構成されていてもよい。
この構成によれば、ポート部を容易に形成することができ、生産効率を向上できる。
【0019】
また、前記ポート部は、前記第2孔の貫通方向に見たときの形状が円形状に形成され、前記係止部は、前記ポート部の外周面に形成された溝によって構成され、前記溝は、前記ポート部の軸方向における一端面から当該軸方向に沿って他端面側に延びる第1溝部と、前記第1溝部の前記他端面側の端部から前記ポート部の周方向に延びる第2溝部と、を有していてもよい。
このような構成によれば、工具をポート部の軸方向に沿って移動させ、工具の一部を溝の第1溝部から第2溝部に移動させ、この工具の一部が第2溝部に至った際に工具を回転させて、その後、この工具の一部を第2溝部に周方向及び軸方向から当接可能な状態にセットすることにより、オイルシールキャップの回転及び軸方向の移動を防止できる。これにより、栓部材の着脱作業の作業効率を極めて効果的に向上できる。
【0020】
また、前記溝は、前記ポート部の中心を挟んで対向するように一対形成されていてもよい。
また、前記第2溝部は、前記ポート部の軸方向に見たときに扇形状または半円状に形成され、その円弧部分が前記ポート部の外周面から開放していてもよい。
【0021】
また、本発明は、第1の部材と第2の部材との間で所定の回転数比で回転数を変換して駆動力を伝達する歯車装置であって、偏心部と、前記偏心部が挿入される挿通孔を有すると共に歯部を有する揺動歯車と、前記第1の部材及び前記第2の部材の一方に取り付け可能に構成され、前記揺動歯車の前記歯部と噛み合う内歯を有する外筒と、前記第1の部材及び前記第2の部材の他方に取り付け可能に構成されるキャリアと、前記のオイルシールキャップと、を備え、前記キャリア及び前記外筒により、前記揺動歯車を収容する閉空間が形成され、前記キャリア及び前記外筒の一方には、前記閉空間に連通する連通孔が形成され、前記オイルシールキャップは、前記連通孔を塞いでいる、偏心揺動型歯車装置、である。
【0022】
本発明に係る偏心揺動型歯車装置によれば、オイルシールキャップにおいて、ポート部に栓部材が着脱可能に設けられることで、栓部材の設置のために本体部の形状が制約されない。そのため、本体部として、閉鎖対象部分である連通孔に取付可能な簡易的な形状であり且つ閉鎖対象部分に特殊な加工を要求しない部材を採用できる。これにより、加工に手間をかけることなくオイルシールキャップを連通孔に取り付けることができる。
また、本体部を取り外すことなく栓部材だけを取り外して、油を第1孔及び第2孔の内側に通して、閉空間から油を排出したり、閉空間に油を供給したりすることができる。しかも、本体部又はポート部の係止部を工具で係止することにより、本体部の移動を防止することができるので、栓部材の着脱作業を容易に行うことができる。
これにより、加工に手間をかけることなくオイルシールキャップを連通孔に取り付けることができ、且つ油の通し作業を効率良く行うことができる。
【0023】
また、前記連通孔には、外部側を指向する段差面が形成されており、前記オイルシールキャップは、前記本体部を前記段差面に当接させた状態で前記連通孔に取り付けられていてもよい。
この構成によれば、オイルシールキャップが連通孔の軸方向に移動することを抑制できる。これにより、栓部材の着脱作業の作業効率を向上できる。
【0024】
また、前記オイルシールキャップにおいて、前記本体部は、前記第1孔が形成された底板部と、前記底板部の外周部から突出した周壁部と、を有し、前記ポート部は、前記底板部のうちの前記周壁部が突出する側の面に設けられ、前記本体部は、前記周壁部に設けられ且つ前記底板部の中央側とは反対側に向けて突出するつば部をさらに有しており、前記オイルシールキャップは、前記連通孔の外部側の端部の周縁部又は前記連通孔の外部側の端部に形成された面取り部に前記つば部を当接させた状態で前記連通孔に取り付けられていてもよい。
この構成によれば、オイルシールキャップが連通孔の軸方向に移動することを抑制できる。これにより、栓部材の着脱作業の作業効率を向上できる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、加工に手間をかけることなく閉鎖対象部分に取り付けることができ、且つ油の通し作業を効率良く行うことができるオイルシールキャップ及びそれを備える偏心揺動型歯車装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照しながら本発明の各実施の形態について説明する。
【0028】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態に係る偏心揺動型歯車装置(以下、歯車装置と称する)1は、例えばロボットの旋回胴や腕関節等の旋回部、各種工作機械の旋回部等に減速機として適用されるものである。
【0029】
図1に示すように、この歯車装置1は、図示省略する入力軸を回転させることによってクランク軸10を回転させ、クランク軸10の偏心部10a,10bに連動して揺動歯車14,16を揺動回転させることにより、入力回転から減速した出力回転を得るように構成されている。これにより、例えばロボットのベース(一方の相手部材)と旋回胴(他方の相手部材)との間で、相対回転を生じさせることができる。例えばベースは、第1の部材として例示され、例えば旋回胴は、第2の部材として例示される。
【0030】
歯車装置1は、外筒2と、キャリア4と、複数(例えば3つ)のクランク軸10と、第1揺動歯車14と、第2揺動歯車16と、複数(例えば3つ)の伝達歯車20と、オイルシールキャップ30と、を備えている。
【0031】
外筒2は、歯車装置1の外面を構成するものであり、略円筒形状を有している。外筒2の内周面には、多数のピン溝2bが形成されている。各ピン溝2bは、外筒2の軸方向に延びるように配置され、軸方向に直交する断面において半円形の断面形状を有している。これらのピン溝2bは、外筒2の内周面に周方向に等間隔で並んでいる。
【0032】
外筒2は、多数の内歯ピン3を有している。各内歯ピン3は、ピン溝2bにそれぞれ取り付けられている。具体的に、各内歯ピン3は、対応するピン溝2bにそれぞれ嵌め込まれており、外筒2の軸方向に延びる姿勢で配置されている。これにより、多数の内歯ピン3は、外筒2の周方向に沿って等間隔で並んでいる。これらの内歯ピン3によって内歯3aが構成される。複数の内歯ピン3からなる内歯3aには、第1揺動歯車14の第1外歯14a及び第2揺動歯車16の第2外歯16aが噛み合う。
【0033】
外筒2には、フランジ部が設けられており、このフランジ部は、例えばロボットのベースに固定するための締結具(ボルト)を挿通するための挿通孔2aが形成されている。
【0034】
キャリア4は、外筒2と同軸上に配置された状態で外筒2内に収容されている。キャリア4は、外筒2に対して同じ軸回りに相対回転する。具体的に、キャリア4は、外筒2の径方向内側に配置されており、この状態で、軸方向に互いに離間して設けられた一対の主軸受6によって外筒2に対して相対回転可能に支持されている。
【0035】
キャリア4は、基板部4aと複数(例えば3つ)のシャフト部(図示省略)とを有する基部5と、端板部7と、を備えている。
【0036】
基板部4aは、外筒2内において軸方向の一端部近傍に配置されている。この基板部4aの径方向中央部には円形の貫通孔4dが設けられている。貫通孔4dは、基板部4aをその厚み方向に貫通している。貫通孔4dの周囲には、複数(例えば3つ)のクランク軸取付孔4e(以下、単に取付孔4eという)が周方向に等間隔で設けられている。取付孔4eは、基板部4aをその厚み方向に貫通している。
【0037】
基板部4aには、キャリア4を例えばロボットの旋回胴に固定するための図示省略する締結具(ボルト)を締結するための締結孔が形成されている。
【0038】
端板部7は、基板部4aに対して軸方向に離間して設けられており、外筒2内において軸方向の他端部近傍に配置されている。端板部7の径方向中央部には貫通孔7aが設けられている。貫通孔7aは、端板部7をその厚み方向に貫通している。貫通孔7aの周囲には、複数(例えば3つ)のクランク軸取付孔7b(以下、単に取付孔7bという)が基板部4aの複数の取付孔4eと対応する位置に設けられている。取付孔7bは、端板部7をその厚み方向に貫通している。外筒2内には、端板部7及び基板部4aの互いに対向する双方の内面と、外筒2の内周面とで囲まれた閉空間Sが形成されている。つまり、外筒2とキャリア4とによって閉空間Sが形成されている。
【0039】
貫通孔4d、7a及び取付孔4e、7bは、外部と前記閉空間Sとを連通させる連通孔となっている。
【0040】
複数の取付孔4eの各々には、オイル封止部材25が取り付けられている。オイル封止部材25は、円板状の底板部25bと、この底板部25bの外周部から突出した円環状の円筒部25cと、を有しており、有底筒状に形成されている。円筒部25cは、取付孔4eの内周面に密着している。これにより、キャリア4内に封入された潤滑油が漏れないようになっている。
【0041】
オイル封止部材25は、内面を構成する金属製の剛性部材である有底筒状の内面形成部26と、内面形成部26の外面に被覆された樹脂製の外面形成部27と、で形成されている。オイル封止部材25では、内面形成部26の剛性(弾性)によって円筒部25cが取付孔4eの内周面に押し付けられている。なお、内面形成部26の底部及び外面形成部27の底部によって、底板部25bが形成されており、内面形成部26の円筒部及び外面形成部27の円筒部によって、円筒部25cが形成されている。
【0042】
3つのシャフト部は、基板部4aと一体的に設けられており、基板部4aの一主面(内側面)から端板部7側へ直線的に延びている。この3つのシャフト部は、周方向に等間隔で配設されている。各シャフト部は、図示省略するボルトによって端板部7に締結されている。これにより、基板部4a、シャフト部及び端板部7が一体化されている。
【0043】
3つのクランク軸10は、例えば、外筒2内においてキャリア4の中心軸の周囲に等間隔で配置されている。各クランク軸10は、一対のクランク軸受12a,12bによりキャリア4に対して軸回りに回転可能に支持されている。具体的に、各クランク軸10の軸方向の一端部に第1クランク軸受12aが取り付けられており、この第1クランク軸受12aは、基板部4aの取付孔4eに取り付けられている。一方、各クランク軸10の軸方向の他端部に第2クランク軸受12bが取り付けられており、この第2クランク軸受12bは、端板部7の取付孔7bに取り付けられている。これにより、クランク軸10は、基板部4a及び端板部7に回転可能に支持されている。
【0044】
各クランク軸10は、軸本体10cと、この軸本体10cに一体的に形成された上述の偏心部10a,10bと、を有する。第1偏心部10aと第2偏心部10bは、両クランク軸受12a,12bによって支持された部分の間に軸方向に並んで配置されている。第1偏心部10aと第2偏心部10bは、それぞれ円柱形状を有しており、いずれも軸本体10cの軸心に対して偏心した状態で軸本体10cから径方向外側に張り出している。第1偏心部10aと第2偏心部10bは、それぞれ軸心から所定の偏心量で偏心しており、互いに所定角度の位相差を有するように配置されている。
【0045】
第1揺動歯車14は、外筒2内の前記閉空間Sに配設されているとともに各クランク軸10の第1偏心部10aに第1ころ軸受18aを介して取り付けられている。第1揺動歯車14は、各クランク軸10が回転して第1偏心部10aが偏心回転すると、この偏心回転に連動して内歯ピン3に噛み合いながら揺動回転する。
【0046】
第1揺動歯車14は、外筒2の内径よりも少し小さい大きさを有している。第1揺動歯車14は、上述の第1外歯14aと、中央部貫通孔14bと、複数(例えば3つ)の第1偏心部挿通孔14cと、複数(例えば3つ)のシャフト部挿通孔(図示省略)と、を有している。第1外歯14aは、揺動歯車14の周方向全体に亘って滑らかに連続する波形状を有している。
【0047】
中央部貫通孔14bは、第1揺動歯車14の径方向中央部に設けられている。3つの第1偏心部挿通孔14cは、第1揺動歯車14において中央部貫通孔14bの周囲に周方向に等間隔で設けられている。各第1偏心部挿通孔14cには、第1ころ軸受18aが介装された状態で各クランク軸10の第1偏心部10aがそれぞれ挿通されている。
【0048】
複数のシャフト部挿通孔は、第1揺動歯車14において中央部貫通孔14bの周りに周方向に等間隔で設けられている。各シャフト部挿通孔は、周方向において、例えば、第1偏心部挿通孔14c間の位置にそれぞれ配設されている。各シャフト部挿通孔には、対応するシャフト部が遊びを持った状態で挿通されている。
【0049】
第2揺動歯車16は、外筒2内の前記閉空間Sに配設されているとともに各クランク軸10の第2偏心部10bに第2ころ軸受18bを介して取り付けられている。第1揺動歯車14と第2揺動歯車16は、第1偏心部10aと第2偏心部10bの配置に対応して軸方向に並んで設けられている。第2揺動歯車16は、各クランク軸10が回転して第2偏心部10bが偏心回転すると、この偏心回転に連動して内歯ピン3に噛み合いながら揺動回転する。
【0050】
第2揺動歯車16は、外筒2の内径よりも少し小さい大きさを有しており、第1揺動歯車14と同様の構成となっている。すなわち、第2揺動歯車16は、上述の第2外歯16a、中央部貫通孔16b、複数(例えば3つ)の第2偏心部挿通孔16c及び複数(例えば3つ)のシャフト部挿通孔(図示省略)を有している。これらは、第1揺動歯車14の第1外歯14a、中央部貫通孔14b、複数の第1偏心部挿通孔14c及び複数のシャフト部挿通孔と同様の構造を有している。各第2偏心部挿通孔16cには、第2ころ軸受18bが介装された状態でクランク軸10の第2偏心部10bが挿通されている。
【0051】
各クランク軸10の端板部7の取付孔7b内に取り付けられる部分の軸方向外側の部位には、それぞれ伝達歯車20が取り付けられている。各伝達歯車20は、入力ギア8aと噛み合う外歯20aを有している。入力ギア8aは、図示省略する駆動モータの駆動力が入力される入力部として機能する入力軸から回転駆動力を受ける。各伝達歯車20は、入力ギア8aの回転を対応するクランク軸10に伝達する。
【0052】
各伝達歯車20は、対応するクランク軸10の軸本体10cの端部にそれぞれ外嵌されている。各伝達歯車20は、クランク軸10の回転軸と同じ軸回りにこのクランク軸10と一体的に回転する。各伝達歯車20が入力ギア8aによって駆動されると、各クランク軸10は、軸回りに回転する。各クランク軸10が回転すると、偏心部10a,10bに取り付けられた揺動歯車14,16は、偏心部10a,10bの回転に伴って内歯ピン3に噛み合いながら揺動し、これによってキャリア4及び外筒2が互いに相対的に回転する。
【0053】
オイルシールキャップ30は、キャリア4における基板部4aの径方向中央部に形成された貫通孔4dに取り付けられており、当該貫通孔4dを塞いでいる。
図1及び
図2に示すように、オイルシールキャップ30は、本体部31と、本体部31の外周部の内側で当該本体部31に設けられたポート部32と、ポート部32に着脱可能に設けられた栓部材33と、を備えている。
【0054】
本体部31には、第1孔31aが貫通するように形成され、この第1孔31aの貫通方向に見たときに、本体部31は、円形状に形成されている。第1孔31aは、断面円形状の孔であり、本実施の形態では、本体部31の径方向中央部に第1孔31aが形成されている。
【0055】
本体部31は、第1孔31aが形成された円板状の底板部31bと、底板部31bの外周部から突出した円筒状の周壁部31cと、を有しており、有底筒状に形成されている。周壁部31cは、貫通孔4dの内周面に密着している。これにより、キャリア4内に封入された潤滑油が漏れないようになっている。
【0056】
図2(A)に示すように、本体部31は、内面を構成する金属製の剛性部材である有底筒状の内面形成部37と、内面形成部37の外面に被覆された樹脂製の外面形成部36と、で形成されている。本体部31では、内面形成部37の剛性(弾性)によって周壁部31cが貫通孔4dの内周面に押し付けられている。なお、内面形成部37の底部及び外面形成部36の底部によって、底板部31bが形成されており、内面形成部37の円筒部及び外面形成部36の円筒部によって、周壁部31cが形成されている。また、本実施の形態では、樹脂製の外面形成部36が貫通孔4dにおいて閉空間S側を指向するが、これに代えて貫通孔4dから外部側を指向する場合には、良好な耐候性を確保することができる。
【0057】
図2(A)に示すように、本実施の形態では、貫通孔4dが、閉空間S側に形成される第1孔部4d1と、第1孔部4d1よりも閉空間Sの外部側で第1孔部4d1に並んで形成され且つ第1孔部4d1よりも大径の第2孔部4d2と、第1孔部4d1及び第2孔部4d2の間に形成され外部側を指向する段差面4d3と、を有しており、第2孔部4d2の外部側の端部には面取り部4d4が形成されている。オイルシールキャップ30は、本体部31の底板部31bの外周部を段差面4d3に当接させた状態で貫通孔4dに設けられている。これにより、オイルシールキャップ30が貫通孔4dの軸方向に沿って閉空間S側に移動することが防止されている。また、周壁部31cは、貫通孔4dのうちの第2孔部4d2の内周面に密着している。
【0058】
ポート部32は、底板部31bのうちの周壁部31cが突出する側の面、すなわち金属製の内面形成部37の底板部分に設けられ、外部に臨む状態となっている。ポート部32は、本体部31の第1孔31aの貫通方向に見て本体部31の外周部の内側で本体部31に設けられている。ポート部32は、内面形成部37に例えば溶接で固定される。また、ポート部32には、第1孔31aの貫通方向と同方向に延びる第2孔32aが貫通するように形成されている。第2孔32aは、第1孔31aを通して、本体部31に対しポート部32が設けられた側(外部側)とは反対側(閉空間S側)に向けて開放している。
【0059】
第2孔32aの内周面には雌ねじ部32bが形成されている。図示の例では、雌ねじ部32bは、第2孔32aの外部側の端部から、この第2孔32aの外部側の端部と閉空間S側の端部との中間点を少し閉空間S側に越えた位置まで延びている。一方、栓部材33の外周面には、雌ねじ部32bに螺合する雄ねじ部33bが形成されている。栓部材33の外周面の雄ねじ部33bが第2孔32aの内周面の雌ねじ部32bに螺合されることにより、栓部材33は、第2孔32aを塞ぐ。この例では、第2孔32aの内周面の軸方向の全域に雌ねじ部32bが形成されていないことで、栓部材33を第2孔32aの内周面の雌ねじ部32bにねじ込んだ際に、最終的に、栓部材33の雄ねじ部33bの先端が、第2孔32aの内周面における雌ねじ部32bと非ねじ部との境界部分に軸方向で当接する。この状態において、栓部材33によって第2孔32aを密閉することができる。なお、栓部材33の雄ねじ部33b及び第2孔32aの雌ねじ部32bは、ストレートネジであってもよく、あるいはテーパーネジであってもよい。
【0060】
また、ポート部32の表面には、当該表面に対して突出する係止部38aが設けられている。係止部38aは、工具によって周方向に係止されるために形成されている。詳しくは、
図2(B)に示すように、本実施の形態のポート部32は、第2孔32aの貫通方向に見たときの形状が多角形状、具体的に六角形状に形成されている。そして、係止部38aが、六角形状のポート部32の外周面に形成される角部分によって構成されている。すなわち、本実施の形態では、6つの係止部38aがポート部32に設けられている。
【0061】
また、栓部材33には、当該栓部材33を回転させるための工具を係止可能な操作用溝33cが形成されている。操作用溝33cは、栓部材33の一方の主面(外部側の主面)に形成された溝であり、多角形状(図例では六角形状)の断面を有している。この操作用溝33cに工具の先端部を挿入し、工具を回すことにより、栓部材33をポート部32に対して容易に回転させることができる。これにより、栓部材33をポート部32から取り外したり、ポート部32に装着したりすることができる。栓部材33が本体部31から取り外された場合には、本体部31がキャリア4に取り付けられた状態でも、第2孔32a及び第1孔31aを通して外部と閉空間Sとが連通するため、第2孔32a及び第1孔31aから閉空間Sに潤滑油を供給することができる。また、第2孔32a及び第1孔31aから、閉空間Sに封入された潤滑油を排出することもできる。
【0062】
次に、
図3を用いて、本実施の形態に係るオイルシールキャップ30に対する操作方法の一例を説明する。
【0063】
この例では、まず、六角形状の内周面を有する両端が開放した筒状の第1の工具101と、六角形状の外周面を有する棒状の第2の工具102と、が準備される。
図3(A),(B)に示すように、第1の工具101は、その一端部からその内部にポート部32が挿入されるように操作される。この状態において、ポート部32の各係止部38aが、第1の工具100の六角形状の内周面によって係止される。なお、
図3(A)においては、説明の便宜上、第2の工具102が二点鎖線で示されている。
【0064】
次いで、
図3(A)の矢印αに示すように、第1の工具101の他端部からその内部に、第2の工具102が通され、第2の工具102の先端部が、栓部材33の操作用溝33cに挿入される。そして、第2の工具102を回すことにより、栓部材33をポート部32に対して回転させることができる。これにより、栓部材33をポート部32から取り外したり、ポート部32に装着したりすることができる。
【0065】
この際、ポート部32の係止部38aが第1の工具101に係止された状態で当該工具101を回転させないように保持することで、オイルシールキャップ30の全体が貫通孔4dに対して相対回転することが規制されることにより、栓部材33を第2孔32aに対して回転させる際に本体部31が一緒に回転することを防止することができる。これにより、本実施の形態のオイルシールキャップ30によれば、栓部材33の着脱作業を容易に行うことができる。
【0066】
そして、栓部材33がポート部32から取り外された場合には、本体部31がキャリア4に取り付けられた状態でも、第2孔32a及び第1孔31aを通して外部と閉空間Sとが連通するため、第2孔32a及び第1孔31aから閉空間Sに潤滑油を供給することができる。また、第2孔32a及び第1孔31aから、閉空間Sに封入された潤滑油を排出することもできる。
【0067】
以上に説明した本実施の形態によれば、オイルシールキャップ30においてポート部32に栓部材33が着脱可能に設けられることで、栓部材33の設置のために本体部31の形状が制約されない。そのため、本体部31として、貫通孔4dに取付可能な簡易的な形状であり且つ貫通孔4dに特殊な加工を要求しない部材を採用できる。これにより、オイルシールキャップ30は、加工に手間をかけることなく貫通孔4dに取り付けられ得る。
【0068】
具体的に、本実施の形態では、本体部31として、円形状の底板部31bと、底板部31bの外周部から突出した周壁部31cと、を有する部材が採用されている。このような簡易的で且つ径方向に変形し易い形状の部材が本体部31として採用され、且つ金属等の剛性部材(内面形成部37)が利用されることにより、本体部31を貫通孔4dに容易に取り付けることができる。これにより、オイルシールキャップ30が加工に手間をかけることなく貫通孔4dに取り付けられ得る。
【0069】
また、本体部31を取り外すことなく栓部材33だけを取り外して、潤滑油を第1孔31a及び第2孔32aの内側に通すことができる。しかも、ポート部32の係止部38aを工具で係止することにより、本体部31の移動を防止することができるので、栓部材33の着脱作業を容易に行うことができる。具体的に、本実施の形態では、本体部31は、第1孔31aの貫通方向に見たときの形状が円形状に形成され、第2孔32aの内周面に雌ねじ部32bが形成され、栓部材33の外周面に雄ねじ部33bが形成されている。ポート部32の係止部38aを工具で係止することにより、栓部材33を第2孔32aに対して回転させる際に本体部31が一緒に回転することを防止することができる。これにより、栓部材33の着脱作業を容易に行うことができる。
【0070】
したがって、本実施の形態によれば、加工に手間をかけることなくオイルシールキャップ30を貫通孔4dに取り付けることができ、且つ潤滑油等の油の通し作業を効率良く行うことができる。
【0071】
また、栓部材33には、当該栓部材33を回転させるための工具を係止可能な操作用溝33cが形成されているので、操作用溝33cを利用して栓部材33を回転させることができる。これにより、工具によって栓部材33を容易に回転させることができる。
【0072】
また、ポート部32は、底板部31bのうちの周壁部31cが突出する側の面に設けられているので、ポート部32と周壁部31cとが径方向(底板部31bの主面に沿う方向)で重なるため、オイルシールキャップ30の寸法を抑制できる。
【0073】
また、ポート部32は、第2孔32aの貫通方向に見たときの形状が六角形状に形成され、係止部38aは、六角形状のポート部32の外周面に形成される角部分によって構成されている。この構成によって、ポート部32を容易に形成することができ、生産効率を向上できる。
【0074】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態について
図4乃至
図8を用いて説明する。本実施の形態の構成部分のうちの第1の実施の形態の構成部分と同様のものについては、同一の符号を示し、説明は省略する。以下では、第1の実施の形態と相違する構成について主に説明する。
【0075】
本実施の形態では、ポート部322が、第1の実施の形態と異なっている。
図4及び
図5に示すように、本実施の形態のオイルシールキャップ30におけるポート部322は、第2孔32aの貫通方向に見たときの形状が円形状に形成され、係止部38bは、ポート部322の外周面に形成された溝によって構成されている。
【0076】
溝からなる係止部38bは、ポート部322の軸方向における一端面(外部側の面)から当該軸方向に沿って他端面(閉空間S側の面)側に延びる第1溝部38b1と、第1溝部38b1の前記他端面側の端部からポート部322の周方向に延びる第2溝部38b2と、を有している。
図4(C)に示すように、第2溝部38b2は、ポート部322の軸方向に見たときに半円状に形成され、その円弧部分がポート部322の外周面から開放している。すなわち、第2溝部38b2は第1溝部38b1からポート部322の周方向の両側に延びている。このような溝からなる係止部38bが、ポート部322の中心を挟んで対向するように一対形成されている。
【0077】
また、貫通孔4dには、第1の実施の形態で説明した段差面4d3が形成されていない。したがって、オイルシールキャップ30は、貫通孔4dの軸方向に沿って閉空間S側及び外部側に移動することが防止されていない。
【0078】
本実施の形態に係るオイルシールキャップ30に対する操作方法の一例を
図6乃至
図8を用いて説明する。
【0079】
この例では、
図6に示す、両端が開放した筒状に形成され且つその一端部側の内面に互いに対向する一対のピン部103aが設けられた第3の工具103と、第1の実施の形態で説明した第2の工具102と、が準備される。第3の工具103において、一対のピン部103aは、第3の工具103の中心を挟んで互いに対向する位置に設けられている。ピン部103aは、第1溝部38b1に挿入可能であると共に、第2溝部38b2に挿入可能である大きさに形成されている。
【0080】
まず、
図7(A)に示すように、第3の工具103が、ピン部103aの各々を第1溝部38b1に挿入させることにより、その一端部からその内部にポート部322が挿入されるように操作される。そして、
図7(B)に示すように、第3の工具103は、ピン部103aが第2溝部38b2に至るまで操作される。
【0081】
次いで、
図7(B)の矢印βに示すように、第3の工具103がその軸周りに回転される。
図7(C)に示すように、第3の工具103は、ピン部103aが第2溝部38b2のポート部322の軸方向に延びる壁面に周方向で当接又は近接する位置まで移動するように、操作される。この状態においては、
図8にも示すように、ピン部103aが、第2溝部38b2の壁面に周方向及び軸方向から当接可能な状態となる。なお、工具103又はポート部322の軸方向に見て、ピン部103aの長さが第1溝部38b1の径方向の長さと同一である場合には、工具103を回転させることができないため、
図7(A),(B)に示すように、ピン部103aは、第1溝部38b1の径方向の長さよりも小さく形成されている。
【0082】
次いで、
図8に示すように、第3の工具101の他端部からその内部に、第2の工具102が通され、第2の工具102の先端部が、栓部材33の操作用溝33cに挿入される。そして、第2の工具102を回すことにより、栓部材33をポート部32に対して回転させることができる。これにより、栓部材33をポート部32から取り外したり、ポート部32に装着したりすることができる。
【0083】
この際、ポート部322の係止部38bの第2溝部38b2が第3の工具103のピン部103aに周方向及び軸方向から係止された状態で当該工具103を回転させないよう且つ軸方向に移動させないように保持することで、オイルシールキャップ30の全体が貫通孔4dに対して相対回転及び軸方向へ相対移動することが規制される。これにより、栓部材33を第2孔32aに対して回転させる際に本体部31が一緒に回転することを防止することができ、且つ、本体部31が貫通孔4dの軸方向に移動することを防止することができる。これにより、本実施の形態のオイルシールキャップ30によれば、栓部材33の着脱作業を容易に行うことができる。
また、工具103には、貫通孔4dの淵部(周縁部)に当接する係止部103bが設けられてもよい。そして、
図8に示すように、この係止部103bを設けることにより、工具103の内部におけるオイルシールキャップ30の挿入位置を規制するようにしてもよい。
【0084】
栓部材33を第2孔32aに対して回転させる際には、第2の工具102からオイルシールキャップ30を貫通孔4dに押し込む力が生じ得る。本実施の形態では、このような力によってオイルシールキャップ30が移動することが防止され得るため、栓部材33の着脱作業を行い易くなる。とりわけ、本実施の形態では、オイルシールキャップ30が貫通孔4dの軸方向に沿って閉空間S側及び外部側に移動することが防止されていないため、本実施の形態のオイルシールキャップ30が有益に用いられ得る。
なお、ピン部103aが第2溝部38b2に至った際に第3の工具103を回転させる方向は、第2の工具102によって栓部材33を回転させる方向とは、逆方向とすることが好ましい。この場合には、第2の工具102によって栓部材33を回転させた際に一緒に回転しようとする本体部31が、ポート部322の第2溝部38b2を介してピン部103aに直ぐに係止されるため、本体部31の回転を確実に防止することができるからである。
【0085】
以上に説明した本実施の形態によれば、第3の工具103をポート部322の軸方向に沿って移動させ、第3の工具103の一部であるピン部103aを第1溝部38b1から第2溝部38b2に移動させ、ピン部103aが第2溝部38b2に至った際に工具103を回転させて、その後、工具103のピン部103aを第2溝部38b2に周方向及び軸方向から当接可能な状態にセットすることができる。そして、オイルシールキャップ30の回転及び軸方向の移動を防止できる。これにより、栓部材33の着脱作業の作業効率を極めて効果的に向上できる。
【0086】
(第3の実施の形態)
次に、本発明の第3の実施の形態について
図9を用いて説明する。本実施の形態の構成部分のうちの第1及び第2の実施の形態の構成部分と同様のものについては、同一の符号を示し、説明は省略する。以下では、第1及び第2の実施の形態と相違する構成について主に説明する。
【0087】
図9に示すように、本実施の形態では、オイルシールキャップ30の本体部313が、第1及び第2の実施の形態と異なっている。
図9に示すように、本実施の形態に係る本体部313は、第1孔31aが形成された円板状の底板部313bと、底板部313bの外周部から突出した円筒状の周壁部313cと、を有しており、有底筒状に形成されている。周壁部313cは、貫通孔4dの内周面に密着している。
【0088】
本体部313は、内面を構成する金属製の剛性部材である有底筒状の内面形成部373と、内面形成部373の外面に被覆された樹脂製の外面形成部363と、で形成されている。そして、第1の実施の形態と同様のポート部32は、本体部313の底板部313bのうちの周壁部313cが突出する側の面とは反対側の面に設けられ、外部に臨む状態となっている。より詳しくは、この例では、第1孔31aが内面形成部373に形成され、内面形成部373の第1孔31aの周縁部からポート部32が突出するように設けられている。そして、外面形成363は、ポート部32の径方向の外側において内面形成部373の外面を覆っている。
【0089】
本実施の形態によれば、ポート部32の先端において栓部材33を工具で操作し、工具からポート部32を介して本体部313に軸方向に沿う力が作用した場合に、当該力が本体部313の周壁部313cを径方向の外側に向けて変形させる。これにより、本体部313が円形の貫通孔4dに取り付けられる場合に、周壁部313cが貫通孔4dの内周面に押し付けられるので、オイルシールキャップ30の軸方向の移動を抑制できる。これにより、栓部材33の着脱作業の作業効率を向上できる。
【0090】
(第4の実施の形態)
次に、本発明の第4の実施の形態について
図10を用いて説明する。本実施の形態の構成部分のうちの第1乃至第3の実施の形態の構成部分と同様のものについては、同一の符号を示し、説明は省略する。以下では、第1乃至第3の実施の形態と相違する構成について主に説明する。
【0091】
図10に示すように、本実施の形態では、オイルシールキャップ30の本体部314が、第1乃至第3の実施の形態と異なっている。
図10に示すように、本実施の形態に係る本体部314は、第1孔31aが形成された円板状の底板部314bと、底板部314bの外周部から突出した円筒状の周壁部314cと、周壁部314cに設けられ且つ底板部314bの中央側とは反対側に向けて突出するつば部314dと、を有している。
【0092】
周壁部314cは、貫通孔4dのうちの第2孔部4d2の内周面に密着している。また、オイルシールキャップ30は、面取り部4d4につば部314dを当接させた状態で貫通孔4dに取り付けられている。
【0093】
本実施の形態によれば、つば部314dが面取り部4d4に当接されることにより、オイルシールキャップ30の貫通孔4dの軸方向(深さ方向)の移動を抑制できる。これにより、栓部材33の着脱作業の作業効率を向上できる。
【0094】
(第5の実施の形態)
次に、本発明の第5の実施の形態について
図11を用いて説明する。本実施の形態の構成部分のうちの第1乃至第4の実施の形態の構成部分と同様のものについては、同一の符号を示し、説明は省略する。以下では、第1乃至第4の実施の形態と相違する構成について主に説明する。
【0095】
図11に示すように、本実施の形態では、オイルシールキャップ30のポート部325が、第1乃至第4の実施の形態と異なっている。
図11に示すように、ポート部325では、外部側を指向する厚さ方向の一端面に、当該一端面に対してへこむ係止部38cが形成されている。
【0096】
本実施の形態においても、加工に手間をかけることなくオイルシールキャップ30を貫通孔4dに取り付けることができ、且つ潤滑油等の油の通し作業を効率良く行うことができる。
【0097】
(第6の実施の形態)
次に、本発明の第6の実施の形態について
図12を用いて説明する。本実施の形態の構成部分のうちの第1乃至第5の実施の形態の構成部分と同様のものについては、同一の符号を示し、説明は省略する。以下では、第1乃至第5の実施の形態と相違する構成について主に説明する。
【0098】
図12に示すように、本実施の形態では、オイルシールキャップ30の本体部316が、第1乃至第5の実施の形態と異なっている。
図12に示すように、本実施の形態に係る本体部316には、その周壁部の内面から突出する係止部38dが形成されている。一方、ポート部32には、係止部が形成されていない。
【0099】
本実施の形態においても、加工に手間をかけることなくオイルシールキャップ30を貫通孔4dに取り付けることができ、且つ潤滑油等の油の通し作業を効率良く行うことができる。
【0100】
次に、本発明の第7の実施の形態について
図13を用いて説明する。本実施の形態の構成部分のうちの第1乃至第6の実施の形態の構成部分と同様のものについては、同一の符号を示し、説明は省略する。以下では、第1乃至第6の実施の形態と相違する構成について主に説明する。
【0101】
図13(A)に示すように、本実施の形態では、オイルシールキャップ30の本体部317及びポート部327が、第1乃至第6の実施の形態と異なっている。ポート部327は、本体部317の底板部317bの外部側を指向する面に当接するように設けられたポート本体327aと、ポート本体327aから突出して本体部317の第1孔31aを貫通する突出部327bと、を有している。第2孔32aは、ポート本体327a及び突出部327bに跨がって延びている。第2孔32aは、第1孔31aを通して、換言すると第1孔31aの内側を通って、本体部317に対しポート部327が設けられた側とは反対側に向けて開放している。
【0102】
本体部317では、金属製の内面形成部377の外面を被覆する外面形成部367に、突出部327bの先端を覆う延長被覆部367aが形成されている。また、本実施の形態では、内面形成部377の閉空間S側の面における第1孔31aの周縁部と突出部327bとが溶接で固定されている。この溶接部分は、外面形成部367によって覆われている。
【0103】
本実施の形態においても、加工に手間をかけることなくオイルシールキャップ30を貫通孔4dに取り付けることができ、且つ潤滑油等の油の通し作業を効率良く行うことができる。また、ポート部327に底板部317bの第1孔31a(この例では、第1孔31aのうちの内面形成部377に形成された孔部分)から突出する突出部327bが設けられることにより、製造段階において、ポート部327と本体部317との溶接を容易に行うことができる。すなわち、本実施の形態では、内面形成部377の閉空間S側の面における第1孔31aの周縁部と突出部327bとが溶接で固定されている。この部分において溶接を行うことにより、溶接時に本体部317の周壁部317cが邪魔にならないため、容易に溶接(固定作業)を行うことができる。また、製造段階において、突出部327bを第1孔31aに挿入することによって、本体部317に対するポート部327の位置決めも容易に行うことができる。
【0104】
なお、
図13(B)には、第7の実施の形態の変形例が示されている。この変形例では、突出部327bの外周面に設けられた止め輪40が、底板部317bのうちの内面形成部377をポート本体327aと協働して挟み込むことにより、ポート部327が本体部317に設けられている。止め輪40は、外面形成部367によって覆われている。このような態様が採用されてもよい。
【0105】
以上、本発明の一実施の形態を説明したが、本発明は上述の実施の形態に限定されるものではない。
【0106】
例えば、上述の各実施の形態では、貫通孔4dに本実施の形態に係るオイルシールキャップ30が取り付けられているが、オイルシールキャップ30は、クランク軸取付孔4eに取り付けられてもよい。また、上述の各実施の形態では、オイルシールキャップ30が偏心揺動型歯車装置1に適用されているが、これ以外の装置に適用されてもよい。また、上述の第1実施の形態では、ポート部32が六角形状に形成される例を説明したが、ポート部32は、三角形状、四角形状、五角形状、八角形状等に形成されてもよい。また、第2の実施の形態では、溝でなる係止部38bが第1溝部38b1及び第2溝部38b2を有する例を説明したが、例えば、第1溝部38b1及び第2溝部38b2のうちの一方のみが形成される等の態様であってもよい。
【0107】
また、上述の第2の実施の形態では、第2溝部38b2が、ポート部322の軸方向に見たときに半円状に形成されているが、第2溝部38b2は、扇形状に形成されてもよい。また、上述の第4の実施の形態では、つば部314dが面取り部4d4に当接するが、つば部314dが貫通孔4dの外部側の端部の周縁部に当接する態様が採用されてもよい。