(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ディスカード切除工程では、少なくとも、前記シャー刃が前記ディスカードの剪断予定部に当接した時から前記ディスカードが押出ダイス内の残留押出材料から分離される時までの間、前記ディスカードを支持する請求項1記載の押出加工方法。
前記ディスカード切除工程の後で、前記コンテナ内に装填された新ビレットを前記押出ダイス内の残留押出材料に当接させた状態で前記押出ダイス内に通過させる押継ぎ工程を更に含む請求項1記載の押出加工方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
而して、エアー巻込み不良を防止するため、本発明者らはディスカードの切除時に押出ダイス内に空隙が発生する原因について詳細に調べたところ、原因の一つは次の点にあることが判明した。このことを
図10を用いて説明する。
【0011】
同図において、符号「102」は押出ダイス、符号「147」は管状の押出材、符号「142」は略円板状のディスカード、符号「110」は楔状のシャー刃である。押出ダイス102はポートホールダイスであり、押出材147を成形する環状の成形間隙105を備えている。
【0012】
ディスカード142は、ディスカード142が切除される前の状態では、押出ダイス102内に残留した押出材料145(これを「残留押出材料145」という。)と一体に繋がっており、押出ダイス102の内部は残留押出材料145で充満されている。
【0013】
ディスカード142を切除するため、ディスカード142の剪断予定部を横断するようにシャー刃110を押出ダイス102の上流側端面からなる剪断基準面102aに沿って進行方向115に進行させる。すると、同図に示すように、ディスカード142にはシャー刃110の進行方向115の剪断力Fが加わり、ディスカード142はこの剪断力Fを受けてシャー刃110の進行方向115に押しずらされる。これにより、押出ダイス102内の残留押出材料145の一部145aが押出ダイス102内から抉り取られ、その結果、押出ダイス102内に空隙145bが発生する。以上のことが判明した。
【0014】
本発明は、上述した技術背景に鑑みてなされたもので、その目的は、エアー巻込み不良を抑制できる新規な押出加工方法、押出加工装置及び押出材の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は以下の手段を提供する。
【0016】
[1] ディスカードの剪断予定部を横断するようにシャー刃を進行させることにより、前記ディスカードを切除するディスカード切除工程を含み、
前記ディスカード切除工程では、前記シャー刃の進行方向に対向する方向に前記ディスカードを支持した状態で前記ディスカードを切除する押出加工方法。
【0017】
[2] 前記ディスカード切除工程では、少なくとも、前記シャー刃が前記ディスカードの剪断予定部に当接した時から前記ディスカードが押出ダイス内の残留押出材料から分離される時までの間、前記ディスカードを支持する前項1記載の押出加工方法。
【0018】
[3] 前記ディスカード切除工程では、
前記ディスカードをコンテナ内から露出させた後で且つ前記シャー刃が前記ディスカードの剪断予定部に当接する前までに、支持部を前記ディスカードへの支持位置に配置することにより、前記ディスカードを前記支持部で当接支持し、そして、前記ディスカードを押出ダイス内の残留押出材料から分離させた位置を通過した前記シャー刃が前記支持部に当接する前に、前記支持部を前記ディスカードへの前記支持位置から前記シャー刃との非当接位置へ退避させる前項1又は2記載の押出加工方法。
【0019】
[4] 前記ディスカード切除工程の後で、前記コンテナ内に装填された新ビレットを前記押出ダイス内の残留押出材料に当接させた状態で前記押出ダイス内に通過させる押継ぎ工程を更に含む、前項1〜3のいずれかに記載の押出加工方法。
【0020】
[5] ディスカードの剪断予定部を横断するように進行されることにより前記ディスカードを切除するシャー刃と、
前記シャー刃で前記ディスカードを切除する際に前記シャー刃の進行方向に対向する方向に前記ディスカードを支持する支持手段と、を含む押出加工装置。
【0021】
[6] ビレットが装填されるコンテナと、前記コンテナ内に装填された前記ビレットを押出材の形状に押出加工する押出ダイスとを更に具備しており、
前記支持手段は、前記ディスカードを当接支持する支持部を備えるとともに、前記ディスカードが前記コンテナ内から露出した後で且つ前記シャー刃が前記ディスカードの剪断予定部に当接する前までに、前記支持部を前記ディスカードへの支持位置に配置することにより、前記ディスカードを前記支持部で当接支持するように構成されており、
さらに、前記支持手段は、前記ディスカードを前記押出ダイス内の残留押出材料から分離させた位置を通過した前記シャー刃が前記支持部に当接する前に、前記支持部を前記ディスカードへの前記支持位置から前記シャー刃との非当接位置へ退避させるように構成されている前項5記載の押出加工装置。
【0022】
[7] ディスカードの剪断予定部を横断するようにシャー刃を進行させることにより、前記ディスカードを切除するディスカード切除工程を含み、
前記ディスカード切除工程では、前記シャー刃の進行方向に対向する方向に前記ディスカードを支持した状態で前記ディスカードを切除する押出材の製造方法。
【発明の効果】
【0023】
本発明は以下の効果を奏する。
【0024】
前項[1]によれば、ディスカード切除工程では、シャー刃の進行方向に対向する方向にディスカードを支持した状態でディスカードを切除することにより、ディスカードがシャー刃の進行方向に押しずらされにくくなる。そのため、押出ダイス内に空隙が発生しにくくなる。その結果、エアー巻込み不良を抑制することができる。
【0025】
前項[2]によれば、押出ダイス内に空隙が発生するのを確実に抑制することができ、その結果、エアー巻込み不良を確実に抑制することができる。
【0026】
前項[3]によれば、ディスカード切除工程において、コンテナと支持部との干渉を防止することができるし、ディスカードを支持部で当接支持した状態でシャー刃によるディスカードの剪断予定部の剪断を開始することができる。
【0027】
さらに、ディスカードを押出ダイス内の残留押出材料から分断させた位置を通過したシャー刃が支持部に当接する前に、支持部をディスカードへの支持位置からシャー刃との非当接位置へ退避させることにより、シャー刃と支持部との干渉も防止できる。
【0028】
前項[4]によれば、エアー巻込み不良が抑制された押出材を確実に得ることができる。
【0029】
前項[5]及び[6]によれば、本発明に係る押出加工方法に用いることができる押出加工装置を提供できる。
【0030】
前項[7]によれば、本発明に係る押出加工方法と同様の効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0032】
次に、本発明の幾つかの実施形態について図面を参照して以下に説明する。
【0033】
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る押出加工装置1は、ビレット40を水平に前方へ押出加工することにより押出材47を製造するものであり、即ち詳述すると前方押出加工装置である。
【0034】
同図中の符号「E」はビレット40の押出方向(即ち押出加工方向)を示している。また同図では、ビレット40及び押出材47は他の部材と区別し易くするためドットハッチングで示されている。
【0035】
ビレット40は例えば金属ビレットであり、詳述すると例えばアルミニウムビレットである。ビレット40の横断面形状は略円形状である。押出材47は例えば金属押出材であり、詳述すると例えばアルミニウム押出材である。押出材47の形状は管状であり詳述すると例えば円管状である。
【0036】
押出加工装置1は、コンテナ8、ステム9、押出ダイス2、シャー刃10、支持手段20などを具備している。
【0037】
コンテナ8はその内側にビレット40が装填されるものである。ステム9は、コンテナ8内に装填されたビレット40を押出加工するために押出方向Eに押圧するものである。ステム9の先端部には、ステム9でビレット40を押圧した際にビレット40の材料の逆流を防止するためのダミーブロック9aが設けられている。
【0038】
押出ダイス2は、コンテナ8内に装填されたビレット40を押出材47の形状に押出加工するものであり、本実施形態では、雄型3及び雌型4が互いに組み合わされて構成されたポートホールダイスである。
【0039】
雄型3は基本的には環状に形成されており、雄ベアリング部を有する成形凸部3aと、ブリッジ部3bとを備えている。そして、成形凸部3aが雄型3の内側の中心部にてブリッジ部3bにより支持されている。成形凸部3aは押出材47の内周面を成形するものである。
【0040】
雌型4は基本的には環状に形成されており、雌型4の中央部に雌ベアリング孔4aが設けられている。雌ベアリング孔4aは押出材47の外周面を成形するものである。雄型3及び雌型4が組み合わされた状態では、雄型3の成形凸部3aが雌ベアリング孔4aの内側に配置されている。成形凸部3aと雌ベアリング孔4aとの間には押出材47を成形する環状の成形間隙5が形成されている。
【0041】
この押出ダイス2では、押出ダイス2(詳述すると雄型3)の上流側端面が、後述するディスカード42の剪断箇所(即ち剪断予定部S)を決定する剪断基準面2aとなる。
【0042】
シャー刃10は、ビレット40の押残り(押かす)である略円板状のディスカード42の剪断予定部(一点鎖線で示す)Sを横断するように進行されることによりディスカード42を切除するものである。シャー刃10は例えば楔状であり、その幅寸法はディスカード42の剪断予定部Sの直径よりも大きく設定されている。シャー刃10はその先端に刃先(切れ刃)10aを有している。
【0043】
ディスカード42は、シャー刃10により切除される前の状態では、押出ダイス2内に残留した押出材料45(これを「残留押出材料45」という。)と一体に繋がっている。ディスカード42の剪断予定部Sは、ディスカード42における残留押出材料45との境界部であり、すなわち押出ダイス2の上流側端面からなる剪断基準面2aに位置するディスカード42の部分である。
【0044】
シャー刃10は、ディスカード42を切除する前の状態では、ディスカード42の外周側の位置としてディスカード42から上側に離間した位置に配置されている。ディスカード42を切除する際のシャー刃10の進行方向15は下方向に設定されている。
【0045】
さらに、シャー刃10にはシャー刃10を進行方向15に進行させる駆動源11と駆動源11の動作を制御するコントローラ12とが接続されている。駆動源11として流体シリンダ(例:油圧シリンダ、ガス圧シリンダ)や電気モータなどが用いられる。そして、シャー刃10は、ディスカード42を切除する際に駆動源11の駆動力により押出ダイス2の剪断基準面2aに沿って進行方向(下方向)15に進行されるように構成されている。このようにシャー刃10が進行することにより、シャー刃10がディスカード42の剪断予定部Sを横断し、剪断予定部Sを剪断する。
【0046】
シャー刃10の進行方向15のストロークの最前位置(最下位置)は、シャー刃10によりディスカード42の剪断予定部Sを確実に剪断し得るようにするため、押出ダイス2のビレット流入口の下端位置(即ち、ディスカード42の剪断予定部Sの下端位置)よりも若干下側の位置に設定されている。
【0047】
支持手段20は、シャー刃10によりディスカード42を切除する際、すなわちシャー刃10がディスカード42の剪断予定部Sを横断する際に、シャー刃10の進行方向(即ち下方向)15に対向する方向(即ち上方向)にディスカード42を支持するものであり、ディスカード42を当接支持する支持部21を備えている。
【0048】
支持部21は、
図1に示すように、ディスカード42を支持部21で当接支持する前の状態では、ディスカード42から下側に離間した位置に配置されている。そして、支持部21でディスカード42を当接支持するときは、支持部21は、
図2に示すように、ディスカード42の外周面の下端部に当接した状態でディスカード42をその下側から当接支持するように配置される。
【0049】
図8A及び8Bは、それぞれ、ディスカード42を当接支持した支持部21及びディスカード42を押出方向Eの上流側から見た概略図である。
【0050】
支持部21におけるディスカード42に当接する支持面21aは、
図8Aに示すように平坦状に形成されている。
【0051】
ここで本発明では、支持部21の支持面21aは平坦状に形成されていることに限定されるものではなく、その他に例えば、
図8Bに示すようにディスカード42の外周面の当接部としての下端部の形状(即ち凸円弧形状)に対応して凹んだ凹状部(即ち凹円弧状部)21bを有していても良い。この場合は、ディスカード42を安定良く支持できる点で望ましい。
【0052】
図1に示すように、さらに支持手段20は、支持部21をディスカード42への支持位置とシャー刃10との非当接位置との間を移動させる駆動源22と、駆動源22の動作を制御するコントローラ24とを備えている。
【0053】
ディスカード42への支持位置とは、
図2に示すように、ディスカード42の外周面の下端部に支持部21(詳述すると支持部21の支持面21a)が当接してディスカード42を支持部21が支持する位置である。
【0054】
シャー刃10との非当接位置とは、具体的には、
図1に示すように、押出ダイス2内の残留押出材料45から分離される前のディスカード42から下側に離間し且つシャー刃10の進行方向15のストロークの最前位置に到達したシャー刃10に支持部21が当接しない位置である。
【0055】
支持手段20の駆動源22としては流体圧シリンダ(例:油圧シリンダ、ガス圧シリンダ)や電気モータなどが用いられ、本実施形態では伸縮ロッド23aを有する油圧シリンダ23が用いられている。油圧シリンダ23はディスカード42から下側に離間した位置に配置されている。支持部21は油圧シリンダ23のロッド23aの先端部に取り付けられて設けられている。
【0056】
そして、支持手段20は、ディスカード42がコンテナ8内から露出した後で且つシャー刃10(詳述するとシャー刃10の刃先10a)がディスカード42の剪断予定部Sに当接する前までに、支持部21をシャー刃10との非当接位置からディスカード42への支持位置に配置することによりディスカード42を支持部21で当接支持するように構成されている。
【0057】
さらに、支持手段20は、
図5〜7に示すように、ディスカード42を押出ダイス2内の残留押出材料45から分離させた位置を通過進行したシャー刃10が支持部21に当接する前に、支持部21をディスカード42への支持位置からシャー刃10との非当接位置へ退避させるように構成されている。
【0058】
次に、本発明の一実施形態に係る押出加工方法(押出材47の製造方法)について本実施形態の押出加工装置1を用いる場合で以下に説明する。なお、以下で説明する油圧シリンダ23の各動作はいずれもコントローラ24により制御されている。
【0059】
図1に示すように、コンテナ8内に装填された略円柱状のビレット40をステム9で押出方向Eに押圧することにより、ビレット40を押出ダイス2内に通過させて押出加工する。この工程を「ビレット押圧工程」という。この工程により、ビレット40が押出加工されて押出材47が得られる。
【0060】
ビレット押圧工程では、シャー刃10は、ディスカード42から上側に離間した位置に配置されている。また、支持手段20の油圧シリンダ23の伸縮ロッド23aは短縮しており、したがって支持部21はシャー刃10との非当接位置(即ち、ディスカード42から下側に離間した位置)に配置されている。
【0061】
コンテナ8内に残存するビレット40の長さが所定長さになったら、ステム9による押圧を停止する。このときのコンテナ8内に残存するビレット40がディスカード42となり、残存するビレット40の長さがディスカード42の厚さとなる。この状態では、押出ダイス2(詳述すると押出ダイス2の雄型3)の内部は残留押出材料45で充満されており、またディスカード42はコンテナ8内に配置されており且つ押出ダイス2内の残留押出材料45と一体に繋がっている。
【0062】
次いで、
図2に示すように、ステム9及びコンテナ8を押出ダイス2に対して相対的に上流方向に後退させることにより、コンテナ8内からディスカード42を排出して露出させる。
【0063】
次いで、支持手段20の油圧シリンダ23のロッド23aを上方向に伸張動作させて、支持部21をディスカード42への支持位置(即ち、ディスカード42の外周面の下端部に支持部21が当接する位置)に配置する。そして、油圧シリンダ23のロッド23aの伸張動作を停止する。これにより、支持部21がディスカード42への支持位置に対して上下方向に動かないようにディスカード42への支持位置に固定される。
【0064】
このように支持部21がディスカード42への支持位置に配置された状態では、ディスカード42は、シャー刃10によるディスカード42の切除の際にシャー刃10の進行方向(下方向)15の剪断力によりシャー刃10の進行方向15に押しずらされないように、シャー刃10の進行方向15に対向する方向(上方向)に支持部21で当接支持されている。
【0065】
次いで、
図3〜6に示すように、シャー刃10がディスカード42の剪断予定部Sを横断するようにシャー刃10を押出ダイス2の剪断基準面2aに沿って進行方向15に所定の進行速度で進行させることにより、ディスカード42を切除する。この工程を「ディスカード切除工程」という。
【0066】
シャー刃10の進行速度は限定されるものではないが、ビレット40が例えばアルミニウムビレットであり且つその直径が120〜450mmである場合、シャー刃10の進行速度は50〜600mm/sであることが特に望ましい。ディスカード切除工程の詳細については後述する。
【0067】
ディスカード切除工程の後で、
図7に示すように、シャー刃10を元の位置へ上方向に退行させる。そして、コンテナ8を押出ダイス2に対して相対的に下流方向に前進させてコンテナ8を元の位置に配置する。
【0068】
次いで、コンテナ8内に新たなビレット41を装填して押出ダイス2内の残留押出材料45に当接させる。そしてこの状態で新ビレット41をステム9で押出方向Eに押圧することにより、新ビレット41を押出ダイス2内に通過させて残留押出材料45に圧着させながら押出加工する。この工程を「押継ぎ工程」という。
【0069】
而して、上述したディスカード切除工程において、
図3に示すように、シャー刃10が押出ダイス2のビレット流入口の上端位置に向かって進行してシャー刃10の刃先10aがディスカード42の剪断予定部Sに当接した時、シャー刃10によるディスカード42の剪断予定部Sの剪断が開始される。
【0070】
この剪断開始時からシャー刃10が進行方向15に進行すると、ディスカード42はシャー刃10の進行方向15の剪断力(F:
図10参照)を受ける。しかしながら、ディスカード42はシャー刃10の進行方向15に対向する方向に支持手段20の支持部21で当接支持されているので、ディスカード42は剪断力を受けてもシャー刃10の進行方向15に押しずらされない。
【0071】
そして、
図4に示すように、シャー刃10の刃先10aが押出ダイス2のビレット流入口の略中心位置に進行することでディスカード42の剪断予定部Sの直径の約半分の領域が剪断された時でも、ディスカード42は依然として支持部21で当接支持されている。したがって、ディスカード42はやはりシャー刃10の進行方向15に押しずらされない。
【0072】
そして、
図5に示すように、シャー刃10の刃先10aが押出ダイス2のビレット流入口の下端位置に進行することでディスカード42の剪断予定部Sの直径の全領域が剪断される時、即ちディスカード42が押出ダイス2内の残留押出材料45から完全に分離される時、ディスカード42の剪断予定部Sの剪断が終了する。この剪断終了の際にも、ディスカード42は依然として支持部21で当接支持されている。したがって、ディスカード42はやはりシャー刃10の進行方向15に押しずらされない。
【0073】
そして、
図6に示すように、ディスカード42を残留押出材料45から完全に分離させた位置を通過進行したシャー刃10が支持部21に当接する前に、支持手段20の油圧シリンダ23のロッド23aを下方向に短縮動作させて、
図7に示すように支持部21を上述のディスカード42への支持位置から上述のシャー刃10との非当接位置へ退避させる。支持部21の退避速度はシャー刃10の進行速度と等しいか又はシャー刃10の進行速度よりも速く設定される。
【0074】
以上のようにディスカード除去工程が行われる。
【0075】
支持手段20は、少なくとも、シャー刃10の刃先10aがディスカード42の剪断予定部Sに当接した時からディスカード42が残留押出材料45から分離された時までの間、すなわちシャー刃10によるディスカード42の剪断予定部Sの剪断開始時から剪断終了時までの間、ディスカード42を支持手段20の支持部21で当接支持しうるように構成されている。
【0076】
したがって、ディスカード切除工程では、ディスカード42は、少なくとも、シャー刃10の刃先10aがディスカード42の剪断予定部Sに当接した時からディスカード42が残留押出材料45から分離される時までの間、すなわちシャー刃10によるディスカード42の剪断予定部Sの剪断開始時から剪断終了時までの間、支持手段20の支持部21で当接支持される。
【0077】
上記実施形態の押出加工方法及び押出材47の製造方法には次の利点がある。
【0078】
ディスカード切除工程では、シャー刃10の進行方向15に対向する方向にディスカード42を支持した状態でディスカード42を切除することにより、ディスカード42がシャー刃10の進行方向15に押しずらされにくくなる。そのため、押出ダイス2内に空隙が発生しにくくなる。その結果、エアー巻込み不良を抑制することができる。すなわち、
図7に示すように、押継ぎ工程にて新ビレット41を押出ダイス2内に通過させて新ビレット41を押出加工することにより、エアー巻込み不良が抑制された押出材47を製造することができる。
【0079】
さらに、ディスカード切除工程では、少なくとも、シャー刃10の刃先10aがディスカード42の剪断予定部Sに当接した時からディスカード42が押出ダイス2内の残留押出材料45から分離される時までの間、ディスカード42を支持手段20の支持部21で当接支持するので、押出ダイス2内に空隙が発生するのを確実に抑制することができる。したがって、エアー巻込み不良を確実に抑制することができる。
【0080】
さらに、ディスカード切除工程では、
図2に示すように、コンテナ8内に配置されたディスカード42をコンテナ8内から露出させた後で且つシャー刃10の刃先10aがディスカード42の剪断予定部Sに当接する前までに、支持手段20の支持部21をディスカード42への支持位置に配置することによりディスカード42を支持部21で当接支持するので、コンテナ8と支持部21との干渉を防止することができる。さらに、ディスカード42を支持部21で当接支持した状態でシャー刃10によるディスカード42の剪断予定部Sの剪断を開始することができる。
【0081】
さらに、
図5及び6に示すように、ディスカード42を押出ダイス2内の残留押出材料45から分断させた位置を通過進行したシャー刃10が支持部21に当接する前に、支持部21をディスカード42への支持位置からシャー刃10との非当接位置へ退避させるので、シャー刃10と支持部21との干渉も防止できる。
【0082】
本発明に係る押出加工装置に用いられる押出ダイスは、上記実施形態で示した押出ダイス2に限定されるものではなく、その他に例えば
図9A〜9Dに示したものであっても良い。
【0083】
図9Aでは、上記実施形態の押出ダイス2の要素と同等の要素にはその符号に50を加算した符号が付されている。
【0084】
図9Aに示した押出ダイス52は、ポートトールダイスの雄型53の上流側端面におけるビレット流入口の領域が局部的に掘り込まれることで当該領域の位置が雄型53の上流側端面の位置よりも下流側に局部的に配置されたものである。
【0085】
同図の押出ダイス52では、押出ダイス52の雄型53の上流側端面がディスカード42の剪断箇所(即ち剪断予定部S)を決定する剪断基準面52aとなる。
【0086】
図9Bでは、上記実施形態の押出ダイス2の要素と同等の要素にはその符号に60を加算した符号が付されている。
【0087】
図9Bに示した押出ダイス62は、ポートホールダイスの雄型63の上流側に配置される円環板状のプレート66を具備している。プレート66は、その中央部にて貫通したビレット流通孔を有するものである。そしてプレート66は、ビレット流通孔の内周面が雄型63の上流側端面におけるビレット流入口の領域を包囲する態様にして雄型63の上流側端面に密着して配置されている。
【0088】
同図の押出ダイス62では、プレート66のビレット流通孔の上流側開口が押出ダイス62の真のビレット流入口となり、プレート66の上流側端面がディスカード42の剪断箇所(即ち剪断予定部S)を決定する剪断基準面62aとなる。
【0089】
図9Cでは、上記実施形態の押出ダイス2の要素と同等の要素にはその符号に70を加算した符号が付されている。
【0090】
図9Cに示した押出ダイス72は、基本的には中実な押出材47を成形するいわゆる平ダイスであり、更に、押出ダイス72の下流側端面におけるビレット流入口の領域が局部的に掘り込まれることで当該領域の位置が押出ダイス72の下流側端面の位置に対して下流側に局部的に配置されている。
【0091】
同図の押出ダイス72では、押出ダイス72の上流側端面がディスカード42の剪断箇所(即ち剪断予定部S)を決定する剪断基準面72aとなる。
【0092】
図9Dでは、上記実施形態の押出ダイス2の要素と同等の要素にはその符号に80を加算した符号が付されている。
【0093】
図9Dに示した押出ダイス82は、中実な押出材47を成形するいわゆる平ダイス(押出ダイス本体)84と、その上流側に配置される円環板状のプレート86とを具備したものである。プレート86は、その中央部にて貫通したビレット流通孔を有するものである。そしてプレート86は、ビレット流通孔の内周面が平ダイス84の上流側端面におけるビレット流入口の領域を包囲する態様にして平ダイス84の上流側端面に密着して配置されている。
【0094】
同図の押出ダイス82では、プレート86のビレット流通孔の上流側開口が押出ダイス82の真のビレット流入口となり、プレート86の上流側端面がディスカード42の剪断箇所(即ち剪断予定部S)を決定する剪断基準面82aとなる。
【0095】
以上で本発明の幾つかの実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で様々に変更可能である。
【0096】
例えば、本発明に係る押出加工方法及び押出材の製造方法では、ディスカードをその厚さ方向に押圧することでディスカードの厚さが減少するようにディスカードを塑性変形させ、その後で、ディスカードを切除しても良い。
【0097】
また本発明に係る押出加工方法及び押出材の製造方法では、ディスカード切除工程において、ディスカードの上流側端面を押さえた状態でディスカードを切除しても良い。また本発明に係る押出加工装置は、シャー刃でディスカードを切除する際にディスカードの上流側端面を押さえる押さえ手段を含んでいても良い。これらの場合は、エアー巻込み不良を更に確実に抑制することができる。