特許第6537909号(P6537909)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 昭和電工株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6537909
(24)【登録日】2019年6月14日
(45)【発行日】2019年7月3日
(54)【発明の名称】前方押出加工方法及び前方押出加工装置
(51)【国際特許分類】
   B21C 35/04 20060101AFI20190625BHJP
【FI】
   B21C35/04
【請求項の数】8
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-142754(P2015-142754)
(22)【出願日】2015年7月17日
(65)【公開番号】特開2017-24022(P2017-24022A)
(43)【公開日】2017年2月2日
【審査請求日】2018年4月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002004
【氏名又は名称】昭和電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109911
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義仁
(74)【代理人】
【識別番号】100071168
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 久義
(74)【代理人】
【識別番号】100099885
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 健市
(72)【発明者】
【氏名】岩目地 範行
(72)【発明者】
【氏名】中田 和孝
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 隆幸
(72)【発明者】
【氏名】金井 俊典
【審査官】 萩原 周治
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭50−083329(JP,U)
【文献】 国際公開第2010/122957(WO,A1)
【文献】 特開昭50−155460(JP,A)
【文献】 特開2012−076132(JP,A)
【文献】 特開2002−001422(JP,A)
【文献】 特開2013−091071(JP,A)
【文献】 米国特許第04793170(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21C 23/00−35/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスカードの剪断予定部を横断するようにシャー刃を進行させることにより、前記ディスカードを前記シャー刃で切除するディスカード切除工程を含み、
前記ディスカード切除工程では、前記ディスカードの上流側端面を押さえた状態で前記ディスカードを切除する前方押出加工方法。
【請求項2】
前記ディスカード切除工程では、少なくとも、前記シャー刃が前記ディスカードの剪断予定部に当接した時から前記ディスカードが押出ダイス内の残留押出材料から分離される時までの間、前記ディスカードの上流側端面を押さえる請求項1記載の前方押出加工方法。
【請求項3】
前記ディスカード切除工程では、
前記ディスカードをコンテナ内から露出させた後で且つ前記シャー刃が前記ディスカードの剪断予定部に当接する前までに、前記ディスカードの上流側端面を押さえ部で押さえ、そして、前記押さえ部による前記ディスカードの上流側端面の押さえ箇所が前記シャー刃の進行動作と連動して前記シャー刃の進行方向に変移するように前記押さえ部を移動又は変形させる請求項1又は2記載の前方押出加工方法。
【請求項4】
前記ディスカード切除工程の後で、前記コンテナ内に装填された新ビレットを前記押出ダイス内の残留押出材料に当接させた状態で前記押出ダイス内に通過させる押継ぎ工程を更に含む、請求項1〜3のいずれかに記載の前方押出加工方法。
【請求項5】
ビレットを押出材の形状に押出加工する押出ダイスと、
ディスカードの剪断予定部を横断するように進行されることにより前記ディスカードを切除するシャー刃と、
前記シャー刃で前記ディスカードを切除する際に前記ディスカードの上流側端面を押さえる押さえ手段と、を含む前方押出加工装置。
【請求項6】
前記ビレットが装填されるコンテナを更に含んでおり、
前記押さえ手段は、前記ディスカードの上流側端面に当接して上流側端面を押さえる押さえ部を備えるとともに、前記ディスカードが前記コンテナ内から露出した後で且つ前記シャー刃が前記ディスカードの剪断予定部に当接する前までに、前記ディスカードの上流側端面を前記押さえ部で押さえるように構成されており、
さらに、前記押さえ手段は、前記押さえ部による前記ディスカードの上流側端面の押さえ箇所が前記シャー刃の進行動作と連動して前記シャー刃の進行方向に変移するように前記押さえ部が移動又は変形するように構成されている請求項5記載の前方押出加工装置。
【請求項7】
前記押さえ手段は、前記ディスカードの上流側端面に当接して上流側端面を押さえる押さえ部を備えており、
前記押さえ部は、前記シャー刃と一体に進行動作するように前記シャー刃に設けられている請求項5又は6記載の前方押出加工装置。
【請求項8】
前記押さえ手段は、前記ディスカードの上流側端面に当接して上流側端面を押さえる押さえ部を備えており、
前記押さえ部は、前記ディスカードの上流側端面上を前記シャー刃の進行方向に転動可能な押さえローラで構成されている請求項5〜7のいずれかに記載の前方押出加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は押出加工方法、押出加工装置及び押出材の製造方法に関する。
【0002】
なお本明細書及び特許請求の範囲では、「アルミニウム」の語は、特に明示する場合を除いて、純アルミニウムとアルミニウム合金との双方を含む意味で用いられる。
【0003】
さらに本明細書及び特許請求の範囲では、「上流」及び「下流」とは、それぞれ、ビレットの押出方向に対する上流及び下流を意味している。
【背景技術】
【0004】
押出材は、感光ドラム基体用素管、自動車部品、建材、エクステリア等に広く用いられている。近年、押出材の表面性状についてその品質要求が厳しくなっている。
【0005】
押出加工時に発生する押出材の表面性状不良の一つとして、エアー巻込み不良が挙げられる。当該不良の主な発生原因は、ディスカードの切除時に押出ダイス内に発生した空隙内の空気が新ビレットの押出加工時に押出材中に巻き込まれることにある。なお、ディスカードとはビレットの押残りや押かすとも呼ばれるものであり、押出加工後にコンテナ内に残ったビレットである。
【0006】
当該不良を抑制する技術として、例えば、国際公開WO2010/122957号(特許文献1)及び特開2012−76132号公報(特許文献2)は、ディスカードをその厚さ方向に押圧することでディスカードの厚さが減少するようにディスカードを塑性変形させ、その後、ディスカードを切除する方法を開示している。
【0007】
さらに、当該不良を抑制する技術として、特開2002−1422号公報(特許文献3)は、押出ダイスとしてのポートホールダイスの上流側端面におけるビレット流入口の領域が局部的に掘り込まれることで当該領域の位置がポートホールダイスの上流側端面の位置よりも下流側に局部的に配置されたポートホールダイスを開示している。
【0008】
その他の文献として、特開2013−91071号公報(特許文献4)が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開WO2010/122957号
【特許文献2】特開2012−76132号公報
【特許文献3】特開2002−1422号公報
【特許文献4】特開2013−91071号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
而して、エアー巻込み不良を防止するため、本発明者らはディスカードの切除時に押出ダイス内に空隙が発生する原因について詳細に調べたところ、原因の一つは次の点にあることが判明した。このことを図12を用いて説明する。
【0011】
同図において、符号「102」は押出ダイス、符号「147」は管状の押出材、符号「142」は略円板状のディスカード、符号「110」は楔状のシャー刃である。押出ダイス102はポートホールダイスであり、押出材147を成形する環状の成形間隙105を備えている。
【0012】
ディスカード142は、ディスカード142が切除される前の状態では、押出ダイス102内に残留した押出材料145(これを「残留押出材料145」という。)と一体に繋がっており、押出ダイス102の内部は残留押出材料145で充満されている。
【0013】
ディスカード131を切除するため、ディスカード142の剪断予定部を横断するようにシャー刃110を押出ダイス102の上流側端面からなる剪断基準面102aに沿って進行方向115に進行させる。すると、シャー刃110は楔状に形成されているため、同図に示すように、シャー刃110の進行に伴いディスカード142には押出ダイス102(詳述すると押出ダイス102内の残留押出材料145)から剥がれる方向の力(即ち上流方向の力)Fが加わる。この力Fによって押出ダイス102内の残留押出材料145の一部145aが押出ダイス102内から抉り取られ、その結果、押出ダイス102内に空隙145bが発生する。以上のことが判明した。
【0014】
本発明は、上述した技術背景に鑑みてなされたもので、その目的は、エアー巻込み不良を抑制できる新規な押出加工方法、押出加工装置及び押出材の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は以下の手段を提供する。
【0016】
[1] ディスカードの剪断予定部を横断するようにシャー刃を進行させることにより、前記ディスカードを切除するディスカード切除工程を含み、
前記ディスカード切除工程では、前記ディスカードの上流側端面を押さえた状態で前記ディスカードを切除する押出加工方法。
【0017】
[2] 前記ディスカード切除工程では、少なくとも、前記シャー刃が前記ディスカードの剪断予定部に当接した時から前記ディスカードが押出ダイス内の残留押出材料から分離される時までの間、前記ディスカードの上流側端面を押さえる前項1記載の押出加工方法。
【0018】
[3] 前記ディスカード切除工程では、
前記ディスカードをコンテナ内から露出させた後で且つ前記シャー刃が前記ディスカードの剪断予定部に当接する前までに、前記ディスカードの上流側端面を押さえ部で押さえ、そして、前記押さえ部による前記ディスカードの上流側端面の押さえ箇所が前記シャー刃の進行動作と連動して前記シャー刃の進行方向に変移するように前記押さえ部を移動又は変形させる前項1又は2記載の押出加工方法。
【0019】
[4] 前記ディスカード切除工程の後で、前記コンテナ内に装填された新ビレットを前記押出ダイス内の残留押出材料に当接させた状態で前記押出ダイス内に通過させる押継ぎ工程を更に含む、前項1〜3のいずれかに記載の押出加工方法。
【0020】
[5] ビレットを押出材の形状に押出加工する押出ダイスと、
ディスカードの剪断予定部を横断するように進行されることにより前記ディスカードを切除するシャー刃と、
前記シャー刃で前記ディスカードを切除する際に前記ディスカードの上流側端面を押さえる押さえ手段と、を含む押出加工装置。
【0021】
[6] 前記ビレットが装填されるコンテナを更に含んでおり、
前記押さえ手段は、前記ディスカードの上流側端面に当接して上流側端面を押さえる押さえ部を備えるとともに、前記ディスカードが前記コンテナ内から露出した後で且つ前記シャー刃が前記ディスカードの剪断予定部に当接する前までに、前記ディスカードの上流側端面を前記押さえ部で押さえるように構成されており、
さらに、前記押さえ手段は、前記押さえ部による前記ディスカードの上流側端面の押さえ箇所が前記シャー刃の進行動作と連動して前記シャー刃の進行方向に変移するように前記押さえ部が移動又は変形するように構成されている請求項5記載の押出加工装置。
【0022】
[7] 前記押さえ手段は、前記ディスカードの上流側端面に当接して上流側端面を押さえる押さえ部を備えており、
前記押さえ部は、前記シャー刃と一体に進行動作するように前記シャー刃に設けられている前項5又は6記載の押出加工装置。
【0023】
[8] 前記押さえ手段は、前記ディスカードの上流側端面に当接して上流側端面を押さえる押さえ部を備えており、
前記押さえ部は、前記ディスカードの上流側端面上を前記シャー刃の進行方向に転動可能な押さえローラで構成されている前項5〜7のいずれかに記載の押出加工装置。
【0024】
[9] ディスカードの剪断予定部を横断するようにシャー刃を進行させることにより、前記ディスカードを切除するディスカード切除工程を含み、
前記ディスカード切除工程では、前記ディスカードの上流側端面を押さえた状態で前記ディスカードを切除する押出材の製造方法。
【発明の効果】
【0025】
本発明は以下の効果を奏する。
【0026】
前項[1]によれば、ディスカード切除工程では、ディスカードの上流側端面を押さえた状態でディスカードを切除することにより、ディスカードに加わる押出ダイスから剥がれる方向の力が抑制される。そのため、押出ダイス内に空隙が発生しにくくなる。その結果、エアー巻込み不良を抑制することができる。
【0027】
前項[2]によれば、押出ダイス内に空隙が発生するのを確実に抑制することができ、その結果、エアー巻込み不良を確実に抑制することができる。
【0028】
前項[3]によれば、ディスカード切除工程において、コンテナと押さえ部との干渉を防止することができるし、ディスカードの上流側端面を押さえ部で押さえた状態でシャー刃によるディスカードの剪断予定部の剪断を開始することができる。
【0029】
さらに、押さえ部によるディスカードの上流側端面の押さえ箇所がシャー刃の進行動作と連動してシャー刃の進行方向に変移するように押さえ部を移動又は変形させることにより、押出ダイス内に空隙が発生するのを更に確実に抑制することができ、その結果、エアー巻込み不良を更に確実に抑制することができる。
【0030】
前項[4]によれば、エアー巻込み不良が抑制された押出材を確実に得ることができる。
【0031】
前項[5]〜[8]によれば、本発明に係る押出加工方法に好適に用いることができる押出加工装置を提供できる。
【0032】
前項[9]によれば、本発明に係る押出加工方法と同様の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る押出加工装置においてコンテナ内にディスカードが配置されている状態の概略断面図である。
図2図2は、コンテナ内から露出したディスカードの上流側端面を押さえ手段の押さえ部で押さえた状態の概略断面図である。
図3図3は、シャー刃によるディスカードの切除動作の初期状態の概略断面図である。
図4図4は、シャー刃によるディスカードの切除動作の中期状態の概略断面図である。
図5図5は、シャー刃によるディスカードの切除動作の後期状態の概略断面図である。
図6図6は、押さえ手段の押さえ部を退避させる途中の状態の概略断面図である。
図7図7は、コンテナ内に装填された新ビレットを押出ダイス内の残留押出材料に当接させた状態の概略断面図である。
図8図8は、押さえ手段の第1変形例を、同押さえ手段の押さえ部でディスカードの上流側端面を押さえた状態で示す概略断面図である。
図9図9は、押さえ手段の第2変形例を、同押さえ手段の押さえ部としての押さえローラでディスカードの上流側端面を押さえた状態で示す概略断面図である。
図10A図10Aは、押さえ手段の第3変形例を、同押さえ手段の押さえ部でディスカードの上流側端面を押さえた状態で示す概略断面図である。
図10B図10Bは、図10Aの同押さえ手段の押さえ部を変形させた状態を示す概略断面図である。
図11A図11Aは、本発明の実施形態に係る押出加工装置に用いられる押出ダイスの第1変形例をディスカードと一緒に示す概略断面図である。
図11B図11Bは、本発明の実施形態に係る押出加工装置に用いられる押出ダイスの第2変形例をディスカードと一緒に示す概略断面図である。
図11C図11Cは、本発明の実施形態に係る押出加工装置に用いられる押出ダイスの第3変形例をディスカードと一緒に示す概略断面図である。
図11D図11Dは、本発明の実施形態に係る押出加工装置に用いられる押出ダイスの第4変形をディスカードと一緒に示す概略断面図である。
図12図12は、従来の押出加工装置においてディスカードを切除する途中の状態の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
次に、本発明の幾つかの実施形態について図面を参照して以下に説明する。
【0035】
図1に示すように、本発明の一実施形態に係る押出加工装置1は、ビレット40を水平に前方へ押出加工することにより押出材47を製造するものであり、即ち詳述すると前方押出加工装置である。
【0036】
同図中の符号「E」はビレット40の押出方向(即ち押出加工方向)を示している。また同図では、ビレット40及び押出材47は他の部材と区別し易くするためドットハッチングで示されている。
【0037】
ビレット40は例えば金属ビレットであり、詳述すると例えばアルミニウムビレットである。ビレット40の横断面形状は略円形状である。押出材47は例えば金属押出材であり、詳述すると例えばアルミニウム押出材である。押出材47の形状は管状であり詳述すると例えば円管状である。
【0038】
押出加工装置1は、コンテナ8、ステム9、押出ダイス2、シャー刃10、押さえ手段30などを具備している。
【0039】
コンテナ8はその内側にビレット40が装填されるものである。ステム9は、コンテナ8内に装填されたビレット40を押出加工するために押出方向Eに押圧するものである。ステム9の先端部には、ステム9でビレット40を押圧した際にビレット40の材料の逆流を防止するためのダミーブロック9aが設けられている。
【0040】
押出ダイス2は、コンテナ8内に装填されたビレット40を押出材47の形状に押出加工するものであり、本実施形態では、雄型3及び雌型4が互いに組み合わされて構成されたポートホールダイスである。
【0041】
雄型3は基本的には環状に形成されており、雄ベアリング部を有する成形凸部3aと、ブリッジ部3bとを備えている。そして、成形凸部3aが雄型3の内側の中心部にてブリッジ部3bにより支持されている。成形凸部3aは押出材47の内周面を成形するものである。
【0042】
雌型4は基本的には環状に形成されており、雌型4の中央部に雌ベアリング孔4aが設けられている。雌ベアリング孔4aは押出材47の外周面を成形するものである。雄型3及び雌型4が組み合わされた状態では、雄型3の成形凸部3aが雌ベアリング孔4aの内側に配置されている。成形凸部3aと雌ベアリング孔4aとの間には押出材47を成形する環状の成形間隙5が形成されている。
【0043】
この押出ダイス2では、押出ダイス2(詳述すると雄型3)の上流側端面が、後述するディスカード42の剪断箇所(即ち剪断予定部S)を決定する剪断基準面2aとなる。
【0044】
シャー刃10は、ビレット40の押残り(押かす)である略円板状のディスカード42の剪断予定部(一点鎖線で示す)Sを横断するように進行されることによりディスカード42を切除するものである。シャー刃10は例えば楔状であり、その幅寸法はディスカード42の剪断予定部Sの直径よりも大きく設定されている。シャー刃10はその先端に刃先(切れ刃)10aを有している。
【0045】
ディスカード42は、シャー刃10により切除される前の状態では、押出ダイス2内に残留した押出材料45(これを「残留押出材料45」という。)と一体に繋がっている。ディスカード42の剪断予定部Sは、ディスカード42における残留押出材料45との境界部であり、すなわち押出ダイス2の上流側端面からなる剪断基準面2aに位置するディスカード42の部分である。
【0046】
シャー刃10は、ディスカード42を切除する前の状態では、ディスカード42の外周側の位置としてディスカード42から上側に離間した位置に配置されている。ディスカード42を切除する際のシャー刃10の進行方向15は下方向に設定されている。
【0047】
さらに、シャー刃10にはシャー刃10を進行方向15に進行させる駆動源11と駆動源11の動作を制御するコントローラ12とが接続されている。駆動源11として流体シリンダ(例:油圧シリンダ、ガス圧シリンダ)や電気モータなどが用いられる。そして、シャー刃10は、ディスカード42を切除する際に駆動源11の駆動力により押出ダイス2の剪断基準面2aに沿って進行方向(下方向)15に進行されるように構成されている。このようにシャー刃10が進行することにより、シャー刃10がディスカード42の剪断予定部Sを横断し、剪断予定部Sを剪断する。
【0048】
シャー刃10の進行方向15のストロークの最前位置(最下位置)は、シャー刃10によりディスカード42の剪断予定部Sを確実に剪断し得るようにするため、押出ダイス2のビレット流入口の下端位置(即ち、ディスカード42の剪断予定部Sの下端位置)よりも若干下側の位置に設定されている。
【0049】
押さえ手段30は、シャー刃10によりディスカード42を切除する際、すなわちシャー刃10がディスカード42の剪断予定部Sを横断する際に、ディスカード42の上流側端面43を押さえるものであり、ディスカード42の上流側端面43に当接して上流側端面43を押さえる押さえ部31を備えている。ディスカード42の上流側端面43は、平坦状であり、また当該上流側端面43を押出方向Eの上流側から見た状態で略円形状に形成されている。
【0050】
押さえ部31は、図1に示すように、ディスカード42の上流側端面43を押さえ部31で押さえる前の状態では、ディスカード42の上流側端面43から下側に離間した位置に配置される。この位置を本実施形態では押さえ部31の「退避位置」という。押さえ部31が退避位置に配置された状態では、シャー刃10が進行方向15のストロークの最前位置に到達しても当該シャー刃10は押さえ部31に当接しない。
【0051】
さらに、押さえ部31は、ディスカード42の上流側端面43を押さえ部31で押さえるときは、図2に示すように、ディスカード42の上流側端面43に当接して上流側端面43を押さえるように配置される。
【0052】
押さえ部31は例えば板状であり、押さえ部31におけるディスカード42の上流側端面43に当接する押さえ面は平坦状に形成されている。そのため、押さえ部31がディスカード42の上流側端面43を押さえた状態では、押さえ部31の押さえ面はディスカード42の上流側端面43に面接触状態に当接する。
【0053】
ここで本発明では、押さえ部31の押さえ面は平坦状に形成されていることに限定されるものではなく、その他に例えば、押さえ部31が円柱状でありその押さえ面が円柱の外周面のように湾曲して形成されていても良い。この場合、押さえ部31がディスカード42の上流側端面43を押さえた状態では、押さえ部31の押さえ面はディスカード42の上流側端面43に線接触状態に当接する。その接触線方向はシャー刃10の進行方向15に対して平行方向や直交方向等である。
【0054】
図1に示すように、さらに押さえ手段30は、押さえ部31をディスカード42の上流側端面43の押さえ箇所43aと押さえ部31の退避位置との間を移動させる駆動源32と、駆動源32の動作を制御するコントローラ34とを備えている。
【0055】
ディスカード42の上流側端面43の押さえ箇所43aとは、図3及び4に示すように、ディスカード42の剪断予定部Sを剪断しているシャー刃10の刃先10aの進行方向前方側近傍に対応する、ディスカード42の上流側端面43の箇所である。
【0056】
押さえ部31の退避位置とは、上述したように、ディスカード42の上流側端面43から下側に離間し且つシャー刃10が進行方向15のストロークの最前位置に到達しても当該シャー刃10が押さえ部31に当接しない位置である。
【0057】
押さえ手段30の駆動源32としては流体圧シリンダ(例:油圧シリンダ、ガス圧シリンダ)や電気モータなどが用いられ、本実施形態では伸縮ロッド33aを有する油圧シリンダ33が用いられている。油圧シリンダ33はディスカード42から下側に離間した位置に配置されている。押さえ部31は油圧シリンダ33のロッド33aの先端部に取り付けられて設けられている。
【0058】
そして、押さえ手段30は、ディスカード42がコンテナ8内から露出した後で且つシャー刃10(詳述するとシャー刃10の刃先10a)がディスカード42の剪断予定部Sに当接する前までに、押さえ部31を退避位置からディスカード42の上流側端面43の押さえ箇所43aに配置することによりディスカード42の上流側端面43を押さえ部31で押さえるように構成されている。
【0059】
さらに、押さえ手段30は、図2〜7に示すように、押さえ部31によるディスカード42の上流側端面43の押さえ箇所43aがシャー刃10の進行動作と連動してシャー刃10の進行方向15に変移するように押さえ部31が移動するように構成されている。
【0060】
次に、本発明の一実施形態に係る押出加工方法(押出材47の製造方法)について本実施形態の押出加工装置1を用いる場合で以下に説明する。なお、以下で説明する油圧シリンダ33の各動作はいずれもコントローラ34により制御されている。
【0061】
図1に示すように、コンテナ8内に装填された略円柱状のビレット40をステム9で押出方向Eに押圧することにより、ビレット40を押出ダイス2内に通過させて押出加工する。この工程を「ビレット押圧工程」という。この工程により、ビレット40が押出加工されて押出材47が得られる。
【0062】
ビレット押圧工程では、シャー刃10は、ディスカード42から上側に離間した位置に配置されている。また、押さえ手段30の油圧シリンダ33の伸縮ロッド33aは短縮しており、したがって押さえ部31は退避位置に配置されている。
【0063】
コンテナ8内に残存するビレット40の長さが所定長さになったら、ステム9による押圧を停止する。このときのコンテナ8内に残存するビレット40がディスカード42となり、残存するビレット40の長さがディスカード42の厚さとなる。この状態では、押出ダイス2(詳述すると押出ダイス2の雄型3)の内部は残留押出材料45で充満されており、またディスカード42はコンテナ8内に配置されており且つ押出ダイス2内の残留押出材料45と一体に繋がっている。
【0064】
次いで、図2に示すように、ステム9及びコンテナ8を押出ダイス2に対して相対的に上流方向に後退させることにより、コンテナ8内からディスカード42を排出して露出させる。
【0065】
次いで、押さえ手段30の油圧シリンダ33のロッド33aを上方向に伸張動作させて、押さえ部31をディスカード42の上流側端面43の押さえ箇所43aに配置する。そして、油圧シリンダ33のロッド33aの伸張動作を停止する。ディスカード42の上流側端面43の押さえ箇所43aの詳細については後述する。
【0066】
次いで、図3〜6に示すように、シャー刃10がディスカード42の剪断予定部Sを横断するようにシャー刃10を押出ダイス2の剪断基準面2aに沿って進行方向15に所定の進行速度で進行させることにより、ディスカード42を切除する。この工程を「ディスカード切除工程」という。
【0067】
シャー刃10の進行速度は限定されるものではないが、ビレット40が例えばアルミニウムビレットであり且つその直径が120〜450mmである場合、シャー刃10の進行速度は50〜600mm/sであることが特に望ましい。ディスカード切除工程の詳細については後述する。
【0068】
ディスカード切除工程の後で、図7に示すように、シャー刃10を元の位置へ上方向に退行させる。そして、コンテナ8を押出ダイス2に対して相対的に下流方向に前進させてコンテナ8を元の位置に配置する。
【0069】
次いで、コンテナ8内に新たなビレット41を装填して押出ダイス2内の残留押出材料45に当接させる。そしてこの状態で新ビレット41をステム9で押出方向Eに押圧することにより、新ビレット41を押出ダイス2内に通過させて残留押出材料45に圧着させながら押出加工する。この工程を「押継ぎ工程」という。
【0070】
而して、上述したディスカード切除工程において、図2に示すように、シャー刃10の刃先10aがディスカード42の剪断予定部Sに当接する前の状態では、押さえ手段30の押さえ部31は、ディスカード42の剪断予定部Sにおけるシャー刃10の刃先10aとの当接予定箇所の進行方向前方側近傍に対応する、ディスカード42の上流側端面43の箇所43aを、下流方向に押さえている。
【0071】
そして、図3に示すように、シャー刃10が押出ダイス2のビレット流入口の上端位置に向かって進行してシャー刃10の刃先10aがディスカード42の剪断予定部Sに当接した時、シャー刃10によるディスカード42の剪断予定部Sの剪断が開始される。
【0072】
この剪断開始時からシャー刃10が進行方向15に進行すると、ディスカード42には押出ダイス2(詳述すると押出ダイス2内の残留押出材料45)から剥がれる方向(即ち上流方向)の力(F:図12参照)が加わる。しかしながら、ディスカード42の上流側端面43は上述したように押さえ部31で押さえられているので、この力が抑制される。
【0073】
そして、シャー刃10を更に進行方向15に進行させるとともに、シャー刃10の刃先10aがディスカード42の剪断予定部Sに当接した時(即ち剪断開始時)から油圧シリンダ33のロッド33aを下方向に短縮動作させて、押さえ部31をシャー刃10の進行速度と略等しい速度でシャー刃10の進行方向15に移動させる。これにより、押さえ部31によるディスカード42の上流側端面43の押さえ箇所43aがディスカード42の剪断予定部Sを剪断しているシャー刃10の進行動作と連動してシャー刃10の進行方向15に変移するように、押さえ部31が移動される。
【0074】
このように押さえ部31が移動されることにより、押さえ部31によるディスカード42の上流側端面43の押さえ箇所43aは、シャー刃10によるディスカード42の剪断予定部Sの剪断開始時から剪断終了時までの間に亘って、ディスカード42の剪断予定部Sを剪断しているシャー刃10の刃先10aの進行方向前方側近傍に対応する、ディスカード42の上流側端面43の箇所に維持される。そして、このようにディスカード42の上流側端面43が押さえ部31で押さえられることにより、ディスカード42の剪断予定部Sにおけるシャー刃10の刃先10aの進行方向前方側近傍に下流方向の押圧力が加えられる。
【0075】
図4に示すように、シャー刃10の刃先10aが押出ダイス2のビレット流入口の略中心位置に進行することでディスカード42の剪断予定部Sの直径の約半分の領域が剪断された時でも、ディスカード42の上流側端面43は依然として押さえ部31で押さえられている。したがって、ディスカード42に加わる押出ダイス2から剥がれる方向の力が抑制されている。
【0076】
図5に示すように、シャー刃10の刃先10aが押出ダイス2のビレット流入口の下端位置に進行することでディスカード42の剪断予定部Sの直径の全領域が剪断される時、即ちディスカード42が押出ダイス2内の残留押出材料45から完全に分離される時、ディスカード42の剪断予定部Sの剪断が終了する。この剪断終了の際にも、ディスカード42の上流側端面43は依然として押さえ部31で押さえられている。したがって、ディスカード42に加わる押出ダイス2から剥がれる方向の力が抑制されている。
【0077】
図6に示すように、ディスカード42を残留押出材料45から完全に分離させた位置をシャー刃10が通過進行した後においても、引き続き油圧シリンダ33のロッド33aを下方向に短縮動作させて、押さえ部31を退避位置へ移動させる。これにより、シャー刃10と押さえ部31との当接(干渉)が確実に回避される。
【0078】
以上のようにディスカード除去工程が行われる。
【0079】
押さえ手段30は、少なくとも、シャー刃10の刃先10aがディスカード42の剪断予定部Sに当接した時からディスカード42が残留押出材料45から分離された時までの間、すなわちシャー刃10によるディスカード42の剪断予定部Sの剪断開始時から剪断終了時までの間、ディスカード42の上流側端面43を押さえ手段30の押さえ部31で押さえうるように構成されている。
【0080】
したがって、ディスカード切除工程では、ディスカード42の上流側端面43は、少なくとも、シャー刃10の刃先10aがディスカード42の剪断予定部Sに当接した時からディスカード42が残留押出材料45から分離された時までの間、すなわちシャー刃10によるディスカード42の剪断予定部Sの剪断開始時から剪断終了時までの間、押さえ手段30の押さえ部31で押さえられている。
【0081】
上記実施形態の押出加工方法及び押出材47の製造方法には次の利点がある。
【0082】
ディスカード切除工程では、ディスカード42の上流側端面43を押さえた状態でディスカード42を切除することにより、ディスカード42に加わる押出ダイス2から剥がれる方向の力(F:図12参照)が抑制される。そのため、押出ダイス2内に空隙が発生しにくくなる。その結果、エアー巻込み不良を抑制することができる。すなわち、図7に示すように、押継ぎ工程にて新ビレット41を押出ダイス2内に通過させて新ビレット41を押出加工することにより、エアー巻込み不良が抑制された押出材47を製造することができる。
【0083】
さらに、ディスカード切除工程では、少なくとも、シャー刃10の刃先10aがディスカード42の剪断予定部Sに当接した時からディスカード42が押出ダイス2内の残留押出材料45から分離される時までの間、ディスカード42の上流側端面43を押さえ手段30の押さえ部31で押さえているので、押出ダイス2内に空隙が発生するのを確実に抑制することができる。したがって、エアー巻込み不良を確実に抑制することができる。
【0084】
さらに、ディスカード切除工程では、図2に示すように、コンテナ8内に配置されたディスカード42をコンテナ8内から露出させた後で且つシャー刃10の刃先10aがディスカード42の剪断予定部Sに当接する前までに、ディスカード42の上流側端面43を押さえ部31で押さえるので、コンテナ8と押さえ部31との干渉を防止することができる。さらに、ディスカード42の上流側端面43を押さえ部31で押さえた状態でシャー刃10によるディスカード42の剪断予定部Sの剪断を開始することができる。
【0085】
さらに、押さえ部31によるディスカード42の上流側端面43の押さえ箇所43aがシャー刃10の進行動作と連動してシャー刃10の進行方向15に変移するように押さえ部31を移動させるので、押出ダイス2内に空隙が発生するのを更に確実に抑制することができる。したがって、エアー巻込み不良を更に確実に抑制することができる。
【0086】
次に、押さえ手段の幾つかの変形例を以下に示す。
【0087】
図8は、押さえ手段の第1変形例を説明する図である。
【0088】
同図の押さえ手段130は、ディスカード42の上流側端面43を押さえる押さえ部131と、押さえ部131を支持する棒状の押さえ部支持部材135とを備えている。
【0089】
シャー刃10は、シャー刃10を支持するシャー刃支持部材16に固定状態に取り付けられて支持されている。そして、シャー刃10と支持部材16は駆動源11の駆動力によりシャー刃10の進行方向15に一体に進行するように構成されている。
【0090】
押さえ部131は押さえ部支持部材135の一端部(下端部)に取り付けられて支持されている。支持部材135の他端部(上端部)はシャー刃10の支持部材16に固定状態に取り付けられている。これにより、押さえ部131は、シャー刃10と一体に進行動作するようにシャー刃10に支持部材135を介して設けられている。
【0091】
押さえ手段130では、ディスカード42がコンテナ(図示せず)内から露出した後で且つシャー刃10の刃先10aがディスカード42の剪断予定部Sに当接する前までに、押さえ部131がディスカード42の上流側端面43を押さえる。そして、ディスカード42の剪断予定部Sを横断するようにシャー刃10が押出ダイス2の剪断基準面2aに沿って進行方向15に進行することにより、押さえ部131によるディスカード42の上流側端面43の押さえ箇所43aがシャー刃10の進行動作と連動してシャー刃10の進行方向15に変移するように押さえ部131がシャー刃10と一緒にシャー刃10の進行方向15に移動される。
【0092】
押さえ手段130では、押さえ部131を移動させる駆動源及びそのコントローラとして、シャー刃10を進行方向15に進行させる駆動源11及びそのコントローラ12が用いられている。したがって、押さえ手段130には押さえ部131を移動させる専用の駆動源及びそのコントローラを必ずしも要しないという利点がある。
【0093】
図9は、押さえ手段の第2変形例を説明する図である。
【0094】
同図の押さえ手段230は、ディスカード42の上流側端面43を押さえる押さえ部としての押さえローラ231と、押さえローラ231を支持する棒状の押さえ部支持部材235とを備えている。
【0095】
シャー刃10は、シャー刃10を支持するシャー刃支持部材16に固定状態に取り付けられて支持されている。そして、シャー刃10と支持部材16は駆動源11の駆動力によりシャー刃10の進行方向15に一体に進行するように構成されている。
【0096】
押さえローラ231は押さえ部支持部材235の一端部(下端部)に回転可能に取り付けられて支持されている。支持部材235の他端部(上端部)はシャー刃10の支持部材16に固定状態に取り付けられている。これにより、押さえローラ231は、シャー刃10と一体に進行動作するようにシャー刃10に支持部材135を介して設けられている。押さえローラ231はディスカードの42上流側端面43上をシャー刃10の進行方向15に転動可能なものである。
【0097】
押さえ手段230では、ディスカード42がコンテナ(図示せず)内から露出した後で且つシャー刃10の刃先10aがディスカード42の剪断予定部Sに当接する前までに、押さえローラ231がディスカード42の上流側端面43を押さえる。そして、ディスカード42の剪断予定部Sを横断するようにシャー刃10が押出ダイス2の剪断基準面2aに沿って進行方向15に進行することにより、押さえローラ231によるディスカード42の上流側端面43の押さえ箇所43aがシャー刃10の進行動作と連動してシャー刃10の進行方向15に変移するように押さえローラ231がディスカード42の上流側端面43上をシャー刃10の進行方向15に転動しながらシャー刃10と一緒にシャー刃10の進行方向15に移動される。
【0098】
押さえ手段230には、図8の押さえ手段130の利点に加えて更に次の利点がある。すなわち、シャー刃10がディスカード42の剪断予定部Sを横断する際(即ちディスカード42の切除の際)に押さえ手段230の押さえローラ231がディスカード42の上流側端面43上をシャー刃10の進行方向15に転動するので、押さえローラ231によるディスカード42の上流側端面43の押さえ箇所43aがシャー刃10の進行方向15に円滑に変移する。そのため、ディスカード42の上流側端面43を確実に押さえることができる。
【0099】
図10A及び10Bは、押さえ手段の第3変形例を説明する図である。
【0100】
同図の押さえ手段330では、ディスカード42の上流側端面43を押さえる押さえ部331は、シャー刃10の進行方向15に積層した状態に配置された複数の板状の押さえ片337で構成されている。押さえ片337の枚数は例えば4枚である。各押さえ片337は図10Bに示すように上流方向へ移動可能である。
【0101】
押さえ手段330では、図10Aに示すように、ディスカード42がコンテナ(図示せず)内から露出した後で且つシャー刃10の刃先10aがディスカード42の剪断予定部Sに当接する前までに、複数の押さえ片337がディスカード42の上流側端面43を押さえる。そして、ディスカード42の剪断予定部Sを横断するようにシャー刃10が押出ダイス2の剪断基準面2aに沿って進行方向15に進行することにより、図10Bに示すように、複数の押さえ片337によるディスカード42の上流側端面43の押さえ箇所43aがシャー刃10の進行動作と連動してシャー刃10の進行方向15に変移するように複数の押さえ片337の全体形状が変化する(即ち押さえ部331が変形する)。
【0102】
すなわち、押さえ手段330は、ディスカード42の上流側端面43を押さえている複数の押さえ片337がディスカード42の剪断予定部Sを剪断しているシャー刃10の進行動作と連動して上から順に(即ちシャー刃10側から順に)一枚ずつ上流方向へ移動され、これにより複数の押さえ片337によるディスカード42の上流側端面43の押さえ箇所43aがシャー刃10の進行方向15に変移するように構成されている。
【0103】
本発明に係る押出加工装置に用いられる押出ダイスは、上記実施形態で示した押出ダイス2に限定されるものではなく、その他に例えば図11A〜11Dに示したものであっても良い。
【0104】
図11Aでは、上記実施形態の押出ダイス2の要素と同等の要素にはその符号に50を加算した符号が付されている。
【0105】
図11Aに示した押出ダイス52は、ポートトールダイスの雄型53の上流側端面におけるビレット流入口の領域が局部的に掘り込まれることで当該領域の位置が雄型53の上流側端面の位置よりも下流側に局部的に配置されたものである。
【0106】
同図の押出ダイス52では、押出ダイス52の雄型53の上流側端面がディスカード42の剪断箇所(即ち剪断予定部S)を決定する剪断基準面52aとなる。
【0107】
図11Bでは、上記実施形態の押出ダイス2の要素と同等の要素にはその符号に60を加算した符号が付されている。
【0108】
図11Bに示した押出ダイス62は、ポートホールダイスの雄型63の上流側に配置される円環板状のプレート66を具備している。プレート66は、その中央部にて貫通したビレット流通孔を有するものである。そしてプレート66は、ビレット流通孔の内周面が雄型63の上流側端面におけるビレット流入口の領域を包囲する態様にして雄型63の上流側端面に密着して配置されている。
【0109】
同図の押出ダイス62では、プレート66のビレット流通孔の上流側開口が押出ダイス62の真のビレット流入口となり、プレート66の上流側端面がディスカード42の剪断箇所(即ち剪断予定部S)を決定する剪断基準面62aとなる。
【0110】
図11Cでは、上記実施形態の押出ダイス2の要素と同等の要素にはその符号に70を加算した符号が付されている。
【0111】
図11Cに示した押出ダイス72は、基本的には中実な押出材47を成形するいわゆる平ダイスであり、更に、押出ダイス72の下流側端面におけるビレット流入口の領域が局部的に掘り込まれることで当該領域の位置が押出ダイス72の下流側端面の位置に対して下流側に局部的に配置されている。
【0112】
同図の押出ダイス72では、押出ダイス72の上流側端面がディスカード42の剪断箇所(即ち剪断予定部S)を決定する剪断基準面72aとなる。
【0113】
図11Dでは、上記実施形態の押出ダイス2の要素と同等の要素にはその符号に80を加算した符号が付されている。
【0114】
図11Dに示した押出ダイス82は、中実な押出材47を成形するいわゆる平ダイス(押出ダイス本体)84と、その上流側に配置される円環板状のプレート86とを具備したものである。プレート86は、その中央部にて貫通したビレット流通孔を有するものである。そしてプレート86は、ビレット流通孔の内周面が平ダイス84の上流側端面におけるビレット流入口の領域を包囲する態様にして平ダイス84の上流側端面に密着して配置されている。
【0115】
同図の押出ダイス82では、プレート86のビレット流通孔の上流側開口が押出ダイス82の真のビレット流入口となり、プレート86の上流側端面がディスカード42の剪断箇所(即ち剪断予定部S)を決定する剪断基準面82aとなる。
【0116】
以上で本発明の幾つかの実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で様々に変更可能である。
【0117】
例えば、本発明に係る押出加工方法及び押出材の製造方法では、ディスカードをその厚さ方向に押圧することでディスカードの厚さが減少するようにディスカードを塑性変形させ、その後で、ディスカードを切除しても良い。
【0118】
また本発明では、図1〜7に示した上記実施形態の押さえ手段30の押さえ部31として、図9に示すような押さえローラ231が用いられても良い。この場合、押さえローラ231は油圧シリンダ33の伸縮ロッド33aの先端部に取り付けられて設けられる。
【0119】
また本発明に係る押出加工方法及び押出材の製造方法では、ディスカード切除工程において、シャー刃の進行方向に対向する方向にディスカードを支持した状態でディスカードを切除しても良い。また本発明に係る押出加工装置は、シャー刃でディスカードを切除する際にシャー刃の進行方向に対向する方向にディスカードを支持する支持手段を含んでいても良い。これらの場合は、エアー巻込み不良を更に確実に抑制することができる。
【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明は押出加工方法、押出加工装置及び押出材の製造方法に利用可能である。
【符号の説明】
【0121】
1:押出加工装置
2:押出ダイス
8:コンテナ
10:シャー刃
10a:シャー刃の刃先
15:シャー刃の進行方向
30:押さえ手段
31:押さえ部
32:駆動源
33:油圧シリンダ
40:ビレット
42:ディスカード
43:ディスカードの上流側端面
45:押出ダイス内の残留押出材料
47:押出材
S:ディスカードの剪断予定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11A
図11B
図11C
図11D
図12