【実施例】
【0030】
以下、実施例のクリーニングブレードについて、図面を用いて説明する。なお、同一部材については同一の符号を用いて説明する。
【0031】
(実施例1)
実施例1のクリーニングブレードについて、
図1、
図2を用いて説明する。
図1、
図2に示されるように、本例のクリーニングブレード1は、電子写真方式を採用する画像形成装置内の相手部材との摺接によって相手部材の表面に残留する残留トナー(トナーのみならず、トナー外添剤も含む)を除去するために用いられるものである。本例では、相手部材は、具体的には、電子写真方式の画像形成装置内における感光ドラムである。
【0032】
クリーニングブレード1は、板状部21を有する導電性支持体2と、板状部21に形成されたポリウレタンゴム製のブレード部3と、板状部21とブレード部3との間に介在し、導電剤(不図示)を含有する導電性接着層4とを有している。ブレード部3は、0.3質量%以上10質量%未満のカリウム塩(不図示)を含有している。
【0033】
本例では、導電性支持体2は、板状部21と一体的に繋がる取付部22を有している。取付部22は、画像形成装置の部材に取り付けるための部位である。導電性支持体2は、全体として断面「L」字状に形成されている。ブレード部3は、板状部21の短手方向の先端部側に形成されている。板状部21の先端部は、ブレード部3に埋設されている。導電性接着層4は、板状部21における一方の板面、他方の板面、各板面に対向するブレード部3の部分との間に介在するとともに、板状部21の先端面と、当該先端面に対向するブレード部3の部分との間にも介在している。
【0034】
(実施例2)
実施例2のクリーニングブレードについて、
図3、
図4を用いて説明する。
図3、
図4に示されるように、本例のクリーニングブレード1は、板状部21の一方の板面側にブレード部3が接着されている。導電性接着層4は、板状部21の一方の板面と、当該板面に対向するブレード部3の部分との間に介在している。その他の構成は、実施例1と同様である。
【0035】
以下、実験例を用いてより具体的に説明する。
【0036】
<ウレタンゴム組成物の調製>
80℃にて1時間、真空脱泡したポリブチレンアジペート(PBA)(東ソー社製、「ニッポラン4010」):44質量部と、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)(東ソー社製、「ミリオネートMT」):56質量部とを混合し、窒素雰囲気下、80℃で3時間反応させることにより、ウレタンプレポリマーを含む主剤液を調製した。なお、主剤液中のNCO%(質量%)は、17.0%である。
【0037】
また、ポリブチレンアジペート(PBA)(東ソー社製、「ニッポラン4010」):87質量部と、1,4−ブタンジオール(三菱化学社製)とトリメチロールプロパン(広栄パーストープ社製)とが重量比6:4にて混合されてなる低分子量ポリオール:13質量部と、触媒としてのトリエチレンジアミン(東ソー社製):0.01質量部とを、窒素雰囲気下、80℃にて1時間混合することにより、水酸基価(OHV)が210(KOHmg/g)の硬化剤液を調製した。
【0038】
次いで、上記調製した主剤液と硬化剤液とイオン導電剤とを、主剤液100質量部に対して硬化剤液94質量部、イオン導電剤が表1に示される含有量となるように配合し、真空雰囲気下、60℃で3分間混合し、十分に脱泡した。これにより、各クリーニングブレードにおけるブレード部の形成に用いる各ウレタンゴム組成物を調製した。
【0039】
なお、イオン導電剤には下記のものを用いた。
・カチオン種:K
+、アニオン種:CF
3SO
2C
4F
9SO
2N
−(三菱マテリアル電子化成社製、「EF−N142」)
・カチオン種:K
+、アニオン種:(CF
3SO
2)
2N
−(三菱マテリアル電子化成社製、「EF−N112」)
・カチオン種:K
+、アニオン種:C
28H
20BO
6−(日本カーリット社製、「LR−147」)
・カチオン種:Li
+、アニオン種:CF
3SO
2C
4F
9SO
2N
−(三菱マテリアル電子化成社製、「EF−N145」)
・カチオン種:Li
+、アニオン種:(CF
3SO
2)
2N
−(三菱マテリアル電子化成社製、「EF−N115」)
・カチオン種:Na
+、アニオン種:(CF
3SO
2)
2N
−(三菱マテリアル電子化成社製、「EF−N113」)
・カチオン種:(C
4H
9)
4P
+、アニオン種:Br
−(広栄化学社製、「IL−AP1B」)
【0040】
<ウレタンゴム組成物の硬化性>
各ウレタンゴム組成物を、厚み2mmのシート状に塗工し、130℃で加熱した。ウレタンゴム組成物が1分で硬化した場合に、イオン導電剤によるウレタン触媒の反応性が阻害されておらず、従来の製造条件でウレタンゴム組成物の硬化性が良好であるとして「A」とした。また、ウレタンゴム組成物が5分経っても硬化しなかった場合に、イオン導電剤によるウレタン触媒の反応性が阻害されており、従来の製造条件ではウレタンゴム組成物の硬化性が悪いとして「C」とした。
【0041】
<接着剤の調製>
形成される接着層における導電剤の含有量が、表1に示される値となるように、エポキシ樹脂系接着剤(東亞合成社製、「アロンマイテイAS−60」)に、電子導電剤であるカーボンブラック(三菱化学社製、「#3030B」)を添加し、30分間十分に混合した。これにより、各クリーニングブレードにおける接着層の形成に用いる各接着剤を調製した。なお、一部の接着剤については、比較のため、導電剤を添加しなかった。
【0042】
<クリーニングブレード試料の作製>
上型と下型とから構成される金型を準備した。金型は、上型と下型とを接近させて型締めすることにより、略長尺板状のブレード部二つ分の大きさを有するキャビティが内部に形成される。このキャビティには、対向する二つの収容部が設けられている。これら各収容部には、断面L字状に折り曲げ形成された金属製の長尺板材(板厚2mm)からなる導電性支持体の板状部がそれぞれ配置できるように構成されている。
【0043】
次いで、導電性支持体における板状部の先端部における表裏の板状面および先端面に、所定の接着剤を、後述する表1に示される接着層の厚みとなるように塗布した。なお、上記塗布幅は、板状部の先端面から基端側へ2mmまでの範囲とした。
【0044】
次いで、上記金型の各収容部に接着剤が塗布された導電性支持体をそれぞれセットし、型締めした後、キャビティ内に所定のウレタンゴム組成物を注入し、130℃で5分間加熱することによりウレタンゴム組成物を硬化させた。その後、成形体を金型から取り出し、所定の大きさとなるように二つに切断した。これによりポリウレタンゴム製のブレード部(厚み2mm)と導電性支持体とが接着層を介して一体化されたクリーニングブレード試料を作製した。なお、ウレタンゴム組成物の硬化性が「C」評価であった場合には、130℃で硬化するまで5分を超えて加熱することにより、クリーニングブレード試料を作製した。
【0045】
<耐ブリード・ブルーム性>
各クリーニングブレードを、40℃×95%RHの湿熱環境に2週間放置した。その後、ブレード部表面におけるイオン導電剤のブリード、ブルームを目視にて確認した。ブレード部表面にイオン導電剤のブリード、ブルームが何ら認められなかった場合を、耐ブリード、ブルーム性に優れ、相手部材を汚染し難いとして「A」とした。ブレード部表面にイオン導電剤のブリード、ブルームが認められた場合を、相手部材を汚染するとして「C」とした。
【0046】
<除電性および掻き取り性>
100Vの直流電圧を印加可能な金属ローラに、クリーニングブレードにおけるブレード部の先端部のエッジ部を接触させた。また、クリーニングブレードにおける導電性支持体に電圧計を接続するとともに接地した。そして、クリーニングブレードのブレード部が接触した状態で、金属ローラに100V印加した時のクリーニングブレード全体の体積電気抵抗を測定した。体積電気抵抗が1×10
10Ω未満であった場合を、残留トナーを除電しながら掻き取り可能として「A」とした。体積電気抵抗が1×10
10Ω以上であった場合を、残留トナーを除電しながら掻き取りできないとして「C」とした。
【0047】
表1に、各クリーニングブレードの詳細構成、評価結果をまとめて示す。
【0048】
【表1】
【0049】
表1によれば、以下のことがわかる。試料1Cは、ブレード部におけるカリウム塩の含有量が規定範囲を下回っている。そのため、試料1Cは、残留トナーを除電しながら掻き取ることができない。
【0050】
試料2Cは、ブレード部におけるカリウム塩の含有量が規定範囲を上回っている。そのため、試料2Cは、イオン導電剤のブリード、ブルームを抑制することができない。
【0051】
試料3C〜6Cは、カリウム塩以外のイオン導電剤を用いている。そのため、これら試料では、ウレタン触媒の反応性が阻害され、従来の製造条件ではウレタンゴム組成物の硬化性が悪い。
【0052】
試料7Cは、接着層が導電剤を含有していないため導電性がない。そのため、試料7Cは、残留トナーを除電しながら掻き取ることが困難である。
【0053】
これらに対し、試料1〜5によれば、相手部材を汚染し難く、ウレタン触媒の反応性を阻害し難く、残留トナーを除電しながら掻き取ることが可能なクリーニングブレードを提供することができるといえる。
【0054】
以上、本発明の実施例について詳細に説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲内で種々の変更が可能である。