特許第6537949号(P6537949)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6537949
(24)【登録日】2019年6月14日
(45)【発行日】2019年7月3日
(54)【発明の名称】クリーニングブレード
(51)【国際特許分類】
   G03G 21/00 20060101AFI20190625BHJP
【FI】
   G03G21/00 318
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-192404(P2015-192404)
(22)【出願日】2015年9月30日
(65)【公開番号】特開2017-67971(P2017-67971A)
(43)【公開日】2017年4月6日
【審査請求日】2018年9月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219602
【氏名又は名称】住友理工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】特許業務法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】二村 安紀
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 智志
(72)【発明者】
【氏名】山口 和志
【審査官】 岡▲崎▼ 輝雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−008957(JP,A)
【文献】 特開2011−102859(JP,A)
【文献】 特開2003−140427(JP,A)
【文献】 特開2001−074034(JP,A)
【文献】 特開2012−032808(JP,A)
【文献】 特開平7−113040(JP,A)
【文献】 特開2007−226185(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子写真方式を採用する画像形成装置内の相手部材との摺接によって上記相手部材の表面に残留する残留トナーを除去するために用いられるクリーニングブレードであって、
板状部を有する導電性支持体と、上記板状部に形成されたポリウレタンゴム製のブレード部と、上記板状部と上記ブレード部との間に介在し、導電剤を含有する導電性接着層とを有しており、
上記ブレード部は、0.3質量%以上10質量%未満のカリウム塩を含有しており、
上記カリウム塩におけるアニオンは、CFSOSO、(CFSO、(FSO、C2820BO、AlCl、AlCl、NO、BF、PF、CFCOO、CFSO、(CFSO、AsF、SbF、F(HF)N、CFCFCFCFSO、(CFCFSO、CFCFCFCOO、(CSO、CF(CFSO、および、CFSONHからなる群より選択される少なくとも1種である、クリーニングブレード。
【請求項2】
上記カリウム塩におけるアニオンは、CFSOSO、(CFSOおよび、2820BOらなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1に記載のクリーニングブレード。
【請求項3】
上記導電剤は、電子導電剤である、請求項1または2に記載のクリーニングブレード。
【請求項4】
上記電子導電剤は、カーボンブラックである、請求項3に記載のクリーニングブレード。
【請求項5】
体積電気抵抗が1×1010Ω未満である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のクリーニングブレード。
【請求項6】
上記導電性接着層の厚みは、0.1〜20μmの範囲内にある、請求項1〜5のいずれか1項に記載のクリーニングブレード。
【請求項7】
上記導電性接着層は、上記導電剤を0.1〜10質量%含有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載のクリーニングブレード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリーニングブレードに関し、さらに詳しくは、電子写真方式の画像形成装置に用いられるクリーニングブレードに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置では、例えば、感光体等の像担持体や中間転写ベルトの表面をクリーニングするためにクリーニングブレードが用いられている。クリーニングブレードは、ブレード部における先端のエッジ部が、相手部材である像担持体や中間転写ベルトの表面に押し付けられている。相手部材とエッジ部との摺接により、相手部材表面に残留する残留トナーが掻き取られて除去される。
【0003】
従来のクリーニングブレードとしては、例えば、板状部を有する金属製の支持体と、板状部における先端側に、接着層を介して接着された板状のポリウレタンゴムからなるブレード部とを有するクリーニングブレードが広く知られている。
【0004】
なお、先行する特許文献1には、クリーニングブレードにおける導電性弾性層形成材料として、ポリオール、ウレタンポリマー、ホウ酸エステル化合物を含有する導電性組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3772402号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、画像形成装置では、高画質化の要請から、球形かつ小径のトナーが使用されるようになっている。そのため、相手部材表面とブレード部のエッジ部との間に生じた僅かな隙間を通じてトナーがすり抜けやすい。それ故、ブレード部のゴム弾性を利用し、残留トナーをトナー回収ボックス内に効率よく掻き落とすことが難しくなってきている。
【0007】
画像形成装置において、残留トナーは、通常、荷電された状態にある。そのため、トナー回収ボックス内に回収されたトナー同士の間には、静電気的な反発力が生じる。それ故、トナー回収ボックス内にトナーが収まらず、トナー回収ボックスからトナーが溢れ出す場合がある。
【0008】
上記問題に対処するため、クリーニングブレードにて残留トナーを除電しながら掻き取る方法が考えられる。そのためには、ブレード部を導電化する必要がある。ブレード部を導電化する方法としては、カーボンブラックやイオン導電剤を添加する方法が考えられる。
【0009】
しかしながら、カーボンブラックは、分散状態の制御が難しく、ブレード部の体積電気抵抗を安定化することが難しい。また、ブレード部にカーボンブラックを添加すると、ブレード部の圧縮永久ひずみや永久伸びが悪化し、硬度上昇によってポリウレタンゴムのゴム弾性が損なわれ、トナーの掻き取りに支障が出る。
【0010】
一方、ブレード部に、イオン液体を添加すると、ブリードが生じやすく、ブリードしたイオン液体により相手部材を汚染するという問題が生じる。また、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)や、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)などの一般的なイオン導電剤は、ブレード部を形成する際にウレタン触媒の反応性を悪化させる。そのため、従来の製造条件では、ブレード部の硬化性が低下してブレード部の板状部への接着性が悪くなり、その結果、残留トナーを除電しながら掻き取ることが可能なクリーニングブレードを得ることができない。
【0011】
本発明は、上記背景に鑑みてなされたものであり、相手部材を汚染し難く、ウレタン触媒の反応性を阻害し難く、残留トナーを除電しながら掻き取ることが可能なクリーニングブレードを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様は、電子写真方式を採用する画像形成装置内の相手部材との摺接によって上記相手部材の表面に残留する残留トナーを除去するために用いられるクリーニングブレードであって、
板状部を有する導電性支持体と、上記板状部に形成されたポリウレタンゴム製のブレード部と、上記板状部と上記ブレード部との間に介在し、導電剤を含有する導電性接着層とを有しており、
上記ブレード部は、0.3質量%以上10質量%未満のカリウム塩を含有しており、
上記カリウム塩におけるアニオンは、CFSOSO、(CFSO、(FSO、C2820BO、AlCl、AlCl、NO、BF、PF、CFCOO、CFSO、(CFSO、AsF、SbF、F(HF)N、CFCFCFCFSO、(CFCFSO、CFCFCFCOO、(CSO、CF(CFSO、および、CFSONHからなる群より選択される少なくとも1種である、クリーニングブレードにある。
【発明の効果】
【0013】
上記クリーニングブレードは、ブレード部に上記特定範囲でカリウム塩を含有している。そのため、イオン導電剤であるカリウム塩がブレード部の表面にブリード、ブルームするのを抑制することができる。したがって、上記クリーニングブレードは、相手部材を汚染し難い。また、カリウム塩は、LiTFSIやLiFSIなどのイオン導電剤のように、ウレタン触媒の反応性を阻害し難い。そのため、上記クリーニングブレードは、従来の製造条件であってもブレード部が硬化し、ブレード部の板状部への接着性が確保され、ブレード部のポリウレタンゴムによるゴム弾性を十分に確保することができる。そして、上記クリーニングブレードは、ブレード部の板状部と導電性接着層との密着性が高いため、クリーニングブレードの使用時に、ブレード部と導電性接着層との界面に剥離による浮き等が生じ難い。そのため、上記クリーニングブレードは、ブレード部と導電性接着層との間における接触電気抵抗の増大を抑制することが可能となる。したがって、上記クリーニングブレードによれば、ブレード部、導電性接着層、および、導電性支持体による導電経路が確実に確保される。それ故、上記クリーニングブレードは、画像形成装置に接地した状態で組み込まれることにより、残留トナーを除電しながら、ブレード部のポリウレタンゴムによるゴム弾性を利用してトナーを掻き取り除去することができる。
【0014】
よって、本発明によれば、相手部材を汚染し難く、ウレタン触媒の反応性を阻害し難く、残留トナーを除電しながら掻き取ることが可能なクリーニングブレードを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施例1のクリーニングブレードの斜視図である。
図2図1におけるII−II線断面を模式的に示した図である。
図3】実施例2のクリーニングブレードの斜視図である。
図4図3におけるIV−IV線断面を模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
上記クリーニングブレードは、電子写真方式を採用する画像形成装置内の相手部材との摺接によって相手部材の表面に残留する残留トナーを除去するために用いられる。画像形成装置としては、具体的には、帯電像を用いる電子写真方式を採用する複写機、プリンター、ファクシミリ、複合機、オンデマンド印刷機等の画像形成装置を例示することができる。また、相手部材としては、感光ドラム等の像担持体や中間転写ベルトなどを例示することができる。なお、中間転写ベルトは、像担持体に担持されたトナー像を当該ベルトに一次転写した後、このトナー像を当該ベルトから用紙等の転写材へ二次転写するためのものである。上記クリーニングブレードは、より具体的には、ブレード部の先端のエッジ部が相手部材と摺接させるための摺接部とされ、動作する相手部材の表面に摺り合った状態で接触させることにより、摺接部まで運ばれてきた相手部材表面の残留トナーを掻き取って除去するように使用することができる。
【0017】
上記クリーニングブレードは、板状部を有する導電性支持体を有している。導電性支持体は、金属材料等の導電性材料から構成することができる。板状部は、具体的には、例えば、所定の厚みを有する長方形状等の形状を有することができる。この場合、板状部は、長手方向の長さを、好ましくは230〜360mmとすることができる。また、板状部の厚みは、好ましくは1.2〜2mmとすることができる。導電性支持体は、より具体的には、例えば、板状部と繋がっており、画像形成装置の部材に取り付けるための取付部を有する構成とすることができる。この場合、導電性支持体は、全体として断面「L」字状等の形状を有することができる。
【0018】
上記クリーニングブレードは、板状部に形成されたポリウレタンゴム製のブレード部を有している。ブレード部は、具体的には、板状部の短手方向の先端部側に形成することができる。板状部の先端部は、ブレード部に埋設されていてもよい。また、板状部のいずれか一方の板面側にブレード部が接着されていてもよい。この場合、ブレード部の一部が板状部の先端面に接着されていてもよい。
【0019】
ブレード部は、カリウム塩を含有している。つまり、上記クリーニングブレードにおいて、ブレード部が、カリウム塩によって導電化されている。カリウム塩はイオン導電剤として機能する。そのため、上記クリーニングブレードは、ブレード部に電子導電剤であるカーボンブラック等が添加されている場合に比べ、ブレード部の体積電気抵抗を安定化させやすい。また、上記クリーニングブレードは、ブレード部の圧縮永久ひずみや永久伸びが悪化し難く、硬度上昇も生じ難い。
【0020】
但し、ブレード部におけるカリウム塩の含有量が0.3質量%未満になると、添加による導電性付与効果が得られなくなる。よって、ブレード部におけるカリウム塩の含有量を0.3質量%以上とする。なお、カリウム塩の含有量は、ブレード部の全体質量に対するブレード部に含まれるカリウム塩の質量の割合(%)である。ブレード部におけるカリウム塩の含有量は、添加による効果を確実なものとする観点から、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは0.7質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上とすることができる。一方、ブレード部におけるカリウム塩の含有量が10質量%以上になると、カリウム塩がブリード、ブルームする傾向が見られ、カリウム塩の使用量増大によって製造コストも上昇する。よって、ブレード部におけるカリウム塩の含有量を10質量%未満とする。ブレード部におけるカリウム塩の含有量は、添加による効果、カリウム塩のブリード、ブルーム、製造コスト等のバランスなどの観点から、好ましくは9質量%以下、より好ましくは8質量%以下、さらに好ましくは7質量%以下、さらにより好ましくは6質量%以下、もっとも好ましくは5質量%以下とすることができる。
【0021】
上記カリウム塩におけるアニオンは、具体的には、CFSOSO<ノナフルオロ−N−[(トリフルオロメタン)スルホニル]ブタンスルホニルアミドアニオン>、(CFSO<ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオン>、(FSO<ビス(フルオロスルホニル)イミドイミドアニオン>、C2820BO、AlCl、AlCl、NO、BF、PF、CCOO、CFSO、(CFSO、AsF、SbF、F(HF)N、CFCFCFCFSO、(CFCFSO、CFCFCFCOO、(CSO、CF(CFSOおよび、CFSONHからなる群より選択される少なくとも1種とされる。また、ブレード部には、1種または2種以上のカリウム塩が含まれていてもよい。上記カリウム塩におけるアニオンは、上記効果を確実なものとするなどの観点から、好ましくは、(CFSO、CFSOSO、C2820BOであるとよい。
【0022】
上記クリーニングブレードは、板状部とブレード部との間に介在し、導電剤を含有する導電性接着層を有している。導電性接着層は、導電化されたブレード部と導電性支持体とを接着するだけでなく、両者を電気的に接続する役割を有している。導電性接着層は、具体的には、板状部の先端部がブレード部に埋設されている場合、板状部における一方の板面、他方の板面、各板面に対向するブレード部の部分との間に介在することができる。この場合、導電性接着層は、さらに、板状部の先端面と、当該先端面に対向するブレード部の部分との間に介在することもできる。また、導電性接着層は、板状部のいずれか一方の板面側にブレード部が接着されている場合、板状部のいずれか一方の板面と、当該板面に対向するブレード部の部分との間に介在することができる。この場合、導電性接着層は、さらに、板状部の先端面と、ブレード部の表面の一部との間に介在することもできる。
【0023】
導電性接着層に含まれる導電剤は、具体的には、電子導電剤、イオン導電剤のいずれであってよい。電子導電剤としては、より具体的には、例えば、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、グラフェン、金属微粒子、金属酸化物微粒子等を例示することができる。これらは1種または2種以上併用することができる。イオン導電剤としては、4級アンモニウム塩、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等を例示することができる。これらは1種または2種以上併用することができる。導電剤としては、導電性接着層への分散性等の観点から、好ましくは、電子導電剤を好適に用いることができる。電子導電剤としては、導電性接着層への分散性、分散制御のしやすさ等の観点から、具体的には、カーボンブラックを好適に用いることができる。
【0024】
導電性接着層は、具体的には、例えば、導電性付与の観点から、導電剤を、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上含有することができる。一方、導電性接着層は、具体的には、例えば、接着性などの観点から、導電剤を、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下含有することができる。
【0025】
導電性接着層は、具体的には、導電剤を含有する樹脂接着剤より構成することができる。樹脂接着剤は、ポリウレタンゴム製のブレード部と導電性支持体とを接着させることができれば、いずれの熱硬化性樹脂接着剤、熱可塑性樹脂接着剤でも用いることができる。樹脂接着剤としては、接着性などの観点から、熱硬化性樹脂接着剤が好適である。熱硬化性樹脂接着剤としては、具体的には、例えば、エポキシ樹脂系接着剤、アクリル樹脂系接着剤などを例示することができる。
【0026】
導電性接着層の厚みは、接着性確保などの観点から、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.3μm以上、さらに好ましくは0.5μm以上とすることができる。また、導電性接着層の厚みは、加工安定性などの観点から、好ましくは20μm以下、より好ましくは15μm以下、さらに好ましくは10μm以下とすることができる。
【0027】
上記クリーニングブレードにおいて、導電性接着層の体積電気抵抗は、ブレード部の体積電気抵抗以下であるとよい。この場合には、ブレード部よりも薄い導電性接着層に厚みばらつきがある場合でも、クリーニングブレード全体の体積電気抵抗のばらつきとすることができる。そのため、クリーニングブレード毎の体積電気抵抗の差を小さくしやすくなる。導電性接着層の体積電気抵抗は、好ましくは、ブレード部の体積電気抵抗よりも小さくすることができる。
【0028】
上記クリーニングブレードは、残留トナーを除電しながら掻き取るのに有利であるなどの観点から、体積電気抵抗を、好ましくは1×1010Ω未満、より好ましくは9×10Ω以下、さらに好ましくは8×10Ω以下とすることができる。
【0029】
なお、上述した各構成は、上述した各作用効果等を得るなどのために必要に応じて任意に組み合わせることができる。
【実施例】
【0030】
以下、実施例のクリーニングブレードについて、図面を用いて説明する。なお、同一部材については同一の符号を用いて説明する。
【0031】
(実施例1)
実施例1のクリーニングブレードについて、図1図2を用いて説明する。図1図2に示されるように、本例のクリーニングブレード1は、電子写真方式を採用する画像形成装置内の相手部材との摺接によって相手部材の表面に残留する残留トナー(トナーのみならず、トナー外添剤も含む)を除去するために用いられるものである。本例では、相手部材は、具体的には、電子写真方式の画像形成装置内における感光ドラムである。
【0032】
クリーニングブレード1は、板状部21を有する導電性支持体2と、板状部21に形成されたポリウレタンゴム製のブレード部3と、板状部21とブレード部3との間に介在し、導電剤(不図示)を含有する導電性接着層4とを有している。ブレード部3は、0.3質量%以上10質量%未満のカリウム塩(不図示)を含有している。
【0033】
本例では、導電性支持体2は、板状部21と一体的に繋がる取付部22を有している。取付部22は、画像形成装置の部材に取り付けるための部位である。導電性支持体2は、全体として断面「L」字状に形成されている。ブレード部3は、板状部21の短手方向の先端部側に形成されている。板状部21の先端部は、ブレード部3に埋設されている。導電性接着層4は、板状部21における一方の板面、他方の板面、各板面に対向するブレード部3の部分との間に介在するとともに、板状部21の先端面と、当該先端面に対向するブレード部3の部分との間にも介在している。
【0034】
(実施例2)
実施例2のクリーニングブレードについて、図3図4を用いて説明する。図3図4に示されるように、本例のクリーニングブレード1は、板状部21の一方の板面側にブレード部3が接着されている。導電性接着層4は、板状部21の一方の板面と、当該板面に対向するブレード部3の部分との間に介在している。その他の構成は、実施例1と同様である。
【0035】
以下、実験例を用いてより具体的に説明する。
【0036】
<ウレタンゴム組成物の調製>
80℃にて1時間、真空脱泡したポリブチレンアジペート(PBA)(東ソー社製、「ニッポラン4010」):44質量部と、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)(東ソー社製、「ミリオネートMT」):56質量部とを混合し、窒素雰囲気下、80℃で3時間反応させることにより、ウレタンプレポリマーを含む主剤液を調製した。なお、主剤液中のNCO%(質量%)は、17.0%である。
【0037】
また、ポリブチレンアジペート(PBA)(東ソー社製、「ニッポラン4010」):87質量部と、1,4−ブタンジオール(三菱化学社製)とトリメチロールプロパン(広栄パーストープ社製)とが重量比6:4にて混合されてなる低分子量ポリオール:13質量部と、触媒としてのトリエチレンジアミン(東ソー社製):0.01質量部とを、窒素雰囲気下、80℃にて1時間混合することにより、水酸基価(OHV)が210(KOHmg/g)の硬化剤液を調製した。
【0038】
次いで、上記調製した主剤液と硬化剤液とイオン導電剤とを、主剤液100質量部に対して硬化剤液94質量部、イオン導電剤が表1に示される含有量となるように配合し、真空雰囲気下、60℃で3分間混合し、十分に脱泡した。これにより、各クリーニングブレードにおけるブレード部の形成に用いる各ウレタンゴム組成物を調製した。
【0039】
なお、イオン導電剤には下記のものを用いた。
・カチオン種:K、アニオン種:CFSOSO(三菱マテリアル電子化成社製、「EF−N142」)
・カチオン種:K、アニオン種:(CFSO(三菱マテリアル電子化成社製、「EF−N112」)
・カチオン種:K、アニオン種:C2820BO(日本カーリット社製、「LR−147」)
・カチオン種:Li、アニオン種:CFSOSO(三菱マテリアル電子化成社製、「EF−N145」)
・カチオン種:Li、アニオン種:(CFSO(三菱マテリアル電子化成社製、「EF−N115」)
・カチオン種:Na、アニオン種:(CFSO(三菱マテリアル電子化成社製、「EF−N113」)
・カチオン種:(C、アニオン種:Br(広栄化学社製、「IL−AP1B」)
【0040】
<ウレタンゴム組成物の硬化性>
各ウレタンゴム組成物を、厚み2mmのシート状に塗工し、130℃で加熱した。ウレタンゴム組成物が1分で硬化した場合に、イオン導電剤によるウレタン触媒の反応性が阻害されておらず、従来の製造条件でウレタンゴム組成物の硬化性が良好であるとして「A」とした。また、ウレタンゴム組成物が5分経っても硬化しなかった場合に、イオン導電剤によるウレタン触媒の反応性が阻害されており、従来の製造条件ではウレタンゴム組成物の硬化性が悪いとして「C」とした。
【0041】
<接着剤の調製>
形成される接着層における導電剤の含有量が、表1に示される値となるように、エポキシ樹脂系接着剤(東亞合成社製、「アロンマイテイAS−60」)に、電子導電剤であるカーボンブラック(三菱化学社製、「#3030B」)を添加し、30分間十分に混合した。これにより、各クリーニングブレードにおける接着層の形成に用いる各接着剤を調製した。なお、一部の接着剤については、比較のため、導電剤を添加しなかった。
【0042】
<クリーニングブレード試料の作製>
上型と下型とから構成される金型を準備した。金型は、上型と下型とを接近させて型締めすることにより、略長尺板状のブレード部二つ分の大きさを有するキャビティが内部に形成される。このキャビティには、対向する二つの収容部が設けられている。これら各収容部には、断面L字状に折り曲げ形成された金属製の長尺板材(板厚2mm)からなる導電性支持体の板状部がそれぞれ配置できるように構成されている。
【0043】
次いで、導電性支持体における板状部の先端部における表裏の板状面および先端面に、所定の接着剤を、後述する表1に示される接着層の厚みとなるように塗布した。なお、上記塗布幅は、板状部の先端面から基端側へ2mmまでの範囲とした。
【0044】
次いで、上記金型の各収容部に接着剤が塗布された導電性支持体をそれぞれセットし、型締めした後、キャビティ内に所定のウレタンゴム組成物を注入し、130℃で5分間加熱することによりウレタンゴム組成物を硬化させた。その後、成形体を金型から取り出し、所定の大きさとなるように二つに切断した。これによりポリウレタンゴム製のブレード部(厚み2mm)と導電性支持体とが接着層を介して一体化されたクリーニングブレード試料を作製した。なお、ウレタンゴム組成物の硬化性が「C」評価であった場合には、130℃で硬化するまで5分を超えて加熱することにより、クリーニングブレード試料を作製した。
【0045】
<耐ブリード・ブルーム性>
各クリーニングブレードを、40℃×95%RHの湿熱環境に2週間放置した。その後、ブレード部表面におけるイオン導電剤のブリード、ブルームを目視にて確認した。ブレード部表面にイオン導電剤のブリード、ブルームが何ら認められなかった場合を、耐ブリード、ブルーム性に優れ、相手部材を汚染し難いとして「A」とした。ブレード部表面にイオン導電剤のブリード、ブルームが認められた場合を、相手部材を汚染するとして「C」とした。
【0046】
<除電性および掻き取り性>
100Vの直流電圧を印加可能な金属ローラに、クリーニングブレードにおけるブレード部の先端部のエッジ部を接触させた。また、クリーニングブレードにおける導電性支持体に電圧計を接続するとともに接地した。そして、クリーニングブレードのブレード部が接触した状態で、金属ローラに100V印加した時のクリーニングブレード全体の体積電気抵抗を測定した。体積電気抵抗が1×1010Ω未満であった場合を、残留トナーを除電しながら掻き取り可能として「A」とした。体積電気抵抗が1×1010Ω以上であった場合を、残留トナーを除電しながら掻き取りできないとして「C」とした。
【0047】
表1に、各クリーニングブレードの詳細構成、評価結果をまとめて示す。
【0048】
【表1】
【0049】
表1によれば、以下のことがわかる。試料1Cは、ブレード部におけるカリウム塩の含有量が規定範囲を下回っている。そのため、試料1Cは、残留トナーを除電しながら掻き取ることができない。
【0050】
試料2Cは、ブレード部におけるカリウム塩の含有量が規定範囲を上回っている。そのため、試料2Cは、イオン導電剤のブリード、ブルームを抑制することができない。
【0051】
試料3C〜6Cは、カリウム塩以外のイオン導電剤を用いている。そのため、これら試料では、ウレタン触媒の反応性が阻害され、従来の製造条件ではウレタンゴム組成物の硬化性が悪い。
【0052】
試料7Cは、接着層が導電剤を含有していないため導電性がない。そのため、試料7Cは、残留トナーを除電しながら掻き取ることが困難である。
【0053】
これらに対し、試料1〜5によれば、相手部材を汚染し難く、ウレタン触媒の反応性を阻害し難く、残留トナーを除電しながら掻き取ることが可能なクリーニングブレードを提供することができるといえる。
【0054】
以上、本発明の実施例について詳細に説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲内で種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0055】
1 クリーニングブレード
2 導電性支持体
21 板状部
3 ブレード部
4 導電性接着層
図1
図2
図3
図4