特許第6537959号(P6537959)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6537959
(24)【登録日】2019年6月14日
(45)【発行日】2019年7月3日
(54)【発明の名称】ヒートポンプ装置
(51)【国際特許分類】
   F25B 27/00 20060101AFI20190625BHJP
   F25B 30/06 20060101ALI20190625BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20190625BHJP
   F24F 3/00 20060101ALI20190625BHJP
   F24F 5/00 20060101ALI20190625BHJP
   F24F 1/36 20110101ALI20190625BHJP
   F24F 1/56 20110101ALI20190625BHJP
【FI】
   F25B27/00 P
   F25B30/06 T
   F25B1/00 399Y
   F24F3/00 A
   F24F5/00 101A
   F24F1/36
   F24F1/56
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-228079(P2015-228079)
(22)【出願日】2015年11月20日
(65)【公開番号】特開2017-96541(P2017-96541A)
(43)【公開日】2017年6月1日
【審査請求日】2018年4月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000538
【氏名又は名称】株式会社コロナ
(74)【代理人】
【識別番号】100067356
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 容一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100160004
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 憲雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120558
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 勝彦
(74)【代理人】
【識別番号】100148909
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧澤 匡則
(74)【代理人】
【識別番号】100161355
【弁理士】
【氏名又は名称】野崎 俊剛
(72)【発明者】
【氏名】眞柄 隆志
(72)【発明者】
【氏名】上田 真典
(72)【発明者】
【氏名】川上 岳彦
【審査官】 伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−148362(JP,A)
【文献】 特開2014−156967(JP,A)
【文献】 特開2003−074910(JP,A)
【文献】 特開2003−269747(JP,A)
【文献】 特開2005−147620(JP,A)
【文献】 特開2013−217600(JP,A)
【文献】 特開2015−017748(JP,A)
【文献】 特開平06−074492(JP,A)
【文献】 特開2010−281461(JP,A)
【文献】 特開2012−082976(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 27/00
F25B 30/06
F24H 4/00
F24T 10/00
F24F 1/36
F24F 1/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒートポンプ回路を内蔵する筐体に、熱源に向かう管路に接続される熱源往き接続口と、前記熱源から戻る管路に接続される熱源戻り接続口と、室内端末に向かう管路に接続される冷温水往き接続口と、前記室内端末から戻る管路に接続される冷温水戻り接続口とが備えられ、冷房運転時には、前記熱源へ熱を放出し、前記室内端末から室内へ冷気を放出するヒートポンプ装置において、
前記筐体は、底板と、この底板から上に延びる4つの側板と、上面を塞ぐ天板とからなり、
前記熱源往き接続口と、前記熱源戻り接続口と、前記冷温水往き接続口と、前記冷温水戻り接続口は、全てが前記側板のうち、いずれか1つの前記側板に設けられ、
前記冷温水往き接続口及び前記冷温水戻り接続口は、前記熱源往き接続口及び前記熱源戻り接続口よりも上に設けられており、
前記冷温水往き接続口は、左右方向にて前記熱源往き接続口の外側面に接する第1垂線と、前記熱源戻り接続口の外側面に接する第2垂線とで規定される左右幅内に配置されていることを特徴とするヒートポンプ装置。
【請求項2】
ヒートポンプ回路を内蔵する筐体に、熱源に向かう管路に接続される熱源往き接続口と、前記熱源から戻る管路に接続される熱源戻り接続口と、室内端末に向かう管路に接続される冷温水往き接続口と、前記室内端末から戻る管路に接続される冷温水戻り接続口とが備えられ、冷房運転時には、前記熱源へ熱を放出し、前記室内端末から室内へ冷気を放出するヒートポンプ装置において、
前記筐体は、底板と、この底板から上に延びる4つの側板と、上面を塞ぐ天板とからなり、
前記熱源往き接続口と、前記熱源戻り接続口と、前記冷温水往き接続口と、前記冷温水戻り接続口は、全てが前記側板のうち、いずれか1つの前記側板に設けられ、
前記冷温水往き接続口及び前記冷温水戻り接続口は、前記熱源往き接続口及び前記熱源戻り接続口よりも上に設けられており、
平面視で、前記冷温水往き接続口が、下位の前記熱源往き接続口と前記熱源戻り接続口の一方に少なくとも一部が重なるように、前記冷温水往き接続口は、前記熱源往き接続口又は前記熱源戻り接続口のほぼ真上に配置されていることを特徴とするヒートポンプ装置。
【請求項3】
前記熱源往き接続口及び前記熱源戻り接続口は、ほぼ同一高さに左右に配置されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のヒートポンプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中熱などの熱源を利用するヒートポンプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
室内の熱を汲み上げて屋外へ放出することで室内を冷却するヒートポンプ装置が、広く普及している。
夏場のように外気温が高く、このような外気へ放熱する場合は、ヒートポンプ装置の運転費用が嵩む。
【0003】
外気温は季節や昼夜によって大きく変動するが、地中の温度は一年を通して殆ど変化がない。そこで、夏場に低温である地中へ熱を逃がすヒートポンプ装置が提案され、実用に供されるようになってきた(例えば、特許文献1(図1図2)参照)。
【0004】
特許文献1の図1に示されるように、ヒートポンプ式冷暖房システム(1)(括弧付き数字は、特許文献1に記載された符号を示す。以下同様)は、ヒートポンプ熱源機(2)と、ファンコイルユニット(6)と、これらを結ぶ管路とを主たる構成要素とする設備である。
【0005】
特許文献1の図2に示されるように、ヒートポンプ熱源機(2)は、筐体にヒートポンプ部(30)を収納してなる。ヒートポンプ部(30)は採熱側部分(31)と負荷側部分(32)とを含む。
【0006】
採熱側部分(31)は、戻り側接続口(38)及び往き側接続口(39)を介して地中に配置された地中熱交換器(24)に接続される。すなわち、熱媒体としての水が往き側接続口(39)から地中熱交換器(24)へ送られ、地中熱交換器(24)で地中に放熱して、低温になった循環液が戻り側接続口(38)へ戻ってくる。
【0007】
負荷側部分(32)から、往き管路(15)と戻り管路(16)が分岐しており、ファンコイルユニット(6)へ低温の熱媒体を送り、暖まった熱媒体を回収する。
特許文献1の図2によれば、戻り側接続口(38)と往き側接続口(39)は筐体の底に設けられ、往き管路(15)と戻り管路(16)も筐体の底から下方へ延びる。
【0008】
一般に、管路は、ねじ継手やフランジ継手などの接続部で分離可能に接続されるが、この接続部が筐体の底にあると、配管接続工事や、施工後の保守点検が難しくなる。
そこで、底ではなく、側壁に接続部を設ける構造が実用化されている(例えば、特許文献2(図1図2)参照)。
【0009】
特許文献2の図1に示されるように、地中熱ヒートポンプユニット(4)(括弧付き数字は、特許文献2に記載された符号を示す。以下同様)の一方の壁から地中熱循環回路(20)が地中へ延びており、他方の壁から加熱循環回路(30)の往き管路が放熱端末(36)へ延びており、放熱端末(36)の底から加熱循環回路(30)の戻り管路が地中熱ヒートポンプユニット(4)まで延びている。
【0010】
配管接続工事や施工後の保守点検を考えると、地中熱循環回路(20)の往き管路及戻り管路、加熱循環回路(30)の往き管路及び戻り管路からなる4つの管路の全てを、一つの側壁に集めることが望まれる。この要望に沿った構成を、次図で説明する。
【0011】
図6に示すように、改良が施された冷温水システム100は、地中熱を利用する地中熱ヒートポンプユニット101と、大気熱を利用する空気熱ヒートポンプユニット120と、ファンコイル等の室内端末130と、これらを結ぶ管路群とからなる。
【0012】
地中熱ヒートポンプユニット101の一方の壁102に、地中往き接続口103と地中戻り接続口104と冷温水往き接続口105と冷温水戻り接続口106が、まとめて設けられている。
冷温水往き接続口105から筐体107内へ第1内部管路111が延びており、冷温水戻り接続口106から筐体107内へ第2内部管路112が延びており、地中戻り接続口104から筐体107内へ第3内部管路113が延びており、地中往き接続口103から筐体107内へ第4内部管路114が延びている。
【0013】
そして、地中往き接続口103と地中戻り接続口104とに、地中熱交換器115の一端及び他端が接続される。
冷温水往き接続口105と空気熱ヒートポンプユニット120とが第1管路121で結ばれ、空気熱ヒートポンプユニット120と室内端末130とが第2管路122で結ばれ、室内端末130と冷温水戻り接続口106とが第3管路123で結ばれている。
【0014】
地中熱ヒートポンプユニット101で冷やされた循環液は、第1管路121を介して空気熱ヒートポンプユニット120で更に冷やされる。更に冷やされた循環液が、第2管路122を介して室内端末130に供給される。室内端末130で冷気を室内へ放出する。放出により暖まった循環液が第3管路123を介して地中熱ヒートポンプユニット101に戻される。
冷温水往き接続口105の近傍の温度をt1、冷温水戻り接続口106の近傍の温度をt2とすると、t1<t2であり、あるときの測定値では、t1は17℃、t2は19℃であった。
【0015】
地中熱ヒートポンプユニット101は、温度t2まで暖められた循環液を冷却する役割を果たし、そのために、地中熱交換器115を介して熱を地中に放出する。
地中往き接続口103の近傍の温度をt4、地中戻り接続口104の近傍の温度をt3とすると、t3は当然t4より低温になる。あるときの測定値では、t3は23℃、t4は25℃であった。
【0016】
図6の7−7線断面図を、図7に示す。
図7に示すように、筐体107は、底板125と、この底板125から上に延びる前板126及び背板127と、前板126と背板127の一端を塞ぐ一方の壁102とを備えている。底板125は、筐体107内で発生する結露を排出する排水口128を中央に有する。
【0017】
一方の壁102に、地中往き接続口103と地中戻り接続口104と冷温水往き接続口105と冷温水戻り接続口106が設けられているが、図6によれば、地中往き接続口103が下に配置され、地中戻り接続口104が上に配置され、冷温水往き接続口105が上に配置され、冷温水戻り接続口106が下に配置されている。
そのため、図7に示すように、前板126側にて、地中往き接続口103が下に配置され、地中戻り接続口104が上に配置され、背板127側にて、冷温水往き接続口105が上に配置され、冷温水戻り接続口106が下に配置される。
【0018】
冷房運転を実施したところ、底板125の下面(図8、符号125a)から水滴129が地面(又は床)に落ち、地面が濡れることが認められた。地面が濡れると見栄えの点で問題が起こる。そこで、本発明者らが要因を検証した。検証の内容を、図8で説明する。
【0019】
図8にて、冷温水往き接続口105近傍の温度はt1(17℃)であり、冷温水戻り接続口106近傍の温度はt2(19℃)である。夏場の外気温度は30℃前後に達する。
温度差に起因してドラフトが発生することが知られている。すなわち、暖められた空気は軽くなって上昇し、冷やされた空気は重くなって下降する。ドラフトは温度差が大きいほど顕著になる。
【0020】
最も低温の冷温水往き接続口105で冷却された空気は、下降流となって底板125に向かい、底板125の上面を冷却する。反面、底板125で暖められた空気は上昇流となって冷温水往き接続口105に向かい、冷温水往き接続口105で冷やされる。このような循環流れによって、底板125が冷やされる。
【0021】
大気中には、水蒸気が含まれており、この水蒸気の含有率が湿度で示される。夏場は湿度が高くなる傾向にある。水蒸気が含まれた空気が、底板125の下面125aに接すると、結露する。この結露が水滴129となる。なお、底板125の上面に発生する結露は、排水口(図7、符号128)から排出されるため、外観性に影響しない。
【0022】
対策の一つに、底板125の上に断熱材を敷いて、下降流を断熱材で遮断することが考えられる。しかし、断熱材の調達費用や取付け費用が嵩む。加えて、機種によって、断熱材を入れるものと、入れないものとが混在する場合、地中熱ヒートポンプユニット101の組立作業が煩雑になり、組立コストが嵩む。
【0023】
コストダウンが求められ中、断熱材を用いることなく、底板125の下面の結露を防止することができる地中熱ヒートポンプユニット101が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0024】
【特許文献1】特開2015−17748号公報
【特許文献2】特開2015−148362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
本発明は、左の側板に、地中往き接続口と地中戻り接続口と冷温水往き接続口と冷温水戻り接続口が設けられている地中熱ヒートポンプユニット(以下、ヒートポンプ装置と記す。)において、断熱材を用いることなく、底板の下面における結露の発生を防止することができる構造のヒートポンプ装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0026】
請求項1に係る発明は、ヒートポンプ回路を内蔵する筐体に、熱源に向かう管路に接続される熱源往き接続口と、前記熱源から戻る管路に接続される熱源戻り接続口と、室内端末に向かう管路に接続される冷温水往き接続口と、前記室内端末から戻る管路に接続される冷温水戻り接続口とが備えられ、冷房運転時には、前記熱源へ熱を放出し、前記室内端末から室内へ冷気を放出するヒートポンプ装置において、
前記筐体は、底板と、この底板から上に延びる4つの側板と、上面を塞ぐ天板とからなり、
前記熱源往き接続口と、前記熱源戻り接続口と、前記冷温水往き接続口と、前記冷温水戻り接続口は、全てが前記側板のうち、いずれか1つの前記側板に設けられ、
前記冷温水往き接続口及び前記冷温水戻り接続口は、前記熱源往き接続口及び前記熱源戻り接続口よりも上に設けられており、
前記冷温水往き接続口は、左右方向にて前記熱源往き接続口の外側面に接する第1垂線と、前記熱源戻り接続口の外側面に接する第2垂線とで規定される左右幅内に配置されていることを特徴とする。

【0027】
請求項2に係る発明では、ヒートポンプ回路を内蔵する筐体に、熱源に向かう管路に接続される熱源往き接続口と、前記熱源から戻る管路に接続される熱源戻り接続口と、室内端末に向かう管路に接続される冷温水往き接続口と、前記室内端末から戻る管路に接続される冷温水戻り接続口とが備えられ、冷房運転時には、前記熱源へ熱を放出し、前記室内端末から室内へ冷気を放出するヒートポンプ装置において、
前記筐体は、底板と、この底板から上に延びる4つの側板と、上面を塞ぐ天板とからなり、
前記熱源往き接続口と、前記熱源戻り接続口と、前記冷温水往き接続口と、前記冷温水戻り接続口は、全てが前記側板のうち、いずれか1つの前記側板に設けられ、
前記冷温水往き接続口及び前記冷温水戻り接続口は、前記熱源往き接続口及び前記熱源戻り接続口よりも上に設けられており、
平面視で、前記冷温水往き接続口が、下位の前記熱源往き接続口と前記熱源戻り接続口の一方に少なくとも一部が重なるように、前記冷温水往き接続口は、前記熱源往き接続口又は前記熱源戻り接続口のほぼ真上に配置されていることを特徴とする。
【0028】
請求項3に係る発明では、熱源往き接続口及び熱源戻り接続口は、ほぼ同一高さに左右に配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0030】
請求項1に係る発明では、冷房運転時に温度が高い熱源往き接続口及び熱源戻り接続口を下位に配置し、温度が低い冷温水往き接続口及び冷温水戻り接続口を上位に配置した。
冷温水往き接続口により冷やされた冷気が下降流となって、底板に向かうが、この下降流は、熱源往き接続口及び熱源戻り接続口で形成される暖気帯で遮られ、底板に達しない。結果、底板の下面に結露が発生する心配が無くなった。
本発明により、断熱材を用いることなく、底板の下面における結露の発生を防止することができる構造のヒートポンプ装置が提供される。
加えて、請求項1に係る発明によれば、冷温水往き接続口が横長の暖気帯の真上にあるため、冷温水往き接続口で形成された冷たい下降流が、より確実に遮断される。
【0031】
請求項2に係る発明では、請求項1と同様に、冷房運転時に温度が高い熱源往き接続口及び熱源戻り接続口を下位に配置し、温度が低い冷温水往き接続口及び冷温水戻り接続口を上位に配置した。
冷温水往き接続口により冷やされた冷気が下降流となって、底板に向かうが、この下降流は、熱源往き接続口及び熱源戻り接続口で形成される暖気帯で遮られ、底板に達しない。結果、底板の下面に結露が発生する心配が無くなった。
本発明により、断熱材を用いることなく、底板の下面における結露の発生を防止することができる構造のヒートポンプ装置が提供される。
加えて、請求項2に係る発明では、冷温水往き接続口の真下に温度が高い熱源往き接続口又は熱源戻り接続口が配置されるため、冷温水往き接続口で形成された冷たい下降流が、熱源往き接続口又は熱源戻り接続口で直接的に遮断される。
【0032】
請求項3に係る発明では、熱源往き接続口及び熱源戻り接続口が、ほぼ同一高さに左右に配置されるため、暖気帯が横長になる。横長の暖気帯で、冷温水往き接続口で形成された冷たい下降流を確実に遮断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明に係るヒートポンプ装置を含む冷温水システムの構成図である。
図2】本発明に係るヒートポンプ装置の正面図である。
図3】本発明に係るヒートポンプ装置の斜視図である。
図4図2の3−3線断面図である。
図5】作用説明図である。
図6】改良された従来の冷温水システムの構成図である。
図7図6の7−7線断面図である。
図8図7の8部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
【実施例】
【0036】
図1に示すように、冷温水システム10は、第1ヒートポンプ回路30を内蔵し地中熱などの熱源を利用するヒートポンプ装置11と、第2ヒートポンプ回路50を内蔵し大気熱を利用する空気熱ヒートポンプ装置40と、ファンコイル等の室内端末70と、これらを結ぶ管路群とからなる。
【0037】
熱源は、地熱の他、河川の水、海水、井戸水、貯水などが利用可能であり、種類は問わない。
【0038】
ヒートポンプ装置11の例えば左の側板12に、熱源往き接続口13と熱源戻り接続口14と冷温水往き接続口15と冷温水戻り接続口16が、まとめて設けられている。
冷温水往き接続口15から筐体17内へ第1内部管路21が延びており、冷温水戻り接続口16から筐体17内へ第2内部管路22が延びており、熱源戻り接続口14から筐体17内へ第3内部管路23が延びており、熱源往き接続口13から筐体17内へ第4内部管路24が延びている。第4内部管路24が熱源へ向かう管路であり、第3内部管路23が熱源から戻る管路となる。
【0039】
そして、熱源往き接続口13と熱源戻り接続口14とに、熱源中熱交換器25の一端及び他端が接続される。なお、熱源としての河川の水、海水、井戸水、貯水を汲み上げて利用する場合は、熱源中熱交換器25は省くことができる。また、一定温度の水を供給する冷水器を熱源として利用してもよい。この場合も熱源中熱交換器25は不要となる。
【0040】
第1ヒートポンプ回路30は、閉ループ状の第1冷媒配管31と、この第1冷媒配管31に介設される第1圧縮機32と、第1四方弁33、第1熱源側熱交換器34、第1膨張弁35及び第1負荷側熱交換器36とからなる。
【0041】
第1熱源側熱交換器34に第3内部管路23と第4内部管路24が接続され、第3内部管路23には熱源側循環ポンプ37と熱源側シスターン38とが設けられている。熱源側シスターン38は、循環液(不凍液、水など)を貯えるタンク又はリザーバーである。
【0042】
第1負荷側熱交換器36に第1内部管路21と第2内部管路22が接続され、第2内部管路22には負荷側循環ポンプ39と冷暖房用シスターン41とが設けられている。冷暖房用シスターン41は、循環液(不凍液、水など)を貯えるタンク又はリザーバーである。
【0043】
空気熱ヒートポンプ装置40は、第1接続口42と第2接続口43を備えている。内蔵する第2ヒートポンプ回路50は、閉ループ状の第2冷媒配管51と、この第2冷媒配管51に介設される第2圧縮機52、第2四方弁53、第2熱源側熱交換器54、第2膨張弁55及び第2負荷側熱交換器56とからなる。
【0044】
冷温水往き接続口15から第1管路57が延び、この第1管路57が第1接続口42に接続される。また、第2接続口43から第2管路58が延び、この第2管路58が往きヘッダー59に接続される。この往きヘッダー59から複数本の第3管路61が延びて室内端末70に接続される。
室内端末70から延びる第4管路62は戻りヘッダー63に接続される。戻りヘッダー63から延びる第5管路64は冷温水戻り接続口16に接続される。
【0045】
以上の構成からなる冷温水システム10において、冷房設定での冷温水システム10の作用を説明する。
冷房設定では、第1ヒートポンプ回路30の冷媒は、第1四方弁33の流路切り換え作用により、図面時計方向に第1冷媒配管31内を回される。
冷媒の保有熱は、第1熱源側熱交換器34で第3内部管路23から流入する循環液に与えられ、暖まった循環液は第4内部管路24を通って、熱源往き接続口13に向かう。
【0046】
一方、第1熱源側熱交換器34で冷やされた冷媒は、第1膨張弁35で断熱膨張され、さらに温度が下がる。低温の冷媒が第2内部管路22から流入する循環液を冷却する。冷やされた循環液は第1内部管路21から第1管路57を通って空気熱ヒートポンプ装置40に向かう。冷温水往き接続口15付近での温度t1は例えば17℃である。
【0047】
第2ヒートポンプ回路50も同様であり、第2熱源側熱交換器54で大気へ放熱しつつ、第2負荷側熱交換器56で第1管路57から流入する循環液を更に冷やす。冷やされた循環液は第2管路58、往きヘッダー59及び第3管路61を通って室内端末70に至り、室内端末70で冷気を室内へ放出する。放出により暖まった循環液は第4管路62、戻りヘッダー63及び第5管路64を通ってヒートポンプ装置11に戻る。冷温水戻り接続口16付近での温度t2は温度t1よりは高くなり、例えば19℃である。
【0048】
第1熱源側熱交換器34で暖められた循環液は、第4内部管路24、熱源往き接続口13を通って熱源中熱交換器25に至り、この熱源中熱交換器25を介して地中に熱を放出する。熱源往き接続口13付近での温度t4は、例えば25℃である。
この放出により低温になった循環液は、熱源戻り接続口14、第3内部管路23を通って第1熱源側熱交換器34に戻る。熱源戻り接続口14付近での温度t3は、温度t4よりも低くなり、例えば23℃である。
【0049】
暖房設定の場合は、第1・第2ヒートポンプ回路30、50において、冷媒を反時計方向に循環させる。よって、冷温水システム10は、冷房設定と暖房設定の何れもが可能となる。
【0050】
以上に述べたヒートポンプ装置11の具体的構成、特に、熱源往き接続口13と熱源戻り接続口14と冷温水往き接続口15と冷温水戻り接続口16の配置について詳しく説明する。
図2に示すように、ヒートポンプ装置11は、筐体17の左の側板12に、熱源往き接続口13と熱源戻り接続口14と冷温水往き接続口15と冷温水戻り接続口16とをまとめて備えている。筐体17は、底板66と、この底板66から上に延びる4つの側板(左の側板12、右の側板67、前面側板68及びこの前面側板68の後ろに配置される後面側板(図4、符号69))と、天板71とからなる六面体(ボックス)である。
【0051】
図3に示すように、左の側板12に設けられる熱源往き接続口13と熱源戻り接続口14とは左右に並べられている。これらの熱源往き接続口13と熱源戻り接続口14の上方に冷温水戻り接続口16が配置され、この冷温水戻り接続口16の上方に冷温水往き接続口15が配置されている。
4つの接続口13〜16が左の側板12に集約されているため、接続配管工事が効率よく行える。4つの接続口13〜16が、上下左右に適度に離れているため、配管の接続が容易になる。よって、配管工事時間を短縮することができる。
【0052】
図4は、図2の3−3線断面図、すなわち、筐体17の内部から見た図であり、底板66と、前面側板68と、後面側板69と、左の側板12などで囲われた略密閉空間に、熱源往き接続口13と熱源戻り接続口14と冷温水往き接続口15と冷温水戻り接続口16とが配置されている。図中に示すt1〜t4は温度であって、t1<t2<t3<t4の関係にあり、例えばt1は17℃、t2は19℃、t3は23℃、t4は25℃である。
【0053】
下位の熱源往き接続口13及び熱源戻り接続口14は、同一高さ(ほぼ同じ高さを含む。)に左右に配置されている。
そして、熱源往き接続口13の外側面に接する第1垂線72と、熱源戻り接続口14の外側面に接する第2垂線73とで規定される範囲を、左右幅Wとした場合に、好ましくは冷温水往き接続口15は、左右幅Wの範囲に配置する。その理由を図5で説明する。
【0054】
図5に示すように、最も低温の冷温水往き接続口15で冷却された空気は、重くなり下降流となって底板66へ向かう。一方、最も高温である熱源往き接続口13と次に高温である熱源戻り接続口14の付近には、暖気帯74ができる。
熱源往き接続口13と熱源戻り接続口14が左右に並んでいるため、暖気帯74は横長になる。この横長の暖気帯74で下降流が暖められ、軽くなる。結果、上昇流に変化する。
【0055】
冷温水戻り接続口16も比較的低温であるが、冷温水往き接続口15よりは温度が高いため、下降流は弱い。そのため、冷温水戻り接続口16が左右幅Wから外れていても、暖気帯74で暖められる。
このようにして、冷たい下降流が底板66に到達しないため、底板66が冷やされることはなく、底板66の下面に結露が発生する心配もない。
よって、底板66の上に断熱材を敷くことなく、結露対策を講じることができた。
【0056】
なお、ヒートポンプ装置11の能力が小さくて、温度t1が17℃よりも十分に高い場合には、冷温水往き接続口15も冷温水戻り接続口16と同様に、左右幅Wの外に配置することができる。すなわち、下位に熱源往き接続口13と熱源戻り接続口14を配置し、上位に冷温水往き接続口15や冷温水戻り接続口16を配置することで、結露の発生を防止することができる。
【0057】
一方、ヒートポンプ装置11の能力が大きくて、温度t1が17℃よりも遙かに低い場合には、強い下降流が暖気帯74を貫通する心配があるため、冷温水往き接続口15の真下(ほぼ真下を含む。)に、最も温度の高い熱源往き接続口13を配置することが推奨される。
【0058】
すなわち、図5に示すように、平面視で(上から見て)、冷温水往き接続口15と下位の熱源往き接続口13が、全部又は少なくとも一部が重なるようにする。重なり代δは、大きいほどよく、冷温水往き接続口15又は熱源往き接続口13の外径の1/4以上、好ましくは1/2以上にする。
これにより、強い下降流が直接熱源往き接続口13に当たって弱められ、その上で熱源往き接続口13で暖められる。
【0059】
なお、冷温水往き接続口15の真下に、熱源戻り接続口14を配置することでも、作用効果は期待できる。すなわち、冷温水往き接続口15の真下に、熱源往き接続口13の代わりに熱源戻り接続口14を配置してもよい。
【0060】
また、図1にて、熱源戻り接続口14から筐体17内へ延びる下位の第3内部管路23や熱源往き接続口13から筐体17内へ延びる下位の第4内部管路24は比較的高温であるため、これらも暖気帯を形成する。上位の第1内部管路21や第2内部管路22は低温であって、これらが発生する冷気は、下降流となって底板(図4、符号66)に向かうが、暖気帯で阻止され、底板66に到達することはない。よって、底板66下面で結露が発生する心配はない。
【0061】
尚、熱源往き接続口13と熱源戻り接続口14と冷温水往き接続口15と冷温水戻り接続口16は、左の側板12にまとめて設ける他、別の側板(右の側板67、前面側板68又は後面側板69)の一つにまとめて設けてもよい。
【0062】
また、本発明のヒートポンプ装置11は、空気熱ヒートポンプ装置40と組み合わせて使用するほか、単独で使用することは差し支えない。この場合、冷温水システム10は、ヒートポンプ装置11と、熱源中熱交換器25と、室内端末70と、管路群とで構成される。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、地中熱などの熱源を利用するヒートポンプ装置に好適である。
【符号の説明】
【0064】
11…ヒートポンプ装置、12…側板(左の側板)、13…熱源往き接続口、14…熱源戻り接続口、15…冷温水往き接続口、16…冷温水戻り接続口、17…筐体、23…熱源から戻る管路(第3内部管路)、24…熱源へ向かう管路(第4内部管路)、30…ヒートポンプ回路(第1ヒートポンプ回路)、66…底板、67…側板(右の側板)、68…側板(前面側板)、69…側板(後面側板)、70…室内端末、71…天板、72…第1垂線、73…第2垂線、W…左右幅。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8