【実施例】
【0044】
(実施例1)
人工PRRSV-CONゲノムのコンピューターによる設計
米国の中西部州(アイオワ州、ネブラスカ州及びイリノイ州)起源の64種のPRRSV単離物の全ゲノム配列をRoche社の454-GS-FLX配列決定技術を使用して配列決定した。更に、米国起源のPRRSV単離物の20を超える全ゲノム配列をGenBankから回収した。重複する配列を除去した後、PRRSVの60全ゲノム配列の最終セットを得た。60種のPRRSV全ゲノム配列をMUSCLEプログラム(Edgar RC、2004、BMC Bioinform.、5: 113)を使用して整列した。その後、コンセンサスゲノム配列(PRRSV-CON)を、Jalviewプログラムを使用してウイルスゲノムの各位置で見出された最も共通のヌクレオチドを選択することによって産出した。系統発生解析は、PRRSV-CONゲノムが系統樹の中央にまさに位置することを示している。
図1Aを参照されたい。したがって、PRRSV-CONから天然発生のPRRSV株までの対での遺伝的距離は、任意の1つの天然発生のPRRSV株から互いまでの距離よりも有意に短い(p<0.0001)。
図1Bを参照されたい。
【0045】
(実施例2)
感染性PRRSV-CONウイルスの産出
ウイルスゲノムの5'及び3'末端にある配列を正確に決定することは一般に困難である。したがって、本発明者らは、実施例1において解析された天然発生のPRRSVゲノムの5'及び3'非翻訳領域(UTR)にある配列が正確ではない可能性があると認めた。回復感染性ウイルスの変化を増加させるために、本発明者らは、PRRSV-CONゲノムの5'及び3'UTRを感染性cDNAクローンFL12の5'及び3'UTRで置き換えた(Truongら、2004、Virology、325:308〜19)。PRRSV-CONゲノム全体を包含するA〜Dと命名された4つのDNA断片をGenscript(Piscataway、NJ)によって化学的に合成した。各DNA断片を、クローニング目的を促進するために制限酵素部位の対に隣接させた。T7 RNAポリメラーゼプロモーター配列を、ウイルスゲノムのin vitro転写を促進するために、ウイルス5'末端より先に断片D中に組み込んだ。
図2Aを参照されたい。個々のDNA断片を、断片Aから断片Dの順に従って、相当する制限酵素部位を保有するシャトルベクター中に順次クローニングした。全長PRRSV-CON cDNAクローンがいったん産出されると、標準的逆遺伝学技法を適用して、生PRRSV-CONウイルスを回復した。
【0046】
簡潔に述べると、PRRSV-CONの全長cDNAゲノムを含有するプラスミドを直鎖化のためにAclIで消化した。精製直鎖状DNA断片を、完全なゲノムウイルスRNA転写物を産出するためにmMESSAGEmMA CHINE Ultra T7キット(Ambion社、Austin、TX)を使用して、in vitro転写反応のための鋳型として使用した。その後、約5μgの全ゲノムRNA転写物を、TransIT(登録商標)-mRNA Transfection Kit(Minis Bio社、Madison、WI)を使用して、6ウェルプレートにおいて培養されたMARC-145細胞中にトランスフェクトした。トランスフェクト細胞を最大6日間、37℃、5%CO2で10%FBSを含有するDMEMにおいて培養した。典型的に、細胞変性効果(CPE)がトランスフェクション後第4日から第6日に観察された。明瞭なCPEが観察された場合、救出されたウイルスを含有する培養上清を回収し、-80℃フリーザー中で0.5mLアリコートで保存した。Truongら(2004、上記)を参照されたい。
【0047】
(実施例3)
PRRSV-CONウイルスのin vitro特徴付け
種々のPRRSV特異的モノクローナル抗体との反応性を研究するために、MARC-145細胞をモック感染させた又はPRRSV-CONウイルス又はPRRSV株FL12に感染させた。感染後(p.i.)48時間で、細胞をウイルスヌクレオカプシド(N)タンパク質又はウイルス非構造タンパク質1ベータ(nsplb)に特異的な抗体で免疫染色した。細胞培養におけるウイルスの増殖動態を研究するために、MARC-145細胞を0.01の感染多重度(MOI)でPRRSV-CON又はFL12に感染させた。p.i.の種々の時点で、培養上清を回収し、ウイルス力価をMARC-145細胞における滴定によって決定した。
【0048】
PRRSV-CONウイルスは、天然発生のPRRSV株の典型的in vitro特徴付けを示す。それは、nspl-betta及びNタンパク質に対する抗体を含めた種々のPRRSV特異的モノクローナル抗体と反応する(
図2B)。それは、細胞培養において効率的に複製し(
図2C)、明瞭で別個のプラーク形態を形成することができる(
図3D)。
【0049】
(実施例4)
PRRSV-CONウイルスは、天然PRRSV株と同じくらい効率的に豚に感染し得る
合計18頭のPRRSV-血清陰性、3週齢の豚をUniversity of Nebraska研究農場から購入した。豚を3つの実験群にランダムに割り当てた;各群を、Institutional Animal Care and Use Committeeによって樹立された規制に従って、UNLでバイオセキュリティーレベル-2の動物実験施設において別々の部屋に収容した。群1のブタにPBSを注入して対照として利用した。群2及び3のブタに、それぞれ、PRRSV-CON及びPRRSV株FL12の10
5.0 TCID
50を筋肉内に接種した。野生型PRRSV株、FL12を比較目的でこの研究に含んだ。結果を
図3に示す。感染後、PRRSV-CONとFL12接種群の両方は、PBS群よりも有意に高い温度を示した(
図3A)が、PRRSV-CON接種群とFL12接種群間の温度に差はなかった。1日当たりの平均体重増加(ADWG)を感染後14日の期間中に個々の豚に関して測定した。統計的有意差は、3つの処置群間に観察されなかったが、PRRSV-CON接種群及びFL12接種群の豚は、PBS群よりも低いADWGを有する傾向があった(
図3B)。PRRSV-CON-及びFL12-接種群のウイルス血症レベルは、ほぼ同一であった(
図3C)。PRRSV-CON-及びFL12-接種群の全ての豚は、p.i 11日までに血清転換した。PRRSV-CON-接種群における抗体応答のレベルは、FL12-接種群のものよりもわずかに低かった(
図3D)。これらの結果は、PRRSV-CONがPRRSV株、FL12と同じくらい効果的に天然宿主(すなわち、豚)に感染し得ることを実証している。
【0050】
(実施例5)
PRRSV株MN-184に対する交差防御のレベルの評価
材料及び方法
合計18頭のPRRSV-血清陰性、3週齢の豚をUniversity of Nebraska研究農場から購入した。豚を3つの実験群にランダムに割り当てた;各群を、Institutional Animal Care and Use Committeeによって樹立された規制に従って、UNLでバイオセキュリティーレベル-2の動物実験施設において別々の部屋に収容した。群1にPBSを注入し、非免疫化対照として働かせた。群2を豚1頭当たり10
4.0 TCID
50の用量でのPRRSV-CONの筋肉内感染によって免疫化した。群3を豚1頭当たり10
4.0 TCID
50の用量での野生型PRRSV株、FL12の筋肉内感染によって免疫化した。Table 1(表1)を参照されたい。感染後(p.i.)53日で、全ての対照及び免疫化豚に、10
5.0 TCID
50の用量でPRRSV株MN-184を筋肉内に負荷した。PRRSV-CONウイルスでの免疫化による防御を評価するために使用されたパラメーターは、いくつかの異なる組織におけるウイルス血症及びウイルス量並びに成長能力を含んだ。
【0051】
【表1】
【0052】
成長能力を測定するために、各豚を負荷感染直前及び負荷後15日に秤量した。体重をポンドで記録した。1日当たりの平均体重増加(ADWG)を負荷後15日の期間計算した。
【0053】
負荷感染後のウイルス血症のレベルを定量化するために、血液試料を負荷前並びに負荷後第1、4、7、10、及び15日に採取した。血清試料を個々の血液試料から抽出し、-80℃フリーザー中で保存した。ウイルス血症レベルをユニバーサルRT-qPCRキット(Tetracore社、Rockville、MD)を使用して、Animal Disease Research and Diagnostic Laboratory、South Dakota State Universityによって定量化した。結果をlog10コピー/mLとして報告した。統計的目的のために、ウイルスRNAのレベルを検出しなかった試料に0log10コピー/mLの値を割り当てた。
【0054】
組織におけるウイルス量のレベルを定量化するために、豚を負荷後第15日に人道的に屠殺し、剖検した。扁桃腺、肺、縦隔リンパ節及び鼠径リンパ節の試料を得、Whirl-pak(登録商標)バッグにおいて個々に保管した。試料を採取直後に液体窒素において急速凍結した。その後、それらを-80℃フリーザー中で保存した。RNAを抽出するために、組織試料を3mL Trizol試薬における300mg組織の比でTrizol試薬(Life Technologies社、Carlsbad、CA)においてホモジナイズした。全RNAを、製造者の説明書に従って、RNeasy Mini Kit(Qiagen社、Valencia、CA)を使用して抽出した。RNA濃度をNanoDrop(登録商標)ND-1000 (NanoDrop Technologies社、Wilmington、DE)によって定量化し、200ng/Lの最終濃度に調整した。
【0055】
PRRSVが感染後最大150日、感染豚のリンパ組織においてコロニー形成且つ存続し得ることは、よく特徴付けられている。これらの実験では、組織ウイルス量を、一次感染後67日に相当する負荷後15日に評価した。その時、PRRSV-CON及びFL12群の豚が一次感染の残留ウイルスをなお含有した可能性がある。したがって、本発明者らは、組織におけるウイルスRNA量を定量化するための2つの異なるRT-PCRキット:(i)一次感染と負荷感染の両方に起因する全ウイルスRNAを検出する市販のRT-qPCRキット(Tetracore社、Rockville、MD)、及び(ii)負荷感染からのウイルスRNAのみを選択的に検出する、社内で開発されたディファレンシャルRT-PCRを使用した。5μLの各RNA試料(1μg RNAに等しい)を各RT-qPCR反応に使用した。結果を全RNA1μg当たりのlog10コピーとして報告した。統計的目的のために、ウイルスRNAレベルを検出しなかった試料に全RNA1μg当たり0logのRNAコピーの値を割り当てた。
【0056】
結果
成長能力の結果を
図4Aに示す。PBS-、PRRSV-CON-及びFL12-免疫化群の平均ADWGは、それぞれ、0.3lb(SD+/-0.3),0.9lb(SD+/-0.6),及び1.2lb(SD+/-0.4)であった。PRRSV-CON及びFL12-免疫化群は、PBS-免疫化群よりも大きいADWGを有した。PRRSV-CON-とFL12-免疫化群間に統計的有意差はなかった。
【0057】
負荷感染後のウイルス血症レベルを
図4B及びTable 2(表2)に示す。PBS-免疫化群の全ての豚は、試験された全ての時点でウイルス血症であった。PRRSV-CON-免疫化群は、3頭のウイルス血症豚のみを有し、その内、1頭の豚が2つの時点でウイルス血症であり(4 DPC及び7 DPCでの豚番号494)、2頭の豚が1つの時点でのみウイルス血症であった(15 DPCでの豚番号394及び495)。この群における残りの3頭の豚(豚番号345、410及び459)は、負荷感染後にウイルス血症ではなかった。対照的に、ウイルス血症が負荷感染後に2つ以上の時点でFL12-免疫化群における6頭のうち5頭の豚において検出された。この群における1頭の豚(豚番号440)のみが試験されたいずれの時点においてもウイルス血症ではなかった。全体的に見て、PRRSV-CON-免疫化豚のウイルス血症レベルは、FL12-免疫化群(p<0.05)及びPBS-免疫化群におけるものよりも有意に低かった(p<0.0001)。
【0058】
ユニバーサルRT-qPCRキットによって定量化された全ウイルスRNAの結果を
図4Cに示す。PRRSV-CON-及びFL12-免疫化群は、試験された組織型にかかわらず、PBS-免疫化群よりも全ウイルスRNAの有意に低いレベルを含有した。しかしながら、全ウイルスRNAの点でPRRSV-CON-とFL12-免疫化群間に差はなかった。
【0059】
ディファレンシャルRT-qPCRによって定量化されたMN-184特異的RNAの結果を
図4Dに示す。PBS-免疫化群の全ての豚は、それらの組織中にMN-184 RNAを保有した。FL12-免疫化群の4頭の豚は、それらの扁桃腺及び縦隔リンパ節中にMN-184 RNAを有した一方、この群における5頭の豚は、それらの鼠径リンパ節中にMN-184 RNAを有した。注目すべきことに、PRRSV-CON-免疫化群の豚のいずれも、試験された組織試料のいずれにおいても検出可能なレベルのMN-184 RNAを有さなかった。
【0060】
まとめると、これらの結果は、非天然発生のPRRSV-CONの感染による離乳豚の免疫化が、PRRSV株、FL12での免疫化がもたらした免疫化よりもPRRSV株、MN-184での負荷に対して著しく良い交差防御をもたらしたことを明確に実証している。
【0061】
【表2】
【0062】
(実施例6)
PRRSV株16244Bに対する交差防御のレベルの評価
材料及び方法
実験デザインは、実施例5において上で記載のものと同じであった。UNL研究農場から購入された合計18頭のPRRSV-血清陰性、3週齢の豚を3つの実験群にランダムに割り当てた。各群を、Institutional Animal Care and Use Committeeによって樹立された規制に従って、UNLでバイオセキュリティーレベル-2の動物実験施設において別々の部屋に収容した。群1にPBSを注入し、対照として働かせた。群2を豚1頭当たり10
4.0 TCID
50の用量でのPRRSV-CONの感染により筋肉内に免疫化した。群3を豚1頭当たり10
4.0 TCID
50の用量での野生型PRRSV、FL12の感染により筋肉内に免疫化した。Table 3(表3)を参照されたい。群3の1頭の豚(豚番号543)及び群2の1頭の豚(豚番号435)を、それらの脚における跛行により、それぞれ、一次感染後14及び23日にこの研究から排除した。感染後(p.i.)第52日に、全ての豚を10
5.0 TCID
50の負荷用量でPRRSV株16244Bで筋肉内に負荷した。様々な組織におけるウイルス血症及びウイルス量並びに成長能力を含めたPRRSV-CONウイルスでの免疫化による防御を評価するために使用されたパラメーターを実施例5において上で記載されたように測定した。
【0063】
【表3】
【0064】
結果
成長能力の結果を
図5Aに示す。PBS-、PRRSV-CON-、及びFL12-免疫化群の平均ADWGは、それぞれ、1.1lb(SD+/-0.3)、1.6lb(SD+/-0.1)、及び0.8lb(SD+/-0.3)であった。PRRSV-CON-免疫化群は、PBS-免疫化群及びFL12-免疫化群よりも大きいADWGを有した一方;FL12-免疫化群は、PBS-免疫化群と統計的に異ならなかった。
【0065】
負荷感染後のウイルス血症レベルの結果を
図5B及びTable 4(表4)に示す。PBS-免疫化群の全ての豚は、試験された全ての時点でウイルス血症であった。PRRSV-CON-免疫化群の5頭のうち2頭の豚(豚番号442及び445)は、ウイルスRNAがこの時点で回収されたそれらの血清試料においてなお検出されたので、一次感染後52日でウイルス血症を軽減しなかった。負荷感染後、PRRSV-CON-免疫化群の3頭の豚は、1時点でのみウイルス血症であった。この群の残りの2頭の豚(豚番号436及び438)は、負荷後15日の期間中ずっとウイルス血症ではなかった。対照的に、FL12-免疫化群の全ての豚は、一次感染後52日までにウイルス血症を軽減した。負荷感染後、この群の全ての豚は、ウイルス血症になった。全体的に見て、PRRSV-CON-免疫化群のウイルス血症レベルは、FL12-免疫化群(p<0.0001)又はPBS-免疫化群(p<0.0001)のものよりも有意に低かった。
【0066】
市販のRT-qPCRキット(Tetracore社、Rockville、MD)によって定量化された全ウイルスRNAの結果を
図5Cに示す。PRRSV-CON-とFL12-免疫化群の両方は、試験された組織型にかかわらず、PBS-免疫化群よりも有意に低い全ウイルスRNAのレベルを含有した。しかしながら、全ウイルスRNAの点でPRRSV-CON-免疫化群とFL12-免疫化群間に統計的有意差はなかった。
【0067】
ディファレンシャルRT-qPCRによって定量化された16244B特異的RNAの結果を
図5Dに示す。PBS-及びFL12-免疫化群の全ての豚は、それらの組織中に16244B特異的RNAを保有したが、FL12-免疫化群の16244B RNAのレベルは、PBS-免疫化群におけるものよりも低かった。対照的に、PRRSV-CON-免疫化群の1頭の豚のみがその鼠径リンパ節中に16244B特異的RNAを保有した一方、この群の残りの4頭の豚は、16244B特異的RNAを保有しなかった。
【0068】
まとめると、これらの結果は、非天然発生のPRRSV-CONの感染による離乳豚の免疫化が、PRRSV株FL12での免疫化がもたらした免疫化よりもPRRSV株、16244Bでの負荷に対して著しく良い交差防御をもたらしたことを明確に実証している。
【0069】
【表4】
【0070】
方法及び物質の組成物がいくつかの異なる態様と関連して本明細書に記載されたが、様々な態様の前述の記載は、例示することが意図されており、方法及び物質の組成物の範囲を限定することは意図されていないことが理解されよう。他の態様、利点、及び変更形態が以下の特許請求の範囲内である。
【0071】
開示された方法及び組成物に使用され得る、これに関連して使用され得る、この調製に使用され得る、又はこれの生成物である方法及び組成物が開示される。これら及び他の材料が本明細書で開示され、これらの方法及び組成物の組合せ、サブセット、相互作用、群等が開示されることが理解されよう。つまり、各様々な個々の及び集団的組合せへの特定の参照並びにこれらの組成物及び方法の入れ替えが明示的に開示され得ないが、それぞれは、明確に企図され、且つ本明細書に記載されている。例えば、物質の特定の組成物又は特定の方法が開示され、考察され、いくつかの組成物又は方法が考察される場合、組成物及び方法の各及び全ての組合せ並びに入れ替えは、逆に明確に示されない限り、明確に企図されている。同様に、これらの任意のサブセット又は組合せも明確に企図され、開示されている。