特許第6538087号(P6538087)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6538087
(24)【登録日】2019年6月14日
(45)【発行日】2019年7月3日
(54)【発明の名称】ポリマー材料の水媒介製造
(51)【国際特許分類】
   C08G 63/12 20060101AFI20190625BHJP
   C08L 101/16 20060101ALI20190625BHJP
【FI】
   C08G63/12ZBP
   C08L101/16
【請求項の数】26
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2016-570256(P2016-570256)
(86)(22)【出願日】2015年5月29日
(65)【公表番号】特表2017-516901(P2017-516901A)
(43)【公表日】2017年6月22日
(86)【国際出願番号】US2015033270
(87)【国際公開番号】WO2015184313
(87)【国際公開日】20151203
【審査請求日】2018年3月12日
(31)【優先権主張番号】62/005,299
(32)【優先日】2014年5月30日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/138,796
(32)【優先日】2015年3月26日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516334709
【氏名又は名称】ザ・セカント・グループ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100101373
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100112634
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 美奈子
(74)【代理人】
【識別番号】100196597
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 晃一
(72)【発明者】
【氏名】ニコルソン,チャールズ・ブレンダン
(72)【発明者】
【氏名】ハリス,ジェレミー・ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ガブリエーレ,ピーター・ディー
【審査官】 小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】 特表2004−517991(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 63/12
C08L 101/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー材料の製造方法であって:
容器内でグリセロールからなるアルコールモノマーと水性液体を混合し;
酸モノマーを容器に加え;
容器から水を除去し;そして
容器からポリマー材料を生成させる;
工程を含み、ポリマー材料はアルコールモノマーと酸モノマーのポリエステルを含む、前記ポリマー材料の製造方法。
【請求項2】
アルコールモノマー、水溶液、及び酸モノマーを容器内で還流する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
水性液体が水溶性薬剤を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
水溶性薬剤が、ビタミン、抗炎症薬、タンパク質、プロテアーゼ、除草剤、水槽用餌料源物質、成長因子、糖タンパク質、プロテオグリカン、抗有糸分裂薬、抗血小板薬、抗凝血薬、抗血栓薬、血栓溶解薬、酵素、化学療法薬、抗生物質薬、免疫学的アジュバント、天然物、足場材料、処理剤、又はこれらの組合せを含む、請求項に記載の方法。
【請求項5】
水性液体が水である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
酸モノマーが二酸を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
二酸が、式:[HOOC(CHCOOH](式中、n=1〜30)の化合物を含む、請求項に記載の方法。
【請求項8】
二酸が、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、又はこれらの組合せを含む、請求項に記載の方法。
【請求項9】
二酸がセバシン酸である、請求項に記載の方法。
【請求項10】
アルコールモノマーと水性液体を混合する工程が、アルコールモノマー及び水溶液を約50〜200℃に加熱することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
アルコールモノマーと水性液体を混合する工程が、アルコールモノマー及び水溶液を約90〜110℃に加熱することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
アルコールモノマーと水性液体を混合する工程が、アルコールモノマー及び水溶液を約5分間〜約240分間加熱することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
水を除去する工程が、容器を約50〜200℃に加熱することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
酸モノマーとアルコールモノマーを、大気圧において不活性雰囲気下で約1時間〜約48時間反応させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
大気圧において不活性雰囲気下で反応させる工程の後に、減圧を約1時間〜約76時間印加することを更に含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
減圧を約1時間〜約76時間印加することによってポリマー材料を生成させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
コモノマー又はポリマーを容器に加えてポリマー材料をコポリマーとして形成することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
コモノマーが、二酸、乳酸、カプロラクトン、又はこれらの組合せを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
生成したポリマー材料を反応させてコポリマーを形成することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
ポリマー材料がポリ(グリセロールセバケート)であり、ポリ(グリセロールセバケート)をポリ(乳酸)と反応させることによってコポリマーを形成する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
ポリマー材料の製造方法であって:
容器内においてグリセロールと水を混合し;
セバシン酸を容器に加え;
容器から水を除去し;
容器内において、大気圧及び50〜200℃の範囲の温度において、不活性ガスの存在下でグリセロールとセバシン酸を約1時間〜約48時間反応させ;
不活性ガスの存在下、大気圧において、50〜200℃の範囲の容器内の温度を用いて反応させる工程の後に、減圧を約1時間〜約76時間容器に印加して、それによって容器内においてポリマー材料を形成する;
工程を含む、前記ポリマー材料の製造方法。
【請求項22】
減圧が5Torr〜20Torrの範囲である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
減圧を約24時間〜約36時間印加する、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
製造品の製造方法であって、前記製造品が請求項1に記載の方法によって製造されるポリマー材料を含む、前記方法
【請求項25】
生体吸収性ポリマー材料の製造方法であって、前記生体吸収性ポリマー材料が請求項1に記載の方法によって製造されるポリマー材料を含み、前記ポリマー材料がポリ(グリセロールセバケート)を含む、前記方法
【請求項26】
生体吸収性ポリマー材料が抗菌特性を有する、請求項25に記載の方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本出願は、2014年5月30日出願の米国仮出願62/005,299、及び2015年3月26日出願の米国仮出願62/138,796(これらは両方ともそれらの全体を参照として本明細書中に包含する)の利益及びそれに対する優先権を主張する。
【0002】
[0002]本発明は、概してポリマー材料の製造方法、より詳しくは(排他的ではないが)生体適合性及び/又は生体吸収性ポリマー材料を製造するための水媒介プロセスに関する。
【背景技術】
【0003】
[0003]ポリマーは、生体材料の製造において広く用いられている。この分野において用いられる幾つかの生体材料には、水に対して異なる親和性を有する複数のモノマーから構成される生体適合性及び/又は生体吸収性合成ポリマーが含まれる。例えば、グリセロール及び二酸から形成される幾つかのポリマーにおいては、グリセロールは水溶性である可能性があり、一方で二酸はほぼ不溶性である。而して、これらの化合物を含む生体材料を製造する場合には、かかる製造のためのプロセスには、単純に、容器にモノマーをニートで加えてそれらを直接反応させることを含ませることができる。重合反応は制御及び修正するのが困難である可能性があるので、かかるプロセスは問題がある可能性がある。かかる反応の生成物は、複数のバッチの間で一貫性のない特性を有して、これによって安定して機能させることができない可能性がある生体材料が得られる可能性がある。
【0004】
[0004]1つのかかる方法が、Wangらの米国特許7,722,894に記載されている。‘894特許においては、特定の規定されている反応条件下で行う重縮合反応、即ち120℃及び1Torr以下の圧力において行って無色のエラストマーを生成させる無水重縮合反応によってポリ(グリセロールセバケート)を生成させる方法が記載されている。しかしながら、この方法及び得られる特定の形態のポリマーは、それらの満足できる商業的使用を制限又は妨げる数多くの欠点を有する。これらの欠点の中には、‘894特許によって教示されている特定のプロセス条件は実際には記載されているようなエラストマーを生成せず、その代わりに高分子量の樹脂を生成させることが含まれる。この樹脂を記載されている時間の範囲外で更に硬化させるとその過程でここでもなおエラストマーを生成させることができるが、当初の重合の条件によって高い多分散度を有するポリマーが生成し、このために、このポリマーは放出制御性などの分子量分布に対する厳密な管理が必要なもののような幾つかの用途における商業的な製造のためには好適でない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許7,722,894
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
[0005]当該分野において存在するこれら及び他の困難性のために、その中で行われる重合反応を制御及び修正することができるポリマー材料の合成方法に対する未だ満たされていない必要性が存在する。本発明はこれらの必要性を満足する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[0006]本発明は、ポリマー材料を製造するための水媒介プロセスを提供することによって、かかるプロセスによって製造することができる物品及び生体吸収性材料をはじめとするポリマー材料の調節可能な製造に関する分野における必要性を満足する。
【0008】
[0007]第1の形態においては、本発明はポリマー材料の製造方法を包含する。この方法は、容器内でアルコールモノマーと水溶液を混合することを含む。本発明の方法は、容器に酸モノマーを加え、次に容器内でアルコールモノマー、水溶液、及び酸モノマーを還流することを与えることができる。本方法は、必要に応じて容器から水を蒸留除去することなどによって容器から水を除去することを含む。更に、本方法は、容器内でポリマー材料を生成させることを含む。本発明の幾つかの形態においては、ポリマー材料としては、アルコールモノマーと酸モノマーのポリエステルが挙げられる。
【0009】
[0008]本発明方法の他の態様においては、アルコールモノマーとしてはグリセロールを挙げることができる。更に、水溶液には水溶性薬剤を含ませることができる。本発明の酸モノマーとしては二酸を挙げることができ、例えば二酸としては、式:[HOOC(CHCOOH](式中、n=1〜30)の化合物を挙げることができる。特定の態様においては、酸モノマーとしては、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、又はこれらの組合せを挙げることができる。特に、本発明方法における二酸はセバシン酸であってよい。
【0010】
[0009]本発明方法の他の態様においては、容器内でアルコールモノマーと水溶液を混合し、容器に酸モノマーを加え、還流し、蒸留し、及び/又はポリマー材料を生成させる工程には、必要に応じて加熱し、撹拌し、及び/又は減圧を印加して、所望のポリマー材料を生成させる工程を含ませることができる。
【0011】
[0010]本発明方法の更なる態様においては、本方法には、追加の水溶液、オリゴマー、ポリマー材料、及び/又はコモノマーを容器に加えることを含ませることができる。
[0011]他の形態においては、本発明は、本発明方法によって製造することができる製造品を包含する。そして更なる形態においては、本発明は本発明の水媒介プロセスによって製造される生体吸収性ポリマー材料を包含し、かかるポリマー材料としては、フィラメント、繊維、ヤーン、編組体、編成材料、メッシュ、シート、被覆、チューブ、又はこれらの組合せを挙げることができる。
【0012】
[0012]上記の概要及び以下の本発明の代表的な態様の詳細な説明は、添付の図面と合わせて読むと更に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】[0013]図1は、ポリオール及び二酸反応物質を容器内に一緒にニートで加える、PGSを製造するための公知の従来技術の方法を図示する。
図2】[0014]図2は、代表的な態様にしたがってポリマー材料を製造する水媒介方法を示す。
図3】[0015]図3は、(A)水媒介PGS重合反応;及び(B)標準的なPGS重合反応;における120分後のPGS重合反応のFTIRスペクトルをグラフで比較する。
図4】[0016]図4は、(A)標準的なPGS重合反応;及び(B)水媒介重合;における76時間後のPGS重合反応のFTIRスペクトルをグラフで比較する。
図5】[0017]図5は、(A)120分における標準的なPGS重合反応;(B)低温水媒介PGS重合反応;及び(C)76時間における標準的なPGS重合反応;におけるPGS重合反応のFTIRスペクトルをグラフで比較する。
図6】[0018]図6は、水媒介重合反応、及び比較の非水媒介重合反応のPGS重合のGPCクロマトグラムをグラフで示す。
【0014】
[0019]可能な限り、図面全体にわたって同じ部品を示すために同じ参照番号を用いる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[0020] 生体材料製造の分野においては、例えばポリ(グリセロールセバケート)(PGS)のような水に対して最小の親和性を有するモノマーから構成されるポリマー材料の合成において、より容易な材料の処理、より良好な初期段階反応の制御、温度感受性化合物の包含、及び水溶性添加剤の包含を可能にするプロセスに対する大きな必要性が存在する。
【0016】
[0021]図1に示すように、ポリマーのPGSは、固体のセバシン酸及び液体のグリセロールを一緒に加え、それらを約120℃において数時間反応させることによって合成することができる。セバシン酸は133〜137℃の融点を有する。これは、セバシン酸/グリセロールの混合物は、まず133℃よりも高い温度に加熱してセバシン酸を溶融して、2つの液体の反応物質を混合しなければならないことを意味する。グリセロールの存在下でセバシン酸を溶融すると、次にグリセロールと溶融したセバシン酸のフラクションの間で反応が迅速に起こるので問題がある。而して、当該技術において用いる反応条件は、反応の程度の指定及び反応の制御において困難性を生起する。
【0017】
[0022]ここに示すように、加熱の前に混合物に水を加えることにより、セバシン酸を遙かにより低い温度(100℃〜105℃の間)で液化させることによって溶融の問題が解決される。更に、二酸(例えばセバシン酸)とアルコール又はポリオール(例えばグリセロール)の間の反応はエステル縮合であり、この反応の生成物は水であるので、相当量の水が反応混合物中に存在している間は反応は進行しない。実際に、本発明は、上記で議論した‘894特許のような無水の反応条件を明示している参照文献が多く見られる従来技術と対比することができる。
【0018】
[0023]ポリ(グリセロールセバケート)の合成に関連して下記に示すように、水が反応生成物であり、而して反応物質を含む系中に更なる水を導入すると反応速度が遅延する。
【0019】
【化1】
【0020】
[0024]添加した水を蒸留などによって反応から除去したら、残りの反応物質は液体形態で存在し、これを均一に混合して、これによって反応を制御された方法で進行させる。更に、加えた水の量は既知であるので、蒸留によって除去される水の量の測定値に基づいて反応に関するより信頼できる開始時間を計算することができる。即ち、始めに加えた水を除去したら、その後に除去される更なる水は、反応の生成物として得られる水である。
【0021】
[0025]図2に示す代表的な態様のようなポリマー材料の製造方法を包含する本発明によって、当該分野における問題が解決される。ポリマー材料、及びそれから製造することができる生体材料は、生体適合性及び/又は生体吸収性にすることができる。
【0022】
[0026]かかるポリマー材料の製造を可能にする本発明方法には、まず容器内でアルコールモノマーと水性液体を混合する工程を含ませることができる。本発明方法の幾つかの形態においては、ポリマー材料の重合において用いる選択されたアルコールモノマー及び水溶液を、容器中に逐次的か又は同時のいずれかで混合又は他の形態で一緒に加えることができる。本明細書において用いる「ポリマー」又は「ポリマー性」という用語は、ホモポリマー、コポリマー、ターポリマー、架橋ポリマーなどを包含することができる。更に、「アルコールモノマー」という用語は、1以上のヒドロキシ置換基を有する脂肪族アルコールを指すことができ、例えば2以上のヒドロキシ置換基を有するポリオールを包含することができる。幾つかの形態においては、アルコールモノマーはグリセロールであってよい。
【0023】
[0027]本明細書において用いる「容器」という用語は、流体又は流体様の材料及び液体を収容するために当該技術において一般的に知られているビーカー、ビン、キャニスター、フラスコ、バッグ、レセプタクル、タンク、バット、ジャー、バイアル、チューブなどを指すことができる。
【0024】
[0028]本発明の水性液体は、水単独、又は水及び1種類以上の水溶性薬剤の溶液であってよい。水溶性薬剤を含ませることにより、本発明を用いなければかかる薬剤を供することが困難又は不可能であろう場合に、かかる薬剤をポリマー材料自体の中に導入することが可能になる。任意の熱的に不安定な水溶性薬剤を用いることができる。代表的な態様による水溶性薬剤としては、例えば、ビタミン、抗炎症薬、タンパク質、プロテアーゼ、除草剤、水槽用餌料源物質、抗有糸分裂薬、抗血小板薬、抗凝血薬、抗血栓薬、血栓溶解薬、酵素、化学療法薬、抗生物質薬、免疫学的アジュバント、天然物、足場材料、処理剤、又はこれらの組合せを挙げることができる。本発明のビタミンとしては、当該技術において公知の水溶性又は不溶性のビタミンを挙げることができる。好ましくは、本発明のビタミンとしては、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB3、ビタミンB5、ビタミンB6、ビタミンB7、ビタミンB9、ビタミンB12、ビタミンC、又はこれらの組合せを挙げることができる。
【0025】
[0029]水溶性の薬剤を本発明方法において導入するか又は用いる場合には、これらは治療有効量でポリマー材料中に与え、これらは純粋な形態、又はかかる形態が存在する場合には薬学的に許容しうる塩、エステル、又はプロドラッグ形態で用いることができる。本明細書において用いる本発明の水溶性薬剤の「治療有効量」という句は、任意の薬物療法に適用可能な妥当なベネフィット/リスク比の、疾患の治療において治療法として十分な薬剤の量を意味する。
【0026】
[0030]アルコールモノマーと水溶液を混合する工程は容器内において室温で行うことができ、或いはアルコールモノマー及び水溶液を約50〜200℃の温度に加熱することを含ませることができる。幾つかの態様においては、アルコールモノマーと水溶液を混合する工程には、アルコールモノマー及び水溶液を約80〜150℃、又は好ましくは約90〜約110℃の温度に加熱することを含ませることができる。更に、アルコールモノマー及び水溶液を、混合した後に、約5分間〜約240分間、又は約30分間〜約180分間、或いは水溶液中にアルコールモノマーを溶解又は均一に分散させるのに十分な時間加熱することができる。
【0027】
[0031]容器内でアルコールモノマーと水溶液を混合した後、酸モノマーを容器に加えてアルコールモノマー及び水溶液と混合することができる。酸モノマーは、容器にニートで(即ち溶媒中に分散又は溶解しないで)加えることができ、或いは選択された溶媒中の溶液又は混合物として加えることができる。本発明の酸モノマーとしては、一酸、二酸、三酸、四酸などをはじめとする(しかしながらこれらに限定されない)1以上の酸置換基を有する酸化合物を挙げることができる。本発明の幾つかの形態においては、酸モノマーは二酸である。本発明の二酸に関しては、かかる二酸は式:[HOOC(CHCOOH](式中、n=1〜30)を有していてよい。好ましくは、本発明の二酸としては、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、又はセバシン酸を挙げることができる。特に、本発明の二酸はセバシン酸である。幾つかの形態においては、アルコールモノマー、酸モノマー、及び水溶液(例えば水)は、約0.5〜5モルのアルコールモノマー:0.5〜5モルの酸モノマー:0.5〜5モルの水のモル比で与えることができ、アルコールモノマー及び酸モノマーは、好ましくはアルコールと二酸モノマーとの等モル量を達成するように存在させる。特定の形態においては、セバシン酸、グリセロール、及び水を、約1〜2モルのセバシン酸、1〜2モルのグリセロール、及び2〜5モルの水のモル比で混合することができる。
【0028】
[0032]容器に酸モノマーを加えた後、次に、容器を加熱することによって容器の内容物(例えば、アルコールモノマー、水溶液、及び酸モノマー)を還流することができる。容器の内容物を還流すると、例えば酸モノマーが固体である場合には酸モノマーの溶融が与えられる。実際に、代表的なプロセスは、グリセロールとセバシン酸の反応混合物に水を加えることによって開始することができ、これにより混合物の全体的な粘度が減少する。これにより、混合物を容易に撹拌することが可能になる。水は、反応容器壁と固体酸モノマー(例えばセバシン酸)との間の効率的な熱伝達を与え、これによって酸モノマーを迅速に溶融して分散液を形成することが可能になる。例えば、セバシン酸は室温において水中に溶解しにくく、この溶解度は温度を上昇させることによって増加する。懸濁液状又はコロイド状の混合物の相互作用によって、固体酸モノマーの効率的な液化が更に促進される。更に、混合物中に水を存在させることによって、例えばグリセロールとセバシン酸の反応が妨げられ、これにより、水を除去して反応を実質的に開始する前に全ての反応物質を溶融状態で均一にすることが可能になる。
【0029】
[0033]容器の内容物を還流する工程にはまた、容器内に含まれる溶媒(例えば水)の体積を維持するために容器に凝縮器を装備することを含ませることもできる。容器の内容物を還流することには、内容物を約50〜200℃又は約80〜150℃の温度に加熱することを含ませることができる。好ましくは、容器の内容物は約100〜140℃の温度に加熱する。更に、アルコールモノマー、水溶液、及び酸モノマーは選択された時間加熱することができ、これとしては約1〜336時間、又はより特には約24〜48時間を挙げることができる。或いは、酸モノマーが室温において液体又は油状物である場合には、還流工程を行わないことができる。幾つかの態様においては、還流下における時間を短縮するため、及び/又は高い温度において固体状態を維持する二酸を溶融する(これは、他の形態では容易に達成することはできなかった)のに用いるために、容器を加圧して200℃まで又はそれ以上の温度に到達させることができる。
【0030】
[0034]容器の内容物を還流して反応物質の溶融及び十分な混合を達成した後、この達成を与えるために容器に加えた水を、蒸留又は当該技術において公知の任意のプロセスなどによって除去する。残りの反応物質は液体形態で存在して、均一に混合されており、これにより、反応副生成物として更なる水の生成を含む反応を制御された方法で進行させることが可能になる。即ち、容器内に存在してその後に除去される水の一部はそれを水溶液中に含ませた結果であり、一方で一部は縮合反応の副生成物として存在する。除去される水の量を測定することによって、含ませた水が全て除去された時点を求めることができ、これによって反応が生成物の生成の方向に向かって引き返す(これは、全ての反応物質が同時に反応することを意味する)時点の一般概念が与えられる。
【0031】
[0035]容器から水を蒸留除去する工程には、容器を約50〜200℃、又は特には約80〜150℃の温度に加熱することを含ませることができる。特定の形態においては、容器から水を蒸留除去する工程には、容器を約110〜140℃、例えば約115℃、120℃、125℃、又は130℃、或いはこれらの間の任意の温度若しくは温度範囲に加熱することを含ませることができるが、より低い温度における真空蒸留もまた意図される。
【0032】
[0036]加えた水を容器から蒸留除去した後、アルコールと酸モノマーを速やかに反応及び重合させてポリマー材料を形成することができる。而して、これによりポリマー材料は容器から直接製造されて、最終生成物を与える。通常は、ポリマー材料の製造には、加えた水を除去した後に2つの別々の工程が含まれ、これは不活性ガス下において第1の加熱を行い、次に真空の印加下で加熱を行うことを伴い、ここで反応水は容器から蒸留除去される。これらの2つの工程(不活性ガスパージ及び真空)における容器の内容物の加熱は、互いと同じか又は異なる温度において行うことができる。温度は、約50℃〜約200℃、又は特には約80℃〜約150℃の範囲であってよい。本発明の特定の形態においては、容器の内容物は、約100℃〜140℃、例えば約115℃〜約135℃、例えば約115℃、120℃、125℃、130℃、又は135℃、或いはこれらの間の任意の温度若しくは温度範囲に加熱することができる。
【0033】
[0037]ここに記載する任意のプロセス工程における容器及び/又は容器の内容物の加熱に関しては、容器及び/又はその内容物の加熱は、伝導加熱、対流加熱、放射加熱、又はこれらの組合せによって行うことができる。放射加熱に関しては、容器及び/又はその内容物を、例えばマイクロ波放射線及び/又は赤外放射線で加熱することができる。
【0034】
[0038]蒸留は、還流の後に最初の蒸留工程を行って加工助剤として加えた水を除去することなどにしたがって不活性ガス下で反応させることによって容器の内容物を撹拌及び/又はパージするのと同時に行うことができる。本明細書において用いる「不活性ガス」という用語は、窒素、二酸化炭素、希ガス、又はこれらの組合せを指すことができる。例えば、本発明の希ガスとしては、ヘリウム、ネオン、アルゴンなどを挙げることができる。幾つかの形態においては、不活性ガスは窒素である。本発明方法には、容器の内容物を、例えば上記に記載した温度範囲内で加熱しながら、約1mL/分〜約10L/分の速度で不活性ガスでパージすることを含ませることができる。更に、容器の不活性ガスパージは、約1分間〜約48時間、又はより特には約1時間〜約24時間与えることができ、好ましくは大気圧において行うが、この工程をより高いか又はより低い圧力において行うことが意図される。
【0035】
[0039]蒸留には容器を加熱すること及び/又は容器に減圧を印加することを含ませることができ、特に製造の不活性パージ工程の後の反応水を除去するための蒸留は真空を印加して行う。例えば、蒸留には、当該技術において公知の任意のプロセスにしたがって容器に減圧源を接続する(例えば、蠕動ポンプ、膜ポンプ、回転ポンプ等の流体接続)ことを含ませることができる。約760Torr未満の圧力、又は特には約40mTorr〜50Torrの圧力の減圧を容器に印加することができる。他の形態においては、約5〜20Torr、例えば約10Torrの圧力の減圧を容器に印加することができる。
【0036】
[0040]更に、減圧は一定の圧力において選択された時間、容器に印加することができ、或いは減圧はその印加中に変化させることができる。例えば、減圧の印加には、約760Torr未満の第1の圧力、及び約40mTorrより高く、特に1Torrより高い第2の圧力のような第1の圧力から第2の圧力への段階的低下を含ませることができる。
【0037】
[0041]容器からの水の蒸留除去には、選択された時間、容器を加熱すること及び/又は容器に減圧を印加することを含ませることができる。例えば、容器の加熱及び/又は容器への減圧の印加は、約1時間〜336時間、又はより特には約12時間〜168時間加えることができる。特定の形態においては、容器の加熱及び/又は容器への減圧の印加は、例えば約24時間、約25時間、約26時間、約27時間、約48時間以下、又はこれらの間の任意の時間若しくは時間の範囲加えることができる。
【0038】
[0042]他の形態においては、反応物質を加熱することに加えて、又はそれに代えて、反応物質(例えば、アルコール及び酸モノマー)を減圧の印加下で反応させることができる。実際には、約760Torr未満の圧力、又は特には約40mTorr〜50Torrの圧力で減圧を容器に印加することができる。他の形態においては、約1〜50Torr、例えば5〜20Torr、例えば約10Torrの圧力で減圧を容器に印加することができる。アルコールと酸モノマーの重合は、(加熱及び/又は減圧の印加を行うか又は行わないで)約1時間〜336時間、又は特には約12時間〜168時間継続させることができる。特定の形態においては、重合(即ちポリマー材料の生成)は、約24〜120時間、例えば約24時間、約25時間、約26時間、約27時間、約48時間以下、約76時間以下、又はこれらの間の任意の時間若しくは時間の範囲継続させることができる。
【0039】
[0043]重合反応が完了してポリマー材料が生成したら、得られるポリマー材料(これは、成形可能な柔軟な樹脂の形態であってよい)を容器から取り出して、必要又は要求に応じて貯蔵する。更に、本発明方法の完了又は進行は、FTIR、DCS、SEC、TGA、LCMS、及び/又はNMRなど(しかしながらこれらに限定されない)の当該技術において公知の任意の手段によって求めることができる。有利性の中には、得られる生成物が、引き続いて処理し、次に任意の寸法、形状に、特定の用途に関して所望のような任意のレベルの架橋度まで硬化させることができる樹脂であるか、或いは例えば被覆として用いるために相当な架橋を行わないで樹脂の形態で用いることができることが含まれる。
【0040】
[0044]他の形態においては、プロセスの過程において、場合によって追加の水溶液を容器に供給することができる。例えば、還流段階、最初の蒸留段階、及び/又は生成段階中において、反応物質をポリマー材料への重合にかけながら追加の水溶液を加えることができる。追加の水溶液には、得られるポリマー材料中に導入することができる更なる薬剤を含ませることができる。例えば、感熱性である可能性がある薬剤を、反応における後期段階において、多少の重合を行った後に供給することができる。本発明の追加の水溶液としては、ビタミン、抗炎症薬、タンパク質、プロテアーゼ、除草剤、水槽用餌料源物質、成長因子、糖タンパク質、プロテオグリカン、抗有糸分裂薬、抗血小板薬、抗凝血薬、抗血栓薬、血栓溶解薬、酵素、化学療法薬、抗生物質薬、免疫学的アジュバント、天然物、足場材料、処理剤、又はこれらの組合せを挙げることができる。本明細書において用いる「足場材料」という用語には、ヒドロキシアパタイト、キトサン、コラーゲン、アルギン酸塩、多糖、グリコサミノグリカン、又はこれらの組合せを含めることができるが、これらに限定されない。更に、本明細書において用いる本発明の「処理剤」には、パテを製造するための薬剤、分散液を製造するための薬剤、界面活性剤、染料、顔料、生物活性材料、非生物活性材料(例えば非生物活性メッシュ被覆)、漂白剤、又はこれらの組合せを含めることができるが、これらに限定されない。
【0041】
[0045]本発明のいかなる1つの理論にも限定されないが、反応の初期段階においてはオリゴマーフラクションが形成され、反応の後期段階においてはこれらのオリゴマーフラクションが一緒に重合すると考えられる。セバシン酸の例においては、この酸は133℃〜137℃の間で溶融するが、オリゴマーフラクションは遙かにより低い温度(約45℃)で溶融する。例えば、溶融してグリセロールと混合したら、セバシン酸/グリセロール混合物は、115℃より高い温度で溶融状態に維持することができる。而して、反応を開始させるためには昇温温度が必要である可能性があるが、オリゴマーフラクションが形成された時点では、反応は遙かにより低い温度で継続する。本発明の幾つかの形態においては、PGSのオリゴマー(OGS)は、本発明方法又は当該技術において公知の他の方法のいずれかによって製造することができ、本発明方法の間に加えることができる。而して、幾つかの態様においては、形成されたポリマー材料が未だオリゴマーフラクションの形態であるような時点でプロセスを停止することができる。
【0042】
[0046]実際に、これらの知見を拡張すると、オリゴマーフラクションを合成し、次により低い温度(例えば約60℃)にすることができることが示される。この温度よりも高い温度において熱的に不安定な可能性があるポリマー材料中に導入するための更なる薬剤を含む水溶液又は追加の水溶液を、混合しながらこれらのオリゴマーに加えることができる。次に、添加剤を均一に分散させた後、減圧を印加して水溶液によって与えられた添加した水を除去することができ、反応をより低い温度において完了するまで継続させることができる。
【0043】
[0047]更に、更なるモノマー又は更にはポリマーを本発明において用いて、還流、蒸留、及び生成段階の少なくとも1つの間に容器に加えて、3種類以上のモノマーから構成されるポリマー材料を形成することができる。更なるコモノマーとしては、上記に規定した二酸を挙げることができ、或いは乳酸、グリコール酸、カプロラクトン、ヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンジフェニルジイソシアネートなどのような当該技術において公知の他のモノマー単位を含ませることができる。本発明の別の形態においては、ここに記載する代表的な態様にしたがって形成されるPGS又は他のポリマーを、続いて例示のみの目的でポリ(乳酸)のような他のポリマーと反応させることができる。これらのポリマーは、最初の重合反応中の任意の段階又はその完了後、例えば不活性ガス段階の後であるが、真空前、真空中、或いは更には最初のポリマー材料が形成されて別の反応において容器から取り出された後に加えることができる。
【0044】
[0048]PGSを用いる幾つかの態様においては、コポリマーによって、同時に材料の引張弾性率及び粘着性を減少させながら、ニートのPGSを超える弾性の増加が示される。PGS/PLAコポリマーは、エラストマー性にするために二次処理を行うことを必要とせず、またニートのPGSよりも低い表面エネルギーを有しており、これによりシリコーン、PTFE、及びポリプロピレンのような疎水性基材を被覆する能力が与えられる。
【0045】
[0049]コポリマー組成物の他の有利性は、組成物の分解速度及びその結果として放出速度に対する更なる制御が与えられることである。PGSは表面浸食性ポリマーであり、一方、PLAはバルク浸食性ポリマーである。いずれのメカニズムも変動する分解速度を与え、これによって最終的に材料の分解時間全体にわたって機械特性及び放出速度が制御される。材料の最終用途によって、適当な分解プロファイルを与えるようにコポリマー組成物を調整することができる。
【0046】
[0050]任意の所望の比を用いることができ;一態様においては、10%のPLA又は他のコポリマー/コモノマーに対して90%のPGSのモル比を有するコポリマーが与えられる。他の態様においては、この比は50/50である。コポリマー/コモノマー含量が90:10未満、10:90より大きい値、例えば50:50より大きい値、又はこれらの間の任意の点である任意の比のような任意の他の所望の比を用いることもできる。
【0047】
[0051]更に、本発明方法の間に一官能性又は多官能性化合物を容器に加えることができる。例えば、還流、蒸留、及び生成段階の少なくとも1つの間に一官能性又は多官能性化合物を加えて、本発明方法によって生成するポリマー材料の表面エネルギー特性を変化させることを可能にすることができる。本発明の「一官能性化合物」としては、例えば、カルボキシル、エステル、アミド、ヒドロキシル、エポキシド、カーボネート、アミン、エステル、カルバメート、尿素、カルボニル、スルホンアミドなどであってよい1つの官能基を有する有機化合物を挙げることができる。本発明の「多官能性化合物」としては、例えば、カルボキシル、エステル、アミド、ヒドロキシル、エポキシド、カーボネート、アミン、エステル、カルバメート、尿素、カルボニル、スルホンアミド、又はこれらの組合せからなる群から選択される2以上の官能基を有する有機化合物を挙げることができる。ここに記載する方法において用いるかかる化合物の数及びタイプによって、得られるポリマー材料の表面エネルギー特性を制御された方法で変化させることができる。
【0048】
[0052]本発明方法には、容器の内容物を、約1〜1000RPMの速度、又はより特には約100〜500RPMの速度で撹拌することを含ませることができる。実際には、本発明方法は、固体酸モノマーと液体アルコールモノマーの混合を促進するために高剪断下で混合物を撹拌することによって酸及びアルコールモノマー(例えばセバシン酸及びグリセロール)を混合することを含む。更に、反応混合物に水を加えることによって、撹拌するために必要な剪断の量が大きく減少する。例えば、反応物質を撹拌することは、水が存在する場合には例えばセバシン酸を溶融する前に可能であるが、水の不存在下においてはセバシン酸を溶融する前は不可能である。より早期の撹拌は、反応物質のより十分な混合を可能にし、これによってより安定した生成物が可能になるので好ましい。
【0049】
[0053]水を媒介させることと組み合わせて反応物質を撹拌することの更なる有利性は、容器の内容物が実質的に等温であり、これによって昇温温度中にセバシン酸が溶融し始める際には壁部における熱が反応器の中央部におけるよりも高く、これにより、反応が進行するにつれてタンクの壁部において高分子量のポリマーが形成され、一方で中央部における反応物質はより低分子量のフラクションを形成する標準的なプロセスに関係する問題が悪化する標準的な重合プロセスと比べて良好な熱管理が与えられることである。
【0050】
[0054]水を媒介させることはまた、ポリマー樹脂における粒径に影響を与えて、これによってとりわけ樹脂の配合/共重合特性、溶解度、及び被覆特性、或いはこれらの組合せに影響を与える可能性があることが観察された。特に、代表的な態様にしたがう水媒介方法は、従来の合成法を凌ぐより小さい粒径及びより狭い分布の証拠を示す。粒径は、樹脂から形成される熱硬化性エラストマーにおける分解速度、架橋密度、薬物負荷容量、機械的特性、又はこれらの組合せに影響を与える可能性がある。例えば、有利性の中にはより狭い分布が含まれ、これは物体内におけるエラストマーの分解時間をより良好に近似させることができることを意味する。その結果、熱硬化性エラストマーは、初期形成中に導入した活性成分を制御放出するためにより高い信頼性で用いることができる。
【0051】
[0055]幾つかの態様においては、本発明の代表的な態様にしたがって形成されるPGSホモポリマー材料は、20,000g/モル未満、例えば約15,000g/モル未満の重量平均分子量を有する。幾つかの代表的な態様は、7.5未満、例えば約7未満、幾つかの態様においては約6.5以下の多分散指数を有する。例えばPGS/PLAコポリマーのような他の態様においては、代表的な態様によって達成される重量平均分子量は、130,000g/モルまで、又はそれ以上にすることができる。
【0052】
[0056]本発明方法によれば、生体吸収性又は生体適合性のポリマー材料を製造することができる。生体吸収性ポリマー材料は更に、フィラメント、繊維、ヤーン、編組体、編成材料、メッシュ、シート、被覆、チューブ、又はこれらの組合せを構成することができる。特定の形態においては、ポリマー材料は、ビタミン、抗炎症薬、タンパク質、プロテアーゼ、除草剤、水槽用餌料源物質、成長因子、糖タンパク質、プロテオグリカン、抗有糸分裂薬、抗血小板薬、抗凝血薬、抗血栓薬、血栓溶解薬、酵素、化学療法薬、抗生物質薬、免疫学的アジュバント、天然物、足場材料、処理剤、又はこれらの組合せを含んでいてもいなくてもよいポリ(グリセロールセバケート)を包含する。
【0053】
[0057]本発明の他の態様においては、ここに開示する方法は、3D印刷のためのポリマー材料のエマルジョンを製造するために用いることができる。例えば、PGSのエマルジョンを、3Dプリンターを用いて基材上に印刷することができるバイオインクとして機能させることができる。例えば、本発明のポリマー材料に足場材料(例えばヒドロキシアパタイト)を含ませて、当該技術において公知の3Dプリンターを用いて骨に印刷することができるバイオインクを製造することができる。
【0054】
[0058]上記のプロセスは、従来技術を凌ぐ特定の有利性を与える。例えば、異なる段階において反応混合物に水溶性の添加剤を導入することができることは、これにより本方法によって製造されるポリマー材料をドープする際のオプションが可能になるので有利である。例えば、PGSは水非混和性のポリマーであるので、通常の活性薬剤成分、治療用生物薬剤、及び加工助剤のような水溶性の添加剤は、反応物質混合物全体に有効且つ均一に分散させることは非常に困難であろう。しかしながら、水又は水溶液の使用を含む本方法を与えることによって、加えることができる水溶性分子を反応物質マトリクス中に均一に混合して、水を除去した時点で分散液を形成することができる。
【0055】
[0059]本発明は、バッチ間の安定性を伴って製造することができるポリマー材料の制御された製造を可能にすることによって、当該分野における明確な有利性を与える。更に、反応の開始前に媒体として水を用いることによって、アルコールと二酸の間の重合を、水性溶媒の不存在下においてニートでアルコールと二酸の間の反応を行う場合と比べてより低い温度で開始させることができる。また、非水性又は有機溶媒系ではなく水性媒体の存在下でこれらの方法を用いることによって、他の明確な有利性も与えられる。例えば、有機溶媒を用いると、一般にプロセスの沸点が低下して、水溶性の活性成分に対する制限のように、幾つかの反応物質の混和性が妨げられる可能性がある。また、残留有機溶媒は安全性及び規制の懸念も有する可能性があるが、これに対して水は同じ健康又は安全性の問題を共有しない。更に、通常はニートで行われる可能性があるかかる重合反応を規模拡大する場合には、本方法によって、通常はニートの重合の粘度によって反応系を撹拌することが困難であるか又はほぼ不可能になる場合に、水の存在によって混合物の粘度を低下させることが可能になる。
【0056】
[0060]反応混合物に水を加えることによって、水を除去するまで反応を停止させて、反応物質の均一な混合を可能にすることができる。具体的にPGSに関しては、PGSは水を加えることによってその反応物質の種に分解する可能性がある。合成された可能性があるPGSが、通常は分解される。したがって、PGSを含む殆どの製造において、水は反応の全ての部分から明確に排除される。減圧を印加すると共に窒素ガスのような不活性ガスを用いて反応系をパージして、反応から凝縮によって生成する微量の水を除去することができる。しかしながら、ここに記載するアプローチは、ポリエステルPGSのようなポリマー材料を分解なしに製造する際に、水を加工助剤として用いることができることを示している。
【0057】
[0061]代表的な態様はまた、均一又は実質的に均一な形態、分子量分布、分子量フラクション、モノマー分布、及び/又は重合度を有する、ここに開示する1以上の方法にしたがって形成される生体適合性、生体再吸収性、生体吸収性、及び/又は生分解性のポリマーにも関する。例えば一態様においては、水媒介合成によって酸とアルコールモノマーの反応が蒸留後まで減少又は排除され、これによって非水媒介法と比べて容器全体における反応の均一性が増加する。他の態様においては、増加した反応の均一性によって容器全体における異なる反応の速度及び/又は長さが減少又は排除され、これによって非水媒介法によって形成されるポリマーと比べて増加した均一性を有するポリマーが形成される。
【0058】
[0062]水媒介合成によって形成されるポリマーの均一性のために、抗菌剤のような活性薬剤のポリマーからの制御された放出が容易になる。一態様においては、制御放出は、本方法の重合条件を操作することによって調節される。例えば、本方法における1以上の段階中の反応温度、圧力、及び/又は時間を調節することによって最終ポリマー/オリゴマーの構造を変化させて、これによって放出速度の制御を与える。最終構造に対する変化としては、最終生成物の形態、分子量フラクション、分子量分布、フラクション組成、及び/又は重合度の変化が挙げられるが、これらに限定されない。これらの変化は、例えば放出速度を変化させ、分解中に放出されるフラクションの寸法を変化させ、抗菌性物品の多孔度を変化させ、抗菌性物品のフラクション組成を変化させ、或いはこれらの組合せによって、それから形成される抗菌性物品の放出速度を変動させる可能性がある。
【0059】
[0063]抗菌剤は、抗菌特性を有する任意の成分又は化合物を含む。好適な抗菌剤には、ポリマー中に分散される添加剤、ポリマー及び/又はポリマーのモノマー並びに分解中に放出されるポリマーの一部中に導入される添加剤、或いはこれらの幾つかの組合せが含まれるが、これらに限定されない。例えば、1つの抗菌性物品はポリ(グリセロールセバケート)(PGS)自体を含み、そのモノマー及び/又はオリゴマーは放出によって抗菌特性を与える。他の抗菌性物品には、ヒトの代謝産物から誘導され、生分解性ポリマーの形態で与えられる非毒性抗菌剤が含まれる。理論によって縛られることは望まないが、PGSのセバシン酸及び/又はグリセロールモノマーは、クオラムクエンチング又はクオラムセンシング阻害(QSI)によって抗菌特性を与える。PGSモノマーのQSIは、バクテリアのような微生物のクオラムセンシングを混乱させて、微生物を非毒性状態に維持し、及び/又は病原性コロニーに分化するのを阻止する。本明細書においては主として水媒介合成に関して記載しているが、当業者に理解されるように、PGSのようなポリマーの抗菌特性は特定の形成プロセスには依存しない。むしろ、PGS及びその繰り返し単位及び/又はモノマーは、ここに開示する抗菌特性を保持する。
【0060】
[0064]更には、又は或いは、ここに開示する1以上の方法にしたがって形成されるポリマーは、抗菌性物品のQSIを与えるか及び/又は増加させる添加剤を含む。好適な添加剤としては、反応性のTween(登録商標)製品(Sigma-Aldrich(登録商標)から商業的に入手できる);クオラムセンシング分子及び/又はクオラムセンシング分子の類縁体、例えばシス−2−デセン酸、シス−2−ドデセン酸、シス−11−メチルドデセン酸、12−メチル−テトラデカン酸、シス−9−オクタデカン酸、テトラデカン酸、リノール酸、オレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、サピエン酸、シス−8−オクタデセン酸、シス−11−メチル−2−ドデセン酸、4,5−ジヒドロキシ−2,3−ジペンタジオン、環式アデノシンモノホスフェート、アラーモン(ppGpp及びpppGpp)、環式ジ−GMP、N−アシルホモセリンラクトン、ジケトピペラジン、4−キノロン類(2−ヘプチル−3−ヒドロキシ−4−キノロン、及び2−ヘプチル−4(1H)−キノロン)、フェナジン(しかしながらこれらに限定されない);Cu、Mn、Ag、Auのような抗菌性カチオン;或いはこれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。
【0061】
[0065]ここに開示する抗菌剤の1以上を選択して、殺菌性、真核非毒性であり、原核抗菌活性を与え、或いはこれらの組合せを与えるポリマーを与えることができる。更に、1種類以上の抗菌剤を含むポリマーの組成物は、微生物抵抗性を減少又は排除するように容易に変成することができる。更に、本組成物は特定の種(例えば「目標の拮抗作用」)に向けた放出フラクションを与えるように変性することができる。
【0062】
[0066]一態様においては、抗菌剤は、ポリマー骨格中又はその中に重合するか、及び/又は抗菌性物品のポリマーマトリックス中に他の形態で導入する。他の態様においては、抗菌剤の重合によって、加水分解、酵素作用、及び/又はpH変化によって開裂することができる結合が形成される。更なる態様においては、二酸モノマーのセバシン酸のような酸モノマーによって、親水性マトリクスが形成されるか、及び/又は表面浸食を促進する化学構造が与えられる。表面浸食特性によって、抗菌性物品のバルク特性に影響を与えることなく、又は爆発的な放出を与えることなく、表面における抗菌剤及び/又は活性成分の制御放出を与えることができる。更に、抗菌性物品中に抗菌剤を重合及び/又は導入することによって、抗菌剤のマイグレーション及び/又はブルーミングが減少又は排除され、均一か又は実質的に均一な放出、化学的安定性、環境安定性、共形表面に対する均一か又は実質的に均一な保護、或いはこれらの組合せが与えられる。
【0063】
[0067]ここに開示する1以上の態様にしたがって形成されるポリマーの重合プロファイルによって、オリゴマーゲルから熱硬化性エラストマー/ポリマーまでの一連のポリマー形態を与えることができる。更に、ここに開示する1以上の態様にしたがって形成される抗菌性物品の重合度を変化させて、ゲルから熱可塑性材料までの任意の樹脂状ポリマーを生成させることができ、これは更に熱硬化性材料に加工することができる。更に、ポリマーは、接着剤、被覆、ポリマーブレンド、押出物、添加剤フィラー、又はこれらの組合せなど(しかしながらこれらに限定されない)の組成物中に導入することができる。例えば、ここに開示する1以上の態様において記載されている水媒介合成によって形成されるPGS樹脂は、被覆中に配合して移植可能な編織体に施すことができる。
【実施例】
【0064】
[0068]以下の実施例によって本発明を更に詳細に記載する。これらの実施例は例示のみの目的で与えるものであり、いかなるようにも本発明を限定するように解釈すべきではない。
【0065】
比較例1:
[0069]蒸留装置内の冷却水凝縮器を取り付けた反応容器に、グリセロール(62.0g、0.670モル)及びセバシン酸(135.2g、0.670モル)を加えた。5L/分で窒素パージを施した。次に、溶融段階において、固体セバシン酸を十分に溶融するために反応容器を140℃のマントル温度で70分間加熱した。次に、撹拌段階において、反応器内の温度を130℃に低下させ、500RPMで50分間撹拌した。
【0066】
[0070]反応の溶融及び撹拌段階の後、反応は、500RPMで撹拌しながら窒素(5L/分)下において120℃で更に24時間継続した。
[0071]次に、真空装置を蒸留凝縮器に接続し、容器の内容物に減圧を印加した。圧力は、約85分かけてゆっくりと且つ段階的(1段あたり約10〜15%)に約20Torrまで低下させた。
【0067】
[0072]反応容器内の圧力が約20Torrに達したら、真空ポンプを5Torrに設定した。真空を印加した後、反応容器を120℃において500RPMで撹拌しながら、約5Torrの減圧で1440分間反応させた。
【0068】
[0073]反応混合物から水を除去したら、混合物の増加した粘度を考慮して、撹拌速度を200RPMに減少させた。しかしながら、PGS重合段階として、反応を、120℃の温度において、5Torrの真空設定値及び200RPMの撹拌速度で更に1440分間反応継続させた。
【0069】
[0074]この時間の後、反応容器内のPGS材料をガラスビンに移して卓上で約45分間冷却し、次に貯蔵用の冷凍庫に移して、ここで試験及び分析の前に少なくとも約24時間冷凍した。
【0070】
比較例2:
[0075]他の比較例においては、‘894特許に開示されている合成方法を用いて、等モル量のグリセロールとセバシン酸を120℃において(不活性ガスとしてアルゴンに代えて窒素を用いて)24時間反応させ、次に圧力を5時間かけて1Torrから40mTorrに低下させ、次に反応を120℃において更に48時間維持してポリマーを製造した。この手順によって、‘894特許において教示されているようなエラストマーではなく、柔軟な樹脂が生成した。
【0071】
実施例1:
[0076]グリセロール(62.0g、0.673モル)を、水(37.5g、2.08モル)と共に撹拌しながら反応容器に加えた。グリセロールが溶解した後、セバシン酸(138.0g、0.682モル)を反応容器に加えた。次に、反応容器に凝縮器を取り付けて、PGS重合の溶融及び撹拌段階中に水を還流した(凝縮器温度は2.5℃に設定した)。次に、反応容器を、500RPMの撹拌速度を用いて140℃のマントル温度に約70分間加熱した。反応容器が約95℃に達すると、容器内の材料は明澄になった。
【0072】
[0077]セバシン酸が溶融した後、区域温度を130℃に設定し、混合物を500RPMにおいて還流下で50分間撹拌した。
[0078]次に凝縮器を取り外し、容器に蒸留凝縮器を取り付けて容器から水を除去した。窒素パージを容器に施し(5L/分)、区域温度を120℃に設定した。蒸留中は、容器の内容物を500RPMにおいて1440分間撹拌した。
【0073】
[0079]次に、真空装置を蒸留凝縮器に接続し、容器の内容物に減圧を印加した。圧力は、約85分かけてゆっくりと且つ段階的(1段あたり約10〜15%)に約20Torrまで低下させた。
【0074】
[0080]反応容器内の圧力が約20Torrに達したら、真空ポンプを5Torrに設定した。真空を印加した後、反応容器を120℃において、500RPMで撹拌しながら5Torrに設定した減圧を用いて1440分間反応させた。
【0075】
[0081]反応混合物から水を除去したら、混合物の増加した粘度を考慮して、撹拌速度を200RPMに減少させた。しかしながら、PGS重合段階として、反応を、120℃の温度において、約5Torrの圧力及び200RPMの撹拌速度で更に1440分間反応継続させた。
【0076】
[0082]この時間の後、反応容器内のPGS材料をガラスビンに移して卓上で約45分間冷却し、次に貯蔵用の冷凍庫に移して、試験及び分析の前に少なくとも約24時間冷凍した。
【0077】
実施例2:
[0083]重合の初期段階の後にPGSプレポリマーに水を加えることの影響を評価するために、120℃より低い温度における更なる反応条件を、材料の処理性に関して評価した。
【0078】
[0084]3つの反応容器内において、実施例1に関して記載した方法でPGSプレポリマーを製造した。プレポリマーは窒素パージ後であるが真空処理の前の材料である。これらの段階の後、水を反応容器に加え、プレポリマー及び水を約30分間混合し、この間に均一な分散液が形成された。この段階の後、凝縮器を反応容器から取り外して、真空装置を加えた。それぞれの反応器に、650Torrで開始して真空を印加し、圧力は100分間かけて5Torrの最終設定値まで段階的(それぞれの段階において約10%)低下させた。
【0079】
[0085]真空がその最終設定値に達したら、反応器1内の温度を110℃に低下させ、500RPMで撹拌した。反応器3内の温度は80℃に低下させた。
[0086]最終真空を印加した後、反応器1、2、及び3内における反応を表1に示すように継続した。
【0080】
【表1】
【0081】
[0087]表1に示す段階の後、撹拌速度を200RPMに低下させ、同じ温度、撹拌、及び真空設定値を用いて、反応をそれぞれの反応器内で更に1440分間継続した。最後に、それぞれの容器から材料を回収し、ガラスビン内に貯蔵した。ビンを卓上で室温に1時間冷却し、次に分析の前に冷凍庫内に少なくとも24時間配置した。
【0082】
[0088]本実施例は、水を溶融したプレポリマーに加えて均一に混合することができることを示す。次に、反応は、標準的な120℃より低い反応温度を用いて継続させることができた。これによって、重合を温和な反応条件下で継続させながら、化合物、薬剤、又は他の試薬を反応混合物に加えることができる。
【0083】
実施例3:
[0089]グリセロール及びセバシン酸を1:1のモル比で水中に加え、溶融及び撹拌段階中において、水を還流するために凝縮器を用いて、実施例1に記載したものと同様の方法でセバシン酸を溶融し、次にセバシン酸が溶融したら蒸留して水を除去した。容器の成分を、大気圧、及び5L/分の窒素流速において、窒素下120℃で24時間撹拌した。時間は、最初に加えた全ての水が蒸留によって除去されたと求められた時点から測定した。その24時間の終了時において、圧力を10Torrに、温度を115℃に低下させ、反応を更に24時間進行させた。
【0084】
実施例4:
[0090]グリセロール及びセバシン酸を水に加え、24時間の窒素パージ段階中の混合物の温度を120℃の代わりに125℃に維持し、その後圧力を10Torrに、温度を115℃に低下させて反応を更に24時間進行させた他は実施例3と概して同じ方法で実験を行うことによって、PGSの水媒介製造を行った。
【0085】
実施例5:
[0091]グリセロール及びセバシン酸を水に加え、実施例3と概して同じ方法で実験を行い、反応物質を120℃において、大気圧及び5L/分の窒素流速において窒素下で24時間パージすることによって、PGSの水媒介製造を行った。時間は、最初に加えた全ての水が蒸留によって除去されたと求められた時点から測定し、但し本実施例においては、この後に10Torrの減圧及び130℃の温度において26時間継続した。
【0086】
[0092]実施例及び比較例を、種々の中間体(窒素パージの後で低圧段階の前に、プレポリマーの幾つかの試料を得た)と一緒に、示差走査熱量測定(DSC)、熱重量分析(TGA)、フーリエ変換赤外(FTIR)分光法、流量分析、PGS材料の酸価を求めるための滴定、及びゲル透過クロマトグラフィー(GPC)などの種々の試験によって特性分析した。
【0087】
[0093]DSCに関しては、熱量計にPGSの試料を装填し、10℃/分で−40℃から60℃まで、1分間の保持時間を用いて試験した。
[0094]結晶化温度(T)及び第2加熱段階の第1の融点(T)に焦点を当てると、溶融及び撹拌段階中に水のみに曝露した試料は比較例1で代表される結果(TC≒−11.4℃、T=約9.5℃)を有していたことが明らかになり、反応を水で媒介することによって反応が遅延することが示された。実施例2のようにより低い温度で反応させた試料は、プレポリマーPGS(TC≒−7.4℃、T=約14.3℃)と比較例1(TC≒−11.8℃、T=約8.3℃)の中間の結果(TC≒−8.3℃、T=約12.5℃)を有しており、これは、より低温で反応させることによって、反応は遅延するが進行し続けることを示した。
【0088】
[0095]TGA:実施例1の試料を、(1)25℃において1分間保持;(2)窒素パージしながら25℃/分で375℃に昇温;(3)窒素パージしながら10℃/分で475℃に昇温;及び(4)空気パージしながら10℃/分で550℃に昇温;に設定したプログラムを有する熱重量分析システム中に装填した。TGAの結果は、比較例1(約420℃において開始)の分析によって得られた結果と合致する。水媒介の時間は分解温度に影響を与えないことが求められた。実施例2の試料のTGA(415℃において開始)の結果は、比較例1と比べて僅かに低下した。これらの結果は、より低い温度(開始温度=約220℃)において起こる分解を示しておらず、これは反応物質が存在していなかったことを示している。より低い分解段階は、通常はプレポリマーPGS試料において存在する。
【0089】
[0096]FTIR:実施例1の試料を、4cm−1の分解能で32スキャンのFTIR−
ATRによって、4000〜650cm−1の範囲にわたって分析した。図3は、反応開始120分後における比較例1(破線)及び実施例1(実線)の反応物質混合物のFTIRスペクトルを示す。図4は、PGS反応の終了時(即ち、全48時間の反応プロセスの終了時)における比較例1(破線)及び実施例1(実線)の反応物質混合物のFTIRスペクトルを示す。図5は、実施例2(実線)、並びに反応開始後の120分後(濃い破線)及び76時間後(薄い破線)の比較例1のFTIRスペクトルを示す。スペクトルは、プレポリマー(120分)及び比較例1の材料と比べて、1735cm−1におけるエステルカルボニルピークの内方成長を示している。
【0090】
[0097]流動性:アルミニウム皿上で薄層に成形し、次に試験の前に冷凍庫内に約24時間貯蔵した実施例1の試料に関して、振幅スイープ及び周波数スイープ実験を行った。平坦化した試料を、流量計上にそれを装填する際に試料上のFNを最小にするように間隙を設定して、平坦なスラブで流量計上に配置した。全ての試料(振幅スイープ及び周波数スイープ)は、分析の前に少なくとも10分間、流量計フード内で25℃において緩和させた。
【0091】
[0098]溶融試料の80℃における回転流曲線は、反応を水で媒介した際のPGS材料における小さな変化を示す結果を示す。溶融及び撹拌段階中にのみ媒介した試料は、比較例1(3.8Pa・秒(水媒介)と4.0Pa・秒(標準的な非水媒介))と同じか又は僅かに低い粘度を示す。
【0092】
[0099]実施例2の材料に対して同様の試験を行ったところ、80℃における回転流曲線はプレポリマーPGSと比較例1の中間の粘度を示した(<1.0Pa・秒(プレポリマーPGS);1.2Pa・秒(実施例2);4.0Pa・秒(比較例1))。
【0093】
[00100]酸価分析:PGSの試料を50mLビーカー中に秤量投入した。約10mLのイソプロピルアルコール(IPA)をそれぞれのビーカーに加えた。次に、ビーカーをパラフィンフィルムで覆い、次に10分間超音波処理した。次に、4滴のp−ナフトールベンゼインを、10mLのIPAブランクを含むそれぞれのビーカーに加えた。次に、全ての試料を、IPA/KOH滴定剤を用いて均一な緑色になるまで滴定した。
【0094】
[00101]GPC分析を行って、分子量を見積もり、多分散指数を計算した。図6は、実施例1及び5の結果を比較例1及び2の結果と一緒にグラフで示す。
[00102]分子量(重量平均)、多分散指数(重量平均分子量を数平均分子量で割った値)、及び酸価を、下表2に示す。
【0095】
【表2】
【0096】
[00103]GPCの結果から導き出すことができる結論には、水媒介によってより低い分子量のポリマー及びより低い多分散指数が達成され、これにより架橋の前にポリマー樹脂をより容易に処理することが可能であることが含まれる。
【0097】
実施例6:
[00104]L−(+)−乳酸を撹拌しながら150℃において溶融縮合反応させることによって、低分子量(オリゴマー)のPLA(GPCによって求めて約893g/モルの分子量を有する)を生成させた。反応は、5L/分のNパージ下で120分間、次に97Torrにおいて120分間、次に30Torrにおいて240分間行った。
【0098】
[00105]等モル量のグリセロール及びセバシン酸を、120℃において、5L/分のNパージ下で24時間、次に10Torrにおいて24時間撹拌しながら溶融重縮合反応させることによって、低分子量(オリゴマー)のPGS(GPCによって求めて約5336g/モルの重量平均分子量を有する)を形成した。
【0099】
[00106]反応容器内において、120℃及び10Torrにおいて撹拌しながら、2つのオリゴマー成分を約19時間混合した(90:10のPGS:PLAのモル比)。次に、得られたポリマーである粘稠性の液体を、ニートのPGS樹脂に対して試験した。GPCによって求めた分子量(重量平均)は、コポリマーに関しては約28,986、PGSに関しては約12,453であった。
【0100】
[00107]コポリマーは、ニートのPGSよりも、より弾性で、剛性がより低く、粘着性がより低いことが観察され、より良好な回収率を有していた。示唆走査熱量測定(DSC)は、本実験のコポリマーのTは、ニートのPGSに関する約−12℃と比べて約−23℃であったことを示し、一方、回転溶融体流の流動性及び振幅スイープ流動性は両方とも、コポリマーがニートのPGSよりもより液体様の特性を示したことを示した。
【0101】
[00108]オリゴマーのPGS/PLAコポリマー及びニートのPGSポリマーの試料はまた、120℃及び10Torrにおいて72時間更に処理することによって熱硬化させた。得られた熱硬化性樹脂を、ピーク負荷、破断点歪み、及び弾性率に関して試験し、その結果を下表3に示す。
【0102】
【表3】
【0103】
実施例7:
[00109]実施例6のPLAを用い、等モル量のグリセロール及びセバシン酸を120℃において撹拌しながら5L/分のNパージ下で24時間溶融重縮合反応させることによって形成したPGSプレポリマー(GPCによって求めて約2252g/モルの重量平均分子量を有する)と混合した。反応容器内で120℃及び10Torrにおいて撹拌しながら2つの成分を約24時間混合した(90:10のPGS:PLAのモル比)。得られたポリマーは低粘度の液体であり、これを次に120℃及び10Torrにおいて72時間熱硬化させて、表4に示すようにニートのPGSと比較した。コポリマーに関してGPCによって求めた分子量(重量平均)は約10,853であった。
【0104】
【表4】
【0105】
[00110]実施例8及び9:
[00111]実施例8及び9は、それぞれ実施例6及び7と同じようにして、しかしながら5:5のモル比で混合して行った。GPCによって求めた分子量(重量平均)は、実施例8に関しては約129,720、実施例9に関しては16,340であった。
【0106】
[00112]DSC分析は、実施例6及び7は半結晶質の構造を示し、一方で実施例8及び9はアモルファスの性質であったことを示した。
実施例10〜12:
[00113]ここに記載する態様にしたがって低及び高分子量のPGSの水媒介調製物(それぞれ実施例10及び11)を製造し、JIS−Z2801:2000:抗菌特性−抗菌活性及び効能に関する試験;AMD−No.1−2006/5/20に記載されている方法にしたがって抗菌試験にかけた。更に、ここに記載する水媒介製造にしたがって製造したPGS樹脂を熱硬化性樹脂に更に加工し(実施例12)、これも同じ方法で試験した。全ての3つの試料は、Escherichia coli及びStaphylococcus aureusの両方に対して>99%の抗菌活性値を示した。
【0107】
[00114]ここで、本発明が属する最新技術を説明するために数多くの特許及び非特許文献を引用することができる。これらの文献のそれぞれの全開示事項は参照として本明細書中に包含する。
【0108】
[00115]上記に本発明の幾つかの態様を記載し及び/又は例示したが、種々の他の態様は上記の開示事項から当業者に明らかになるであろう。したがって、本発明は記載され及び/又は例示された特定の態様に限定されず、添付の特許請求の範囲及びその精神から逸脱することなく、相当な変更及び修正を行うことができる。
【0109】
[00116]更に、本明細書において用いる「約」という用語は、大きさ、寸法、配合、パラメーター、形状、並びに他の量及び特性は正確ではなく、且つ正確である必要はなく、要望に応じて、許容範囲、換算係数、丸め、測定誤差など、及び当業者に公知の他のファクターを反映して概算値であるか及び/又はより大きいか若しくは小さくてよいことを意味する。一般に、大きさ、寸法、配合、パラメーター、形状、又は他の量若しくは特性は、そのように明確に示されているかどうかにかかわらず「約」又は「概算値」である。非常に異なる寸法、形状、及びディメンションの態様が記載されている構成を用いることができることが留意される。
【0110】
[00117]更に、転換語の「含む」、「実質的に構成される」、及び「構成される」は、元の形態及び補正形態の添付の特許請求の範囲において用いる場合には、存在する場合には示されていない更なる特許請求の範囲の構成要素又は工程が1つ又は複数の特許請求の範囲から除外されているものに関する特許請求の範囲を規定する。「含む」という用語は、包含的又は開放型を意図しており、更なる示されていない構成要素、方法、工程、又は材料を排除しない。「構成される」という用語は、特許請求の範囲において規定されているもの、及び後者の場合においては、規定されている1つ又は複数の材料に通常関係する不純物以外の構成要素、工程、又は材料を除外するものである。「実質的に構成される」という用語は、特許請求の範囲を、規定されている構成要素、工程、又は1つ又は複数の材料、並びに特許請求されている発明の基礎的及び新規な1つ又は複数の特徴に実質的に影響を与えないものに限定するものである。本発明を具現化するここに記載する全ての材料及び方法は、別の態様においては、「含む」、「実質的に構成される」、及び「構成される」の転換語のいずれかによってより具体的に規定することができる。
本発明の具体的態様は以下のとおりである。
[1]
ポリマー材料の製造方法であって:
容器内でアルコールモノマーと水性液体を混合し;
酸モノマーを容器に加え;
容器から水を除去し;そして
容器からポリマー材料を生成させる;
工程を含み、ポリマー材料はアルコールモノマーと酸モノマーのポリエステルを含む、前記ポリマー材料の製造方法。
[2]
アルコールモノマー、水溶液、及び酸モノマーを容器内で還流する工程を含む、[1]に記載の方法。
[3]
アルコールモノマーがグリセロールを含む、[1]に記載の方法。
[4]
水性液体が水溶性薬剤を含む、[1]〜[3]のいずれかに記載の方法。
[5]
水溶性薬剤が、ビタミン、抗炎症薬、タンパク質、プロテアーゼ、除草剤、水槽用餌料源物質、成長因子、糖タンパク質、プロテオグリカン、抗有糸分裂薬、抗血小板薬、抗凝血薬、抗血栓薬、血栓溶解薬、酵素、化学療法薬、抗生物質薬、免疫学的アジュバント、天然物、足場材料、処理剤、又はこれらの組合せを含む、[4]に記載の方法。
[6]
水性液体が水である、[1]に記載の方法。
[7]
酸モノマーが二酸を含む、[1]に記載の方法。
[8]
二酸が、式:[HOOC(CHCOOH](式中、n=1〜30)の化合物を含む、[7]に記載の方法。
[9]
二酸が、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、又はこれらの組合せを含む、[8]に記載の方法。
[10]
二酸がセバシン酸である、[8]に記載の方法。
[11]
アルコールモノマーと水性液体を混合する工程が、アルコールモノマー及び水溶液を約50〜200℃に加熱することを含む、[1]に記載の方法。
[12]
アルコールモノマーと水性液体を混合する工程が、アルコールモノマー及び水溶液を約90〜110℃に加熱することを含む、[1]に記載の方法。
[13]
アルコールモノマーと水性液体を混合する工程が、アルコールモノマー及び水溶液を約5分間〜約240分間加熱することを含む、[1]に記載の方法。
[14]
水を除去する工程が、容器を約50〜200℃に加熱することを含む、[1]に記載の方法。
[15]
酸モノマーとアルコールモノマーを、大気圧において不活性雰囲気下で約1時間〜約48時間反応させることを含む、[1]に記載の方法。
[16]
大気圧において不活性雰囲気下で反応させる工程の後に、減圧を約1時間〜約76時間印加することを更に含む、[15]に記載の方法。
[17]
減圧を約1時間〜約76時間印加することによってポリマー材料を生成させることを含む、[1]に記載の方法。
[18]
コモノマー又はポリマーを容器に加えてポリマー材料をコポリマーとして形成することを更に含む、[1]に記載の方法。
[19]
コモノマーが、二酸、乳酸、カプロラクトン、又はこれらの組合せを含む、[18]に記載の方法。
[20]
生成したポリマー材料を反応させてコポリマーを形成することを更に含む、[1]に記載の方法。
[21]
ポリマー材料がポリ(グリセロールセバケート)であり、ポリ(グリセロールセバケート)をポリ(乳酸)と反応させることによってコポリマーを形成する、[20]に記載の方法。
[22]
ポリマー材料の製造方法であって:
容器内においてグリセロールと水を混合し;
セバシン酸を容器に加え;
容器から水を除去し;
容器内において、大気圧及び50〜200℃の範囲の温度において、不活性ガスの存在下でグリセロールとセバシン酸を約1時間〜約48時間反応させ;
不活性ガスの存在下、大気圧において、50〜200℃の範囲の容器内の温度を用いて反応させる工程の後に、減圧を約1時間〜約76時間容器に印加して、それによって容器内においてポリマー材料を形成する;
工程を含む、前記ポリマー材料の製造方法。
[23]
減圧が5Torr〜20Torrの範囲である、[22]に記載の方法。
[24]
減圧を約24時間〜約36時間印加する、[22]に記載の方法。
[25]
[1]に記載の方法によって製造される製造品。
[26]
ポリ(グリセロールセバケート)を含む、[1]に記載の方法によって製造される生体吸収性ポリマー材料。
[27]
生体吸収性ポリマー材料が抗菌特性を有する、[26]に記載の生体吸収性ポリマー材料。
図1
図2
図3
図4
図5
図6