(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
芯線と、前記芯線の先端領域以外の部分の外周を被覆する絶縁被覆と、前記絶縁被覆から離れて配置されて、前記芯線の前記先端領域の先端部を封止する先端封止部と、を備え、前記先端封止部と前記絶縁被覆の間において前記芯線が露出している、電線であって、前記先端封止部は、前記先端部の外周を覆う筒状の先端被覆部と、前記電線の長手方向と交差する交差方向において押し潰され、且つ、溶着により閉塞された溶着部と、を有する、電線と、
前記電線に取り付けられた端子と、
を備えた端子付き電線であって、
前記端子は、
相手端子と電気的に接触可能な電気接触部と、
前記電線に圧着される電線圧着部と、
前記電気接触部と前記電線圧着部を連結する連結部と、
を有し、
前記電線圧着部は、一対の圧着片を有し、各圧着片が、前記先端封止部の前記先端被覆部と、前記先端封止部と前記絶縁被覆の間で露出した前記芯線と、前記絶縁被覆と、に圧着されることで前記露出した芯線が封止されており、
又は、
前記電線圧着部は、筒状であって、前記先端封止部の前記先端被覆部と、前記先端封止部と前記絶縁被覆の間で露出した前記芯線と、前記絶縁被覆と、に圧着されることで前記露出した芯線が封止されており、
前記電気接触部は、
前記相手端子と接触可能な接触バネ片と、
前記接触バネ片を収容して保護するバネ保護体と、
を備え、
前記溶着部の先端は、前記バネ保護体の先端と後端の間に位置している、
端子付き電線。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1実施形態)
以下、
図1から
図19を参照しつつ、第1実施形態を説明する。
【0010】
図1には、ハーネス1の斜視図を示している。
図1に示すように、ハーネス1は、絶縁樹脂製のハウジング2と、ハウジング2に収容される複数の端子付き電線3と、を有している。
図1では、複数の端子付き電線3のうち1つの端子付き電線3のみを描いており、他の端子付き電線3の描画を省略している。
【0011】
図2には、端子付き電線3の斜視図を示している。
図2に示すように、端子付き電線3は、電線4と、電線4に取り付けられた端子5と、を有している。
【0012】
<電線4>
図3には、端子5を取り付ける前の電線4の斜視図を示している。
図4には、端子5を取り付ける前の電線4の側面図を示している。
図5は、
図4のV−V線断面図である。
図3及び
図4に示すように、電線4は、芯線6と、絶縁被覆7と、先端封止部8と、を有している。
【0013】
芯線6は、複数の素線を撚り合わせて成る撚り線、又は、亜鉛めっき鋼線の周囲で硬アルミ線を撚り合わせて成る鋼心アルミ撚り線である。撚り線の素線の素材は、例えば、銅、アルミニウム、アルミニウム合金である。撚り線の素線は個別にめっき処理されていてもよい。本実施形態において芯線6は、アルミニウム合金から成る素線を複数撚り合わせた撚り線である。
【0014】
図4に示すように、芯線6は、先端領域9を有する。先端領域9は、先端部10を有する。先端領域9及び先端部10は、何れも、芯線6の先端6A近傍の部分である。先端領域9は、芯線6の先端6Aを含み、電線4の長手方向に沿って所定長さ9Dを有する。先端部10は、芯線6の先端6Aを含み、電線4の長手方向に沿って所定長さ10Dを有する。所定長さ9Dは、所定長さ10Dよりも長い。即ち、先端領域9は、先端部10よりも長い。従って、先端領域9は先端部10を含む。先端部10は先端領域9の一部である。以下、「電線4の長手方向」を単に「電線方向」とも称する。
【0015】
本実施形態において、絶縁被覆7の素材と先端封止部8の素材は同じである。具体的には、本実施形態において、絶縁被覆7及び先端封止部8は、何れも、例えば塩化ビニルなどの溶着可能な合成樹脂である。ここで、「溶着」とは、例えば、熱溶着や超音波溶着が挙げられる。
【0016】
絶縁被覆7は、筒状であって、芯線6の先端領域9以外の部分である非先端領域11の外周を覆っている。
【0017】
先端封止部8は、絶縁被覆7から離れて配置されて、芯線6の先端領域9の先端部10を封止している。従って、絶縁被覆7と先端封止部8の間において芯線6が露出している。絶縁被覆7と先端封止部8の間において露出する芯線6を以降、芯線露出部12と称する。
図3に示すように、先端封止部8は、先端被覆部15と溶着部16、テーパー部17を有する。先端被覆部15及びテーパー部17、溶着部16は、絶縁被覆7から遠ざかる方向においてこの順に連なっている。
【0018】
先端被覆部15は、先端部10の外周を覆う筒状の部分である。
図3に示すように、電線4に端子5を取り付ける前の状態において、先端被覆部15の外径は絶縁被覆7の外径と等しく、先端被覆部15の厚みは絶縁被覆7の厚みと等しい。ただし、後述する溶着部16の溶着時や端子5の圧着時に先端被覆部15の外径が絶縁被覆7の外径よりも小さくなってもよいし、大きくなってもよい。
【0019】
溶着部16及びテーパー部17は、芯線6の外周を覆っておらず、先端被覆部15から先端方向に突出した部分である。ここで、「先端方向」とは、電線方向のうち絶縁被覆7から先端封止部8を見る方向である。なお、「後端方向」とは、電線方向のうち先端封止部8から絶縁被覆7を見る方向である。
【0020】
溶着部16は、電線方向と直交する任意の方向としての上下方向において押し潰された筒体であって、且つ、筒体の内部空間が溶着により閉塞された部分である。溶着部16は、電線方向において直線的に延びている。
図5に示すように後端方向に沿って見ると、電線方向に対して直交する溶着部16の断面18の形状は、上下方向において非対称であって、幅方向において対称な形状である。ここで、「幅方向」とは、上下方向及び電線方向に対して直交する方向である。溶着部16の断面18の形状は、本実施形態において径方向外方に向かって凸となるようなU字状である。
図5には、溶着部16の断面18の重心18Gと、電線方向に対して直交する先端被覆部15の断面15Mの重心15Gを示している。
図5に示すように、後端方向に沿って見ると、溶着部16の断面18の重心18Gは、先端被覆部15の断面15Mの重心15Gからズレており、両者は一致していない。そして、溶着部16のU字状の断面18の開口する方向に重心15Gが位置している。また、
図3に示すように、溶着部16は、芯線6の中心線の仮想延長線6Cを避けるように形成されている。更には、
図3及び
図5に示すように、溶着部16の断面18には、U字状の溶着痕19が残されている。なお、溶着部16の断面18の形状は、U字状に代えてV字状であってもよい。溶着部16の断面18に現れる溶着痕19は、前述したように筒体の内部空間を溶着により閉塞した結果として形成されたものであるから、1本のみの線状に延びている。
【0021】
テーパー部17は、
図3に示すように、先端被覆部15と溶着部16を滑らかに接続する筒体である。テーパー部17は、先端方向に向かうにつれて先細るように傾斜している。
【0022】
以降、
図1及び
図2に示すように、ハウジング2や端子5を説明するに際しても、電線4を説明する際に定義した「電線方向」「先端方向」「後端方向」「上下方向」「幅方向」をそのまま使用するものとする。
【0023】
<端子5>
次に、
図6から
図8を参照して、端子5について説明する。
図6には、電線4に取り付ける前の端子5の斜視図を示している。
図7には、電線4に取り付ける前の端子5の一部切り欠き斜視図を示している。
図8には、電線4に取り付ける前の端子5の側面図を示している。
【0024】
図6に示すように、端子5は、電線圧着部25と、連結部26と、電気接触部27と、を有している。電線圧着部25と連結部26、電気接触部27は、先端方向に向かってこの順に連なっている。即ち、連結部26は、電線圧着部25と電気接触部27を連結している。
【0025】
電線圧着部25は、電線4に圧着される部分である。
図6に示すように、本実施形態において電線圧着部25は、所謂オープンバレル型に構成されている。即ち、電線圧着部25は、底板部28と、2つの圧着片29と、を有する。
図7に示すように、底板部28は、その板厚方向が上下方向に対して略平行である。2つの圧着片29は、底板部28の幅方向の端部から上方に向かって延びている。従って、電線方向に沿って電線圧着部25から電気接触部27を見ると、電線圧着部25は上方に開口したU字状を成している。各圧着片29の内面30には、先端側セレーション31、中央セレーション32、後端側セレーション33が後端方向に向かってこの順に形成されている。本実施形態において先端側セレーション31及び後端側セレーション33は、何れも、電線方向に対して直交する方向に直線的に延びる直線溝で構成されている。また、本実施形態において中央セレーション32は、マトリックス状に整列した複数の窪みで構成されている。
【0026】
電気接触部27は、図示しない相手端子と電気的に接触可能な部分である。電気接触部27は、接触バネ片35と、接触バネ片35を収容して保護するバネ保護体36と、を有している。
【0027】
図6に示すように、バネ保護体36は、電線方向に沿って延びる角筒体である。
図6及び
図7に示すように、バネ保護体36は、底板部37と、2つの側板部38と、底板部37と対向する天板部39と、を有している。底板部37と天板部39は上下方向で対向している。天板部39は、底板部37の上方に配置されている。2つの側板部38は、幅方向で互いに対向している。
図8に示すように、バネ保護体36の先端36Aから天板部39の後端39Bまでの寸法39Dは、バネ保護体36の先端36Aから2つの側板部38の後端38Bまでの寸法38Dよりも小さい。従って、
図6に示すように、天板部39は、バネ保護体36の後端36B近傍において切り欠いていると言及することができる。なお、
図8に示す2つの側板部38の後端38Bは、後述するリテーナと電線方向で接触可能な部分である。
【0028】
図7に示すように、接触バネ片35は、角筒状のバネ保護体36に収容されることでバネ保護体36によって保護されている。接触バネ片35は、電線方向に細長く延びている。接触バネ片35は、バネ保護体36によって片持ち梁状に支持されている。
【0029】
なお、本実施形態の電気接触部27は、更に、接触バネ片35の撓みを抑制するための補強片40を有している。補強片40は、バネ保護体36によって片持ち梁状に支持されると共に、接触バネ片35の自由端に覆い被さっている。補強片40は、2つの側板部38のうち
図7に描かれている側板部38から切り起こされて形成されている。従って、この側板部38には、補強片40の切り起こしに起因する切り欠き41が存在している。
【0030】
図6に示すように、連結部26は、電線圧着部25と電気接触部27を連結する部分である。
図7に示すように、連結部26は、底板部45と、2つの側板部46と、を有する。底板部45は、その板厚方向が上下方向に対して略平行である。2つの側板部46は、底板部45の幅方向の端部から上方に向かって延びている。そして、底板部45は、電線圧着部25の底板部28と、電気接触部27のバネ保護体36の底板部37と、を電線方向で連結している。同様に、各側板部46は、電線圧着部25の各圧着片29と、電気接触部27の各側板部38と、を電線方向で連結している。そして、連結部26の2つの側板部46が、電線圧着部25の2つの圧着片29や電気接触部27の2つの側板部38と比較して低いので、電線圧着部25と電気接触部27の間には、後述するリテーナが挿入可能なリテーナ挿入空間47が確保されている。
【0031】
以上に説明した端子5は、例えば、銅又は銅合金から成る一枚の薄板を錫、ニッケル、亜鉛等の卑金属でめっき処理した上でプレス加工して成る。なお、端子5は、薄板をプレス加工した後にめっき処理したものであってもよい。
【0032】
<端子付き電線3>
次に、
図9から
図13までを参照して、端子付き電線3について説明する。
図9には、電線4に端子5を圧着する直前の斜視図を示している。
図10には、電線4に端子5を圧着する直前の側面断面図を示している。
図11には、電線4に端子5を圧着した状態の斜視図を示している。
図12には、電線4に端子5を圧着した状態の側面図を示している。
図13には、
図12のXIII-XIII線断面図を示している。
【0033】
前述した端子5を電線4に圧着するには、先ず、
図9に示すように、電線圧着部25の2つの圧着片29の間に電線4を配置する。
【0034】
詳しくは、
図10に示すように、以下の条件を満足するように電線圧着部25の2つの圧着片29の間に電線4を配置する。
【0035】
(1)電線方向において、溶着部16の先端16Aが電気接触部27のバネ保護体36の先端36A(
図6を併せて参照)と後端36Bの間に位置すること。
(2)好ましくは、溶着部16の先端16Aが電気接触部27の天板部39の後端39Bの直下に位置すること。
(3)電線方向において、溶着部16の後端16Bが、電気接触部27のバネ保護体36の後端36Bと、電線圧着部25の2つの圧着片29の先端29Aと、の間に位置すること。
(4)電線方向において、先端被覆部15の先端15Aが、電気接触部27のバネ保護体36の後端36Bと、電線圧着部25の2つの圧着片29の先端29Aと、の間に位置すること。
(5)電線方向において、芯線6の先端6Aが、電気接触部27のバネ保護体36の後端36Bと、電線圧着部25の2つの圧着片29の先端29Aと、の間に位置すること。
(6)電線方向において、先端被覆部15の後端15Bが、先端側セレーション31と中央セレーション32の間に位置すること。
(7)電線4の径方向において、先端被覆部15が先端側セレーション31と対向していること。
(8)電線方向において、芯線露出部12が、先端側セレーション31と後端側セレーション33の間に位置すること。
(9)電線4の径方向において、芯線露出部12が、中央セレーション32と対向していること。
(10)電線方向において、絶縁被覆7の先端7Aが、中央セレーション32と後端側セレーション33の間に位置すること。
(11)電線4の径方向において、絶縁被覆7が後端側セレーション33と対向していること。
(12)更に、溶着部16が電気接触部27のバネ保護体36の底板部37に極力近づけて配置されること。
【0036】
上記の通りに電線圧着部25の2つの圧着片29の間に電線4を配置したら、専用の圧着工具を用いて、
図11及び
図12に示すように、端子5の電線圧着部25の2つの圧着片29を電線4に圧着する。具体的には、各圧着片29を、
図10に示す電線4の先端封止部8の先端被覆部15と芯線露出部12と絶縁被覆7に圧着する。また、圧着に際しては、2つの圧着片29を互いに密着するように2つの圧着片29を内側に塑性変形させる。これにより、
図10に示す各圧着片29の先端側セレーション31に先端被覆部15が食い込むと共に、各圧着片29の後端側セレーション33に絶縁被覆7が食い込むことで、電線圧着部25と先端被覆部15と絶縁被覆7による芯線露出部12の封止が達成され、
図2の形状となる。また、中央セレーション32が芯線露出部12に噛み付くことで芯線6の不動態皮膜が局所的に除去されて、端子5と芯線6の良好な導通が確立される。なお、芯線6の先端6Aは、先端封止部8の溶着部16が溶着により閉塞されていることで封止されている。
【0037】
ここで、
図12に示すように、本実施形態では芯線6の先端6Aの一部が電気接触部27と電線圧着部25の間において、連結部26よりも上方に位置している。即ち、本実施形態では芯線6の先端6Aの一部が電気接触部27と電線圧着部25の間において、連結部26の2つの側板部46の上端46Cよりも上方に位置している。換言すれば、芯線6の先端6Aの一部が、上端46Cよりも底板部45から遠くに位置している。これにより、端子付き電線3に向かって幅方向でX線を照射するなどして、芯線6の先端6Aが電気接触部27と電線圧着部25の間に位置していることを圧着後に確認することが可能となる。
【0038】
また、
図13に示すように、本実施形態では、電線方向に沿って電気接触部27から電線圧着部25を見ると、上下方向において、電線方向に対して直交する溶着部16の断面18の重心18Gは、電線方向に対して直交する先端被覆部15の断面15Mの重心15Gと、連結部26の底板部45と、の間に位置している。以上の構成によれば、
図12に示すように、電気接触部27と電線圧着部25の間において後述するリテーナが挿入されるリテーナ挿入空間47を効果的に確保することができる。
【0039】
<ハーネス1>
次に、
図14から
図16までを参照して、ハーネス1を説明する。
図14には、二次係止前のハーネス1の一部切り欠き側面図を示している。
図15には、
図14のA部拡大図を示している。
図16には、二次係止状態のハーネス1を示している。
【0040】
図14に示すように、ハウジング2は、端子付き電線3を電線方向で挿入可能な複数のキャビティ50を有するハウジング本体51と、二次係止のためのリテーナ52と、を備えている。リテーナ52は、ハウジング本体51に対して上下方向に移動可能に保持されている。
【0041】
図15及び
図16に示すように、リテーナ52は、端子付き電線3のリテーナ挿入空間47に挿入可能なロック爪53を有している。そして、
図15及び
図16に示すように、リテーナ52を下げると、ロック爪53が端子付き電線3のリテーナ挿入空間47に挿入されて、ロック爪53がバネ保護体36の後端36Bに対して電線方向で接触可能な状態となる。換言すれば、リテーナ52を下げると、ロック爪53がバネ保護体36の各側板部38の後端38Bに対して電線方向で接触可能な状態となる。これにより、ハウジング2から端子付き電線3を引き抜こうとしても、バネ保護体36の後端36Bがロック爪53に引っ掛かり、ハウジング2から端子付き電線3を引き抜くことが禁止される。
【0042】
<端子付き電線3の製造方法>
次に、
図17から
図19を参照して、電線4の製造方法、ひいては、端子付き電線3の製造方法を説明する。
図17には、端子付き電線3の製造方法のフローチャートを示している。
図18及び
図19は、端子付き電線3の製造方法の各工程を説明するための図である。ただし、
図19の(e)及び(f)においては、説明の便宜上、端子5のうち連結部26及び電気接触部27を省略している。以下、
図17に示すフローチャートに沿って説明する。
【0043】
(分離工程:S100)
図18の(a)には、所定箇所で切断された電線4を示している。この電線4に端子5を取り付け可能とすべく、先ず、
図18の(b)に示すように、芯線60を覆う絶縁被覆61を切断することで、絶縁被覆61を、芯線60の先端領域62を覆う先端側被覆63(第1の絶縁被覆)と、芯線60の先端領域62以外の部分である後端領域64を覆う後端側被覆65(第2の絶縁被覆)と、に分離する。
【0044】
(露出工程:S110)
次に、
図18の(c)に示すように、先端側被覆63を芯線60上で滑らせて、先端側被覆63を後端側被覆65から離れる方向に移動させることで、先端側被覆63と後端側被覆65の間で芯線60を露出させる。
【0045】
(押し潰し工程:S120)
次に、
図19の(d)に示すように、先端側被覆63のうち芯線60の外周を覆う部分63A以外の余剰部分63Bを、芯線60の長手方向と直交する直交方向において押し潰す。このとき、余剰部分63Bの先端を必要に応じて同時に切断する。
【0046】
(溶着工程:S130)
上記押し潰し工程と同時に、又は、上記押し潰し工程の次に、押し潰された余剰部分63Bを溶着により閉塞する。溶着としては、熱溶着又は超音波溶着の何れでもよい。これにより、端子5に取り付け可能な電線4が完成する。なお、
図19の(d)以降において、上記溶着による閉塞の痕跡としての溶着痕を破線で略字している。この溶着痕は、若干不明瞭な1本のみの線として断面に現れるものである。また、
図19の(d)には、余剰部分63Bの先端を切断後に溶着を実施している場合を示しているが、これに代えて、溶着後に余剰部分63Bの先端を切断してもよい。
【0047】
(圧着工程:S140)
次に、
図19の(e)に示すように、圧着工具70を用いて端子5の電線圧着部25を電線4に圧着する。
【0048】
(溶着工程:S150)
上記圧着工程と同時に、又は、上記圧着工程に前後して、端子5の電線圧着部25を加熱することで、先端側被覆63と電線圧着部25との密着性、後端側被覆65と電線圧着部25との密着性が向上する。こうして、
図19の(f)に示すように、電線4に端子5が取り付けられて、端子付き電線3が完成する。
【0049】
なお、上記溶着工程(S130)は、上記圧着工程(S140)の前に実施することに代えて、上記圧着工程(S140)と同時に、又は、それ以降に実施するようにしてもよい。本実施形態では、
図10に示すように、溶着部16がバネ保護体36内に位置しているものの、天板部39の後端39Bが側板部38の後端38Bと比較して先端方向側に位置しているので、電線4に端子5を取り付けた後でも溶着工具を用いて余剰部分63Bを連結部26に押し付けながら加熱することで溶着部16を形成することが可能となっている。なお、上記溶着工程(S130)を上記圧着工程(S140)と同時に、又は、それ以降に実施する場合、溶着部16の下面形状は連結部26の内面に沿ったものとなる。
【0050】
以上に、第1実施形態を説明したが、上記第1実施形態は以下の特長を有する。
【0051】
即ち、
図3及び
図4に示すように、電線4は、芯線6と、芯線6の先端領域9以外の部分としての非先端領域11の外周を被覆する絶縁被覆7と、絶縁被覆7から離れて配置されて、芯線6の先端領域9の先端部10を封止する先端封止部8と、を備える。先端封止部8と絶縁被覆7の間において芯線6が露出している。先端封止部8は、先端部10の外周を覆う筒状の先端被覆部15と、電線方向(電線の長手方向)と直交(交差)する直交方向(交差方向)において押し潰され、且つ、溶着により閉塞された溶着部16と、を有する。以上の構成によれば、芯線6の先端部10を確実に封止することができる。また、電線方向に対して直交する直交方向においてコンパクトな溶着部16が実現される。
【0052】
また、
図5に示すように、電線方向に対して直交する溶着部16の断面18の重心18Gは、電線方向に対して直交する先端被覆部15の断面15Mの重心15Gからズレている。以上の構成によれば、溶着部16を下方に配置することで、溶着部16の上方に大きなリテーナ挿入空間47を形成することが出来るので、リテーナ52のロック爪53と側板部38の後端38Bが接触可能となる上下方向の長さを大きく確保できるので、ハウジング2から端子付き電線3が一層抜けにくくなる。
【0053】
また、
図3及び
図5に示すように、電線方向に対して直交する溶着部16の断面18の形状は、U字状である。以上の構成によれば、溶着部16を上下方向で押し潰しながらも、溶着部16の幅方向の寸法をコンパクトにすることができる。
【0054】
また、
図3に示すように、溶着部16は、芯線6の中心線の仮想延長線6Cを避けるように形成されている。以上の構成によれば、溶着部16を下方に配置することで、溶着部16の上方に空間を形成することができるので、溶着部16とリテーナ52との物理的な干渉を回避することが可能となる。
【0055】
なお、「交差方向」は、上記実施形態では電線方向に対して直交する方向としたが、これに代えて、電線方向に対して90度以外の角度で交差する方向としてもよい。
【0056】
また、
図9から
図12に示すように、端子付き電線3は、電線4と、電線4に取り付けられた端子5と、を備えている。端子5は、相手端子と電気的に接触可能な電気接触部27と、電線4に圧着される電線圧着部25と、電気接触部27と電線圧着部25を連結する連結部26と、を有する。電線圧着部25は、一対の圧着片29を有し、各圧着片29が、先端封止部8の先端被覆部15と、芯線露出部12と、絶縁被覆7と、に圧着されることで芯線露出部12が封止されている。
【0057】
また、
図13に示すように、電線方向に沿って電気接触部27から電線圧着部25を見ると、電線方向に対して直交する溶着部16の断面18の重心18Gは、電線方向に対して直交する先端被覆部15の断面15Mの重心15Gと連結部26の間に位置している。以上の構成によれば、
図12に示すように、電気接触部27と電線圧着部25との間であって溶着部16の上方に大きなリテーナ挿入空間47を確保することができる。
【0058】
また、
図7に示すように、電気接触部27は、相手端子と接触可能な接触バネ片35と、接触バネ片35を収容して保護するバネ保護体36と、を備える。
図6及び
図10に示すように、溶着部16の先端16Aは、バネ保護体36の先端36Aと後端36Bの間に位置している。以上の構成によれば、溶着部16の先端16Aが電気接触部27と電線圧着部25の間に位置する場合と比較して、電線方向においてコンパクトな端子5が実現される。
【0059】
また、
図6及び
図7に示すように、バネ保護体36は、連結部26と接続する底板部37と、2つの側板部38と、底板部37と対向する天板部39と、を有する角筒形状である。
図8に示すように、バネ保護体36の先端36Aから天板部39の後端39Bまでの寸法39Dは、バネ保護体36の先端36Aから2つの側板部38の後端38Bまでの寸法38Dより小さい。以上の構成によれば、バネ保護体36に挿入された溶着部16を容易に視認することができる。また、電線4に端子5を圧着した後に溶着部16を形成することが可能となる。
【0060】
また、
図12に示すように、芯線6の少なくとも一部は、電気接触部27と電線圧着部25の間において、連結部26よりも上方に位置している。以上の構成によれば、X線や超音波を利用することにより、芯線6の先端部10が電線圧着部25と電気接触部27の間に至っていることを圧着後に確認することが可能となる。
【0061】
また、
図1に示すように、ハーネス1は、端子付き電線3と、端子付き電線3を収容するハウジング2と、を備える。
図16に示すように、ハウジング2は、バネ保護体36の後端36Bに対して電線方向で接触可能なリテーナ52を有する。
【0062】
また、
図17から
図19までに示すように、電線4の製造方法は、芯線60を覆う絶縁被覆61を切断することで、絶縁被覆61を、芯線6の先端領域62を覆う先端側被覆63(第1の絶縁被覆)と、芯線6の先端領域62以外の部分である後端領域64を覆う後端側被覆65(第2の絶縁被覆)と、に分離するステップ(S100)と、先端側被覆63を後端側被覆65から離れる方向に移動させることで、先端側被覆63と後端側被覆65の間で芯線60を露出させるステップ(S110)と、先端側被覆63のうち芯線60の外周を覆う部分以外の余剰部分63Bを、芯線60の長手方向と直交する方向(交差する交差方向)において押し潰すステップ(S120)と、押し潰した余剰部分63Bを溶着により閉塞するステップ(S130)と、を含む。以上の構成によれば、芯線60の先端部を確実に封止することができる。また、電線方向に対して直交する直交方向においてコンパクトな溶着部が実現される。
【0063】
なお、押し潰すステップ(S120)と閉塞するステップ(S130)は同時に実行してもよい。これにより、電線4の製造に要する時間を短縮することができる。
【0064】
(第2実施形態)
次に、
図20を参照して、第2実施形態を説明する。以下、本実施形態が上記第1実施形態と異なる点を説明し、重複する説明は省略する。
図20は、端子付き電線3の斜視図である。なお、
図20では、説明の便宜上、端子5の電気接触部27を省略して描いている。
【0065】
上記第1実施形態では、例えば
図6に示すように、2つの圧着片29を有する所謂オープンバレル型の端子5を採用した。しかし、これに代えて、
図20に示すように、本実施形態では、電線圧着部25が円筒状である所謂クローズドバレル型の端子5を採用している。この場合でも、電線圧着部25が芯線6に圧着されると共に、先端封止部8と絶縁被覆7に圧着されることで、芯線6の芯線露出部12の封止が実現されている。なお、電線圧着部25の形状としては、筒状であれば、円筒状に代えて角筒状であってもよい。