(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6538182
(24)【登録日】2019年6月14日
(45)【発行日】2019年7月3日
(54)【発明の名称】2つのバネを具備する過充填リミッタを備えているダイアフラムポンプ
(51)【国際特許分類】
F04B 43/06 20060101AFI20190625BHJP
【FI】
F04B43/06 A
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-543299(P2017-543299)
(86)(22)【出願日】2015年11月4日
(65)【公表番号】特表2017-534023(P2017-534023A)
(43)【公表日】2017年11月16日
(86)【国際出願番号】US2015059027
(87)【国際公開番号】WO2016073600
(87)【国際公開日】20160512
【審査請求日】2018年11月5日
(31)【優先権主張番号】62/075,070
(32)【優先日】2014年11月4日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】14/931,614
(32)【優先日】2015年11月3日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】506176478
【氏名又は名称】ワナー・エンジニアリング・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】WANNER ENGINEERING,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】リチャード・ディー・ヘンブリー
【審査官】
田谷 宗隆
(56)【参考文献】
【文献】
特表2007−500821(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 43/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
送り込むべき流体を収容するためのポンプチャンバを有しているハウジングと、
作動液を収容するように構成されている輸送チャンバであって、作動液リザーバと流通している前記輸送チャンバと、
シリンダと、
前記シリンダの内部において往復運動するように滑動するピストンであって、前記ピストンが、ピストンチャンバを形成しており、前記ピストンチャンバが、端部を備えている、前記ピストンと、
前記ピストンチャンバに通じている弁と、
前記ピストンチャンバの内部に滑動可能に取り付けられている弁スプールであって、第1の位置において前記弁をカバーしており、第2の位置において前記弁を露出させている前記弁スプールと、
前記ピストンチャンバの内部に且つ前記弁スプールと前記ピストンチャンバの前記端部との間に滑動可能に取り付けられている可動式スペーサと、
プランジャを介して前記弁スプールに接続されており、前記ハウジングによって支持されているダイアフラムであって、前記ダイアフラムが、ポンプチャンバ側面と輸送チャンバ側面とを有しており、前記ポンプチャンバ側面が、前記ポンプチャンバを少なくとも部分的に形成しており、前記輸送チャンバ側面が、前記輸送チャンバを少なくとも部分的に形成している、前記ダイアフラムと、
前記ピストンチャンバの内部において前記弁スプールと前記可動式スペーサの第1の側面とに接触している第1のバネであって、第1のバネ定数を有している前記第1のバネと、
前記ピストンチャンバの内部において前記ピストンチャンバの前記端部と前記可動式スペーサの第2の側面とに接触している第2のバネであって、前記第1のバネ定数より大きい第2のバネ定数を有している前記第2のバネと、
を備えていることを特徴とするダイアフラムポンプ。
【請求項2】
前記弁が、前記ピストンにポートを備えていることを特徴とする請求項1に記載のダイアフラムポンプ。
【請求項3】
前記プランジャが、前記作動液リザーバから前記輸送チャンバに至る流通経路を形成している中空シャフトを備えていることを特徴とする請求項1に記載のダイアフラムポンプ。
【請求項4】
前記ダイアフラムポンプが、前記ピストンを作動させるために給電するためのモータを備えていることを特徴とする請求項1に記載のダイアフラムポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、米国仮出願第62/075070号明細書及び米国特許出願第14/931614号明細書に基づく優先権を主張するものである。これら基礎出願の全体は、参照により本出願に組み込まれている。
【0002】
本発明は、ダイアフラムポンプ、特に異なるバネ定数を有する2つのバネを利用する過充填リミッタ組立体を具備する、液圧駆動式ダイアフラムポンプに関する。
【背景技術】
【0003】
ダイアフラムポンプは、ダイアフラムによってポンプ流体が変位するポンプである。液圧駆動式ポンプでは、ダイアフラムは、ダイアフラムに作用する作動液の圧力によって撓む。このようなポンプは、コスト、効率、及び信頼性について優れたバランスを提供する。しかしながら、このようなポンプは、作動油が過充填状態になることを防止するための安全装置を必要とする。同期式後発ポンプでは、このような状態によって、ピストンがマニホールドに激突し、ダイアフラムに対して圧力スパイクを発生させるので、ダイアフラムの故障の原因となる。
【0004】
このような故障を防止するために、システムは、過充填を制限するように発展している。特許文献1は、過充填を制限するために改善された弁システムを開示している。当該弁システムは、従来技術に基づくポンプより堅いバネを利用しており、液圧チャンバに給油することができるシリンダにベント溝を有している。しかしながら、当該弁システムでは、非常に高い圧力で往復した場合に少量の油が漏出する場合がある。このような少量の漏出であっても、特定の分野では許容することができない場合があり、当該弁システムの利用は低圧力ポンプに制限される。
【0005】
また、特許文献2は、さらなるシステムを開示している。当該特許文献は、ベント溝を具備しないシステムであって、空になったときであってもダイアフラムに力を作用させるための柔らかいバネを利用するシステムを開示している。このような構成によって、ポンプは、ベント溝を備えていなくても給油することができる。しかしながら、過充填を防止するために、液圧チャンバが過充填された場合に圧力を高めるための弁スプールにおいて、行程リミッタが利用される。従って、幾つかの条件下においては、ダイアフラムが過充填された場合に圧力が急激に上昇し、このような条件においてダイアフラムに負荷が作用することになる。
【0006】
従って、従来技術における課題を解消させるために、過充填リミッタを具備するダイアフラムポンプに対するニーズが存在する。このようなシステムは、ダイアフラムにおける圧力降下を低くし、シリンダにベント溝を設けることなく油を充填することができるので、過剰な過充填を防止すると共に、高剛性の行程リミッタによって発生する可能性がある過剰な高圧を回避することができる。さらに、このようなポンプ及びシステムは、安価且つ製造及び点検が容易であり、ダイアフラムに作用する負荷を最小限度に抑えるので、高い信頼性を維持することができる。本発明は、これら課題と共に、ダイアフラムポンプに関連する他の課題をも解決する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第6899530号明細書
【特許文献2】米国特許第7090474号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ダイアフラムポンプは、送り込むべき流体を収容するためのポンプチャンバを有しているハウジングを含んでいる。輸送チャンバは、作動液を収容するように構成されており、作動液リザーバと流通している。シリンダは、ポンプハウジングに格納されており、往復運動するように滑動するピストンであって、作動液を送り込むピストンを含んでいる。また、ピストンは、ピストン内部チャンバと、作動液の流れを制御するためにピストン内部チャンバに通じている弁とを含んでいる。弁スプールは、第1の位置において弁をカバーするために、及び、第2の位置において弁を露出させるために、ピストン内部チャンバの内部に滑動可能に取り付けられている。プランジャは、弁スプールをダイアフラムに接続している。第1のバネピストン内部チャンバの内部に且つ弁スプールとスペーサとの間に配置されており、第1のバネ定数を有している。第2のバネは、第1のバネ定数より大きい第2のバネ定数を有している。従って、最初に第1のバネが圧縮され、その後に第2のバネが圧縮される。第1のバネと第2のバネとは、過充填状態において、弁ポートをカバーするように、且つ、さらなる過充填を防止するように弁スプールに作用する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明を特徴づける新規のこれら特徴及び様々な他の利点は、特に本出願の一部を形成する添付の特許請求の範囲から理解される。しかしながら、本発明、本発明の利点及び補発明の利用により得られる目的を良好に理解するために、本出願のさらなる一部を形成する図面と、本発明の好ましい実施例を図解及び説明する発明の詳細な説明とを参照すべきである。
【0010】
図面の参照に際して、類似する参照符号及び文字は、すべての実施例を通じて対応する構造体を示している。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明におけるダイアフラムポンプの、第1の位置における横断面図である。
【
図2】本発明におけるダイアフラムポンプの、第2の位置における横断面図である。
【
図3】本発明におけるダイアフラムポンプの、第3の位置における横断面図である。
【
図4】本発明におけるダイアフラムポンプの、第4の位置における横断面図である。
【
図5】
図1に表わすダイアフラムポンプの過充填アセンブリについての、圧力とバネの撓みとの関係を表わすグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図面、特に
図1〜
図4は、ダイアフラムポンプ(10)の概略的な構成を表わす。ダイアフラムポンプ(10)は、ポンプハウジング(12)を含んでいる。ポンプハウジング(12)は、往復ピストン(16)を受容するためのシリンダ(14)を形成している。ダイアフラム(18)は、輸送チャンバとポンプチャンバ(20)との間に障壁を形成しており、輸送チャンバの内部において、オイルがダイアフラム(18)に影響を及ぼし、ポンプチャンバ(20)は、送り込むべき流体を受容する。ダイアフラム(18)は、流体を送り込むために往復運動するように屈曲可能とされる。
【0013】
プランジャ(26)は、ピストン(16)の内部において弁スプール(30)から延在しており、ダイアフラム(18)に接続している。プランジャ(26)は、中空とされ、輸送チャンバの内部のオイルを交換する必要がある場合にオイルを流通させるための穴(28)を有している。弁スプール(30)は、ピストン(16)の内部に形成されているキャビティ(34)の内部において、ピストン(16)の移動方向に沿って長手方向に移動する。弁ポート(32)は、ピストン(16)の側面に形成されており、弁スプール(30)によってカバーされているので、通常運転状態において作動油の通路を開閉させることができる。ピストン(16)の端部は、入口(52)と、作動液リザーバからの作動流体の流れを制御するためのボール式逆止弁(50)とを含んでいる。また、弁スプール(30)は、第1のバネ(40)と、第1のバネ(40)より堅い第2のバネ(42)と、過充填リミッタとして機能するように構成されている可動式スペーサ(44)とを含んでいる。
【0014】
図3に表わすように、ダイアフラムポンプ(10)は、始動時に作動油が充填されないように構成されている。ピストン(16)は、上死点に位置している。しかしながら、作動油が無いので、ダイアフラム(18)は、第1のバネ(40)によって強制的に下死点に配置されている。下死点において、弁スプール(30)は弁ポート(32)をカバーしていない。第1のバネ(40)は、取付の際に圧縮され、約1インチ撓んでいるので、第1のバネ(40)は、始動位置において、例えば2psiのような小さい圧力を作用させている
(1psi=約7kPa)。第1のバネ(40)及び第2のバネ(42)は、異なるバネ定数を有しており、第2のバネ(42)は、第1のバネ(40)より堅く、第1のバネ(40)より高いバネ定数を有している。典型的には、第1のバネ(40)のバネ定数はダイアプラム(18
)に向かって約10psiとされ、第2のバネ(42)のバネ定数は約100psiとされる。図示の実施例では、第1のバネ(40)が作用している場合には、第1のバネ(40)は1.96インチ撓んでおり、4psiの圧力が発生する。
図3に表わすドライスタートから理解されるように、第1のバネ(40)及び第2のバネ(42)が、ポンプ(10)に作動油を充填することを補助するために、1psi〜4psiの圧力を発生させる。図示の実施例及び
図3に表わす始動構成では、始動圧力が約2psiとなるように、第1のバネ(40)が取付の際に圧縮されている。
【0015】
図1に表わすポンプ(10)では、ピストン(16)が下死点に位置している。下死点では、ダイアフラム(18)は、外方に撓むのではなく、輸送チャンバの内部に引き戻されている。下死点において、弁スプール(30)は、弁ポート(32)の大部分をカバーしているが、弁ポート(32)を密閉している訳ではない。下死点は、ポンプ(10)が充填されており且つ意図した通りに動作している場合における通常運転位置とされる。
【0016】
図2を参照すると、ピストン(16)は上死点に位置している。ダイアフラム(18)は外方に撓むので、流体が供給される。弁スプール(30)は、弁ポート(32)が僅かに開くように位置決めされている。上死点は、ポンプ(10)が充填されており且つ意図した通りに動作している場合における通常運転位置とされる。
【0017】
図4では、ポンプ(10)は、ピストン(16)が上死点に位置している過充填状態とされる。このような過充填状態では、弁スプール(30)は、スペーサ(44)に接触し且つ第1のバネ(40)を完全に圧縮するように移動される。第1のバネ(40)は、相対的に小さいバネ定数を有している。第1のバネ(40)をさらに圧縮することができないので、荷重によって第2のバネ(42)も圧縮される。このような状態において、弁スプール(30)は、弁ポート(32)が弁スプール(30)によって完全にカバーされるように移動される。さらなる過充填を防止するためには、一般に、第2のバネ(42)が相対的に大きいバネ定数を有しているので、第2のバネ(42)が非常に僅かに撓むことのみが必要とされることに留意すべきである。第1のバネ(40)及び第2のバネ(42)は、非常に単純な構成で過充填を制限するように構成されているので、従来技術に基づくシステムのように、特別なチャネル、導管、又は他の変更をピストン(16)及び/又はシリンダ(14)に加える必要がないことに留意すべきである。さらに、本発明におけるシステムは、信頼性が高く、製造コストが比較的安いが、ポンプ(10)の損傷を防止するために自動的に過充填を制限することができる。
【0018】
図5は、圧力と第1のバネ(40)及び第2のバネ(42)に及ぼす当該圧力の影響との関係を表わす。図示の実施例については、ポンプは、ダイアフラム(18)の等価断面積とされる4.9平方インチのピストン面積を有している。従って、ダイアフラム(18)によって作用される力を当該等価断面積で除算した結果は、数式P=F/Aに基づくダイアフラム(18)に作用する圧力である。ここで、Pは圧力であり、Fは力であり、Aは面積である。第1のバネ(40)のバネ定数は100psiであるので、撓みが1.5インチであり且つ断面積が4.9平方インチである場合には、結果として圧力は約10psiとなる。通常運転では、第1のバネ(40)及び第2のバネ(42)は、2psi〜5psiの圧力を発生させる。さらなる圧力がダイアフラム(18)に加わると、結果として故障し得ることに留意すべきである。圧力が小さければ、充填が困難となり、必要有効吸込ヘッド(NPSHR)が大きくなる。さらに、図示の構成では、ピストン(16)が上死点且つ過充填位置にあり、且つ、ダイアフラム(18)がマニホールドに接触する寸前である場合に、圧力は、約10psi〜約15psiである。実際には、ポンプ(10)が15psiより小さい圧力の真空状態を発生させるように、且つ、最大15psiの圧力が通常許容可能とされるように、作動油をチャンバに向かって駆動させる圧力を大気圧(海面で約14.7psi)より低く維持することが望ましい。
【0019】
本発明が、単純且つ高信頼の過充填リミッタを具備する信頼性が高いダイアフラムポンプ(10)を提供することに留意すべきである。過充填リミッタは、単純且つ信頼性が高く、自動的に機能する。さらに、ダイアフラムポンプ(10)は、過充填制限システムのために簡単な変更のみを必要とする。
【0020】
しかしながら、本発明の構造及び機能の詳細と共に、本発明の多数の特徴及び利点について上述したが、その開示内容は、説明を目的とするにすぎず、特に部品の形状、大きさ、及び配置については、本発明の技術的範囲から逸脱しない限り、特許請求の範囲に記載の用語についての広義の意味の最大の範囲内において具体的に変更可能である。
【符号の説明】
【0021】
10 ダイアフラムポンプ
12 ポンプハウジング
14 シリンダ
16 往復ポンプ
18 ダイアフラム
20 ポンプチャンバ
26 プランジャ
28 穴
30 弁スプール
32 弁ポート
34 キャビティ
40 第1のバネ
42 第2のバネ
44 可動式スペーサ
50 入口
52 ボール式逆止弁