特許第6538327号(P6538327)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6538327デッケルシステムを備える押出ダイ及びその使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6538327
(24)【登録日】2019年6月14日
(45)【発行日】2019年7月3日
(54)【発明の名称】デッケルシステムを備える押出ダイ及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 48/31 20190101AFI20190625BHJP
【FI】
   B29C48/31
【請求項の数】11
【外国語出願】
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-208530(P2014-208530)
(22)【出願日】2014年10月10日
(65)【公開番号】特開2015-74230(P2015-74230A)
(43)【公開日】2015年4月20日
【審査請求日】2017年10月10日
(31)【優先権主張番号】14/051,209
(32)【優先日】2013年10月10日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391019120
【氏名又は名称】ノードソン コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】NORDSON CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【弁理士】
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100107401
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 誠一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100120064
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 孝夫
(74)【代理人】
【識別番号】100154162
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 浩輔
(74)【代理人】
【識別番号】100182257
【弁理士】
【氏名又は名称】川内 英主
(72)【発明者】
【氏名】ジョーダン エル.セディヴィ
【審査官】 辰己 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−166083(JP,A)
【文献】 米国特許第05505609(US,A)
【文献】 特開2013−180558(JP,A)
【文献】 特開平07−047587(JP,A)
【文献】 米国特許第05395231(US,A)
【文献】 特開平08−142158(JP,A)
【文献】 実開昭62−114717(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C48/00−48/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出ダイであって、該押出ダイは、マニホールドと、内部流路と、端領域を有するオリフィスと、内部デッケルシステムとを備え、該内部デッケルシステムは、下流内部デッケル部材と、デッケルロッドと、カム部材と、カムコントローラーとを備え、前記下流内部デッケル部材は前記内部流路内に位置し、前記デッケルロッドと並んだ下流縁を有し、前記カム部材は、前記カムコントローラーの作動に応じて、前記カム部材が前記デッケルロッドに接触し、前記オリフィスの端領域をシールするよう前記デッケルロッドに力を加えるように構成されている、押出ダイ。
【請求項2】
前記内部流路は前記マニホールドから前記オリフィスまで延び、前記内部デッケルシステムは、前記マニホールド内に位置する上流内部デッケル部材を更に有し、前記下流内部デッケル部材は、前記内部流路内の前記上流内部デッケル部材と前記デッケルロッドとの間に位置する唯一の内部デッケル部材である、請求項1に記載の押出ダイ。
【請求項3】
前記下流内部デッケル部材は凹所を画定し、該凹所には前記カム部材が収まり、前記押出ダイは、前記カム部材が隣接して取り付けられる端部プレートを更に備え、前記凹所は、前記下流内部デッケル部材と、前記端部プレートと、前記デッケルロッドとによって集合的に囲まれる、請求項1に記載の押出ダイ。
【請求項4】
前記カム部材が隣接して取り付けられる端部プレートを更に備え、前記下流内部デッケル部材は、高さと、長さと、先端領域と、後端領域とを有し、前記後端領域は、前記先端領域よりも前記端部プレートに対して近くにあり、前記高さは、前記後端領域に沿った高さよりも前記先端領域に沿った高さの方が大きい、請求項1に記載の押出ダイ。
【請求項5】
前記カム部材は、前記カムコントローラーの作動に応じて、枢動点の周りに回転するように構成される、請求項1に記載の押出ダイ。
【請求項6】
前記カム部材は、ローブ及び軌道面を有する略円盤形状の構成を有し、前記軌道面は、前記カムコントローラーの作動に応じて、前記デッケルロッドとカム作用する、請求項1に記載の押出ダイ。
【請求項7】
前記押出ダイは、前記カム部材が隣接して取り付けられる端部プレートを更に備え、前記カムコントローラーは細長い本体を有し、該細長い本体は、前記端部プレートの開口を通って延び、前記押出ダイの外側に位置する近位端と前記押出ダイの内側に位置する遠位端とを有し、前記近位端は、前記遠位端を強制的に前記カム部材に押し当てるように可動である、請求項1に記載の押出ダイ。
【請求項8】
前記細長い本体は、前記近位端の回転に応じて軸方向に動き、前記遠位端が前記カム部材に強制的に当接し、該カム部材を動かすように構成される、請求項7に記載の押出ダイ。
【請求項9】
前記カムコントローラーは、雄ねじ付きの細長い本体を有するとともに、近位端及び遠位端を有し、前記細長い本体は、前記近位端の回転に応じて軸方向に動くように構成され、前記遠位端は転可能なカム部材に強制的に当接するようになっており、前記回転可能なカム部材は前記カムコントローラーの作動に応じて枢動する、請求項に記載の押出ダイ。
【請求項10】
前記カム部材は、ローブ及び軌道面を有する略円盤形状の構成を有し、前記軌道面は、前記カムコントローラーの作動に応じて前記デッケルロッドとカム作用する、請求項に記載の押出ダイ。
【請求項11】
前記下流内部デッケル部材は凹所を画定し、該凹所内には前記カム部材が収まり、前記押出ダイは、前記カム部材が隣接して取り付けられる端部プレートを更に備え、前記凹所は、前記下流内部デッケル部材と、前記端部プレートと、前記デッケルロッドとによって集合的に囲まれる、請求項10に記載の押出ダイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デッケルシステムを備える押出ダイに関し、より詳細には、押出ダイの出口オリフィスをシールするデッケルシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
薄いプラスチックフィルムを押し出す押出ダイは、ダイの長さにわたって延在するオリフィスを有する。動作時、溶融ポリマーが、圧力下でダイの内部流路を通って流れ、オリフィスを介してダイから出る。押出ダイを使用して製造される薄いプラスチックフィルムの幅を制御するために、例えば、より幅広又はより幅狭のプラスチックフィルムシートを作成するために、押出ダイはデッケルシステムを備える。使用時、デッケルシステムはダイの内部流路に挿入され、デッケルシステムが占有するダイのその部分を通って押出物が流れることを防止する。このように、デッケルシステムは、溶融ポリマーが通って流れることができるダイオリフィスの幅と、それに対応して、ダイを使用して製造される押出プラスチックフィルムの幅とを調整する。
【0003】
押出ダイ向けのデッケルシステムは種々の構成を有することができる。押出ダイのデッケルは、ダイの内部、ダイの外部、又はダイの内部及び外部の双方に備えられる。通常、内部デッケルは、デッケルクイル(deckle quill)、フラグ又はプラグ、及びデッケルロッドと呼ばれる1つ又は複数の内部デッケル部材を備える。例えば、内部デッケルは、クイルと呼ばれる上部デッケル部材と、フラグ又はプラグと呼ばれる下部デッケル部材と、下部デッケル部材の下方に位置付けられるデッケルロッドとを含むことができる。種々の内部デッケル構成部材が、押出ダイの内部流路の種々のセクションを埋めるように機能する。例えば、デッケルロッドは通常、押出ダイの遷移ゾーンに位置付けられ、ダイの内部通路のその部分を塞ぐ。概して、遷移ゾーンは内部通路がオリフィスに向かって狭まる場所である。
【0004】
内部デッケルを備える押出ダイが直面する問題は、デッケルロッドとダイの内壁との間の適切なシール接触の欠如である。デッケルロッドは、製造公差、構成部材の熱膨張、構成部材の摩耗、又は他の問題に起因して、内部通路を適切にシールしない場合がある。このことにより、ダイオリフィスの端領域付近における、デッケルロッドがシール接触しない領域から、溶融ポリマーが漏出する結果となる場合がある。これが起こると、溶融ポリマーがダイの端領域で蓄積し、押し出されるフィルムの不均一な幅及び厚さをもたらす場合がある。さらに、ポリマーの蓄積により、デッケルシステムの構成部材の動きが妨げられ、交換及び保守管理コストの増大につながる場合がある。
【発明の概要】
【0005】
包括的に、本開示は、デッケルシステムを備える押出ダイに関する。デッケルシステムは、押出ダイから排出する押出物の幅を制御するのに用いられる。デッケルシステムは、内部デッケル部材の下流に位置付けられるデッケルロッドを備える。概して、デッケルロッドは、内部通路が出口オリフィスに向かって狭まる押出ダイの端領域をシールするように機能する。いくつかの実施形態では、デッケルシステムは、デッケルロッドと係合するカム部材を有する。カム部材は、デッケルロッドに押し付けて、出口オリフィスをシールするように、狭まる出口オリフィスにデッケルロッドを付勢する(forces)力を提供することができる。
【0006】
1つの実施形態では、マニホールドと、内部流路と、端領域を有するオリフィスと、内部デッケルシステムとを有する押出ダイが記載されている。本実施形態によると、該内部デッケルシステムは、下流内部デッケル部材と、デッケルロッドと、カム部材と、カムコントローラーとを備える。前記下流内部デッケル部材は前記内部流路内に位置し、前記デッケルロッドと並んだ下流縁を有する。本実施形態は、前記カム部材が、前記カムコントローラーの作動に応じて、前記カム部材が前記デッケルロッドに接触し、それにより、前記オリフィスの端領域をシールするよう前記デッケルロッドに力を加えるように構成されていることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】押出ダイ及びデッケルシステムを備える押出ダイシステムの斜視図である。
図2図1の実施形態の押出ダイとデッケルとの間の接合部の分解図である。
図3図2に示されているB−Bの線に沿った、図2の押出ダイの断面図である。
図4図1に示されているA−Aの断面線に沿った、図1の押出ダイシステムの断面図である。
図5図4のデッケルシステムの分解図である。
図6図4のデッケルシステムの分解図である。
図7】流路と、出口オリフィスと、内部デッケルシステムとを備える押出ダイを動作させる一例の技法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図面は、本発明の特定の実施形態の例示であり、したがって本発明の範囲を限定しない。図面は必ずしも縮尺通りではなく、以下の詳細な記載において提供される説明と合わせて用いるように意図されている。本発明の実施形態は添付の図面に関連して以下で説明される。図面において同様の符号は同様の要素を示している。
【0009】
以下の詳細な記載は、本質的に例示であり、本発明の範囲、適用性、又は構成をいかようにも限定することを意図していない。むしろ、以下の記載は本発明の実施例に対するいくつかの実際的な例示を提供する。構造、材料、寸法、及び製造プロセスの例は、選択された要素として提供され、他の全ての要素は、本発明の技術分野における当業者には既知であるものを用いる。当業者は、示されている例の多くが種々の好適な代替形態を有することを理解するであろう。
【0010】
薄いプラスチックフィルムの製造プロセスにおいて、押出ダイがフィードブロックの下流に位置付けられる。多層化装置がしばしばフィードブロックと押出ダイとの間に位置付けられる。動作時、フィードブロックには、多層フィルムを形成するポリマー材料の少なくとも1つの流れが供給される。多層フィルムはフィードブロックから押出ダイに向かって運ばれる。押出ダイは、押し出されるプラスチックフィルムにその最終形状を与え、また、溶融ポリマーがダイを通って入口マニホールドから出口オリフィスに均一に流れるように概して設計されている。
【0011】
押出ダイから排出される押出物の幅を制御するために、押出ダイはデッケルシステムを備える。デッケルシステムはダイの内部流路に挿入され、デッケルシステムが占有するダイのその部分を通って押出物が流れることを防止する。デッケルシステムは、ダイの内部通路内に位置付けられる少なくとも1つの内部デッケル部材を備える。デッケルシステムは、内部デッケル部材の下流に、例えば、内部デッケル部材の下流終端縁に接触して位置付けられるデッケルロッドも備える。概して、デッケルロッドは、内部通路が出口オリフィスに向かって狭まる、押出ダイの端領域をシールするように機能する。
【0012】
以下でより詳細に記載されるように、本開示の実施形態は、デッケルロッドに作動的に連結されるカム部材を有するデッケルシステムを提供する。カム部材はデッケルロッドに係合し、デッケルロッドを押出ダイの端領域に向けて、例えば、押出ダイの収束壁面に接触させて方向付ける力を提供する。カム部材によって発生された力により、デッケルロッドは、押出ダイのデッケルロッドが占有する領域を、デッケルロッドがカム部材に押圧されていない場合よりも効果的にシールすることができる。さらに、カム部材をカムコントローラーに連結することにより、カム部材によって印加される押圧力の大きさを調整することができ、例えば、デッケルロッドとダイ面との間の製造公差、構成部材の熱膨張、構成部材の摩耗等に対して補償する。
【0013】
図1は、押出ダイ8及び内部デッケルシステム10(本明細書では「デッケルシステム10」と呼ぶ)を備える押出ダイシステム6の斜視図である。押出ダイ8は入口(図1には示されていない)及び出口オリフィス12を有し、上記入口を通ってポリマー材料がダイに入り、出口オリフィス12を通って押出物が排出される。押出ダイ8は、デッケルシステム10に取り付けられ、出口オリフィス12の幅と、それに対応してダイを使用して製造されるポリマーシートの幅とを調整する。
【0014】
図1の実施形態では、デッケルシステム10は、端部プレート16と支持プレート18との間に配置されているフレーム部材14を備える。デッケルシステム10はまた、支持プレート18に接続しているデッケルロッド20と、押出ダイ8の内部の内部デッケル部材に接続している支持ロッド22とを備える。押出物を通過させて排出することができる出口オリフィス12の幅を調整するように、支持プレート18は端部プレート16方向にフレーム部材14に沿って可動である。支持プレート18を端部プレート16方向に前進させることにより、支持ロッド22が内部デッケル部材を押出ダイ出口を更に横切って押し、また、デッケルロッド20が押出ダイ出口を更に横切って前進し、出口オリフィス12の排出幅を縮小する。反対に、支持プレート18を端部プレート16から離すように後退させることにより、内部デッケル部材及びデッケルロッド20が後退し、出口オリフィス12の排出幅を拡大する。いくつかの実施形態では、押出ダイシステム6は2つのデッケルシステム10を備え、押出ダイ8の各側面に1つずつのデッケルシステムが位置付けられ、いずれの側面からも出口オリフィス12の排出幅を制御する。いずれの場合も、支持プレート18の位置を調整することによって出口オリフィス12が所望の幅に設定されると、支持プレートは通常、押出プロセス中、固定位置に保持され固定幅のポリマーフィルムを生成する。
【0015】
デッケルシステム10を押出ダイ8に接続するように、デッケルシステムをダイに取り付けて、種々の機械的な固定要素によって固定することができる。図2は、図1の実施形態の押出ダイ8とデッケルシステム10との間の接合部の分解図である。図示のように、デッケルシステム10の端部プレート16は、押出ダイ8の端部24に取り付けられるように構成されている。端部プレート16は、ボルトアセンブリ等の機械的な締結具26によって、押出ダイ8に結合することができる。代替的に、端部プレート16は、押出ダイ8の端部24に溶接又は別様に固定することができる。デッケル端部プレート16を押出ダイ8に取り付ける際、支持ロッド22をダイの内部の内部デッケル部材に接続することができ、支持ロッドの動きにより内部デッケル部材を動かすようになっている。さらに、デッケルロッドを押出ダイの内部と連通して設置するために、デッケルロッド20は、端部プレート16を通して据え付けられ、デッケルロッドを出口オリフィス12の排出幅を制御するように、ダイの長さに沿って制御可能に並進させることができる。
【0016】
支持ロッド22に連結された内部デッケル部材と、デッケルシステム10のデッケルロッド20とは、押出ダイ8の内部通路内を移動して、動作中、溶融ポリマーを流入させることができるダイの幅を調整するように構成されている。図3は、図2に示されているB−Bの線に沿った、図2の押出ダイ8の断面図である。図3は、押出ダイの1つの特定の構成を示すが、本開示に係るデッケルシステムは任意の好適な押出ダイとともに用いることができ、本開示はこれに関して限定されないことが理解されるべきである。
【0017】
図3の実施形態では、押出ダイ8は少なくとも1つのダイジョー(die jaw)を備え、図示されている実施形態では、このダイジョーは2つの向かい合うダイジョー50、52を備える。ダイジョー50、52は、入口54から出口オリフィス12に延びる流路を形成する。流路は、マニホールド56と、内部流路58と、出口オリフィス12とを含む。動作中、溶融ポリマーは入口54において押出ダイに入り、マニホールド56及び内部流路58を通って移動し、出口オリフィス12において排出される。温度センサー(図示せず)に連結している1つ又は複数のプロセスヒーター(図示せず)を内部流路58に沿って備え、押出ダイ8を使用して製造される押出フィルムの特性を制御することができる。さらに、ダイジョー50、52間の間隔を機械的な駆動部材等の調整機構によって調整し、ダイを使用して生成される押出フィルムの厚さを制御することができる。機械式又は油圧式の駆動システムは、通常、押出ダイ8に連結され、ダイジョー50、52間のこの間隔を制御する。
【0018】
押出ダイ8に入るポリマーはマニホールド56に移る。通常、マニホールド56は押出ダイ内の拡大した空間(opening)であり、それにより、ポリマーが入口54から入って流れ、ダイの幅にわたって広がり、その後、比較的狭い内部流路58に入る。図3の実施形態では、マニホールド56は細長い、すなわち涙滴形の断面を有するように示されているが、異なる断面形状が可能であり予期できる。異なる断面形状を、例えば、押出ダイ8の幾何学形状及びサイズに応じて用いてもよい。
【0019】
マニホールド56のサイズ又は形状とは独立に、マニホールドは内部流路58とともに連続的な流れ経路を形成する。内部流路58の第1の部分は、しばしば「プレランドチャネル」60と呼ばれ、一方、内部流路58の第2の部分は、しばしば「最終ランドチャネル」62と呼ばれる。いくつかの実施形態において、遷移ゾーン64は、プレランドチャネル60と最終ランドチャネル62とをつなぐ。このような実施形態において、遷移ゾーン64は、プレランドチャネル60の下流端領域から最終ランドチャネル62の上流端領域まで延在することができる。例えば、通常、遷移ゾーン64は、内部流路の壁がプレランドチャネルの断面幅を有する状態から最終ランドチャネルの断面幅を有する状態に収束及び遷移する、内部流路58のセクションである。いくつかの実施形態において、遷移ゾーン64はダイジョー50、52の内壁面によって形成される。この内壁面は端部壁66を形成するように収束する。端部壁66は、例えば、曲面形状又は平坦形状を有する。動作中、ポリマーが入口54において押出ダイ8に入り、マニホールド56に移動する。ポリマーはマニホールド56から内部流路58に流入し、プレランドチャネル60に始まり、遷移ゾーン64に収束し、最終的に、最終ランドチャネル62を通り過ぎてオリフィス12を通って出る。
【0020】
押出ダイ8から押し出されるフィルムの幅を制御するように、デッケルシステム10(図1)は、ダイジョー50、52間に延びる流れチャネルに挿入され、ポリマーがダイを通って流れることができる領域を塞ぐ。図4は、図1に示されているA−Aの断面線に沿った、図1の押出ダイシステム6の断面図である。この実施形態に示されているように、デッケルシステム10は、1つ又は複数の内部デッケル部材70(以下では「内部デッケル部材70」と呼ぶ)と、上述のデッケルロッド20と、カム部材72と、カムコントローラー74とを備える。内部デッケル部材70及びデッケルロッド20は、押出ダイ8の横軸A−Aに沿って横断方向に動き、押出ダイの動作幅を拡大及び縮小する。カム部材72は、カムコントローラー74に作動的に連結し、いくつかの実施形態では、カムコントローラーからの圧力に応じて枢動的に回転可能である。カムコントローラー74を作動させる際、カム部材72はデッケルロッド20に接触し、出口オリフィス12に隣接する押出ダイの端領域をシールするようにデッケルロッドに力を加える。
【0021】
内部デッケル部材70は、ダイジョー50、52(図3)間の流路内に位置するように構成(例えば、サイズ決め及び/又は形状付け)され、それにより、1つ又は複数の内部デッケル部材が占有する通路のその部分をポリマーが通ることを防ぐ。1つの実施形態において、内部デッケル部材70は、マニホールド56(図3)の少なくとも一部内に位置し、それによりその部分を埋めるように設計される。例えば、内部デッケル部材70は、デッケルが位置付けられる領域内でマニホールド56の総断面領域を埋めてもよい。マニホールド56に位置することに加えて又はそれに代えて、内部デッケル部材70は、プレランドチャネル60(図3)の少なくとも一部内に位置し、それによりその部分を埋めるように設計される。例えば、1つ又は複数のデッケル部材70は、デッケルが位置付けられる領域内でプレランドチャネル60の総断面領域を埋めてもよい。図4に示されている実施形態では、内部デッケル部材70は、図に示されている正/負のX方向に支持ロッド22が並進することによって、横軸A−Aに沿って動くことができる。
【0022】
デッケルロッド20は、押出ダイ8の出口オリフィス12の近位の端領域76内に位置付け可能である。ダイジョー50、52間の流路が遷移ゾーン64(図3)を提供する実施形態では、デッケルロッド20は遷移ゾーン内に位置付け可能であり、デッケルロッドが占有する押出ダイのその部分を通ってポリマーが流れることを防ぐ。したがって、内部デッケル部材70及びデッケルロッド20は、協働して、流路の種々のセクションを塞ぐことができる。ポリマーはそうでなければ流路が内部デッケル部材及びデッケルロッドで埋められていない場所を通って流れる。例えば、図3を参照すると、内部デッケル部材70はマニホールド56及びプレランドチャネル60の少なくとも一部を埋めることができ、一方、デッケルロッド20は遷移ゾーン64を埋める。
【0023】
更に図4を参照すると、デッケルロッド20は、最小で押出ダイ8の断面幅の半分に等しい長さを有する細長い部材として示されている。デッケルロッド20は、押出ダイアセンブリの全長に相当する長さの円筒形部材とすることができる(「フルレングス」デッケルロッドと呼ぶこともある)。デッケルロッド20は、押出ダイ8の端部プレート16に摺動可能に受け取られる。端部プレート16は、ダイの横軸A−Aに沿ってデッケルロッド20を受け取るような形状である開口78を有することができる。デッケルロッド20は、保持部材80を調整することによって、横軸A−Aに沿って動くことができる。1つの実施形態において、保持部材80は六角頭ボルトとワッシャーとのアセンブリである。このアセンブリは、デッケルロッド20が横断方向に動くのを防止するように固定可能であるとともに、デッケルロッド20が端部プレート16の開口78を通って横断方向に摺動できるように解除可能である。操作者は、保持部材80を緩めて、デッケルロッドを前進又は後退させることによってデッケルロッド20の位置を調整し、その後、保持部材を締め、それにより、押出ダイ8を使用して製造される押出フィルムの幅を調整することができる。
【0024】
簡潔に上述したように、図4の実施形態のデッケルシステム10は、カム部材72及びカムコントローラー74を備える。カムコントローラー74は、カム部材72を制御してデッケルロッド20と接触させ、デッケルロッドを出口オリフィス12に向かって下流方向(例えば、図4に示されている負のZ方向)に付勢する。例えば、カム部材72がデッケルロッド20に及ぼす力は、このロッドを押出ダイ8の端領域76における収束内壁面と同じ高さに(例えば、接触させて)押す。このことは、例えば、デッケルロッド20の周囲の溶融ポリマーの漏出を防止することにより、デッケルロッドがカム部材72によって押出ダイの端領域に強制的に押されない場合よりも、押出ダイ8の端領域に効果的なシールを提供する。
【0025】
図5及び図6は、押出ダイ8の内部に位置付けられる、図4のデッケルシステム10の分解図である。この実施形態では、内部デッケル部材70は、先端領域90と、後端領域92と、先端領域と後端領域との間に延在する下流縁94とを有する。さらに、内部デッケル部材70は、端部プレート16に隣接する凹所96を画定し、凹所96内にはカム部材72が位置付けられる。カム部材72は、デッケルロッド20に隣接して位置付けられ、ロッドに当接し、例えば、ロッドを押出ダイの内壁面、例えば遷移ゾーン64の収束壁面に向かって付勢することができる。
【0026】
内部デッケル部材70の先端領域90は端部プレート16の遠位に配置され、押出ダイ8の流路に前進可能な前縁を有する。後端領域92は端部プレート16の近位に配置され、図示されている実施形態では、端部プレートと接触しているように示されている。動作時、ポリマーは、内部デッケル部材70の先端領域90と隣接及び接触して流れることができる。この場合、内部デッケル部材は、内部デッケル部材の端領域の後ろに(例えば近位に)延在する流路の部分にポリマーが流れることを防止する障壁として機能する。出口オリフィス12の幅を調整するように、ロッド22は、内部デッケル部材70を、マニホールド56及びプレランドチャネル60内で、端部プレート16から離れるように遠位に押すことができる。
【0027】
いくつかの実施形態において、内部デッケル部材が押出ダイ内を並進する際、カム部材72は内部デッケル部材70とともに(例えば凹所96において)移動する。図5及び図6に示されている実施形態を含む他の実施形態において、内部デッケル部材70が端部プレート16から離れるように並進する際、カム部材72は端部プレート16に隣接して静止したままである。そのような実施形態において、カム部材72は、端部プレート16に隣接するデッケルロッド20にカム作用する(cams)。カム部材72がデッケルロッド20に作用して及ぼす下流方向の力は、ロッドを下流方向に押す。この力は、端部プレート16に直に隣接して、カム部材72がデッケルロッド20に作用する場所で最大とすることができるが、デッケルロッドの端部プレート16から遠位に位置付けられる遠位端にも作用することができる。
【0028】
カム部材72は、デッケルロッド20に作用するカム力(camming force)を提供するのに種々の構成を有することができる。例として、カム部材72は、カムコントローラー74の作動に応じてデッケルロッド20に当接する回転部品又は摺動部品とすることができる。いくつかの実施形態において、カム部材72は、回転運動を直線的な力に変換してデッケルロッドに作用する。例えば、カム部材72は、不規則形状を有する偏心輪又は偏心円柱とすることができる。
【0029】
図5及び図6に示されている実施形態では、カム部材72は、ローブ及び外側押圧面98を有する略円盤形状の構成を有する。カム部材72は、カムコントローラー74の作動に応じて枢動点100の回りに回転する。例えば、ねじ又はボルトを押出ダイ8の側壁を通して挿入し、カム部材72をねじ又はボルトに取り付けることによって、カム部材72に対して回転軸を形成することができる。カム部材72は、カムコントローラー74の作動に応じて、デッケルロッド20とカム作用する。カム部材72は、デッケルロッド20を、例えば、遷移ゾーン64内で押出ダイ8の内壁面に接触させて下流方向に押し、それにより出口オリフィス12の端領域をシールすることができる。
【0030】
いくつかの実施形態において、カム部材72は、単一の場所でデッケルロッド20とカム作用し、それによりロッドの単一の点に圧力を印加するように構成される。例えば、カム部材72は、端部プレート16から遠位に離間しているが、デッケルロッド20の先端(例えば遠位端)から近位に離間している単一の場所で、デッケルロッド20とカム作用することができる。他の実施形態において、カム部材72は、ロッドの長さにわたって複数の場所でデッケルロッド20とカム作用する。そのような実施形態において、カム部材72は、カム部材の複数の部分がロッドの異なる位置を同時に押すような形状にすることができる。
【0031】
通常、カム部材72はデッケルシステム10内に位置決めされ、カム面98がデッケルロッド20の上流縁103を押すことができるようになっている。デッケルロッド20は、通常、内部デッケル部材70の下流縁94に隣接して、また、いくつかの実施形態では接触して位置付けられる。したがって、カム部材72のカム面98は内部デッケル部材70の下流縁94と同一平面に位置付けることができ、カム面98は下流縁と略同じ高さになる。他の実施形態において、カム面98は、下流縁94によって画定される平面の下方に、下流方向に突出してもよい。
【0032】
図5及び図6の実施形態では、カム部材72は凹所96内に位置付けられる。凹所96は内部デッケル部材70の先端領域90と後端領域92との間の切欠き部とすることができる。この切欠き部は、例えば、内部デッケル部材70が端部プレート16に接して位置付けられると、カム部材72を部分的に囲むとともに拘束するように構成(例えば、サイズ決め及び/又は形状付け)される。凹所96を提供することにより、内部デッケル部材70は、内部デッケル部材の先端領域90と後端領域92との間の長さにわたって可変の高さを有することができる。例えば、図5及び図6に示されているように、内部デッケル部材70は、後端領域92に沿った高さ107よりも大きい高さ105を先端領域90に沿って有することができる。
【0033】
カム部材72は、カムコントローラー74によって作動される。図5及び図6の実施形態では、カムコントローラー74は、近位端104と遠位端106との間に延在する細長い本体102を有する。細長い本体102は近位端104の回転に応じて軸方向に動き、遠位端106を強制的にカム部材72に当接させて、それによりカム部材72を動かす。1つの実施形態において、カムコントローラー74の細長い本体102はねじ部(図示せず)を有する。このねじ部は端部プレート16のねじ開口101(図4)に螺合することができる。このような実施形態において、細長い本体102は、端部プレートの雌ねじ開口101と係合する雄ねじ部を有する。
【0034】
例えば、図6の実施形態において、カムコントローラー74は雄ねじ部を有し、雄ねじ部は右ねじの構成を有する。カムコントローラー74の近位端104が時計回り方向108に回転されると、カムコントローラーの遠位端106が方向110に、押出ダイ8の内部に前進する。近位端104の回転方向を逆向きにして、遠位端を方向112に引き出すことによって、遠位端の移動方向を逆向きにすることができる。
【0035】
カムコントローラー74がカム部材72に作用することを可能にするために、カムコントローラーの細長い本体102は、端部プレート16の開口101(図4)を通り抜けてカム部材72に押し当たるのに十分な長さである。カムコントローラーの長さは、押出ダイ8の横軸に対して平行な軸に沿った、近位端104と遠位端106との間の距離である。いくつかの実施形態において、カムコントローラー74の細長い本体102は、様々な大きさの力でカム部材72に強制的に当接し、それにより、デッケルロッド20によって印加されるシール圧力の大きさが変動するように構成されている。そのような実施形態において、カムコントローラー74の遠位端106を押出ダイ8の内部により深く移動させることによって、より大きいシール圧力を印加し、それにより、カム部材72をより大きい力でデッケルロッド20に押し付けることができる。反対に、カムコントローラー74の遠位端106をカムコントローラーから離すように動かすことによって、より小さいシール圧力を印加することができる。カム部材72及びカムコントローラー74は、図5及び図6に関連して、偏心輪及びねじロッドとして概して記載されているが、本開示はそのような構成に限定されないことが理解されるべきである。電動式カムコントローラー及びリニアアクチュエーター等の他のカム部材及びカムコントローラーの構成を、機能性をいかようにも損なわず、図5及び図6に示されているカム部材72及びカムコントローラー74の代わりに用いることができる。
【0036】
図5及び図6に示されているデッケルシステム10は、内部デッケル部材70を備える。上述したように、内部デッケル部材70は、押出ダイ8の流路内に位置するように構成される1つ又は複数のデッケル部材を形成することができる。内部デッケル部材70の数及び構成は、例えば、押出ダイ8のサイズ及び構成に応じて変わることができる。図示されている実施形態では、デッケルシステム10は、上流デッケル部材114及び下流デッケル部材116を備え、単一の内部デッケル部材70を画定するために、それらは、一体的に形成される(例えば、ともに永久的に結合される)。デッケルクイル(deckle quill、羽)と呼ばれる、上流デッケル部材114は、押出ダイ流路のマニホールド領域を占有する。デッケルフラグ又はデッケルプラグと呼ばれる、下流デッケル部材116は、上流デッケル部材から下流流れ方向に位置付けられ、プレランドチャネル60を占有する。他の実施形態では、上流デッケル部材114及び下流デッケル部材116は永久的に結合していない別個の部材である。さらに、また他の実施形態では、デッケルシステム10は、上流デッケル部材114及び下流デッケル部材116を両方は備えず、代わりに、上流デッケル部材114のみ又は下流デッケル部材116のみを備える。
【0037】
押出ダイ及びデッケルシステムを備える押出ダイシステムは、図1図6に応じて上述したように、種々の異なる構成を有することができる。図7は、流路と、出口オリフィスと、内部デッケルシステムとを有する押出ダイを動作させる一例の技法を示すフロー図である。押出ダイは、デッケルロッドと、回転可能なカム部材と、カムコントローラーとを有することができる。示されているように、この技法は、カムコントローラーを係合させること(200)と、カム部材を作動させること(202)と、デッケルロッドに力を加えること(204)とを含む。
【0038】
図7の技法では、操作者は、例えば、ねじ又はねじロッドを回すことによって、電気機械ドライバーを作動させることによって、油圧式ドライバーを作動させることによって、又は別様にカムコントローラーと相互作用することによって、カムコントローラーを係合させる(200)ことができる。カムコントローラーの係合(200)に応じて、カムコントローラーがカム部材を作動させる(202)。1つの実施形態において、カムコントローラーはカム部材に物理的に押し付けられる。別の実施形態において、カムコントローラーはカム部材の枢動軸を回転させる。それとは関係なく、カムコントローラーはカム部材を回転させてデッケルロッドとカム作用させる。カム部材とデッケルロッドとの間のカム作用により、オリフィス出口に隣接する押出ダイの端領域をシールするようにデッケルロッドを付勢する(204)。例えば、カム作用により、デッケルロッドが押されて押出ダイの収束内壁に接触し、それにより、押出ダイの壁とデッケルロッドとの間に、溶融ポリマーが通って流れることができない物理的な障壁を設けることができる。
【0039】
記載されてきた種々の例及び他の例は、以下の特許請求の範囲内にある。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7