特許第6538377号(P6538377)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6538377
(24)【登録日】2019年6月14日
(45)【発行日】2019年7月3日
(54)【発明の名称】洗濯機
(51)【国際特許分類】
   D06F 37/04 20060101AFI20190625BHJP
【FI】
   D06F37/04
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-48306(P2015-48306)
(22)【出願日】2015年3月11日
(65)【公開番号】特開2016-168097(P2016-168097A)
(43)【公開日】2016年9月23日
【審査請求日】2018年1月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】503376518
【氏名又は名称】東芝ライフスタイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】特許業務法人 サトー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池田 恭雄
(72)【発明者】
【氏名】久野 功二
(72)【発明者】
【氏名】椎橋 貞人
(72)【発明者】
【氏名】長野 佑太
【審査官】 村山 睦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−057788(JP,A)
【文献】 特開2007−167263(JP,A)
【文献】 特開2013−070832(JP,A)
【文献】 特開2007−054351(JP,A)
【文献】 特開2000−325688(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 37/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底円筒状をなす水槽本体の開口部側に水槽カバーを連結して構成される水槽と、この水槽内に底部の回転軸を中心に回転可能に収容され円筒状をなす胴体の開口部側の端部に環状のバランスリングが設けられた回転槽と、を備え、前記回転槽の回転時に当該回転槽は前記回転軸から離れた前記バランスリング側が傾斜するものにおいて、
前記水槽本体は、筒部と、前記筒部の前端部に内径が前記筒部の内径より径大となるように形成されている径大段部と、を備え、
前記水槽カバーは、後部側が開口した嵌合凹部を備え、前記径大段部の先端部を前記嵌合凹部に挿入して嵌合させることにより前記水槽本体の前部に連結され、
前記水槽は、前記嵌合凹部の内側を形成する内側延長部の先端部と前記径大段部の基端部とで形成される前記水槽本体と前記水槽カバーの繋ぎ目付近の内径が他の部分より大きく形成され、
前記回転槽の前記胴体は、外径が前記バランスリングの外径より大きい径大部を有するとともに、その径大部から前記バランスリングとの連結部分に向けて外径が小さくなるように変化する外径変化部を有していて、
前記胴体にあって外径が最大となる前記径大部から前記外径変化部に変わる起点部が、前記水槽本体と前記水槽カバーの繋ぎ目付近に対応する位置に配置されている洗濯機。
【請求項2】
前記回転槽の前記胴体における前記起点部の外面と前記水槽の内面との間の隙間をA、前記回転槽の前記胴体における前記起点部より底部側の外面と前記水槽の内面との間の隙間をBとした場合において、前記回転槽が底部側を支点にして傾斜し前記胴体の外面と前記水槽の内面との間の隙間が小さくなったとき、前記隙間Aが前記隙間Bより小さくなる請求項1記載の洗濯機。
【請求項3】
前記回転槽の前記胴体には脱水用の孔部が複数設けられていて、前記胴体の前記径大部にあって前記起点部付近に存する孔部において、当該孔部周縁部に形成されるバーリング加工による立上がり部の高さを他の部分の孔部の立上がり部より低く形成するか、または立上がり部を設けていない請求項1または2記載の洗濯機。
【請求項4】
前記回転槽の前記胴体には脱水用の孔部が複数設けられ、前記水槽には、前記回転槽の前記胴体にあって前記起点部から前記バランスリングとの連結部分にかけた部分に対応する部位に乾燥用の排気口が設けられていて、
前記回転槽の前記胴体にあって前記外径変化部には、前記脱水用の孔部を設けていない請求項1または2記載の洗濯機。
【請求項5】
有底円筒状をなす水槽本体の開口部側に水槽カバーを連結して構成される水槽と、この水槽内に底部の回転軸を中心に回転可能に収容され円筒状をなす胴体の開口部側の端部に環状のバランスリングが設けられた回転槽と、を備え、前記回転槽の回転時に当該回転槽は前記回転軸から離れた前記バランスリング側が傾斜するものにおいて、
前記水槽は、前記水槽本体と前記水槽カバーの繋ぎ目付近の内径が他の部分より大きく形成され、
前記回転槽の前記胴体は、外径が前記バランスリングの外径より大きい径大部を有するとともに、その径大部から前記バランスリングとの連結部分に向けて外径が小さくなるように変化する外径変化部を有していて、
前記胴体にあって外径が最大となる前記径大部から前記外径変化部に変わる起点部が、前記水槽本体と前記水槽カバーの繋ぎ目付近に対応する位置に配置され、
前記回転槽の前記胴体には脱水用の孔部が複数設けられていて、前記胴体の前記径大部にあって前記起点部付近に存する孔部において、当該孔部周縁部に形成されるバーリング加工による立上がり部の高さを他の部分の孔部の立上がり部より低く形成するか、または立上がり部を設けていない洗濯機。
【請求項6】
有底円筒状をなす水槽本体の開口部側に水槽カバーを連結して構成される水槽と、この水槽内に底部の回転軸を中心に回転可能に収容され円筒状をなす胴体の開口部側の端部に環状のバランスリングが設けられた回転槽と、を備え、前記回転槽の回転時に当該回転槽は前記回転軸から離れた前記バランスリング側が傾斜するものにおいて、
前記水槽は、前記水槽本体と前記水槽カバーの繋ぎ目付近の内径が他の部分より大きく形成され、
前記回転槽の前記胴体は、外径が前記バランスリングの外径より大きい径大部を有するとともに、その径大部から前記バランスリングとの連結部分に向けて外径が小さくなるように変化する外径変化部を有していて、
前記胴体にあって外径が最大となる前記径大部から前記外径変化部に変わる起点部が、前記水槽本体と前記水槽カバーの繋ぎ目付近に対応する位置に配置され、
前記回転槽の前記胴体には脱水用の孔部が複数設けられ、前記水槽には、前記回転槽の前記胴体にあって前記起点部から前記バランスリングとの連結部分にかけた部分に対応する部位に乾燥用の排気口が設けられていて、
前記回転槽の前記胴体にあって前記外径変化部には、前記脱水用の孔部を設けていない洗濯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、洗濯機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばドラム式の洗濯機においては、軸方向が前後方向の横向きをなす有底円筒状の水槽内に、軸方向が前後方向の横向きをなす有底円筒状の回転槽(ドラム)が回転可能に設けられている。回転槽は、水槽の後部に設けられたモータにより回転駆動される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−57788号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の洗濯機においては、近年、洗濯容量を大きくする大容量化が要望されている。しかし、洗濯機の外殻ごと大きくした場合には、洗濯機の設置スペースも大きくなってしまうため、外殻の大型化はせずに、大容量化をすることが望まれる。
【0005】
そこで、外殻の大型化はせずに洗濯容量を大きくでき、しかも水槽と回転槽との間の隙間を確保できて安全性を確保することができる洗濯機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態の洗濯機は、有底円筒状をなす水槽本体の開口部側に水槽カバーを連結して構成される水槽と、この水槽内に底部の回転軸を中心に回転可能に収容され円筒状をなす胴体の開口部側の端部に環状のバランスリングが設けられた回転槽と、を備え、回転槽の回転時に当該回転槽は回転軸から離れたバランスリング側が傾斜する。水槽本体は、筒部と、筒部の前端部に内径が筒部の内径より径大となるように形成されている径大段部と、を備える。水槽カバーは、後部側が開口した嵌合凹部を備え、径大段部の先端部を嵌合凹部に挿入して嵌合させることにより水槽本体の前部に連結される。水槽は、嵌合凹部の内側を形成する内側延長部の先端部と径大段部の基端部とで形成される水槽本体と水槽カバーの繋ぎ目付近の内径が他の部分より大きく形成されている。回転槽の胴体は、外径がバランスリングの外径より大きい径大部を有するとともに、その径大部からバランスリングとの連結部分に向けて外径が小さくなるように変化する外径変化部を有している。そして、胴体にあって外径が最大となる前記径大部から前記外径変化部に変わる起点部が、水槽本体と水槽カバーの繋ぎ目付近に対応する位置に配置されている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態による洗濯機の概略構成を示す縦断側面図
図2】水槽および回転槽の上部部分を示す縦断側面図
図3】水槽および回転槽の上部部分を拡大して示す縦断側面図
図4】第2実施形態における水槽および回転槽の上部部分を拡大して示す縦断側面図
図5】第3実施形態における水槽および回転槽の上部部分を拡大して示す縦断側面図
図6】第4実施形態における水槽および回転槽の上部部分を拡大して示す縦断側面図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、複数の実施形態による洗濯機について図面を参照しながら説明する。なお、各実施形態において実質的に同一の構成部位には同一の符号を付し、説明を省略する。
(第1実施形態)
第1実施形態について図1から図3を参照して説明する。まず図1において、洗濯機1は、洗濯機能と乾燥機能を備えたドラム式の洗濯乾燥機である。この洗濯機1の外殻を構成する外箱2は、ほぼ矩形の箱状をなしている。外箱2の前面部2a(図1において左側の面)は前下がりのやや傾斜状に形成されていて、この前面部2aに洗濯物出入口3が形成されているとともに、この洗濯物出入口3を開閉する扉4が回動可能に設けられている。
【0009】
外箱2内には水槽5が配設されている。この水槽5は、円筒状をなす筒部6aの後部側の底面部6bが閉塞された有底円筒状をなす水槽本体6と、この水槽本体6の前面開口部側に連結された環状をなす水槽カバー7とを連結して構成されている。水槽5は、これの軸線方向を前後方向に向け、かつ前上がりのやや傾斜状態となるように、サスペンション8を介して弾性的に支持されている。水槽カバー7は、円筒状をなす筒部7aの前部に内方へ張り出す張出し部7bを一体に有していて、張出し部7bの中央部に前面開口部9を有している。水槽カバー7の前部と外箱2の前面部2aの裏側との間には環状をなすべローズ10が設けられていて、水槽カバー7の前面開口部9は洗濯物出入口3と連通している。
【0010】
ここで、水槽本体6と水槽カバー7の連結部分の構成について図2および図3も参照して説明する。水槽本体6の筒部6aの前端部には径大段部11が形成されている。この径大段部11は、内径が筒部6aの内径より径大となるように形成されている。水槽カバー7における筒部7aの後部の外周部側には、後部側が開口した嵌合凹部12が設けられていて、この嵌合凹部12の内側を形成する内側延長部12aが後方に向けて突出している。そして、水槽本体6の径大段部11の先端部を、水槽カバー7における嵌合凹部12に挿入して嵌合させることにより、水槽本体6の前部に水槽カバー7が連結されている。このとき、水槽カバー7における内側延長部12aが、水槽本体6の径大段部11の内側に位置していて、この内側延長部12aの先端部と径大段部11の基端部11aの付近を、水槽本体6と水槽カバー7の繋ぎ目13としている。
【0011】
この場合、合成樹脂製の水槽本体6の筒部6aの内周面6cは、成形時の型抜きの関係で、底面部6b側より前面開口部側が径大となるように抜き勾配が形成されている。また、合成樹脂製の水槽カバー7における筒部7aの内周面7cは、同じく成形時の型抜きの関係で、前部側より後面開口部側が径大となるように抜き勾配が形成されている。このため、水槽5において、水槽本体6の筒部6aと水槽カバー7の筒部7aとの連結部分である前記繋ぎ目13付近の内径は、他の部分より大きく形成されている。
【0012】
水槽5内には、ドラムを構成する回転槽15が回転可能に配設されている。回転槽15は、円筒状をなす胴体16と、この胴体16の後部を閉塞するように設けられた底部部材17と、胴体16の前面開口部側の端部に設けられた環状のバランスリング18により、後部側が閉塞された有底円筒状をなしている。この回転槽15も、水槽5と同様に、軸線方向を前後方向に向け、かつ前上がりのやや傾斜状態となるように配置されている。バランスリング18は、内部に液体が封入される液体バランサにより構成されている。バランスリング18の開口部18aが、水槽5の前面開口部9を通して洗濯物出入口3に連通している。回転槽15内には、洗濯物出入口3、水槽5の前面開口部9およびバランスリング18の開口部18aを通して洗濯物が出し入れ可能に収容される。
【0013】
回転槽15における底部部材17の後面側の中央部には、回転軸19の前端部が連結されている。回転軸19の後端部は、水槽5の閉塞部5bの中央部に設けられた軸受ハウジング20を貫通して後方へ突出している。回転軸19は、軸受ハウジング20内に設けられた軸受21により回転自在に支持されている。回転軸19の後端部は、モータ22におけるロータ23に一体回転するように連結されている。モータ22のステータ24は、軸受ハウジング20の外周部に固定状態に設けられている。モータ22は、ステータ24と、このステータ24に対して回転されるロータ23を備えており、この場合、アウターロータ形のDCブラシレスモータにより構成されている。したがって、回転槽15は、モータ22のロータ23により直接回転駆動される構成となっている。
【0014】
ここで、回転槽15の胴体16は、例えばステンレス鋼板を円筒状に形成したもので、後端部に底部部材17がねじ止めにより連結され、前端部にバランスリング18がねじ止めにより連結されている。底部部材17の外径寸法とバランスリング18の外径寸法はほぼ同じに設定されている。そして、胴体16は、これの前後方向の中間部に、これら底部部材17およびバランスリング18よりも外径が大きな径大部25を有している。したがって、胴体16は、バランスリング18および底部部材17が連結された前後の両端部よりも前後の中間部が径大に形成された、いわゆる中膨れ状態に形成されていて、エクスパンドドラムと称される形態をなしている。
【0015】
胴体16において、これの前部には、径大部25からバランスリング18との連結部分に向けて外径が次第に小さくなるように変化する外径変化部26が形成され、また、後部にも、径大部25から底部部材17との連結部分に向けて外径が次第に小さくなるように変化する外径変化部27が形成されている。前部の外径変化部26および後部の外径変化部27は、ともにテーパ状に形成されている。
【0016】
この場合、胴体16において、最大外径部となる径大部25から前部の外径変化部26に変わる起点部28は、前記水槽本体6と水槽カバー7の繋ぎ目13近傍に配置されている。また、胴体16において、最大外径部となる径大部25から後部の外径変化部27に変わる起点部29は、水槽本体6の底部寄りに配置されている。
【0017】
また、胴体16において、径大部25と前部の外径変化部26とが形成する角度をα、径大部25と後部の外径変化部27とが形成する角度をβとすると、角度αを角度βよりも大きく設定している。胴体16における前部側の外径変化部26の外面と水槽5の内面との間には、断面がほぼ三角形の空間部30が形成されている。また、胴体16における後部側の外径変化部27の外面と水槽5の内面との間にも、空間部31が形成されている。
【0018】
胴体16において、径大部25部分、および前部の外径変化部26部分には、脱水用の孔部33が複数個形成されている。各孔部33はバーリング加工により形成されたものであり、各孔部33の周縁部には、胴体16の外面側へ突出する立上がり部34(図3参照)が形成されている。孔部33は、洗濯運転時には水槽5内の水が通過する通水孔として機能し、乾燥運転時には乾燥用の空気が通過する通気孔として機能する。
【0019】
本実施形態の洗濯乾燥機においては、図示はしないが循環風路が設けられる。この循環風路は、水槽5の外側でかつ外箱2内に位置させて設けられるもので、一端部が水槽5の上部の前部に設けられた排気口35(図2の二点鎖線参照)に接続され、他端部が水槽5の閉塞部6bに設けられた図示しない給気口に接続される。この場合、排気口35は、図2に示すように、回転槽15における胴体16の前部側の前記外径変化部26に臨む位置に位置させていて、前記空間部30に連通している。
【0020】
循環風路には、水槽5内ひいては回転槽15内の空気を当該循環風路を通して循環させる送風機と、回転槽15内に収容された洗濯物を乾燥させるための乾燥手段が設けられる。乾燥手段としては、循環風路内を通る空気を加熱する加熱手段と、循環風路内を通る空気の除湿を行う除湿手段を備えたもので、例えば冷凍サイクルにより構成されるヒートポンプが用いられる。そのヒートポンプにおける凝縮器が加熱手段として用いられ、蒸発器が除湿手段として用いられる。
【0021】
上記構成においては、次のような作用効果を得ることができる。
洗濯物を収容する回転槽15において、胴体16は、バランスリング18および底部部材17よりも径大な径大部25を有している。回転槽15としては、その径大部25を有する分、洗濯物を収容可能な洗濯容量を大きくできる。
【0022】
ここで、特に、湿った洗濯物を収容した回転槽15を高速回転させる脱水運転時においては、洗濯物の偏りなどを要因として、回転槽15は、底部の回転軸19を支点にして当該回転軸19から離れた前部のバランスリング18側が傾斜する状態が発生する。これを脱水槽(回転槽15)の倒れ」という。特に、水槽5内の温度が高いと回転槽15の倒れが大きくなり、この倒れのために水槽5の内面と回転槽15の外面との間の隙間を確保する必要がある。
【0023】
回転槽15において、胴体16に径大部25を設けた構成とした場合、その径大部25の外面と水槽5の内面との間の隙間が狭まり、回転槽15の回転時に径大部25が水槽5の内面に衝突することが懸念されるが、本実施形態においては、次の理由により、そのような懸念を極力解消できる。すなわち、水槽5における水槽本体6は合成樹脂製であり、前述したように、この水槽本体6の筒部6aの内周面6cは、成形時の型抜きの関係で、底面部6b側より前面開口部側が径大となるように抜き勾配が形成されている。また、合成樹脂製の水槽カバー7における筒部7aの内周面7cは、同じく成形時の型抜きの関係で、前部側より後面開口部側が径大となるように抜き勾配が形成されている。このため、水槽5において、水槽本体6の筒部6aと水槽カバー7の筒部7aとの連結部分である前記繋ぎ目13付近の内径は、他の部分より大きく形成されている。
【0024】
また、回転槽15は、脱水回転時等に傾斜する場合、前述したように、後部の回転軸19を支点にして前部側が径方向へ傾斜することになる(図2および図3の二点鎖線の状態参照)。このとき、回転槽15において、最大外径部となる径大部25から前部の外径変化部26に変わる起点部28が水槽5の内面に最も当たりやすくなる。しかし本実施形態においては、この起点部28を、水槽5において内径が最も大きく形成された前記繋ぎ目13付近に対応する位置に位置させているので、その起点部28と繋ぎ目13との間には比較的大きな隙間を確保することができる。このため、回転槽15が回転軸19を支点にして前部側が径方向へ傾斜し、胴体16の径大部25の外面と水槽5の内面との間の隙間が小さくなったとしても、前記起点部28が水槽5の内面に当たることを極力避けることが可能となり、安全性を確保することが可能となる。
【0025】
また、回転槽15の胴体16における前部側の起点部28の外面と水槽5の内面との間の隙間をA、回転槽15の胴体16における前部側の起点部28より底部側の径大部25の外面と前記水槽の内面との間の隙間をBとした場合において、回転槽15が回転軸19を支点に傾斜していない場合の初期の前記隙間A,BをそれぞれA0,B0とした場合、図3に示すように、隙間A0は隙間B0より大きくなっている(A0>B0)。初期隙間A0は例えば13mm、初期隙間B0はそれよりやや小さく設定されている。
【0026】
一方、回転槽15が、脱水回転時等において回転軸19を支点にして傾斜し胴体16の外面と水槽5の内面との間の隙間が小さくなったとき(図2および図3の二点鎖線の状態参照)の前記隙間A,BをそれぞれA1,B1とした場合、図3に示すように、隙間A1は隙間B1よりも小さくなる(A1<B1)。傾斜時の隙間A1は例えば2mm、傾斜時の隙間B1はそれよりやや大きくなっている。
【0027】
また、上記した実施形態においては、循環風路が接続される水槽5の排気口33を、回転槽15における胴体16の前部の外径変化部26と水槽5の内面との間に形成される空間部30に臨む部位に設けた。これによれば、乾燥運転時において、水槽5内の空気が排気口33を通して循環風路側へ流れ易くできる。
【0028】
(第2実施形態)
第2実施形態について図4を参照して説明する。この第2実施形態においては、第1実施形態とは次の点が異なっている。すなわち、回転槽15における胴体16の径大部25にあって前部側の起点部28付近に存する孔部33の周縁部には、外面側へ突出する立上がり部34を設けていない。この場合、起点部28側の2列の孔部33について、立上がり部34を設けていない。
【0029】
このような構成によれば、回転槽15の胴体16における前部側の起点部28付近の径大部25の外面側への突起部を無くすことができる。これにより、当該起点部28付近の径大部25の外面と水槽5の内面との間の隙間を一層確実に確保することが可能になり、回転槽15が水槽5へ衝突することを一層確実に回避することが可能となる。
【0030】
(第3実施形態)
第3実施形態について図5を参照して説明する。この第3実施形態においては、第1および第2実施形態とは次の点が異なっている。すなわち、回転槽15における胴体16の径大部25にあって前部側の起点部28付近に存する孔部33の周縁部には、外面側へ突出する立上がり部37を設けているが、その立上がり部37の高さを、他の孔部33の立上がり部34よりも低く設定している。この実施形態においても、第2実施形態とほぼ同様な作用効果を得ることができる。
【0031】
(第4実施形態)
第4実施形態について図6を参照して説明する。この第4実施形態においては、第1実施形態とは次の点が異なっている。すなわち、回転槽15における胴体16の前部側の外径変化部26には、孔部33を形成していない。
【0032】
この構成によれば、回転槽15における外径変化部26と水槽5の内面との間に形成される空間部30(図6の二点鎖線参照)と回転槽15内との間の空気の流通がほぼ遮断される形態となるので、回転槽15の回転時に空間部30に発生する風圧を大きくできる。これに伴い、空間部30内の空気を、排気口35を通して循環風路側へ排出しやすくでき、ひいては乾燥効率の向上を図ることが可能となる。
【0033】
(その他の実施形態)
洗濯乾燥機を例示したが、乾燥機能のない洗濯機にも適用できる。
ドラム式の洗濯乾燥機を例示したが、水槽および回転槽の軸方向が上下方向に指向した、いわゆる縦型の洗濯機にも適用できる。
【0034】
以上説明したように、本実施形態によれば、回転槽における胴体は、バランスリングよりも径大な径大部を有しているので、回転槽としては、その径大部を有する分、洗濯物を収容可能な洗濯容量を大きくできる。また、回転槽の胴体にあって外径が最大となる径大部から外径変化部に変わる起点部を、水槽において内径が大きく形成された、水槽本体と水槽カバーの繋ぎ目付近に対応する位置に配置した構成としたことにより、回転槽が底部側を支点にして傾斜し、胴体の径大部の外面と水槽の内面との間の隙間が小さくなったとしても、前記起点部が水槽の内面に当たることを極力避けることが可能となり、安全性を確保することが可能となる。
【0035】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0036】
図面中、1は洗濯機、2は外箱(外殻)、5は水槽、6は水槽本体、7は水槽カバー、13は繋ぎ目、15は回転槽、16は胴体、17は底部部材、18はバランスリング、19は回転軸、22はモータ、25は径大部、26,27は外径変化部、28,29は起点部、30,31は空間部、33は孔部、34は立上がり部、35は排気口、37は立上がり部を示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6