(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
洗浄対象物である内視鏡処置具が、直方体状のハウジングと、ハウジングの一方面から直線的に延出される中空のシャフトと、シャフトの先端部に金属製の処置用器具と、ハウジングの一方面以外のいずれかの面に形成された洗浄液の注入口とを有するものであり、洗浄装置の洗浄槽内に収納されて、前記内視鏡処置具を複数配置するラックであって、
ハウジングの前記一方面以外のいずれかの面側に配置され、配置する内視鏡処置具のシャフトの軸線方向に対して直交する方向であって、且つ水平方向に延びる中空の第1基部が設けられ、
該第1基部において、配置する内視鏡処置具のハウジングの注入口に挿入される接続ポートが、内視鏡処置具の数だけ複数設けられ、
ハウジングの一方面と他方面以外の少なくとも2面に当接する位置決め部材が設けられ、
各ハウジングの前記注入口が形成されている面と反対側の面に当接し、前記注入口を前記接続ポート側に押圧する方向に移動可能な、1又は複数の保持部材が設けられ、
1又は複数の前記保持部材を、各ハウジングの前記注入口に前記接続ポートが挿入完了する位置まで移動させた後に保持部材の位置をロック可能な、ロック機構が1又は複数設けられ、
シャフトの軸線方向に沿って延びる複数のフレームが設けられ、
複数のフレームに跨って配置され、前記第1基部の軸線方向に沿った回動軸を中心に各フレームに回動自在に取り付けられたアーム部が設けられ、
該アーム部に1又は複数の前記保持部材が取り付けられていることを特徴とする洗浄装置用のラック。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1の実施形態)
以下、図面に基づいて本実施形態にかかる洗浄装置用のラックを説明する。
本実施形態における洗浄装置用のラック(以下、単にラックと称する場合がある)は、洗浄槽の上面に洗浄槽を開口する蓋体が設けられた洗浄装置に収納される構成を想定したものである。
【0018】
まず、
図1に洗浄対象物である内視鏡処置具の一例として、内視鏡下手術用のロボット外科手術システムであるda Vinci(登録商標)Surgical Systemに用いられる外科用器具を示す。
この内視鏡処置具60は、ほぼ直方体状のハウジング62と、ハウジング62から直線的に延出される中空のシャフト63と、シャフト63の先端部に金属製の鋏や鉗子等の処置用器具64が設けられている。内視鏡処置具60は、処置用器具64がステンレスなどの金属製であり、ハウジング62及びシャフト63は樹脂製である。そしてハウジング62内及びシャフト63内には、アルミ合金や銅合金などを使用した部品が収納されている。
【0019】
ハウジング62の一方面62a側にシャフト63が配置されており、ハウジング62の他方面62b側に洗浄液の注入口(図面では図示せず)が形成されている。
注入口から注入された洗浄液は、ハウジング62内の洗浄を行うとともに、シャフト63内のチューブ(図示せず)に流入し、シャフト63の先端部側に向かう。シャフト63の先端部付近に到達した洗浄液は、シャフト63の先端部からわずかに流出し、残りの多くはチューブとシャフト63の内壁面との間の隙間を通ってハウジング62に戻り、ハウジング62の隙間から外部に流出する。
【0020】
図2〜
図8に、本実施形態のラック30について示す。
ラック30は、第1基部32と、第1基部32に対して平行であって内視鏡処置具60の先端部側に配置された第2基部34と、第1基部32の端部と第2基部34の端部をそれぞれ連結するように配置された2枚の側面フレーム36a、36bとを有している。このように、ラック30は、第1基部32、第2基部34、2枚の側面フレーム36a、36bが、互いに連結された長方形状をなしている。
【0021】
第1基部32は、ハウジング62の他方面62b側に配置されており、その延出方向は、配置する内視鏡処置具60のシャフト63の軸線方向に対して直交する方向であって、且つ水平方向に延びる方向である。
第1基部32は、内部が中空のパイプ状であり中空の内部に洗浄液が流通することができる。また、第1基部32には、ハウジング62の他方面62bの注入口(図示せず)に挿入される接続ポート38が、配置される内視鏡処置具60の数だけ複数設けられている。
【0022】
本実施形態では、第1基部32の他に、第2基部34及び側面フレーム36a(
図2の正面側)が内部の中空のパイプ状に形成されている。側面フレーム36aには、外部から洗浄液を内部に導入する導入口40が形成されている。
側面フレーム36a、第1基部32及び第2基部34は、内部の中空部分が連通するように互いに連結されている。このため、導入口40から導入された洗浄液は、第1基部32と第2基部34に流通する。そして、第1基部32の各接続ポート38から洗浄液が吐出し、第2基部34の複数のノズル42(後述する)からも洗浄液が吐出される。
【0023】
第1基部32から第2基部34方向に向かう一方側には、各内視鏡処置具60のハウジング62を位置決めする位置決め部材44が設けられている。
位置決め部材44は、側面フレーム36aと36bとの間に架け渡された連結部材45の上面に設けられている。
【0024】
位置決め部材44は、配置されるハウジング62の数だけ設けられている。それぞれの位置決め部材44は、ハウジング62の一方の側面に当接する側面当接部44aと、ハウジング62の底面に当接する底面当接部44bとを有している。すなわち、位置決め部材44は、ハウジング62の隣接する少なくとも2面に当接するようなL字状の形状を有している。さらに本実施形態では、ハウジング62の底面に形成された突起(図示せず)を収納するための凹部44cが、底面当接部44bの端部(隣接する側面当接部44aとの境界部分)に形成されている。
【0025】
なお、位置決め部材44は、ハウジング62の数に合わせて複数別個に形成されたものをそれぞれ連結部材45に取り付けてもよいし、複数の位置決め部材44を一体に形成されたものを連結部材45に取り付けてもよい。
【0026】
位置決め部材44よりも一方側(第2基部34側)には、位置決め部材44内に配置されるハウジング62の一方面62aに当接する保持部材46が設けられている。本実施形態では、保持部材46は、ポリアセタール等の樹脂からなる弾性部材で構成されている。このため、保持部材46がハウジング62の一方面62aを押圧しても、ハウジング62の破損等がないようにしている。
また、保持部材46は、複数のハウジング62の配置方向(第1基部32及び第2基部34の延出方向)に沿って長尺に構成されており、複数のハウジング62の一方面62aに当接可能である。
【0027】
保持部材46は、複数のハウジング62の配置方向(第1基部32及び第2基部34の延出方向)を軸線とした回動軸50に対して回動自在に設けられたアーム部52に取り付けられている。回動軸50は、側面フレーム36a、36bのそれぞれの上端部に取り付けられている。
【0028】
アーム部52は、各回動軸50からシャフト63の軸線方向に沿って延び、その後上方に向かって延びるようにほぼL字状に形成された、2つの第1アーム部52aと、各第1アーム部52aの上端部どうしを連結し第1基部32と平行に延びる第2アーム部52bとを有している。第2アーム部52bの第1基部32側の面には、上記の保持部材46が取り付けられている。
また、第2アーム部52bの両端部から第1基部32に向けて延びる、2本の支持部52cが設けられている。各支持部52cの形状はどのようなものであってもよいが、先端部が第1基部32に至る長さが必要である。
【0029】
各支持部52cの第1基部32側の端部は、第1基部32と平行に配置される固定用端部52dが設けられている。支持部52cと固定用端部52dは、別個の部材を連結させて構成してもよいし、1本の部材を折り曲げて構成されていてもよい。
【0030】
固定用端部52dと第1基部32には、互いを固定する固定具54が設けられている。固定具の例としては、
図4に示すように、固定用端部52dの中央において下方に向けて延びるフック56が設けられ、第1基部32の上部中央において、フック56に掛けることができるリング部58と、リング部58を上下動させるようにリング部58に連結され、掛けたフック56を下方に牽引する牽引部59とが設けられているものがある。
ただし、固定具の例としては、このようなものに限定することはなく、例えば、固定用端部52dと第1基部32には、互いに係合しあう金属片を設けて金属片どうしを係合させることで固定具としてもよい。
【0031】
アーム部52の動作について説明する。
アーム部52が第2基部34方向に回動している状態(
図6の状態)では、位置決め部材44の上方が開いているので内視鏡処置具60を位置決め部材44に収納し、配置できる。
内視鏡処置具60を位置決め部材44に配置(
図7の状態)したのち、アーム部52を第1基部32方向に回動させると(
図8の状態)、アーム部52に取り付けられている保持部材46が、ハウジング62の一方面62a側に向かって移動してくる。保持部材46の第1基部32側の表面がハウジング62の一方面62aに当接したところで、アーム部52の回動を終了する。
【0032】
保持部材46がハウジング62の一方面62aに向けて回動してくる際、保持部材46は徐々にハウジング62の一方面62aを押圧する。このため、ハウジング62が第1基部32方向に移動し、第1基部32の接続ポート38は、ハウジング62の他方面62bに形成された注入口に確実に挿入される。
【0033】
また、保持部材46は配置されている複数のハウジング62を同時に押圧することができるので、複数の内視鏡処置具60に対して1回の動作で接続ポート38を接続でき、セッティングが容易である。
【0034】
アーム部52の回動を終了させた後、保持部材46の位置をロックさせるため、固定具54により、アーム部52と第1基部32を固定する。固定具54で固定する際には、アーム部52がより第1基部32側に引っ張られるようにすると、ハウジング62の注入口と接続ポート38との間の接続がさらに確実となるので好ましい。
【0035】
なお、保持部材46には、配置された内視鏡処置具60のシャフト63が収納される凹部37が形成されている。保持部材46内にシャフト63を収納保持することができるので、洗浄中にシャフト63が確実に保持される。
【0036】
保持部材46よりも第2基部34側にもシャフト支持部70を設けるとよい。シャフト支持部70は、側面フレーム36a、36bの間に架け渡されて配置されている。シャフト支持部70は、シャフト63を収納される凹部72が複数形成されている。
【0037】
なお、上述したように、第2基部34には複数のノズル42が設けられている。ノズル42は、配置された内視鏡処置具60の先端部の処置用器具64に向けて洗浄液を噴出できる。処置用器具64には、肉片などがこびりついたりしているので処置用器具64に向けて洗浄液が噴出されることで、汚れを確実に洗浄できる。
【0038】
本実施形態のラック30に、複数の内視鏡処置具60を配置して洗浄装置で洗浄することにより、内視鏡処置具60の内部も確実に洗浄できる。
【0039】
(第2の実施形態)
第2の実施形態を
図9〜
図13に示す。
本実施形態におけるラック80は、洗浄槽の側面に洗浄槽を開口する蓋体が設けられた洗浄装置に収納される構成を想定したものである。また、第1の実施形態と同一の構成要素については同一の符号を付し、説明を省略する場合もある。
【0040】
また、本実施形態のラック80は、内視鏡処置具60を、先端部の処置用器具64が下方を向くように保持する。このようにすることにより、洗浄装置の洗浄槽内において先端部の処置用器具64が浸漬できる程度の洗浄液を貯留させることができ、処置用器具64のみに超音波洗浄等を施すことができる。
【0041】
本実施形態のラック80は、長方形又は正方形に形成された基台81と、基台81に上下方向に延びるように取り付けられ、内部が中空の第1支柱82とを備えている。基台81は、長方形又は正方形の各辺を形成する4本の金属製のフレーム81a・・と、対向するフレーム81aどうしを接続する梁81bとを備えている。また、基台81には、作業者が把持出来る一対の取っ手83が設けられている。
【0042】
なお、基台81内部には、上面が開口した箱状のバスケット86が配置されている。このバスケット86内には、トロッカー(腹腔内視鏡手術に用いる管状の器具:図示せず)等を配置できるように考慮したものである。特にバスケット86は、設けなくてもよい。
【0043】
複数の接続ポート38を備えた第1基部32は、水平方向に延び、且つ第1支柱82の所定位置に着脱可能に取り付けられている。また、第1支柱82には、外部から洗浄液を第1支柱82の内部に導入する導入口40が形成されている(図示せず)。
このため、第1基部32内には、第1支柱82から洗浄液が導入される。
【0044】
第1基部32には、配置する内視鏡処置具60の長手方向に沿って延びるフレーム87が複数取り付けられている。フレーム87は、第1基部32の少なくとも両端部に配置されており、さらに第1基部32の中途部にも配置されていてもよい。図面で示した例では、第1基部32の両端部にフレーム87a,87bが設けられ、第1基部32の中途部の2か所にもフレーム87c,87dが設けられている。
また、各フレーム87の一方側(第2基部34方向側)端部には、各フレーム87を連結する連結部材88が設けられている。
【0045】
第1基部32には、内視鏡処置具60のハウジング62の他方面62bに形成された注入口に接続する複数の接続ポート38が設けられている。各接続ポート38は、斜め下向きに突出するように設けられており、内視鏡処置具60の先端部の処置用器具64が洗浄装置の処理槽内でハウジング62よりも下方に位置するように配置される。
【0046】
第1基部32から第2基部34方向に向かう一方側には、各内視鏡処置具60のハウジング62を位置決めする位置決め部材44が設けられている。
位置決め部材44は、側面フレーム36aと36bとの間に架け渡された連結部材45の上面に設けられている。位置決め部材44の形状は、第1の実施形態と同様に、ハウジング62の一方の側面62cに当接する側面当接部44aと、ハウジング62の底面62dに当接する底面当接部44bとを有している。
【0047】
位置決め部材44よりも一方側には、位置決め部材44内に配置されるハウジング62の一方面62aに当接する保持部材46が設けられている。本実施形態では、保持部材46は、複数(図示した例では3つ)有しており、それぞれ別個に動作可能としている。
すなわち、本実施形態では、3つの保持部材46に対して、それぞれの保持部材46を取り付けている3つのアーム部90,92,94を有しており、3つのアーム部90,92,94は互いに独立して動作可能に設けられている。
【0048】
図10に図示しているように、
図10の右側のアーム部90は、第1基部32と同一方向を中心に回動する回動軸91によって、フレーム87a及びフレーム87cに対して回動可能である。つまり、アーム部90の回動軸91は、フレーム87a及びフレーム87cに架け渡されているか、又はそれぞれ別個に取り付けられている。
【0049】
アーム部90は、回動軸91の軸線方向に対して直交する方向に延びる2本の第2アーム部90aを有している。2本の第2アーム部90aの間に保持部材46が設けられている。アーム部90に設けられている保持部材46は2つのハウジング62の一方面62aに当接する大きさとなっている。
【0050】
各第2アーム部90aから、第1基部32方向に支持部90bが延びている。また支持部90bの第1基部32側端部を連結し、第1基部32と平行に延びる固定用端部90cが設けられている。
また、固定用端部90cには、固定用端部90cと第1基部32とを固定する固定具54が設けられている。
【0051】
固定具54はどのような構成であってもよいが、本実施形態の固定具54は、第1の実施形態と同様であって、固定用端部90cの中央において下方に向けて延びるフック56が設けられ、第1基部32の上部中央において、フック56に掛けることができるリング部58と、リング部58を上下動させるようにリング部58に連結され、掛けたフック56を下方に牽引する牽引部59とが設けられているものを採用している。
【0052】
また、中央に設けられているアーム部92、左側に設けられているアーム部94についても基本的な構成はアーム部90と同様である。
つまり、中央のアーム部92は、フレーム87cと87dの間で回動軸91と中心として回動可能であって、保持部材46が設けられている。この保持部材46は、6つのハウジング62の一方面62aに当接する大きさとなっている。また、中央のアーム部92の固定用端部92cには、固定用端部92cと第1基部32とを固定する固定具54が設けられている。
【0053】
左側のアーム部94は、フレーム87dと87bの間で回動軸91と中心として回動可能であって、保持部材46が設けられている。この保持部材46は、6つのハウジング62の一方面62aに当接する大きさとなっている。また、左側のアーム部94の固定用端部94cには、固定用端部92cと第1基部32とを固定する固定具54が設けられている。
【0054】
各保持部材46には、配置された内視鏡処置具60のシャフト63が収納される凹部37が形成されている。保持部材46内にシャフト63を収納保持することができるので、洗浄中のシャフト63の保持を確実に行える。
【0055】
本実施形態では、右側のアーム部90の位置が、中央及び左側のアーム部92、94の位置よりも第2基部34側に設けられている。したがって、右側に配置できる2つの内視鏡処置具は、中央及び左側に配置できるものよりもハウジングの大きさが大きい(シャフトの軸線方向に沿って長い)ものを配置し、洗浄できる。
しかも、アーム部を複数互いに独立して動作できるようにしたので、配置した内視鏡処置具のロックをそれぞれ(本実施形態では3か所であるが)に別個で行うことができる。
【0056】
本実施形態の第2基部34は、第1支柱82と対向する位置に設けられている第2支柱84の所定位置に設けられている。また、第2基部34には、複数のノズル42が設けられている。
第2支柱84は、内部が中空のパイプ状であり、内部が中空の連結管85によって第1支柱82と連結している。外部から第1支柱82に導入された洗浄液は、第1基部32の接続ポート38へ導入されるとともに、連結管85を経由して第2支柱84へも流入する。
そして、第2支柱84に導入された洗浄液は、第2基部34のノズル42から吐出可能となる。
【0057】
(第3の実施形態)
第3の実施形態について
図13に基づいて説明する。
なお、上述してきた実施形態と同一の構成要素については同一の符号を付し、説明を省略する場合もある。
本実施形態の特徴は、第2の実施形態における内視鏡処置具の上下方向の向きを逆にし、ハウジングを下方にし、処置用器具を上方に向けて配置可能としたところにある。
【0058】
第1基部32は、第2支柱84の下方に位置しており、各ハウジング62は注入口が斜め下向きに配置されている。また、第2基部34は、連結管85の第1支柱82寄りに設けられている。
【0059】
(第4の実施形態)
第4の実施形態について
図14に基づいて説明する。
なお、上述してきた実施形態と同一の構成要素については同一の符号を付し、説明を省略する場合もある。
本実施形態の特徴は、第2の実施形態における第1基部を第1支柱82だけでなく、第2支柱84にも設け、洗浄できる内視鏡処置具の数を増加させた点にある。
【0060】
第1基部32は、第1支柱82の上部の所定位置に設けられており、さらに別の第1基部32が第2支柱84の上部の所定位置に設けられている。
第1支柱82の第1基部32は、内視鏡処置具60の先端部が第2支柱84の下部に向くように斜め下向きに配置され、第2支柱84の下部に設けられた第2基部34のノズル42からの洗浄液の噴出を受ける。
【0061】
第2支柱84の第1基部32は、内視鏡処置具60の先端部が第1支柱82の下部に向くように斜め下向きに配置され、第1支柱82の下部に設けられた第2基部34のノズル42からの洗浄液の噴出を受ける。
【0062】
(第5の実施形態)
洗浄対象物である内視鏡処置具の他の例を
図15に示す。
図15に示す内視鏡処置具も、内視鏡下手術用のロボット外科手術システムであるda Vinci(登録商標)Surgical Systemに用いられる外科用器具である。この内視鏡処置具100は、ほぼ直方体状のハウジング102と、ハウジング102から直線的に延出される中空のシャフト103と、シャフト103の先端部に金属製の鋏や鉗子等の処置用器具104が設けられている点は、上述した実施形態の内視鏡処置具60と同じである。さらに、内視鏡処置具100は、処置用器具104がステンレスなどの金属製であり、ハウジング102及びシャフト103は樹脂製であって、ハウジング102内及びシャフト103内には、アルミ合金や銅合金などを使用した部品が収納されている点も、上述した実施形態の内視鏡処置具60と同じである。
【0063】
本実施形態の内視鏡処置具100と上述してきた実施形態との相違は、注入口の位置が異なっているところである。
本実施形態の内視鏡処置具100は、注入口101が、ハウジング102のシャフト103の取付面である一方面102aとは直交する方向に位置する下面102cに形成されている。図面上では、注入口101は、ハウジング102の下面に形成されている。
【0064】
図16及び
図17に本実施形態のラック110の部分的な構成である内視鏡処置具配置部111について示す。
内視鏡処置具配置部111には、第1基部112と、第1基部112の両端部から前方に向けて延びる2本の側面フレーム118a、118bと、側面フレーム118a、118bの先端部を連結するように第1基部112と平行に配置された先端フレーム118cとを有している。このように、ラック110の内視鏡処置具100を配置する箇所は、第1基部112と、2枚の側面フレーム118a、118bと、先端フレーム118cとが、互いに連結された長方形状をなしている。ただし、2枚の側面フレーム118a、118b、先端フレーム118cは1枚のフレームを折り曲げて構成してもよい。
【0065】
先端フレーム118cには、シャフト103を支持するシャフト支持部117が取り付けられている。シャフト支持部117には、シャフト103を収納する凹部119が複数形成されている。
【0066】
第1基部112は、ハウジング102のシャフト103の延出方向に対して直交する方向面側(図面では、ハウジング102の下面に対向する面)に配置されており、その延出方向は、配置する内視鏡処置具100のシャフト103の軸線方向に対して直交する方向であって、且つ水平方向に延びる方向である。
【0067】
第1基部112は、内部が中空のパイプ状であり中空の内部に洗浄液が流通することができる。また、第1基部112には、ハウジング102の下面102cの注入口101に挿入される接続ポート120が、配置される内視鏡処置具100の数だけ複数設けられている。
【0068】
第1基部112よりも前方側には、各内視鏡処置具100のハウジング102を位置決めする位置決め部材122が設けられている。この位置決め部材122は側面フレーム118a、118bの間に架け渡された連結部材125に設けられている。位置決め部材122は、配置されるハウジング102の数だけ設けられている。位置決め部材122は、ハウジング102の両側面に当接するように配置されており、第1基部112の延出方向に沿ったハウジング102の位置を決める。
【0069】
なお、位置決め部材122は、ハウジング102の数に合わせて複数別個に形成されたものをそれぞれ連結部材125に取り付けてもよいし、複数の位置決め部材122を一体に形成されたものを連結部材125に取り付けてもよい。
【0070】
位置決め部材122の上方には、位置決め部材122内に配置されるハウジング102の上面102d及び一方面102aに当接する保持部材126が設けられている。本実施形態では、保持部材126は、ポリアセタール等の樹脂からなる弾性部材で構成されている。このため、保持部材126がハウジング102の上面102d及び一方面102aを押圧しても、ハウジング102の破損等がないようにしている。
【0071】
また、保持部材126は、複数のハウジング102の配置方向(第1基部112の延出方向)に沿って長尺に構成された一方面保持部126aと、一方面保持部126aの上端部から第1基部112方向に折り曲げられた上面保持部126bとを有する。すなわち、保持部材126は、一方面保持部126aと上面保持部126bとからなるL字状の部材として構成されている。
【0072】
保持部材126は、複数のハウジング102の配置方向(第1基部32の延出方向)を軸線とした回動軸130に対して回動自在に設けられた回動基部132に取り付けられている。回動軸130は、側面フレーム118a、118bのそれぞれに取り付けられている。
【0073】
回動基部132には、配置されるハウジング102の上方を跨ぎ、第1基部112の後方側に端部に向けて下降し、保持部材126を固定するためのアーム部134が複数取り付けられている。
なお、本実施形態では、第1基部112の延出方向に沿って3つのアーム部134が設けられているが、全体として1つのアーム部を設けてもよい。
【0074】
1つのアーム部134は、回動基部132から上方に延びる2本の第1アーム部134aと、各第1アーム部134aの上端部から第1基部112方向に延びる第2アーム部134bと、各第2アーム部134bの端部から下方に向けて延びる第3アーム部134cと、第3アーム部134どうしを連結するように第1基部112の延出方向に平行な固定用端部134dとを有している。これら各アーム部は1つの部材を折り曲げて構成してもよいし、別部材を接続して1つのアーム部134を構成してもよい。
【0075】
固定用端部134dと第1基部112には、互いを固定する固定具136が設けられている。固定具の例としては、
図16に示すように、固定用端部134dの中央において下方に向けて延びるフック138が設けられ、フック138に掛けることができるリング部140と、リング部140を上下動させるようにリング部140に連結され、掛けたフック138を下方に牽引する牽引部142とが設けられているものがある。牽引部142は、第1基部112から後方に延びる固定用部材144に設けられている。
【0076】
ただし、固定具136の例としては、このようなものに限定することはなく、例えば、固定用端部134dと第1基部112には、互いに係合しあう金属片を設けて金属片どうしを係合させることで固定具としてもよい。
【0077】
アーム部134の動作について説明する。
アーム部134が位置決め部材122の上方から離れており、シャフト支持部117方向に回動している状態(図示せず)では、位置決め部材122の上方が開いているので内視鏡処置具100を位置決め部材122に収納し、配置できる。
内視鏡処置具100を位置決め部材122に配置したのち、アーム部134を第1基部112方向に回動させると、回動基部132と共に保持部材126が、ハウジング102の一方面102a及び上面102dに向かって移動してくる。保持部材126の一方面保持部126aと上面保持部126bが、ハウジング102の一方面102aと上面102dにそれぞれ当接したところで、アーム部134の回動を終了する。
【0078】
保持部材126の上面保持部126bがハウジング102の上面102dに向けて回動してくると、上面保持部126bは徐々にハウジング上面102dを押圧する。このため、ハウジング102が第1基部112方向に移動し、第1基部112の接続ポート120は、ハウジング102の下面102cに形成された注入口101に確実に挿入される。
【0079】
また、保持部材126は配置されている複数のハウジング102を同時に押圧することができるので、複数の内視鏡処置具100に対して1回の動作で接続ポート120を接続でき、セッティングが容易である。
【0080】
アーム部134の回動を終了させた後、保持部材126の位置をロックさせるため、固定具136により、アーム部134と第1基部112を固定する。固定具136で固定する際に、アーム部134が下方に引っ張られるようにすることで、ハウジング102の注入口101と接続ポート120との間の接続がさらに確実となるので好ましい。
【0081】
なお、保持部材126には、配置された内視鏡処置具100のシャフト103が収納される凹部147が形成されている。保持部材126内にシャフト103を収納保持することができるので、洗浄中にシャフト103が確実に保持される。
【0082】
図18〜
図20に、ラック110の全体構成を示す。
本実施形態におけるラック110は、洗浄槽の側面に洗浄槽を開口する蓋体が設けられた洗浄装置に収納される構成を想定したものであって、全体としては第2の実施形態と同様の構成である。
【0083】
また、本実施形態のラック110は、内視鏡処置具100を、先端部の処置用器具104が下方を向くように保持する。このようにすることにより、洗浄装置の洗浄槽内において先端部の処置用器具104が浸漬できる程度の洗浄液を貯留させることができ、処置用器具104のみに超音波洗浄等を施すことができる。
【0084】
本実施形態のラック110は、長方形又は正方形に形成された基台151と、基台151に上下方向に延びるように取り付けられ、内部が中空の第1支柱152とを備えている。基台151は、長方形又は正方形の各辺を形成する4本の金属製のフレーム151a・・と、対向するフレーム151aどうしを接続する梁151bとを備えている。また、基台151には、作業者が把持出来る一対の取っ手153が設けられている。
【0085】
なお、基台151内部には、上面が開口した箱状のバスケット156が配置されている。このバスケット156内には、トロッカー(腹腔内視鏡手術に用いる管状の器具:図示せず)等を配置できるように考慮したものであるが、特にバスケット156は、設けなくてもよい。
【0086】
図16〜
図17に示した内視鏡処置具配置部111の第1基部112は、第1支柱152の所定位置に着脱可能に取り付けられている。
また、第1支柱152には、外部から洗浄液を第1支柱152の内部に導入する導入口が形成されている(図示せず)。
このため、第1基部112内には、第1支柱152から洗浄液が導入される。
【0087】
本実施形態の第2基部114は、第1支柱152と対向する位置に設けられている第2支柱154の所定位置に設けられている。また、第2基部114には、複数のノズル116が設けられている。
第2支柱154は、内部が中空のパイプ状であり、内部が中空の連結管155によって第1支柱152と連結している。外部から第1支柱152に導入された洗浄液は、第1基部112の接続ポート120へ導入されるとともに、連結管155を経由して第2支柱154へも流入する。
そして、第2支柱154に導入された洗浄液は、第2基部114のノズル116から吐出可能となる。
【0088】
なお、上述してきた第5の実施形態においては、
図13に示した実施形態のように、ハウジング102を下方にし、処置用器具104を上方に向けて配置してもよい。
この場合、第1基部112を第2支柱154の下部に配置し、第2基部114は連結管155の第1支柱152よりに設けられる。
【0089】
さらに、上述してきた第5の実施形態においては、
図14に示した実施形態のように、第1基部112を第1支柱152だけでなく、第2支柱154にも設け、洗浄できる内視鏡処置具100の数を増やしてもよい。この場合、第1基部112は、第1支柱152の上部の所定位置に設けられており、さらに別の第1基部112が第2支柱154の上部の所定位置に設けられる。
【0090】
ハウジング102を下方にし、処置用器具104を上方に向けて配置してもよい。
この場合、第1基部112を第2支柱154の下部に配置し、第2基部114は連結管155の第1支柱152よりに設けられる。
【0091】
第1支柱152の第1基部112は、内視鏡処置具100の先端部が第2支柱154の下部に向くように斜め下向きに配置され、第2支柱154の下部に設けられた第2基部114のノズル116からの洗浄液の噴出を受ける。
【0092】
第2支柱154の第1基部112は、内視鏡処置具100の先端部が第1支柱152の下部に向くように斜め下向きに配置され、第1支柱152の下部に設けられた第2基部114のノズル116からの洗浄液の噴出を受ける。
なお、第2の実施形態から第5の実施形態において、第1支柱82、152と、第2支柱84、154と、連結管85、155からの、第1基部32、112及び第2基部34、114の着脱を自在に行えるようにするとよい。このようにすれば、第2の実施形態から第5の実施形態までいずれかの形態の変更を容易に行うことができる。
【0093】
(第6の実施形態)
また、
図21に示すように、第2基部34,114に設けられているノズル42,116の周囲には、金属製の処置用器具64,104を収納する筒状体160を設けてもよい。
この構成によれば、金属製の処置用器具64,104を筒状体160の中央に形成されている収納穴162に挿入してノズルから洗浄液を噴射させることにより、洗浄液に処置用器具64,104を浸漬させることと同様の効果が得られる。このため、特に処置用器具64,104の洗浄が
より確実に行える。
【0094】
筒状体160の収納穴162の径は、挿入する処置用器具64,104の大小や、シャフト63,103の径の相違によって、さまざまな径のものを用いることができる。
例えば、
図21の例では第2基部42,114の左端に設けられている筒状体160については、その収納穴162の径を他の筒状体の収納穴の径よりも大径としている。このため、左端には、他の内視鏡処置具よりも大きい処置用器具64,104を有する内視鏡処置具又は他の内視鏡処置具よりも太いシャフト63,103を有する内視鏡処置具を配置することができる。